説明

気体溶解水供給装置

【課題】環境温度の変動による酸素富化空気の流量のバラツキを抑制した気体溶解水供給装置を提供する。
【解決手段】通水管1の水流で発生する負圧を導入配管4から酸素富化手段3に作用させて酸素富化手段3で生成された酸素富化空気を導入配管4から通水管1に導入し、導入された酸素富化空気を溶解タンク5で水に溶解して気体溶解水を生成しこれを吐出口7から吐出する気体溶解水供給装置であって、前記酸素富化手段3には、酸素富化膜31の温度またはその近傍の雰囲気温度を検知する温度検知手段32と、酸素富化膜31またはその近傍の雰囲気を加熱する加熱手段33が設けられており、酸素富化手段3の酸素富化膜31の温度またはその近傍の雰囲気温度が予め設定した温度に保持されるように温度検知手段32で検知した温度に応じて酸素富化膜31またはその近傍の雰囲気を加熱手段33で加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体溶解水供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、酸素富化装置で生成した酸素富化空気を、浴槽の浴槽水をポンプで循環させる管路に導入して浴槽水に酸素富化空気を混入し、これを再び浴槽内に吐出する酸素富化給湯装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この酸素富化給湯装置は、管路に絞り部を設けてこの絞り部で生ずる負圧により酸素富化装置で生成した酸素富化空気を管路に導入している。酸素富化装置では酸素富化膜が使用されており、この酸素富化膜において酸素を選択的に透過させて酸素富化空気を生成している。酸素富化膜の特性上、環境温度によって透過流量が変動するため、上記酸素富化給湯装置では、管路に導入される酸素富化空気の流量にバラツキが生じ、このバラツキが管路のポンプ内部での気液混合比を変動させ、気体の比率が高い場合にはポンプがエアロックしてしまう等の問題が生じるおそれがあった。そこで、所望の気体流量を確保するために、真空ポンプを設け、酸素富化膜に真空ポンプによる真空圧を作用させて酸素富化空気を過剰に吸引し、全部もしくはその一部を管路に導入することが考えられる。すなわち、想定される最悪温度条件(低温条件)下でも所望の流量が得られるように流量設定しておき、高温条件下において空気が多すぎる場合には余剰空気を他へ排出することが考えられるが、真空ポンプや別経路が必要になる等のコスト高になるという問題があった。
【特許文献1】特開2004−350932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、環境温度の変動による酸素富化空気の流量のバラツキを抑制した気体溶解水供給装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0006】
通水管と、通水管の途中に設けられて通水管内の水を送液し水流を発生させるポンプと、酸素富化膜を有し酸素富化空気を生成する酸素富化手段と、この酸素富化手段で生成された酸素富化空気を通水管に導入する導入配管と、導入配管の導入口の下流側の通水管に設けられて通水管に導入された酸素富化空気を水に溶解させる溶解タンクと、溶解タンクの下流側に設けられて気体を溶解させた水を吐出する吐出口とを備え、通水管の水流で発生する負圧を導入配管から酸素富化手段に作用させて酸素富化手段で生成された酸素富化空気を導入配管から通水管に導入し、導入された酸素富化空気を溶解タンクで水に溶解して気体溶解水を生成しこれを吐出口から吐出する気体溶解水供給装置であって、前記酸素富化手段には、酸素富化膜の温度またはその近傍の雰囲気温度を検知する温度検知手段と、酸素富化膜またはその近傍の雰囲気を加熱する加熱手段が設けられており、酸素富化手段の酸素富化膜の温度またはその近傍の雰囲気温度が予め設定した温度に保持されるように温度検知手段で検知した温度に応じて酸素富化膜またはその近傍の雰囲気を加熱手段で加熱する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酸素富化手段の酸素富化膜の温度またはその近傍の雰囲気温度が予め設定した温度に保持されるように温度検知手段で検知した温度に応じて酸素富化膜またはその近傍の雰囲気を加熱手段で加熱するため、酸素富化手段の環境温度が変動しても、所定温度の酸素富化膜に対応した流量が確保されることになり、酸素富化空気の流量のバラツキが抑制される。