説明

気水分散機構

【課題】気水分散機能部材の数を増やしても高い空気噴出量均等度を維持するとともに、支持砂利層全体を洗浄し、かつ通水口を目詰まりしにくくすることができる気水分散機構を提供すること。
【解決手段】濾材を支持する支持砂利層1に埋設するように濾過処理槽の支持板2に設けられ、濾材に原水を供給するとともに、支持砂利層1の気水洗浄を行うようにした気水分散機構において、支持板2を貫通する気水通導用ノズル3と、この気水通導用ノズル3を覆うように支持板2上に着脱可能に固定された伏せ椀状のノズルヘッド4とを備え、ノズルヘッド4の周壁に複数の空気噴出孔5を形成するとともに、ノズルヘッド4と支持板2の間に通水口6を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過処理槽の気水分散機構に関し、特に、気水分散機能部材の数を増やしても高い空気噴出量均等度を維持するとともに、支持砂利層全体を洗浄し、かつ通水口を目詰まりしにくくすることができる気水分散機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の濾過のための気水分散機構の一例としてノズルタイプがあり、図5に示すように、濾過処理槽の支持板2に、支持砂利層1に埋設するように固定されている(例えば、特許文献1参照)。
これらの気水分散機能部材のノズルヘッド8には、図4に示すように、空気と水を通すためのスリット81が開けられているが、そのスリット幅は1.0mm以下であることが多い。
しかしながら、上向流式生物処理のように、微生物を多く含んだ原水を直接このようなスリット81に通水し続けると、1.0mm程度のスリットでは濁質や生物膜などによって比較的短期間で目詰まりを生ずることがある。
【0003】
当然、空気洗浄を行うので、洗浄毎にスリット81は洗浄されるわけであるが、数ヶ月の通水で形成された生物膜などは粘着性がかなり強いため、このスリット81から完全に除去することは極めて困難である。
しかも、従来の気水分散機能部材では、気水通導用ノズル9とノズルヘッド8が一体であるため、スリット81の目詰まりを完全に除去する場合、ノズルヘッド8の清掃のために濾過槽から濾材及び支持砂利層を撤去しなければならないという大きな欠点がある。
【0004】
これを解決するために、スリット幅を従来の1.0mm程度から5.0mm程度まで大きくすれば、スリットの先に述べたような目詰まりをある程度解消できると思われるが、スリットの幅を大きくしたがために開口比(集水孔総面積/濾過面積)が大きくなるため、各スリットからの洗浄用空気の噴出量の均等度が低下するという欠点が出てくる。
また、スリット幅を5.0mm程度に大きくしても、スリット数を減らせば開口比を小さくでき、空気の噴出量均等度を高くできると思われるが、スリット数を減らすことによって空気の噴出孔数も減るわけであるから、支持砂利層を広範囲に洗浄できなくなるという問題がある。
【0005】
また、一般的な気水分散機能部材のノズルヘッドの直径は100mm以下のものが多く、かつノズルヘッドの設置間隔は200mm程度を標準としているので、空気洗浄の際に各ノズルヘッド間の支持砂利の一部は洗浄空気と接触できず、支持砂利層全体を十分に洗浄することができないという欠点がある。
気水分散機能部材の数を増やしてノズルヘッドの設置間隔を200mmより狭くすれば、ノズルヘッド間の支持砂利も十分に洗浄できると考えられるが、空気の噴出量均等度の低下などの理由から、気水分散機能部材の数を増やすことはあまり好ましくない。
【0006】
また、上向流式生物処理を行う場合は、その支持砂利層に多量の濁質が捕捉されることから、上記従来の気水分散機構では、洗浄を行っても元の圧力損失まで回復できないことがある。
支持砂利層に捕捉された濁質を十分に除去しないままで濁度の高い原水が支持砂利層に流入すると、急激に圧力損失が増加して運転に支障を与える可能性が高い。
したがって、上記従来の気水分散機構は、上向流式生物処理に適したものとは言い難く、上向流式生物処理に対しては、支持砂利層全体及び濾材を洗浄できるような新型式の気水分散機構の適用が望まれている。
