説明

気圧測定装置

【課題】容易に高度情報を考慮した気圧データを取得することが出来る気圧測定装置を提供する。
【解決手段】間欠的に気圧を測定する気圧測定手段と、気圧が測定された位置における高度データをGPS測位装置から受信する受信手段と、気圧測定手段により測定された気圧の値を、受信手段で受信された高度データに基づいて所定の高度における気圧の値に補正した補正気圧データを取得する補正手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高度方向への移動を考慮した気圧値を取得する気圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気圧を測定する機能を備えた携帯型電子装置がある。この携帯型電子装置は、測定した気圧を表示したり、気圧の時間変化をグラフとして表示したりする機能を備えている。
【0003】
また、このような携帯型電子装置の中には、気圧そのものの表示だけではなく、以前より、気圧の時間変化に基づいて天気の変化を予測して表示する機能を備えたものがある。このような携帯型電子装置において気圧の時間変化を取得する場合に、位置変化、特に、高度方向の変化に伴う気圧変化の影響が含まれていると、正確に気圧の時間変化を求めることが出来ない。そこで、従来、このような高度変化の気圧への影響を取り除くために、スイッチを用いて手動で入力された高度データに基づいて、計測された大気圧を海抜0mの値に補正して気圧の時間変化を取得していた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2563055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ユーザが移動中に毎回変化する高度データを入力するのは、非常に手間がかかる。また、高度の測定又は入力を怠ると、測定された気圧から高度変化の成分を補正することができず、気圧の時間変化を正確に見積もれなくなるという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、容易に高度情報を考慮した気圧データを取得することが出来る気圧測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、
間欠的に気圧を測定する気圧測定手段と、
前記気圧の測定位置における高度データをGPS測位装置から受信する受信手段と、
前記気圧測定手段により測定された気圧の値を、前記受信手段で受信された高度データに基づいて所定の高度における気圧の値に補正した補正気圧データを取得する補正手段と
を備えることを特徴とする気圧測定装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、容易に高度情報を考慮した気圧データを取得することが出来るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の気圧測定装置の実施形態である電子時計を含む気圧表示システムの全体構成を示す図である。
【図2】電子時計の内部構成を示すブロック図である。
【図3】スマートフォンの内部構成を示すブロック図である。
【図4】電子時計の表示部を説明する図である。
【図5】表示部に表示可能な天気予報の例を示す図である。
【図6】気圧補正テーブルの例を示す図表である。
【図7】気圧補正値算出処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図8】天気予報処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図9】気圧変化表示処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の気圧表示システムの全体構成図である。
【0011】
本実施形態の気圧表示システム1は、気圧測定装置としての電子時計40と、GPS測位装置としてのスマートフォン10とにより構成される。この電子時計40は、時計本体と、バンドとを備え、腕装着が可能な腕時計型のものである。電子時計40及びスマートフォン10は、何れも近距離無線通信機能を備えており、例えば、ブルートゥース通信(登録商標:Bluetooth)による相互通信が可能となっている。
【0012】
図2は、電子時計40の内部構成を示すブロック図である。また、図3は、スマートフォン10の内部構成を示すブロック図である。
【0013】
