説明

気泡混入防止機構および該機構を備える液体材料吐出装置並びに液体材料吐出方法

【課題】計量部内に液体材料を充填する場合において、付加的装置を必要とせず、ばらつきのない一定した充填状態が得られる、気泡混入防止機構および該機構を備える液体材料吐出装置並びに液体材料吐出方法の提供。
【解決手段】ノズルと連通する流路を有する計量部と、計量部の流路内を往復動するプランジャと、を備えた吐出装置において、その計量部のノズルと反対側の端部に取り付け可能な気泡混入防止機構であって、計量部の流路と連通し、その内部を前記プランジャが往復動する第一の孔と、第一の孔のノズル側の端部に設けられた第一のシール部材と、第一の孔のノズルと反対側の端部に設けられた第二のシール部材と、第一の孔の側面に連通する第二の孔とを含んで構成されることを特徴とする気泡混入防止機構および該機構を備える液体材料吐出装置並びに液体材料吐出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体材料で満たされた計量部内をプランジャが進出移動することによりノズルから液体材料を定量吐出する技術における気泡混入防止機構および該機構を備える液体材料吐出装置並びに液体材料吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の液体材料を精密に定量吐出する装置の一つとして、プランジャ(或いはピストン)が液体材料で満たされた計量部(或いはシリンジ)内を進出移動することによりノズルから液体材料を定量吐出するプランジャ式吐出装置が知られている。当該方式の吐出装置は、プランジャを進出移動させた体積の分だけノズルから吐出されるため、他の方式の吐出装置よりも高精度で安定した吐出を実現できることから、電子部品の樹脂封止、電池の電解液注入など様々な分野で使用されている。
【0003】
ところで、プランジャ式吐出装置は、吐出をする前、特に空の状態の計量部内に液体材料を充填する場合に、計量部内に液体材料を充填する操作を行う。この充填操作を行うと、プランジャが後退移動することによる圧力低下のために計量部内に気泡が発生したり、角部などの液体材料で満たされない部分に気泡が残留したりという事態がしばしば起きていた。計量部内の液体材料に気泡が混入していると、気泡の圧縮性の影響を受け、プランジャ進出量に対する吐出される液体材料の量が一定せず、精密な定量吐出が行えない。
【0004】
気泡混入の問題に対し、現在まで様々な提案がなされてきた。例えば、特許文献1には、液材が貯留された液材供給容器と、該液材供給容器の開口に接続可能な供給口と液材を吐出する吐出口と供給口から吐出口へ連通する流路と流路の途中に配されたプランジャと供給口および吐出口をそれぞれ開閉する開閉機構とを有する液材吐出装置と、を備えたディスペンサ内のエア除去方法であって、上下反転された液材供給容器の開口に上下反転された液材吐出装置の供給口を接続するステップと、液材供給容器からの液材を流路に充填するステップとを有することを特徴とするディスペンサのエア除去方法が開示されている。
【0005】
一方、特許文献2には、シリンジの穴底にピストンシール部材と隙間を形成する逃がし穴を設け、ピストンをその逃がし穴に突入させた状態で液体をシリンジ吐出口より注入し、シール部と逃がし穴で形成する隙間を通して外部に空気を排出させてから、ピストンを少し引き込んでシールを作用させ隙間を閉じ液体を外部に排出させることなく液体を内部に充填するシリンジが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−183787号公報
【特許文献2】実開平8−1064号公報
【特許文献3】WO2007/046495
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された技術は、気泡混入防止という一定の効果は奏しているが、作業性が著しく悪かった。すなわち、特許文献1に記載の方法では、吐出装置を上下反転しなければならないため、吐出装置および液材供給容器の取り付け、取り外しなど作業が煩雑であった。また、分岐している管に対しては液材供給容器への加圧に加えて吐出口からの真空吸引が必要であった。さらに、上下反転という操作が必要なため自動化が難しかった。
【0008】
