説明

気体送通ダクトの挿入材および気体送通ダクト

【課題】 例えば空調設備等のダクト、あるいは自動車エンジンの吸気ダクトのような気体送通ダクトの消音や除塵のために簡単に挿着できる挿入材、あるいは該挿入材を挿着した気体送通ダクトを提供する。
【解決手段】 上記挿入材1は、クレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙材2の一層または二層以上と、通気性多孔質シートである多孔質材3の一層または二層以上と、の積層材からなり、ダクト本体の所定個所内周に挿着して使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等の気体を通過させるために使用するダクトに挿入する挿入材および該挿入材を装着した気体送通ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば空調設備等のダクト、あるいは自動車の吸気系ダクトには、空気の流動時に発生する騒音を低減するために、ダクトの一部に消音装置や吸音材を挿入した構成が提案されている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−042499号公報
【特許文献2】特開平09−112244号公報
【特許文献3】特開2003−343373号公報
【特許文献4】特開2002−106431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成にあっては、管やダクトの一部として、表面に多数の吸音用の孔が形成された壁体や翼体を有する消音装置、あるいは繊維シート等の多孔質シートからなる吸音材を挿入する構成を採用しており、消音装置や吸音材を取り替えることが出来ないか、あるいは取り替えることが面倒であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の問題点を解決するための手段として、クレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙の一層または二層以上と、通気性多孔質シートの一層または二層以上と、の積層材からなる気体送通ダクトの挿入材を提供するものである。
上記紙は、クレープ率が10〜50%のクレープ加工および/または突起高さ0.02〜2.00mmで、かつ突起数が20〜200個/cmのエンボス加工が施されており、上記紙の通気抵抗は少なくとも0.06kPa・s/m以上であることが望ましい。
また上記通気性多孔質シートには合成樹脂が含浸されていることが望ましい。
一般的に、上記通気性多孔質シートは繊維シートである。
また上記クレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙の一層または二層以上と、上記通気性多孔質シートの一層または二層以上と、は通気性接着剤層によって接着されていることが望ましい。
また上記挿入材の通気抵抗は0.1〜5.0kPa・s/mの範囲に設定されていることが望ましい。
一般的に、上記挿入材は、挿入対象であるダクト内周形状に適合する形状に成形されているか、または、上記挿入材は一対の二つ割り分割体からなり、上記分割体を合わせると挿入対象であるダクト内周形状に適合する形状になるように形成されている。
更に本発明では、ダクト本体の所定個所内周に上記の挿入材を挿着した気体送通ダクトが提供される。
【発明の効果】
【0006】
〔作用および効果〕
クレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙2は、クレープ加工による無数の小皺、あるいはエンボス加工による無数の小突起を有するから、吸音に望ましい空気含有層が形成される。
またクレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙2は、クレープ加工による無数の小皺、あるいはエンボス加工による無数の小突起によって、伸縮性を有するので、ダクト内周形状に適合する形状に成形することが容易に可能である。
上記多孔質シート3は、上記クレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙2を補強すると同時に空気を含有するから、該クレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙2と共に優れた吸音性を本発明の挿入材1に付与する。
吸音性能と成形性の点からみて、上記クレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙2のクレープ率は、10〜50%に設定することが望ましく、またエンボス加工における突起高さは0.02〜2.00mm、突起数は20〜200個/cmに設定することが望ましく、更に吸音性性能にとっては、上記クレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙2の通気抵抗は、少なくとも0.06kPa・s/m以上に設定することが望ましい。
本発明の挿入材1は、一般に装着されるダクト4の内周形状に適合する形状に成形されるが、上記多孔質シート3に合成樹脂が含浸されていると、所望形状に成形することが容易であり、また成形形状安定性も向上する。
