説明

気泡除去装置

【課題】カセットの薬液チューブ内の薬液中にある細かい多くの微小気泡を移動、分散しし易くすることができる気泡除去装置を提供する。
【解決手段】患者に薬液を供給する輸液ポンプ10に装着されるカセット20の輸液チューブ21内の薬液Mに生じる気泡を除去するための気泡除去装置100であって、カセット20を着脱自在に挿入可能な筐体3と、筐体3内に配置されて、カセット20における輸液チューブ21の露出部分21Bに対して打撃を与えることで気泡200を移動、分散させるための打撃部110を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液ポンプに用いられる着脱式のカセットを装着して、このカセットの輸液チューブ内にあり、特に輸液ポンプの気泡センサ部に対応する部位に停滞した多くの微小気泡を衝撃により移動させるための気泡除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に対して、時間当たり薬液を決められた量だけ長時間かけて注入する輸液ポンプは広く使用されている。このような輸液ポンプのうち、例えば、医療機関だけでなく、一般の家庭において在宅でも使用できるようにコンパクトに形成したものが知られている(特許文献1参照)。特許文献1の輸液ポンプは、外部から導入される薬液を通す可撓性の輸液チューブを着脱式のカセットに導く構成とされている。
【0003】
そして、このケースから一部露出させたチューブに対して、回転ローラを押しつけることにより、該チューブに蠕動様運動を与えて、チューブ内の薬液を順次患者側に送り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−506355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、携帯型の輸液ポンプでは、在宅などで使用される時季,場所などの条件によってはカセット内にある輸液チューブの薬液中に細かい複数の気泡が存在することがある。従来、薬液チューブの薬液中に細かい多くの気泡が形成されるたびに、患者がこの薬液チューブ内の薬液を指で押すことにより、微小気泡を移動させていた。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、カセットの輸液チューブ内の薬液中にある細かい複数の気泡を容易に移動させることができる気泡除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の気泡除去装置は、薬液を供給する輸液ポンプに装着されるカセットの輸液チューブ内の前記薬液に生じる微小気泡を除去するための気泡除去装置であって、前記カセットが着脱自在に挿入可能な筐体と、前記筐体内に配置されて、前記カセットに収容された前記輸液チューブの露出された部分に対して打撃を与える打撃部とを有することを特徴とする。上記構成によれば、カセットの輸液チューブ内の薬液中にある多くの微小気泡を容易に移動し易くすることができる。
【0007】
好ましくは、前記カセットの挿入先端部に当接することで前記カセットの挿入動作を案内するガイド部を有することを特徴とする。
上記構成によれば、ガイド部がカセットの挿入先端部に当接することで、カセットの挿入動作の案内を安定して行うことができる。
【0008】
好ましくは、前記ガイド部は、前記筐体内に回転可能に支持された回転中心軸と、付勢手段と、前記回転中心軸と一体的に形成されており、前記カセットを前記筐体内に挿入すると前記付勢手段の力に抗して前記回転中心軸を中心にして回転しながら前記カセットの前記挿入先端部を直接受けるカセット受け部材とを有することを特徴とする。
上記構成によれば、カセット受け部材がカセットの挿入先端部を直接受けるようにして付勢手段の力に抗してカセットを筐体内に挿入できる。
【0009】
好ましくは、前記打撃部は、前記筐体内に回転可能に支持された回転中心軸と、前記回転中心軸と一体的に形成されており、前記カセットを、前記筐体内で挿入方向と前記挿入方向と逆方向に沿って往復移動させることで、前記輸液チューブの露出部分に対して打撃を与えるための打撃突起を有する揺動部材と、前記カセットを前記筐体内に差し込んだ位置で前記揺動部材に力を与えて前記打撃突起を前記輸液チューブの露出部分内の前記薬液に対して打撃力を与える付勢手段とを有することを特徴とする。
上記構成によれば、カセットを筐体内に差し込んだ位置で打撃突起を輸液チューブの露出部分に対して打撃力を与えることで、カセットのチューブ内の薬液中にある多くの微小気泡を容易に移動、分散させることができる。
