説明

気液混合溶解装置

【課題】気液の混合溶解をより効率的に行うことができる方法を提供する。
【解決手段】金属又は高硬度プラスチックで形成された極狭小幅を有するスクリーンに気相及び液相を同時に通過させることにより、液相中に気相を溶解させることを特徴とする気液混合溶解方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相中に気相を混合溶解させる方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液相中に気相を混合溶解させることや、または液相中に気相を注入して微細気泡を混合分散させることの一般的な方法として、気相を多孔質体や散気管の微細孔を介して液相中に圧入しながら混合する気相加圧方法や、超音波を利用して気泡を発生する超音波式気泡発生方法、液相を旋回して陰圧となる渦中に気相を吸引させて液相中に気相を圧壊混合する方法などがある。また、スリットを利用して気液混合を行う方法として、例えば特許文献1のような微細気泡発生装置がある。特許文献1所載のスリット構造は、液体流路の管体に突起物を当接させることにより一定の間隔が形成されるという構造であり、管体中に液体が流通する際に気体が混入し、気液混合されるというものである。
【特許文献1】特開2006−61829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、気液混合の際、微細気泡を発生させる手段において、特許文献1所載のスリット型微細気泡発生装置では、スリットを形成する間隔の幅をμm単位で調整する必要があり、装置の構造上、一箇所円周上に開口している気液供給口のスリットでは、微細な気泡の散気は非常に難しく、実用上大量生産する場合などにおいては気液混合効率が悪いと考えられる。さらに多孔質体や散気管の微細孔を介して圧入しながら液相中に送気するバブリング装置は、液相中に気相を効率よく溶解させるためには前記微細孔の孔径はより小さい方が良いが、微細孔が小さくなると気相を圧入する供給量が少なくなり、供給量を多くするためには圧入するエネルギーを大きくしたり有効総面積を大きくする必要があるなど場合によっては大掛かりな設備が必要になる。また、羽根式の気液混合装置においては、液中に微細気泡として分散させ液相中気相濃度を効率よく上昇させたいが、前記羽根式気液混合装置は、気泡のコントロールが困難で、気相濃度を短時間で効率よく上昇させることが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、コンパクトな設備でありながら液相中気相濃度を短時間で効率よく上昇させることや、微細気泡を簡単に発生させることができることを見出した。
【0005】
すなわち、本発明は、下記の気液混合溶解方法及びその装置に関するものである。
1.金属又は高硬度プラスチックで形成された極狭小幅を有するスクリーンに気相及び液相を同時に通過させることにより、液相中に気相を溶解させることを特徴とする気液混合溶解方法。
2.前記スクリーンの極狭小幅の隙間が0.001mm乃至4mmである、前記項1記載の気液混合溶解方法。
3.前記スクリーンが断続的に設けられている、前記項1または前記項2記載の気液混合溶解方法。
4.前記スクリーンが筒状に形成された筒状態であって、当該筒状体の内部から外部に向かって又は外部から内部に向かって極狭小幅を有するスクリーンに気相及び液相を通過させる、前記項1乃至前記項3のいずれかに記載の気液混合溶解方法。
5.液相に気相を溶解させるための装置であって、(1)液相を供給する液相供給手段、(2)気相を供給する気相供給手段、(3)前記気相供給手段及び液相供給手段から供給された気相及び液相を通過させる為の金属又は高硬度プラスチックで形成された極狭小幅を有するスクリーンを備えている気液混合溶解手段を含む気液混合溶解装置。
6.液相に気相を溶解させるための装置であって、多孔質体により生成される微細な気泡を気相供給手段とする前記項5記載の気液混合溶解装置。
7.液送のポンプを有し、かつ、前記ポンプの吸込側に気液混合溶解手段が配置され、その吸込圧により、供給された気相及び液相を前記極狭小幅を有するスクリーンに通過させることで液相中に気相を溶解させる前記項5乃至前記項6のいずれか記載の気液混合溶解装置。
8.液送のポンプを有し、かつ、前記ポンプ内部の1段及び/又は多段的に設けられた送液用インペラの外周面に、1段及び/又は多段的に気液混合溶解手段が配置され、インペラの遠心力により、供給された気相及び液相を前記極狭小幅を有するスクリーンに通過させることで液相中に気相を溶解させる前記項5乃至前記項7のいずれか記載の気液混合溶解装置。
