説明

気管支喘息治療剤

【課題】抗炎症性ステロイドを患部に効率的にターゲッティングし、薬物徐放性に優れ、かつ気管支肺胞浸潤抑制効果及び気道過敏性抑制効果に優れた気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤を提供すること。
【解決手段】抗炎症性ステロイド又はその誘導体を金属イオンにより疎水化し、これをポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体、更にはこれとポリ乳酸又はポリ(乳酸/グリコール酸)共重合体と作用させることにより得られる抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤に関し、さらに詳しくは抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を含有する気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
気管支喘息は慢性気道炎症、気道反応性の亢進、可逆性の気道狭窄の3つを特徴とする疾患である。慢性気道炎症は好酸球浸潤を中心としており、この炎症惹起にはTh2サイトカインが重要な働きをしていることが動物モデル及びヒトにおいて示されてきた(非特許文献1及び2)。また、花粉症やハウスダスト(ダニ)によるアレルギー性鼻炎も同じI型アレルギーにより起こるもので、発症機序もほぼ同様である。
【0003】
一方では、one airway one diseaseという概念のもとに花粉、ハウスダスト(ダニ)などによる鼻アレルギーと喘息を同時に治療する必要性も議論されている。抗炎症性ステロイドは現在最も強力な抗炎症薬であり、吸入ステロイド薬の普及により喘息治療は一段と進歩を遂げた。しかし、既に気道のリモデリングを発症し、難治化した場合には現存のステロイド剤では効果が期待できないという問題点が存在する。
また、急性発作に抗炎症性ステロイドを使用する場合は、全身ステロイド薬の投与を余儀なくされるが、その場合には副作用が問題となり改良が必要である。
したがって、以上の点を改善する、抗炎症性ステロイド剤が望まれているのが現状である。
【0004】
従来から、乳酸・グリコール酸共重合体(以後、「PLGA」と記す場合もある)、又は乳酸重合体(以後、「PLA」と記す場合もある)のマイクロ粒子ないしナノ粒子に薬物を封入する研究が種々行われている。
【0005】
例えば、米国特許第4652441号公報(特許文献1)には、生物活性ポリペプチドを含有するPLGA等のマイクロカプセル及びその製法が開示されている。また、特表平10−511957号公報(特許文献2)には、種々の薬物を含有する血管内投与可能なPLGA等のナノ粒子が開示されている。さらに、特開平8−217691号公報(特許文献3)には、水溶性ペプチド性生理活性物質の水不溶性又は水難溶性多価金属塩を、PLGA等のマイクロカプセルに封入した徐放性製剤が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの先行特許においては、抗炎症性ステロイドを金属イオンにより疎水化したのち、PLA又はPLGAとポリエチレングリコール(以後、「PEG」と記す場合もある)とを結合したPLA−PEGブロック共重合体又はPLGA−PEGブロック共重合体に封入することについてはなんら言及されていない。
【0007】
本特許出願人による出願である国際公開WO2003/101493号公報(特許文献4)には、薬物をPLGA又はPLAの微粒子に封入し、当該微粒子の表面に界面活性剤を吸着させた製剤が記載されている。また、同じく本特許出願人による出願である国際公開WO2004/84871号公報(特許文献5)には、金属イオンにより疎水化した水溶性非ペプチド性低分子医薬品をPLGA又はPLAナノ粒子に封入し、当該ナノ粒子の表面に界面活性剤を吸着させた製剤が記載されている。
【0008】
しかしながら、特許文献4に開示されている微粒子は薬物の封入率が低く、初期バーストを生じるため徐放性が不充分であり、また、特許文献5に開示されているナノ粒子は封入率が向上され、初期バーストが改善されたものの、静脈投与において薬物が肝臓に滞留するという不都合が生じた。
【0009】
ポリ乳酸又はポリ(乳酸/グリコール酸)共重合体とポリエチレングリコールとからなるブロックコポリマーに関しては、特開昭58−191714号公報(特許文献6)に親水性ポリマーであるポリエチレングリコールと、疎水性ポリマーであるポリ乳酸とのブロックコポリマーについて記載されており、また特開平9−157368号公報(特許文献7)にポリ乳酸−ポリエチレングリコールーポリ乳酸からなる三元ブロック共重合体の精製方法が記載されている。
【0010】
ポリ乳酸又はポリ(乳酸/グリコール酸)共重合体とポリエチレングリコールとからなるブロックコポリマーを医薬組成物の素材として利用した例としては、特開平2−78629号公報(特許文献8)には、乳酸及び/又はグリコール酸の共重合体とポリエチレングリコールとの共重合体にポリペプタイドを含有された医薬組成物が記載されており、特開平9−151136号公報(特許文献9)には、ポリ乳酸−ポリエチレングリコール共重合体と蛋白質の含有溶液について記載されている。
【0011】
