説明

気管切開チューブの連結構造

【課題】窓穴有りの気管切開チューブにはスピーチバルブが連結でき、窓穴なしの気管切開チューブには連結不可能な安全な気管切開チューブの提供。
【解決手段】湾曲管21Aに通気用の窓穴を有するカニューレ23Aを含む気管切開チューブ29Aと、該窓穴を有さないカニューレ23Bを含む気管切開チューブ20Bのうち、前記気管切開チューブ29Aの連結壁部30Aのみにスピーチバルブ40の連結端部41を取り付ける気管切開チューブの連結構造であって、前記気管切開チューブ29Aの連結壁部30Aには係合部31が設けられ、前記スピーチバルブ40の連結端部41には気管切開チューブ29Aの連結壁部30Aが挿入可能とされ、前記気管切開チューブ20Bの連結壁部22Bは挿入不可能とされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気管切開術を施した際に使用する気管切開チューブに関し、気管切開チューブの連結壁部に逆止弁を有するスピーチバルブを連結する際に、窓穴を有するものは連結可能とし、窓穴を有さないものは連結不可能とする気管切開チューブの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
気管切開チューブ(「カニューレ」とも呼ばれる)は、呼吸機能の不十分な患者などに用いられ、その取付は、患者に気管切開術を施し、その切開部へ気管切開チューブの先端を挿入することにより行われる。
患者の症状が重い場合などには、この気管切開チューブに人工呼吸器をつなぐことによって、空気が外部から気管を通じて肺に送り込まれるので、患者は喉や鼻から空気を取り込むことなく、呼吸することができるようになる。
また、患者の症状がある程度回復し自発呼吸ができる場合などには、この気管切開チューブから人工呼吸器をはずし、その部分に逆止弁の役割を果たすスピーチバルブを取り付ける。これにより、吸気の場合にはスピーチバルブを通して肺に空気が取り入れられ、呼気の場合にはスピーチバルブを通さず気管の声帯側を通して口または鼻から呼気を吐き出すようにすることにより、患者が発生できるようにしている。
【0003】
図8は、従来の気管切開チューブの一例を示し、図8(a)は正面図、(b)は側面図である。この気管切開チューブ1は、気管に挿入される湾曲管2の一端外周部に連結壁部3が設けられたカニューレ4と、該カニューレ4に揺動可能に支持された左右が折り畳み可能な固定板5と、湾曲管2の気管挿入側端部に設けられたバルーン状のカフ6と、該カフ6内に空気等のガスを送りまたは排出してカフ6を膨張または収縮させるカフ6操作用チューブおよび気管内に溜まった分泌液等を外部に排出する排出用チューブなどのチューブ7とを主な構成要素として備えている。
この気管切開チューブ1の連結壁部3には、図8(b)に示すようにスピーチバルブ10が着脱可能に連結される。このスピーチバルブ10は、連結壁部3に嵌合される筒状体からなる本体に図示しない逆止弁を設けたものである。この逆止弁は、吸気の場合空気の通過を許容し、呼気の場合空気の通過を遮断する。
【0004】
なお、気管切開チューブとしては、図8に示す単管式の気管切開チューブ1の他に、この気管切開チューブ1の湾曲管をアウターカニューレとし、該アウターカニューレ内にやや細い湾曲管からなるインナーカニューレを挿通、連結した二重管方式のものも提供されている。
また単管式の気管切開チューブについても、図8(b)に示すように湾曲管2に通気用の窓穴8を有するもの、窓穴無しのもの、カフ6が設けられているもの、カフ無しのものなど各種のタイプがある。これらは患者の容体に応じて適宜適切なものが使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した通り、図8に示す単管式の気管切開チューブ1においては、湾曲管2に窓穴8を有するタイプ(図8(b)参照)と、窓穴のないタイプとが提供されており、患者の容態に応じて、それぞれの連結壁部3にスピーチバルブ10を連結したり、あるいは人工呼吸器に接続する連結チューブを接続する場合に対応可能となっている。