【0010】
好ましくは、前記筐体は、第1筐体部と、前記第1筐体部に対して着脱可能に固定される第2筐体部と、を有し、前記第1筐体部には、前記カセットの挿入方向を明示する挿入方向明示手段が配置されていることを特徴とする
上記構成によれば、第1筐体部と第2筐体部内に、ガイド部と打撃部を配置して第1筐体部と第2筐体部を固定できるので組み立て作業が容易であり、しかもカセットの挿入方向を誤ることが無くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、カセットの輸液チューブ内の薬液中にある多くの微小気泡を容易に移動、分散させることができる気泡除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の気泡除去装置の好ましい実施形態の外観を示す斜視図。
【図2】図1に示す気泡除去装置の分解斜視図。
【図3】輸液ポンプに用いられるカセットの構造例を示す斜視図。
【図4】輸液ポンプにカセットが装着されていない状態を示す輸液ポンプの斜視図。
【図5】輸液ポンプにカセットが装着された状態を示す輸液ポンプの斜視図。
【図6】図2に示すカセットの第2筐体部内の構造例の一部分を示す斜視図。
【図7】図2に示すカセットの第2筐体部内の構造例を示す平面図。
【図8】カセットが気泡除去装置の開口部を通じて、カセットの挿入先端部が挿入途中線LLまで挿入された状態を示す図。
【図9】カセットが気泡除去装置の開口部を通じて、カセットの挿入先端部が挿入最終線LRまで挿入された状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。 図1は、本発明の気泡除去装置の好ましい実施形態の外観を示す斜視図である。図2は、図1に示す気泡除去装置の分解斜視図である。図3は、輸液ポンプに用いられるカセットの構造例を示す斜視図である。
図1と図2に示すように、気泡除去装置100は、第1筐体部1と第2筐体部2を有しており、第1筐体部1と第2筐体部2を重ね合わせて着脱可能に組み立てることにより筐体3を形成している。第1筐体部1と第2筐体部2はともに例えばプラスチック製である。
【0014】
図2に示すように、第1筐体部1は、上面部1Aと、側面部1B〜1Eを有している。同様にして、第2筐体部2は、下面部2Aと、側面部2B〜2Eを有している。これにより、筐体3は、上面部1Aと、下面部2Aと、側面部1B〜1Eと側面部2B〜2Eからなる直方体形状の箱部材である。図1に示すように、側面部1Bには切欠き部1Gが形成され、側面部2Bには切欠き部2Gが形成されており、図1に示すように、側面部1Bの切欠き部1Gと側面部2Bの切欠き部2Gは、図3に示すカセット20を挿入するために、長方形状の開口部4を形成している。
【0015】
図1に示すように、第1筐体部1の上面部1Aには、図3に示すカセット20の挿入姿勢を示すイラスト1Sと、カセットの挿入方向を示す矢印1Fが、好ましくは表示されている。これにより、患者等が、図3のカセット20を、開口部4を通じて筐体3内に挿入する際に、カセット20の挿入方向を確実に明示して、カセット20を逆方向あるいは表裏反対に挿入してしまうことを確実に防ぐことができる。ただし、図2では、カセット20のイラスト1Sとカセット20の挿入方向を示す矢印1Fの図示は、図面の簡単化のために省略している。
【0016】
ここで、図3を参照して、カセット20の構造例を説明する。
図3に示すカセット20は、プラスチックで形成された横長のケースである。輸液チューブ21は、カセット20に収容されている可撓性チューブである。輸液チューブ21は、カセット20の基端部20Aからカセット20の外縁部分20Bに沿って、矢印F方向から導入され、輸液チューブ21は、カセット20の挿入先端部20CではほぼU字状に曲折され、そして輸液チューブ21は、挿入先端部20Cからカセット20の他方の外縁部分20Dに沿って、矢印E方向に導出されている。
カセット20が、図4と図5に示す輸液ポンプ10に装着されると、この輸液チューブ21には薬液が収納された輸液バッグ等の薬液供給部SPが接続され、薬液供給部SPの薬液Mが矢印F方向に導入されて矢印E方向に導出され、該矢印E方向の延長には、留置針K等が接続されており、薬液Mは患者に対して輸液チューブ21を通じて輸液される。輸液ポンプ10については後で説明する。
【0017】