上記多孔質シート3としては、薄くても充分な強度がある繊維シートが最も好適に使用される。
本発明の挿入材1は、吸音性を維持するために、全体として通気性を有するべきであり、そのためには、上記クレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙2と、上記多孔質シート3とは、通気性接着剤層によって接着することが望ましく、そして吸音性能および成形性のためには、上記挿入材1の通気抵抗は、0.1〜5.0kPa・s/mの範囲に設定することが望ましい。
上記挿入材1は、挿着、取り外しを容易にするために、ダクト4の内周形状に適合する形状、あるいは該形状の二つ割り形状に成形されていることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】通気抵抗Rの測定方法を説明する説明図。
【図2】(a)〜(d)は種々の構成の挿入材を示す断面図。
【図3】実施形態の円筒形状の挿入材を示す斜視図。
【図4】実施形態の二つ割り半円筒形状の挿入材を示す斜視図。
【図5】実施形態の挿入材をダクトに挿入した状態示す説明図。
【図6】実施例の構成の挿入材を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を以下に詳細に説明する。
[クレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙]
本発明のクレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙とは、クレープ加工紙、エンボス加工紙、エンボスクレープ加工紙の何れかを云う。
上記クレープ加工紙とは、表面に無数の小皺を形成した紙である。
上記エンボス加工紙とは、表面に無数の小突起を形成した紙である。
上記エンボスクレープ加工紙とは、上記クレープ加工紙に更にエンボス加工を施して無数の小皺と小突起とを形成した紙である。
【0009】
上記クレープ加工紙は、原紙にクレープ加工を施したものであり、上記クレープ加工には、湿紙の状態でプレスロールやドクターブレード等を用いて縦方向(抄造方向)に圧縮して皺付けを行なうウェットクレープと、シートをヤンキードライヤーやカレンダーで乾燥した後、ドクターブレード等を用いて縦方向に圧縮して皺付けを行なうドライクレープとがある。上記クレープ加工紙は、クレープ率が10〜50%であることが望ましい。
ここで、該クレープ率は、
クレープ率(%)=(A/B)×100(Aは紙製造工程における抄紙速度、Bは紙の巻き取り速度)
換言すれば、該クレープ率はペーパーウェブがクレーピングで縦方向(抄造方向)に圧縮される割合である(参考:特開2002−327399号公報、特表平10−510886号公報)。
ここで、クレープ率が10%に満たないとクレープ加工紙の吸音性能が悪くなり、かつ延伸性が不十分となって成形時に皺が入り易くなる。一方、該クレープ率が50%を越えると、やはり成形時に皺が入り易くなる。
【0010】
上記エンボス加工紙は、表面に多数の凹凸が彫られたロール(エンボスロール)やプレート(エンボスプレート)を原紙に押圧して紙の表面に多数の突起を形成したものであり、該突起の突起高さが0.02〜2.00mmであり、かつ、突起数が20〜200個/cmであることが望ましい。該突起高さが0.02mmに満たないと、エンボス加工紙の吸音性能が悪くなり、かつ延伸性が不十分となって成形時に皺が入り易い。また、突起高さが2.00mmを越えても、やはり成形時に皺が入り易い。また、突起数が20個/cmに満たないと、エンボス加工紙の吸音性能が悪くなり、また延伸性が不十分となって成形時に皺が入り易い。また、突起数が200個/cmを越えても、エンボス加工紙の吸音性能が悪くなる。
また上記エンボス加工工程において、原紙にクレープ加工紙を用いれば、エンボスクレープ加工紙が得られる。
【0011】
上記クレープ加工紙や上記エンボス加工紙等に使用するパルプとしては、例えば広葉樹木材パルプ、針葉樹木材パルプ、麻パルプ、ケナフパルプ、竹パルプ、エスバルトパルプ、バガスパルプ、葦パルプ等がある。また、これら木材パルプや、非木材パルプ等の天然パルプ以外に合成繊維を40〜50%程度、混合してもよい。
【0012】
上記紙の単位質量は10〜50g/mが望ましい。単位質量が10g/mに満たない場合には成形性が低下して成形時に皺が生じ易くなり、また吸音性能も悪い。一方、単位質量が50g/mを越えると質量が増大しかつ成形性が低下する。
【0013】
また、上記紙の通気抵抗は、少なくとも0.060kpa・s/m以上であることが望ましい。
ここで、上記の通気抵抗(Pa・s/m)とは、通気性材料の通気の程度を表す尺度である。この通気抵抗の測定は定常流差圧測定方式により行われる。図1に示すように、シリンダー状の通気路W内に試験片Tを配置し、一定の通気量V(図中矢印の向き)の状態で図中矢印の始点側の通気路W内の圧力P1と、図中矢印の終点P2の圧力差を測定し、次式より通気抵抗Rを求めることが出来る。
R=ΔP/V
ここで、ΔP(=P1−P2):圧力差(Pa)、V:単位面積当りの通気量(m/m・s)である。
通気抵抗は、例えば、通気性試験機(製品名:KES−F8−AP1、カトーテック株式会社製、定常流差圧測定方式)によって測定することが出来る。
【0014】
[通気性多孔質シート]
本発明の通気性多孔質シートとして望ましい材料は、繊維シートである。