スピーチバルブ10は逆止弁を有していることから、前記窓穴8を有する気管切開チューブにのみ使用することができ、窓穴8のない気管切開チューブには使用できない。窓穴8のない気管切開チューブにスピーチバルブ10を誤連結するのを防止するために、各気管切開チューブの使用説明書等には、該チューブの使用方法とともに、窓穴のない気管切開チューブにスピーチバルブ10を連結しないように注意書きがなされている。しかしながら、従来の気管切開チューブ1は、窓穴8を有するものと、窓穴のないものとが同等の連結壁部3を用いて作製されていたため、窓穴のない気管切開チューブにスピーチバルブ10を連結するミスを物理的手段によって防止することはできなかった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、窓穴を有する気管切開チューブにはスピーチバルブが連結でき、窓穴のない気管切開チューブには連結できない物理的な誤連結防止手段を有し、安全性を高めた気管切開チューブの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、湾曲管の一端外周部に連結壁部が設けられ、該湾曲管に通気用の窓穴を有するカニューレを含む気管切開チューブ(A)と、該窓穴を有さないカニューレを含む気管切開チューブ(B)のうち、前記気管切開チューブ(A)の連結壁部のみに、逆止弁を有するスピーチバルブの連結端部を取り付ける気管切開チューブの連結構造であって、前記スピーチバルブの連結端部には係止部が設けられるとともに、該係止部と前記気管切開チューブ(A)の連結壁部に設けられた係合部とが係合することにより前記連結端部には気管切開チューブ(A)の連結壁部が挿入可能とされ、前記気管切開チューブ(B)の連結壁部は挿入不可能とされていることを特徴とする気管切開チューブの連結構造を提供する。
また、前記係合部は、前記気管切開チューブ(A)の連結壁部の先端部を前記気管切開チューブ(B)の連結壁部の先端部より小径に構成され、前記係止部は、前記係合部が嵌合可能されるとともに前記気管切開チューブ(B)の連結壁部の先端部が嵌合不能な内径に構成されていてもよい。
さらに、前記スピーチバルブの係止部として連結端部が内管と外管からなる二重管構造とされ、気管切開チューブ(A)の係合部として連結壁部が前記連結端部の二重管の間に嵌合する管径または管肉厚を有し、前記気管切開チューブ(B)の連結壁部はこの連結端部の二重管の隙間に嵌合されない管径または管肉厚とした構成としてよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の気管切開チューブの連結構造によれば、窓穴を有する気管切開チューブにはスピーチバルブが連結でき、窓穴のない気管切開チューブには連結できない誤連結防止手段を有し、安全性を高めた気管切開チューブを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る気管切開チューブの連結構造の第1実施形態を示す図である。この気管切開チューブ20Aは、通気用の窓穴(図示略)を有する湾曲管21の一端外周部に連結壁部22Aを有するカニューレ23Aを備えている。なお、該気管切開チューブ20Aには、図示は略しているが、図7に示すようなカニューレ23に揺動可能に支持された左右が折り畳み可能な固定板と、湾曲管2の気管挿入側端部に設けられたバルーン状のカフ6と、該カフ6内に空気等のガスを送りまたは排出してカフ6を膨張または収縮させるカフ6操作用および気管内に溜まった分泌液等を外部に排出する排出用のチューブ7とが設けられている。
また、気管切開チューブ20Aの隣に図示した気管切開チューブ20Bは、窓穴のない湾曲管21Bを有するカニューレ23Bを備え、また連結壁部22Aに後述する係合部を有さない連結壁部22Bを有していること以外は上記気管切開チューブ20Aと同じ構成とし得る気管切開チューブ20Bを示している。
