説明

気体溶解装置

【課題】水などの液体の流下速度や通過流量の低下を抑制すると共に、かかる液体への酸素の溶解を効率よく行い得る気体溶解装置を提供すること。
【解決手段】本発明の気体溶解装置によれば、容器体内を流下する液体は、第1整流板によって整流された結果、略螺旋状に流下するので、容器体内の天井から底部へ向かう方向に直下する流下する場合に比べて、容器体内に充填される気体と該容器体内を流下する液体との接触時間を増やすことができる。また、第1整流板によって整流された結果、その端縁部を伝うことにより、薄い液膜の滝状に流下されるので、液体が第1整流板により整流されることなく流下する場合に比べ、容器体内を流下する液体と容器体内に充填される気体との接触面積が増大される。よって、液体への気体の溶解量をより有効に向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に気体を溶解させる気体溶解装置に関し、特に、液体の流下速度や通過流量の低下を抑制して、十分な量の液体を効率よく処理することができる気体溶解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川や湖沼などの水域では、その周辺地域に建設される工事や事業所などの各種施設から排出される産業排水や一般家庭から排出される生活排水に含まれるリン化合物や窒素化合物などの有機物が過剰に蓄積し、この蓄積によりヘドロ等の有害な堆積有機物が大量発生して、その水が汚濁する水質汚染が問題となっている。
【0003】
このような水域における水質の改善を図る方法として、近年、有機物を分解する微生物によって水質汚染が進行した水域から、過剰な有機物を除去又は減少させる方法が提案されている。
【0004】
例えば、特開2000−317479号公報(特許文献1)には、被浄化水域から取水した水を浄化通路に通し、その浄化通路において微生物を供給し、かかる微生物によって浄化流路を通過する水に含まれる有機物を分解し、有機物の低減された水を被浄化水域へ送水することによって、被浄化水域の浄化を図る方法が記載されている。
【0005】
ところで、特許文献1に記載される方法では、微生物だけでなく酸素を浄化流路に供給し、浄化流路内にて微生物を増殖させることによって、有機物の効率的な分解を図っている。特許文献1では、浄化流路内を流通する水を取水し、取水した水を酸素溶解装置(気体溶解装置)に通すことによって、水中に酸素(気体)を高濃度に溶解させ、その高濃度に酸素が溶解された処理水(酸素溶解水)を再度浄化流路内に送水することによって行われている。
【0006】
ここで、従来の酸素溶解装置について説明する。図7は、従来の酸素溶解装置100の部分断面図である。酸素溶解装置100は、耐圧性を有する容器体102を備え、その容器体102の上部左側には、酸素供給源(図示せず)に一端側が連結される酸素供給パイプ103の他端側が連結されている。このため、容器体102内へ酸素供給源からの酸素(酸素ガス)の供給が酸素供給パイプ103を経由して開始されると、かかる酸素供給により容器体102内が大気圧以上に加圧される。
【0007】
容器体102の上部略中央には、水(例えば、被浄化水域としての河川や湖沼などから取水した水)を容器体102内へ流入させるための流入管104が連結されている。流入口104aは、流入管104を通過した水を容器体102内へ流入させるための開口である。
【0008】
また、容器体102の上部右側には、容器体102の底部に貯留した水を容器体102の外へ流出させるための流出管105が連結されており、容器体102の底部へ向けて演出された流出管105の下端には、流出口105aが開口されている。容器体102の底部に貯留された水は、この流出口105aから、流出管105を通過して流出される。
【0009】
一方、容器体102内の上部には、所定間隔を隔てつつ互いに対向する上下一対の拡散板106,107が配設されている。これら一対の拡散板106,107には、その厚さ方向に多数の小孔106a,107aが穿設されており、一方の拡散板106における各小孔106aは、他方の拡散板107における各小孔107aの穿設位置とずれた位置にそれぞれ穿設されている。
【0010】
なお、容器体102の側部右側には、液面高さ検出器108が配設されている。この液面高さ検出器108は、容器体102の側壁外面に縦方向に配設されたガラス管や塩ビ管から構成される水位ゲージ108aを備え、その水位ゲージ108a内には、フロート(図示せず)が設けられている。
【0011】
容器体102内に貯留される水の液面高さに応じてフロートが水位ゲージ108a内を上昇又は下降し、そのフロートの位置を検出器108b,108cのいずれか一方が検出した場合には、容器体102内の圧力を調整するか、流出管105の開閉バルブ(図示せず)で流出流路を開閉することにより、水の流出量を調節する。これにより、容器体102内の水の液面高さ、即ち、容器体102内の空間を占有する酸素(気体)と水(液体)との割合を一定に保ち、得られる処理水における溶存酸素濃度を安定化すると共に、酸素が流出口105aから漏れ出すことを防止する。
【0012】
この酸素溶解装置100によれば、流入口104aから水が容器体102内へ流入されると、かかる流入口104aから落下した水が拡散板106へ衝突し、その拡散板106の各小孔106aの縁部を伝って多数の水滴となって、拡散板106から滴下される。この拡散板106から滴下した水は、同様に、拡散板107へ衝突し、その拡散板107の各小孔107aの縁部を伝ってさらに細かな多数の水滴となって、容器体102の底部へ滴下される。
【0013】
このように、流入口104aから流入した水が拡散板106,107により細かな水滴とされることにより、かかる水と容器体102内の酸素との接触面積が拡大されるので、かかる水に溶解される酸素量を向上させることができ、結果として、得られる処理水(酸素溶解水)中の溶存酸素濃度を向上させることができるのである。しかも、容器体102内は、酸素により加圧されているので、かかる加圧により容器体102内の水に溶解される酸素量を更に向上させることができる。
【特許文献1】特開2000−317479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述した酸素溶解装置100のように、水を細かな水滴として、該水滴に溶解される酸素量を向上させるために、容器体102内に拡散板106,107を配設する構成では、流入口104aから流入させる水量が適量を超えてしまうと、小孔106a,107aを通過した水は、水滴ではなく、水滴の連なりによる水柱として容器体102の底部へ落下することになる。このように、容器体102の底部へ落下する水の形状が水滴から水柱状となってしまった場合には、酸素との接触面積が減少するため、水へ溶解される酸素量が低減し、得られる処理水(酸素溶解水)中の溶存酸素濃度が低下するという問題点があった。
【0015】
その一方で、小孔106a,107aを通過した水を、水滴として容器体102の底部へ滴下されるためには、流入口104aから流入させる水量を適量に制限する必要があり、かかる制限によって、酸素溶解水の生成効率が悪いという問題点があった。
【0016】
さらに、流入口104aから流入した水が拡散板106,107により堰き止められ、水の通過が制限されるので、その分、水の流下速度及び通過流量が低下して、十分な水量を処理することができないという問題点があった。
【0017】
また、流入口104aから流入した水が拡散板106,107により堰き止められ、拡散板106,107と容器体102内の天井との間の空間が水により充満された場合には、この充満する水により酸素供給パイプ103の供給口が塞がれて、容器体102内へ酸素を供給することができないという問題点があった。その結果、容器体2内における酸素濃度(酸素ガスの濃度)の低下によって水滴に溶解される酸素量が低減し、得られる処理水(酸素溶解水)中の溶存酸素濃度が低下するという問題点があった。
【0018】
さらに、河川や湖沼などから取水した水には、ゴミなどの異物が含まれているため、かかる異物が拡散板106,107の各小孔106a,107aに引っ掛かり、拡散板106,107が目詰まりするという問題点があった。
【0019】
拡散板106,107に目詰まりが生じた場合には、容器体102を開封して異物の除去作業を行う必要があるため、その分、酸素溶解装置100の維持コストが嵩むという問題点があった。また、容器体102を開封可能に構成した場合には、構造が複雑となるため、その分、容器体102の製造コストが嵩むばかりか、酸素を加圧して充填するという耐圧密閉容器としての信頼性が低下するという問題点があった。
【0020】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、水などの液体の流下速度や通過流量の低下を抑制すると共に、かかる液体への酸素の溶解を効率よく行い得る気体溶解装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的を達成するために、請求項1記載の気体溶解装置は、気体が大気圧以上に加圧されて充填される容器体と、その容器体内に外部から液体を流入させ前記気体を前記容器体内で気液接触させる流入管と、前記気液接触によって前記気体が溶解し前記容器体の底部に落下した気体溶解液を外部へ流出させる流出管とを備えたものであって、前記流入管に連通され前記容器体内へ前記液体を吐出する吐出口と、その吐出口から吐出された前記液体の流路であって、前記容器体の天井から底部へ向かう流路を遮るように配置された第1整流板とを備え、その第1整流板は、前記容器体の天井から底部へ向かう方向に流下する前記液体を、略螺旋状の軌跡に流下させるように構成されている。
【0022】
請求項2記載の気体溶解装置によれば、請求項1記載の気体溶解装置において、前記吐出口は、前記容器体内の天井方向を指向して開口され、前記液体を前記容器体内の天井方向へ向けて噴き上げるように構成されており、前記第1整流板は、前記流入管の外周壁から突出して形成されている。
【0023】
請求項3記載の気体溶解装置によれば、請求項2記載の気体溶解装置において、前記吐出口は、先端へ向けて先細りするテーパー状に形成されている。
【0024】
請求項4記載の気体溶解装置は、請求項2又は3に記載の気体溶解装置において、前記容器体内の天井は、略球状に湾曲して形成されている。
【0025】
請求項5記載の気体溶解装置は、請求項1から4のいずれかに記載の気体溶解装置において、前記第1整流板は、下降傾斜する少なくとも1枚の羽根部を備えるものであり、前記第1整流板が複数配設される場合、隣接する前記第1整流板における前記羽根部は、それぞれ、互いに反対方向の下降傾斜を有している。
【0026】