しかしながら、抗炎症性ステロイドを金属イオンにより疎水化し、これをポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体、又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体と作用させることにより得られる抗炎症性ステロイドを含有するナノ粒子及び当該ナノ粒子を有効成分とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤については知られていない。
【0012】
したがって、抗炎症性ステロイドを金属イオンにより疎水化し、これをポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体のナノ粒子に封入することにより、患部ターゲッティング及び徐放性に優れ、なおかつ気管支肺胞浸潤抑制効果及び気道過敏性抑制効果を有する気管支喘息治療剤については知られていない。また、花粉症やハウスダスト(ダニ)によるアレルギー性鼻炎も同じI型アレルギーにより起こるものであり、発症機序もほぼ同様であるので、気管支肺胞浸潤抑制効果及び気道過敏性抑制効果を有するものであればアレルギー性鼻炎治療剤として有用である。
【0013】
【特許文献1】米国特許第4652441号公報
【特許文献2】特表平10−511957号公報
【特許文献3】特開平8−217691号公報
【特許文献4】国際公開WO2003/101493号公報
【特許文献5】国際公開WO2004/84871号公報
【特許文献6】特開昭58−191714号公報
【特許文献7】特開平9−157368号公報
【特許文献8】特開平2−78629号公報
【特許文献9】特開平9−151136号公報
【非特許文献1】N. Engl. J. Med., 1992; 326(5): 298-304
【非特許文献2】Mol. Immunol., 2002; 38(12-13); 881-5
【非特許文献3】Cell Immunol., 2002 Oct; 219(2): 92-7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の現状に鑑み、抗炎症性ステロイドを患部に効率的にターゲッティングし、薬物徐放性に優れ、かつ気管支肺胞浸潤抑制効果及び気道過敏性抑制効果に優れた気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤を提供することを課題とする。
【0015】
かかる課題を解決するべく、本発明者らは鋭意検討した結果、抗炎症性ステロイド又はその誘導体を金属イオンにより疎水化し、ポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体のナノ粒子に封入したナノ粒子が、抗炎症性ステロイドを患部に効率的にターゲッティングし、薬物徐放性に優れ、かつ気管支肺胞浸潤抑制効果及び気道過敏性抑制効果に優れていることから、気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤となり得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって本発明は、患部ターゲッティング及び徐放性に優れ、肝臓集積を低減することにより副作用を軽減し、さらに血中滞留性に優れ、かつ気管支肺胞浸潤抑制効果及び気道過敏性抑制効果に優れた抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤を提供する。
【0017】
より具体的には、本発明は以下の構成からなる。すなわち、
(1)抗炎症性ステロイド又はその誘導体を金属イオンにより疎水化し、これをポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体と作用させることにより得られる抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤;
(2)抗炎症性ステロイド又はその誘導体を金属イオンにより疎水化し、これをポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体、及びポリ乳酸又はポリ(乳酸/グリコール酸)共重合体と作用させることにより得られる抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤;
(3)さらに、塩基性低分子化合物を混合することを特徴とする上記1又は2に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤;
(4)さらに界面活性剤を配合することからなる上記1、2又は3に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤;
(5)粒子の直径が20〜300nm、好ましくは50〜200nmである上記1〜4のいずれかに記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤;
(6)金属イオンが、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、ベリリウムイオン、マンガンイオン又はコバルトイオンの1種又は2種以上である上記1、2又は3に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤;