以下、窓穴を有するカニューレ23Aを備えた気管切開チューブ20Aは「気管切開チューブ20A(窓穴有り)」と記し、窓穴のないカニューレ23Bを備えた気管切開チューブ20Bは「気管切開チューブ20B(窓穴なし)」と記載する。
【0010】
この気管切開チューブ20A(窓穴有り)の連結壁部22Aにはスピーチバルブ40の連結端部41が着脱可能に連結される。このスピーチバルブ40は、連結壁部22に嵌合される筒状体からなる本体に図示しない逆止弁を設けたものである。この逆止弁は、吸気の場合空気の通過を許容し、呼気の場合空気の通過を遮断する。このスピーチバルブ40の連結端部41は、気管切開チューブ20A(窓穴有り)の連結壁部22Aに十分な気密性(シール性)をもって連結される一方、気管切開チューブ20B(窓穴なし)の連結壁部22Bには十分な気密性をもった連結が不可能な構造になっている。この選択的な連結を可能とするために、スピーチバルブ40の連結端部41に係止部を設けるとともに、気管切開チューブ20A(窓穴有り)の連結壁部22Aのみに該係止部に係合する係合部を設けている。
【0011】
上記気管切開チューブ20A(窓穴有り)側の係合部とスピーチバルブ40側の係止部の具体例として、本実施形態にあっては、スピーチバルブ40の連結端部41に、長さ方向に向けて突出する2枚の係止片42(係止部)を対向配置し、これらの係止片42の連結壁部22Aと接する面側から突出する係止突起43を設けるとともに、気管切開チューブ20A(窓穴有り)の連結壁部22Aに、スピーチバルブ40の連結時に各係止片42が収容される2つの係合凹部24(係合部)と、これらの係合凹部24内に、前記係止突起43が嵌入される溝25を設けた構成になっている。一方、気管切開チューブ20B(窓穴なし)の連結壁部22Bには、係合凹部24や溝25は設けられていない。連結壁部22Aは先窄まりのテーパになっており、またスピーチバルブ40の連結端部41の内壁にはそれに対応するテーパ部が形成されており、連結壁部22Aに連結端部41が十分な連結深さで連結される時、両者は十分な気密性(シール性)をもって連結されるようになっている。
【0012】
この気管切開チューブ20A(窓穴有り)は、患者の気管に達する切開部分からカニューレ23Aの湾曲管21Aを気管内に挿入し、固定板5(図7参照)を広げて患者に密着させ、該固定板5を紐や粘着テープ等で患者に固定するとともに、カフ6に接続されたチューブ7からカフ6内に空気を送って膨らませ、カフ6を患者の気管内壁に密着させることによって患者に固定される。
人工呼吸器使用時には、連結壁部22Aに図示しない人工呼吸器に接続されたチューブを取り付け、カニューレ23Aを通して人工呼吸を行うことができる。
患者の容態に応じて、人工呼吸器を外し、連結壁部22Aにスピーチバルブ40を連結する場合、スピーチバルブ40の連結端部41を気管切開チューブ20A(窓穴有り)の連結壁部22に嵌入し、2つの係止片42をそれぞれ係合凹部24に向けて押し込む。それぞれの係止片42の係止突起43は、係合凹部24の溝25に嵌合し、それによって気管切開チューブ20A(窓穴有り)の連結壁部22Aにスピーチバルブ40が十分な気密性をもって連結される。この状態で使用すれば、吸気はスピーチバルブ40を通して行われ、呼気は患者の声帯、鼻、口を通して行われるので、患者自身の発声が可能となる。
【0013】
図2は、気管切開チューブ20A(窓穴有り)にスピーチバルブ40を連結した状態(a)と、気管切開チューブ20B(窓穴なし)にスピーチバルブ40が連結不可能な状態(b)を示す概略図である。気管切開チューブ20A(窓穴有り)にスピーチバルブ40を連結した状態(a)では、スピーチバルブ40の係止片42先端部が連結壁部22Aの係合凹部24に収容されることから、連結壁部22に対して連結端部41が十分に深く嵌合される。このように連結深さが十分に得られる場合(a)には、係止突起43が溝25に嵌合してスピーチバルブ40が気管切開チューブ20A(窓穴有り)に固定されるとともに、連結壁部22A外壁面と連結端部41の内壁面との少なくとも一部(図2(a)中のシール部S)が密接し、両者の隙間から空気が漏れることなく、十分な気密性をもって連結される。