一方、特許文献2に記載のシリンジでは、液体がシール部まで充填されたことを検知する手段は目視で行うため作業者によってばらつきがあり、自動化することが難しかった。また、ピストンを引き込んだ後の操作を誤ると、ノズルから気泡を吸い込んだり、圧力の低下により内部に気泡を発生させることがあった。
【0009】
図8に概略を示す特許文献3に係る従来のプランジャ式吐出装置においては、液体材料を計量部に充填する際、プランジャを抜いてから、液体材料を溢れさせることで計量部内の空気を排除し、充填終了を検知していたので、計量部の上端は液体材料充填のたびに汚れることとなっていた。その後、プランジャを差し込むときに、気泡を巻き込むという課題があった。また、溢れ出た液体材料を拭き取ったり、プランジャを差し込んだりする操作は手作業であったため、時間がかかり、作業者によって充填状態にばらつきが発生するという課題があった。
【0010】
そこで、本発明は、計量部内に液体材料を充填する場合において、付加的装置を必要とせず、ばらつきのない一定した充填状態が得られる、気泡混入防止機構および該機構を備える液体材料吐出装置並びに液体材料吐出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、プランジャの後退移動に伴う計量部内の圧力低下の問題やプランジャの進出移動に伴う残留空気の巻き込みの問題などを解消するべく、計量部の流路形状とプランジャ位置の制御を鋭意工夫し、本発明をなした。すなわち、
【0012】
第1の発明は、ノズルと連通する流路を有する計量部と、計量部の流路内を往復動するプランジャと、を備えた吐出装置において、その計量部のノズルと反対側の端部に取り付け可能な気泡混入防止機構であって、計量部の流路と連通し、その内部を前記プランジャが往復動する第一の孔と、第一の孔のノズル側の端部に設けられた第一のシール部材と、第一の孔のノズルと反対側の端部に設けられた第二のシール部材と、第一の孔の側面に連通する第二の孔とを含んで構成されることを特徴とする気泡混入防止機構である。
第2の発明は、第1の発明において、前記第一の孔の内周が、前記プランジャの外周より大きいことを特徴とする。
第3の発明は、第1または2の発明において、前記第一および第二のシール部材の内周が、前記プランジャの外周と実質的に同じ大きさであり、前記第一および第二のシール部材の外周が、前記第一の孔の内周よりも大きいことを特徴とする。
第4の発明は、第1ないし3のいずれかの発明において、前記第二の孔の内周が、前記第一の孔の内周と比べ小さいことを特徴とする。
第5の発明は、第1ないし4のいずれかの発明において、前記第二の孔の前記第一の孔とは反対側の端部に液受け部を有することを特徴とする。
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明において、前記プランジャの最後退位置において、前記プランジャの先端と前記第二の孔が前記第一の孔と連通する端部の上端位置の水平面とが構成する空間aと比べ、前記プランジャが前記第一のシール部材に当接する位置において、前記第一の孔内周面、前記プランジャの外周面、前記第一のシール部材および前記第二の孔が前記第一の孔と連通する端部の上端位置の水平面と構成する空間bが大きくなるように構成することを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、第1ないし6のいずれかの発明に係る気泡混入防止機構と、液体材料を供給する液体材料供給源と、ノズルと連通する流路を有する計量部と、計量部の流路内を往復動するプランジャと、液体材料が吐出される吐出口を有するノズルと、液体材料供給源と計量部との連通または計量部とノズルとの連通を切り換える切換バルブと、を備えた液体材料吐出装置である。
第8の発明は、第7の発明に係る液体材料吐出装置を用いた液体材料吐出方法であって、前記計量部に液体材料を充填する充填工程と、前記プランジャを進出移動して前記計量部内の液体材料をノズルから吐出する吐出工程を有し、該充填工程は、前記プランジャを前記第二の孔が前記第一の孔と連通する端部の上端位置と前記第二のシール部材との間まで後退移動させる第1ステップ、少なくとも前記第二の孔の前記第一の孔とは反対側の端部から液体材料が溢れるまで前記計量部に液体材料を供給する第2ステップ、前記プランジャを前記第一のシール部材に当接するまで進出移動させる第3ステップ、を含むことを特徴とする液体材料吐出方法である。