(7)抗炎症性ステロイド又はその誘導体が、前記金属イオンにより疎水化されるためリン酸基、硫酸基又はカルボキシル基を有していることを特徴とする上記1、2又は3に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤;
(8)抗炎症性ステロイド又はその誘導体が、リン酸ベタメタゾン、リン酸デキサメタゾン、リン酸プレドニゾロン、リン酸ヒドロコルチゾン、コハク酸プレドニゾロン又はコハク酸ヒドロコルチゾンである上記1、2、3又は7に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤;
(9)ポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体の重量平均分子量が3,000〜20,000である上記1、2又は3に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤;
(10)塩基性低分子化合物が、(ジメチルアミノ)ピリジン、ピリジン、ピペリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キヌクリジン、イソキノリン、ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ナフチルアミン、モルホリン、アマンタジン、アニリン、スペルミン、スペルミジン、ヘキサメチレンジアミン、プトレシン、カダベリン、フェネチルアミン、ヒスタミン、ジアザビシクロオクタン、ジイソプロピルエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミンから選択される1種又は2種以上のものである上記3に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤;
(11)界面活性剤が、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(80)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)コレステロールエステル、脂質−ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び脂肪酸−ポリエチレングリコール共重合体から選択される1種又は2種以上のものである上記4に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤;
【0018】
すなわち本発明は、抗炎症性ステロイド又はその誘導体を金属イオンにより疎水化し、この疎水化された薬物を、ポリ乳酸−ポリエチレングリコール共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコール共重合体と作用させることによりナノ粒子に封入した抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤を提供することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明が提供する気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤は、抗炎症性ステロイドを患部ターゲッティングし、薬物の徐放性に優れ、かつ気管支肺胞浸潤抑制効果及び気道過敏性抑制効果に優れている。したがって、これまで十分に達成されていなかった抗炎症性ステロイドのターゲッティング及び徐放性を向上させるので、気管支喘息治療効果及び花粉症、ハウスダスト(ダニ)などのアレルギー性鼻炎治療効果に優れた薬剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一つの態様である気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤は、抗炎症性ステロイド又はその誘導体を金属イオンにより疎水化し、この疎水化した薬物をポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体と作用させることにより得られる。
また、界面活性剤を配合してもよく、界面活性剤を配合することにより、生成したナノ粒子を安定化することにより作製された抗炎症性ステロイドを含有するナノ粒子を有効成分とする。
【0021】
また、本発明の別の態様である気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤は、抗炎症性ステロイド又はその誘導体を金属イオンにより疎水化し、この疎水化した薬物をポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体、及びポリ乳酸又はポリ(乳酸/グリコール酸)共重合体と作用させることにより得られる抗炎症性ステロイドを含有するナノ粒子を有効成分とする。
【0022】
上記の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子にあっても、界面活性剤を配合してもよく、界面活性剤を配合することにより、生成したナノ粒子を安定化し、粒子間の凝集を抑止することができる。
【0023】
