説明

気流制御ユニット

【課題】 簡単な構造で、チャンバー内の試料に接触する空気を整流化し、当該空気の流速を試料の接触部分の全域でほぼ均一にすること。
【解決手段】 気流制御ユニット10は、本体11と、本体11に着脱自在に取り付けられるとともに試料Sを内部に保持する試料ホルダー12とを備えている。本体11は、空気の吸入口E1及び排出口E2が形成された上部ダクト15及び下部ダクト16と、吸入口E1から排出口E2に向う空気の流れを生成するファン23とを備えている。上部ダクト15には、その内部を流れる空気が試料Sに接触可能に開放する試料窓28が形成され、下部ダクト16の内部には、試料窓28からファン23への空気の流れを迂回させるように仕切板36が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料からなる試料を所定の流れの空気に接触させることで、建築材料の化学性能を評価する試験を行う際に用いられる気流制御ユニットに係り、更に詳しくは、空気が接触する試料の全領域で空気の流速をほぼ均一にすることのできる気流制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
建物内に配置される建築用ボード類、壁紙、カーペット、施工用の接着剤、及び塗料等の建築材料は、種類によって、揮発性有機化合物、ホルムアルデヒド及びカルボニル化合物等の有害物質を放散し、シックハウス症候群の原因となる室内空気汚染を引き起こす虞がある。
【0003】
従って、建物の施工前に、使用する建築材料からの有害物質の放散量を試験的に調査し、各種の建築材料を評価することが重要となる。このような試験評価手法の一つとして、JIS規格化された「JIS A 1901 小形チャンバー法」と呼ばれる化学物質放散試験が知られている。この試験では、チャンバーと呼ばれる容器内に、評価対象となる建築材料の試料を収容した上で、所定の流量の空気をチャンバー内に供給し、当該チャンバー内を通過した空気から有害物質を捕集することで、試料からの有害物質の放散状況を特定する。
【0004】
前記化学物質放散試験に適用されるチャンバーとして、その内部の空気を撹拌することで、当該空気の流速を規定値に制御するファンを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。図6に示されるように、このチャンバー50は、上端が開放して試料Sが内部に収容される円筒状の本体51と、本体51の上端側で着脱自在となる蓋体52と、本体51内の空間を上下二分するように配置されるとともに、多数の貫通穴53Aが形成された円盤状の板体53と、板体53の下方となる本体51内の空間に配置されたファン55とを備えている。このチャンバー50を使った化学物質放散試験では、板体53の上に図示省略したホルダーに保持された試料Sが載せられ、外部からの空気が規定流量で空気導入部57から本体51内に導入される。本体51内の空気は、ファン55の回転により所定の流速で試料Sに接触し、所定時間後に空気排出部58からチャンバー50の外側に排出される。そして、当該排出空気に対する有害物質の含有量が分析機器等を使って測定される。
【0005】
ところで、建築材料の化学性能を評価する他の試験法として、「JIS A 1905−1 小形チャンバー法による室内空気汚染濃度低減材の低減性能試験法」と呼ばれる化学物質吸着試験が2007年2月に制定された。当該化学物質吸着試験は、室内の空気汚染の原因となる空気中の化学物質(以下、「汚染物質」と称する。)を吸収する建築材料に対して行われる試験であり、当該建築材料の試料における所定の汚染物質の吸着速度を測定することで、前記建築材料の吸着性能が評価される。この試験では、前述した化学物質放散試験と同様に、試料が収容されたチャンバー内に外部から空気を導入し、当該チャンバー内を通過した空気から汚染物質が捕集されるが、チャンバー内に導入される空気に所定量汚染物質が予め混入されている点で、前記化学物質放散試験と異なる。
