説明

気密構造を有する盛土

【課題】 有害物質を含む不良材料土を用いても環境に影響を与えることなく盛土を構成することができる気密構造を有する盛土を提供する。
【解決手段】 気密構造を有する盛土において、遮水性を高めた支持地盤1と、この支持地盤1の中央部に盛土の一部として配置される有害物質を含む不良材料土3と、この不良材料土3を覆うように配置される真空気密シート5と、この真空気密シート5上に配置される上部盛土8と、この上部盛土8の上部に配置される床版スラブ11とを構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道や道路などの盛土に係り、特に気密構造を有する盛土に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の盛土は、斜面〔のり面(1:1.5程度)〕を有した台形状の構造物である。
図2はかかる従来の盛土の断面図である。
この図において、101は盛土を構築する支持地盤、102は下部盛土、103は上部盛土、104は盛土補強材、105は層厚管理材、106は上部盛土103上に配置される床版スラブであり、その床版スラブ106上にコンクリート路盤107が敷設されて、鉄道車両108が走行する。
【0003】
従来の盛土支持基盤の補強構造としては、下記の特許文献1及び2に開示されるようなものがあった。
近年では盛土の中に繊維材を配置し勾配を急にした補強盛土や、アンカーの杭体を斜めに配置してのり面を急勾配にした盛土もある(下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−303582号公報
【特許文献2】特許第4310502号公報
【特許文献3】特開2008−221777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような盛土の構築現場では、産業廃棄物とされている現場発生土などの不良材料土が発生することがある。このような不良材料土は有害物質を含んでおり、汚染などの問題から、従来は盛土材として用いることができなかった。
しかし、現場発生土の廃棄は、コストがかかるだけでなく、環境にも影響を与えることから、これらの不良材料土を盛土材として有効に活用するための工夫が求められている。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みて、有害物質を含む現場発生土を用いても環境に影響を与えることなく盛土を構成することができる、気密構造を有する盛土を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕気密構造を有する盛土において、遮水性を高めた支持地盤と、この支持地盤の中央部に盛土の一部として配置される有害物質を含む不良材料土と、この不良材料土を覆うように配置される真空気密シートと、この真空気密シート上に配置される上部盛土と、この上部盛土の上部に配置される床版スラブとを構築することを特徴とする。
【0008】
〔2〕上記〔1〕記載の気密構造を有する盛土において、前記真空気密シート上に配置される前記上部盛土が良質土であることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の気密構造を有する盛土において、前記真空気密シート上に配置される前記上部盛土がセメント改良土であることを特徴とする。
〔4〕上記〔1〕記載の気密構造を有する盛土において、前記盛土が鉄道車両が走行する鉄道の盛土であることを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔1〕記載の気密構造を有する盛土において、前記盛土が自動車が走行する道路の盛土であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、産業廃棄物を有効利用して、施工性に優れかつ環境に影響を与えない性能の高い盛土を構築することができ、不良材料土の廃棄にかかるコストも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例を示す気密構造を有する盛土の断面図である。
【図2】従来の盛土の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の気密構造を有する盛土は、遮水性を高めた支持地盤と、この支持地盤の中央部に盛土の一部として配置される有害物質を含む不良材料土と、この不良材料土を覆うように配置される真空気密シートと、この真空気密シート上に配置される上部盛土と、この上部盛土の上部に配置される床版スラブとを構築する。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す気密構造を有する盛土の断面図である。