上記により提供される本発明の気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤は、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などの経口投与製剤とするか、または静脈注射用製剤、局所注射用製剤、点鼻剤、点眼剤、吸入剤、噴霧剤などの非経口投与用製剤とすることにより、投与することができる。
【0024】
本発明が提供する気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤の有効成分である抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子は、以下のとおり作製することができる。
すなわち、抗炎症性ステロイド又はその誘導体と金属イオンを、有機溶媒又は含水有機溶媒の溶媒中で混合して疎水性薬物とし、この混合液中にポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体を加えて攪拌し、この溶液を水中に添加、拡散することにより調製することができる。
【0025】
また、ポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体を溶媒に溶解した溶液と、抗炎症性ステロイドの水溶液、及び金属イオン水溶液を同時に加えて混合しても同様のナノ粒子を調製することができる。
【0026】
使用される金属イオンとしては、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、ベリリウムイオン、マンガンイオン、コバルトイオンのいずれかであり、それらの水溶性金属塩の1種又は2種以上が使用される。そのなかでも好ましくは亜鉛イオン、鉄イオンであり、塩化亜鉛、塩化鉄などが好ましく使用できる。
【0027】
上記の反応に使用される溶媒としては、アセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノール、プロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサンなどの有機溶媒、あるいはこれらの含水溶媒であり、アセトン、ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0028】
抗炎症性ステロイド又はその誘導体は、上記の金属イオンと結合して疎水化され易いように分子内にリン酸基、硫酸基又はカルボキシル基を有していることが好ましい。
【0029】
そのような抗炎症性ステロイド又はその誘導体としては、リン酸ベタメタゾン、リン酸デキサメタゾン、リン酸プレドニゾロン、リン酸ヒドロコルチゾン、コハク酸プレドニゾロン、コハク酸ヒドロコルチゾンなどであるがこれらに限定されるものではない。
【0030】
ポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体(PLA−PEG)、又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体(PLGA−PEG)は、PLA又はPLGA(ブロックAという)とPEG(ブロックBという)とを、エチレンジメチルアミノプロピルカルボジイミドなどの縮合剤のもとで反応させることにより、生成することができるが、市販されている同様のブロック共重合体を使用してもよい。
【0031】
ブロック共重合体の構成としてはA−Bタイプ、A−B−Aタイプ、B−A−Bタイプのいずれであっても本発明の目的を達成することができる。また、これらのブロック共重合体の重量平均分子量は3,000〜20,000であることが好ましい。
【0032】
また、本発明の気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤の有効成分である抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子は、ポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体と同時に、さらにポリ乳酸又はポリ(乳酸/グリコール酸)共重合体を配合してもよい。配合するポリ乳酸又はポリ(乳酸/グリコール酸)共重合体の混合比を高くすると、大きなナノ粒子が生成され、かつ薬物のナノ粒子への封入率が増加する傾向にある。
【0033】
この場合において、さらに塩基性低分子化合物を混合すると、薬物のナノ粒子への封入率が増加し、10%程度まで封入することができる。
このような塩基性低分子化合物としては(ジメチルアミノ)ピリジン、ピリジン、ピペリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キヌクリジン、イソキノリン、ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ナフチルアミン、モルホリン、アマンタジン、アニリン、スペルミン、スペルミジン、ヘキサメチレンジアミン、プトレシン、カダベリン、フェネチルアミン、ヒスタミン、ジアザビシクロオクタン、ジイソプロピルエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン等を挙げることができ、好ましくは、2級又は3級アミン類であり、ジエタノールアミンが特に好ましい。
【0034】