請求項6記載の気体溶解装置は、請求項1から5のいずれかに記載の気体溶解装置において、前記容器体の内周壁からフランジ状に突出して形成される第2整流板を備えている。
【0027】
請求項7記載の気体溶解装置は、請求項6記載の気体溶解装置において、前記吐出口は、前記容器体内の天井方向を指向して開口され、前記液体を前記容器体内の天井方向へ向けて噴き上げるように構成されており、前記第1整流板は、前記流入管の外周壁から突出して形成されており、前記容器体における天井に最も近い高さ位置に前記第2整流板を配設し、その第2整流板に隣接させて、該第2整流板の内周の径より大きい外径を有する第1整流板を配設する。
【0028】
請求項8記載の気体溶解装置は、請求項6又は7に記載の気体溶解装置において、前記第1整流板と前記第2整流板との両方を備える場合、前記容器体における底部に最も近い高さ位置に前記第2整流板を配設する。
【0029】
請求項9記載の気体溶解装置は、請求項1から8のいずれかに記載の気体溶解装置において、前記第1整流板又は前記第2整流板の端縁部は、上面視において、略波形状に曲折している。
【0030】
請求項10記載の気体溶解装置は、請求項1から9のいずれかに記載の気体溶解装置において、前記容器体の断面方向に配設され、液体不透過領域とその液体不透過領域より小さい液体透過領域とを有する液溜まり部材を備え、その液溜まり部材は、前記容器体の底部に貯留される前記気体溶解液の液面高さの上限と、前記容器体の底面に最も近い前記第1整流板又は前記第2整流板との間であって、前記容器体の底面に最も近い前記第1整流板又は前記第2整流板より、前記容器体の底部に貯留される前記気体溶解液の液面高さの上限に近い高さ位置に位置される。
【0031】
請求項11記載の気体溶解装置は、請求項10記載の気体溶解装置において、前記液溜り部材における前記液体不透過領域が、前記容器体における断面方向略中央領域を占有する。
【0032】
請求項12記載の気体溶解装置は、請求項1から11のいずれかに記載の気体溶解装置において、前記容器体の底面は、周縁から中央に向けて隆起する隆起部を有する。
【0033】
請求項13記載の気体溶解装置は、請求項12記載の気体溶解装置において、前記流出管に連通され前記容器体内の底部に貯留された前記気体溶解液を該流出管へ導入する流出口を備え、前記流出口は、前記容器体の底面における前記隆起部の上方に位置される。
【0034】
請求項14記載の気体溶解装置は、請求項1から13のいずれかに記載の気体溶解装置において、前記流入管又は前記流出管の少なくとも一方は、前記容器体の側壁から該容器体内へ貫入され、その貫入部から前記容器体内の天井方向へ向けて延出されている。
【発明の効果】
【0035】
請求項1記載の気体溶解装置によれば、流入管を通過した液体は、該流入管に連通された吐出口から、気体が大気圧以上に加圧されて充填される容器体内へ吐出される。ここで、容器体内へ吐出された液体の流路であって、容器体の天井から底部へ向かう流路には、その流路を遮るように第1整流板が配置されており、吐出口から吐出されて容器体の天井から底部へ向けて流下する液体は、該第1整流板によって略螺旋状の軌跡に流下される。
【0036】
よって、容器体内を流下する液体は、容器体内の天井から底部へ向かう方向に直下する流下する場合に比べて、移動距離及び滞空時間が増える。その結果、容器体内に大気圧以上に加圧されて充填される気体と、該容器体内を流下する液体との接触時間を増やすことができるので、液体への気体の溶解量を有効に向上させることができるという効果がある。
【0037】
また、容器体内における天井から底部へ向かう方向に流下する液体は、第1整流板によって整流され、その端縁部を伝うことにより、薄い液膜の滝状に流下される。このように、第1整流板による整流によって、容器体内を流下する液体が薄い液膜の滝状として流下されるので、液体が第1整流板により整流されることなく流下する場合に比べ、容器体内を流下する液体と容器体内に充填される気体との接触面積が増大されるので、液体への気体の溶解量をより有効に向上させることができるという効果がある。
【0038】
そのため、多数の小孔が穿設された拡散板を容器体内へ設けなくても、液体と気体との接触面積を確保して、気体を液体に高濃度に溶解させることができる、よって、拡散板を省略した場合には、ゴミなどの異物が引っ掛かり目詰まりすることもないので、目詰まりを解消するためのメンテナンスを不要として、その分、気体溶解装置の維持コストを抑制することができるという効果がある。
【0039】
また、拡散板を省略した場合には、従来の気体溶解装置のように、拡散板により液体(水)の通過が制限されて、液体(水)の流下速度及び通過流量が低下することがないので、十分な量の液体を効率良く処理することができるという効果がある。また、拡散板の目詰まりを解消するべく容器体を開封可能に構成することがないので、容器体の構造を簡素化して、製造コストを抑制することができるという効果があると共に、耐圧密閉容器としての信頼性を確保することができるという効果がある。
【0040】
請求項2記載の気体溶解装置によれば、請求項1記載の気体溶解装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。流入管を通過した液体は、吐出口から容器体内の天井方向へ向けて吐出される。このように、液体が吐出口から容器体内の天井方向へ向けて吐出される場合、吐出口から吐出される液体の少なくとも一部は、吐出口の口径よりも拡がりつつ、気体の充填された容器体の天井方向へ向けて略噴水状に噴き上げられる。かかる噴き上げの結果、液体と容器体内に充填された気体との接触面積が増大され、液体への気体の溶解量を有効に向上させることができるという効果がある。
【0041】
なお、従来の気体溶解装置では、容器体内に貯留される水の液面高さが何らかの理由により上昇し、複数の小孔が穿設された拡散板が水没すると、流入口から流入した水を水滴状とすることができなくなるため、その水へ気体を十分に溶解させることが困難であった。これに対し、請求項2記載の気体溶解装置によれば、吐出口が容器体内の天井方向を指向して開口されているので、容器体内に貯留される液面高さが何らかの理由により上昇して、吐出口が液中に沈没したとしても、かかる吐出口から液体を吐出させることにより、液体を容器体の天井方向へ向けて略噴水状に噴き上げることができるので、液体と容器体内に充填された気体との接触面積が増大され、液体への気体の溶解量を有効に向上させることができるのである。
【0042】
また、第1整流板が流入管の外周壁から突出して形成されているので、吐出口から上方へ噴き上げられず、吐出口の周縁部から溢れ出て、流入管の外周壁を伝って流下される液体は、この第1整流板によって整流され、該第1整流板の端縁部を伝うことにより、薄い液膜の滝状となって流下される。よって、容器体内を流下する液体と容器体内に充填される気体との接触面積が増大されるので、液体と容器体内に充填された気体との接触面積が増大され、液体への気体の溶解量を有効に向上させることができると共に、流入管から容器体内へ流入した液体を無駄なく処理することができるという効果がある。
【0043】
請求項3記載の気体溶解装置によれば、請求項2記載の気体溶解装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。吐出口が、先端へ向けて先細りするテーパー状に形成されているので、かかる吐出口からは液体が広く拡散しつつ容器体内へ吐出される。よって、略同一径の筒状である吐出口を用いた場合に比べ、容器体内へ吐出された水と容器体内に充填される気体との接触面積が増大されるので、液体への気体の溶解量を有効に向上させることができるという効果がある。
【0044】
また、吐出口が略同一径の筒状である場合に比べ、液体の吐出速度が増加するので、吐出の際における液体の飛距離が増大し、吐出された液体と容器体内に充填される気体との接触時間が確保され、その結果として、液体への気体の溶解量を有効に向上させることができるという効果がある。
【0045】
また、例えば、容器体の内周壁からフランジ状に突出する第2整流板が形成されている場合には、容器体内の天井へ到達し容器体の内壁に沿って流下された液体が、該第2整流板によって整流され、該第1整流板の端縁部を伝うことにより、薄い液膜の滝状となって流下されることになる。よって、吐出速度の向上の結果、吐出口から吐出された液体を容器体内の天井へ確実に到達させることができるので、天井に到達することなく落下する液体が低減され、第2整流板による整流により薄い液膜の滝状となって流下される液体が増加されることになり、容器体内を流下する液体と容器体内に充填される気体との接触面積が増大され、液体への気体の溶解量を有効に向上させることができる。
【0046】
請求項4記載の気体溶解装置によれば、請求項2又は3に記載の気体溶解装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。容器体内の天井が略球状に湾曲して形成されているので、吐出口から噴き上げられた液体が容器体内の天井に衝突した場合には、かかる液体を略球状の湾曲によって案内し、内周壁へ向けて移動させることができるという効果がある。ここで、例えば、容器体の内周壁からフランジ状に突出する第2整流板が形成されている場合には、吐出口から吐出された液体をかかる第2整流板による整流によって薄い液膜の滝状となって流下させることができるので、容器体内を流下する液体と容器体内に充填される気体との接触面積が増大され、液体への気体の溶解量を有効に向上させることができる。
【0047】
請求項5記載の気体溶解装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の気体溶解装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。第1整流板が複数配設される場合には、隣接する第1整流板に設けられている下降傾斜する少なくとも1枚の羽根部が、それぞれ、互いに反対方向の下降傾斜に構成されているので、隣接した第1整流板における上方の第1整流板によって略螺旋状に流下する液体は、該上方の第1整流板の羽根部の下降傾斜とは反対方向に下降傾斜する下方の第1整流板の羽根部によって受け止められる。その結果、下方の第1整流板の羽根部によって受け止められた液体は、該下方の第1整流板によって再度整流されて、薄い液膜の滝状として略螺旋状の軌跡に流下される。よって、容器体内を流下する液体との接触時間が確実に確保され、液体への気体の溶解量をより有効に向上させることができるという効果がある。
【0048】
なお、請求項5における「隣接する第1整流板」とは、第1整流板のみの関係において隣接するということを意図するものであり、例えば、2枚の第1整流板の間に他の整流板が介在されている場合であっても、これらの2枚の第1整流板が「隣接する第1整流板」であることを意図する。
【0049】