第9の発明は、第8の発明において、前記第2ステップにおいて液体材料の供給を停止することなく前記第3ステップを実行することを特徴とする。
第10の発明は、第8または9の発明において、前記第3ステップにおけるプランジャの進出移動速度を、前記吐出工程におけるプランジャの進出移動速度と比べ低速とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流路の形状とプランジャ位置の制御により充填を行うので、真空吸引装置などの付加的装置を必要とせず計量部内への気泡の混入を防止することができる。
また、充填動作が単純であるので、作業に熟練していない者でも容易に操作が可能で、作業時間の短縮を図ることができる。
さらに、充填動作が単純であり、しかも充填動作を自動で行うことができるので、作業者による充填状態のばらつきを最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る気泡混入防止機構の拡大断面図である。
【図2】本発明に係る気泡混入防止機構内に形成される空間の態様を説明する説明図である。
【図3】本発明に係る気泡混入防止方法の液体材料供給工程を説明する説明図である。
【図4】本発明に係る気泡混入防止方法のプランジャ初期下降工程を説明する説明図である。
【図5】実施例に係る吐出装置の正面図および側面図である。
【図6】実施例に係る吐出装置の側面要部断面図である。
【図7】実施例に係る吐出装置を搭載した塗布装置を示す概略斜視図である。
【図8】従来のプランジャ式吐出装置を説明する要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。
なお、以下では、気泡混入防止機構側を「上」、計量部側を「下」ということがある。また、プランジャの移動方向について、下方向への移動を「進出」移動、上方向への移動を「後退」移動ということがある。
【0017】
[気泡混入防止機構]
本実施の形態に係る気泡混入防止機構の要部断面図を図1に示す。図1においてハッチングを施した部分が断面である。
気泡混入防止機構1は、計量部6の上端部に設置された本体ブロック7と、計量孔61と連通し、本体ブロック7に貫設される第一の孔2と、第一の孔2の側面に連通するよう本体ブロック7に穿設される第二の孔3と、第一の孔2の下部に配設される第一のシール部材4と、第一の孔2の上端部に配設される第二のシール部材5とから構成される。
【0018】
第一の孔2は、計量孔61と同軸となるよう本体ブロック7に貫設されており、その内径(内周)はプランジャ8の外径(外周)よりも大きくなっている。一方で、第一の孔2の上下端部に配設されたシール部材(4、5)の内径は、第一の孔2の内径よりも小さく、プランジャ8とほぼ同径となっている。すなわち、プランジャ8は、第一の孔2の内周面に接することはなく、第一の孔2の両端に配設されたシール部材(4、5)の内周面に密接して摺動する。このような構成とすることで、プランジャ8が第一のシール部材4の位置まで下降したとき、第一の孔2には、第一の孔の内側面9、プランジャの外側面10、第一のシール部材の外面11および第二のシール部材の外面12の一部により囲まれる円筒状の空間a17が形成されるようになっている(図2(a)参照)。気泡混入防止方法の段落で後述するように、この空間が気泡混入防止に寄与する。
【0019】
本実施の形態でのシール部材は、ゴムや樹脂からなるOリングを用いている。シール部材の種類や材料は、液体材料への耐性やプランジャの移動速度などに応じて適宜選択することができる。そして、第一のシール部材4は、計量部6と本体ブロック7との間に挟まれて固定され、第二のシール部材5は、本体ブロック7とシール押さえ板13との間に挟まれて固定されている。