図3に示すように、カセット20は、輸液チューブ21内の薬液Mを目視できるように、好ましくは透明部材で作られている。カセット20の基端部20A寄りの位置には、輸液チューブ21を露出させるための露出部24が形成されている。
この露出部24は、カセット20の係合用スリット22において設けられており、輸液チューブ21の露出部分21Bが露出部24においてカセット20の外部に露出されている。この輸液チューブ21の露出部分21Bには、後で説明する輸液ポンプ10のロータユニット31のチューブ押圧部31R(図4を参照)が押圧されることで、蠕動様運動が輸液チューブ21の露出部分21Bに対して付与できるようになっている。
【0018】
図3のカセット20のほぼ中央部には、横に並んで2つの係合用スリット22,23が形成されており、これらスリット22,23はカセット20の厚み方向Wに沿って貫通している。
図3に示すカセット20には、縦スリット25aおよび横スリット25bから成る逆L字状の規制用スリット25が形成されている。縦スリット25aにはストッパ26とこのストッパ26の付勢用のスプリング26aが収容され、横スリット25bにはスライダ29が配置されている。
カセット20が図4に示す輸液ポンプ10から外されている場合には、ストッパ26の先端の当接部はスプリング26aにより矢印C1方向に常時押圧されており、カセット20内の図示しない箇所で、輸液チューブ21の一部分21Mを押し潰すことで、輸液チューブ21内の薬液の流れを止めている。
【0019】
次に、図3に示すカセット20が着脱可能に装着される輸液ポンプ10の構造例を、図4と図5を参照して説明する。
図4は、輸液ポンプ10にカセット20が装着されていない状態を示す輸液ポンプ10の斜視図であり、図5は、輸液ポンプ10にカセット20が装着された状態を示す輸液ポンプ10の斜視図である。
図4では、輸液ポンプ10のカセット収納部15のカバー12を閉じた状態を示しており、図5では輸液ポンプ10のカセット収納部15のカバー12を開いている。
【0020】
図4に示すように、輸液ポンプ10は、例えば、略矩形の筐体としての本体11を有している。この本体11は、前筐体49と後筐体44を有している。
図4に示すように、本体11は、本体11の上面側のほぼ半分程度の面積を占めるように、開閉可能なカバー12を有している。該カバー12はヒンジ13を中心として回動可能に開閉でき、カバー12は、ヒンジ13の軸周りにトーションコイル等を配設することにより、図5に示すように常時開く方向に付勢されている。そして、患者等がカバー12を閉じて押し込むことにより、カバー12は本体11側の図示しないラッチに係合される。患者等が、本体11の解除ボタン16,16を、矢印方向に手指にて押し込むことにより、該ラッチが解除される。
【0021】
図4に示す開始停止スイッチ17は、図4において横方向に「停止―開始」のスライド操作をすることができる。液晶表示装置のような表示部18は、輸液ポンプ10の運転状態や報知情報等を表示する。前筐体49には、発光ダイオードランプのような点灯表示部LPが、表示部18の付近に配置されている。この点灯表示部LPは、例えば点滅することにより警報内容を、例えば患者あるいは周囲の家族の人に目視で報知する。前筐体49には、表示部18の付近にブザー88とスピーカ89が配置されている。ブザー88は警報内容を警報音で報知でき、スピーカ89は警報内容を音声で報知する機能を有する。
【0022】
図5に示すように、本体11からカバー12を開くと、カセット収納部15が露出し、カセット収納部15には、カセット20が着脱可能に装着される。
本体11のカセット収納部15内には、図4と図5には図示していないモータが配置されている。カセット収納部15内には、薬液送り部としてのロータユニット31と、閉塞検出部83が配置されている。このモータの駆動力が、ロータユニット31に対して伝達されることにより、ロータユニット31が軸Lを中心にして回転する。
【0023】
図4に示すように、このロータユニット31の外周には、例えば5つの回転ローラであるチューブ押圧部31Rが設けられており、ロータユニット31のチューブ押圧部31Rが矢印方向に回転することにより、図5に示すチューブ21の露出部分21Bを順次押圧して、チューブ21の露出部分21B内の薬液に対して蠕動様運動を付与することができる。図5に示す閉塞検出部83は、カセット20がカセット収納部15内に収納されたことを検出して、カセット20のチューブ21が閉塞されているか否かを検出する。
