説明

気化ガス導出用フィルム

【課題】 気化ガスは透過させ、液化ガスは液状で透過させることなく、気化させて透過させることにより、常に気化した状態のガスを導出する、気化ガス導出用部材を提供する。
【解決手段】 すでに気化している液化ガス(プロパン、ブタン等)はその状態で透過させるとともに、液状にある液化ガスは、液状では透過させることなく、フィルムの厚み内で気化させて導出する、気化ガス導出用フィルムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化ガスを透過させ、液化ガスを液状で透過させないことを目的とする気化ガス導出用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、気化ガスの導出は、可燃性の液化ガス(プロパン、ブタン等)が充填されたガスボンベより、気化したガスを取り出し使用することが一般的であり、出願人の記憶する範囲において、出願前までに先行技術文献情報として開示すべき気化ガス導出用フィルムの情報を出願人は有していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、気化しているガスを透過させ、液化ガスを液状で透過させないことを目的としており、液状の液化ガスは気化させて透過させることにより、常に気化した状態のガスを導出する、気化ガス導出用部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、すでに気化している液化ガス(プロパン、ブタン等)はその状態で透過させるとともに、液状にある液化ガスは、液状では透過させることなく、フィルムの厚み内で気化させて導出することを特徴とする、気化ガス導出用フィルムである。
【0005】
本発明の気化ガス導出用フィルムは、合成樹脂フィルムにクレーズを発現させたことを特徴とするもので、ここで言うクレーズとは、フィルムの表面に現れる表面クレーズと内部に発生する内部クレーズを含むものであって、微細なひび状の模様を有する。
【0006】
このクレーズはフィブリル〈分子束〉とボイド(微細な連通孔)で構成されており、微細な連通孔がフィルムの厚み方向に貫通することにより、この部分で各種ガスの通気性が生じることになる。
【0007】
合成樹脂フィルムに発現されるクレーズは、一般に0.1〜1,000μm、好ましくは1〜800μmの間隔で形成され、これは縞状の領域として認識できる程度の量であり、ボイド(微細な連通孔)は幅が一般に0.5〜100μm程度に微細なため、用いる合成樹脂の種類により多少異なるが全体に空気などの気体は透過されるが、水などの液体は透過されないという特質を有する通気性が合成樹脂フィルムに付与される。
【0008】
本発明の気化ガス導出用フィルムは、この空気などの気体は透過されるが、水などの液体は透過されないという特質に着眼してなされたもので、すでに気化している液化ガス(プロパン、ブタン等)はその状態で透過させるとともに、液状にある液化ガスは、液状では透過させることなく、フィルムの厚み内で気化させて導出することが大きな特徴となっている。
【0009】
本発明の気化ガス導出用フィルムを用いて、液状にある液化ガスをフィルムの厚み内で気化させて導出する技術は、閉鎖状態にある液化ガスが、クレーズを構成するボイド〈微細な連通孔〉に接した部分あるいは僅かにフィルムに浸透した部分で気化してフィルムを透過するため、液化ガスがフィルムを透して噴出あるいは漏出することなく気化したガスのみが導出される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の気化ガス導出用フィルムは、合成樹脂フィルムにクレーズを発現させることにより、空気などの気体は透過されるが、水などの液体は透過されないという特質が付与されることに着眼してなされたもので、すでに気化している液化ガス(プロパン、ブタン等)はその状態で透過させるとともに、液状にある液化ガスは、液状では透過させることなく、フィルムの厚み内で気化させて導出することを大きな特徴とするフィルムであり、ガスボンベのガス導出部に配置することにより、ボンベを上下を反転させた状態(倒立)で使用しても、液状の液化ガスがフィルムから噴出あるいは漏出することがない、気化ガス導出用フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面に基づいて本発明の気体透過性フィルムについて説明するが、これは代表的なものを示したものであり、本実施例により本発明が限定されるものではない。
【0012】
本発明の気化ガス導出用フィルムにおいて合成樹脂フィルムの素材として使用される合成樹脂としては、フィルム或いはシートの成形が可能な熱可塑性樹脂であれば特別に制限されるものではなく、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ハロゲン含有熱可塑性樹脂、ニトリル樹脂等を挙げることができる。
【0013】
上記の熱可塑性樹脂のなかでも、フィルムやシートへの成形や経済性の点から、ポリオレフィン、ポリエステル、スチレン系樹脂、ハロゲン含有熱可塑性樹脂を使用することが好ましく、クレーズの形成の容易さから、該熱可塑性樹脂のガラス転移温度が−15℃以上の樹脂を使用することが、組成物として使用するときや多層化して使用する場合にも望ましい。
【0014】
