説明

気流発生装置、気流発生装置モジュールおよび風車

【課題】曲げ変形などが生じる環境下においても優れた耐久性を有し、配線などの電気的な接続を容易に行うことができる気流発生装置、気流発生装置モジュールおよび風車を提供する。
【解決手段】実施形態の気流発生装置10は、一方向に延びる一つの第1の電極20と、一方の表面が第1の電極20に固着され、所定の間隔をあけて第1の電極20の長手方向に配設された無機固体材料からなる複数の誘電体23と、誘電体23の一方の表面に対向する他方の表面に、複数の誘電体に亘って固着された、第1の電極20と同じ方向に延びる一つの第2の電極21と、各誘電体23間の間隙を埋めるように充填された電気絶縁部材24とを備える。第1の電極20と第2の電極21との間に電圧が印加されて気流を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、気流発生装置、気流発生装置モジュールおよび風車に関する。
【背景技術】
【0002】
流体工学の分野において、物体表面に放電プラズマを生成して気流を発生させ、流体機器における空気力学的特性を制御する気流発生装置が提案されている。この気流発生装置において発生された気流により空気力学的特性を改善することで、流体機器における震動や騒音の抑制、あるいは高効率化が可能となる。この気流発生装置は、様々な用途があり、例えば風力発電システムの風車翼への適用が期待されている。
【0003】
上記した気流発生装置は、一対の電極が誘電体を介して配置されて構成されている。そして、これらの電極間に電圧を印加することで、一方の電極近傍の気体がイオン化されて気流が発生する。気流発生装置に備えられる誘電体として、アルミナなどのセラミックス材料やポリイミドなどの樹脂材料などが使用されている。
【0004】
気流発生装置に備えられる誘電体としてセラミックス材料を使用する場合、セラミックス材料は、樹脂材料に比べて放電に対して優れた耐性を有するため、長期間放電に曝されることになる誘電体として好適である。一方、セラミックス材料は、樹脂材料と比較して靭性に劣り、曲げ応力などが生じると割れる。そのため、風車翼の翼根から翼端に亘って気流発生装置を設置する際には、放電用電極、対向電極および誘電体からなる気流発生装置を複数作製し、この独立した複数の気流発生装置を風車翼に配置して、セラミック材料にかかる曲げ応力を低減させる構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−317656号公報
【特許文献2】特開2008−25434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のように、独立した複数の気流発生装置を風車翼に配置する構成においては、複数の気流発生装置のそれぞれの電極に電圧を印加するための配線を接続する必要がある。このように、複数の気流発生装置のそれぞれの電極に配線をすることは、作業工数の増大を招き製造性を低下させるとともに、配線箇所が増大することによる信頼性の低下を招くことになる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、曲げ変形などが生じる環境下においても優れた耐久性を有し、配線などの電気的な接続を容易に行うことができる気流発生装置、気流発生装置モジュールおよび風車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の気流発生装置は、所定の幅を有して一方向に延びる第1の電極と、一方の表面が前記第1の電極に固着され、所定の間隔をあけて前記第1の電極の長手方向に配設された無機固体材料からなる複数の誘電体と、前記誘電体の一方の表面に対向する他方の表面に、複数の前記誘電体に亘って固着され、所定の幅を有して前記第1の電極と同じ方向に延びる第2の電極と、各前記誘電体間の間隙を埋めるように充填された電気絶縁部材とを備える。そして、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧が印加されて気流を発生させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態の気流発生装置の一部を模式的に示した斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の気流発生装置における第2の電極と誘電体との接合部の断面を模式的に示した図である。
【図3】第1の実施の形態の気流発生装置において、ケーブルとの接続部に最も近い気流発生部の、長手方向に垂直な断面を模式的に示した図である。
【図4】第1の実施の形態の気流発生装置において、第1の電極および第2の電極の他の構成を説明するための、気流発生装置を上方から見たときの平面図である。
【図5】第2の実施の形態の気流発生装置の一部を模式的に示した斜視図である。