図5に示すように、カセット収納部15には、このロータユニット31の付近の上方位置に、第1のスライダ32と、第2のスライダ33が配置されている。図3に示すカセット20のスリット22には、第1スライダ32が入り込んでいる。カセット20のスリット23には、第2スライダ33が入り込んでいる。
第1のスライダ32と第2のスライダ33はそれぞれ係止片を備えており、これら係止片は、付勢手段により常時矢印C方向に付勢されている。しかも、第1のスライダ32と第2のスライダ32のそれぞれ係止片は、カセット20がカセット収納部15にセットされる際に矢印D方向に移動されて、カセット20自体をカセット収納部15内に保持するとともに、該カセット20に内蔵された輸液チューブ21をロータユニット31に対して押圧させる。
【0024】
図5に示すカバー12を矢印A方向に閉じると、ヒンジ13よりも該カバー12の内側に設けられた当接部14がカセット20を押すことにより、カセット20がカセット収納部15において矢印B方向に移動される。
このカセット20が矢印B方向に移動することにより、各係合用のスリット22,23にそれぞれ入り込んだ第1のスライダ32と第2のスライダ33の付勢方向(図5の矢印C方向)に働く付勢力に抗して、第1のスライダ32と第2のスライダ33を矢印D方向に移動させることができる。これにより、カセット20は、カバー12を閉止した状態においては、カバー12と第1のスライダ32と第2のスライダ33に挟まれて固定されるとともに、輸液チューブ21はロータユニット31側に押圧される。
【0025】
次に、図2と図6と図7を参照して、気泡除去装置100の内部構造例を説明する。
図6は、図2に示す気泡除去装置100の第2筐体部2内の構造例の一部分を示す斜視図であり、図7は、図2に示す気泡除去装置100の第2筐体部2内の構造例を示す平面図である。図6は、図2に示す第2筐体部2の一部分を、V方向から見ている。図6と図7では、気泡除去装置100の第2筐体部2と内部構造を示しているが、第1筐体部1の図示は省略している。
まず、図2を参照して気泡除去装置100の第1筐体部1内の構造例を説明する。
図2に示すように、第1筐体部1の上面部1Aの内面側には、断面が矩形のはめ込み孔部1H、1Jと、断面が円形のはめ込み孔部1K、1Lを有している。他に、上面部1Aの内面側には、上面部1Aの内面側に、仕切り部分1M、1Nを有している。
図2に示すように、第1筐体部1の側面部1Bにははめ込み突起1Pが突出して形成され、側面部1Eにははめ込み突起1Qが突出して形成されている。これらのはめ込み突起1P、1Qは、断面三角形状の係合部1Rをそれぞれ有している。
【0026】
図2と図6と図7を参照して、気泡除去装置100の第2筐体部2内の構造例を説明する。
図2に示すように、第2筐体部2の側面部2C、2D、2Eの上端面には、それぞれはめ込み用のリブ2G、2H、2Jが形成されている。これらのリブ2G、2H、2Jは、第1筐体部1の側面部1C、1D、1Eの下端部の内側にはめ込まれることにより、第1筐体部1と第2筐体部2を、相互に位置ずれしないように組み立てることができる。
第2筐体部2の側面部2Bには、はめ込み孔部2Kが形成され、第2筐体部2の側面部2Eには、はめ込み孔部2Lが形成されている。はめ込み孔部2Kには、第1筐体部1のはめ込み突起1Pが着脱可能にはめ込まれ、はめ込み孔部2Lには、第1筐体部1のはめ込み突起1Qが着脱可能にはめ込まれる。
第2筐体部2の側面部2Bには、はめ込み突起2Mが突出して形成され、第2筐体部2の側面部2Cには、はめ込み突起2Nが突出して形成されている。これらのはめ込み突起2M、2Nは、断面三角形状の係合部2Rをそれぞれ有している。はめ込み突起2Mは、第1筐体部1のはめ込み孔部1Hに着脱可能にはめ込まれ、はめ込み突起2Nは、第1筐体部1のはめ込み孔部1Jに着脱可能にはめ込まれる。
このように、4本のはめ込み突起1P,1Q,2M,2Nを用いて、ネジを用いることなく第1筐体部1と第2筐体部2を着脱可能に接合できる。
【0027】
さらに、図2と図6と図7を参照しながら、第2筐体部2内に形成されている要素を説明する。
図2と図7に示すように、第2筐体部2の下面部2Aの内面(上面)には、ガイド部50と打撃部110が配置されている。ガイド部50は、図3に示すカセット20の挿入動作を案内するために設けられている。打撃部110は、図3に示すカセット20の輸液チューブ21の露出部分21Bに対して打撃を与える機能を有する。