請求項6記載の気体溶解装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の気体溶解装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。容器体内には、該容器体の内周壁からフランジ状に突出する第2整流板が形成されているので、容器体内の内周壁に沿って流下する液体は、第2整流板によって整流され、該第2整流板の端縁部を伝うことにより、薄い液膜の滝状となって流下されることになる。その結果、容器体内を流下する液体と容器体内に充填される気体との接触面積が増大され、液体への気体の溶解量を有効に向上させることができるという効果がある。
【0050】
請求項7記載の気体溶解装置によれば、請求項6記載の気体溶解装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。容器体の内周壁からフランジ状に突出する第2整流板は、容器体における天井に最も近い高さ位置に配設されている。そして、かかる第2整流板に隣接して、流入管の外周壁から突出して形成される第1整流板が配設されている。ここで、該第1整流板の外径は、容器体内における上方(天井側)に隣接する第2整流板の内周の径より大きいので、第2整流板の端縁部を伝って流下する液体の少なくとも一部は、第1整流板によって受け止められ、第1整流板によって再度整流される。
【0051】
よって、流入管の吐出口から天井方向に噴き上げられた液体の少なくとも一部は、容器体内の天井へ到達すると該容器体の内壁に沿って流下されて、第2整流板によって整流された後、第1整流板によって整流され、薄い液膜の滝状として略螺旋状の軌跡に流下されるという経路を辿る。よって、容器体内を流下する液体との接触時間が確実に確保され、液体への気体の溶解量をより有効に向上させることができるという効果がある。
【0052】
請求項8記載の気体溶解装置によれば、請求項6又は7に記載の気体溶解装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。容器体内に第1整流板と第2整流板との両方を設ける場合には、該容器体における底部に最も近い高さ位置に第2整流板を配設されるので、容器体内の内周壁を伝って流下する液体を、最終的に、第2整流板によって整流し、薄い液膜の滝状に流下させることができる。よって、容器体内の内周壁を伝って流下する液量を低減させて、容器体内を流下する液体と容器体内に充填される気体との接触面積を増大させることができ、その結果、液体への気体の溶解量を有効に向上させることができるという効果がある。
【0053】
請求項9記載の気体溶解装置によれば、請求項1から8のいずれかに記載の気体溶解装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。第1整流板又は前記第2整流板の端縁部は、上面視において、略波形状に曲折されているので、端縁部が曲折されていない場合に比べ、端縁部の長さをより長くすることができる。その結果、そのように長くなった長さの分だけ、端縁部を伝って滝状に流下する液膜の幅が広くなり、結果として、容器体内を流下する液体と容器体内に充填される気体との接触面積を増大させることができる。よって、液体への気体の溶解量をより有効に向上させることができるという効果がある。
【0054】
請求項10記載の気体溶解装置によれば、請求項1から9のいずれかに記載の気体溶解装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。容器体内には、液体不透過領域とその液体不透過領域より小さい液体透過領域とを有する液溜まり部材が該容器体の断面方向に配設されている。ここで、かかる液溜まり部材は、容器体内の底部に貯留される気体溶解液の液面高さの上限と、該容器体の底面に最も近い第1整流板又は第2整流板との間であって、該容器体の底面に最も近い第1整流板又は第2整流板より、容器体の底部に貯留される気体溶解液の液面高さの上限に近い高さ位置に配設されているので、容器体の底面に最も近い第1整流板又は第2整流板を伝って流下する液体(気体溶解液)の多くは、この液溜まり部材の多くを占める液体不透過領域によって一旦受け止められた後、液体透過領域から落下し、容器体内の底部に貯留される。
【0055】
よって、容器体の天井から底部へ向かう方向に流下する液体と該容器体の底部に既に貯留されている液体との衝突エネルギーが緩和されるので、容器体の底部に既に貯留されている液体に溶解されている気体(溶存気体)が強い衝突エネルギーの付与によって液相から気相へ放出されてしまうことを防止でき、その結果として、高濃度に気体が溶解された気体溶解液を得ることができるという効果がある。
【0056】
請求項11記載の気体溶解装置によれば、請求項10記載の気体溶解装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。液溜まり部材における液体不透過領域は、容器体における断面方向略中央領域を占有するように設けられている。一般的に、第1整流板による整流によって略螺旋状の軌跡で流下される液体は、鉛直方向に下降するにつれて、螺旋における旋回半径が次第に減少する傾向にあるので、液溜まり部材における液体不透過領域を容器体における断面方向略中央領域を占有するように設けることによって、下降に伴う旋回半径の減少によって液体が一箇所近傍に集中して衝突することを防止することができる。よって、容器体の底部に既に貯留されている気体溶解液に溶解されている気体(溶存気体)が強い衝突エネルギーの付与によって液相から気相へ放出されてしまうことを防止でき、その結果として、高濃度に気体が溶解された気体溶解液を得ることができるという効果がある。
【0057】
請求項12記載の気体溶解装置によれば、請求項1から11のいずれかに記載の気体溶解装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。容器体の底面には、周縁から中央に向けて隆起する隆起部が形成されている。容器体内の圧力によってかかる隆起部を凹ませることが可能となるので、底部の耐圧性を高めることができるという効果がある。
【0058】
請求項13記載の気体溶解装置によれば、請求項12記載の気体溶解装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。容器体の底面に形成されている隆起部の上方に、容器体内の底部に貯留された気体溶解液を流出管へ導入するための流出口が位置されている。よって、流入管から流入される液体にゴミなどの異物が含まれている場合には、かかるゴミは、底面の隆起部の周囲に形成される凹部に蓄積され、隆起部の上方に位置する流出口からゴミなどの異物を排出することを防止できるという効果がある。
【0059】
請求項14記載の気体溶解装置によれば、請求項1から13のいずれかに記載の気体溶解装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。流入管又は流出管の少なくとも一方は、容器体の側壁から該容器体内へ貫入されているので、流入管や流出管が容器体の天井から貫入されていた従来の気体溶解装置に比べ、気体溶解装置全体としての重心を低くすることができる。その結果、気体溶解装置の設置状態を安定化させることができるので、かかる気体溶解装置の土台となるベースを小型化することが可能となる。よって、ベースが小型化される分、材料コストを低減することができ、気体溶解装置全体としての製造コストを低減することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1〜図3を参照して、酸素溶解装置1の全体構成について説明する。
【0061】
図1は、本発明の気体溶解装置である酸素溶解装置1の部分断面図であり、図2は、酸素溶解装置1の部分断面斜視図である。また、図3(a)〜(e)は、それぞれ、図1におけるIIIa−IIIa線、IIIb−IIIb線、IIIc−IIIc線、IIId−IIId線、およびIIIe−IIIe線を通る断面を上面視した場合の断面図である。なお、図1では、流入管4及び流出管5を容器体2内に支持し固定する固定部材の図示が省略されおり、図2では、流出管5の図示が省略されている。
【0062】
酸素溶解装置1は、例えば、河川や湖沼などの被浄化水域から取水した水(汚濁水)に、酸素を高濃度に溶解させ、得られた処理水(以下、酸素溶解装置1によって処理されて得られた処理水を「酸素溶解水」と称する)を再び被浄化水域へ供給(流出、送水)するための装置である。この酸素溶解装置1を用いて被浄化水域へ酸素溶解水を供給した場合、該被浄化水域における溶存酸素(DO)量が増加し、該被浄化水域における微生物(特に、好気性微生物)が活性化される。そして、その結果、該被浄化水域における有機物の分解が促進されて、該被浄化水域の水質を向上させることができる。
【0063】
ところで、河川や湖沼などから取水した水には、例えば、枯木などの自然物だけでなく布きれなどの人工的なゴミなど種々の異物が含まれているため、従来の酸素溶解装置100(図6参照)では、異物による拡散板106,107の目詰まりが問題となっていたが、本発明の気体溶解装置である酸素溶解装置1は、異物の目詰まりに起因する不具合を解消しつつも、水への酸素の溶解量を向上させ、高濃度に酸素が溶存する酸素溶解水を大量に供給することができるように構成されている。
【0064】
この酸素溶解装置1は、土台となるベースB上に設置される装置であり、ステンレス鋼材や硬質合成樹脂(例えば、FRPなど)などの耐腐食性を有する材料で略中空円筒状に形成され、かつ、その内部の圧力を大気圧以上に加圧しても破損することのない耐圧性を有する容器体2を備えている。なお、容器体2の内面側には、樹脂コーティングを施してもよい。これにより、耐腐食性のより一層の向上を図ることができる。
【0065】
図1に示すように、この容器体2の上部(図1上側)左側には、酸素供給源(図示せず)に一端側が連結される酸素供給パイプ3の他端側が連結されている。そのため、酸素供給源からの酸素供給が開始されると、酸素供給源から酸素供給パイプ3を経由して容器体2内へ酸素(酸素ガス)が供給される。なお、この酸素供給パイプ3には、電磁バルブから構成される酸素供給弁3aが設けられている。
【0066】
また、容器体2の上部(図1上側)の略中央には、排気口(図示せず)を一端とする排気パイプ13の他端側が連結されており、必要に応じて容器体2内の気体を排気できるように構成されている。なお、この排気パイプ13には、電磁バルブから構成される排気弁13aが設けられている。
【0067】
容器体2内へ酸素(酸素ガス)を供給する場合には、排気弁13aを閉じた状態で、酸素供給弁3aの開度を調整して行う。また、酸素供給弁3aを閉じる一方で、排気弁13aを開放し、容器体2の底部に貯留された水(酸素溶解水)の液面高さを上昇させることによって、酸素溶解装置1による水処理に伴って生じた気体(例えば、窒素(窒素ガス)など)を排出する。