【特許文献1】特開平8−243575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の気水分散機構が有する問題点に鑑み、気水分散機能部材の数を増やしても高い空気噴出量均等度を維持するとともに、支持砂利層全体を洗浄し、かつ通水口を目詰まりしにくくすることができる気水分散機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の気水分散機構は、濾材を支持する支持砂利層に埋設するように濾過処理槽の支持板に設けられ、濾材に原水を供給するとともに、支持砂利層の気水洗浄を行うようにした気水分散機構において、気水通導用ノズルと、該気水通導用ノズルを覆うように支持板上に固定された伏せ椀状のノズルヘッドとを備え、ノズルヘッドの周壁に複数の空気噴出孔を形成するとともに、ノズルヘッドと支持板の間に通水口を形成したことを特徴とする。
【0009】
この場合において、気水通導用ノズルを支持板に着脱可能に設けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の気水分散機構によれば、濾材を支持する支持砂利層に埋設するように濾過処理槽の支持板に設けられ、濾材に原水を供給するとともに、支持砂利層の気水洗浄を行うようにした気水分散機構において、気水通導用ノズルと、該気水通導用ノズルを覆うように支持板上に固定された伏せ椀状のノズルヘッドとを備え、ノズルヘッドの周壁に複数の空気噴出孔を形成するとともに、ノズルヘッドと支持板の間に通水口を形成することから、空気噴出孔と通水口を別にすることにより、気水分散機能部材の数を増やしても空気噴出開孔比はそれほど大きくならず、気水分散機能部材の数を増やしても高い空気噴出量均等度を維持することができ、また、通水口は適宜大きく形成することができるため、従来よりも遥かに目詰まりしにくい構造とすることができる。
また、支持砂利層全体を洗浄するためには、空気噴出孔から空気を均一に噴出させる必要があり、空気の噴出量均等度を高めるためにはノズルヘッド内の空気圧力変動を小さくしなければならないが、気水通導用ノズルの先端をノズルヘッドの底部から頂部までの中間程度の位置とすることで、気水通導用ノズルから流入した空気はノズルヘッド内で安定した空気層を形成することができ、これにより、空気圧力変動を小さくして、空気の噴出量均等度を高めることができる。
さらに、従来では、空気洗浄時にはスリットの上部からしか空気は噴出しないので、空気洗浄を何回行っても支持砂利層の下部を十分に洗浄することはできなかったのに対し、本発明の気水分散機構では、空気噴出孔を支持板に近い位置としているため、支持砂利層の下部も十分に洗浄することができる。
【0011】
この場合、気水通導用ノズルを支持板に着脱可能に設けることにより、気水通導用ノズルを高圧洗浄ノズル等に付け替えることができ、これにより、従来のように濾過槽から濾材及び支持砂利層を撤去することなく、容易にノズルヘッドを洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の気水分散機構の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1〜図3に、本発明の気水分散機構の一実施例を示す。
この気水分散機構は、濾材を支持する支持砂利層1に埋設するように濾過処理槽の支持板2に設けられ、濾材に原水を供給するとともに、支持砂利層1の気水洗浄を行うようにする気水分散機能部材を備えるようにしている。
そして、この気水分散機構を構成する気水分散機能部材は、支持板2を貫通する気水通導用ノズル3と、該気水通導用ノズル3を覆うように支持板2上に着脱可能に固定された伏せ椀状のノズルヘッド4とを備え、ノズルヘッド4の周壁に複数の空気噴出孔5を形成するとともに、ノズルヘッド4と支持板2の間に通水口6を形成している。
【0014】
濾過処理槽は、図では省略しているが、例えば、微生物の担体により濾材を構成し、この濾材を支持砂利層1を介して支持板2で支持するとともに、この支持板2の複数箇所に気水分散機能部材を設け、この気水分散機能部材から原水を上向き流として供給し濾過する装置である。
【0015】
気水通導用ノズル3は、上下に開口する筒状体からなり、下部に原水や洗浄用の空気及び/又は水のホース(図示省略)が接続されるノズルステム部31を備えている。
また、気水通導用ノズル3は、嵌合により着脱可能に設けられたワンタッチアダプタ32を備え、このワンタッチアダプタ32を介して支持板2に着脱可能に取り付けられている。
【0016】
ノズルヘッド4は、本実施例ではステンレス製の伏せ椀状のものからなり、周壁の下部に複数の空気噴出孔5が等間隔で形成されている。