電子時計40は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)41(補正手段、天気予報手段)と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)43と、操作部44と、計時回路45と、表示部46(表示手段)及び表示部46を駆動制御するドライバ47と、アンテナAN4と、Bluetoothモジュール48(受信手段)及びUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)49と、振動モータ50及びそのドライバ51と、LED(発光ダイオード)52及びそのドライバ53と、ピエゾ素子54及びそのドライバ55と、圧力センサ56(気圧測定手段)及びA/D変換回路57と、CPU41と各部との間で信号のやり取りをするバス58などを備えている。
【0014】
CPU41は、電子時計40の全体動作の統轄制御及び各種演算処理を行う。CPU41は、計時回路45の計数する現在時刻に基づいて表示部46に時刻表示を行わせる。また、CPU41は、Bluetoothモジュール48を介してスマートフォン10から取得された高度データに基づいて圧力センサ56により取得された気圧を補正し、この補正された気圧の変化により得られた天気予報や気圧の時間変化グラフを表示部46に表示させる。
【0015】
ROM42は、CPU41が実行する種々のプログラムや初期設定データを格納する。ROM42の格納するデータには、気圧補正プログラム421と、天気予報プログラム422と、モデル大気圧テーブル423とが含まれる。CPU41が天気予報プログラム422を実行することで、電子時計40において必要なデータの取得や演算が行われて天気を予報し、この天気予報結果の表示が行われる。
【0016】
RAM43は、CPU41に作業用のメモリ空間を提供する。またRAM43は、気圧履歴記憶部431(記憶手段)を備え、所定の期間内に算出された気圧データを時刻データと対応付けて記憶する。
【0017】
操作部44は、1又は複数のボタンスイッチを備え、ユーザが当該スイッチに対して行った操作に基づいて入力信号に変換して、CPU11に出力する。或いは、この操作部44は、タッチパネルであっても良い。
【0018】
計時回路45は、現在時刻を計数して保持するカウンタである。この現在時刻が読み出されて、表示部46に表示されたり、当該現在時刻データと各種機能に係る設定時刻データと比較されて種々の動作が行われたりする。
【0019】
表示部46は、例えば、セグメント表示方式のLCD(液晶ディスプレイ)である。CPU41から送られた制御信号によりドライバ47(液晶ドライバ)が動作し、LCDを駆動して現在時刻、設定状態、或いは、各種機能のメニューなどの指定された内容に関する表示を行わせる。この表示部46は、或いは、他の表示手段、例えば、有機ELD(Electro-Luminescent Display)であっても良く、ドライバ47は、表示部46の種類によって適宜選択される。
【0020】
Bluetoothモジュール48は、アンテナAN4を介して外部機器との間でブルートゥース通信を行うための制御モジュールである。CPU41から送られた送信データは、UART49でシリアル/パラレル変換などの処理が行われて、Bluetoothモジュール48から外部機器に送信される。また、外部機器からBluetoothモジュール48を用いて受信された受信データは、UART49でシリアル/パラレル変換などの処理が行われて、CPU41へ出力される。
【0021】
振動モータ50、LED(発光ダイオード)52、及び、ピエゾ素子(PZT)54は、振動、光、及び、ブザー音を発することでユーザに通知を行うためのものである。CPU41からドライバ51、53、55にそれぞれ制御信号が送られると、ドライバ51、53、55は、それぞれ、振動モータ50、LED52、ピエゾ素子54を動作させるのに必要な電圧信号に変換して出力する。
【0022】
スマートフォン10は、図3に示すように、CPU11と、ROM12と、RAM13と、記憶部14と、操作部15と、内蔵時計16と、表示部17及びそのドライバ18と、スピーカ19と、マイク20と、コーデック21と、RF送受信回路22と、RF送受信用のアンテナAN11と、通信回路23と、Bluetoothモジュール24と、UART25と、Bluetooth通信の送受信用アンテナAN12と、GPSデータ受信処理部26と、GPSデータの受信用アンテナAN13と、CPU11と各部とを接続するバス27などを備えている。
【0023】
CPU11は、スマートフォン10の全体動作の統轄制御及び各種演算処理を行う。また、CPU11は、操作部15への入力操作による設定情報に基づいてBluetoothモジュール24に制御信号を送り、電子時計40に対してGPS測位情報(高度データ)を送信させる。
【0024】
ROM12は、CPU11が実行する種々のプログラムや初期設定データを格納する。また、RAM13は、CPU11に作業用のメモリ空間を提供し、作業用の一時データを記憶する。
【0025】