まず、図2と図7に示すガイド部50を説明すると、ガイド部50は、回転中心軸51と、カセット受け部材52と、連動部材53と、コイルスプリング54を有している。回転中心軸51の上端部51Aは図2に示すはめ込み孔部1Kに挿入され、回転中心軸51の下端部51Bは図7に示すはめ込み孔部2Xに挿入されているので、回転中心軸51は、回転中心L1を中心として回転可能である。カセット受け部材52と連動部材53と回転中心軸51は、例えばプラスチックにより一体的に形成されており、カセット受け部材52と連動部材53は、回転中心軸51に対して開き角度θ(90度よりも大きい角度)により異なる方向にそれぞれ突出して形成されている。
【0028】
図7に示すように、カセット受け部材52は、好ましくはカセット20の挿入先端部20Cを接触して受ける部分に、挿入先端部接触部材55が配置されている。この挿入先端部接触部材55は、挿入先端部20Cが接触する際の摩擦力を上げることで、回転中心軸51とカセット受け部材52と連動部材53をR1方向に確実に回転させるために設けられている。連動部材53の先端部の内側には、突起部53Tが図7の紙面垂直下方向に突出して形成されている。
図7に示すように、金属製のコイルスプリング54は、回転中心軸51に対して同軸状に取り付けられている。コイルスプリング54の一端部54Aは第2筐体部2の下面部2Aの内面に固定され、コイルスプリング54の他端部54Bはカセット受け部材52に固定されている。これにより、回転中心軸51とカセット受け部材52と連動部材53は、コイルスプリング54により、回転中心L1を中心としてR方向に付勢されている。
【0029】
次に、図7と図2と図6を参照して、打撃部110の構造例を説明する。
図7と図6に示すように、打撃部110は、回転中心軸111と、揺動部材112と、コイルスプリング113を有している。回転中心軸111と揺動部材112は、例えばプラスチックにより一体的に形成されており、回転中心軸111の上端部111Aは図2に示すはめ込み孔部1Lに挿入され、回転中心軸51の下端部51Bは、図7に示すはめ込み孔部2Zに挿入されているので、回転中心軸51は、回転中心L2を中心として回転可能である。図6と図7に示すように、揺動部材112は、45度よりも小さい角度θ1を有するほぼ扇型の部材であり、揺動先端部130には、ガイド溝部131とほぼ半円形状の突起132が形成されている。
【0030】
図2と図7に示すように、揺動先端部130の裏側には、ほぼ山形状の打撃用突起140が形成されている。カセット20が開口部4を通じて筐体3内に挿入されたときに、この打撃用突起140は、図3に示すカセット20の輸液チューブ21の露出部分21Bを打撃して、輸液チューブ21中の薬液内に存在する多くの微小気泡を容易に移動、分散させる機能を有している。ここで、多くの微小気泡とは、数10個以上で大きさが40μm〜100μmの気泡をいう。
図6と図7に示すように、金属製のコイルスプリング113は、回転中心軸111に対して同軸状に取り付けられている。コイルスプリング113の一端部113Aは第2筐体部2の下面部2Aの内面に固定され、コイルスプリング113の他端部113Bは揺動部材112に固定されている。これにより、回転中心軸111と揺動部材112は、コイルスプリング113により、回転中心L2を中心としてS方向に付勢されている。
【0031】
次に、図7〜図9を参照して、気泡除去装置100に対してカセット20の挿入動作を複数回繰り返すことにより、図3に示すカセット20の輸液チューブ21の露出部分21B中の薬液を複数回打撃して、輸液チューブ21中の薬液内に存在する細かな複数の気泡を大きな気泡になるように集合させて、この大きな気泡を輸液チューブ2中の薬液内から除去し易くするための動作を説明する。
図7では、カセット20が気泡除去装置100の開口部4に挿入される直前の状態を示している。図8は、カセット20が気泡除去装置100の開口部4を通じて、カセット20の挿入先端部20Cが挿入途中線LLまで挿入された状態を示し、図9は、カセット20の挿入先端部20Cがさらに挿入最終線LRまで挿入された状態を示している。
【0032】
図7では、ガイド部50と打撃部110の初期の連結関係を示しており、ガイド部50の連動部材53の突起部53Tは、打撃部110の揺動先端部130のガイド溝部131内に位置されている。そして、揺動先端部130の突起132は連動部材53の裏側に位置されている。回転中心軸51とカセット受け部材52と連動部材53は、コイルスプリング54の力により、回転中心L1を中心としてR方向に付勢されている。回転中心軸111と揺動部材112は、コイルスプリング113の力により、回転中心L2を中心としてS方向に付勢されている。