かくして調製された抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子に界面活性剤を配合してもよく、界面活性剤を配合することにより、生成したナノ粒子を安定化し、かつ粒子間の凝集を抑制することができる。したがって、ナノ粒子を含有する製剤の製剤化工程にとって好ましいものとなる。
【0035】
使用される界面活性剤としては、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(80)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)コレステロールエステル、脂質−ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び脂肪酸−ポリエチレングリコール共重合体等をあげることができ、これらの界面活性剤からから選択される1種又は2種以上を使用するのが好ましい。
【0036】
本発明が提供する抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子にあっては、その粒子の直径は20〜300nmの範囲内であり、好ましくは50〜200nmである。
【0037】
かくして調製した本発明の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子は、ナノ粒子の溶液又は懸濁液を、遠心分離、限外濾過、ゲル濾過、フィルター濾過、ファイバー透析などにより適宜精製した後、凍結乾燥して取得、保存される。
【0038】
その際、凍結乾燥した製剤を再懸濁して投与できるようにするため安定化剤及び/又は分散化剤を加えて凍結乾燥されることが好ましく、そのような安定化剤、分散化剤としてはショ糖、トレハロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが好ましく使用される。
【0039】
本発明が提供する抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤は、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などの経口投与製剤、または静脈注射用製剤、局所注射用製剤、点鼻剤、点眼剤、吸入剤、噴霧剤などの非経口投与用製剤の医薬品として使用され、なかでも静脈注射用製剤とすることで、当該ナノ粒子の特性、効果をより良く発揮することができる。
【0040】
これらの経口投与製剤及び非経口投与用製剤の調製に使用される基剤、その他の添加剤成分としては、製剤学的に許容され、使用されている各種基剤、成分を挙げることができる。具体的には、結晶性セルロース、単糖類、二糖類、糖アルコール類、多糖類などの糖類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースなどの高分子添加剤;イオン性又は非イオン性界面活性剤;などが剤型に応じて適宜選択され、使用することができる。
[製造例]
【0041】
以下に本発明の気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤の有効成分である抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子の製造例について説明するが、これらの製造例に限定されるものではない。
【0042】
製造例1:PLA/PLGA−PEGブロック共重合体の合成
PEG(日本油脂社製、末端がメトキシ基及びOH基、Mw5250)2g、DL−Lactide(東京化成社製、100g/Lの濃度で酢酸エチルに溶解し、−40℃で一晩再結晶させて得たもの)2〜6g、及びオクチル酸スズ(0.5%重量)を重合管に加え十分に混合し、油圧ポンプにて脱気を行った。その後、オイルバスにて125℃で加熱・溶解し、溶解後160℃に昇温させ、3〜5時間放置した。反応物を冷却後、20mLのジクロロメタンに溶解し、次いで氷冷した大量のイソプロパノールに徐々に添加することで再沈殿させた。沈殿物を水に懸濁し、凍結乾燥してPLA−PEGブロック共重合体を得た。
得られたPLA−PEGブロック共重合体は、GPC[ゲル濾過クロマトグラフィ、溶媒:ジメチルホルムアミド(10mM塩化リチウムを含む)]及びプロトンNMRにより解析した。
LactideとPEGとの仕込み重量比における生成したPLA−PEGブロック共重合体の各分子量、及びPLA/PEG重量比を表1に示した。
反応率は約60%程度であり、仕込み比に応じ反応物の分子量の増大がみられた。
【0043】
表1:重合反応によるPLA−PEGブロック共重合体の合成
【0044】
【表1】

Mn:数平均分子量、Mw:重量平均分子量
【0045】
また、Glycolide(Purac biochem社製)とラクチドの混合物を用い、同様に反応を行うことによりPLGA−PEGブロック共重合体を得た。
【0046】
製造例2:ステロイド封入PLA−PEGブロック共重合体ナノ粒子の製造法