記憶部14は、不揮発性の読み書き可能なメモリであり、例えば、フラッシュメモリやEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)である。この記憶部14には、例えば、スマートフォン10で実行する種々のアプリケーションプログラムや、各種機能に係る保存データや設定データが記憶される。
【0026】
操作部15は、タッチパネルの操作入力を検知し、表示部17に表示されたメニューに基づいてユーザにより接触入力された操作内容を電気信号に変換し、入力信号としてCPU11に出力する。或いは、この操作部15は、複数の操作キーを備え、ユーザが当該キーに対して行った操作に基づいて電気信号に変換した入力信号をCPU11に出力する構成を含むこととしても良い。
【0027】
内蔵時計16は、現在時刻を計数して保持するカウンタである。この現在時刻が読み出されて、表示部17に表示される。また、当該現在時刻データと各種機能に係る設定時刻データとが比較されて種々の動作が行われる。この内蔵時計16の現在時刻データは、RF送受信回路22による携帯基地局との通信時に随時修正される。
【0028】
表示部17は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)である。CPU11から送られた制御信号によりドライバ18(液晶ドライバ)が動作し、LCDを駆動してスマートフォン10の各種機能に係る表示を行わせる。この表示部17は、他の方式によるもの、例えば、有機ELD(Electro-Luminescent Display)であっても良く、ドライバ18は、表示方式により適宜選択される。また、この表示部17は、タッチパネルとしてユーザに入力操作を行わせるためのメニュー表示を行う。
【0029】
スピーカ19は、コーデック21からの信号に基づいて電気信号を音声信号に変換して音声を出力する。また、マイク20は、音波を検知して電気信号に変換し、コーデック21に出力する。コーデック21は、符号化圧縮されたデジタル音声信号をデコードしてアナログ信号としてスピーカ19へ送るとともに、マイク20から取得された音声信号をエンコードしてCPU11や通信回路23へ出力する。なお、通話用のスピーカと音声を外部に出力するためのスピーカを別個に備えることとしてもよい。
【0030】
RF送受信回路22は、RF送受信用アンテナAN11を用いて携帯基地局との間で行われる電話通信やメールなどのパケット通信の送受信処理を行う。また、通信回路23は、RF送受信回路22により送受信される送受信データの各種処理を行い、CPU11やコーデック21との間でデータの受け渡しを行う。
【0031】
Bluetoothモジュール24は、アンテナAN12を介して電子時計40などの他の電子機器とBluetooth通信を行うための制御モジュールである。CPU11から送られた送信データは、UART25でシリアル/パラレル変換などの処理が行われて、Bluetoothモジュール24から他の電子機器に送信される。また、他の電子機器からBluetoothモジュール24を用いて受信された受信データは、UART25でパラレル/シリアル変換などの処理が行われて、CPU11へ出力される。
【0032】
GPSデータ受信処理部26は、アンテナAN13を介してGPS測位衛星から受信した衛星信号を復調、解読し、時刻データや位置データに換算して所定のフォーマットでCPU11に出力する。出力の所定のフォーマットとしては、例えば、NMEA(National Marine Electronics Association)−0183が用いられる。
【0033】
図4は、電子時計40の表示部46のセグメントによる表示パターンを示す図である。また、図5は、表示部46の第2表示部462に表示される天気図形の例を示す図である。
【0034】
この表示部46の表示画面46aでは、セグメント方式による表示が行われる。図4に示すように、表示部46の表示画面46aには、時刻などの数字及び文字を表示する第1表示部461及び天気予報に係る予め設定された種類の記号や図形を表示させる第2表示部462が設けられている。第2表示部462には、図5に示すように、各セグメントの点灯又は消灯を適宜制御することによって、(a)晴れ(天気が良い)、(b)晴れ曇り(天気が回復する)、(c)雨曇り(天気がぐずつく)、及び、(d)雨(天気が悪くなる)といった各天気予報を表示させることが出来る。
【0035】
次に、本実施形態の気圧測定装置としての電子時計40における気圧補正処理について説明する。
【0036】
大気圧は、大気にかかる重力による圧力であり、大気圧を測定する地点より上部に存在する大気の質量を積分したものになる。この大気圧の鉛直方向の圧力分布は、大気が近似的に静止している(静水圧平衡)と考え、鉛直方向の運動方程式及び気体の状態方程式などにより高度zに対する大気圧Pの変化を表す数式が求められる。
【0037】
例えば、大気圧の高度分布のモデルの1つとして、次の数式(1)で表される。
P=Pexp(−mg/(kT)(z−z)) ・・・(1)