一方、スピーチバルブ40を連結できない気管切開チューブ20B(窓穴なし)は、図2(b)に示すように、連結壁部22Bに嵌合凹部24が設けられていないため、係止片42が連結壁部22Bの基部に当接し、十分な連結深さとならない。その結果、スピーチバルブ40は連結壁部22Bに連結されず、連結壁部22Bと連結端部41間には隙間があり、何ら抵抗無くスピーチバルブが抜け落ちる非連結状態となる。したがって気管切開チューブ20B(窓穴なし)にスピーチバルブ40を誤って連結しようとしても連結できず、また連結壁部22Bと連結端部41間に隙間が生じることから、万一誤連結が行われたとしても、誤連結が容易に判り、且つ該隙間を通って空気がカニューレ23Bから流出し、空気流出停止状態となることがない。
【0014】
本実施形態では、スピーチバルブ40の連結端部41に、長さ方向に向けて突出する2枚の係止片42を対向配置し、これらの係止片42の連結壁部22と接する面側から突出する係止突起43を設けるとともに、気管切開チューブ20A(窓穴有り)の連結壁部22Aに、スピーチバルブ40の連結時に各係止片42が収容される2つの係合凹部24と、これらの係合凹部24内に、前記係止突起43が嵌入される溝25を設ける一方、気管切開チューブ20B(窓穴なし)には上記係合凹部24と溝25を設けない構成としたので、スピーチバルブ40が気管切開チューブ20A(窓穴有り)の連結壁部22Aのみに連結可能であり、気管切開チューブ20B(窓穴なし)には十分な気密性をもって連結されないので、スピーチバルブ40を気管切開チューブ20B(窓穴なし)に誤連結するミスを確実に防止できる。
【0015】
(第2実施形態)
図3は本発明に係る気管切開チューブの連結構造の第2実施形態を示す図である。本実施形態において、気管切開チューブ20A(窓穴有り)と気管切開チューブ20B(窓穴なし)は、上記第1実施例でのそれらと同じであり、またスピーチバルブ40もほぼ同様の構成要素を備えて構成され、同一構成要素には同一符号を付してある。
本実施形態では、スピーチバルブ40の連結端部41に、スピーチバルブ40を気管切開チューブ20A(窓穴有り)の連結壁部22Aに連結した時には該連結壁部22Aにより塞がれ、該スピーチバルブを前記気管切開チューブ20B(窓穴なし)の連結壁部22Bに誤連結した時には該連結壁部22Bに接しない通気口44を設けた構成になっている。
【0016】
図4は気管切開チューブ20A(窓穴有り)にスピーチバルブ40を連結した状態(a)と、気管切開チューブ20B(窓穴なし)にスピーチバルブ40が連結不可能な状態(b)を示す概略図である。気管切開チューブ20A(窓穴有り)にスピーチバルブ40を連結した状態(a)では、スピーチバルブ40の係止片42先端部が連結壁部22Aの係合凹部24に収容されることから、連結壁部22Aに対して連結端部41が十分に深く嵌合される。このように連結深さが十分に得られる場合(a)には、係止突起43が溝25に嵌合してスピーチバルブ40が気管切開チューブ20A(窓穴有り)に固定されるとともに、連結壁部22A外壁面と連結端部41の内壁面との少なくとも一部が密接し、両者の隙間から空気が漏れることなく、十分な気密性をもって連結される。さらに、スピーチバルブ40に設けた通気口44は連結壁部22Aにより塞がれて、通気口44から空気が入り込むことがない。
