説明

気液混合システム及び気液混合方法

【課題】温度、圧力等に左右されることなく、気体の送る量を安定かつ容易に制御し、気体と液体との混合を精度良く行うことのできる気液混合システムを得る。
【解決手段】液体と少なくとも1種類の気体とを混合するマイクロ混合器3を有する気液混合システムであって、気体の質量流量を制御してマイクロ混合器に供給する質量流量制御調節弁2a,2bをマイクロ混合器3への気体供給路に備えるとともに、液体をマイクロ混合器に送る液体供給路に液体供給用のポンプ7を備えたことにより、気体と液体との混合を精度良く行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体と少なくとも1種類の気体とを混合する気液混合システム及び気液混合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学薬品、化粧品等の製造工程においては、気体と液体を混合することが従来から行われている。この気液混合をマイクロミキサ、マイクロリアクタ等のマイクロ混合器を用いて行う場合、気体の流量の制御は減圧弁、絞り弁とフローメータによるものが一般的である。図3は従来の気液混合を行う構成の概要図を示すもので、気体をマイクロ混合器101に送る気体供給路102には、減圧弁103、絞り弁104、フローメータ105が設けられている。そして、上記気体と混合される液体をマイクロ混合器101に送る液体供給路108には、ポンプ106、二分岐継手10、圧力計107が設けられている。
【0003】
上記の構成により、気体は減圧弁103、絞り弁104、フローメータ105を通ることによって流量の制御が行われ、気体供給路102を通じてマイクロ混合器101に供給される。
【0004】
一方、ポンプ106から送り出された液体は、圧力計107、液体供給路108を通ってマイクロ混合器101に供給される。この際に圧力計107は二分岐継手10を介して分岐された液体供給路内の圧力であって液体供給路9と等しい液体の圧力を検出する。そして、供給された気体と液体はマイクロ混合器101で混合されて出力される。
【0005】
なお、2種類の液体を混合するマイクロ混合器は従来から知られているが、このマイクロ混合器は2種類の液体同士を混合するものであって、気体と液体とを混合するものではない(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−346353号公報(段落(0002)、(0003))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来では一般的に図3に示した構成により気体と液体との混合を行っている。この場合、気体の流量を制御するに際して体積流量を測定してこれに基づいて制御するが、気体の体積は圧力、温度によって液体(気体との混合によって化学反応を起こす反応液体と、化学反応を起こさない液体の両方を含む)より大きく変動する。
【0007】
また、マイクロミキサ、マイクロリアクタ等のマイクロ混合器では内径の極めて小さい細い流路に液体を通すため圧力損失が生じるが、気体と液体とでは発生する圧力損失が異なり制御が難しい。さらに気体との混合によって化学反応を起こす液体である反応液体の流量や粘度、気液の反応による発熱によっても気体の体積に影響を与え、気体を送り込むために必要な圧力が変動するので制御が困難となる。具体的には、気体と液体が混合されて流れる通路内に生じた圧力損失が増大したときは、液体が気体供給路に逆流したり、また、液体を送り出すポンプがプロペラ型ポンプ等の場合には、液体に混合する気体がポンプ側に逆流したりする。このため、気体の流れを正確に制御できないという課題があった。
【0008】
本発明は上記のような課題を解消するためになされたもので、温度、圧力等に左右されることなく、気体の送る量を安定かつ容易に制御し、気体と液体との混合を精度良く行うことのできる気液混合システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1にかかる気液混合システムは、
液体と少なくとも1種類の気体とを混合するマイクロ混合器を有する気液混合システムにおいて、
前記気体の質量流量を制御して前記マイクロ混合器に供給する質量流量制御調節弁を前記マイクロ混合器への気体供給路に備えるとともに、液体をマイクロ混合器に送る液体供給路に液体供給用のポンプを備えたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の請求項2にかかる気液混合方法は、