【図6】第3の実施の形態の気流発生装置モジュールを模式的に示した斜視図である。
【図7】第4の実施の形態の風車を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の気流発生装置10の一部を模式的に示した斜視図である。なお、図1では、第1の電極20の長手方向に繰り返し構成される構成部の一部を省略して示している。
【0012】
図1に示すように、気流発生装置10は、第1の電極20と、第2の電極21と、これらの電極間に介在する複数の誘電体23とを備えている。また、隣り合う誘電体23との間には、電気絶縁部材24が充填されている。
【0013】
第1の電極20は、所定の幅L1を有して、一方向に延びる一つの導電性部材で構成されている。第1の電極20の形状として、例えば、図1に示すように、一方向に延びる平板状の部材が例示されるが、平板状に限れるものではない。例えば、第1の電極20の長手方向に垂直な断面形状が、半円形、半楕円形、円形、楕円形などであってもよい。なお、誘電体23との接合を強固にするためには、誘電体23との接合面は、平面状であることが好ましい。
【0014】
誘電体23は、所定の間隔をあけて第1の電極20の長手方向に複数配設され、それぞれの誘電体23の一方の表面23aは、第1の電極20に固着されている。ここで、隣り合う誘電体23との間隔は、気流制御装置の曲げ応力を低減させる理由から、第1の電極20の長手方向に沿う誘電体23の長さと同程度に設定されることが好ましい。
【0015】
なお、ここでは、第1の電極20の幅L1が、誘電体23の幅Mよりも狭く構成された一例を示しているが、第1の電極20の幅L1を誘電体23の幅Mと同じに構成してもよい。すなわち、誘電体23の一方の表面23a全体に亘って、第1の電極20が固着されるように、第1の電極20の幅L1を構成してもよい。
【0016】
誘電体23の形状は、例えば、図1に示すように、直方体または立方体のものを使用することができるが、この形状に限られるものではない。また、誘電体23の形状は、例えば、気流発生装置10に曲げ応力がかかった際に、各誘電体23が曲げ応力の影響を受けない程度の形状(例えば、第1の電極20の長手方向の長さ)に構成されている。なお、少なくとも、気流が発生する側(第2の電極21側)の誘電体23の表面は平面であることが好ましい。また、各誘電体23の厚さは、等しいことが好ましい。
【0017】
誘電体23は、無機固体材料から構成されている。無機固体材料としては、例えば、セラミックス材料やガラス材料などを使用することができる。セラミックス材料としては、例えば、アルミナなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウム、窒化珪素などの非酸化物系のセラミックスを使用することができる。また、ガラス材料としては、例えば、シリカガラスなどを使用することができる。
【0018】
なお、誘電体23は、これらに限定されるものではなく、無機固体材料からなる誘電材料であればよく、その中でも耐放電性に優れたものを使用することが好ましい。ここで、耐放電性とは、放電による電子や、放電の過程で生じるイオンなどの衝突に対する、誘電体を構成する原子の耐スパッタリング性を意味する。
【0019】
第2の電極21は、所定の幅L2を有して、第1の電極20と同じ方向に延びる一つの導電性部材で構成されている。第2の電極21は、気流が発生する側の電極であり、外部に露出されて備えられることがあり、また、放電の影響を受けるため、耐酸化性や耐放電性を有する導電性材料で構成されることが好ましい。具体的には、例えば、ニッケル、ステンレス、チタン、モリブデン、タングステン、またはこれらの合金などの材料で構成されることが好ましい。
【0020】
第2の電極21の形状として、例えば、図1に示すように、一方向に延びる平板状の部材が例示されるが、平板状に限れるものではない。例えば、第2の電極21の長手方向に垂直な断面形状が、半円形、半楕円形、円形、楕円形などであってもよい。なお、誘電体23との接合を強固にするためには、誘電体23との接合面は、平面状であることが好ましい。
【0021】
第2の電極21は、図1に示すように、誘電体23の一方の表面23aに対向する他方の表面23bに、複数の誘電体23に亘って固着されている。すなわち、第1の電極20と同様に、一つの導電性部材で構成される第2の電極21が、各誘電体23の他方の表面23bに固着されている。また、第2の電極21は、第1の電極20から気流を発生させる方向にずらして、誘電体23を介して離間されている。
【0022】
なお、第1の電極20の幅L1が誘電体23の幅Mと同じに構成された場合には、第2の電極21の幅L2は、第1の電極20の幅L1よりも狭く構成される。そして、第2の電極21は、図1に示された配置位置と同様に、誘電体23の幅方向の中心よりも端部側にずらして固着される。
【0023】