【0068】
また、本実施形態の酸素溶解装置1では、上述のように酸素供給パイプ3が容器体2の上部(図1上側)に連結されているので、容器体2の上方における気体が占有する空間に酸素(酸素ガス)を偏りなく充填することができ、かかる気体占有空間を水へ酸素(酸素ガス)を有効に溶解する場として利用することができる。
【0069】
なお、酸素供給源としては、例えば、酸素が圧入された高圧酸素ボンベなどが例示される。但し、必ずしもこれに限られるわけでなく、酸素供給源として、例えば、大気中の酸素(酸素ガス)を抽出して、かかる酸素を加圧して供給することができる酸素発生装置などを使用してもよい。
【0070】
また、容器体2の側壁部2bにおける略中央部には、河川や湖沼などの被浄化水域から取水した水(汚濁水)を容器体2内へ流入させるための流入管4が連結(貫入)されている。この流入管4は、図1に示すように、容器体2内で略L字状に屈曲され、その上端側(図1上側)が容器体2内の天井面2aへ向けて延出されている。
【0071】
このように、流入管4は、容器体2の側壁部2bにおける略中央部から該容器体2内へ貫入されているので、流入管が容器体の天井から貫入されていた従来の気体溶解装置に比べ、酸素溶解装置1全体としての重心が低くなるため、設置状態を安定化させることができる。その結果、酸素溶解装置1の土台となるベースBを小型化することが可能となり、その分、材料コストを低減することができ、酸素溶解装置1全体としての製造コストを低減することができる。
【0072】
流入管4は、図1に示すように、その上端側が容器体2内の天井面2aと所定の間隔を隔てて配設されており、その上端に吐出口4aが開口形成されている。この吐出口4aは、流入管4を通過した水を容器体2内へ吐出するための開口である。
【0073】
このように、本実施形態の酸素溶解装置1によれば、図1に示すように、吐出口4aが容器体2内の天井面2aを指向して開口されているので、水を容器体2内の天井面2aへ向けて略噴水状に噴き上げることができる。詳細は後述するが、略噴水状に噴き上げられつつ容器体2内へ水を流入させることにより、吐出口4aから吐出された水と容器体2内に充填された酸素(酸素ガス)との接触面積が増大するので、かかる水への酸素の溶解量を向上させることができ、結果として、酸素溶解水中の溶存酸素濃度を向上させることができる。
【0074】
そのため、本実施形態の酸素溶解装置1によれば、従来の酸素溶解装置100のように、水を水滴状とするために設けられている拡散板106,107(図6参照)の小孔106a,107aにゴミなどの異物が引っ掛かり、拡散板106,107が目詰まりすることもないので、目詰まりを解消するためのメンテナンスを不要として、その分、酸素溶解装置1の維持コストを抑制することができる。
【0075】
更に、本実施形態の酸素溶解装置1によれば、従来の酸素溶解装置100のように、拡散板106,107により水が堰き止められて、水の通過が制限されることにより、水の流下速度が低下することがないので、大量の水を効率良く処理することができる。また、拡散板106,107の目詰まりを解消するべく容器体2を開封可能に構成する必要がないので、容器体2の構造を簡素化して、その製造コストを抑制することができると共に、耐圧密閉容器としての信頼性を確保することができる。
【0076】
ここで、従来の酸素溶解装置100では、容器体102に貯留される水の液面高さが何らかの理由により上昇し、複数の小孔106a,107aが穿設された拡散板106,107が水没すると、流入口104aから流入した水を水滴状とすることができず、その水に酸素を十分に溶解させることが不可能であった。
【0077】
これに対し、本実施形態の酸素溶解装置1によれば、吐出口4aが容器体2内の天井面2aを指向して開口されているので、容器体2内に貯留される水の液面高さが何らかの理由により上昇して、吐出口4aが水没したとしても、かかる吐出口4aから水を容器体2の天井面2aへ向けて略噴水状に噴き上げることができるので、水と酸素との接触面積を確保して、水に酸素を高濃度に溶解させることができる。
【0078】
なお、吐出口4aは、図1に示すように、断面略円形に形成される容器体2の略中心部に配設させると共に、容器体2内の天井面2aの略中心部を指向して開口されているので、水を容器体2の径方向(図1左右方向や紙面垂直方向など)の一方に偏らせることなく均等に噴き上げさせることができる。
【0079】
そのため、噴き上げられた水が容器体2内の内周壁に沿って流下する水量は、容器体2の周方向全周にわたって略均等とされるので、後述する整流板6の端縁部6aのほぼ全域を使用して水を流下させることができ、その分、整流板6の端縁部6aを伝って薄い水膜となって流下される水の表面積を確保することができる。その結果、容器体2内を流下する水と容器体2内に充填される酸素(酸素ガス)との接触面積を広く確保することができ、それによって、水への酸素の溶解量が向上されるので、酸素溶解水中の溶存酸素濃度を向上させることができる。
【0080】
また、図1に示すように、流入管4の吐出口4aは、先端へ向けて先細りするテーパー形状を有している。即ち、吐出口4aの先端の内径D2は、流入管4における流入側(吐出口4aとは他端側)の内径D1より小さく構成されている。
【0081】
このように、吐出口4aをテーパー形状とすることによって、流入管4から流入する水は、吐出口4aから広く拡散しつつ容器体2内へ吐出されることになる。よって、流入管4の内径を、吐出口4aを含めて略同一の筒状に構成した場合に比べ、容器体2内へ吐出された水と容器体2内に充填されている酸素との接触面積が増大し、その結果として、酸素溶解水中の溶存酸素濃度を向上させることができる。
【0082】
また、吐出口4aをテーパー形状とすることによって、流入管4の内径を、吐出口4aを含めて略同一の筒状に構成した場合に比べ、吐出口4aから吐出される水の吐出速度(噴射速度)を上げることができる。
【0083】
かかる吐出速度の向上によって、吐出の際における水の飛距離を増大させることができるので、吐出口4aから吐出された水と容器体2内に充填される酸素との接触時間が確保され、液体への気体の溶解量が向上され、酸素溶解水中の溶存酸素濃度を向上させることができる。
【0084】
また、吐出速度の向上の結果、吐出される水を容器体2の天井面2aに確実に水を到達させ、天井面2aに到達することなく落下する水量を低減することができるので、後述する整流板6の端縁部6aのほぼ全域を使用して水を流下させることができ、その分、整流板6の端縁部6aを伝って薄い水膜となって流下される水の表面積を確保することができる。その結果、容器体2内を流下する水と容器体2内に充填される酸素(酸素ガス)との接触面積を広く確保することができ、水への酸素の溶解量が向上されるので、酸素溶解水中の溶存酸素濃度を向上させることができる。
【0085】
図1に示すように、容器体2内の上部(図1上側)であって、流入管4の吐出口4aとほぼ同じ高さ位置には、整流板6が、容器体2の内周壁全周にわたって形成されている。この整流板6は、図2に示すように、容器体2の内周壁からフランジ状に突出して形成されており、その整流板6の端縁部6a、即ち、整流板6の内周部は、図3(a)に示すように、上面視において、略円形に構成されている。
【0086】
よって、この整流板6によれば、上述した吐出口4aから噴き上げられた水は、容器体2の内周壁に沿って流下し、整流板6に到達すると、その整流板6の端縁部6aを伝って薄い水膜の滝状となって流下するので(図4参照)、容器体2内を流下する水と容器体2内に充填される酸素(酸素ガス)との接触面積を増大することができる、その結果、水への酸素の溶解量が向上されるので、酸素溶解水中の溶存酸素濃度を向上させることができる。
【0087】
なお、この整流板6は、吐出口4aより高い位置に配設してもよい。その分、整流板6の端縁部6aから、容器体2の底部に貯留された水の液面までの距離、即ち、水の落下距離(流下する距離)を長くすることができ、その結果、薄い水膜として流下する水と酸素(酸素ガス)との接触時間が増え、水への酸素の溶解量を効率的に向上させることができる。
【0088】
また、図1に示すように、整流板6の下方であって、流入管4における吐出口4aの下方には、整流板7が流入管4の外周壁から突出して形成されている。この整流板7は、図2および図3(b)に示すように、各々が流入管4の外周壁から突出する8枚の羽根7aから構成される。この羽根7aの上面(図2上側を向く面)は、容器体2の底部へ向けて傾斜する下降傾斜面として形成されている。
【0089】
ここで、この整流板7は、図3(b)に示すように、全体として、上面視において、略円形に構成されており、図1に示すように、整流板7の径は、整流板7の上方(図1上側)に位置する整流板6の端縁部6aの径より大きく構成されている。
【0090】
よって、この整流板7によれば、整流板6を伝って薄い水膜として流下する水が整流板7に到達すると、その水は、各羽根7aの下降傾斜面に沿って流れ、各羽根7aの周方向の端縁部7a1又は下降傾斜面下端の端縁部7a2を伝って薄い水膜の滝状となって流下する(図4参照)。
【0091】
一方、上述した吐出口4aから水を噴き上げたものの、天井面2aに到達することなく、整流板6の端縁部6aの内側を通って落下した水や、吐出口4aから上方に噴き出されずに吐出口4aの周縁部から溢れ出し、流入管4の外周壁を伝って流下した水もまた、整流板7により整流され、端縁部7a1又は端縁部7a2を伝って薄い水膜の滝状となって流下する(図4参照)。
【0092】
その結果、容器体2を流下する水と容器体2内に充填される酸素(酸素ガス)との接触面積を増大させることによって、水への酸素の溶解量を効率的に向上させることができると共に、流入管4から容器体2内へ流入した水を無駄なく処理することができる。
【0093】
ここで、羽根7aにおける下降傾斜面下端の端縁部7a2は、上面視において、流入管4の外周壁に対して略放射状に延びているので、端縁部7a2を伝って流下する水膜は、流入管4周りに略螺旋状(スパイラル状)に回旋しつつ流下する。
【0094】
よって、水(水膜)が鉛直方向に落下する場合に比べて、流下する水(水膜)の移動距離及び滞空時間が増えるので、流下する水膜と酸素(酸素ガス)との接触時間を増やすことができる。その結果、酸素溶解水中の溶存酸素濃度が効率的に向上されるので、高濃度に酸素が溶存される酸素溶解水を生成することができる。
【0095】