複数の流路が合流して1つの排出路を形成した構造を有するマイクロ混合器を用いて液体と気体とを混合する気液混合方法において、
複数の流路のうちの少なくとも1つの流路が気体供給路として用いられると共に少なくとも1つの流路が液体供給路として用いられるようになっており、
前記液体供給路にそれぞれ一定流量の液体を連続的に送り、
前記気体供給路に質量流量制御を介して一定流量の気体を連続的に送ることで、前記排出路から気液混合体を取り出すようになったことを特徴としている。
【0011】
請求項1にかかる気液混合システム及び請求項2にかかる気液混合方法によると、気体は、その質量流量が質量流量制御調節弁によって制御され、常に安定してマイクロ混合器に供給されるので、気体の体積が圧力、温度により変動することによる課題を解消し、液体との混合が精度良く行われる。
【0012】
また、液体をマイクロ混合器に送る液体供給路に液体供給用のポンプが備えられていても、液体が気体の質量流量制御調節弁側に流れ込むのを防止でき、液体をマイクロ混合器に確実に送り、気体との混合を精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る気液混合システム及び気液混合方法によれば、気体は温度、圧力等に左右されることなく質量流量制御が行われ、一定の流量が安定してマイクロ混合器に送られるので、液体との混合が精度良く行われる。
【0014】
また、気体は質量流量制御調節弁で自動的に質量流量制御が行われてマイクロ混合器に送られるとともに、液体はポンプによりマイクロ混合器に確実に送られるので、その両者の混合が精度良く行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態にかかる気液混合システムについて図面に基づいて説明する。なお、以下に示した配管の具体的な寸法はあくまで一例を示したもので、本発明で利用するマイクロ混合器に適用できる径の小さい配管であれば、この寸法関係に限定されるものではない。
【0016】
図1は本発明の一実施形態にかかる気液混合システムの構成を示すブロック図である。分岐弁1は、質量流量制御調節弁2aと質量流量制御調節弁2bのいずれかを選択する。この分岐弁1とマイクロ混合器3との間にはチェック弁5と継手部6とが設けられている。
【0017】
そして、入口側に1/8(外径3.2mm)の継手部2a−1、2b−1を有する質量流量制御調節弁2a,2bの出口側から分岐弁1に至る気体供給路4はそれぞれ例えば1/4(外径6.4mm)の配管、分岐弁1からチェック弁5に至る気体供給路4は例えば1/4(外径6.4mm)のSUS管、チェック弁5から継手部6に至る気体供給路4は例えば1/8(外径3.2mm)のSUS管、継手部6からマイクロ混合器3に至る気体供給路4は、例えば1/8(外径3.2mm)のサイズを有し、例えばフッ素樹脂(テフロン(登録商標))等の耐食性と外部からチューブ内の視認性に優れた樹脂製チューブでそれぞれ接続されている。この樹脂製チューブの端部には、継手部6およびマイクロ混合器3に接続するための例えばフッ素樹脂(テフロン(登録商標))等の耐食性に優れた樹脂製継手4−1,4−2が設けられている。
【0018】
分岐弁1は質量流量が制御されて質量流量制御調節弁2aから出力された気体Aか、質量流量が制御されて質量流量制御調節弁2bからの気体Bのいずれかを選択してチェック弁5に供給する。この質量流量制御調節弁2a、質量流量制御調節弁2bとしては、例えば特開2000−020137号公報に開示された流量制御装置を用いる。この流量制御装置は例えば気体の流れる流路21と、この流路21を流れる気体の流量を制御する調節弁22と、流路21を流れる気体の流量を検出する流量検出センサ23と、この流量検出センサ23により検出された流量検出値に基づいて出力流量が一定となるように調節弁22を制御する制御部24とから構成されている。
【0019】
上記流量検出センサ23としては半導体技術を利用した熱式の微小質量流量センサを用いる。この微小質量流量センサは、例えば特開2002−122454号公報に開示されたフローセンサ等が好適に用いられる。このフローセンサは、シリコンチップのダイアフラム上に形成された発熱部とこの発熱部の上流側および下流側であって前記ダイアフラム上に形成された2つの温度検出部を有し、これら2つの温度検出部によって検出される温度の差を一定に保つために必要な発熱部に対する供給電力から流速に対応する流量を求めたり、あるいは一定電流または一定電力で発熱部を加熱し、2つの温度検出部によって検出される温度の差から流量を求めたりすることができる。
【0020】