【特許文献1】特開2007−120995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが実験研究を行った結果によれば、前記特許文献1の構造のチャンバーを使って前記化学物質吸着試験を行うと、JISで規定された条件の一つである試料表面を通過する空気流速の均一性を担保することが難しいことが判明した。すなわち、「JIS A 1901」の化学物質放散試験では、水蒸気換算物質伝達率が9〜18m/sが望ましいとされ、これは、試料表面を通過する空気の流速が0.1m/s〜0.3m/sに相当する。ところが、「JIS A 1905−1」の化学物質吸着試験では、水蒸気換算物質伝達率が15±3m/sに規定され、これは、試料表面を通過する空気の流速が0.25±0.05m/sに相当することになる。換言すれば、「JIS A 1901」の化学物質放散試験では、試料表面での空気流速のばらつきが0.2m/s以下であれば、規定に適合するが、「JIS A 1905−1」の化学物質吸着試験では、同ばらつきを0.05m/s以下にしなければならず、この点で、「JIS A 1901」の化学物質放散試験よりも条件が厳しくなっている。
【0007】
そこで、後述するように、本発明者らにより、図6の構造の容量20Lのチャンバー50を使って、試料表面に接触する空気の流速分布を測定する実験が行われた。その結果、試料表面内の所定の測定点間での空気の流速が、最大0.21m/sの差を生じており、図6の構造のチャンバー50では、「JIS A 1905−1」の化学物質吸着試験に適用することができない。このばらつきは、ファン55の回転により、チャンバー50内の空気に旋回流等の乱流が発生し、当該乱流が試料S付近の空気の流れに影響を与えていることに起因すると考えられる。このため、前記ばらつきを少なくするには、試料Sとファン55の間の空気の流れ距離を極力長くする必要がある。ところが、JISで規定された20Lのチャンバーを使った場合、その高さが50cm程度であり、前記チャンバー50の構造では、前記ばらつきを少なくするのに十分な前記流れ距離を確保するのが難しい。
【0008】
本発明は、このような課題に着目して案出されたものであり、その目的は、簡単な構造で、チャンバー内の試料に接触する空気を整流化し、当該空気の流速を試料の接触部分の全域でほぼ均一にすることができる気流制御ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)前記目的を達成するため、本発明は、所定の流れの空気に試料を接触させて当該試料の化学性能を評価する試験に用いられる気流制御ユニットであって、
前記試料が設置される試料設置部と、前記空気の吸入口及び排出口が形成され、当該吸入口と排出口を結ぶ空気の流路が設けられた風洞部と、前記吸入口から前記排出口に向う空気の流れを前記流路内に生成する流れ生成手段とを備え、
前記風洞部は、前記試料設置部に設置された前記試料を臨む試料窓と、前記流れ生成手段と前記試料窓の間となる前記流路の途中に設けられた仕切部材とを備え、
前記試料窓は、前記流路を流れる空気が前記試料に接触可能に開放し、
前記仕切部材は、前記流れ生成手段と前記試料窓の間の空気の流れを迂回させるように配置される、という構成を採っている。
【0010】
(2)また、前記試料設置部には、前記試料の少なくとも一部を表出した状態で当該試料を保持する試料ホルダーが設置される、という構成を採ることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
前記(1)の構成によれば、既存のチャンバー内に本発明の気流制御ユニットを設置して化学物質吸着試験を行う場合、仕切部材の存在によって、流れ生成手段と試料窓の間の空気の流れ距離を従来よりも増大させることができる。このため、試料に接触する空気の流れは、流れ生成手段による乱流の影響を受け難くなり、複雑な制御機器等を不要にした簡単な構造で、試料に接触する空気を整流化させることができ、空気が接触する試料の全域で当該空気の流速をほぼ均一にすることができる。また、流れ生成手段の状態を変えることで、試料に接触する空気の流速の調整が可能となり、各種の試験規格に適合した流速を得ることもできる。更に、より小型となる装置構成で、流れ生成手段による乱流の影響を低減して試料に接触する空気を整流化させることができ、容積が小さく高さ制限のあるチャンバーにも適用可能となる。
【0012】
前記(2)のように構成することで、建築材料等の他の化学性能評価試験でも利用可能となる既存の試料ホルダーをそのまま使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1には、本実施形態に係る気流制御ユニットをチャンバーとともに示した概略斜視図が示され、図2には、前記気流制御ユニットの一部分解斜視図が示されている。また、図3には、図2中A−A線に沿う概略断面図が示され、図4には、図2中B−B線に沿う概略断面図が示されている。これらの図において、本実施形態の気流制御ユニット10は、「JIS A 1905−1」に規定された化学物質吸着試験に用いられるものであり、当該試験の対象となる建築材料からなるブロック状の試料Sを保持した状態で、円筒状のチャンバーCの内部空間に収容されるようになっている。