このノズルヘッド4は、空気噴出孔5以外は気密に形成されており、気水通導用ノズル3から供給された空気Aは、ノズルヘッド4に一旦溜まってから空気噴出孔5より噴出する。
また、このノズルヘッド4は、スペーサを兼ねた所定厚みの4片の固定板41によって支持板2に固定されており、通水口6は、この固定板41によってノズルヘッド4と支持板2の間に設けられた隙間によって形成されている。
【0017】
次に、本実施例の気水分散機構に用いられる気水分散機能部材の作用を、洗浄操作時のことを中心に説明する。
この気水分散機能部材は、従来のように洗浄操作時に空気を水と同じ噴出口から噴出させるのではなく、伏せ椀状のノズルヘッド4の側面に開けた空気噴出孔5から空気Aを噴出させ、原水は、主としてノズルヘッド4と支持板2の隙間により形成される通水口6から通水する。
従来の気水分散機能部材では、図4に示すように、空気噴出孔と通水口を同一としていたので、ノズル数を増やすと空気噴出開孔比(空気噴出孔総面積の濾過面積(≒支持板の面積)に対する比)は大きくなり、空気噴出精度の低下を招くという問題があったが、本実施例では、空気噴出孔5と通水口6を別にすることにより、気水分散機能部材の数を増やしても空気噴出開孔比はそれほど大きくならないので、気水分散機能部材の数を増やしても高い空気噴出量均等度を維持することができる。
また、本実施例では、ノズルヘッド4と支持板2の隙間により形成される通水口6の高さを10mm程度としているので、従来よりも遥かに目詰まりしにくい構造となっている。
【0018】
さらに、本実施例の気水分散機能部材は、ノズルヘッド4の直径が100〜120mmと従来のノズルヘッド8より若干大きいので、各ノズルヘッド4同士の距離は、従来のノズルヘッド8同士の距離よりも短くなる。
例えば、気水分散機能部材を160mm間隔で設置した場合、ノズルヘッド同士の距離は、従来(ノズルヘッドの直径70mm)が85mmであるのに対し、この気水分散機能部材では35〜50mmとなる。
したがって、本実施例の気水分散機能部材は、気洗浄の際に各ノズルヘッド4間の支持砂利層1全体が空気Aと接触でき、支持砂利層1全体を十分に洗浄することが可能となる。
【0019】
また、従来のノズルヘッドは樹脂製のタイプが多いが、本実施例のノズルヘッド4はステンレス製としているので、ノズルヘッド4を大きくしても、支持砂利層1及び濾材の重量に対する耐久性及び腐食性には何ら問題ない。
上向流式生物処理では、圧力損失の主原因は、支持砂利層1に溜まった濁質及び生物膜に起因するため、気水分散機構を使用して支持砂利層1全体の洗浄を十分に行うことにより、生物処理の洗浄間隔を長くすることが可能となる。
また、洗浄間隔を長くすることができれば、洗浄排水量を減らすことができるので汚泥処理にかかるコストを削減することが可能となる。
【0020】
ところで、支持砂利層1全体を洗浄するためには、空気噴出孔5から空気Aを均一に噴出させる必要がある。空気Aの噴出量均等度を高めるためにはノズルヘッド4内の空気圧力変動を小さくしなければならない。
そこで、気水通導用ノズル3の先端を、ノズルヘッド4の底部から頂部までの中間程度の位置とすることで、気水通導用ノズル3から流入した空気Aがノズルヘッド4内で安定した空気層を形成することができ、これにより、空気圧力変動を小さくして、空気Aの噴出量均等度を高めることができる。
【0021】
また、従来の気水分散機能部材は、図5に示すように、空気洗浄時にはスリット81の上部からしか空気Aは噴出しないので、空気洗浄を何回行っても支持砂利層1の下部を十分に洗浄することはできない。
一方、本実施例の気水分散機能部材は、図1に示すように、空気噴出孔5を支持板2から十数ミリの位置としているため、支持砂利層1の下部も十分に洗浄することができる。
【0022】
このように、本実施例の気水分散機能部材は、従来に比べて目詰まりしにくい構造となっているが、それでも原水を長期間(1年以上)通水すると、生物膜による目詰まりが発生すると考えられる。
そこで、ノズルヘッド4の目詰まりを除去するために、本実施例の気水分散機能部材では、空気噴出孔5及び通水口6に高圧水を噴射できるような構造としている。
【0023】
高圧水によるノズルヘッド4の洗浄を図3に示す。
まず、すべての気水分散機能部材の雌側のワンタッチアダプタ32aのロックを解除して、気水通導用ノズル3及びノズルステム部31を取り外す。
同じワンタッチアダプタ32aを先端に付けた高圧ホース7を、支持板2に溶接している雄側のワンタッチアダプタ32bに取り付けて、高圧ノズル71からノズルヘッド4に高圧水を数分間流す。