9.粗大気泡による液相対流効果で液相を攪拌させるために、気液混合溶解手段の出口に減圧状態にして気相を引き込むエジェクターを設けた前記項5乃至前記項8のいずれか記載の気液混合溶解装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明による気液混合溶解方法によると極狭小幅を有するスクリーンに気相及び液相を同時に通過させることにより、液相中の気相がキャビテーション現象のように微細な気泡となり、液相中に容易に微細気泡として分散させることが可能で、液相中に気相を効率よく溶解させることができる。
【0007】
ここで、金属シートやプラスチックシートに切り込みを入れたような弁挙動を示すスリット式の気液混合溶解方法では、目詰まりを起こすような塵埃などが混入して圧が加わると同時に弁挙動様に開いて詰りが解消されるような構造ではあるが、繰返し長時間の弁挙動については耐久性に問題がありスリットの劣化が懸念される。これに対し、金属ワイヤーや高硬度プラスチックワイヤー製のスクリーン気液混合溶解方法は、劣化の心配がなく、0.001mmなど極狭小幅にコントロールすることが可能で、容易に微細気泡を発生し気液混合溶解させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の気液混合溶解方法は、極狭小幅を有するスクリーンに、気相及び液相を同時に通過させることによって、液相中の気相が前記スクリーンの極狭小幅でキャビテーションを起こしながら微細気泡となり容易に気液混合溶解させることを特徴とする。
【0009】
本発明に適用できる様々な環境の液相としては、限定的でなく、例えば水、アルコール類、海水、湖沼など挙げることができる。また、気相としては、適用される液相に対して可能性のものであれば良く、例えば、酸素、オゾン、炭酸ガス、水素ガス、空気などから適宜選択することができる。
【0010】
極狭小幅を有するスクリーンとしては、その材質に特に制限されないが、金属としては、各種の金属又は合金を使用することができ、より具体的には鉄、ステンレス鋼、その他などを挙げることができる。プラスチックとしては、例えばABS樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、その他などを挙げることができる。本発明では、特に耐食性、強度などの点からステンレス鋼が好ましい。
【0011】
これらの成型品としては、極狭小幅を有するスクリーンに気相及び液相を通過させることができる限り何れの形態であっても良い。例えば、平板状、円筒状などその他などの形態が挙げられる。特に、気相及び液相を通過しやすいという点では円筒状であることが好ましい。
【0012】
ここで、気液混合溶解手段のスクリーンの極狭小幅は、0.001mmから4mm程度から選定することが可能であるが、気相と液相の環境次第により極狭小幅を選定することができる。
【0013】
なお、気相を供給する手段としては公知のボンベや、コンプレッサーなどを採用することができる。
【0014】
本発明の気液混合溶解装置としては、液相に気相を溶解させるための装置であって、(1)液相を供給する液相供給手段、(2)気相を供給する気相供給手段、(3)前記気相供給手段及び液相供給手段から供給された気相及び液相を通過させるための極狭小幅を有するスクリーンが設けられた成型品を備えている気液混合溶解手段を含むことを特徴とする。
【0015】
また、気液混合溶解手段は、1段階だけでなく、2段階以上の多段式とすることもできる。例えば、第1の気液混合溶解手段を経て得られた気液混合溶解液を第2の気液混合溶解手段を通過させることにより、前記液相中の気相の溶存濃度をより高めることが可能となる。
【0016】
さらに、液送ポンプのインペラの外周面に気液混合溶解手段を配置して、ポンプに吸い込まれた液相及び気相をインペラの遠心力により極狭小幅を有するスクリーンを通過させることにより気泡径を小さくして、次の気液混合溶解手段に導入することにより前記液相中の気相の溶存濃度をさらに高めることが可能となる。
【0017】
なお、本発明装置では、気相及び液相あるいはこれら混合物を極狭小幅を有するスクリーンに圧入するための加圧装置を備えていることが望ましい。圧力は、用いるスクリーンの材質(物性)などに応じて0.01乃至2MPaの範囲内で適宜設定することができる。また、ポンプの吸込み圧力を利用する場合は、大気圧乃至0.02MPaなど程度の範囲内で適宜設定することができる。加圧装置としては、例えばポンプ、ボンベ、コンプレッサーなどを採用することができる。
【0018】
ここで本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0019】