ポンプ7は液体を加圧して液体供給路9に送り出す。この際に圧力計8は二分岐継手10を介して分岐された液体供給路内の圧力であって液体供給路9と等しい液体の圧力を検出し、この検出値をポンプ7の制御部(図示せず)に供給して、ポンプ7から送り出される液体の圧力が設定以上に上昇した場合の保護を行う。このポンプ7から送り出された液体は例えば1/8(外径3,2mm)のSUS管からなる液体供給路9を通じてマイクロ混合器3に供給される。ポンプ8としては、ピストン、ベーンポンプ等の容量可変型ポンプ、または歯車、ねじポンプ等の定容量型ポンプ、ターボ型ポンプ等のいずれでも良く、一定の流量の液体を送るために使用される。
【0021】
なお、ここでいう「一定の流量」は使用されるポンプの性能によって決まる。例えば、ポンプを駆動する電動モータの回転数が製品仕様として保証されているポンプにおいては、吐出流量自体は保証されていない。回転数の変動幅が±5%であっても吐出量の変動幅は±10%かもしれない。このようなポンプにおいては、実際の吐出量の変動幅である±10%を含む流量を「一定の流量」とみなす。どのような流量性能を持つポンプを使用するかは、用途の必要性に応じて決定されることである。
【0022】
次に上述した気液混合システムの動作(作用)について説明する。気体Aは質量流量制御調節弁2aで温度、圧力等に左右されることなく質量流量制御が行われ一定の質量流量で分岐弁1に供給される。一方、気体Bも質量流量制御調節弁2bで温度、圧力等に左右されることなく質量流量制御が行われ一定の質量流量で分岐弁1に供給される。
【0023】
ここで、分岐弁1は気体Aを使用するのであれば、質量流量制御調節弁2aを選択して気体Aをチェック弁5に送る。気体Bを使用するのであれば、質量流量制御調節弁2bを選択して気体Bをチェック弁5に送る。そして、チェック弁5から送り出された気体Aまたは気体Bは樹脂製チューブからなる気体供給路4を通じてマイクロ混合器3に供給される。
【0024】
一方、ポンプ7によって送り出された液体は、液体供給路9を通じてマイクロ混合器3に供給される。マイクロ混合器3では供給された気体Aまたは気体Bと液体が混合されて出力される。
【0025】
上記のように、本発明は質量流量制御調節弁2aまたは質量流量制御調節弁2bを気体供給路に設けたことにより、気体Aまたは気体Bの質量流量制御が温度、圧力等に左右されることなく行われ、一定の流量としてマイクロ混合器3に供給されるので、気体を送る量を安定かつ容易に制御することができ、液体との混合が精度良く行われる。
【0026】
上記の実施形態は気体Aまたは気体Bをいずれか一方を選択して液体と混合する場合について説明したが、選択することなく常に1種類の気体と1種類の液体とを混合することは勿論、2種類以上の気体と1種類の液体を混合することもできる。
【0027】
図2は2種類の気体と1種類の液体を混合する気液混合システムの構成図を示すブロック図である。気体Aは質量流量制御調節弁2a、チェック弁5a、継手部6aを有する気体供給路4aを経てマイクロ混合器3に供給される。入口側に継手部2a−1を有する質量流量制御調節弁2aからチェック弁5aに至る気体供給路4aは例えば1/4(外径6.4mm)の配管、チェック弁5aから継手部6aに至る気体供給路4aは例えば1/8(外径3,2mm)のSUS管で接続され、継手部6aからマイクロ混合器3に至る気体供給路4aは例えば1/8(外径3,2mm)の樹脂製チューブで接続されている。
【0028】
また、気体Bは質量流量制御調節弁2b、チェック弁5b、樹脂製継手6bを経てマイクロ混合器3に供給される。入口側に継手部2b−1を有する質量流量制御調節弁2bからチェック弁5bに至る気体供給路4bは例えば1/4(外径6.4mm)の配管、チェック弁5bから継手部6bに至る気体供給路4bは例えば1/8(外径3,2mm)のSUS管で接続され、継手部6bからマイクロ混合器3に至る気体供給路4bは例えば1/8(外径3,2mm)の樹脂製チューブで接続されている。
【0029】
液体はポンプ7で液体供給路9を経てマイクロ混合器3に供給される。このポンプ7からマイクロ混合器3に至る液体供給路9の間は例えば1/8(外径3,2mm)の配管で接続されている。
【0030】
上記の質量流量制御調節弁2a,2b、チェック弁5a,5b、樹脂製継手6a,6b、マイクロ混合器3、ポンプ7、圧力計8、二分岐継手10等は、図1に示した質量流量制御調節弁2a,2b、チェック弁5、樹脂製継手6、マイクロ混合器3、ポンプ7、圧力計8と同じものであるから重複説明は省略する。
【0031】