製造例1で合成したPLA−PEGブロック共重合体、及びPLA(和光純薬工業社製)を総重量として50mg秤量し、アセトン1mLを加えて溶解した。この溶液に、ジエタノールアミン7.5mgをアセトン500μLに溶解した溶液を添加し、次いで1M塩化亜鉛水溶液68μLを加えて軽く混和した。直ちにリン酸ベタメタゾンNa水溶液28.6μL(350mg/mL)を加えてよく混和させ、室温にて30分間程度静置した。50mLのサンプル瓶に25mLの水を入れ2cmのスターラーバーで攪拌し、そこに、25G注射針をつけた3mLシリンジにて上記の反応溶液を徐々に滴下した(スターラー回転数:1000rpm、注射針:26G、シリンジ:ニプロ3mL、滴下速度:48mL/hr)。滴下終了1〜2分後に、0.5Mクエン酸ナトリウム水溶液(pH7)500μL及びTween80(200mg/mL)水溶液を125μL加えた。限外濾過(YM-50、アミコン社製)にて濃縮後、Tween80(1mg/mL)水溶液を20mL添加し、再び濃縮を行った(これを2回繰り返した)。次いで、遠心(1000rpm/5分)にて凝集塊を除去し、動的光散乱測定装置(DLS)で粒子径の測定を行い、ナノ粒子内のリン酸ベタメタゾン(BSP)の封入率をHPLCで定量した。
ジエタノールアミン量を変えて調製したナノ粒子におけるBSPの封入率を表2に示し、ブロック共重合体とPLAの混合比と、PLAの混合比を変えて調製したナノ粒子の粒径及びBSPの封入率を表3及び表4に示した。
【0047】
表2:ジエタノールアミン量を変えて調製したナノ粒子のBSP封入率
【0048】
【表2】

【0049】
表3:ブロック共重合体とPLAの混合比を変えて調製したナノ粒子の粒径及びBSP封入率(表1のブロック共重合体No.1を使用)
【0050】
【表3】

【0051】
表4:ブロック共重合体とPLAの混合比を変えて調製した粒子の粒径及びBSP封入率(表1のブロック共重合体No.2を使用)
【0052】
【表4】

【0053】
ジエタノールアミン量を変えて調製した粒子の粒径は100〜120nm程度であった。また、表2に示した結果から判明するように、BSPの封入率はジエタノールアミンの量に影響され、ジエタノールアミンの量を増加することにより封入率が上昇した。
さらに、表3及び表4に示した結果から判るように、PLA−PEGブロック共重合体とPLAとの全PLA量に対するPLA−PEGブロック共重合中のPLAの割合を増加させると、ナノ粒子の粒径は小さくなり、BSPの封入率が低下した。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明の気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤について、(1)薬物の肺残存性、(2)気管支肺胞炎症細胞浸潤、(3)気道過敏性について試験を行った。
【0055】
(1)薬物の肺残存性
6〜8週齢のBALB/cマウスを卵白アルブミン(OVA)+アルミニウム(10μgOVA+2mgAl(SO))で0日及び14日後の2回免疫し、OVA特異的IgE抗体を誘導した。OVA特異的IgE抗体を誘導したマウスについて、OVAを20mg/mLを1日10分間吸入感作した。このマウスにリン酸ベタメタゾンとして40μgに相当するリン酸ベタメタゾン含有ナノ粒子(ステルス:ステロイドを含有するPLA−PEG/PLAナノ粒子)を単回静脈内投与した。また、対照として他の群のラットにコントロール及びリン酸ベタメタゾン水溶液(リン酸ベタメタゾンとして40μg)をそれぞれ単回皮下注射投与した。
投与一定時間後、肺を取り出し、それらをホモジナイズし、ベタメタゾン(BM)量をイムノアッセイにより定量した。結果を図1に示した。
【0056】
図1から、リン酸ベタメタゾン水溶液単独では1日後で既に検出限界以下になるが、本発明のリン酸ベタメタゾンを含有するナノ粒子は、7日目まで測定する肺に存在することが判った。したがって、本発明のリン酸ベタメタゾン含有ナノ粒子は患部ターゲッティング及び徐放性を有することを示している。
【0057】
(2)気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞浸潤
6〜8週齢のBALB/cマウスを卵白アルブミン(OVA)+アルミニウム(10μgOVA+2mgAl(SO))で0日及び14日後の2回免疫し、OVA特異的IgE抗体を誘導した。OVA特異的IgE抗体を誘導したマウスについて、OVAを20mg/mLを1日10分間吸入感作した。このOVA吸入操作を3回繰り返した。このマウスにリン酸ベタメタゾンとして40μgに相当するリン酸ベタメタゾン含有ナノ粒子を単回静脈内投与した。また、対照として他の群のラットにコントロール及びリン酸ベタメタゾン水溶液(リン酸ベタメタゾンとして40μg)を、それぞれ単回皮下注射投与した。このマウスにペントバルビタール麻酔下で気管を切開し、気管内に20G留置針にてカニューレを挿入後、生理食塩水約0.7mLを注入し、回収し、この操作を繰り返して約5mLの気管支肺胞洗浄液(BALF:bronchoalveolar lavage fluid)を採取した。
【0058】
採取したBALFは4℃/1500rpm/10分で遠心分離した。細胞は1mLのPBSに再浮遊させ、細胞数のカウントを行った後、細胞数1×10〜1×10cells/mLに希釈したBALF80μL、Fetal Bovine Serum(FBS)(GIBCO社)20μLを使用し640rpm、室温、2分間サイトスピン標本の作成を行った。その後、ディフ・クイック(国際試薬社製)で核染色を行い、鏡検し、細胞分画を調べた。気道炎症に対する効果を検討するために、OVA吸収により好酸球を中心とした細胞浸潤が気道局所に認められ、この細胞浸潤の度合を気管支肺胞洗浄で得られた細胞数として評価した。吸入開始一日後よりコントロールと比較して有意な細胞数の増加を認め、7日後まで日ごとに増加を続けた。結果を図2に示した。