ここで、気温T[℃]は、標準大気のモデルを用いて、対流圏において、以下の数式(2)で表されるものとする。
T=15.0−0.0065z ・・・(2)
また、地表における重力加速度g、大気1分子当たりの平均質量m、及び、ボルツマン定数kは、それぞれ定数である。
【0038】
また、高度の係数zを0とする。即ち、高度zは、平均海水面からの高度(海抜)と等しくなる。このとき、大気圧の係数Pは、海抜高度z=0(海水面高度)での大気圧を表す。従って、GPSデータ受信処理部26で取得された高度zと、圧力センサ56で計測された大気圧Pとを用いて係数P、即ち、海抜0mでの大気圧を算出することが出来る。
【0039】
このような大気圧の高度分布は、より精度の高いモデルが種々の機関により策定されている。本実施形態の気圧測定装置としての電子時計40では、数式(1)における指数関数の計算を行う代わりに、何れかのモデルに基づく大気圧を所定の高度差毎に予め取得してテーブルに保持しておき、これらの気圧値を用いて線形補間を行うことで計測された高度と海水面高度との間での気圧差を算出し、気圧計測値の補正を行う。この近似に用いられる各値を示すテーブルは、モデル大気圧テーブル423としてROM42に予め格納されている。或いは、この補正用テーブルは、気圧補正プログラム421内に保持されていることとしても良い。
【0040】
図6は、標準大気の高度差に伴う気圧変化を示す図表である。
【0041】
国際標準大気(ISO2533:1975)では、海水面高度での大気圧Pが1013.3hPaに設定されており、200mごとのモデル大気圧と、当該200mごとの各区間における大気圧の平均変化率とが、高度データと対応付けて示されている。即ち、高度200mにおける標準大気の気圧は、989.5hPaであり、高度0m〜200mの区間における大気圧の平均変化率は、両端(0m及び200m)における大気圧の差に基づいて0.119hPa/mであることが示されている。同様に、400mや600mといった各高度におけるモデル大気圧とその平均変化率が、数式(1)で示したように指数関数的に低下していくことが示されている。
【0042】
図7は、CPU41により実行される気圧補正値算出処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0043】
この気圧補正値算出処理は、気圧計測値PAと、この気圧計測値PAが取得された位置の高度値Hとが取得された後に呼び出される。
【0044】
気圧補正値算出処理が開始されると、CPU41は、高度値Hが含まれる区間における気圧変化率dPを取得する(ステップS171)。次いで、CPU41は、この高度値Hが含まれる区間の下限高度HLにおける気圧値PLを取得する(ステップS172)。そして、CPU41は、気圧補正値Yを算出する(ステップS173)。具体的には、CPU41は、気圧値PLと海水面高度での標準大気圧1013.3hPaとの差と、下限高度HLと高度値Hとの差(H−HL)と気圧変化率dPとに基づいて、以下の数式(3)により気圧補正値Yを算出する。
Y = (1013.3−PL) +(H−HL)×dP …(3)
そして、CPU41は、気圧補正値算出処理を終了する。
【0045】
図8は、本実施形態の気圧測定装置としての電子時計40のCPU41により実行される天気予報処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0046】
この天気予報処理は、毎正時に自動的に呼び出されて行われる処理である。
【0047】
天気予報処理が開始されると、CPU41は、先ず、圧力センサ56からA/D変換回路57を介して入力される気圧計測値PAを取得する(ステップS11)。次に、CPU41は、Bluetoothによりスマートフォン10との間で通信リンクが確立されているか否かを判別する(ステップS12)。Bluetoothによる通信リンクが確立されていると判別された場合には、CPU41の処理は、そのままステップS15に移行する。Bluetoothによる通信リンクが確立されていないと判別された場合には、CPU41は、スマートフォン10とのBluetooth通信のリンクを確立するリンク処理を行う(ステップS13)。そして、CPU41は、リンクの確立に成功したか否かを判別する(ステップS14)。リンクの確立に成功していないと判別された場合には、CPU41の処理は、ステップS20に移行する。リンクの確立に成功したと判別された場合には、CPU41の処理は、ステップS15に移行する。
【0048】