一方、スピーチバルブ40を連結できない気管切開チューブ20B(窓穴なし)は、図4(b)に示すように、連結壁部22Bに嵌合凹部24が設けられていないため、係止片42が連結壁部22Bの基部に当接し、十分な連結深さとならない。その結果、スピーチバルブ40の通気口44は連結壁部22Bに到達せず、開口状態となることから、空気がこの通気口44を通ってカニューレ23B内に流入し得る。したがって気管切開チューブ20B(窓穴なし)にスピーチバルブ40を誤って連結しようとしても、その誤連結が容易に判り、且つ通気口44を通して空気がカニューレ23Bから流出するので空気流出停止状態となることがない。
【0017】
本実施形態の気管切開チューブの連結構造によれば、上述した第1実施形態と同様の効果が得られ、さらにスピーチバルブ40に気管切開チューブ20A(窓穴有り)の連結壁部22Aに連結した時には該連結壁部22Aにより塞がれ、該スピーチバルブ40を気管切開チューブ20B(窓穴なし)の連結壁部22Bに連結した時には該連結壁部22Bに接しない通気口44を設けた構成としたので、万一誤連結が行われたとしても誤連結が容易に判り、且つ通気口44を通して空気がカニューレ23Bから流出するので空気流出停止状態となるのを防止でき、より安全性を高めることができる。
【0018】
(第3実施形態)
図5は本発明に係る気管切開チューブの連結構造の第3実施形態を示す図である。本実施形態において、気管切開チューブ26A(窓穴有り)は、連結壁部27Aの係合部構造の相異を除いて、上記第1実施形態における気管切開チューブ20A(窓穴有り)と同様の構成要素を備えて構成されている。
本実施形態による気管切開チューブ26A(窓穴有り)の係合部構造は、先窄まりのテーパ状に形成された連結壁部27Aの基部に、周方向外方側に向けて突出する係合突起28を設けた構成になっている。なお、図5に示した例示において、該係合突起28は、連結壁部27Aの基部を階段状に太径化した台座状部分に突出形成している。この係合突起28は、連結壁部27Aにスピーチバルブ40以外の連結部材、例えば人工呼吸器のチューブ連結部を取り付ける場合に連結に影響を与えない位置に形成されている。
一方、気管切開チューブ20B(窓穴なし)には、該係合突起28は設けていない。
【0019】
本実施形態において用いるスピーチバルブ40は、連結端部41の連結側先端部に、上記連結壁部27Aの係合突起28が挿入される拡径部46を設け、且つ該拡径部46の内壁面に、上記係合突起28が螺着嵌合されるネジ部45を設けた構成になっている。
【0020】
このスピーチバルブ40を気管切開チューブ26A(窓穴有り)の連結壁部27Aに連結する場合、スピーチバルブ40の拡径部46が連結壁部27Aの基部に達し、それからスピーチバルブ40を時計方向(ネジ部45が逆ネジの場合は反時計方向)に回し、係合突起28をネジ部45に対して螺着嵌合させる。この螺着嵌合が終了した時点で、スピーチバルブ40の連結端部41内壁面と気管切開チューブ26A(窓穴有り)の連結壁部27A外壁面とが密接状態で連結される。一方、連結壁部22Bに係合突起28を設けていない気管切開チューブ20B(窓穴なし)にスピーチバルブ40を誤って連結しようとしても、螺着嵌合されないためにスピーチバルブ40は連結されない。
【0021】
本実施形態の気管切開チューブの連結構造によれば、上述した第1実施形態と同様に、スピーチバルブ40を気管切開チューブ20B(窓穴なし)に誤連結するミスを確実に防止できる効果が得られ、さらにスピーチバルブ40の連結端部41を気管切開チューブ26A(窓穴有り)の連結壁部27Aに螺着嵌合する構成としたので、十分な連結強度が得られ、したがって連結壁部27Aにスピーチバルブ40を連結した状態でスピーチバルブ40が外れ難くなる。
【0022】
(第4実施形態)
図6は本発明に係る気管切開チューブの連結構造の第4実施形態を示す図である。本実施形態において、気管切開チューブ29A(窓穴有り)は、連結壁部30Aの係合部構造の相異を除いて、上記第1実施形態における気管切開チューブ20A(窓穴有り)と同様の構成要素を備えて構成されている。