第二の孔3は、一方の端部が第一のシール部材4と第二のシール部材5との間で第一の孔2に連通するよう本体ブロック7に穿設される。本実施の形態では、第二の孔3の向きは第一の孔2に対して直角となっているが、上向きや下向きに傾いた方向に穿設されていてもよい。第二の孔3の内径(内周)は、第一の孔2の内径(内周)よりも小さくなっている。第二の孔3の、第一の孔2と連通した側とは反対側の端部である開放端22は開放されており、そこに液受け部14が設けられている。液受け部14は、後述する液体材料の充填時に、第二の孔3から溢れ出る液体材料20を受ける容器の役割を果たし、気泡混入防止機構1や吐出装置25の下方に垂れることを防いでいる。本実施の形態では、液受け部14の上面は開放されている。
【0020】
第二の孔3の第一の孔2と連通する側の端部は、空間b18が空間c19と比べ小さくなる限り、第一のシール部材4と第二のシール部材5の間のどの位置に設けてもよい。すなわち、図2(b)に示すプランジャ8が最も上昇した位置(最後退位置)において、プランジャ先端面15と、第二の孔の上端16位置の水平面とが構成する円柱状の空間b18と、図2(c)に示すプランジャ8が第一のシール部材4の位置まで下降したときにおいて、第一の孔の内側面9、プランジャの外側面10、第一のシール部材の外面11の一部および第二の孔の上端16に平行な平面により囲まれる円筒状の空間c19とを比較したときに、空間b18よりも空間c19の体積の方が大きくなるように第二の孔3の位置を決定すればよい。このような構成とすることで、気泡混入防止方法の段落で後述するように、気泡混入防止機構1内に空気が残留していても、プランジャ8の下降時に第一のシール部材4の下方に位置する計量部6内に気泡が浸入することがない。ここで、空間c19の大きさは、空間b18の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。
なお、本実施の形態では、円柱形状のプランジャ8により説明したが、これに限定されない。例えば、プランジャ8を六角柱状に構成してもよいし、プランジャ8の先端も平面でなくてもよい。
以上のように構成される気泡混入防止機構に液体材料を充填する手順を次に説明する。
【0021】
[気泡混入防止方法]
本実施の形態に係る気泡混入防止方法は、プランジャ8を後退移動させて液体材料20を貯留容器26から第一の孔2に送給する液体材料供給工程と、プランジャ8を進出移動することで計量部6内の液体材料20を吐出可能な状態とするプランジャ初期下降工程の二段階からなる。
(1)液体材料供給工程(図3)
まず、プランジャ8を第二のシール部材5と第二の孔の上端16との間の位置まで上昇させる。この位置をプランジャ8が最も上昇した位置(最後退位置)とする。ついで、貯留容器26に圧縮気体源27からの圧力を印加し、液体材料20を計量部6の計量孔61を通して第一の孔2へと圧送する(図3(a))。そのまま圧送を続けると液面が上昇し、第二の孔の下端21を越えるころになると、液体材料20は第二の孔3へと流入し始める(図3(b))。さらに圧送を続けると、液面が第二の孔の上端16に達するころ、液面の上昇はプランジャ先端との間に隙間を残して止まる一方、第二の孔3への液体材料20の流入は依然として続く(図3(c))。さらに圧送を続け、第二の孔の開放端22から液体材料20が溢れたとき圧送を停止する(図3(d))。圧送の停止は、液受け部14にセンサ等を設けて液体材料20を検知するようにして行ってもよいし、予め第二の孔3から液体材料20が溢れ出るまでの時間を計測しておき、その時間だけ圧力を印加するようにしてもよい。そうすることで自動化することが可能である。
【0022】
(2)プランジャ初期下降工程(図4)
液体材料20の液面が第二の孔の上端16に到達し、かつ、第二の孔3の全体に行き渡るまで充填し終えたら、吐出が可能な状態とするためにプランジャ8を進出移動する。図4(a)に示す充填が終了した状態から、プランジャ8の下降動作を開始すると、プランジャ8がその先端の下方にある残留空気23を押しながら第一の孔2内を下降していく(図4(b))。このとき、進入したプランジャ8の容積に相当する残留空気23が排除されるが、第二の孔3が第一の孔2より小径に形成されているので、残留空気23は抵抗の小さい第一の孔2の下方へ向かう。そしてプランジャ8が下降して第二の孔3を通過するころになると、プランジャ8先端下方にある残留空気23は、第一の孔内面とプランジャ外面とに囲まれてできる空間24へと回り込み、プランジャ8先端下方にある残留空気23は少なくなってくる(図4(c))。さらにプランジャ8が下降し、第一の孔内面とプランジャ外面とに囲まれてできる空間24が次第に大きくなり、空間b18の大きさとほぼ同じになるころ、プランジャ8先端は液面に接する。このとき、空間c19の大きさを空間b18より大きく形成しているため、プランジャ8先端が液面に接する位置は、プランジャ8が第一のシール部材4に達する位置の常に手前となる。その後、プランジャ8は液体材料20に没入しながら第一のシール部材4に到達する(図4(d))。これにより、プランジャ8を進出移動することで計量部6内の液体材料の吐出が可能な状態となる。