CPU41の処理がステップS15に移行すると、CPU41は、スマートフォン10にGPS測位による高度データの送信を要求する。そして、CPU41は、スマートフォン10からのデータ送信を待って待機する。CPU41は、スマートフォン10からGPS測位により取得された高度値Hが受信したか否かを判別する(ステップS16)。高度値Hが受信されていないと判別された場合には、CPU41は、高度データの送信を要求してから所定時間が経過したか否かを判別する(ステップS17)。所定時間が経過していないと判別された場合には、CPU41は、処理ステップをステップS16に戻して高度値Hのデータ受信待ちを続ける。一方、所定時間が経過したと判別された場合には、CPU41は、高度データの取得が不可であると判断して、処理をステップS20に進める。そして、ステップS20の処理では、CPU41は、前回の天気予報処理が行われた際に算出された気圧補正値Yを気圧履歴記憶部431から読み出す。そして、CPU41の処理は、ステップS21の処理に移行する。
【0049】
ステップS16の処理で高度値Hがスマートフォン10から受信されたと判別された場合には、CPU41は、上述した気圧補正値算出処理を呼び出して実行する(ステップS18)。また、CPU41は、算出された気圧補正値Yを取得し、気圧履歴記憶部431に記憶させる(ステップS19)。それから、CPU41の処理は、ステップS21に移行する。
【0050】
ステップS21の処理では、CPU41は、取得された気圧補正値YをステップS11の処理で取得された気圧計測値PAに加算することで補正気圧値PBを算出する。それから、CPU41は、24時間分の補正気圧値PBを気圧履歴記憶部431に記憶させる(ステップS22)。即ち、今回取得された補正気圧値PBを気圧履歴記憶部431に追加記憶させると共に、24時間以上前に取得された補正気圧値PBを消去する。CPU41は、気圧履歴記憶部431に記憶された24時間分の補正気圧値PBの平均値Pavを算出する(ステップS23)。それから、CPU41は、今回取得された補正気圧値PBの平均値PavからのずれΔP=PB−Pavを算出する(ステップS24)。
【0051】
次に、CPU41は、算出された気圧値のずれΔPが3hPa以上であるか否かを判別する(ステップS25)。気圧のずれΔPが3hPa以上であると判別された場合には、CPU41は、晴れ予報を行って(ステップS26)。天気予報処理を終了する。また、気圧のずれΔPが3hPa以上ではないと判別された場合には、次に、CPU41は、気圧のずれΔPが0hPa以上であるか否かを判別する(ステップS27)。気圧のずれΔPが0hPa以上であると判別された場合には、CPU41は、晴れ曇り予報を行って(ステップS28)、天気予報処理を終了する。また、気圧のずれΔPが0hPa以上ではないと判別された場合には、更に、CPU41は、気圧のずれΔPが−3hPa以上であるか否かを判別する(ステップS29)。気圧のずれΔPが−3hPa以上であると判別された場合には、CPU41は、雨曇り予報を行って(ステップS30)、天気予報処理を終了する。一方、気圧のずれΔPが−3hPa以上ではないと判別された場合には、CPU41は雨予報を行って(ステップS31)、天気予報処理を終了する。
【0052】
ここで、ステップS26、S28、S30、S31で行われた天気予報は、自動的に表示画面46aの第2表示部462に表示させることとしても良いし、RAM43に記憶のみを行わせて、ユーザの指示に基づいて要求されたときに読み出して表示させることとしても良い。また、自動的に天気予報を第2表示部462に表示させる場合には、振動モータ50、LED52、又は、ピエゾ素子54などを用いてユーザに報知することとしても良い。
【0053】
[変形例]
上記実施の形態では、計算の簡略化のため、求められた気圧補正値Yを単純に気圧計測値PAに加算することで補正気圧値PBを求めたが、この気圧補正値Yは、海水面高度での気圧が1013.3hPaのときの気圧変化率に基づくものである。従って、海水面高度での気圧がこの気圧と異なる場合には、気圧変化率も変化する。式(1)に示されているように、同一の高度zにおいて、海水面高度での大気圧が1013.3hPa=Pの場合に取得される大気圧P−Yと、海水面高度での大気圧がこの標準大気圧Pと異なる気圧値(補正気圧値)PBの場合に取得される大気圧、即ち、気圧計測値PAとの比は、海水面高度における大気圧PとPBの比に等しくなる。従って、補正気圧値PBは、以下の式(4)によって求めることが出来る。
PB=P/(P−Y)×PA …(4)
従って、図8の天気予報処理でステップS21における補正気圧値PBの算出時に式(4)を適用することが出来る。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の気圧測定装置について説明する。この第2実施形態の気圧測定装置の構成は、表示部46の表示画面46aがドットマトリックス式の液晶表示部である点を除いて全て同一であり、同一の符号を用いることとして説明を省略する。
【0055】
第2実施例の気圧測定装置としての電子時計40では、上記の天気予報処理に係る天気予報表示を第2表示部462にドットマトリックス式の液晶表示を行う加え、算出された補正気圧値PBのグラフを表示させることが出来る。