本実施形態による気管切開チューブ29A(窓穴有り)の係合部構造は、先窄まりのテーパ状の連結壁部30Aの先端部に、所定長さの係合縮径部31を設けたことを特徴としている。一方、気管切開チューブ20B(窓穴なし)の連結壁部22Bには、この係合縮径部31を設けていない。なお、この係合縮径部31は、この連結壁部30Aにスピーチバルブ40以外の連結部材、例えば人工呼吸器のチューブ連結部を取り付ける場合に連結に影響を与えないように形成されている。
【0023】
スピーチバルブ40の連結端部41の内壁には、図示されないが上記係合縮径部31が嵌合する径方向内側に向けて突出する係止突部が設けられている。この係止突部は、連結端部41の内壁全周にわたる突状であってもよいし、島状あるいはドット状の断続的な突起であってもよい。
【0024】
このスピーチバルブ40を気管切開チューブ29A(窓穴有り)の連結壁部30Aに連結する場合、連結壁部30Aの先端には、スピーチバルブ40の連結端部41内壁に設けられた図示しない係止突部に嵌合する係合縮径部31を設けたことにより、この係合縮径部31に係合突部が嵌合してスピーチバルブ40が連結壁部30Aに深く押し込まれ、テーパ面同士が接して連結される。
一方、スピーチバルブ40を気管切開チューブ20B(窓穴なし)の連結壁部22Bに誤って連結しようとしても、連結壁部22B先端部がスピーチバルブ40の連結端部41内壁に設けられた図示しない係止突部に引っ掛かって、それ以上の進行が阻止されるので、スピーチバルブ40は連結壁部22Bに連結できない。
【0025】
本実施形態の気管切開チューブの連結構造によれば、上述した第1実施形態と同様に、スピーチバルブ40を気管切開チューブ20B(窓穴なし)に誤連結するミスを確実に防止できる効果が得られ、さらに係合縮径部31と係止突起を設ける簡単な構造で選択的な連結(窓穴有りには連結でき、窓穴なしには連結不可能)が可能であり、製造コストを増加させずに上記選択的な連結が可能な構造を提供できる。
【0026】
(第5実施形態)
図7は本発明に係る気管切開チューブの連結構造の第5実施形態を示す図である。本実施形態では、スピーチバルブ40の係止部として連結端部49が内管47と外管48からなる二重管構造とされ、気管切開チューブ32A(窓穴有り)の係合部として、連結壁部33Aが連結端部49の二重管の間に嵌合する管径または管肉厚を有している(図7(a))。一方、気管切開チューブ20B(窓穴なし)の連結壁部22Bは、この連結端部29の二重管の隙間に嵌合されない管径または管肉厚とされている(図7(b))。図7(a)の例示では、気管切開チューブ32A(窓穴有り)の連結壁部33Aの先端部34(係合部)を薄肉化して連結端部29の二重管の隙間に嵌合できるようにし、一方、気管切開チューブ20B(窓穴なし)の連結壁部22Bの先端部には薄肉部を形成せず、スピーチバルブ40の内管47が挿入できないために、この連結端部29の二重管の隙間に嵌合されないようになっている。
【0027】
本実施形態の気管切開チューブの連結構造によれば、上述した第1実施形態と同様に、スピーチバルブ40を気管切開チューブ20B(窓穴なし)に誤連結するミスを確実に防止できる効果が得られ、さらに、スピーチバルブ40の連結端部49を内管47と外管48とからなる二重管構造とし、気管切開チューブ32A(窓穴有り)の連結壁部33Aがこの二重管の間に嵌合するように構成したので、係合壁部33aと連結端部49とを連結した際に、係合壁部33aの先端部の内外面が二重管と接触して接触面積を大きくできるので、双方の連結長さが比較的短くても大きな接触面積をもって連結でき、気管切開チューブ32A(窓穴有り)の連結壁部33Aにスピーチバルブ40を強固に連結できる。
【0028】
なお、スピーチバルブ40は、フィルム上の弁50が外れないように内部空間のいずれかに弁の吸い込み防止用の弁保持部を設けることができる。この弁保持部は、例えば連結端部49とスピーチバルブ本体との境界部分に放射状、柵状、格子状として設けることができる。