上記繊維シートの繊維材料としては、例えばポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維等の合成繊維、とうもろこしやサトウキビ等の植物から抽出された澱粉からなる生分解繊維、パルプ、木綿、ヤシ繊維、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維等の天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維等の無機繊維、あるいはこれらの繊維を使用した繊維製品のスクラップを解繊して得られた再生繊維の1種または2種以上の繊維が使用されるが、例えばガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維、ステンレス繊維等の無機繊維やポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維等のアラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維等の望ましくは融点が250℃以上の耐熱性合成繊維を使用すれば、耐熱性の極めて高い吸音性表皮材が得られる。その中でも炭素繊維は焼却処理が可能で細片が飛散しにくい点で有用な無機繊維であり、アラミド繊維は比較的安価で入手し易い点で有用な合成繊維である。
【0015】
上記繊維シートには、上記繊維材料の全部または一部として、融点が180℃以下である低融点熱可塑性繊維を使用することができる。
上記低融点熱可塑性繊維としては、例えば融点180℃以下のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリエステル共重合体繊維、ポリアミド繊維、ポリアミド共重合体繊維等がある。これらの低融点熱可塑性繊維は、単独あるいは2種以上組み合わせて使用される。
上記低融点熱可塑性繊維の繊度は、0.1〜60dtexの範囲であることが好ましい。本発明に使用する望ましい低融点熱可塑性繊維としては、例えば上記通常繊維を芯部分とし、該低融点熱可塑性繊維の材料樹脂である融点100〜180℃の低融点熱可塑性樹脂を鞘とする芯鞘型繊維がある。該芯鞘型繊維を使用すると、得られる繊維シートの剛性や耐熱性が低下しない。
【0016】
上記繊維シートは、上記繊維のウェブのシートあるいはマットをニードルパンチングによって絡合する方法やスパンボンド法、あるいは上記繊維のウェブのシートあるいはマットが上記低融点熱可塑性繊維からなるか、あるいは上記低融点熱可塑性繊維が混合されている場合には上記繊維のウェブのシートあるいはマットを加熱して該低融点熱可塑性繊維を軟化せしめることによって結着するサーマルボンド法か、あるいは上記繊維のウェブのシートまたはマットに合成樹脂バインダーを含浸あるいは混合して結着するケミカルボンド法か、あるいは上記繊維材料のウェブのシートまたはマットをニードルパンチングによって絡合した上で該低融点熱可塑性繊維を加熱軟化せしめて結着するか、あるいは糸で縫い込むステッチボンド法や高圧水流で絡ませるスパンレース法、上記ニードルパンチングを施したシートまたはマットに上記合成樹脂バインダーを含浸して結着する方法、更に上記繊維材料を編織する方法等によって製造される。
なお、本発明の通気性多孔質シートに係る繊維シートの単位質量や厚みは、原則として任意に設定可能であるが、望ましくは、単位質量10〜2000g/m、厚み0.1〜20mmに設定され得る。
【0017】
更に本発明において使用される通気性多孔質シートとしては、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、エポキシ樹脂発泡体、メラミン樹脂発泡体、尿素樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体等の樹脂発泡体のうち通気性を有する樹脂発泡体、上記プラスチックのビーズの焼結体等が使用される。
【0018】
[合成樹脂]
上記通気性多孔質シートには、成形性と剛性とを付与するために、合成樹脂が含浸せしめられることが望ましい。上記合成樹脂としては、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂がある。
【0019】
〔熱可塑性樹脂〕
上記熱可塑性樹脂としては、例えばアクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)樹脂、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合(ASA)樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合(AS)樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合(ACS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂、エチレンビニルアルコール共重合(EVOH)樹脂、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリブタジエン(BDR)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン(CPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリプロピレン(PP)、酢酸繊維素(セルロースアセテート:CA)樹脂、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリオキシメチレン(=ポリアセタール)(POM)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)エラストマー、熱可塑性エラストマー(TPE)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、全芳香族ポリエステル(POB)等が例示される。