図1(a)は、一段式インペラに本発明に係るスクリーンを備えた気液混合溶解装置の断面図、図1(b)は、送液ポンプンのインペラ外周面に本発明に係る極狭小幅のスクリーンを備えた正面図、図1(c)は、送液ポンプのインペラ外周面に本発明に係る極狭小幅のスクリーンを備えた側面図、図2は、6段式インペラで2段目、4段目、6段目に本発明に係るスクリーンを備えた気液混合溶解装置の断面図、図3は、液中投込み型のインペラ式液送ポンプに本発明に係るスクリーンを備えた気液混合溶解装置の断面図である。
【実施例1】
【0020】
図1(a)に示すように本発明装置では、送液ポンプに吸い込まれる液相2と同時に供給される気相3は、送液用インペラ室5のインペラaの外周面に備えた本発明に係る極狭小幅を有するスクリーンにより、インペラの遠心力により液相中気相が微細に分散されて微細気泡となり高濃度の気液混合溶解液4を容易に生成することができる。
【実施例2】
【0021】
図2に示すように、本発明装置では、送液ポンプのインペラを多段的に有しており、送液ポンプに吸い込まれる液相2と同時に供給される気相3は、送液用インペラ室6のインペラbの外周面、インペラdの外周面、インペラfの外周面に備えた本発明に係る極狭小幅を有するスクリーンにより、インペラの遠心力により液相中気相が段階的に繰り返し微細気泡とすることでより高濃度の気液混合溶解液4を容易に生成することができる。
【実施例3】
【0022】
図3に示すように、本発明装置では、液中投込み型の送液ポンプ1の1段または多段的に有しているインペラbの外周面に備えた本発明に係る極狭小幅を有するスクリーンにより、吸引された液相2と同時に供給される気相3が、インペラbの遠心力により液相中気相が微細気泡として液相中に分散され、容易に気液混合溶解液4を生成することができる。
【実施例4】
【0023】
図4に示すように、液中投込み型の送液ポンプに本発明の気液混合溶解手段を備え、気液混合溶解液の吐出部に減圧状態にして気相を引き込む吸引式のエジェクターを設けることで、前記エジェクターで生成される粗大気泡による上昇水流9aが発生し、液相全体が対流することにより、特別にほかのエネルギーを設けることなく高濃度気液混合溶解液を液相中全体に効率よく拡散させることができる。
【0024】
[実験例1]
図2に示す本発明装置に関し、6段式液送ポンプ内部の2段目インペラb部分に極狭小幅0.2mmのステンレス製ウェッジワイヤースクリーン、4段目インペラd部分に極狭小幅0.075mmのステンレス製ウェッジワイヤースクリーン、6段目インペラf部分に極狭小幅0.075mmのステンレス製ウェッジワイヤースクリーンの気液混合溶解手段を備えた多段式気液混合溶解装置により、海水170リットル中にオゾンガスを気相として溶解した気液混合溶解オゾンガス濃度測定結果を表1に示す。このときのオゾン発生装置に供給される酸素流量は4.7リットル/分、気液混合溶解水生成量は66リットル/分で、図4に示すような構成で海水を循環しながらオゾン濃度を高めていった。
【0025】
【表1】

【0026】
[実験例2]
図4に示すようにうなぎの養殖場において、4段式液送ポンプ1内部のインペラ室6の2段目インペラb及び4段目インペラdの外周面に極狭小幅0.4mmのステンレス製ウェッジワイヤースクリーンを備えた本発明装置により、養殖槽7中の液相を循環させながら水中溶存酸素を高めた時のうなぎの収穫時期と、従来の攪拌によるばっ気方式のうなぎの収穫時期について比較した。ここでプラスチック質に切り込みを入れたスリット状の気液混合溶解手段を備えた装置ではプラスチック質スリットが1日乃至3日で目詰まりを起こしたり、亀裂など劣化が顕著に見られ耐久性に問題が発生したのに対し、本発明装置では、気液混合溶解手段の劣化については全く問題なく、従来のばっ気法による攪拌式気液混合溶解方式のうなぎの収穫時期より1ヶ月短縮されて収穫することができた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の気液混合溶解装置は、小型乃至大型の液送ポンプのそれぞれのインペラ寸法に合わせて設計することが可能で、水中溶存酸素を高めて(1)湖沼などの水質浄化、(2)魚介類の養殖など、また家庭向け小型浴用や大衆浴場の中型浴用など医学的にも効果が報告されている(3)高濃度炭酸浴、また水素ガスを溶解した(4)飲料用水素水、除菌殺菌を目的として液相中にオゾンガスを混合溶解させた(5)洗浄用オゾン水など液相中に機能性ガスを供給し溶解させる高濃度ガス溶解水の広範な分野に適用できる。
【0028】