そしてこの酸素富化空気の流量のバラツキが抑制されると、ポンプ内部での気液混合比の変動も抑制され、ポンプにエアロックが生じる問題がなくなり、気体溶解水供給装置を快適に駆動させることができる。また真空ポンプや余剰空気を排出する別経路を設置する必要がなくなりコスト安になるほか、真空ポンプや別経路の設置空間を確保することが不要になり、装置としての小型化設計が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は前記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態である浴槽用の気体溶解水供給装置の概略構成図である。
【0010】
浴槽9の側壁には、吸入口6と吐出口7が設けられており、吸入口6において浴槽9内の浴槽水Wを吸入し、吐出口7においてその浴槽水Wに酸素富化空気を溶解させた気体溶解水を吐出するようになっている。
【0011】
吸入口6と吐出口7は浴槽9の外部に配設された浴槽水循環用の通水管1で連通されており、その通水管1の途中にはポンプ2が配設され、ポンプ2の駆動により浴槽9内の浴槽水Wを吸入口6から吸入し、通水管1を経由して吐出口7から浴槽9内に吐出するようになっている。
【0012】
ポンプ2の上流側の通水管1には気体導入部8が設けられ、この気体導入部8に導入配管4が接続されている。さらに、この導入配管4の上流側には酸素富化手段3が配設されており、酸素富化手段3で作り出された酸素富化空気が導入配管4を経由して気体導入部8から通水管1に導入されるようになっている。
【0013】
酸素富化手段3は、窒素と酸素を分離して酸素を選択的に透過させる酸素富化膜31で構成されており、大気圧よりも低い負圧をこの酸素富化膜31の酸素が透過する側(酸素富化膜31の下流側)に作用させることにより酸素富化膜31の上流側の空気から酸素が選択的に多く取り込まれて相対的に酸素濃度の高い空気(酸素富化空気)が生成されるようになっている。酸素富化膜31の近傍には透過しにくい窒素が富化された空気が滞留する。このため本実施形態では酸素富化膜31の表面を換気する換気ファン34が設けられている。
【0014】
この酸素富化膜31は一般に次のような特性を有している。すなわち、酸素富化膜31に作用させる負圧を一定とした場合、酸素富化膜31の温度が高くなればその透過流量は増大し、酸素富化膜31透過後の空気の酸素濃度は低下する。逆に温度が低くなれば透過流量が低下し、酸素富化膜31透過後の空気の酸素濃度は高くなる。そして酸素富化膜31透過後の空気の酸素濃度と透過流量との積で決定される酸素富化空気の供給量は、一般的に温度が高いほど増大する傾向にある。したがって、酸素富化膜31近傍の環境温度が変動すると、酸素富化膜31の透過流量が変動して酸素富化空気の流量が変動する。
【0015】
そこで、本実施形態では、図1に示すように、酸素富化膜31の温度またはその近傍の雰囲気温度を検知する温度検知手段32と、酸素富化膜31またはその近傍の雰囲気を加熱する加熱手段33を設けて、酸素富化手段3の酸素富化膜31の温度またはその近傍の雰囲気温度が予め設定した温度に保持されるようにしている。
【0016】
温度検知手段32は、例えば、サーミスタ321で構成され、酸素富化膜31および換気ファン34を収納するケース35の内部に設置されて酸素富化膜31近傍の雰囲気温度を常時検知するようになっている。加熱手段33は、例えば、電熱線、ランプやPTC等のヒータ331で構成され、上記サーミスタ321と同様にケース35の内部に設置されており、サーミスタ321およびヒータ331と電気的に接続されている制御部によってサーミスタ321で検知した温度に応じて酸素富化膜31またはその近傍の雰囲気をヒータ331で加熱するようにしている。なお、サーミスタ321およびヒータ331はそれぞれ酸素富化手段3の酸素富化膜31近傍に設置され、酸素富化膜31やその近傍の雰囲気温度を検知し加熱することができれば、それらの設置箇所は上記の箇所に限定されるものではない。
【0017】
設定温度は、好ましくは酸素富化手段3が設置される屋内よりも高い温度、例えば、40℃〜50℃の間の一定温度に設定しておくことが好ましい。これによって、ヒータ331の電源のオン/オフで温度コントロールが可能になるからである。仮に50℃に設定した場合、サーミスタ321で検知した温度が50℃未満であれば、検知温度が50℃になるまでヒータ331の電源をオン状態にしてケース35内部を加熱して酸素富化膜31の温度またはその近傍の雰囲気温度を上げるようにする。そして検知温度が50℃になればヒータ331の電源をオフ状態にする。これを繰り返すことで酸素富化手段3の酸素富化膜31の温度またはその近傍の雰囲気温度を一定範囲内で温度コントロールが可能になる。酸素富化空気の供給量は、その温度範囲内の酸素富化膜31に対応した流量になるため、酸素富化空気の流量のバラツキが抑制される。
