説明

気泡粒子含有液体作製システム

【課題】粒子径や粒度分布やボイド率が目標範囲となる気泡粒子含有液体を自動的に作製することにより、リアルタイムで用いることができる気泡粒子含有液体作製システムの提供。
【解決手段】気泡粒子発生装置2から排出される気泡粒子含有液体Sを流通する流通部3、21bと、気泡粒子含有液体S中の気泡粒子の粒子径、粒度分布、又は、気泡粒子含有液体Sのボイド率の少なくとも1つを算出する粒子径分布測定装置1とを備える気泡粒子含有液体作製システムであって、気泡粒子発生装置2に気体供給流路21cから供給する気体の流量又は供給位置を調整する気体供給調整部4と、気泡粒子発生装置2に媒液供給流路21aから供給する媒液の流量を調整する媒液供給調整部5と、粒子径分布測定装置1で算出される粒子径、粒度分布又はボイド率の少なくとも1つが目標範囲となるように、気体供給調整部4及び/又は媒液供給調整部5を制御する制御部6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒液中に気泡粒子を混入させた気泡粒子含有液体を作製する気泡粒子含有液体作製システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロバブル(例えば、数μmの粒子径の気泡粒子)、ナノバブル(例えば、数十〜数百nmの粒子径の気泡粒子)と呼称されるような気泡粒子が分散してなる懸濁液(気泡粒子含有液体)を、様々な分野・目的へ適用できることが知られてきた。マイクロバブルやナノバブルは、媒液中での上昇速度が遅く、その内部の圧力が高く、かつ、その表面が帯電している特性を有する。さらに、マイクロバブルやナノバブルは圧壊されると、フリーラジカル(OH)が発生する。
【0003】
そこで、媒液中にマイクロバブルやナノバブルを混入させた懸濁液を作製する旋回式微細気泡発生装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。そして、このような旋回式微細気泡発生装置で作製した懸濁液を、下記のような分野に応用することも考えられてきた。
《1》食品・農業分野
・ノロウイルスの不活性化
・水耕栽培培養液の殺菌・浄化
《2》医療分野
・微細気泡超音波造影剤の臨床応用
・気泡粒子の破壊を用いた血管新生療法
・超音波と気泡粒子とを用いた遺伝子導入法の開発
・ペットの皮膚病医療・皮膚洗浄
《3》環境分野
・油汚染土壌の浄化技術
・湖沼や河川の水質の浄化と溶存酸素濃度増加
・有害物質の分解
・貧酸素水塊の解消
・油−水エマルションの油水分離技術
・炭素繊維と気泡粒子とを用いた生物濾過装置による染色工場排水の処理
・洗浄技術
《4》船舶工業分野
・船体抵抗低減技術
・船舶水中雑音予測法の開発
【0004】
ところで、このような気泡粒子の効果は、懸濁液中の気泡粒子の粒子径や粒度分布や、懸濁液のボイド率に大きく依存することは見出されている。例えば、洗剤を気泡粒子の周りに吸着させてから、洗浄対象物に投入することにより、洗浄対象物に付着した汚れと洗剤とが接触する面積を大きくすることができ、その結果、少量の洗剤で効果的な洗浄を行うことが考えられている。このとき、気泡粒子の粒子径が小さいほど気泡粒子の表面積が増えることになり、気泡粒子と汚れとの接触する総面積も増大することになる。つまり、粒子径が小さい気泡粒子が多くあれば、少量の洗剤でより効果的な洗浄を行うことができる。
【特許文献1】特開2006−116365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粒子径や粒度分布やボイド率を算出する測定方法として、コールター法を用いて1個ずつ気泡粒子が細管を通過するようにしながら、気泡粒子の個数と粒子径とを同時にカウントすることや、顕微鏡で懸濁液を観察すること等が一般的に行われており、所要測定時間が非常に長いものとなっていた。つまり、粒子径や粒度分布やボイド率が最適値(目標範囲)となる懸濁液を作製できたことを確認するには、時間がかかり、その結果、粒子径や粒度分布やボイド率が最適値となる懸濁液をリアルタイムで用いることができなかった。