なお、整流板7の形成位置は、吐出口4aにより近い位置とすることが好ましい。例えば、流入管4の先端(図1上側)に形成してもよく、あるいは、流入管4の先端から吐出口4aの直径の略3倍以下の範囲内に形成してもよい。その分、その整流板7から、容器体2の底部に貯留された水の液面までの距離、即ち、水の落下距離(流下する距離)を長くすることができ、その結果、薄い水膜として流下する水と酸素(酸素ガス)との接触時間が増え、水への酸素の溶解量を効率的に向上させることができる。
【0096】
また、図1に示すように、整流板7の下方には、整流板8が、容器体2の内周壁全周にわたって、該内周壁からフランジ状に突出して形成されている。なお、この整流板8は、上述した整流板6と同様の形状を有している。
【0097】
よって、整流板7における各羽根7aの周方向の端縁部7a1を伝って流下する水(水膜)や、容器体2の内周壁に沿って流下する水は、整流板8によって整流され、整流板8の端縁部8aを伝って薄い水膜の滝状となって流下する(図4参照)。即ち、容器体2内を流下する水は、この整流板8によって再度整流されて薄い水膜とされるので、水への酸素の溶解量を効率的に向上させることができる。
【0098】
また、図1に示すように、整流板8の下方には、整流板9が流入管4の外周壁から突出して形成されている。この整流板9は、図2および図3(c)に示すように、各々が流入管4の外周壁から突出する8枚の羽根9aから構成されている。この羽根9aの上面(図2上側を向く面)は、容器体2の底部へ向けて傾斜する下降傾斜面として形成されている。ここで、図2に示すように、この整流板9における各羽根9aの下降傾斜面は、上述した整流板7における各羽根7aの下降傾斜面の下降方向とは反対方向に下降傾斜している。
【0099】
よって、整流板7によって整流され、流入管4周りに略螺旋状に回旋しつつ流下する水(水膜)は、整流板9における各羽根9aの下降傾斜面によって受け止められる。その結果、かかる下降傾斜面によって受け止められた水は、該下降傾斜面に沿って流れ、各羽根9aの周方向の端縁部9a1又は下降傾斜面下端の端縁部9a2を伝って薄い水膜の滝状となって流下する(図4参照)。
【0100】
なお、整流板9における各羽根9aの下降傾斜面下端の端縁部9a2を伝って流下する水(水膜)は、上述した整流板7の場合と同様に、流入管4周りに略螺旋状(スパイラル状)に回旋しつつ流下する。
【0101】
よって、容器体2内を流下する水は、この整流板9によって再度整流され、流入管4周りに略螺旋状に回旋しつつ流下する薄い水膜とされるので、水への酸素の溶解量を効率的に向上させることができるのである。
【0102】
また、図1に示すように、整流板9の下方には、整流板10が、容器体2の内周壁全周にわたって形成されている。この整流板10は、容器体2の内周壁からフランジ状に突出して形成されており、その整流板10の端縁部10a、即ち、整流板10の内周部は、図3(d)に示すように、上面視において、略円形に構成されている。
【0103】
容器体2の内周壁に沿って流下する水が整流板10に到達すると、その水は、整流板10の端縁部10aを伝って薄い水膜の滝状となって流下する(図4参照)。ここで、この整流板10は、酸素溶解装置1に配設される5枚の整流板6〜10の中で、最も下方(図1下側)に配設される整流板である。そのため、整流板9による整流の結果として容器体2の内周壁へ飛散した水など、容器体2の内周壁を伝って流下する水は、最終的に、この整流板10によって整流されて、薄い水膜として、容器体2内を流下されることになる。
【0104】
容器体2の内周壁を伝って流下する水は、酸素(酸素ガス)を溶解させる上で効率が悪いが、容器体2において最も下方(図1下側)整流板10を配置することによって、容器体2の内周壁を伝って流下する水が、酸素(酸素ガス)を溶解させる上で効率のよい薄い水膜として流下されることになる。その結果、水への酸素の溶解量を効率的に向上させることができ、酸素溶解水中の溶存酸素濃度を向上させることができる。
【0105】
なお、整流板10の端縁部10aは、図3(d)に示すように、上面視において、略波形状に曲折して構成されている。そのため、整流板10の端縁部10aが曲折部を含むことのない単純な円周である場合に比べ、端縁部10aの長さをより長くすることができる。すると、そのようにより長くなった長さの分だけ、端縁部10aを伝って滝状に流下する水膜の幅が広くなり、結果として、容器体2内を流下する水と容器体2内に充填される酸素(酸素ガス)との接触面積が増大するので、水への酸素の溶解量をさらに効率的に向上させることができるのである。
【0106】
なお、端縁部10aを「略波形状」に構成するとは、その端縁部10aを上面視において複数の曲線で滑らかに繋ぐ場合や、略三角形状を繋いで鋸刃状に構成する場合、あるいは、これらを組み合わせて構成する場合なども含まれる。
【0107】
また、図1に示すように、整流板10の下方であり、かつ、後述する水位センサ18bにより規定される液面高さの上限Lhの上方には、水溜り板11が、容器体2の内周全体にわたって形成されている。この水溜り板11は、図1および図3(e)に示すように、周縁近傍に8個の貫通孔11aが穿孔されている。吐出口4aからの流入によって、容器体2の上方から底部へ向けて(図1上側から下側へ向けて)流下する水は、最終的に、この水溜り板11における貫通孔11aを通過することによって、容器体2の底部へと落下(流下)して、該底部に貯留される。
【0108】
ここで、上述したように、この水溜り板11は8個の貫通孔11aを有しており、換言すれば、これらの貫通孔11以外の部分が、水を不透過とする構成とされている。かかる構成によって、容器体2の上方から底部へ向けて(図1上側から下側へ向けて)流下する水は、水透過領域である貫通孔11aを直接通過する一部の水を除き、水溜り板11における略中央領域などの水不透過領域11bによって一旦受け止められた後、貫通孔11aを介して容器体2の底部へと落下(流下)される。
【0109】
このように、水溜り板11は、容器体2の上方から底部へ向けて流下してきた水の多くを、一旦、水不透過領域11bによって受け止めることにより、上方から流下する水と容器体2の底部に既に貯留されている水(酸素溶解水)との衝突エネルギーを緩和することができる。よって、強い衝突エネルギーの付与によって、容器体2の底部に貯留されている酸素溶解水に溶解されている溶存酸素が、水相(液相)から気相へ放出されてしまうことを抑制することができ、結果として、高濃度に溶存酸素を含有する酸素溶解液を得ることができるのである。
【0110】
なお、上方から流下する水と容器体2の底部に既に貯留されている水(酸素溶解水)との衝突エネルギーを緩和するという目的において、水溜まり板11の高さ位置を、整流板10よりも水位センサ18bにより規定される液面高さの上限Lhに近い高さ位置とすることが好ましく、図1に示すように、液面高さLh近傍とすることがより好ましい。
【0111】
また、整流板9による整流により流入管4周りに略螺旋状に回旋しつつ流下する水は、一般的に、鉛直方向(底部へ向かう方向)に下降するにつれて、その旋回半径が減少する傾向にある。よって、水不透過領域11bが水溜り部材11の略中央領域を占有するように設けられていることにより、下降に伴う旋回半径の減少によって、流下する水が、容器体2の底部に既に貯留されている水の一箇所近傍に集中して衝突することを防止することができる。その結果、容器体2の底部に貯留されている酸素溶解水に溶解されている溶存酸素が、水相から気相へ放出されてしまうことを有効に抑制することができる。
【0112】
図1に示すように、容器体2の側壁部2bであって、容器体の底部(図1下側)近傍には、流出管5が連結(貫入)されている。この流出管5は、容器体2の底部に貯留された水(酸素溶解水)を、容器体2の外(被浄化水域など)へ排出(供給)するためのものであり、容器体2内で略L字状に屈曲され、下端側(図1下側)が容器体2の底部2へ向けて延出されている。その下端側は、容器体2の底面2cと所定の間隔を隔てて配設されており、その下端に流出口5aが開口されている。
【0113】
ここで、図1に示すように、容器体2の底面2cは、周囲から略中央へ向けて隆起した形状(隆起部2c1)を有する板状部材から構成されている。かかる隆起部2c1の形成により、底面2cとベースBとの間には空間が形成される。よって、容器体2内の圧力が大きくなった場合には、隆起部2c1が空間側に凹むので、底部の耐圧性を高めることができる。
【0114】
また、流出管5の流出口5aは、底面2cの隆起部2c1の上方に位置させるべく、上面視において、底面2cの略中央となるように配置されている。容器体2の底面2cは、周囲から略中央へ向けて隆起しているので、流出管4から流入された水にゴミなどの異物が含まれている場合には、かかる異物が底面2cの周囲に形成される凹部に蓄積される。一方で、流出管5の流出口5aは、上述したように、底面2cの隆起部2c1の上方に位置するので、ゴミなどの異物が流出口5aから流出管5および外(被浄化水域など)へ流出されることを低減できる。
【0115】
また、図1に示すように、容器体2の側壁部2bの外面であって、流入管4と反対側(図1左側)には、容器体2内の水の水面高さを検出する液面高さ検出器18が配設されている。液面高さ検出器8は、容器体2の側壁部2bの外面に縦方向(図1上下方向)に配設され、ガラスや樹脂などの光透過性材料からなる水位ゲージ18aと、その水位ゲージ18a内の液面位置を検出する1つの水位センサ18bとを主に備えて構成されている。
【0116】
水位ゲージ18aの上下端は、容器2内と連通されており、容器体2内の底部に貯留される水の液面高さが上昇又は下降した場合には、その変化に応じて水位ゲージ18a内の液面が上昇又は下降される。よって、酸素溶解装置1は、この水位ゲージ18a内の液面位置を水位センサ18bにより検出することにより、容器体2内の液面高さを検出することができる。なお、水位ゲージ18aの上端は、吐出口4aより若干下方に配設されると共に、水位ゲージ18aの下端は、流出口5aよりも若干上方に配設されている。
【0117】
水位センサ18bは、容器体2の底部に貯留される水(酸素溶解水)の液面高さの上限Lh(図1参照)に相当する高さに配置されており、容器体2の底部に貯留される水(酸素溶解水)の液面高さが、上限Lhより低い場合にはオフ状態にあり、該液面高さが上限Lhに到達するとオンされる。
【0118】
容器体2の底部に貯留される水(酸素溶解水)の液面高さが上限Lhに到達したことによって、水位センサ18bがオンされると、容器体2の底部に貯留された水(酸素溶解水)を流出管5から排水して液面高さを下降させると共に、排気弁13aを閉じた状態で、酸素供給弁3aを開放し、容器体2内に酸素を供給する。かかる制御は、タイマ(図示せず)による計時によって所定時間行われる。
【0119】
このように、水位センサ18bによる検出結果に応じて、酸素供給源からの酸素供給量を調整することにより、容器体2の底部に貯留される水(酸素溶解水)の液面高さ、即ち、容器体2内の空間を占有する酸素(酸素ガス)と水(酸素溶解水)との割合を一定に保ち、被浄化水域から取水した水へ溶解される酸素(酸素ガス)の量を安定化することができる。