このチャンバーCは、上端側の開放部分を開閉可能に着脱自在な蓋体C1を備えており、当該蓋体C1を取り外した状態で、気流制御ユニット10をチャンバーC内にセットした上で、蓋体C1を取り付けて前記試験が行われる。この試験時には、汚染物質を含む規定流量の空気が、チャンバーCの下部に形成された空気導入部C2からチャンバーC内に導入される。チャンバーC内の空気は、後述するように、気流制御ユニット10内に導入されて試料Sに接触した上で、気流制御ユニット10からチャンバーC内に排出される。そして、所定時間経過後、チャンバーC内の空気は、蓋体C1に形成された空気排出部C3からチャンバーCの外側に排出される。当該排出された空気は、図示しない機器を使って汚染物質の残存量が測定され、試料Sに対する汚染物質の吸着性能が評価される。
【0015】
前記気流制御ユニット10は、チャンバーC内の空気が通過する本体11と、この本体11の側方二箇所に着脱自在に取り付けられるとともに、試料Sを内部に保持する箱型の試料ホルダー12とを備えて構成されている。
【0016】
前記本体11は、空気の流路が内部に形成された中空の風洞部を構成する上部ダクト15及び下部ダクト16と、チャンバーCの底部に設置される平面視ほぼ方形状の設置板18と、設置板18のコーナ部分四箇所から起立して、上部ダクト15及び下部ダクト16を支持する脚体20と、設置板18のほぼ中央に固定されたファン23(図3、図4参照)とを備えて構成されている。なお、本体11は、汚染物質を放散せず、また、試料Sから放散された化学物質を吸着し難い材料、例えば、フッ素樹脂及びステンレス等によって形成され、加熱脱着による洗浄が可能となっている。
【0017】
前記上部ダクト15は、上端が開放する門型に形成されている(図2参照)。具体的に、この上部ダクト15は、各試料ホルダー12,12に対向する一対の対向板25,25と、これら対向板25,25の両端間にそれぞれ連なる端板27,27とにより構成されている。上部ダクト15の上端に形成された開放部分は、チャンバーC内の空気を本体11内に導入する吸入口E1となっており、上部ダクト15の内部空間は、吸入口E1からの空気を下部ダクト16内に導く第1の流路F1(図3参照)となっている。
【0018】
前記各対向板25は、下向きコ字状に形成され、その内側開放部分は、各試料ホルダー12,12が本体11に取り付けられたときに、第1の流路F1から試料ホルダー12内の試料Sを臨む試料窓28となっている。この試料窓28は、第1の流路F1を流れる空気が試料Sの一部表面に接触可能に形成されている。
【0019】
前記下部ダクト16は、上部ダクト15の下端側に連なっており、各対向板25,25の下端側から設置板18に沿って水平方向に延びる頂壁31と、端板27の下端側及び頂壁31の周縁側から下方に垂下する側壁32と、側壁32の内側に形成された空間を上下二分するように、側壁32の内面に固定された底壁35と、底壁35の上方位置に固定された仕切板36(仕切部材)とを備えて構成されている。
【0020】
前記頂壁31の上面は、試料ホルダー12,12が起立した状態で設置される設置面(試料設置部)となっている。なお、図示省略しているが、この設置面上には、当該設置面に沿う方向への試料ホルダー12,12の移動を規制する部材が突設されている。
【0021】
図3及び図4に示されるように、前記側壁32の内側に形成された空間のうち、底壁35よりも上方の空間は、上部ダクト15内の第1の流路F1に連なる第2の流路F2となる。
【0022】
前記底壁35は、平面視ほぼ長方形状の板状となっており、そのほぼ中央部分には、上下に貫通する丸穴状の排出口E2が形成されている。
【0023】
前記仕切板36は、図2〜図4に示されるように、底壁35に対し、短寸幅方向の長さが短くなっている一方、長手方向の長さが同一となるサイズとなっている。従って、仕切板36は、図3に示されるように、同図中左右両端側に側壁32,32との間の隙間A1がそれぞれ形成された状態で、同図中紙面直交方向両端側が側壁32,32に固定支持されることになる(図4参照)。
【0024】
前記脚部20は、その上端側が底壁35の下面側に固定される一方、その下端側が設置板18の上面側に固定される。この脚部20は、設置板18の上面側と側壁32の下端側との間に空間A2が形成可能となる長さに設定されている。
【0025】