【0023】
このように、本発明では、第一の孔2の水平断面積(径)をプランジャ8の水平断面積(径)と比べ大きく構成し、かつ、空間c19を空間b18より大きく形成することで、プランジャが第一のシール部材4に達する前に、残留空気23をプランジャ8の周囲の空間に回り込ませ、計量部6内に残留空気23が浸入することを防ぐことを可能としている。また、従来装置のように、計量孔61内の圧力低下による気泡の発生の心配もない。
【0024】
さらに、このプランジャ8の動作は、単純な往復動作をするだけであるので、自動化は容易である。但し、プランジャ8の初期下降速度(第一のシール部材4に到達するまでの速度)は吐出時の下降速度(計量孔61内での下降速度)に比べて低速であることが好ましい。なぜなら、初期下降速度が速すぎると、液面を不必要に波立たせ、プランジャ8先端に気泡を巻き込んでしまうおそれがあるためである。具体的な例を挙げると、吐出時のプランジャの下降速度が約10〜24mm/sであるとき、初期下降速度は約1〜5mm/sである。
【0025】
また、上記液体材料供給工程において、液体材料供給工程の終了時に圧送を停止せずに、プランジャ初期下降工程を行うようにしてもよい。圧送は計量孔61から第一の孔2へ向かう流れ(上向きの流れ)を生み出すため、計量孔61へ侵入しようとする気泡を排出する作用を奏するので、気泡混入防止の効果が上がるからである。
【0026】
以上に説明した本発明の気泡防止混入機構によれば、真空吸引装置などの付加的装置を必要としない。また、気泡混入防止方法を含む吐出動作を自動で行えるため、作業者による充填状態のばらつきを解消することができる。
【0027】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
[吐出装置]
実施例1に係る気泡混入防止機構が設置される吐出装置を図5および図6に示す。図5(a)は吐出装置の正面図を示し、(b)は側面図を示す。また、図6は気泡混入防止機構および吐出機構の部分を示した要部断面図である。図6においてハッチングを施した部分が断面である。
【0029】
吐出装置25は、液体材料20を供給する液体材料供給源(シリンジ26)と、吐出するための液体材料20が充填される計量部6と、計量部6内を進退移動するプランジャ8と、液体材料20が吐出される吐出口を有するノズル38と、液体材料供給源と計量部6との連通または計量部6とノズル38との連通を切り換える切換バルブ39と、気泡混入防止機構1とを備える。
【0030】
本実施例では、液体材料供給源として、液体材料20を貯留する容器であるシリンジ26を用いている。シリンジ26の上端は、シリンジ26内に貯留される液体材料20を気泡混入防止機構1や計量部6へ圧送するための圧縮気体源27に接続されている。シリンジ26の下端は、配管チューブ28を通じてバルブブロック29に接続されている。シリンジ26は、ベース板30から延出している固定部材31によって下端と中央付近の二箇所を固定されている。本実施例では、液体材料供給源をシリンジ26により構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、吐出装置25付近に別置きしたタンクにより構成してもよい。
【0031】
計量部6は、吐出する液体材料20が充填される管状の部材からなり、その内部に形成された計量孔61内を、計量孔61の内径より小径のプランジャ8が上下方向に移動可能である。プランジャ8は、連結部32を介してプランジャ駆動機構33に接続され、プランジャ駆動機構33を駆動させることにより上下動することができる。吐出装置25を移動する際は、連結部32がスライドレール34に固定することで、プランジャ8が傾いたり、振れたりすることのない状態で移動することができる。本実施例では、プランジャ駆動機構33として、例えば、リニアアクチュエータが用いられる。