【0033】
患者等がカセット20を押し込む動作により、図7に示すカセット20の挿入先端部20Cが、図8に示すように開口部4を通じて気泡除去装置100内にIS方向に沿って挿入される。図8に示すように、カセット20の挿入先端部20Cは揺動部材112の下側を通過して、カセット20の挿入先端部20Cがカセット受け部材52を押して、コイルスプリング54の力に抗して、回転中心L1を中心として、カセット受け部材52をR1方向(反時計回り)に回転させる。
この回転と同時に、カセット20の挿入先端部20Cそしてカセット20の外縁部分20Bが打撃部110の揺動部材112の打撃用突起140を押して、コイルスプリング113の力に抗して、回転中心L2を中心として、揺動部材112をS1方向(反時計回り)に回転させる。
これにより、カセット20の挿入先端部20Cは、挿入途中線LLまで挿入される。連動部材53の突起部53Tは、揺動先端部130のガイド溝部131内に位置され、しかも揺動先端部130の突起132の付近にある。
【0034】
そして、患者等がカセット20をさらに押し込む動作により、図9に示すように、カセット20の挿入先端部20Cが、図8に示すように開口部4を通じて気泡除去装置100内にさらにIS方向に沿って奥に挿入され、筐体3内の突起部2Pに当接し、打撃用突起140と輸液チューブ21の露出部分21Bの位置合せが容易になされる。こうして、カセット20の挿入先端部20Cがカセット受け部材52をさらに押して、コイルスプリング54の力に抗して、回転中心L1を中心として、カセット受け部材52をR1方向(反時計回り)にさらに回転させる。
この回転と同時に、揺動部材112の打撃用突起140が、カセット20の外縁部分20Bから外れて、コイルスプリング113の力により回転中心L2を中心として、揺動部材112がS方向(時計回り)に回転される。これにより、打撃用突起140が輸液チューブ21の露出部分21B中の薬液を打撃する。この場合には、連動部材53の突起部53Tは、矢印DT方向に揺動先端部130の突起132の外周に沿いながら揺動先端部130のガイド溝部131内を移動する。このように、連動部材53と揺動部材112は連動して動作する。
【0035】
患者等の操作により、図9に示すように、打撃用突起140が輸液チューブ21の露出部分21B中の薬液を打撃した後に、再び患者等が、カセット20をIR方向に沿って引き出して、図8に示すようにカセット20の挿入先端部20Cを挿入最終線LRから挿入途中線LLまで位置を戻す。そして、再び患者等が、図8に示すカセット20を再びIS方向に沿って挿入して図9に示す挿入最終線LRまで挿入する。
上述のように、患者等が気泡除去装置100内においてカセット20を挿入最終線LRと挿入途中線LLの間で往復動作を繰り返すことにより、図9に示すように打撃用突起140は、輸液チューブ21の露出部分21B中の薬液を、複数回打撃することができる。
これにより、図9に示す輸液チューブ21内の薬液M中の多くの微小気泡200は、容易に移動、分散する。特に、輸液ポンプ10の気泡センサ部(図示せず)に対応する部位に停滞した微小気泡を衝撃により移動、分散する。
【0036】
本発明の実施形態の気泡除去装置は、患者に薬液を供給する輸液ポンプに装着されるカセットの輸液チューブ内の薬液に生じる気泡を除去するための気泡除去装置であって、カセットを着脱自在に挿入可能な筐体と、筐体内に配置されて、カセットにおける輸液チューブの露出部分内の薬液に対して打撃を与えることで気泡を移動させるための打撃部と、を有する。これにより、カセットの薬液チューブ内の薬液中にある多くの微小気泡を容易に移動、分散させることができる。
【0037】
カセットの挿入先端部に当接することでカセットの挿入動作を案内するガイド部を有する。これにより、ガイド部がカセットの挿入先端部に当接することで、カセットの挿入動作の案内を安定して行うことができる。
【0038】
ガイド部は、筐体内に回転可能に支持された回転中心軸と、付勢手段と、回転中心軸と一体的に形成されており、カセットを筐体内に挿入すると付勢手段の力に抗して回転中心軸を中心にして回転しながらカセットの挿入先端部を直接受けるカセット受け部材と、を有する。これにより、カセット受け部材がカセットの挿入先端部を直接受けるようにして付勢手段の力に抗してカセットを筐体内に挿入できる。
【0039】