【0056】
図9には、CPU41が実行する気圧変化表示処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0057】
この図9に示した気圧測定処理は、図8に示した天気予報処理の制御手順とステップS11〜S20までの各処理、及び、ステップS22について同一であり、同一の符号を付して説明を省略する。また、ステップS21aの処理では、第1実施形態のステップS21の処理、又は、変形例1のステップS21の処理の何れかを適用することが出来る。
【0058】
ステップS22の処理が終了すると、CPU41は、気圧履歴記憶部431に記憶させた24時間分の補正気圧値PBの変化を第2表示部462にグラフ表示させる(ステップS41)。このとき、グラフの縦方向の幅は、1013.3hPaを中心として固定に設定しても良いし、24時間分の補正気圧値PBの最大値及び最小値に基づいて可変に設定しても良い。ステップS41の処理が終了すると、CPU41は、気圧履歴表示処理を終了する。
【0059】
以上のように、上記第1実施形態および第2実施形態の気圧測定装置としての電子時計40によれば、圧力センサ56とBluetoothモジュール48とを備え、毎正時に圧力センサ56を用いて気圧データを取得すると共に、Bluetoothモジュール48を介してスマートフォン10と通信を行ってスマートフォン10のGPSデータ受信処理部26により取得される現在地点の高度データを取得し、この高度データに基づいて気圧計測値を海水面高度での気圧に補正するので、高度変化を伴う移動中であっても、容易且つ正確に高度変化を考慮した気圧の時間変化を知得することが出来る。
【0060】
また、気圧の時間変化だけを取得することによって、より正確に天気予報を行うことが出来る。
【0061】
また、この気圧の時間変化をグラフ表示させることで、ユーザが容易に天気の変化に伴う気圧の変化を知得することが出来る。
【0062】
また、高度データをスマートフォン10からBluetooth通信を用いて取得するので、ユーザが手動でスマートフォン10などの外部機器で取得された高度データを入力する手間を省くことが出来、容易に正確な高度データを利用して気圧の時間変化を取得することが出来る。
【0063】
また、高度データをスマートフォン10から取得するので、電子時計40自体でGPS測位を行う場合と比較して、スマートフォン10に搭載の機能を生かすことで電子時計40のサイズ、重量、及び、電力消費量の増加を抑えることが出来る。
【0064】
また、特に、海水面高度の気圧に補正した気圧を算出して表示させるので、ユーザが容易に気圧の値に基づく天気状況を推測することが出来る。
【0065】
また、気圧の補正を行う際に国際標準大気モデルを用いて補正するので、海水面高度での気圧と、スマートフォン10から取得された高度データに示された高度値における気圧との関係だけで簡単な計算により気圧の補正を行うことが出来る。
【0066】
また、200m間隔で国際標準大気モデルによるモデル大気圧を記憶させたモデル大気圧テーブル423、又は、気圧補正プログラム421内に同等な情報を有しているので、線形補間により、単純な計算で気圧計測値を補正することができる。
【0067】
また、毎正時に一時間おきに気圧を計測し、また、補正気圧データを取得しているので、むらのない補正気圧データに基づいてより精度の高い天気予報をユーザに提供することが出来る。特に、当該むらのない補正気圧データの平均値からの直近の補正気圧のずれに基づいて天気予報を行っているので、特定の期間に偏った気圧データに基づく天気予報にはならない。
【0068】
また、直近の24時間分の補正気圧データを気圧履歴記憶部431に記憶させておくことで、天気予報に必要な補正気圧データを確保すると共に、第2表示部462に表示させる補正気圧のグラフを見やすく適切に表示させることが出来る。
【0069】
また、24時間分の補正気圧値の平均値からの直近の補正気圧値のずれに基づいて天気予報を行うので、補正気圧データを用いることで気圧変化の傾向をより的確に取得して天気予報の精度を向上させることが出来る。
【0070】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、1時間おきに気圧データを取得したが、1時間間隔には限られない。例えば、30分おきでも良いし、状況に応じて不定期に取得することとしても良い。また、不定期に取得する場合には、天気予報に用いる際に重み付の平均を行ったり、気圧の平均値を求めるデータを、例えば、正時のものに限ることなどで間引いたりすることとしても良い。
【0071】
また、上記実施の形態では、海水面高度での気圧に大気圧の補正を行ったが、例えば、ユーザの居住地の海抜における大気圧に統一して補正を行うなど、補正高度を任意に設定することが出来る。この場合には、当該高度への補正係数を予め算出してRAM43に記憶させておくことで容易に設定された高度での補正大気圧を求め、表示させることが出来る。