ここで、第2の電極21と誘電体23との接合部30について説明する。なお、第1の電極20と誘電体23との接合部30も、第2の電極21と誘電体23との接合部30と同じ構成である。
【0024】
第2の電極21と誘電体23との接合部30は、例えば、第2の電極21または誘電体23の接合面に、銀や銅またはそれらの合金などをメッキ処理し、第2の電極21と誘電体23とを積層した状態でメッキ処理された金属を溶融して、接合してもよい。
【0025】
また、この接合方法に限らず、例えば、誘電体23との反応により誘電体23の表面を金属化するメタライズ法や、チタンやジルコニウムなどのセラミックス材料と反応性の高い金属を含む活性金属ロウ材を用いたロウ付けなどによって、第2の電極21と誘電体23とを接合してもよい。この活性金属ロウ材を用いた接合では、活性金属ロウ材の成分と、誘電体23に含まれる成分とが反応しながら硬化するため、より強固な接合界面を形成することができる。
【0026】
また、第2の電極21と誘電体23との接合強度を向上させるために、次に示すような方法で、第2の電極21と誘電体23とを接合することが好ましい。図2は、第1の実施の形態の気流発生装置10における第2の電極21と誘電体23との接合部の断面を模式的に示した図である。
【0027】
図2に示すように、第2の電極21と誘電体23との接合部30は、拡散層31と接合層32とを備えている。
【0028】
拡散層31は、誘電体23の表面に形成されている。この拡散層31は、誘電体23を構成する無機固体材料を含む金属材料から構成されている。無機固体材料は、例えば、粒子、またはそれらが溶着した状態で含有される。金属材料としては、例えば、モリブデンとマンガンの合金、タングステン、チタンなどを使用することができる。
【0029】
接合層32は、拡散層31に積層して形成され、拡散層31と第2の電極21とを接合している。接合層32は、例えば、Niを主成分とする金属材料、Ni、Cu、Agなどを主成分元素とした活性金属ロウ材などによって構成される。
【0030】
上記した接合部30を形成する場合、まず、例えば、バインダなどと混合することでペースト状にした拡散層31を形成するための材料を誘電体23の表面に塗布し、還元雰囲気下で熱処理して拡散層31を形成する。そして、例えば、ろう付けによって接合層32を形成し、拡散層31と第2の電極21とを接合する。
【0031】
なお、ここでは、接合部30が拡散層31と接合層32と備える一例を示したが、接合部30を拡散層31のみで構成してもよい。この場合、ペースト状にした拡散層31を形成するための材料を誘電体23の表面に塗布し、第2の電極21を積層した状態で、還元雰囲気下で熱処理を行う。
【0032】
これらの接合により、ペースト状にした拡散層31を形成するための材料の成分と、誘電体23に含まれる成分とが反応しながら硬化するため、より強固な接合界面を形成することができる。
【0033】
また、第2の電極21は、気流が発生する側の電極であり、外部に露出されて備えられることがあり、また、放電の影響を受けるため、表面を耐酸化性や耐放電性を有する材料でコーティングしてもよい。コーティングによる皮膜は、例えば、金メッキ、タングステン、モリブデンなどの融点金属やアルミナなどのセラミックスの物理蒸着(PVD)や化学蒸着(CVD)などによって形成される。また、例えば、第2の電極21にガラスペーストを塗布して焼き付ける方法(琺瑯)、アルミナなどのセラミックスの粒子を溶融状態で吹き付ける方法(溶射)などによって、コーティングによる皮膜を形成してもよい。これらのコーティングの中でも、セラミックスからなる皮膜は、屋外環境における酸化や腐食に対する耐環境性、および耐放電性の観点から有効である。
【0034】
各誘電体23間の間隙を埋めるように充填される電気絶縁部材24は、例えば、シリカ粒子を含むエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの樹脂材料で構成される。各誘電体23間の間隙、すなわち、誘電体23が存在しない第1の電極20と第2の電極21との間に電気絶縁部材24を設けることで、第1の電極20と第2の電極21との間の放電を防止することができる。
【0035】
また、図1に示すように、ケーブル40、41を介して第1の電極20と第2の電極21との間に電圧を印加する放電用電源50が備えられている。第1の電極20および第2の電極21は、それぞれ一方向に延びる一つの導電性部材で構成されているため、第1の電極20の一端部と第2の電極21との一端部に電圧を印加することで、気流発生装置10全体に電圧が印加される。
【0036】
放電用電源50は、例えば、パルス状(正極性、負極性、正負の両極性(交番電圧))や交流状(正弦波、断続正弦波)の波形を有する電圧を出力する。放電用電源50は、電圧値、周波数、電流波形、デューティ比などの電流電圧特性などを変化させて、第1の電極20と第2の電極21との間に電圧を印加することができる。