そこで、本発明は、粒子径や粒度分布やボイド率を算出しながら、粒子径や粒度分布やボイド率が目標範囲となる気泡粒子含有液体を自動的に作製することにより、リアルタイムで用いることができる気泡粒子含有液体作製システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の気泡粒子含有液体作製システムは、媒液中に気泡粒子として気体を混入させることにより、気泡粒子含有液体を作製する気泡粒子発生装置と、前記気泡粒子発生装置に気体を供給する気体供給流路と、前記気泡粒子発生装置に媒液を供給する媒液供給流路と、前記気泡粒子発生装置から排出される気泡粒子含有液体を流通する流通部と、前記流通部における気泡粒子含有液体中の気泡粒子の粒子径、粒度分布、又は、前記気泡粒子含有液体のボイド率の少なくとも1つを算出する粒子径分布測定装置とを備える気泡粒子含有液体作製システムであって、前記気泡粒子発生装置に気体供給流路から供給する気体の流量又は供給位置を調整する気体供給調整部と、前記気泡粒子発生装置に媒液供給流路から供給する媒液の流量を調整する媒液供給調整部と、前記粒子径分布測定装置で算出される粒子径、粒度分布又はボイド率の少なくとも1つが目標範囲となるように、前記気体供給調整部及び/又は媒液供給調整部を制御する制御部とを備えるようにしている。
【0007】
ここで、「粒子径分布測定装置」とは、気泡粒子含有液体中の気泡粒子の粒子径や粒度分布や、気泡粒子含有液体のボイド率を算出することができる装置のことをいい、特に非常に短い所要測定時間(例えば、4秒)で粒子径や粒度分布やボイド率を算出することができる点から、レーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置や、パーティクルカウンタ(例えば、「液中パーティクルカウンタ」(Lighthouse社製)等)や、誘導回折格子法(IG法)を用いる粒度分布測定装置等が好ましい。なお、誘導回折格子法とは、例えば、媒液中で形成した被測定粒子群の粒子密度分布による過渡的な回折格子を利用して、被測定粒子群の拡散係数を算出し、さらには拡散係数から粒子径を算出するもののことをいう。
【0008】
本発明の気泡粒子含有液体作製システムによれば、気泡粒子発生装置に気体供給流路から供給する気体の流量又は供給位置を調整する気体供給調整部と、気泡粒子発生装置に媒液供給流路から供給する媒液の流量を調整する媒液供給調整部とを備え、制御部が、粒子径分布測定装置で算出される粒子径や粒度分布やボイド率が目標範囲となるように、気体供給調整部と媒液供給調整部とを制御するようになっている。
例えば、本発明の気泡粒子含有液体作製システムでは、まず、気泡粒子発生装置は、任意(初期設定)の流量で気体が供給されるとともに、任意(初期設定)の流量で媒液が供給されると、媒液中に気泡粒子を混入させることにより、気泡粒子含有液体を作製していく。そして、気泡粒子含有液体が流通部に排出されていく。一方、粒子径分布測定装置は、流通部における気泡粒子含有液体中の気泡粒子の粒子径や粒度分布や、気泡粒子含有液体のボイド率を算出していく。
これにより、制御部は、粒子径が目標範囲の上限より大きいときには、媒液の流量が初期設定より多くなるように媒液供給調整部を制御し、粒子径が目標範囲の下限より小さいときには、媒液の流量が初期設定より少なくなるように媒液供給調整部を制御し、粒子径が目標範囲にあるときには、媒液の流量を変更しない。
気泡粒子発生装置は、調整された流量若しくはそのままの流量で媒液が供給されると、媒液中に気泡粒子を混入させることにより、気泡粒子含有液体を作製していくことになる。そして、制御部は、再び同様の方法で媒液供給調整部を制御する。
このようにして、粒子径や粒度分布やボイド率が目標範囲となる気泡粒子含有液体が流通部に排出されるようになる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の気泡粒子含有液体作製システムによれば、制御部が、粒子径や粒度分布やボイド率を算出しながら、粒子径や粒度分布やボイド率が目標範囲となる気泡粒子含有液体を自動的に作製することにより、リアルタイムで用いることができる。
【0010】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、上記発明において、前記粒子径分布測定装置は、前記気泡粒子含有液体にレーザ光を照射することにより回折・散乱光の強度分布を測定して、その強度分布の測定結果から粒子径、粒度分布及び/又はボイド率を算出するレーザ回折・散乱式の粒子径分布測定装置であるようにしてもよい。
本発明の気泡粒子含有液体作製システムによれば、レーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置は、非常に短い所要測定時間(例えば、4秒)で粒子径や粒度分布やボイド率を算出することができるので、粒子径や粒度分布やボイド率が目標範囲となる気泡粒子含有液体を直ぐに作製することができる。
【0011】
さらに、上記発明において、前記気泡粒子発生装置は、旋回液流式気泡粒子発生装置、スタティックミキサ式気泡粒子発生装置、ベンチュリー式気泡粒子発生装置、加圧溶解式気泡粒子発生装置、極微細細孔式気泡粒子発生装置、蒸気凝集式気泡粒子発生装置、又は、それらを組み合わせた装置であるようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれる。