【0072】
また、上記実施の形態では、国際標準大気をモデル大気圧として用いたが、これに限られない。例えば、ICAO(国際民間航空機関)のモデル大気圧を用いても良いし、或いは、独自に、台風のときの高度分布に補正を加えたり、夏と冬とで温度設定を異ならせたりすることとしても良い。
【0073】
また、上記実施の形態では、モデル大気圧テーブル423に各区間の大気圧PL及び気圧変化率dPを記憶させることとしたが、大気圧PLの代わりに当該高度HLにおける大気圧の標準海面大気圧Pとのずれの値P−PLを保持させることとしても良い。
【0074】
また、上記実施形態ではBluetooth通信を用いたが、通信手段としてはこれに限られない。例えば、赤外線通信や、ZIGBEE(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)などの他の近距離無線通信手段を用いることとしても良い。
【0075】
また、GPS測位装置としてスマートフォン10を挙げたが、携帯電話など他の携帯型電子装置を用いることとしても良い。また、気圧測定装置として電子時計40を挙げたが、歩数計や血圧計であっても良い。また、本発明の気圧測定装置は、電子時計40としての腕時計のほか、首から下げられる時計、衣服にクリップ留め可能な時計、及び、自転車やバイクのハンドルに一時的に固定可能な時計など、携帯可能であり、且つ、容易に視認可能な各種時計にも適用できる。
【0076】
また、気圧履歴記憶部431に補正気圧データを記憶させる期間、天気予報に用いる期間、及び、グラフ表示させる期間は、適宜変更可能である。また、ユーザによる操作部44への操作により任意に切り替え可能としても良い。
【0077】
また、天気予報を行う方法は、上記第1実施形態の方法に限られない。例えば、直前24時間の気圧変化の傾向や、補正気圧値PBの絶対値に基づく基準の導入など、他の基準や複数の基準に基づいて予報を行っても良い。
その他、上記実施の形態で示した具体的な細部の構成や数値、処理の順番などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0079】
[付記]
<請求項1>
間欠的に気圧を測定する気圧測定手段と、
前記気圧の測定位置における高度データをGPS測位装置から受信する受信手段と、
前記気圧測定手段により測定された気圧の値を、前記受信手段で受信された高度データに基づいて所定の高度における気圧の値に補正した補正気圧データを取得する補正手段と
を備えることを特徴とする気圧測定装置。
<請求項2>
前記補正手段により取得された補正気圧データを複数記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された補正気圧データに基づいて天気予報を行う天気予報手段と、
この天気予報手段による天気予報を表示する表示手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の気圧測定装置。
<請求項3>
前記補正手段により取得された補正気圧データを複数記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された補正気圧データの全部又は一部をグラフ表示する表示手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の気圧測定装置。
<請求項4>
前記補正手段は、海水面高度における補正気圧データを取得する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の気圧測定装置。
<請求項5>
前記補正手段は、所定のモデルに基づいて前記受信手段により受信された高度データが示す高度におけるモデル大気圧を算出し、当該モデルに基づく当該高度の大気圧及び海水面大気圧と、前記気圧測定手段により測定された気圧の値とに基づいて補正気圧データを取得する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の気圧測定装置。
<請求項6>
前記所定のモデルに基づき所定の高度間隔で求められたモデル大気圧が記憶された補正テーブルを備え、
前記補正手段は、前記受信手段により受信された高度データが示す高度におけるモデル大気圧を、前記補正テーブルに記憶された隣接する2つの高度におけるモデル大気圧を用いた線形補間により算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の気圧測定装置。
<請求項7>
前記気圧測定手段は、毎正時に気圧データを取得する
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の気圧測定装置。
<請求項8>