【0037】
次に、気流発生装置10の作用について説明する。
【0038】
放電用電源50から第1の電極20と第2の電極21との間に電圧が印加され、一定の閾値以上の電位差となると、第1の電極20と第2の電極21との間に放電が誘起される。この放電は、バリア放電とよばれ、低温プラズマが生成される。
【0039】
この放電においては、気体中の電子のみにエネルギを与えることができるため、気体をほとんど加熱せずに気体を電離して電子およびイオンを生成することができる。生成された電子やイオンは、電界によって駆動され、それらが気体分子と衝突することで運動量が気体分子に移行する。すなわち、放電を印加することで、例えば第2の電極21付近から、誘電体23の他方の表面23bに沿う気流を発生させることができる。
【0040】
この気流の大きさや向きは、電極に印加する電圧、周波数、電流波形、デューティ比などの電流電圧特性を変化させることで制御可能である。ここでは、各誘電体23の他方の表面23bに、同じ方向に向けて気流が発生する。
【0041】
上記した第1の実施の形態の気流発生装置10によれば、第1の電極20および第2の電極21は、それぞれ一方向に延びる一つの導電性部材で構成されているため、第1の電極20の一端部と第2の電極21との一端部に電圧を印加することで、気流発生装置10全体に電圧を印加することができる。そのため、第1の電極20、第2の電極21および誘電体23からなる個々の気流発生部ごとに配線を接続する作業をする必要がなく、製造性を向上させ、第1の電極20と第2の電極21との間に、容易に電圧を印加することができる。
【0042】
また、気流発生装置10は、一方向に長く延びる構造を有しているが、複数の誘電体23を所定の間隔をあけて第1の電極20の長手方向に配設し、誘電体23間に樹脂材料からなる電気絶縁部材24を備えているため、曲げ応力などがかかった場合でも、誘電体23を破損することがない。さらに、誘電体23として、セラミックス材料やガラス材料が使用されているため、耐放電性を向上させることができる。
【0043】
ここで、第1の実施の形態の気流発生装置10は、上記した構成に限られるものではない。図3は、第1の実施の形態の気流発生装置10において、ケーブル40、41との接続部に最も近い気流発生部の、長手方向に垂直な断面を模式的に示した図である。なお、気流発生部とは、気流発生装置10を構成する、第1の電極20、第2の電極21および一つの誘電体23からなる構成部をいう。
【0044】
図3に示すように、例えば、ケーブル40、41との接続部に最も近い気流発生部の誘電体23に貫通孔60を形成し、この貫通孔60を銅、ニッケル、タングステンなどの導電性部材で充填して、第2の電極21に電気的に導通する導通パス61を形成してもよい。
【0045】
これによって、ケーブル40、41による接続を、気流発生装置10の一方の側(この場合には、気流発生装置10の第1の電極20側)から行うことができる。そのため、ケーブル40、41との接続を容易に行うことができる。
【0046】
なお、ここでは、第2の電極21に電気的に導通する導通パス61の一例を説明したが、導通パス61は、第1の電極20に電気的に導通するように構成されてもよい。
【0047】
また、図4は、第1の実施の形態の気流発生装置10において、第1の電極20および第2の電極21の他の構成を説明するための、気流発生装置10を上方から見たときの平面図である。
【0048】
図4に示すように、誘電体23に固着されていない、誘電体23間に位置する、第1の電極の幅L3および第2の電極の幅L4を、誘電体23に固着されている、第1の電極の幅L1および第2の電極の幅L2よりも狭く構成してもよい。
【0049】
このように構成することで、気流発生装置10に曲げ応力がかかった際、第1の電極20および第2の電極21にかかる曲げ応力を低減することができる。そのため、例えば、気流発生装置10を風車などの風車翼に設置した場合、風車翼の変形に対する気流発生装置10の追従性を向上させることができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態の気流発生装置11の一部を模式的に示した斜視図である。なお、図5では、第1の電極20の長手方向に繰り返し構成される構成部の一部を省略して示している。また、第1の実施の形態の気流発生装置10と同じ構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0051】
図5に示すように、気流発生装置11は、第1の電極20と、第2の電極70と、これらの電極間に介在する複数の誘電体23とを備えている。
【0052】
第1の電極20は、第1の実施の形態における構成と同じであり、所定の幅L1を有して、一方向に延びる一つの導電性部材で構成されている。また、誘電体23についても、第1の実施の形態における構成と同じである。