上記熱可塑性樹脂は、上記通気性多孔質シートに含浸または塗布されて、成形形状保持性および剛性に優れたシートを与える。
なお上記熱可塑性樹脂は、上記通気性多孔質シートのみならず、上記クレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙にも含浸または塗布してもよい。
【0020】
上記熱可塑性樹脂は、2種以上が混合使用されてもよく、該熱可塑性樹脂を阻害しない程度であれば、若干量の熱硬化性樹脂の1種または2種以上を混合使用してもよい。該熱可塑性樹脂は取り扱いが容易な点から、水溶液、水性エマルジョン、水性ディスパージョンの形のものを使用することが好ましいが、有機溶剤溶液の形のものを使用してもよい。
【0021】
〔熱硬化性樹脂〕
上記熱硬化性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、特に加熱によりエステル結合を形成して硬化する熱硬化性アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等が使用されるが、該合成樹脂を生成するウレタン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー(初期縮合体)、フェノール樹脂プレポリマー(初期縮合体)、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等の合成樹脂前駆体が使用されてもよい。
上記熱硬化性樹脂は取り扱いが容易な点から、水溶液、水性エマルジョン、水性ディスパーションの形のものを使用することが好ましいが、有機溶剤溶液の形のものを使用してもよい。
上記合成樹脂のうち、特に熱硬化性樹脂の添加は、上記通気性多孔質シートの成形形状保持性と剛性を共に向上せしめる。
【0022】
また、特に本発明で使用される熱硬化性樹脂として望ましいのは、フェノール系樹脂である。該フェノール系樹脂は、フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体とを縮合させることによって得られる。
上記フェノール系樹脂としては、フェノール、レゾルシン、アルキルレゾルシン等が例示される。通常、上記フェノール系樹脂は、初期縮合物の水溶液として提供されるが、上記水溶液の広いpH領域での安定性を向上させるために、スルホメチル化および/またはスルフィメチル化することが望ましい。
上記通気性多孔質シートに合成樹脂として、フェノール系樹脂初期縮合物を含浸させた場合には、加熱乾燥、特に該初期縮合物をB状態にすることが望ましい。上記フェノール系初期縮合物を上記通気性多孔質シート内においてB状態にしておけば、比較的安定であり、該通気性多孔質シートは長期にわたって良好な成形性を維持し、そして成形時の加熱によって速やかに硬化する。
上記合成樹脂の上記通気性多孔質シートに対する塗布・含浸量は、上記シートの通気性を阻害しない程度に調節され、通常、固形分として15〜100g/m程度とされる。
【0023】
[第3成分]
上記通気性多孔質シートには、上記合成樹脂以外に、難燃剤が添加されてもよい。上記難燃剤としては、例えば燐系難燃剤、窒素系難燃剤、硫黄系難燃剤、ホウ素系難燃剤、臭素系難燃剤、グアニジン系難燃剤、燐酸塩系難燃剤、燐酸エステル系難燃剤、アミノ樹脂系難燃剤、膨張黒鉛等がある。
【0024】
更に上記通気性多孔質シートに含浸させる合成樹脂には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、雲母、珪藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、アスベスト、マイカ、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、ガラス粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填材;天然ゴムまたはその誘導体;スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、イソプレンゴム、イソプレン−イソブチレンゴム等の合成ゴム;ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、澱粉、澱粉誘導体、ニカワ、ゼラチン、血粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子や天然ガム類;木粉、クルミ粉、ヤシガラ粉、小麦粉、米粉等の有機充填材;