この図において、1は盛土を構築する支持地盤、2はメンブレンシート、3は支持地盤1の中央部に盛土の一部として構築される有害物質を含む不良材料土、4は不良材料土3を覆うためのメンブレンシート、5は盛土の一部としての不良材料土3を覆うように配置される真空気密シートであり、線路延長方向に連続して配置される。6はこの真空気密シート5と不良材料土3を密着させるための真空ポンプ、7は下部盛土、8は上部盛土、9は盛土補強材、10は層厚管理材、11は上部盛土8上に配置される床版スラブ、12は床版スラブ11上に敷設されるコンクリート路盤、13はコンクリート路盤12上を走行する鉄道車両である。
【0014】
盛土を構築する支持地盤1は、遮水性を高めた構造となるようにする。ここでは、遮水材としてのメンブレンシート2を敷設している。また、支持地盤1そのもののセメント改良を行うことで遮水性を高めるようにしてもよい。この支持地盤1上に盛土を構築する。この時、盛土の中央部は、現場発生土などの不良材料土3を盛土材として構築する。不良材料土3は、何もせずそのまま盛土としてもよいし、セメントなどで固めて構築してもよい。盛土の一部として構築したこの不良材料土3は、メンブレンシート4で覆うことで遮水性を確保する。その上に真空気密シート5を敷設し、真空ポンプ6により真空引きを行い、真空圧を作用させて不良材料土3と真空気密シート5を密着させ気密性を高める。この真空圧密工法は、スウェーデンで開発された工法を、丸山工業株式会社が1992年に実用化したもので、軟弱地盤における安定の問題を解決し、残留沈下の解消に寄与している。
【0015】
最後に、盛土としての不良材料土3の上部を良質の盛土材で覆い、盛土を完成させる。この時、セメント改良土で盛土を構築するとさらに機能が向上する。
なお、真空ポンプ4による真空状態は適宜解除することができる。これは、不良材料土3の上部をさらに盛土材で覆うことで転圧を行っており、真空圧を保持してなくても不良材料土3と真空気密シート5の高密着状態が維持できるためである。真空状態を保持可能であれば、保持状態のままにすることもできる。
【0016】
このように、有害物質を含む不良材料土3は、全て遮水性の高いメンブレンシート4でくるまれており、これを真空気密シート5内に気密性を高めて閉じ込めることができる。
したがって、現場発生土などの有害物質を含む不良材料土3が外部に流出する恐れがないので、現場近くで盛土の一部として利用することができ、搬送や廃棄にかかるでコストが低減できる。また、不良材料土3は盛土内に閉じ込められるので、環境的に問題のない地盤改良盛土として構築することができる。
【0017】
上記実施例では、鉄道車両が走行する鉄道の盛土について説明したが、自動車が走行する道路の盛土であってもよいことは言うまでもない。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の気密構造を有する盛土は、現場発生土などの不良材料土を盛土材として用いた気密構造を有する盛土として利用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 支持地盤
2,4 メンブレンシート
3 不良材料土
5 真空気密シート
6 真空ポンプ
7 下部盛土(良質盛土)
8 上部盛土(良質盛土)
9 盛土補強材
10 層厚管理材
11 床版スラブ
12 コンクリート路盤
13 鉄道車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)遮水性を高めた支持地盤と、
(b)該支持地盤の中央部に盛土の一部として配置される有害物質を含む不良材料土と、
(c)該不良材料土を覆うように配置される真空気密シートと、
(d)該真空気密シート上に配置される上部盛土と、
(e)該上部盛土の上部に配置される床版スラブとを構築することを特徴とする気密構造を有する盛土。
【請求項2】
請求項1記載の気密構造を有する盛土において、前記真空気密シート上に配置される前記上部盛土が良質土であることを特徴とする気密構造を有する盛土。
【請求項3】
請求項1記載の気密構造を有する盛土において、前記真空気密シート上に配置される前記上部盛土がセメント改良土であることを特徴とする気密構造を有する盛土。
【請求項4】
請求項1記載の気密構造を有する盛土において、前記盛土が鉄道車両が走行する鉄道の盛土であることを特徴とする気密構造を有する盛土。
【請求項5】
請求項1記載の気密構造を有する盛土において、前記盛土が自動車が走行する道路の盛土であることを特徴とする気密構造を有する盛土。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−132660(P2011−132660A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289932(P2009−289932)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】