【0053】
なお、ここでは、第1の電極20の幅L1が、誘電体23の幅Mよりも狭く構成された一例を示しているが、第1の電極20の幅L1を誘電体23の幅Mと同じに構成してもよい。すなわち、誘電体23の一方の表面23a全体に亘って、第1の電極20が固着されるように、第1の電極20の幅L1を構成してもよい。
【0054】
第2の電極70は、所定の幅L2を有し、誘電体23の一方の表面23aに対向する他方の表面23bに、それぞれ個別に固着されている。すなわち、第2の電極70は、第1の実施の形態の第2の電極21とは異なり一体形状からなる一つの電極ではなく、各誘電体23ごとに独立して複数備えられている。また、第2の電極70は、第1の電極20から気流を発生させる方向にずらして、誘電体23を介して離間されている。
【0055】
なお、第1の電極20の幅L1が誘電体23の幅Mと同じに構成された場合には、第2の電極70の幅L2は、第1の電極20の幅L1よりも狭く構成される。そして、第2の電極70は、図5に示された配置位置と同様に、誘電体23の幅方向の中心よりも端部側にずらして固着される。また、第2の電極70の材料などは、第1の実施の形態の第2の電極21と同じである。
【0056】
また、第1の電極20および第2の電極70の誘電体23への接合方法も、第1の実施の形態における接合方法と同じである。
【0057】
気流発生装置11においては、隣り合う誘電体23との間に、電気絶縁部材24を設けずに構成することができるが、必要に応じて電気絶縁部材24を設けてもよい。
【0058】
また、図5に示すように、ケーブル40、41を介して第1の電極20と第2の電極21との間に電圧を印加する放電用電源50が備えられている。第1の電極20は、一方向に延びる一つの導電性部材で構成されているため、第1の電極20の一端部にケーブル40が接続されている。一方、第2の電極21は、各誘電体23に個別に備えられ、各第2の電極21は、それぞれが導通されていないため、図5に示すように、各第2の電極21にケーブル41が接続されている。
【0059】
放電用電源50によって、第1の電極20と第2の電極21との間に電圧が印加され、一定の閾値以上の電位差となると、前述したように、例えば第2の電極21付近から、誘電体23の他方の表面23bに沿う気流を発生させることができる。
【0060】
上記した第2の実施の形態の気流発生装置11によれば、第1の電極20は、一方向に延びる一つの導電性部材で構成されているため、第1の電極20の一端部にケーブル40を接続することで、第1の電極20側の導通を一体化することができる。そのため、各誘電体23に個別に第1の電極20が備えられている場合に比べて、製造性を向上させることができる。
【0061】
また、気流発生装置11は、一方向に長く延びる構造を有しているが、複数の誘電体23を所定の間隔をあけて第1の電極20の長手方向に配設しているため、曲げ応力などがかかった場合でも、誘電体23を破損することがない。
【0062】
ここで、第2の実施の形態の気流発生装置11においても、各誘電体23に貫通孔60を形成し、この貫通孔60を銅、ニッケル、タングステンなどの導電性部材で充填して、第2の電極70に電気的に導通する導通パス61を形成してもよい(図3参照)。
【0063】
これによって、ケーブル40、41による接続を、気流発生装置11の一方の側(この場合には、気流発生装置11の第1の電極20側)から行うことができる。そのため、ケーブル40、41との接続を容易に行うことができる。なお、導通パス61は、第1の電極20に電気的に導通するように構成されてもよい。
【0064】
また、誘電体23に固着されていない、誘電体23間に位置する、第1の電極の幅L3を、誘電体23に固着されている、第1の電極の幅L1よりも狭く構成してもよい(図4参照)。
【0065】
このように構成することで、気流発生装置11に曲げ応力がかかった際、第1の電極20にかかる曲げ応力を低減することができる。そのため、例えば、気流発生装置11を風車などの風車翼に設置した場合、風車翼の変形に対する気流発生装置11の追従性を向上させることができる。
【0066】
(第3の実施の形態)
図6は、第3の実施の形態の気流発生装置モジュール12を模式的に示した斜視図である。気流発生装置モジュール12は、第1および第2の実施の形態における気流発生装置10、11の少なくとも一部を電気絶縁材料で覆ってモジュール化したものである。ここでは、第1の実施の形態における気流発生装置10をモジュール化した場合を例示して説明する。
【0067】
図6に示すように、気流発生装置モジュール12は、気流発生装置10の全体を電気絶縁材料でモールドして、モールド部75を形成することで構成される。ここで、電気絶縁材料としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの絶縁性に優れる樹脂材料や、アクリル樹脂、フッソ樹脂などの紫外線に耐性のある樹脂材料などを使用することができる。