【0018】
通水管1の気体導入部8はエジェクタ構造となっており、ポンプ2の駆動により発生した水流が通過すると負圧が発生し、この負圧を導入配管4から酸素富化手段3の酸素富化膜31に作用させることで、酸素富化手段3で生成された酸素富化空気を導入配管4から通水管1に導入するようにしている。通水管1に酸素富化空気が導入されると、通水管1内を流れる浴槽水Wに酸素富化空気が混入して気液混合水が生成する。この気液混合水は通水管1に導入される酸素富化空気の流量のバラツキが抑制されることによりポンプ2にエアロックが生じるような高い気体比率とはならない。
【0019】
ポンプ2と吐出口7の間の通水管1には溶解タンク5が配設されており、溶解タンク5内において蛇行した経路に気液混合水を通過させたり、気液混合水を攪拌したりすることで浴槽水Wに酸素富化空気を溶解させて気体溶解水を生成している。
【0020】
溶解タンク5で生成された気体溶解水は、吐出口7から浴槽9内に吐出される。
【0021】
以上の構成の気体溶解水供給装置は、ポンプ2にエアロックが生じる問題がなく、快適に駆動させることができる。また、酸素富化空気の流量のバラツキの抑制にあたり、真空ポンプや余剰空気を排出する別経路を設置する必要がなくコスト安になるほか、真空ポンプや別経路の設置空間を確保することも不要になり、装置としての小型化設計が可能になる。
【0022】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。例えば、本発明の気体溶解水供給装置を浴槽に適用した場合を説明したが、シャワー装置等に適用してもよい。シャワー装置に適用する場合には、例えば、通水管を水道管に連結して水道管からの水道水に酸素富化空気を導入し、溶解タンクを経てシャワーヘッドから気体溶解水を吐出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態である浴槽用の気体溶解水供給装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1 通水管
2 ポンプ
3 酸素富化手段
31 酸素富化膜
32 温度検知手段
321 サーミスタ
33 加熱手段
331 ヒータ
34 換気ファン
35 ケース
4 導入配管
5 溶解タンク
6 吸入口
7 吐出口
8 気体導入部
9 浴槽
W 浴槽水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水管と、通水管の途中に設けられて通水管内の水を送液し水流を発生させるポンプと、酸素富化膜を有し酸素富化空気を生成する酸素富化手段と、この酸素富化手段で生成された酸素富化空気を通水管に導入する導入配管と、導入配管の導入口の下流側の通水管に設けられて通水管に導入された酸素富化空気を水に溶解させる溶解タンクと、溶解タンクの下流側に設けられて気体を溶解させた水を吐出する吐出口とを備え、通水管の水流で発生する負圧を導入配管から酸素富化手段に作用させて酸素富化手段で生成された酸素富化空気を導入配管から通水管に導入し、導入された酸素富化空気を溶解タンクで水に溶解して気体溶解水を生成しこれを吐出口から吐出する気体溶解水供給装置であって、前記酸素富化手段には、酸素富化膜の温度またはその近傍の雰囲気温度を検知する温度検知手段と、酸素富化膜またはその近傍の雰囲気を加熱する加熱手段が設けられており、酸素富化手段の酸素富化膜の温度またはその近傍の雰囲気温度が予め設定した温度に保持されるように温度検知手段で検知した温度に応じて酸素富化膜またはその近傍の雰囲気を加熱手段で加熱することを特徴とする気体溶解水供給装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−104874(P2010−104874A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277260(P2008−277260)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】