【0120】
ここで、従来の酸素溶解装置100(図6参照)では、容器体102内に貯留される水の液面高さが液面高さ検出器108における上側(図6上側)の検出器108bによって検出された場合に、排気弁103bを閉鎖した状態で酸素供給弁103aを開放して、容器体102内への酸素の供給によって、容器体102内に貯留される水の液面高さを下降させている。一方で、容器体102内に貯留される水の液面高さが液面高さ検出器108における下側(図6下側)の検出器108cによって検出された場合に、酸素供給弁103aを閉鎖した状態で排気弁103bを開放して、容器体102内から気体を排気することによって、容器体102内に貯留される水の液面高さを上昇させている。
【0121】
即ち、従来の酸素溶解装置100(図6参照)では、容器体102内に貯留される水の液面高さが、検出器108bにより検出される液面高さから、検出器108cにより検出される液面高さまでの範囲で大きく移動されることになる。よって、容器体102内に貯留される水の液面高さの変化に応じて、容器体102内における酸素(酸素ガス)が占有する空間の大きさもまた大きく変化され、結果として、被浄化水域から供給された水と酸素(酸素ガス)との接触時間も大きく変化されるので、水へ溶解する酸素量もまた大きく変化することになる。
【0122】
しかし、本実施形態の酸素溶解装置1では、1つの水位センサ18bを用いて、容器体2の底部に貯留される水(酸素溶解水)の液面高さを調整するので、容器体2内における酸素(酸素ガス)が占有する空間の大きさの変動が少なく、結果として、被浄化水域から供給された水と酸素(酸素ガス)との接触時間の変動も少ないので、溶存酸素濃度の安定した酸素溶解水を得ることができるのである。
【0123】
次に、図4を参照して、上記のように構成された酸素溶解装置1によって、酸素溶解水が生成される態様について説明する。図4は、酸素溶解装置1の部分断面図である。なお、図4における2点鎖線矢印は、容器体2内における水の移動経路C1〜C8をそれぞれ表している。
【0124】
本実施形態の酸素溶解装置1によれば、吐出口4aから水が容器体2内へ吐出されると、かかる水の少なくとも一部は、吐出口4aの口径D2(図1参照)よりも拡がりつつ、容器体2内の天井面2a方向へ向けて略噴水状に噴き上げられる(移動経路C1)。その結果、容器体2内に充填された酸素(酸素ガス)との接触面積が増大し、水への酸素の溶解量を向上させることができる。
【0125】
吐出口4aから噴き上げられた水は、容器体2内の天井面2a又は内周壁へ衝突すると、内周壁に沿って容器体2内を流下される(移動経路C2)。そして、内周壁に沿って流下される水は、整流板6によって整流され、その整流板6の端縁部6aを伝うことによって、薄い水膜の滝状となって流下される(移動経路C3)。その結果、薄い水膜とされた水の両面を酸素(酸素ガス)に接触させることができるので、容器体2内に充填された酸素(酸素ガス)との接触面積が増大し、水への酸素の溶解量をより向上させることができる。
【0126】
ここで、容器体2内の天井面2aは、図4に示すように、略球状に湾曲して形成されているので、吐出口4aから噴き上げられた水(移動経路C1)が、容器体2の天井面2aに衝突した場合には、かかる水を略球状の湾曲によって外方(例えば、図4左右方向)へ案内し、内周壁へ向けて移動させることができる。その結果、容器体2の天井面2aに衝突した後、整流板6を通過せずに容器体2の底部へ直接落下する水の量を減少させることができる。
【0127】
換言すれば、整流板6を通過する水の量、即ち、薄い水膜の滝状となって流下する水の量を増大させることができるので、その分、容器体2内を流下する水と容器体2内に充填された酸素(酸素ガス)との接触面積を確実に確保して、その水への酸素(酸素ガス)の溶解量を向上させることができるのである。
【0128】
容器体2内を流下する水が、整流板6の下方(図4下側)に位置する整流板7に到達すると、かかる水は、その整流板7に設けられている8枚の羽根7aの各々における下降傾斜面に沿って流れ、かかる下降傾斜面の下端の端縁部7a2(図3(b)参照)を伝って薄い水膜の滝状となって流下される(移動経路C4)。その一方で、一部の水は、各羽根7aの周方向の端縁部7a1を伝って薄い水膜の滝状となって流下される(図示せず)。
【0129】
ここで、整流板7に到達する水としては、例えば、整流板6によって移動経路C3方向に流下された水や、吐出口4aから水を噴き上げたものの、天井面2aに到達することなく、整流板6の端縁部6aの内側を通って落下した水(図示せず)や、吐出口4aから上方に噴出されずに吐出口4aの周縁から溢れ出し、流入管4の外周壁を伝って流下した水(図示せず)などが含まれる。
【0130】
このように、整流板7により整流された結果、薄い水膜の滝状となった水の両面が酸素(酸素ガス)と接触されるので、容器体2内に充填された酸素(酸素ガス)との接触面積が増大し、水への酸素の溶解量をより向上させることができる。また、吐出口4aから溢れ出る水なども無駄なく処理することができる。
【0131】
ここで、上述したように、移動経路C4方向に流下される水は、流入管4周りに略螺旋状(スパイラル状)に回旋しつつ流下される。よって、水(水膜)が鉛直方向に落下する場合に比べて、流下する水(水膜)の移動距離及び滞空時間が増えるので、流下する水膜と酸素(酸素ガス)との接触時間を増やすことができる。その結果、酸素溶解水中の溶存酸素濃度が効率的に向上されるので、高濃度に酸素が溶存される酸素溶解水を生成することができる。
【0132】
容器体2内を流下する水が、整流板7の下方(図4下側)に位置する整流板8に到達すると、かかる水は、その整流板8によって整流され、整流板8の端縁部8aを伝うことによって、薄い水膜の滝状となって流下される(移動経路C5)。なお、整流板8に到達する水としては、例えば、整流板7における各羽根7aの周方向の端縁部7a1を伝って流下される水(図示せず)や、容器体2の内周壁に沿って流下される水(図示せず)などが含まれる。このように、容器体2内を流下する水が、整流板8によって再度薄い水膜として整流されるので、水への酸素の溶解量を効率的に向上させることができる。
【0133】
容器体2内を流下する水が、整流板8の下方(図4下側)に位置する整流板9に到達すると、かかる水は、その整流板9に設けられている8枚の羽根9aの各々における下降傾斜面に沿って流れ、かかる下降傾斜面の下端の端縁部9a2(図3(c)参照)を伝って薄い水膜の滝状となって流下される(移動経路C6)。また、一部の水は、各羽根7aの周方向の端縁部7a1を伝って薄い水膜の滝状となって流下される(図示せず)。その一方で、一部の水は、各羽根9aの周方向の端縁部9a1を伝って薄い水膜の滝状となって流下される(図示せず)。なお、整流板9に到達する水としては、例えば、整流板7の端縁部7a2を伝って略螺旋状(移動経路C4)方向に流下される水などが含まれる。
【0134】
ここで、整流板9における各羽根9aの下降傾斜面は、整流板7における各羽根7aの下降傾斜面の下降方向とは反対方向に下降傾斜するように構成されているので、移動経路C4方向、即ち、略螺旋状に流下される水(水膜)は、整流板9における各羽根9aの下降傾斜面によって受け止められる。その結果、かかる下降傾斜面によって受け止められた水は、該下降傾斜面に沿って流れ、再度薄い水膜として整流される。よって、容器体2内を流下する水が、整流板9によって再度薄い水膜として整流されるので、水への酸素の溶解量を効率的に向上させることができる。
【0135】
また、整流板9における各羽根9aの下降傾斜下端の端縁部9a2を伝って移動経路C6方向に流下される水(水膜)は、上述した整流板7から移動経路C4方向に流下する水と同様に、流入管4周りに略螺旋状に回旋しつつ流下される。よって、流下される水膜と酸素(酸素ガス)との接触時間を効率的に増やすことができ、その結果、水への酸素の溶解量を効率的に向上させることができる。
【0136】
容器体2の内周壁を流下される水(移動経路C7)は、酸素溶解装置1に配設される5枚の整流板6〜10の中で最も下方(図4下側)に配設される整流板である整流板10によって整流され、その整流板10の端縁部10aを伝うことによって、薄い水膜の滝状となって流下される(移動経路C8)。ここで、容器体2の内周壁を流下し整流板10に到達する水(移動経路C7)としては、例えば、整流板9による整流の結果として容器体2の内周壁へ飛散した水(図示せず)などが含まれる。
【0137】
このように、容器体2の内周壁を伝って流下していた水は、最終的に、この整流板10によって整流されて、薄い水膜の滝状とされて容器体2内を流下される。即ち、容器体2の内周壁を伝って流下する水のように酸素(酸素ガス)を溶解させる上で効率が悪い流下形態が、整流板10による整流によって、酸素(酸素ガス)を溶解させる上で効率のよい流下形態に変化される。その結果として、水への酸素の溶解量を効率的に向上させることができるのである。
【0138】
移動経路C1〜C8を経由した後、容器体2の底部に貯留された水、即ち、高濃度に酸素が溶解された水(酸素溶解水)は、その液面に加わる容器体2内の気体の圧力により、流出管5の流出口5内へ圧入される。そして、流出口5a内へ圧入された水は、流出管5を経由して、被浄化水域(河川、湖沼など)へと供給される。
【0139】
なお、上述した移動経路C1〜C8は、水の移動経路を模式的に表したものであり、かかる移動経路は、水の処理量やポンプ装置の出力などによって当然変動するものである。
【0140】
また、上述のように、容器体2内に流入した水に酸素が溶解されると、その水からは、自然状態において含まれていた(溶解されていた)窒素などの気体が放出される。かかる気体の放出の結果、容器体2内の酸素(酸素ガス)の濃度が低下する。特に、井戸水では、溶解されている気体のほぼ100%を窒素が占めるため、この傾向が強い。そのため、酸素溶解装置1では、水への酸素の溶解量を一定値以上に確保するべく、容器体2内に放出された窒素(窒素ガス)などを含有する気体を定期的に放出する。
【0141】
具体的には、まず、酸素供給パイプ3の酸素供給弁3aを閉じて、容器体2内への酸素供給を停止する。次いで、排気パイプ13の排気弁13aを開放する。これにより、容器体2内を、酸素供給パイプ3を介して、外気と連通させる。
【0142】
ここで、従来の酸素溶解装置100(図6参照)においても、容器体102内の気体を排出する方法は、上記と同様である。即ち、酸素供給弁103aを閉じ、排気弁103bを開放した後、流入口104aから水を流入させることにより、容器体2内に貯留される水の液面高さを上昇させ、これにより、容器体2内の気体を、酸素供給パイプ103を介して外部に押し出して排出する。