【0068】
また、これらの樹脂材料に、上記した樹脂材料の特性をさらに向上させるために、例えば、シリカ、アルミナなどの無機材料を添加してもよい。これらの無機材料の形状は、粒子、破砕形状などである。例えば、樹脂材料の耐放電性の理由から、樹脂材料100質量部に対して、これらの無機材料を40〜70体積部添加することが好ましい。
【0069】
なお、ここでは、気流発生装置10の全体をモールドした一例を示しているが、この構成に限られるものではない。例えば、気流が発生する側の、第2の電極21、およびこの第2の電極21が固着された誘電体23の他方の表面23bをモールドせずに、これらを露出させて構成してもよい。
【0070】
例えば、気流発生装置10を風車翼などに設置する際、気流が発生しない第1の電極20側が風車翼に接触する側となるが、このように気流発生装置モジュール12とすることで、風車翼と第1の電極20との間の電気的な絶縁を確保することができる。また、気流発生装置モジュール12においては、少なくとも、風車翼に接触する側が絶縁されているため、風車翼などの設置対象物への設置を容易に行うことができる。
【0071】
(第4の実施の形態)
図7は、第4の実施の形態の風車13を模式的に示した斜視図である。図7に示すように、風車13において、地面80に設置されたタワー90の頂部に発電機(図示しない)などを収容したナセル91が取付けられている。ナセル91の上面には、風の風向や速度を計測する風向風速計110が設けられている。また、ナセル91から突出した発電機の回転軸にロータ100が取り付けられている。
【0072】
ロータ100は、ハブ101、およびこのハブ101に取り付けられた風車翼102を備えている。風車翼102は、例えば、ピッチ角が変更可能に備えられている。なお、ここでは、3枚の風車翼102を備える一例を示しているが、風車翼の数は、限定されるものではない。
【0073】
風車翼102の前縁部には、図7に示すように、風車翼102の翼根から翼端に亘って気流発生装置10、11が設けられている。なお、気流発生装置10、11の代わりに、気流発生装置モジュール12を備えてもよい。また、ここでは、風車翼102の翼根から翼端に亘って一つの気流発生装置10、11を設けた一例を示しているが、複数の気流発生装置10、11を設けるように構成されてもよい。
【0074】
ここで、風車翼102が、例えば、電気絶縁材料で構成されている場合には、風車翼102と第1の電極20との間の電気的な絶縁を確保することができるため、気流発生装置10、11を直接風車翼102に設置することができる。一方、風車翼102が、例えば、電気絶縁材料で構成されていない場合には、風車翼102と第1の電極20との間の電気的な絶縁を確保するため、気流発生装置モジュール12を設置することができる。
【0075】
放電用電源50は、例えば、ナセル91内に設けられ、風車翼102の内部、ハブ101を介して配線されたケーブル40、41を介して、気流発生装置10、11への電圧の印加を行う。なお、回転部と静止部は、例えば、ブラシや放電ギャップによって電気的に接続される。
【0076】
このように気流発生装置10、11を備えた風車翼102において、翼上面の流速と翼下面の流速の差から風車翼102には揚力が発生する。風車翼102の迎角を大きくすると揚力は増大するが、ある迎角以上では、翼上面から流れが剥離して揚力が低下する。このような流れの剥離を生じる部分の翼面上に気流発生装置10、11を備えて、気流を発生させることで、翼境界層における流速分布が変化し、流れの剥離の発生を抑えることができる。
【0077】
上記したように、風車翼102に気流発生装置10、11を備えることで、流れの剥離の発生を抑えて高効率化を図るとともに、風車翼102の振動や騒音の抑制することができる。
【0078】
また、気流発生装置10、11は、風車翼102の翼根から翼端に亘って、一方向に長く延びる構造を有しているが、複数の誘電体23を所定の間隔をあけて第1の電極20の長手方向に配設しているため、風車翼102に曲げ応力などがかかった場合でも、誘電体23を破損することがない。さらに、誘電体23として、セラミックス材料やガラス材料が使用されているため、耐放電性を向上させることができる。
【0079】
また、気流発生装置10、11を備えることで、前述したように、第1の電極20および第2の電極21をそれぞれの導通を一体化、または第1の電極20の導通を一体化することができるため、配線などの電気的な接続を容易にし、風車13の製造性を向上させることができる。
【0080】
以上説明した実施形態によれば、曲げ変形などが生じる環境下においても優れた耐久性を有し、配線などの電気的な接続を容易に行うことが可能となる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