このことを他の気水分散機能部材についても反復する。
【0024】
洗浄排水は、別の気水通導用ノズル3を取り外したあとの孔21から排出され、最後に濾材層上から清水をホース等で撒き、孔21から濁質をできるだけ下部へ洗い落とす。
また、上記のような洗浄方法のほかに、すべての気水分散機能部材のワンタッチアダプタ32aのロックを解除して、気水通導用ノズル3及びノズルステム部31を取り外した後、気水通導用ノズル3を取り外したあとの孔21に市販の高圧洗浄ノズルを入れて洗浄することも可能である。
従来では、ノズルヘッドの清掃のために、濾過槽から濾材及び支持砂利を撤去しなければならないという大きな欠点があったが、本実施例の気水分散機能部材では、上記のように、ノズルヘッド4と気水通導用ノズル3とを一体としないことでこの欠点を克服することができた。
【0025】
また、従来では、ノズルヘッドが比較的小さいため、支持砂利層1の局所部分に空気Aが噴出されることになり、その箇所に強い上向きのせん断力が作用する。
そのため、従来の気水分散機構では、洗浄による支持砂利層1(特に表層)の混合を防ぐために、支持砂利層1の厚みを500mm程度にする場合が多い。
一方、本実施例の気水分散機構は、ノズルヘッド4が比較的大きいので、広範囲に空気Aが噴出して支持砂利層1の局所部分に強い上向きのせん断力が作用しない。
実際、空気分散性能比較試験(支持砂利層の厚みは375mm)において、本実施例の気水分散機構では、空気洗浄後に支持砂利層1の混合はほとんどなかった。
したがって、本実施例の気水分散機構は、従来に比べて支持砂利層の厚みを小さくできるので、イニシャルコスト及びランニングコストの削減を達成できる。
【0026】
以上、本発明の気水分散機構について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、実施例に記載した構成を適宜組み合わせるなど、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の気水分散機構は、気水分散機能部材の数を増やしても高い空気噴出量均等度を維持するとともに、支持砂利層全体を洗浄し、かつ通水口を目詰まりしにくくするという特性を有していることから、濾過処理槽の気水分散機構の用途に広く好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の気水分散機構に用いられる気水分散機能部材の一実施例を示す断面図である。
【図2】同気水分散機能部材を示し、(a)はその断面図、(b)は同平面図、(c)はワンタッチアダプタの断面図、(d)は気水通導用ノズルの正面図である。
【図3】同気水分散機能部材のノズル部の交換を示し、(a)は気水通導用ノズルを装着した断面図、(b)は気水通導用ノズルを取り外した断面図、(c)は高圧ホースを装着した断面図である。
【図4】従来の気水通導用ノズルを示し、(a)はその一例を示す正面図、(b)は他の例を示す正面図である。
【図5】従来の気水通導用ノズルによる空気洗浄を示し、(a)はその一例を示す正面図、(b)は他の例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 支持砂利層
2 支持板
21 孔
3 気水通導用ノズル
31 ノズルステム部
32 ワンタッチアダプタ
4 ノズルヘッド
41 固定板
5 空気噴出孔
6 通水口
7 高圧ホース
71 高圧ノズル
A 空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材を支持する支持砂利層に埋設するように濾過処理槽の支持板に設けられ、濾材に原水を供給するとともに、支持砂利層の気水洗浄を行うようにした気水分散機構において、気水通導用ノズルと、該気水通導用ノズルを覆うように支持板上に固定された伏せ椀状のノズルヘッドとを備え、ノズルヘッドの周壁に複数の空気噴出孔を形成するとともに、ノズルヘッドと支持板の間に通水口を形成したことを特徴とする気水分散機構。
【請求項2】
気水通導用ノズルを支持板に着脱可能に設けたことを特徴とする請求項1記載の気水分散機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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