合成樹脂フィルムの厚みは、一般に0.5〜1,000μm以上あるものが使用されるが、本発明では、液化ガスをフィルムの厚み内で気化させて導出することを特徴とするため特に2〜500μm以上あることが望ましい。
【0015】
本発明の気化ガス導出用フィルムに発現されるているクレーズは、基本的に、合成樹脂フィルムの分子配向の方向と略平行に、幅が一般に1〜50μmのものである。このクレーズが、フィルムの厚み方向に貫通しているクレーズの数の割合が全クレーズの数に対して40%以上形成されているのが望ましい。
【0016】
本発明の気化ガス導出用フィルムは、用いる樹脂の種類により異なるが、一例としてポリ弗化ビニリデンのホモ重合体を用いると、酸素及び窒素ガスのガス透過度が一般に0.3〜100,000×10cm/m・24hr・atmの範囲内で、透湿度が一般に10〜100,000×10g/m・24hrの範囲内のものを得ることができる。
【0017】
本発明の気化ガス導出用フィルムは、合成樹脂フィルムを緊張状態に保持し、このフィルムの表面に先端部が鋭角な支持体を当接して局部的に折り曲げ、フィルムを徐々に移動させることにより、移動方向と略直角の方向にクレーズ領域を形成させることにより得られる。
【0018】
本発明の気化ガス導出用フィルムは、クレーズを有していることから、通気性、透湿性の機能を有している。その機構は、図1に示す如く、クレーズ4が、フィルムやシートの厚み方向を貫通することにより、酸素や窒素或いは水蒸気等の気体5がこのクレーズを拡散することにより通過して通気性が発現する。
【実施例】
【0019】
実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
【0020】
図2、図3に示されるガスボンベ2の概略図には、本発明の気化ガス導出用フィルム6が液化ガス10が充填されたガスボンベ2のガス導出部8に配置されている。
【0021】
ガスボンベ2が直立状態にあるときには、図2に示されるように、ボンベ2内は下方に液化ガス10による液状の層14が、上方に気化ガス12で占められる気体層16が形成され、気化したガス12は、ガス導出部8に配置された気化ガス導出用フィルム6に生成された、クレーズを構成するボイド〈微細な連通孔〉を透過して、ボンベ2より導出され、バーナーやトーチ等の使用に供される。
【0022】
図3に示すようにガスボンベ2の上下を反転させた状態(倒立)では、ガスボンベ2に充填された液化ガス10は、下方に液状の層14を、上方に気化したガス12で占められる気体層16を形成するのに反して、ボンベ2に設けられたガス導出部8は液状層14の底部に転位しており、気体層16を形成する気化したガス12がガス導出部8に配置された気化ガス導出用フィルム6を透過して、バーナーやトーチ等の使用に供されることはない。
【0023】
この場合、ボンベ2内の下方に液状の層14を形成する液化ガス10が、液状層14の底部に位置して配置されることになった気化ガス導出用フィルム6を透過して、噴出あるいは漏出することはない。これは、フィルムに生成されたクレーズが、フィブリル〈分子束〉とボイド〈微細な連通孔〉で構成され、このうちのボイドがフィルムの厚み方向に貫通することによりフィルムに気体透過性がもたらされたもので、貫通する連通孔が微細なため気体は通すが液体は通さないという特質を有するフィルムとなっていることによる。
【0024】
しかし、ガスボンベ2の上下を反転させた状態(倒立)では、ボンベ2内の下方に液状の層を形成する液化ガス10が、ガス導出部とともに液状層14の底部に転位したクレーズ生成フィルムと直に接することとなり、クレーズを構成するボイド〈微細な連通孔〉に接した部分で液化ガス10が気化してフィルムを透過するため、液状の液化ガス10がボンベ2から噴出あるいは漏出することなく、気化したガス12のみがボンベ2より導出され、バーナーやトーチ等の使用に供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の気化ガス導出用フィルムが、通気性を有する理由の説明図である。
【図2】本発明の気化ガス導出用フィルムが配置されたガスボンベが直立状態にある概略図。
【図3】本発明の気化ガス導出用フィルムが配置されたガスボンベが倒立状態にある概略図。
【符号の説明】
【0026】
2 ガスボンベ
4 クレーズ
5 気体
6 気化ガス導出用フィルム
8 ガス導出部
10 液化ガス
12 気化ガス
14 液状の層
16 気体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルムにクレーズを発現させてなる気体透過性フィルムであり、すでに気化している液化ガス(プロパン、ブタン等)は気化した状態を維持してで透過させるとともに、液化ガスを液状では透過させることなく、フィルムの厚み内で気化させて導出することを特徴とする、気化ガス導出用フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−44629(P2007−44629A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232055(P2005−232055)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(397010446)有限会社中島工業 (28)
【Fターム(参考)】