高濃度炭酸ガスを溶解させる炭酸浴用気液混合溶解システムとして、家庭用お風呂から銭湯・温泉施設、宿泊・デイケア施設の大浴場など設置先は広範にある。
【0029】
また、食品・飲料業界においては高濃度酸素ガス・水素ガスを飲料用高濃度酸素水・水素水などとして市場化できる可能性が十分あり、食品産業においては、抗酸化法として液体物の酸化を防ぐ目的で、液体中の酸素濃度を減らすために窒素ガスを液相中に気液混合溶解させる技術に応用可能である。
【0030】
更に、食品産業・農業・漁業・医療業界など衛生面で除菌殺菌を行う場面で、水などの液相中にオゾンガスを気液混合溶解させて洗浄用オゾン水として利用できる可能性があり、いずれも液相中にガスを低エネルギーで効率よく溶解させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は本発明に係る気液混合溶解装置の一実施例を示す横断面図、(b)はスクリーンを外周面に設けたインペラ正面図、(c)はスクリーンを外周面に設けたインペラ側面図である。
【図2】本発明に係る気液混合溶解装置の一実施例を示す横断面図である。
【図3】本発明に係る気液混合溶解装置の一実施例を示す横断面図である。
【図4】本発明に係る気液混合溶解装置の一実施例を示す横断面図である。
【図5】本発明に係る気液混合溶解装置を模式的に示す構成図である
【符号の説明】
【0032】
1 気液混合溶解装置
2 液相供給
3 気相供給
3a エジェクター用気相供給
4 気液混合溶解液排出
5 1段式インペラ室
6 多段式インペラ室
a 1段目インペラ
b 2段目インペラ
c 3段目インペラ
d 4段目インペラ
e 5段目インペラ
f 6段目インペラ
7 液相室
7a 液相面
8 気相室
9 エジェクター
9a 上昇水流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属又は高硬度プラスチックで形成された極狭小幅を有するスクリーンに、気相及び液相を同時に通過させることにより、液相中に気相を溶解させることを特徴とする気液混合溶解方法。
【請求項2】
前記スクリーンの極狭小幅の隙間が0.001mm乃至4mmである、請求項1記載の気液混合溶解方法。
【請求項3】
前記スクリーンが段階的に設けられている、請求項1または請求項2記載の気液混合溶解方法。
【請求項4】
前記スクリーンが筒状に形成された筒状体であって、当該筒状体の内部から外部に向かって又は外部から内部に向かって極狭小幅を有するスクリーンに気相及び液相を通過させる、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気液混合溶解方法。
【請求項5】
液相に気相を溶解させるための装置であって、(1)液相を供給する液相供給手段、(2)気相を供給する気相供給手段、(3)前記気相供給手段及び液相供給手段から供給された気相及び液相を通過させる為の金属又は高硬度プラスチックで形成された極狭小幅を有するスクリーンを備えている気液混合溶解手段を含む気液混合溶解装置。
【請求項6】
液相に気相を溶解させるための装置であって、多孔質体により生成される微細な気泡を気相供給手段とする請求項5記載の気液混合溶解装置。
【請求項7】
液送のポンプを有し、かつ、前記ポンプの吸込側に気液混合溶解手段が配置され、その吸込圧により、供給された気相及び液相を前記極狭小幅を有するスクリーンに通過させることで液相中に気相を溶解させる請求項5乃至請求項6のいずれか記載の気液混合溶解装置。
【請求項8】
液送のポンプを有し、かつ、前記ポンプ内部の1段及び/又は多段的に設けられた送液用インペラの外周面に、1段及び/又は多段的に気液混合溶解手段が配置され、インペラの遠心力により、供給された気相及び液相を前記極狭小幅を有するスクリーンに通過させることで液相中に気相を溶解させる請求項5乃至請求項7のいずれか記載の気液混合溶解装置。
【請求項9】
粗大気泡による液相対流効果で液相を攪拌させるために、気液混合溶解手段の出口に減圧状態にして気相を引き込むエジェクターを設けた請求項5乃至請求項8のいずれか記載の気液混合溶解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−220081(P2009−220081A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70552(P2008−70552)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(597011566)エス・ピー・ジーテクノ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】