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ブチリルステアレート、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸のエステル類;脂肪酸アミド類;カルナバワックス等の天然ワックス類、合成ワックス類;パラフィン類、パラフィン油、シリコンオイル、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、グリス等の離型剤;アゾジカーボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾビス−2,2’−(2−メチルグロピオニトリル)等の有機発泡剤;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム等の無機発泡剤;シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、発泡ガラス、中空セラミックス等の中空粒体;発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン等のプラスチック発泡体や発泡粒;顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、燐系化合物、窒素系化合物、硫黄系化合物、ホウ素系化合物、臭素系化合物、グアニジン系化合物、燐酸塩系化合物、燐酸エステル系化合物、アミノ系樹脂等の難燃剤、難燃剤、防炎剤、撥水剤、撥油剤、防虫剤、防腐剤、ワックス類、界面活性剤、滑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤;DBP、DOP、ジシクロヘキシルフタレートのようなフタル酸エステル系可塑剤やその他のトリクレジルホスフェート等の可塑剤等を添加、混合してもよい。
【0025】
更に上記通気性多孔質シートに含浸させる合成樹脂には、コロイダルシリカを添加、混合してもよい。上記コロイダルシリカは、シリカ微粒子、あるいは表面にアルミナコーティングをしたシリカ微粒子であり、通常平均粒径が1〜100μm、望ましくは3〜50μmである。上記コロイダルシリカは通常水に分散した分散液として提供される。
平均粒径100μmを越えるシリカ微粒子の場合は樹脂滲出層が白っぽくなるおそれがあり、平均粒径1μm未満のシリカ微粒子の場合は、表面積が過大となり、分散液の安定性が悪くなる。
【0026】
[接着剤]
上記クレープ加工および/またはエンボス加工が施された紙と、上記通気性多孔質シートとは、通常接着剤によって接着されるが、上記通気性多孔質シートに合成樹脂が含浸されている場合には、成形時に該合成樹脂を該通気性多孔質シート表面に滲出させて、これを接着剤として使用してもよい。
上記接着剤としては、上記クレープ加工および/またはエンボス加工が施された紙、および/または上記通気性多孔質シートの接着面に塗布した際、通気性接着剤層となるようにすることが望ましい。上記通気性接着剤層を形成するには、接着剤を接着面にスプレー、スクリーン印刷、オフセット印刷等によって点状に塗布するか、あるいは粉末状、ウェブ状のホットメルト接着剤を使用する。
【0027】
[挿入材]
図2(a),(b),(c),(d)に本発明の挿入材の種々の構成を示す。
図2(a)に示す挿入材1Aは、クレープ加工および/またはエンボス加工が施された紙2(以下、単に「紙材2」とする)の両面(図中で上下両面)に、通気性多孔質シート3(以下、単に「多孔質材3」とする)を接着した構造を有する。
図2(b)に示す挿入材1Bは、多孔質材3の両面(図中で上下両面)に紙材2,2を接着してなる積層材の、更に両面(図中で上下両面)に多孔質材3,3を接着した構造を有する。
図2(c)に示す挿入材1Cは、多孔質材3の片面(図中で上面)に紙材2を接着した構造を有する。
図2(d)に示す挿入材1Dは、多孔質材3の両面に紙材2,2を接着してなる積層材の、更に片面(図中で上面)に多孔質材3を接着した構造を有する。
【0028】
上記構造の挿入材1は、挿着対象のダクトの内周形状に適合する形状、即ち図3に示す円筒形状の挿入材11、あるいは図4に示す二つ割り半円筒形状の分割体12,13等に成形される。
上記挿入材1Cの成形は、円筒形状であればシート状の原体を巻き型に巻いて加熱硬化させる方法、半円筒形状であればホットプレス、加熱−冷間成形等が適用される。
そして吸音性能を目的として、本発明の挿入材1は、通気抵抗を0.1〜5.0kPa・s/mの範囲に設定することが望ましいが、上記紙材2を使用すると、上記多孔質材3の厚みを厚くしなくても、上記範囲に設定することが容易になる。
【0029】
[気体送通ダクト]
図5に示すように、本発明の挿通材1は、例えば自動車エンジンの吸気ダクトのような気体送通ダクト4(以下、単に「ダクト4」とする)の内側に挿入され、該ダクト4内を気体が通過する際の騒音、振動等を吸収するが、それ以外にも、該気体に含まれるダストも吸着除去する。そして該挿入材1がダストによってある程度汚染されたら、該挿入材1を該ダクト4から引き抜いて、簡単に更新することができる。