次に上述した気液混合システムの動作(作用)について説明する。気体Aは質量流量制御調節弁2aで温度、圧力等に左右されることなく質量流量制御が行われ一定の流量としてチェック弁5aに供給され、例えば1/8(外径3,2mm)のSUS管、継手部6aに接続された例えば1/8(外径3,2mm)の樹脂製チューブを経てマイクロ混合器3に供給される。
【0032】
また、気体Bは質量流量制御調節弁2bで温度、圧力等に左右されることなく質量流量制御が行われ、一定の流量としてチェック弁5bに供給され、例えば1/8(外径3,2mm)のSUS管、継手部6bに接続された例えば1/8(外径3,2mm)の樹脂製チューブを経てマイクロ混合器3に供給される。
【0033】
一方、ポンプ7で圧力計8に送られた液体は、この圧力計8から銅管の液体供給路9を経てマイクロ混合器3に供給される。このようにして、マイクロ混合器3に供給された気体A、気体Bおよび液体はマイクロ混合器3内で混合されて出力される。
【0034】
上述の気液混合システムよれば、気体Aは質量流量制御調節弁2a、気体Bは質量流量制御調節2bによって、それぞれ温度、圧力等に左右されることなく質量流量制御が行われ、一定の流量としてマイクロ混合器3に供給されるので、2種類の気体A、気体Bの送る量を安定かつ容易に制御することができるので、液体との混合が精度良く行われる。
【0035】
なお、図示の実施形態においては、一端にチェック弁5を接続したSUS管の他端に継手部6を設け、この継手部6とマイクロ混合器3の間を透明な樹脂製チューブで接続した構成であるが、これは樹脂製チューブの透明性を利用して液体が気体供給路に逆流したことを目視により迅速に確認できるようにしたものである。したがって、透明な樹脂製チューブの接続は必ず必要なものではない。また、SUS管の代わりに銅管を用いても良い。
【0036】
以上説明したように、本発明に係る気液混合システム及び気液混合方法によると、従来のようにマイクロ混合器を用いて液体と少なくとも1種類の気体とを混合する場合、特に気体との混合によって化学反応を起こす液体である反応液体の流量や粘度、気液の反応による発熱によって気体の体積に影響を与え、気体を送り込むために必要な圧力が変動するので制御が困難となっていた問題を解決できた。具体的には、気体と液体が混合されて流れる通路内に生じた圧力損失が増大したときは、液体が気体供給路に逆流したり、液体を送り出すポンプがプロペラ型ポンプの場合、液体に混合する気体がポンプ側に逆流したりして気体の流れを正確に管理制御できないという問題を解決できた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態にかかる気液混合システムの構成を示すブロック図である。
【図2】2種類の気体と1種類の液体を混合する気液混合システムの構成図を示すブロック図である。
【図3】従来の気液混合を行う構成の概要図である。
【符号の説明】
【0038】
1 分岐弁
2a,2b 質量流量制御調節弁
2a−1,2b−1 継手部
3 マイクロ混合器
4,4a,4b 気体供給路
4−1,4−2 樹脂製継手
5,5a,5b チェック弁
6,6a,6b 継手部
7 ポンプ
8 圧力計
9 液体供給路
10 二分岐継手
21 流路
22 調節弁
23 流量検出センサ
24 制御部
101 マイクロ混合器
102 気体供給路
103 減圧弁
104 絞り弁
105 フローメータ
106 ポンプ
107 圧力計
108 液体供給路
A,B 気体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と少なくとも1種類の気体とを混合するマイクロ混合器を有する気液混合システムにおいて、
前記気体の質量流量を制御して前記マイクロ混合器に供給する質量流量制御調節弁を前記マイクロ混合器への気体供給路に備えるとともに、液体をマイクロ混合器に送る液体供給路に液体供給用のポンプを備えたことを特徴とする気液混合システム。
【請求項2】
複数の流路が合流して1つの排出路を形成した構造を有するマイクロ混合器を用いて液体と気体とを混合する気液混合方法において、
複数の流路のうちの少なくとも1つの流路が気体供給路として用いられると共に少なくとも1つの流路が液体供給路として用いられるようになっており、
前記液体供給路にそれぞれ一定流量の液体を連続的に送り、
前記気体供給路に質量流量制御を介して一定流量の気体を連続的に送ることで、前記排出路から気液混合体を取り出すようになったことを特徴とする気液混合方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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