前記記憶手段は、現在時刻の所定時間前までに計測された気圧に基づく補正気圧データを記憶する
ことを特徴とする請求項2に記載の気圧測定装置。
<請求項9>
前記天気予報手段は、直近に取得された補正気圧データに係る大気圧と、前記記憶手段に記憶された全ての補正気圧データに係る大気圧の平均値とのずれに基づいて天気の回復傾向又は悪化傾向を判断する
ことを特徴とする請求項2又は8に記載の気圧測定装置。
【符号の説明】
【0080】
1 気圧表示システム
10 スマートフォン
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 記憶部
15 操作部
16 内蔵時計
17 表示部
18 ドライバ
19 スピーカ
20 マイク
21 コーデック
22 RF送受信回路
23 通信回路
24 Bluetoothモジュール
25 UART
26 GPSデータ受信処理部
27 バス
40 電子時計
41 CPU
42 ROM
421 気圧補正プログラム
422 天気予報プログラム
423 モデル大気圧テーブル
43 RAM
431 気圧履歴記憶部
44 操作部
45 計時回路
46 表示部
46a 表示画面
461 第1表示部
462 第2表示部
47 ドライバ
48 Bluetoothモジュール
49 UART
50 振動モータ
51 ドライバ
52 LED
53 ドライバ
54 ピエゾ素子
55 ドライバ
56 圧力センサ
57 A/D変換回路
58 バス
AN11、AN12、AN13、AN4 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠的に気圧を測定する気圧測定手段と、
前記気圧の測定位置における高度データをGPS測位装置から受信する受信手段と、
前記気圧測定手段により測定された気圧の値を、前記受信手段で受信された高度データに基づいて所定の高度における気圧の値に補正した補正気圧データを取得する補正手段と
を備えることを特徴とする気圧測定装置。
【請求項2】
前記補正手段により取得された補正気圧データを複数記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された補正気圧データに基づいて天気予報を行う天気予報手段と、
この天気予報手段による天気予報を表示する表示手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の気圧測定装置。
【請求項3】
前記補正手段により取得された補正気圧データを複数記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された補正気圧データの全部又は一部をグラフ表示する表示手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の気圧測定装置。
【請求項4】
前記補正手段は、海水面高度における補正気圧データを取得する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の気圧測定装置。
【請求項5】
前記補正手段は、所定のモデルに基づいて前記受信手段により受信された高度データが示す高度におけるモデル大気圧を算出し、当該モデルに基づく当該高度の大気圧及び海水面大気圧と、前記気圧測定手段により測定された気圧の値とに基づいて補正気圧データを取得する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の気圧測定装置。
【請求項6】
前記所定のモデルに基づき所定の高度間隔で求められたモデル大気圧が記憶された補正テーブルを備え、
前記補正手段は、前記受信手段により受信された高度データが示す高度におけるモデル大気圧を、前記補正テーブルに記憶された隣接する2つの高度におけるモデル大気圧を用いた線形補間により算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の気圧測定装置。
【請求項7】
前記気圧測定手段は、毎正時に気圧データを取得する
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の気圧測定装置。
【請求項8】
前記記憶手段は、現在時刻の所定時間前までに計測された気圧に基づく補正気圧データを記憶する
ことを特徴とする請求項2に記載の気圧測定装置。
【請求項9】
前記天気予報手段は、直近に取得された補正気圧データに係る大気圧と、前記記憶手段に記憶された全ての補正気圧データに係る大気圧の平均値とのずれに基づいて天気の回復傾向又は悪化傾向を判断する
ことを特徴とする請求項2又は8に記載の気圧測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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