【0143】
しかし、従来の酸素溶解装置100では、流入口104aから流入した水が拡散板106,107により堰き止められ易く、拡散板106,107の上方の空間(容器体102内の天井との間の空間)に水が充填された場合には、拡散板106,107の下方の空間には未だに気体が存在するにもかかわらず、酸素供給パイプ103からは、上方の空間に充満された水のみが外部に排出されてしまい、下方の空間の気体を容器体102内から迅速に排出することができないという問題点があった。
【0144】
これに対し、本発明の酸素溶解装置1によれば、容器体2内の気体を排出する場合には、大量の水を容器体2内へ流入させても、従来の酸素溶解装置100のように、拡散板106,107により水が堰き止められることがないので、容器体2内に貯留される水の液面高さを迅速に上昇させ、容器体2内の気体を酸素供給パイプ3から外部へ高効率に排出することができる。
【0145】
以上説明したように、本実施形態の酸素溶解装置1によれば、整流板6〜10による整流によって薄い水膜として、容器体2内の酸素(酸素ガス)と接触させることにより、水への酸素(酸素ガス)の溶解量を向上させ、その結果として、高濃度に酸素が溶解された水(酸素溶解水)を生成することができる。
【0146】
特に、整流板7における各羽根7aの下降傾斜面下端の端縁部7a2を伝って流下する水、及び、整流板9における各羽根9aの下降傾斜面下端の端縁部9a2を伝って流下する水は、略螺旋状に回旋しつつ流下される。このように、水が略螺旋状に回旋しつつ流下する場合には、鉛直方向に直下する水に比べ、水の移動距離(滞空時間)が増え、水と酸素(酸素ガス)との接触時間を増やすことができるので、水への酸素の溶解量を効率的に向上させることができる。
【0147】
本実施形態の酸素溶解装置1によれば、このように水へ溶解される酸素量が向上されたことによって、容器体2内の圧力が大気圧に比較的近い圧力(例えば、大気圧+(0.001〜0.1MPa)程度)であっても、高濃度に酸素が溶解された水(酸素溶解水)を生成することができる。高圧下で酸素を水に溶解させた場合、生成された酸素溶解水を大気圧下に排出すると、水が激しく発泡するという問題が生じるが、比較的大気圧に近い圧力下で酸素溶解水を生成した場合には、かかる問題を回避することができ、好適に酸素溶解水を得ることができる。
【0148】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0149】
例えば、上記実施形態では、本発明の気体溶解装置の一例として、水に酸素を溶解する酸素溶解装置1について説明したが、本発明の気体溶解装置を、水に酸素以外の気体を溶解させる装置として構成してもよい。例えば、容器体2内に不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなど)を充填し、かかる不活性ガスを水に溶解させるように構成してもよい。この場合には、本発明の気体溶解装置は、自然状態において水に溶解されている酸素を除去(脱酸素)する不活性ガス溶解装置として構成される。
【0150】
あるいは、酸素に換えて、容器体2内にオゾンを充填し、かかるオゾンを水に溶解させるように構成してもよい。このように、オゾンを水に溶解させる装置(気体溶解装置)を用いて産業排水を処理することにより、有害物質(例えば、ダイオキシンなど)を効率的に除去又は減少させることができる。
【0151】
また、本発明の気体溶解装置において、酸素などの気体が溶解される媒体は、上記実施形態において例示した水に限定されず、種々の液体(例えば、重油などの油類)を使用してもよい。
【0152】
なお、本発明の気体溶解装置は、上述したように、水などの液体に、酸素や窒素、アルゴンなどの各種気体を溶解させるものであるが、換言すれば、例えば、水(液体)に酸素(気体)を溶解させることにより、その水に元々溶解されていた気体(例えば、窒素)を放出させる、即ち、水中(液体中)の気体を置換するものである。従って、気体溶解装置は、「液体中に含まれる気体の置換装置」と言い換えることもできる。
【0153】
また、上記実施形態では、酸素溶解装置1を、河川や湖沼などの水質浄化に使用する場合(即ち、河川湖沼浄化)を説明したが、必ずしもこの用途に限定されるものではなく、例えば、魚の養殖池や活魚を搬送するトラックに設置された養魚水槽への酸素供給用(即ち、水産養殖)に使用してもよい。あるいは、産業排水処理、畜産汚水処理、水耕(養液)栽培などに使用してもよい。
【0154】
例えば、本発明の気体溶解装置(酸素溶解装置1)と好気性微生物を用いることにより、排水の臭気防止を図ることができる。つまり、本発明の気体溶解装置(酸素溶解装置1)によって生成された酸素溶解水を排水中に排出し、排水中に含まれる好気性微生物を活性化させることによって、臭気源である硫化水素及びメチルメルカプタンの発生を抑制することができる。ここで、上記実施形態の酸素溶解装置1を用いて工場排水に対する臭気防止処理を行った際の結果を表1に示す。
【0155】
【表1】

表1に示すように、上記実施形態の酸素溶解装置1による20分の処理によって、臭気源である硫化水素及びメチルメルカプタンの量は、いずれも、処理前の約1/10及び約3/20に低減した。この結果は、上記実施形態の酸素溶解装置1に優れた臭気防止作用があることを示している。
【0156】
また、上記実施形態の酸素溶解装置1は、図1に示すように、酸素供給パイプ3が容器体2の上部に連結される構成であったが、酸素供給パイプ3の連結位置は、容器体2の上部に限定されるものではない。図5は、酸素溶解装置1の変形例を説明するための部分断面図である。図5に示すように、酸素供給パイプ3を、容器体2の側壁部2bにおける流入管4の連結(貫入)位置の近傍に配設するように構成してもよい。
【0157】
また、上記実施形態の酸素溶解装置1は、図1に示すように、流入管4は、容器体2の側壁部2bの略中央部から貫入される構成としたが、流入管4の貫入位置は容器体2の側壁部2bの略中央部に限定されるものではない。図6は、酸素溶解装置1の変形例を説明するための部分断面図である。図6に示すように、流入管4は、天井面2aから貫入される構成であってもよい。このように、流入管4を天井面2a側から貫入させる構造とした場合、容器体2内へ水を供給するためのタンクを上方に配置することができるので、タンクが上にある場合にはかかるタンクを下ろす必要がなくなり、設置コストを抑制することができる。また、容器体2内部において流入管4をL字構造にする必要がないなど、構造が簡略化されるので、製造コストを抑制することができる。なお、かかる構成とする場合には、羽根を有する整流板7,9は、例えば、容器体2の内壁(図6に示した例では、側壁部2bの略中央部)に連結(接続)された支持部材40の外周壁から突出する構成とすることができる。
【0158】
また、上記実施形態では、容器体2内に整流板6〜10を設けて酸素溶解装置1を構成する場合を説明したが、これらは例示であり、必ずしもこの構成に限定されるものではない。即ち、整流板6〜10のうちの一部の整流板を容器体2内に配設することなく酸素溶解装置1を構成することや、整流板6〜10の他に、容器体2の内周壁からフランジ状に突出する整流板又は流入管4の外周壁から突出する整流板7,9と同様の整流板を設けて酸素溶解装置1を構成することは当然可能である。
【0159】
また、上記実施形態では、容器体2内において、整流板6〜10は、上から順に、整流板6、整流板7、整流板8、整流板9、整流板10の順に設けるように構成したが、必ずしもこの順序に限定されるものではなく、適宜順序を入れ替えて配置される構成であってもよい。
【0160】
また、上記実施形態では、整流板6,8,10のように容器体2の内周壁からフランジ状に突出する整流板と、整流板7,9のように流入管4の外周壁から突出する整流板とが交互に配置されるように構成したが、この構成に限定されるものではなく、容器体2の内周壁からフランジ状に突出する2枚の整流板の間に流入管4の外周壁から突出する整流板が配置されない部分や、流入管4の外周壁から突出する2枚の整流板の間に容器体2の内周壁からフランジ状に突出する整流板が配置されない部分を含む配置構成であってもよい。
【0161】
また、上記実施形態では、整流板6,8の端縁部6a,8aは、上面視において、略円形に構成されるものとしたが、整流板10の端縁部10aと同様に、上面視において、略波形状に曲折して構成してもよい。このように、水が伝わる端縁部6a,8aを略波形状に曲折して構成することによって、端縁部6a,8aの長さをより長くすることができ、そのようにより長くなった長さの分だけ、端縁部6a,8aを伝って流下する水膜の幅が広くなるので、容器体2内を流下する水と容器体2内に充填される酸素(酸素ガス)との接触面積が増大し、水への酸素の溶解量をさらに効率的に向上させることができる。なお、整流板7の端縁部7a1,7a2や、整流板9の端縁部9a1,9a2についても同様である。
【0162】
なお、上記実施形態及び特許請求の範囲において、「フランジ状に突出して形成される」とは、例えば、整流板6,8,10のように、必ずしも上面視略円弧状に形成されている必要はなく、上面視多角形状であったり、一部が切り欠かれていたりする形状も含むという趣旨である。
【0163】
また、上記実施形態では、整流板7及び整流板9は、いずれも8枚の羽根7a,9aから構成されるものとしたが、羽根の数はこれに限定されず、少なくとも1枚の羽根から構成することができる。
【0164】
また、上記実施形態では、整流板7における羽根7a及び整流板9における羽根9aは、互いに反対方向に下降傾斜する下降傾斜面を有するものとして構成したが、同じ方向に下降傾斜する下降傾斜面を有するものとして構成してもよい。即ち、流入管4の外周壁から突出する整流板のみの関係において隣接する位置関係にある整流板の下降傾斜面の傾斜方向は、上記実施形態として例示したように、互いに反対方向に下降傾斜することに限定されず、同じ方向に下降傾斜していてもよい。
【0165】
また、上記実施形態では、整流板6,8,10を、容器体2の内周壁からフランジ状に突出する整流板として構成したが、容器体2の内周壁から突出する整流板を、該整流板を伝って流下する水が流入管4回りを略螺旋状に回旋する軌跡を描くように下降傾斜する少なくとも1枚の羽根から構成されるものとして構成してもよい。
【0166】
また、上記実施形態では、水溜り板11として、図3(e)に示す形状を例示したが、この形状に限定されるものではない。例えば、水溜まり板の周囲に切り欠けを形成し、この切り欠け部と容器体2の内周壁とによって形成される貫通部分から水を落下させるように構成してもよい。また、水溜まり板11は平板に限定されず、略中央領域から貫通孔11aへ向けて傾斜する形状としてもよい。
【0167】