【0013】
図1は、本発明に係る気泡粒子含有液体作製システムの構成を示す図である。また、図2(a)は、図1中の旋回液流式気泡粒子発生装置の一例を示す断面図であり、図2(b)は、図2(a)中のA―A線の断面図である。なお、図1中で、光学系の構成を表す模式図と、コンピュータからなる信号処理系構成を表すブロック図とを併記して示している。
気泡粒子含有液体作製システムは、旋回液流式気泡粒子発生装置2と、レーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置1と、貯水槽(流通部)3と、気泡粒子含有液体排出流路(流通部)21bと、媒液供給流路21aと、気体供給流路21cと、循環用流路11a、11bと、気体流量調整弁(気体供給調整部)4と、媒液流量調整弁(媒液供給調整部)5aと、媒液流量調整ポンプ(媒液供給調整部)5bと、気泡粒子含有液体作製システム全体を制御するコンピュータ(制御部)6とを備える。
なお、気泡粒子含有液体作製システムでは、最終的に貯水槽3内に、平均粒子径や粒度分布の標準偏差やボイド率が目標範囲となる懸濁液(気泡粒子含有液体)Sが貯留されることになり、平均粒子径や粒度分布の標準偏差やボイド率が目標範囲となった懸濁液Sが様々な分野・目的に用いられることになる。
【0014】
貯水槽3は、媒液供給流路21aを介して旋回液流式気泡粒子発生装置2の媒液導入口2aと接続されるとともに、気泡粒子含有液体排出流路21bを介して旋回液流式気泡粒子発生装置2の上端側開口2cと接続されている。これにより、媒液流量調整ポンプ5bを駆動させることによって、貯水槽3内の媒液が旋回液流式気泡粒子発生装置2に導かれ、そして旋回液流式気泡粒子発生装置2で懸濁液Sが作製され、さらに旋回液流式気泡粒子発生装置2から貯水槽3内に懸濁液Sが排出されるようになっている。
【0015】
ここで、旋回液流式気泡粒子発生装置2について説明する。旋回液流式気泡粒子発生装置2は、上端側と下端側とが壁体で閉口されている円筒形スペースを有する容器本体2dと、下端側の壁体の中央に開設された気体導入口2bと、上端側の壁体の中央に開設された上端側開口2cと、円筒形スペースの円筒壁体の一部に開設された媒液導入口2aとを備える。
気体導入口2bは、気体供給流路21cと接続されるとともに、媒液導入口2aは、媒液供給流路21aと接続されている。これにより、媒液供給流路21aから容器本体2dの内部に媒液が供給されると、容器本体2dの内部で旋回流が生成し、円筒軸上に負圧部分が形成される。また、気体供給流路21cから容器本体2dの内部に空気が供給されると、圧力が低い円筒軸上を空気が通過し、上端側開口2c付近では旋回速度差によって切断されることになり、大量の気泡粒子が発生する。その結果、媒液中に気泡粒子として空気を混入させた懸濁液Sが作製される。
上端側開口2cは、気泡粒子含有液体排出流路21bと接続されている。これにより、上端側開口2cから気泡粒子含有液体排出流路21bに懸濁液Sが排出される。
【0016】
気体流量調整弁4は、コンピュータ6からの制御信号に基づいて、旋回液流式気泡粒子発生装置2に供給する空気の流量を調整することができるようになっている。
媒液流量調整弁5aと媒液流量調整ポンプ5bとは、コンピュータ6からの制御信号に基づいて、旋回液流式気泡粒子発生装置2に供給する媒液の流量を調整することができるようになっている。
【0017】
また、貯水槽3は、循環用流路11aを介してフローセル10の下側接続口と接続されるとともに、循環用流路11bを介してフローセル10の上側接続口と接続されている。これにより、循環ポンプ(図示せず)を駆動させることによって、懸濁液Sが貯水槽3内とフローセル10内との間を循環するようになっている。
【0018】
粒度分布測定装置1は、所定の位置に保持されて懸濁液Sが流れるフローセル10と、所定の位置に保持されたフローセル10にレーザ光(平行光束)を照射する照射光学系12と、光強度の分布を検出する測定光学系13とにより構成される。
照射光学系12は、レーザ光源12aと、集光レンズ12bと、空間フィルタ12cと、コリメートレンズ12dとによって構成される。このような構成において、レーザ光源12aで発生されたレーザ光は、集光レンズ12bと、空間フィルタ12cと、コリメートレンズ12dとを通過して平行光束とされ、前方向(左から右へ)に向かうようにフローセル10に照射される。このとき、フローセル10内には、懸濁液Sが下方から上方へ流れるように導入されていると、平行光束はフローセル10内の気泡粒子で回折・散乱して、空間的に回折・散乱光の強度分布が生ずる。