また、このような弁保持部を形成した際、この弁保持部により通気面積が減少するのを補償するために、内管47の周方向に沿って複数の垂直な切れ込みを設け、この切れ込みによって通気面積を増加することで、上記弁保持部による通気面積の減少分を補償することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る気管切開チューブの連結構造の第1実施形態を示す要部斜視図である。
【図2】図1の連結構造の要部概略断面図である。
【図3】本発明に係る気管切開チューブの連結構造の第2実施形態を示す要部斜視図である。
【図4】図3の連結構造の要部概略断面図である。
【図5】本発明に係る気管切開チューブの連結構造の第3実施形態を示す要部斜視図である。
【図6】本発明に係る気管切開チューブの連結構造の第4実施形態を示す要部斜視図である。
【図7】本発明に係る気管切開チューブの連結構造の第5実施形態を示す要部斜視図である。
【図8】従来の気管切開チューブを例示する図である。
【符号の説明】
【0030】
20A,20B,26A,29A,32A 気管切開チューブ
21A,21B 湾曲外管
22A,22B,27A,30A,33A 連結壁部
23A,23B カニューレ
24 嵌合凹部(係合部)
25 溝(係合部)
28 係合突起(係合部)
31 係合縮径部(係合部)
34 先端部(係合部)
40 スピーチバルブ
41 連結端部
42 係止片(係止部)
43 係止突起(係止部)
44 通気口
45 ネジ部(係止部)
47 内管
48 外管
49 連結端部(係止部)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲管の一端外周部に連結壁部が設けられ、該湾曲管に通気用の窓穴を有するカニューレを含む気管切開チューブ(A)と、該窓穴を有さないカニューレを含む気管切開チューブ(B)のうち、前記気管切開チューブ(A)の連結壁部のみに、逆止弁を有するスピーチバルブの連結端部を取り付ける気管切開チューブの連結構造であって、
前記気管切開チューブ(A)の連結壁部には係合部が設けられ、
前記スピーチバルブの連結端部には係止部が設けられるとともに、該係止部と前記気管切開チューブ(A)の連結壁部に設けられた係合部とが係合することにより前記連結端部には気管切開チューブ(A)の連結壁部が挿入可能とされ、前記気管切開チューブ(B)の連結壁部は挿入不可能とされていることを特徴とする気管切開チューブの連結構造。
【請求項2】
前記係合部は、
前記気管切開チューブ(A)の連結壁部の先端部を前記気管切開チューブ(B)の連結壁部の先端部より小径に構成され、
前記係止部は、
前記係合部が嵌合可能されるとともに前記気管切開チューブ(B)の連結壁部の先端部が嵌合不能な内径に構成されていることを特徴とする請求項1記載の気管切開チューブの連結構造。
【請求項3】
前記スピーチバルブの係止部として連結端部が内管と外管からなる二重管構造とされ、気管切開チューブ(A)の係合部として連結壁部が前記連結端部の二重管の間に嵌合する管径または管肉厚を有し、前記気管切開チューブ(B)の連結壁部はこの連結端部の二重管の隙間に嵌合されない管径または管肉厚としたことを特徴とする請求項1記載の気管切開チューブの連結構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−132370(P2008−132370A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52498(P2008−52498)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【分割の表示】特願2002−195831(P2002−195831)の分割
【原出願日】平成14年7月4日(2002.7.4)
【出願人】(000200677)泉工医科工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】