また、上記実施形態の酸素溶解装置1において、水溜り板11の高さ位置は、図1に示すように、整流板10と水位センサ18bにより規定される液面高さの上限Lhとの間であって、液面高さLh近傍の高さとしたが、これに限定されず、整流板10と水位センサ18bにより規定される液面高さの上限Lhとの間に配置されていればよい。なお、上方から流下する水と容器体2の底部に既に貯留されている水(酸素溶解水)との衝突エネルギーを緩和するという目的において、水溜り板11は、整流板10と水位センサ18bにより規定される液面高さの上限Lhとの間における、整流板10より液面高さの上限Lhに近い高さ位置であることが好ましく、液面高さの上限Lh近傍の高さ位置であることがより好ましい。即ち、水溜り板11の高さ位置は、液面高さの上限Lhより上方であれば、該液面高さの上限Lhに近ければ近いほど好ましい。
【0168】
また、上記実施形態では、流入管4の吐出口4aの配設位置を整流板6とほぼ同じ高さとする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるわけではなく、吐出口4aを整流板6の高さ位置よりも上方に配置してもよく、あるいは、下方に配置してもよい。また、吐出口4aを、整流板7や整流板9より下方位置に配設してもよい。なお、この場合には、整流板7や整流板9における吐出口4aに対応する位置に開口を設け、吐出口4aから噴き上げられた水を、かかる開口を介して、整流板7や整流板9の上方へ流出させる。
【0169】
また、上記実施形態の酸素溶解装置1では、流入管4を、容器体2の側壁部2bにおける略中央部に連結(貫入)するように構成したが、流入管4の連結(貫入)位置をさらに下げて、容器体2の底部近傍とするように構成してもよい。なお、流入管4の連結(貫入)位置が、水溜り板11より下方となる場合には、水溜り板11における流入管4に対応する位置に開口を設けて、その開口に流入管4を挿通させる。このように、容器体2への流入管4の連結(貫入)位置を容器体2の底部近傍とした場合、酸素溶解装置1全体としての重心がさらに低くなり、その設置状態をさらに安定化させることができる。
【0170】
また、上記実施形態では、流入管4において吐出口4aをテーパー形状に構成したが、これに限定されるものではなく、流入管4aにおける内径を、吐出口4aを含めて一様の内向とするように構成してもよい。
【0171】
また、上記実施形態では、流入管4(吐出口4a近傍を除く)及び流出管5がほぼ等しい内径を有するものとして構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、流出管5の内径が、吐出口4a近傍を除く流入管4の内径D1(図1参照)よりも小さくなるように構成してもよい。このように、流出管5の内径を流出管4の内径D1よりも小径に構成することにより、流入管4による容器体2内への水の流入量に対して、流出管5による容器体2内からの水の流出量を抑制することができるので、容器体2内に水が貯留され易い状態を形成することができる。その結果、容器体2内の水を流出口5aに圧入して流出量を増大させるべく、容器体2内に充填される酸素(酸素ガス)圧を上げることができ、容器体2内において水への酸素の溶解量の向上を図ることができる。
【0172】
また、容器体2内の気体の圧力が何らかの理由により加圧方向へ遷移した場合でも、容器体2の底部に貯留される水の液面高さが流出口5aよりも下降し難くすることができるので、流出口5aが酸素雰囲気中に露出して、その流出口5aから酸素(酸素ガス)が外部へ漏れ出してしまうという不具合を未然に防止することができる。
【0173】
また、上記実施形態では、流入管4及び流出管5の材料について特に説明しなかったが、ステンレス鋼材や硬質合成樹脂(例えば、FRPや塩ビなど)等の耐腐食性を有する材料で構成することが好ましい。また、流入管4及び流出管5の内面側には、樹脂コーティングを施してもよい。これにより、耐腐食性を向上させることができる。
【0174】
なお、酸素供給パイプ3、排気パイプ13、整流板6〜10、水溜り板11の材質についても同様であり、ステンレス鋼材や硬質合成樹脂(例えば、FRPや塩ビなど)等の耐腐食性を有する材料で構成することが好ましい。また、酸素供給パイプ3及び排気パイプ13の内面側や、整流板6〜10及び水溜り板11の表面には、耐腐食性を向上させるために樹脂コーティングを施すことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の気体溶解装置である酸素溶解装置の部分断面図である。
【図2】酸素溶解装置の部分断面斜視図である。
【図3】(a)は、図1におけるIIIa−IIIa線を通る断面を上面視した場合の断面図であり、(b)は、図1におけるIIIb−IIIb線を通る断面を上面視した場合の断面図であり、(c)は、図1におけるIIIc−IIIc線を通る断面を上面視した場合の断面図であり、(d)は、図1におけるIIId−IIId線を通る断面を上面視した場合の断面図であり、(e)は、図1におけるIIIe−IIIe線を通る断面を上面視した場合の断面図である。
【図4】酸素溶解装置の部分断面図である。
【図5】酸素溶解装置の変形例を説明するための部分断面図である。
【図6】酸素溶解装置の変形例を説明するための部分断面図である。
【図7】従来の酸素溶解装置の部分断面図である。
【符号の説明】
【0176】
1 酸素溶解装置(気体溶解装置)
2 容器体
2a 天井面(天井)
2c1 隆起部
4 流入管
4a 吐出口
5 流出管
5a 流出口
6 整流板(第2整流板)
7 整流板(第1整流板)
7a 羽根(羽根部)
8 整流板(第2整流板)
9 整流板(第1整流板)
9a 羽根(羽根部)
10 整流板(第2整流板)
10a 端縁部
11 水溜まり部材(液溜まり部材)
11a 貫通孔(液体透過領域)
11b 水不透過領域(液体不透過領域)
Lh 液面高さの上限

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が大気圧以上に加圧されて充填される容器体と、その容器体内に外部から液体を流入させ前記気体を前記容器体内で気液接触させる流入管と、前記気液接触によって前記気体が溶解し前記容器体の底部に落下した気体溶解液を外部へ流出させる流出管とを備えた気体溶解装置において、
前記流入管に連通され前記容器体内へ前記液体を吐出する吐出口と、
その吐出口から吐出された前記液体の流路であって、前記容器体の天井から底部へ向かう流路を遮るように配置された第1整流板とを備え、
その第1整流板は、前記容器体の天井から底部へ向かう方向に流下する前記液体を、略螺旋状の軌跡に流下させるように構成されていることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項2】
前記吐出口は、前記容器体内の天井方向を指向して開口され、前記液体を前記容器体内の天井方向へ向けて噴き上げるように構成されており、
前記第1整流板は、前記流入管の外周壁から突出して形成されていることを特徴とする請求項1記載の気体溶解装置。
【請求項3】
前記吐出口は、先端へ向けて先細りするテーパー状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の気体溶解装置。
【請求項4】
前記容器体内の天井は、略球状に湾曲して形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の気体溶解装置。
【請求項5】
前記第1整流板は、下降傾斜する少なくとも1枚の羽根部を備えるものであり、
前記第1整流板が複数配設される場合、隣接する前記第1整流板における前記羽根部は、それぞれ、互いに反対方向の下降傾斜を有していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の気体溶解装置。
【請求項6】
前記容器体の内周壁からフランジ状に突出して形成される第2整流板を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の気体溶解装置。
【請求項7】
前記吐出口は、前記容器体内の天井方向を指向して開口され、前記液体を前記容器体内の天井方向へ向けて噴き上げるように構成されており、
前記第1整流板は、前記流入管の外周壁から突出して形成されており、
前記容器体における天井に最も近い高さ位置に前記第2整流板を配設し、その第2整流板に隣接させて、該第2整流板の内周の径より大きい外径を有する第1整流板を配設することを特徴とする請求項6記載の気体溶解装置。
【請求項8】
前記第1整流板と前記第2整流板との両方を備える場合、前記容器体における底部に最も近い高さ位置に前記第2整流板を配設することを特徴とする請求項6又は7に記載の気体溶解装置。
【請求項9】
前記第1整流板又は前記第2整流板の端縁部は、上面視において、略波形状に曲折していることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の気体溶解装置。
【請求項10】
前記容器体の断面方向に配設され、液体不透過領域とその液体不透過領域より小さい液体透過領域とを有する液溜まり部材を備え、
その液溜まり部材は、前記容器体の底部に貯留される前記気体溶解液の液面高さの上限と、前記容器体の底面に最も近い前記第1整流板又は前記第2整流板との間であって、前記容器体の底面に最も近い前記第1整流板又は前記第2整流板より、前記容器体の底部に貯留される前記気体溶解液の液面高さの上限に近い高さ位置に位置されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の気体溶解装置。
【請求項11】
前記液溜り部材における前記液体不透過領域が、前記容器体における断面方向略中央領域を占有することを特徴とする請求項10記載の気体溶解装置。
【請求項12】
前記容器体の底面は、周縁から中央に向けて隆起する隆起部を有することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の気体溶解装置。
【請求項13】
前記流出管に連通され前記容器体内の底部に貯留された前記気体溶解液を該流出管へ導入する流出口を備え、
前記流出口は、前記容器体の底面における前記隆起部の上方に位置されることを特徴とする請求項12記載の気体溶解装置。
【請求項14】
前記流入管又は前記流出管の少なくとも一方は、前記容器体の側壁から該容器体内へ貫入され、その貫入部から前記容器体内の天井方向へ向けて延出されていることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の気体溶解装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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