【0032】
計量部6の上端には、気泡混入防止機構1が設置されている。気泡混入防止機構1の構造は、前述の図1で説明したものと同じで、本体ブロック7と、計量孔61と連通し、本体ブロック7に貫設される第一の孔2と、第一の孔2の側面に連通するよう本体ブロック7に穿設される第二の孔3と、第一の孔2の下部に配設される第一のシール部材4と、第一の孔2の上端部に配設される第二のシール部材5とから構成される。気泡混入防止機構1の正面側には、第二の孔3から溢れ出る液体材料20を受ける液受け部14が設けられる。液受け部14は計量部6を挟むように設けられている。計量部6の下端はバルブブロック29に接続され、計量孔61は第二の流路36に連通する。
【0033】
図6に示すように、バルブブロック29には、切換バルブ39が設けられている。切換バルブ39は、その内部に液体材料供給源に連通する第一の流路35と、計量孔61に連通する第二の流路36と、ノズル38に連通する第三の流路37が形成されており、第一の流路35と第二の流路36との連通と、第二の流路36と第三の流路37との連通とを切り換える。本実施例の切換バルブ39は、円柱状の部材で、その表面に第一の流路35と第二の流路35とを連通するための凹溝40が中心軸と平行な方向に形成され、中心軸に直角で側面から中心軸を通り反対側面へ抜ける貫通孔41が穿設される。この切換バルブ39をバルブ駆動機構42により回転させることにより連通する流路を切り換える。なお、切換バルブ39は、円柱状の部材に限定されるものではなく、凹溝40と貫通孔41とを併設した板状の部材をスライドさせる方式であってもよい。
【0034】
切換バルブ駆動機構42としては、例えば、ロータリアクチュエータやモータなどが用いられる。本実施例では、切換バルブ駆動機構42と切換バルブ39とは図示しない動力伝達機構により繋がれており、切換バルブ駆動機構42は切換バルブ39から離れた場所にプランジャ駆動機構33などと連接することができる。図示しない動力伝達機構は、ベース板30に溝を凹設して該溝内に設置することができ、例えば、チェーンやベルトなどが用いられる(動力伝達機構を用い、バルブ駆動機構とプランジャ駆動機構とを連接する構成は、出願人の特許出願に係る特許文献3に詳しい。)。ここで、バルブ駆動機構42の構成は本実施例のものに限定されるわけではなく、動力伝達機構を用いずに、切換バルブ39近傍に切換バルブ駆動機構42を設置して直接駆動するようにしてもよい。
切換バルブ駆動機構42およびプランジャ駆動機構33は、各機構を駆動するための動力源43に接続されている。動力源43は各機構の種類に合わせて圧縮気体源や電源などとすることができる。
吐出装置25は、上記各機器の動作の制御を行う制御部(図示せず)を有している。制御部は、圧縮気体源27から供給される圧力の大きさや印加時間、プランジャ8の移動距離や移動速度、バルブ39の切り換えなどを制御する。
【0035】
[吐出動作]
上記のように構成される吐出装置25は、次のように動作する。
(1)初期充填動作
まず、空の状態の計量部6および切換バルブ39に液体材料20が満たされたシリンジ26を接続する。ついで、気泡混入防止機構1内の第二のシール部材5と第二の孔の上端16の間までプランジャ8を後退移動させる(図3(a)参照)。そして、切換バルブ39の凹溝40により第一の流路35と第二の流路36とが連通されるように、切換バルブ39の位置を回転させて切り換える。ついで、シリンジ26に接続している圧縮気体源27からの圧縮気体の供給を開始し、液体材料20の圧送を行う。液体材料20が、配管チューブ28から第一の流路35、凹溝40、第二の流路36、計量孔61を経由して、気泡混入防止機構1へと送り込まれ、気泡混入防止機構1の第二の孔の開放端22から液体材料20が溢れ出たら、圧縮気体源27からの圧縮気体の供給を停止し、圧送を止める。ついで、プランジャ8を進出移動させ、気泡混入防止機構1内の第一のシール部材4に挿入する。ここまでで初期充填動作は完了する。
【0036】
(2)吐出動作