前記ファン23は、排出口E2に対向するように底壁35の下方に配置されており、吸入口E1から排出口E2への空気の流れを生成する流れ生成手段として機能する。ファン23は、その回転数が可変になるように設けられており、当該回転数に対応した試料窓28上の流速が予め実験等で求められているため、前記回転数を調整することで、試料Sに接触する空気の流速を所望値にすることができる。
【0026】
前記各試料ホルダー12は、図2に示されるように、試料Sが内部に収容される箱状の収容体41と、収容体41に着脱自在に設けられた蓋体42とを備えて構成されている。
【0027】
前記収容体41は、側壁45と、当該側壁45の一端側に連なる枠状の底壁47とからなり、底壁47の反対側に形成された開放部分が試料Sの出し入れ部分となり、当該開放部分を蓋体42で開閉可能になっている。
【0028】
前記底壁47には、収容体41の内部に収容された試料Sが表出する角穴47Aが形成されており、当該角穴47Aが本体11の試料窓28に相対する向きで、試料ホルダー12が本体11にセットされる。この際、試料ホルダー12によって、試料窓28が閉塞されることになり、第1の流路F1を通過する空気は、試料窓28から気流制御ユニット10の外側に漏れることなく、試料窓28の内側に位置する試料Sの表面に接触可能となる。
【0029】
前記気流制御ユニット10内では、次のようにして空気が流れる。
【0030】
ファン23が回転すると、チャンバーC内の空気は、図3中矢印で示されるように、本体11の上端側の吸入口E1から上部ダクト15内の第1の流路F1に導かれ、下部ダクト16内の第2の流路F2に達する。そして、第2の流路F2内の空気は、仕切板36の上方の空間のほぼ中央から図3中左右両端側に向って流れ、前記隙間A1を通って、仕切板36の下方の空間に潜り込み、当該空間のほぼ中央にある排出口E2を通って、各脚部20の間の空間A2から気流制御ユニット10の外側に排出される。
【0031】
本発明者らは、以上のように構成された気流制御ユニット10の効果を実証するための実験を行った。この実験は、チャンバーCの容量を20Lとし、チャンバーCの換気条件を一時間当たり0.5回とし、図5に示されるように、空気が接触する試料Sの表面内で相互に等間隔となる9つの測定点Pでの空気の流速について、図示しないセンサ等を使って測定した。この測定は、ファン23の回転数を500rpm、700rpmの二種類についてそれぞれ行った。その結果は、次表の通りである。
【表1】

【0032】
一方、比較例として、図6に示される従来構造のチャンバー50内に設置した試料Sについて、前述と同様の実験条件で、前記各測定点Pを通過する空気の流速を測定した。その結果は、次表の通りである。
【表2】

【0033】
以上の各表を対比すると、本実施形態に係る気流制御ユニット10の方が、各測定点P間の空気の流速のばらつきの抑制効果が高いことが明らかに分かる。
【0034】
つまり、本実施形態に係る気流制御ユニット10を使用すると、ファン23の回転数が500rpmのときに、各測定点P間の流速のばらつきが最大で0.05m/s、同700rpmで各測定点P間の流速のばらつきが最大で0.06m/sとなっている。
【0035】
ところが、比較例に係る従来のチャンバー50に試料Sを設置すると、ファン55の回転数が500rpmのときに、各測定点P間の流速のばらつきが最大で0.17m/s、同700rpmで各測定点P間の流速のばらつきが最大で0.21m/sとなっており、本実施形態の気流制御ユニット10を使用した場合に比べ、試料Sの表面内での空気流速のばらつきが大きくなる。
【0036】
従って、本実施形態によれば、簡単な構造により、試料Sの表面全域で空気流速のばらつきを少なくすることができるという効果を得る。
【0037】
つまり、本実施形態の気流制御ユニット10では、第2の流路F2内に仕切板36が設けられているため、第1の流路F1から排気口E2に向う空気の流れが、排気口E2から離れる方向に迂回し、第2の流路F2の外方に強制的に膨らむことになる。このため、仕切板36がない場合に第1の流路F1から排気口E2に直線的に降下する空気の流れが、仕切板36で阻止されることになって、第2の流路F2内における空気の移動距離は、仕切板36のない場合よりも増大する。その結果、従来よりも、試料Sからファン23までの空気の流れ距離が増大し、ファン23の近傍の乱流の影響を受け難くなって試料Sに接触する空気が整流化されることで、当該空気の流速が試料Sの表面全域でほぼ均一になると考えられる。従って、20Lの小形チャンバーCを使用した場合のように、ファン23と試料Sとの直線離間距離を十分に確保できない場合でも、気流制御ユニット10では、試料Sからファン23に向って流れる空気の距離を増大させてファン23の影響を極力少なくすることができ、試料Sに接触する空気の整流化が可能になる。