【0059】
図2から判るように、本発明のリン酸ベタメタゾン含有ナノ粒子(ste)は、OVA吸入開始翌日より有意な抑制を認め、7日後まで有意な抑制を認めた。一方、リン酸ベタメタゾン水溶液(beta)は1日後では抑制効果を示したが、5日後、7日後では効果を認めなかった。したがって、本発明のリン酸ベタメタゾン含有ナノ粒子は炎症細胞(好酸球)肺胞浸潤抑制効果に優れ、効果の持続性を有することが認められた。
【0060】
(3)気道過敏性
6〜8週齢のBALB/cマウスを卵白アルブミン(OVA)+アルミニウム(10μgOVA+2mgAl(SO))で0日及び14日後の2回免疫し、OVA特異的IgE抗体を誘導した。OVA特異的IgE抗体を誘導したマウスについて、OVAを20mg/mLを1日10分間吸入感作した。このOVA吸入操作を3回繰り返した。のマウスにリン酸ベタメタゾンとして40μgに相当するリン酸ベタメタゾン含有ナノ粒子を単回静脈内投与した。また、対照として他の群のラットにコントロール及びリン酸ベタメタゾン水溶液(リン酸ベタメタゾンとして40μg)をそれぞれ単回皮下注射投与した。このマウスをペントバルビタール麻酔下で気管切開後挿管し、従量式人工呼吸器(ハーバード社製)に繋ぎ、筋弛緩薬パンクロニウムブロマイドを10倍希釈したものを0.1mL皮下注射し、一回換気量0.3mL、150回/分の調節呼吸とした。その後、肺機能解析装置(バクスコ社製)を用いてプレスチモグラフボディボックス法により気道抵抗(Raw)を測定した。気道反応性はマウスにメサコリン吸入後6.25、12.5、25.0mg/mLを超音波ネブライザーで2分間ずつ低濃度から吸入させ、吸入前後の気道抵抗(Raw)及び静肺コンプラインス(Cdyn)を測定した。メサコリン吸入後の静肺コンプラインス(Cdyn)、気道抵抗(Raw)及び気道抵抗の時間変化(airway pressure time index,APTI)を評価した。結果を図3、4及び5に示した。
【0061】
図3から判ることは、無処置のマウスと比較してOVA吸入群ではメサコリン吸入後有意なCdynの低下を認めたのに対し、本発明のリン酸ベタメタゾンを含有するナノ粒子投与群はCdynの低下を防ぐ治療効果を認めた。一方、8μg/回のリン酸ベタメタゾン水溶液を5回連日皮下注射した場合、空ステルス(ステロイドを含有しないPLA−PEG/PLAナノ粒子)及び非ステルスナノステロイド(PEG化していないPLA粒子にリン酸ベタメタゾンを含有した粒子)では治療効果を認められなかった。
【0062】
図4のRawの測定は薬物投与9日後に評価した。メサコリンの濃度を6.25、12.5、25.0mg/mLと順次上げていったときの反応曲線を示し、縦軸は気道抵抗であり同じ濃度で増加が大きいほど気道過敏性が高かった。コントロール(●)と比較してOVA投与群(○)では有意な上昇を示し、リン酸ベタメタゾン1回投与(▼)では全く治療効果を認めなかったが、同量の本発明のリン酸ベタメタゾン含有ナノ粒子(▽)では有意な抑制効果を認めた。
【0063】
さらに、OVAを先に吸入し炎症を惹起したものを3日後に本発明のリン酸ベタメタゾンを含有するナノ粒子を投与した場合(□)でも治療効果を示した。このことは、リン酸ベタメタゾンを含有するナノ粒子が実際の臨床上想定される気道炎症に治療効果が高いことを示唆しており、ステロイドが無効と言われる気道の構造上変化(気道リモデリング)への治療効果も期待できる所見である。
【0064】
図5は、濃度依存性の検討を行ったものであり、気道抵抗の時間変化(APTI)を薬物投与後6日目のものであり、本発明のリン酸ベタメタゾンを含有するナノ粒子を40μg/マウスを投与したもの(+ste40)で有意な気道抵抗抑制効果を示した。
【0065】
統計学的処理
統計学的処理はstudent T-検定及びANOVA検定を用いて行い、危険率5%未満を有意差ありとした。
【0066】
製剤例静脈用注射剤
製造例2で得られたリン酸ベタメタゾンを含有するPLA−PEGブロック共重合体ナノ粒子を、ショ糖を加えた水溶液に加えて凍結乾燥した。得られた凍結乾燥剤に、別にバイアル充填した0.5%カルメロースあるいは注射用水を加えることにより静脈注射用剤を得た。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上記載したように、本発明の気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤は、患部ターゲッティング及び徐放性に優れ、さらに気管支肺胞浸潤抑制効果及び気道過敏性抑制効果に優れているので、気管支喘息及び花粉症、ハウスダスト(ダニ)などのアレルギー性鼻炎の予防、治療用医薬品として有用であり、その産業上の利用可能性は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例における薬物の肺残存性の結果を示す図である。
【図2】本発明の実施例における気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞浸潤の結果を示す図である。
【図3】本発明の実施例における気道過敏性試験の結果のうち、静肺コンプラインス(Cdyn)の結果を示す図である。
