説明

気泡発生装置及び船体抵抗低減船

【課題】動力をあまり使うことなく、気泡を水中で生成し、その気泡を船舶の船体外板を覆い、摩擦抵抗低減を図る。
【解決手段】船舶の航行時に出来る整流4を固定翼2及び/又は回転翼を用い、旋回流5にし、その渦の中に有効な負圧を生成する。固定翼2だけを用いた場合、CFD(Computational Fluid Dynamics)を用いたシミュレーションでは約0.154MPaの負圧を生成した。つまり、水深約15mまでは空気を自給する可能性を示す。VLCCのような肥大タンカーの満載時は喫水が約20mほどになる。つまり約0.2MPa以上の大きな負圧の生成が必要になる。この場合回転翼との併用で動力エネルギーを少なくて、更に大きな負圧の生成が図れ、空気を吸引することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水中で気泡を発生させ、その気泡を利用し、船舶の航走時における、水面下の船体外板面に沿う摩擦抵抗を低減させるための、気泡発生装置と船体抵抗低減船に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の船舶は航行する際に、船体推進部の外板表面に対して水の摩擦抵抗が大きく作用し、船舶の推進性を著しく抵下させていた。その為、多くのエネルギー消費の無駄が有った。特許3692398号広報等で示されたように、この摩擦抵抗を低減するために船体外板表面と水との間に気泡を介在させる方法の有効性が明らかになった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
消費燃料エネルギーを低減するために、船体抵抗低減を図り、その為に有効な気泡を生成する工夫がなされている。しかし、船体抵抗低減船に関する、多くの公開された特許に関する資料にて見られるように、多くの場合は船外の高い水圧の中に、エアー・コンプレッサー等を使い強制的に空気を噴出させるため、その動力に大きなエネルギーを消耗することになった。
【0004】
それを解決するために、船舶が航走時に得られる、船外の流水のエネルギーを利用することにより、水中に負圧を生成し、空気を吸わせる手段はいろいろと考えられている。その多くはベンチュリーの原理を利用したものだ。例えば特開2007−131283号広報ではベンチュリーの原理を利用し、水中に負圧を生成し、大気より空気導入を図っている。しかし、この原理を利用したベンチュリー管では、実効性のない小さな負圧を生成できても、空気を自給するための有効な負圧を生成することは出来ない。むしろ装置そのものが流水の中で大きな抵抗を生み、気泡による摩擦低減効果を失ってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本装置の特長は固定翼及び/又は回転翼を用い、船外の整流を旋回流にし、その渦の中に有効な負圧を生成することである。固定翼だけを用いた場合、CFD(Computational Fluid Dynamics:Software=STAR CCM/CD)を用いたシミュレーションでは約0.154MPaの負圧を生成した。つまり、水深約15mまでは空気を自給する可能性を示す。VLCCのような肥大タンカーの満載時は喫水が約20mほどになる。つまり約0.2MPa以上の大きな負圧の生成が必要になる。この場合回転翼との併用で動力エネルギーを少なくて、更に大きな負圧の生成が図れ、空気を吸引することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
船舶が航走する際の、船外の流水のエネルギーを主に利用する多くの装置は、当然流水に曝すことになる。しかしこれは、船舶の摩擦抵抗低減のための装置自体が、新たな抵抗を生むことになり、正味利得を大きくするための計らいをしなければ実用化にはならない。
【0007】
航行する船舶の船首バルバス・バウは最も大きな水の抵抗を受ける。このバルバス・バウ内にダクトを設け、該ダクト入り口に、中心部にハブを有する固定翼を設ける。船首方向から流入された整流は固定翼に当たり、ダクト中央部で旋回流となり、その旋回流の中心部に大きな負圧を生成する。
【0008】
空気をダクト外部から該装置の負圧部へ導く方法として、例えば固定翼内部に空洞を設け、ダクト外部からの空気を固定翼内部を通り、ハブ内部に空気を導入させ、該ハブ後部から旋回流の中心部に空気を導いても良い。
【0009】
該ダクト後方部にフィンを取り付け、旋回流を整流に戻すことに因り、スラスト効果を得る。このことに因り、固定翼に掛かる流水の抵抗力を、少しでも推進力に転嫁させることが出来る。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から、本気泡生成装置は、エアー・コンプレッサーを用いて空気を水中に送る動力エネルギーの消費に比べ、遥かに効率的で小さなエネルギー(抵抗)で空気を水中深くに送ることが出来る。更にベルニューイの原理を用いて負圧を作る装置に比べ、大きな負圧を生成することが出来る。
【0011】
また本装置をバルバス・バウや、ダブル・ハル等の船体内部に組み込むことにより、流水内で装置自体の作り出す抵抗を最小限にすることが出来る。
【0012】
以上のことから、本発明は気泡による船舶の摩擦低減効果を最大限に引き出すことが出来る。因って燃料効果の良い船舶航行により燃料消費を削減でき、経済的問題だけでなく、本発明はCO2削減という地球環境負荷を削減するために貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】 気泡発生装置を示す概略側面図
【図2】 該気泡発生装置を船首バルバス・バウ内に取付けた概略側面図
【記号の説明】
【0014】
1 ダクト
2 固定翼
3 ハブ
4 整流
5 旋回流
6 フィン
7 船体
8 バルバス・バウ
9 気泡発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本気泡発生装置は、船舶が航走時に得られる整流を、固定翼及び/又は回転翼にて旋回流にし、その渦の中心部に負圧を生成し、そこに外気に通じた空気の吸気管を施し、空気を自吸せしめる気泡発生装置である。
【請求項3】
前項の装置であって、外気に通じた空気の代わりに、排気ガス等の高温気体を吸引させる気泡発生装置である。
【請求項4】
前項のいずれかの装置であって、旋回流が軸方向に直進して噴出するようにフィンを設け、旋回流を整流に戻す気泡発生装置である。
【請求項5】
前項のいずれかの装置を船首のバルバス・バウ部や、ダブル・ハル等の船体に組み入れて取り付け、噴出された気泡が船舶の摩擦低減を図る船舶抵抗低減船である。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−58777(P2010−58777A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256836(P2008−256836)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(505097402)有限会社サンワールド (14)