【0038】
なお、前記流れ生成手段としては、ファン23に限定されるものではなく、吸入口E1から排出口E2への空気の流れを生成できる限り、ポンプ等の他の機器に代替することができる。また、前記流れ生成手段の設置位置は、前述した空気の整流状態を阻害しない限り、吸入口E1側や第1及び第2の流路F1,F2内としてもよい。
【0039】
また、前記仕切板36は、前述したように、前記流れ生成手段と試料窓28の間の空気の流れを迂回させて試料Sに接触する空気を整流化させられる限り、前記実施形態に対して配置を変更し、或いは、板状でない他の形状の仕切部材に代替することも可能である。
【0040】
更に、本実施形態の試料ホルダー12は、従来の他の試験で用いられているものを使用してもよい。また、試料窓28に相対する試料Sの部分を除いて当該試料Sを所定のフィルムで被覆等することにより、試料ホルダー12を省略し、試料Sを本体11に直接セットすることも可能である。また、前記実施形態では、試料Sを本体11の二箇所で取り付けられるようにしたが、試料Sは本体11に最低一箇所取り付けられれば良く、その数は問わない。
【0041】
また、前記実施形態では、気流制御ユニット10を「JIS A 1905−1」に規定された化学物質吸着試験に用いた例について説明しているが、本発明の気流制御ユニット10は、その用途に限定されない。例えば、同様の化学物質吸着試験である「JIS A 1905−2」に規定されたホルムアルデヒド放散建材を用いた吸着速度測定に本発明のユニット10を適用することもできる。また、ファン23の回転数の調整によって、試料Sに接触する空気の流速を所望値にすることができるため、本発明のユニット10は、「JIS A 1901」に規定された化学物質放散試験、「ISO16000−9」に規定された試験等、他の試験を行う際に使用することもできる。要するに、本発明は、試料Sに接触する空気の流速を制御し、試料Sに接触する空気の流速分布を一様にしなければならない試料Sの化学性能の評価試験全般に適用可能となる。
【0042】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態に係る気流制御ユニットをチャンバーとともに示した概略斜視図。
【図2】前記気流制御ユニットの一部分解斜視図。
【図3】図2中A−A線に沿う概略断面図。
【図4】図2中B−B線に沿う概略断面図。
【図5】実証実験における試料内での測定点を説明するための試料ホルダーの概略正面図。
【図6】従来のチャンバーの概略断面図。
【符号の説明】
【0044】
10 気流制御ユニット
11 本体
12 試料ホルダー
15 上部ダクト(風洞部)
16 下部ダクト(風洞部)
23 ファン(流れ生成手段)
28 試料窓
31 頂壁(試料設置部)
36 仕切板(仕切部材)
E1 吸入口
E2 排出口
F1 第1の流路
F2 第2の流路
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の流れの空気に試料を接触させて当該試料の化学性能を評価する試験に用いられる気流制御ユニットであって、
前記試料が設置される試料設置部と、前記空気の吸入口及び排出口が形成され、当該吸入口と排出口を結ぶ空気の流路が設けられた風洞部と、前記吸入口から前記排出口に向う空気の流れを前記流路内に生成する流れ生成手段とを備え、
前記風洞部は、前記試料設置部に設置された前記試料を臨む試料窓と、前記流れ生成手段と前記試料窓の間となる前記流路の途中に設けられた仕切部材とを備え、
前記試料窓は、前記流路を流れる空気が前記試料に接触可能に開放し、
前記仕切部材は、前記流れ生成手段と前記試料窓の間の空気の流れを迂回させるように配置されていることを特徴とする気流制御ユニット。
【請求項2】
前記試料設置部には、前記試料の少なくとも一部を表出した状態で当該試料を保持する試料ホルダーが設置されることを特徴とする請求項1記載の気流制御ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−103616(P2009−103616A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276660(P2007−276660)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(502195835)有限会社アドテック (3)
【Fターム(参考)】