【0019】
測定光学系13は、前方向に対して60°以内を進行する回折・散乱光を集光する集光レンズ13aと、集光レンズ13aの焦点位置に置かれたリングディテクタ13bと、フローセル10の側方(後下方向)への散乱光を検出する側方散乱光センサ13cと、後方への散乱光を検出する複数個の後方散乱光センサ13dとによって構成されている。
リングディテクタ13bは、互いに異なる半径を持つリング状ないしは半リング状の受光面を持つ複数(例えば、64個)の光検出素子を、集光レンズ13aの光軸を中心とするように同心円状に配置してあり、各光検出素子には、それぞれの位置に応じた回折・散乱角度を持つ光が入射するようにしてある。したがって、各光検出素子の出力信号は、各回折・散乱角度ごとの光の強度を表すことになる。
このような構成において、前方向に対して60°以内の回折・散乱光は、集光レンズ13aを介してリングディテクタ13bの受光面上に集光されて、リング状の回折・散乱像を結ぶようになる。
【0020】
また、前方向に対して60°を越えることになる側方(後下方向)への散乱光は、側方散乱光センサ13cによって検出される。
さらに、前方向に対して60°を越えることになる後方(後上方向)への散乱光は、複数個の後方散乱光センサ13dによって検出される。後方散乱光センサ13dは、複数(例えば、4個)の光検出素子を、並ぶように配置してあり、各光検出素子には、それぞれの位置に応じた回折・散乱角度を持つ光が入射するようにしてある。したがって、各光検出素子の出力信号は、各回折・散乱角度ごとの光の強度を表すことになる。
リングディテクタ13b、側方散乱光センサ13c及び後方散乱光センサ13dの各光センサの出力信号は、アンプ、マルチプレクサ及びA−D変換器からなるデータサンプリング回路(図示せず)によって順次デジタル化され、コンピュータ6に送信される。
【0021】
コンピュータ6においては、CPU61とメモリ64とを備え、さらにモニタ画面等を有する表示装置(図示せず)と、入力装置(図示せず)であるキーボードやマウスとが連結されている。また、CPU61が処理する機能をブロック化して説明すると、平均粒子径と粒度分布の標準偏差とボイド率とを算出する算出部62と、気体流量調整弁4と媒液流量調整弁5aと媒液流量調整ポンプ5bとを制御する流量調整制御部63とを有する。さらに、メモリ64には、目的となる分野・目的に用いられるために、平均粒子径や粒度分布の標準偏差やボイド率の目標範囲が予め記憶されている。
【0022】
算出部62は、リングディテクタ13b、側方散乱光センサ13c及び後方散乱光センサ13dの各光センサの出力信号を所定の時間間隔(例えば、4秒)で取得して、リングディテクタ13b、側方散乱光センサ13c及び後方散乱光センサ13dの各光センサの出力信号に基づいて、平均粒子径と粒度分布の標準偏差とボイド率とを算出していく制御を行う。
具体的には、リングディテクタ13b、側方散乱光センサ13c及び後方散乱光センサ13dの各光センサからの光強度データ(デジタル化された増幅信号)、つまり回折・散乱光の空間強度分布データと、予め記憶させた気泡粒子及び媒液の屈折率とを用いて、フラウンホーファ回折理論やミーの散乱理論に基づいた公知の演算が行われることによって、平均粒子径と粒度分布の標準偏差とボイド率とが算出される。
【0023】
流量調整制御部63は、算出部62で算出される平均粒子径と粒度分布の標準偏差とボイド率とが目標範囲となるように、気体流量調整弁4と媒液流量調整弁5aと媒液流量調整ポンプ5bとを制御する。
例えば、平均粒子径が目標範囲の上限より大きいときには、媒液の流量が現在の流量より多くなるように媒液流量調整弁5aと媒液流量調整ポンプ5bとを制御し、平均粒子径が目標範囲の下限より小さいときには、媒液の流量が現在の流量より少なくなるように媒液流量調整弁5aと媒液流量調整ポンプ5bとを制御し、平均粒子径が目標範囲にあるときには、媒液の流量を変更しない。
また、ボイド率が目標範囲の上限より大きいときには、空気の流量が現在の流量より少なくなるように気体流量調整弁4を制御し、ボイド率が目標範囲の下限より小さいときには、空気の流量が現在の流量より多くなるように気体流量調整弁4を制御し、ボイド率が目標範囲にあるときには、空気の流量を変更しない。
このようにして、算出部62で平均粒子径と粒度分布の標準偏差とボイド率とが算出されるたびに、気体流量調整弁4と媒液流量調整弁5aと媒液流量調整ポンプ5bとを制御することになり、平均粒子径や粒度分布の標準偏差やボイド率が目標範囲となる懸濁液Sが作製されるようになっている。
【0024】