10,11…気流発生装置、12…気流発生装置モジュール、13…風車、20…第1の電極、21,70…第2の電極、23…誘電体、23a,23b…表面、24…電気絶縁部材、30…接合部、31…拡散層、32…接合層、40,41…ケーブル、50…放電用電源、60…貫通孔、61…導通パス、75…モールド部、80…地面、90…タワー、91…ナセル、100…ロータ、101…ハブ、102…風車翼、110…風向風速計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅を有して一方向に延びる第1の電極と、
一方の表面が前記第1の電極に固着され、所定の間隔をあけて前記第1の電極の長手方向に配設された無機固体材料からなる複数の誘電体と、
前記誘電体の一方の表面に対向する他方の表面に、複数の前記誘電体に亘って固着され、所定の幅を有して前記第1の電極と同じ方向に延びる第2の電極と、
各前記誘電体間の間隙を埋めるように充填された電気絶縁部材と
を備え、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧が印加されて気流を発生させることを特徴とする気流発生装置。
【請求項2】
前記第1の電極および前記第2の電極において、前記誘電体に固着されていない、前記誘電体間に位置する電極の幅が、前記誘電体に固着されている電極の幅よりも狭く構成されていることを特徴とする請求項1記載の気流発生装置。
【請求項3】
所定の幅を有して一方向に延びる第1の電極と、
一方の表面が前記第1の電極に固着され、所定の間隔をあけて前記第1の電極の長手方向に配設された無機固体材料からなる複数の誘電体と、
前記誘電体の一方の表面に対向する他方の表面に、それぞれ個別に固着された複数の第2の電極と
を備え、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧が印加されて気流を発生させることを特徴とする気流発生装置。
【請求項4】
前記第1の電極において、前記誘電体に固着されていない、前記誘電体間に位置する電極の幅が、前記誘電体に固着されている電極の幅よりも狭く構成されていることを特徴とする請求項3記載の気流発生装置。
【請求項5】
前記第1の電極および前記第2の電極が、前記誘電体を構成する無機固体材料を含む金属材料からなる拡散層を介して、前記誘電体の表面に固着されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の気流発生装置。
【請求項6】
前記第1の電極および前記第2の電極が、前記誘電体の表面に形成された、前記誘電体を構成する無機固体材料を含む金属材料からなる拡散層、および前記拡散層に積層して形成された、金属材料からなる接合層を介して、前記誘電体の表面に固着されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の気流発生装置。
【請求項7】
前記誘電体に形成された貫通孔を介して、前記第1の電極または前記第2の電極に電気的に導通する導通パスが形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の気流発生装置。
【請求項8】
前記第1の電極および前記第2の電極のうち、気流が発生する側の電極の表面が、耐酸化性および耐放電性を有する材料でコーティングされていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の気流発生装置。
【請求項9】
前記無機固体材料が、セラミックス材料またはガラス材料であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の気流発生装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の気流発生装置の少なくとも一部が電気絶縁材料で覆われて構成されていることを特徴とする気流発生装置モジュール。
【請求項11】
風車翼の翼上面に、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の気流発生装置を備えたことを特徴とする風車。
【請求項12】
風車翼の翼上面に、請求項10記載の気流発生装置モジュールを備えたことを特徴とする風車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64353(P2013−64353A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203434(P2011−203434)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/動的流れ場に対するプラズマ気流制御最適化の研究開発」業務委託、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】