打撃部は、筐体内に回転可能に支持された回転中心軸と、回転中心軸と一体的に形成されており、カセットを、筐体内で挿入方向と挿入方向と逆方向に沿って往復移動させることで、輸液チューブの露出部分に対して打撃を与えるための打撃突起を有する揺動部材と、カセットを筐体内に差し込んだ位置で揺動部材に力を与えて打撃突起を輸液チューブの露出部分内の薬液に対して打撃力を与える付勢手段と、を有する。これにより、カセットを筐体内に差し込んだ位置で打撃突起を輸液チューブの露出部分に対して打撃力を与えることで、カセットのチューブ内の薬液中にある細かい多くの微小気泡を容易に移動、分散させることができる。
【0040】
筐体は、第1筐体部と、第1筐体部に対して着脱可能に固定される第2筐体部と、を有し、第1筐体部には、カセットの挿入方向を明示する挿入方向明示手段が配置されている。これにより、第1筐体部と第2筐体部内に、ガイド部と打撃部を配置して第1筐体部と第2筐体部をネジを使用することなく固定できるので組み立て作業が容易であり、しかもカセットの挿入方向を誤ることが無くなる。
【0041】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
例えば、気泡除去装置の筐体の形状は、直方体形状に限定されず、任意の形状を採用できる。付勢手段は、コイルスプリングに限らず、板ばね等他の形状であっても良い。
【符号の説明】
【0042】
1・・・気泡除去装置の第1筐体部、2・・・気泡除去装置の第2筐体部、3・・・気泡除去装置の筐体、10・・・輸液ポンプ、20・・・カセット、20C・・・カセットの挿入先端部、21・・・輸液チューブ、21B・・・輸液チューブの露出部分、50・・・ガイド部、51・・・回転中心軸、52・・・カセット受け部材、53・・・連動部材、54・・・コイルスプリング(付勢手段の例)、100・・・気泡除去装置、110・・・打撃部、111・・・回転中心軸、112・・・揺動部材、113・・・コイルスプリング(付勢手段の例)、130・・・揺動先端部、M・・・薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を供給する輸液ポンプに装着されるカセットの輸液チューブ内の前記薬液に生じる微小気泡を除去するための気泡除去装置であって、
前記カセットが着脱自在に挿入可能な筐体と、
前記筐体内に配置されて、前記カセットに収容された前記輸液チューブの露出された部分に対して打撃を与える打撃部と
を有することを特徴とする気泡除去装置。
【請求項2】
前記カセットの挿入先端部に当接することで前記カセットの挿入動作を案内するガイド部を有することを特徴とする請求項1に記載の気泡除去装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記筐体内に回転可能に支持された回転中心軸と、付勢手段と、前記回転中心軸と一体的に形成されており、前記カセットを前記筐体内に挿入すると前記付勢手段の力に抗して前記回転中心軸を中心にして回転しながら前記カセットの前記挿入先端部を直接受けるカセット受け部材とを有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の気泡除去装置。
【請求項4】
前記打撃部は、
前記筐体内に回転可能に支持された回転中心軸と、前記回転中心軸と一体的に形成されており、前記カセットを、前記筐体内で挿入方向と前記挿入方向と逆方向に沿って往復移動させることで、前記輸液チューブの露出部分に対して打撃を与えるための打撃突起を有する揺動部材と、前記カセットを前記筐体内に差し込んだ位置で前記揺動部材に力を与えて前記打撃突起を前記輸液チューブの露出部分内の前記薬液に対して打撃力を与える付勢手段とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の気泡除去装置。
【請求項5】
前記筐体は、第1筐体部と、前記第1筐体部に対して着脱可能に固定される第2筐体部と、を有し、前記第1筐体部には、前記カセットの挿入方向を明示する挿入方向明示手段が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の気泡除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−105818(P2012−105818A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257008(P2010−257008)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】