【図4】本発明の実施例における気道過敏性試験の結果のうち、気道抵抗(Raw)の結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例における気道過敏性試験の結果のうち、気道抵抗抑制効果の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗炎症性ステロイド又はその誘導体を金属イオンにより疎水化し、これをポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体と作用させることにより得られる抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤。
【請求項2】
抗炎症性ステロイド又はその誘導体を金属イオンにより疎水化し、これをポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体、及びポリ乳酸又はポリ(乳酸/グリコール酸)共重合体と作用させることにより得られる抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤。
【請求項3】
さらに、塩基性低分子化合物を混合する請求項1又は2に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤。
【請求項4】
さらに界面活性剤を配合することからなる請求項1、2又は3に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤。
【請求項5】
粒子の直径が20〜300nmである請求項1〜4のいずれかに記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤。
【請求項6】
粒子の直径が50〜200nmである請求項1〜4のいずれかに記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤。
【請求項7】
金属イオンが、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、ベリリウムイオン、マンガンイオン又はコバルトイオンの1種又は2種以上である請求項1、2又は3に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤。
【請求項8】
抗炎症性ステロイド又はその誘導体が、前記金属イオンにより疎水化されるためのリン酸基、硫酸基又はカルボキシル基を有していることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤。
【請求項9】
炎症性ステロイド又はその誘導体が、リン酸ベタメタゾン、リン酸デキサメタゾン、リン酸プレドニゾロン、リン酸ヒドロコルチゾン、コハク酸プレドニゾロン又はコハク酸ヒドロコルチゾンである請求項1、2、3又は8に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤。
【請求項10】
ポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)−ポリエチレングリコールブロック共重合体の重量平均分子量が3,000〜20,000である請求項1、2又は3に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤。
【請求項11】
塩基性低分子化合物が、(ジメチルアミノ)ピリジン、ピリジン、ピペリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キヌクリジン、イソキノリン、ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ナフチルアミン、モルホリン、アマンタジン、アニリン、スペルミン、スペルミジン、ヘキサメチレンジアミン、プトレシン、カダベリン、フェネチルアミン、ヒスタミン、ジアザビシクロオクタン、ジイソプロピルエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミンから選択される1種又は2種以上のものである請求項3に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤。
【請求項12】
界面活性剤が、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(80)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)コレステロールエステル、脂質−ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び脂肪酸−ポリエチレングリコール共重合体から選択される1種又は2種以上のものである請求項4に記載の抗炎症性ステロイド含有ナノ粒子を有効成分とすることを特徴とする気管支喘息治療剤及びアレルギー性鼻炎治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−162904(P2008−162904A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351391(P2006−351391)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(303010452)株式会社LTTバイオファーマ (27)
【Fターム(参考)】