初期充填動作を終えた後、切換バルブ39の貫通孔41により第二の流路36と第三の流路37とが連通されるよう切換バルブ39の位置を回転させて切り換える。ついで、所望とする吐出量に合わせて、所定距離プランジャ8を進出移動させることにより、プランジャ8の進出距離に対応する量の液体材料20がノズル38より吐出される。なお、初期充填動作直後は、切換バルブ39からノズル38までの流路には液体材料20が送り込まれていないので、塗布対象物49から離れた場所に移動したり、余分の液体材料20を受ける容器などを設置した後、ノズル38から液体材料20が吐出されるまでプランジャ8を下降させる動作を行い、当該ノズル38までの流路を液体材料20で満たしてから吐出を開始する。
【0037】
(3)通常充填動作
吐出動作を続け、プランジャ8が所定の位置まで下降して、計量孔61内に吐出に必要な量の液体材料20が無くなってしまったとき、計量部6内へ再び液体材料20を充填する動作を行う。
まず、切換バルブ39の凹溝40が第一の流路35と第二の流路36とを連通するよう切換バルブ39の位置を回転させて切り換える。ついで、シリンジ26に接続している圧縮気体源27からの圧縮気体の供給を開始し、プランジャ8を後退動作させる。プランジャ8の後退移動による圧力の低下と、圧縮気体供給による圧力により、計量部6内は液体材料20で満たされていく。プランジャ8の後退移動時の速度は初期充填動作の速度(例えば、約1〜5mm/s)と同等であることが好ましい。そして、プランジャ8が気泡混入防止機構1の第一のシール部材4の下方まで達したら、プランジャ8の移動を停止させ、圧縮気体の供給を停止する。ここまでで通常充填動作が完了する。
上記(2)および(3)の動作をシリンジ26内の液体材料20がなくなるまで繰り返して吐出を行う。
【実施例2】
【0038】
[塗布装置]
上記実施例1に係る吐出装置を搭載した塗布装置を図7に示す。
本実施例に係る塗布装置44は、符号54方向に移動可能とするX駆動機構45、符号55方向に移動可能とするY駆動機構46、符号56方向に移動可能とするZ駆動機構47を備える。吐出装置25はZ駆動機構47に設置され、Z駆動機構47はX駆動機構45に設置される。また、Y駆動機構46には塗布対象物49を載置するテーブル48が設置されている。以上の駆動機構を備えることにより、吐出装置25を塗布対象物49に対しXYZ方向(54、55、56)に相対移動させることができる。
制御部50を通じて、吐出装置25には、圧縮気体ライン51から液体材料20を圧送するための圧縮気体が供給され、動力ライン52からプランジャやバルブを駆動するための動力が供給される。また、制御部50は、吐出装置25のプランジャ8の移動距離や移動速度などを制御して吐出量を制御することができる。さらに、制御部50は、XYZ駆動機構の制御部(図示せず)とも制御ライン53で接続されているので、XYZ駆動機構(45、46、47)の動作に合わせて、吐出を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 気泡混入防止機構 / 2 第一の孔 / 3 第二の孔 / 4 第一のシール部材 / 5 第二のシール部材 / 6 計量部 / 7 本体ブロック / 8 プランジャ / 9 第一の孔内側面 / 10 プランジャの外側面 / 11 第一のシール部材の外面 / 12 第二のシール部材の外面 / 13 シール押さえ板 / 14 液受け部 / 15 プランジャ先端面 / 16 第二の孔上端 / 17 空間a / 18 空間b / 19 空間c / 20 液体材料 / 21 第二の孔下端 / 22 第二の孔の開放端 / 23 残留空気 / 24 第一の孔内面とプランジャ外面とに囲まれてできる空間 / 25 吐出装置 / 26 貯留容器、シリンジ / 27 圧縮気体源 / 28 配管チューブ / 29 バルブブロック / 30 ベース板 / 31 固定部材 / 32 連結部 / 33 プランジャ駆動機構 / 34 スライドレール / 35 第一の流路 / 36 第二の流路 / 37 第三の流路 / 38 ノズル / 39 切換バルブ / 40 凹溝 / 41 貫通孔 / 42 切換バルブ駆動機構 / 43 動力源 / 44 塗布装置 / 45 X駆動機構 / 46 Y駆動機構 / 47 Z駆動機構 / 48 テーブル / 49 塗布対象物 / 50 (吐出装置の)制御部 / 51 圧縮気体ライン / 52 動力ライン / 53 制御ライン / 54 X移動方向 / 55 Y移動方向 / 56 Z移動方向 / 57 シール部材 / 61 計量孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルと連通する流路を有する計量部と、計量部の流路内を往復動するプランジャと、を備えた吐出装置において、その計量部のノズルと反対側の端部に取り付け可能な気泡混入防止機構であって、