なお本発明の気体送通ダクトは、上記自動車エンジンの吸気ダクトに限らず、気体を送通するものであれば、例えば建物の空調設備や換気設備や排煙設備等のダクトであってもよい。またダクトは、図5に示した円筒形状のものに限らず、四角筒形状、三角筒形状、五角筒形状、六角筒形状等の角筒形状のものであってもよく、該角筒形状のダクトを挿着対象とするのであれば、本発明の挿通材は、該角筒形状のダクトの内周形状に適合する形状、即ち四角筒形状、三角筒形状、五角筒形状、六角筒形状等の角筒形状、あるいは断面L字状、断面V字状、断面台形状等の二つ割り半角筒形状の分割体等に成形される。
【実施例】
【0030】
以下に本発明を更に具体的に説明するための実施例を記載する。
(積層体)
下記のホットメルト接着剤粉末を下記の紙材2の接着面に3g/mの量で撒布し、該接着面に下記の多孔質材3を積層して加熱接着し、1層の多孔質材3および1層の紙材2からなる積層体を得た。
・多孔質材3
ニードルパンチング法によるポリエステル繊維不織布、目付量:150g/m、厚さ:3mm。
・紙材2
クレープエンボス加工紙、クレープ率:25%、エンボス突起高さ:0.1〜0.3mm、突起数:60個/cm、目付量:20g/m、通気抵抗:0.103kpa・s/m。
・ホットメルト接着剤
ポリエステル製、粉末状、粒度:200〜300μm、軟化点:125℃。
【0031】
(合成樹脂混合溶液)
熱硬化性樹脂が30質量部、撥水・撥油剤が2質量部、水が68質量部の比率となるように混合し、合成樹脂混合溶液とした。
熱硬化性樹脂:アルキルレゾルシン−フェノール初期共縮合体(40質量%水溶液)。
撥水・撥油剤:フッ素系撥水・撥油剤(10質量%水溶液)。
【0032】
(挿入材の製造)
上記積層材を3層重合して上記ホットメルト接着剤粉末で接着して得た積層重合体に、上記合成樹脂混合溶液を20質量%(固形分)の塗布量で塗布含浸し、120℃で加熱乾燥後、上記積層重合体をダクト4の内周形状に適合する形状(一対の半円筒形状)となるように200℃でホットプレスし、厚さ:4mm、重さ:630g/m、通気抵抗:1.24kpa・s/mの挿入材1Eを得た。上記挿入材1Eの構成を図6に示す。
上記挿入材1Eは、タクト4に挿着した結果、優れた吸音性能および除塵性能を示すとともに、一定時間経過後に交換したところ、該交換が簡単であるうえ、交換前と同じく、優れた吸音性能および除塵性能を示した。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の挿入材は、厚みが薄く、かつ気体送通ダクトの吸音・除塵効果に優れているから、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 挿入材
2 紙材
3 多孔質材
4 ダクト



【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙の一層または二層以上と、
通気性多孔質シートの一層または二層以上と、
の積層材からなる
ことを特徴とする気体送通ダクトの挿入材。
【請求項2】
上記紙は、クレープ率が10〜50%のクレープ加工および/または突起高さ0.02〜2.00mmで、かつ突起数が20〜200個/cmのエンボス加工が施されており、上記紙の通気抵抗は少なくとも0.06kPa・s/m以上である
請求項1に記載の気体送通ダクトの挿入材。
【請求項3】
上記通気性多孔質シートおよび/または上記紙には合成樹脂が含浸されている
請求項1または請求項2に記載の気体送通ダクトの挿入材。
【請求項4】
上記通気性多孔質シートは繊維シートである
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の気体送通ダクトの挿入材。
【請求項5】
上記クレープ加工および/またはエンボス加工が施されている紙の一層または二層以上と、上記通気性多孔質シートの一層または二層以上と、は通気性接着剤層によって接着されている
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の気体送通ダクトの挿入材。
【請求項6】
上記挿入材の通気抵抗は0.1〜5.0kPa・s/mの範囲に設定されている
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の気体送通パイプの挿入材。
【請求項7】
上記挿入材は、挿入対象であるダクト内周形状に適合する形状に成形されている
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の気体送通ダクトの挿入材。
【請求項8】
上記挿入材は一対の二つ割り分割体からなり、上記分割体を合わせると挿入対象であるダクト内周形状に適合する形状になるように形成されている
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の気体送通ダクトの挿入材。
【請求項9】
ダクト本体の所定個所内周に請求項1〜8の何れかに記載の挿入材を挿着した
ことを特徴とする気体送通ダクト。



【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−215369(P2012−215369A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82209(P2011−82209)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000243892)名古屋油化株式会社 (78)
【Fターム(参考)】