以上のように、本発明の気泡粒子含有液体作製システムによれば、コンピュータ6が、短い所要測定時間で平均粒子径や粒度分布の標準偏差やボイド率を算出しながら、平均粒子径や粒度分布の標準偏差やボイド率が目標範囲となる懸濁液Sを自動的に作製することにより、リアルタイムで用いることができる。粒子径や粒度分布やボイド率を算出しながら、粒子径や粒度分布やボイド率が目標範囲となる気泡粒子含有液体を自動的に作製することにより、リアルタイムで用いることができる。
【0025】
(他の実施形態)
(1)上述した気泡粒子含有液体作製システムでは、旋回液流式気泡粒子発生装置2(図3(a)参照)を用いる構成としたが、スタティックミキサ式気泡粒子発生装置(図3(b)参照)、ベンチュリー式気泡粒子発生装置(図3(c)参照)、加圧溶解式気泡粒子発生装置(図3(d)参照)、極微細細孔式気泡粒子発生装置(図3(e)参照)、又は、蒸気凝集式気泡粒子発生装置(図3(f)参照)を用いるような構成としてもよい。
(2)上述した気泡粒子含有液体作製システムでは、粒子径として平均粒子径を算出する構成としたが、最大粒子径や最小粒子径を算出するような構成としてもよい。
(3)上述した気泡粒子含有液体作製システムでは、気体流量調整弁4によって空気が供給される流量を変化させる構成としたが、円筒形スペースにおける空気が供給される供給位置を変化させるような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、媒液中に気泡粒子を混入させた気泡粒子含有液体を作製する場合に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る気泡粒子含有液体作製システムの構成を示す図である。
【図2】図1中の旋回液流式気泡粒子発生装置の一例を示す断面図である。
【図3】気泡粒子発生装置の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 レーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置(粒子径分布測定装置)
2 旋回液流式気泡粒子発生装置
3 貯水槽(流通部)
4 気体流量調整弁(気体供給調整部)
5a 媒液流量調整弁(媒液供給調整部)
5b 媒液流量調整ポンプ(媒液供給調整部)
6 コンピュータ(制御部)
21a 媒液供給流路
21b 気泡粒子含有液体排出流路(流通部)
21c 気体供給流路
S 懸濁液(気泡粒子含有液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒液中に気泡粒子として気体を混入させることにより、気泡粒子含有液体を作製する気泡粒子発生装置と、
前記気泡粒子発生装置に気体を供給する気体供給流路と、
前記気泡粒子発生装置に媒液を供給する媒液供給流路と、
前記気泡粒子発生装置から排出される気泡粒子含有液体を流通する流通部と、
前記流通部における気泡粒子含有液体中の気泡粒子の粒子径、粒度分布、又は、前記気泡粒子含有液体のボイド率の少なくとも1つを算出する粒子径分布測定装置とを備える気泡粒子含有液体作製システムであって、
前記気泡粒子発生装置に気体供給流路から供給する気体の流量又は供給位置を調整する気体供給調整部と、
前記気泡粒子発生装置に媒液供給流路から供給する媒液の流量を調整する媒液供給調整部と、
前記粒子径分布測定装置で算出される粒子径、粒度分布又はボイド率の少なくとも1つが目標範囲となるように、前記気体供給調整部及び/又は媒液供給調整部を制御する制御部とを備えることを特徴とする気泡粒子含有液体作製システム。
【請求項2】
前記粒子径分布測定装置は、前記気泡粒子含有液体にレーザ光を照射することにより回折・散乱光の強度分布を測定して、その強度分布の測定結果から粒子径、粒度分布及び/又はボイド率を算出するレーザ回折・散乱式の粒子径分布測定装置であることを特徴とする請求項1に記載の気泡粒子含有液体作製システム。
【請求項3】
前記気泡粒子発生装置は、旋回液流式気泡粒子発生装置、スタティックミキサ式気泡粒子発生装置、ベンチュリー式気泡粒子発生装置、加圧溶解式気泡粒子発生装置、極微細細孔式気泡粒子発生装置、蒸気凝集式気泡粒子発生装置、又は、それらを組み合わせた装置であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の気泡粒子含有液体作製システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−125441(P2010−125441A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306075(P2008−306075)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】