計量部の流路と連通し、その内部を前記プランジャが往復動する第一の孔と、第一の孔のノズル側の端部に設けられた第一のシール部材と、第一の孔のノズルと反対側の端部に設けられた第二のシール部材と、第一の孔の側面に連通する第二の孔とを含んで構成されることを特徴とする気泡混入防止機構。
【請求項2】
前記第一の孔の内周が、前記プランジャの外周より大きいことを特徴とする請求項1の気泡混入防止機構。
【請求項3】
前記第一および第二のシール部材の内周が、前記プランジャの外周と実質的に同じ大きさであり、
前記第一および第二のシール部材の外周が、前記第一の孔の内周よりも大きいことを特徴とする請求項1または2の気泡混入防止機構。
【請求項4】
前記第二の孔の内周が、前記第一の孔の内周と比べ小さいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの気泡混入防止機構。
【請求項5】
前記第二の孔の前記第一の孔とは反対側の端部に液受け部を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの気泡混入防止機構。
【請求項6】
前記プランジャの最後退位置において、前記プランジャの先端と前記第二の孔が前記第一の孔と連通する端部の上端位置の水平面とが構成する空間aと比べ、
前記プランジャが前記第一のシール部材に当接する位置において、前記第一の孔内周面、前記プランジャの外周面、前記第一のシール部材および前記第二の孔が前記第一の孔と連通する端部の上端位置の水平面と構成する空間bが大きくなるように構成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの気泡混入防止機構。
【請求項7】
前記請求項1ないし6のいずれかの気泡混入防止機構と、
液体材料を供給する液体材料供給源と、
ノズルと連通する流路を有する計量部と、
計量部の流路内を往復動するプランジャと、
液体材料が吐出される吐出口を有するノズルと、
液体材料供給源と計量部との連通または計量部とノズルとの連通を切り換える切換バルブと、を備えた液体材料吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載された液体材料吐出装置を用いた液体材料吐出方法であって、
前記計量部に液体材料を充填する充填工程と、前記プランジャを進出移動して前記計量部内の液体材料をノズルから吐出する吐出工程を有し、
該充填工程は、
前記プランジャを前記第二の孔が前記第一の孔と連通する端部の上端位置と前記第二のシール部材との間まで後退移動させる第1ステップ、
少なくとも前記第二の孔の前記第一の孔とは反対側の端部から液体材料が溢れるまで前記計量部に液体材料を供給する第2ステップ、
前記プランジャを前記第一のシール部材に当接するまで進出移動させる第3ステップ、を含むことを特徴とする液体材料吐出方法。
【請求項9】
前記第2ステップにおいて液体材料の供給を停止することなく前記第3ステップを実行することを特徴とする請求項8の液体材料吐出方法。
【請求項10】
前記第3ステップにおけるプランジャの進出移動速度を、前記吐出工程におけるプランジャの進出移動速度と比べ低速とすることを特徴とする請求項8または9の液体材料吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−67756(P2011−67756A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220868(P2009−220868)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(390026387)武蔵エンジニアリング株式会社 (56)
【Fターム(参考)】