説明

水なし平版印刷版用版面修正液

【課題】保存安定性と作業性に優れた水なし平版印刷版用版面修正液を提供すること。
【解決手段】(a)両末端に各1個以上の水酸基を有するオルガノポリシロキサン、(b)架橋剤、(c)触媒、(d)有色顔料および(e)顔料分散剤を含有することを特徴とする水なし平版印刷版用版面修正液。前記(e)顔料分散剤が、金属と有機化合物からなる有機錯化合物またはアミン系顔料分散剤を含む。前記金属がアルミニウムおよび/またはチタニウムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴムをインキ反発層とする水なし平版印刷版用の版面修正液に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴム層をインキ反発層とする水なし平版印刷版は、これまでに種々のものが提案されている。水なし平版印刷版を用いて印刷を行う場合、シリコーンゴム層にスクラッチ傷、ピンホール等の欠点、あるいはフィルムエッジに基づく欠点などが生じる場合があり、また、通常の画線部を消去して非画線部とすることが求められる場合もある。かかる目的に対し、硬化性シリコーンゴム溶液からなる版面修正液を、修正しようとする部分に塗布・硬化して、インキ反発性のシリコーンゴム被膜を形成する方法が知られている。
【0003】
このような水なし平版印刷版用版面修正液として、例えば、線状ジオルガノポリシロキサン、必要に応じて架橋剤および触媒を含む修正液(例えば、特許文献1参照)、両末端に各1個以上の官能基を有する線状ジオルガノポリシロキサン、官能基を有しないかあるいは片末端のみに1個以上の官能基を有する線状ジオルガノポリシロキサン、架橋剤および触媒を含む修正液(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。また、シリコーンゴム層との接着性と耐久性に優れた水なし平版印刷版用版面修正液として、両末端に各1個以上の水酸基を有する線状ジメチルポリシロキサン、アセトキシ基を2個以上有するアセトキシシラン、触媒および接着付与剤を含む版面修正液(例えば、特許文献3参照)が提案されている。これらの修正液には、塗膜を着色して修正箇所を分かりやすくするために染料が含有されているものがあるが、経時によって染料が沈降し、保存安定性が劣るという課題を有していた。また、印刷中やインキ洗浄時に染料が抽出されて脱色し、修正箇所がわからなくなるため作業性が劣るという課題も有していた。
【特許文献1】特開昭54−22203号公報(第1頁)
【特許文献2】特開昭58−102235号公報(第1頁)
【特許文献3】特開2005−257846号公報(第1−4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、保存安定性と作業性に優れた水なし平版印刷版用版面修正液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)両末端に各1個以上の水酸基を有するオルガノポリシロキサン、(b)架橋剤、(c)触媒、(d)有色顔料および(e)顔料分散剤を含有することを特徴とする水なし平版印刷版用版面修正液である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、保存安定性に優れ、印刷中やインキ洗浄時の脱色を低減した、作業性に優れた水なし平版印刷版用版面修正液を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳しく説明する。本発明の水なし平版印刷版用版面修正液(以下、修正液という)は、縮合反応型の修正液であり、少なくとも(a)両末端に各1個以上の水酸基を有するオルガノポリシロキサン(以下、水酸基含有オルガノポリシロキサンという)、(b)架橋剤、(c)硬化触媒、(d)有色顔料および(e)顔料分散剤を含有する。
【0008】
(a)水酸基含有オルガノポリシロキサンは、下記一般式(I)で表される構造を有し、両末端に水酸基を有するものである。末端に水酸基があれば、主鎖中に水酸基を有するものであってもかまわない。
−(SiR−O−)− (I)
上記式(I)中、nは2以上の整数を示し、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、炭素数1〜50の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。炭化水素基は直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。
【0009】
一般式(I)中のRおよびRは、全体の50%以上がメチル基であることが、修正液から得られる硬化膜のインキ反発性の面で好ましい。また、修正液の取扱い性や得られる硬化膜のインキ反発性、耐傷性の観点から、水酸基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は1万〜60万が好ましい。
【0010】
本発明の修正液において、(a)水酸基含有オルガノポリシロキサンの含有量は、修正液中の20重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましい。また、硬化膜のインキ反発性を維持する観点から、90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。
【0011】
本発明に用いられる(b)架橋剤として、好ましくは、下記一般式(II)で表される、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類、アリロキシシラン類などを挙げることができる。
(R4−mSiX(II)
上記式(II)中、mは2〜4の整数を示す。Rは同じであっても異なっていてもよく、炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xは同じであっても異なっていてもよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アセトキシ基、ケトキシミノ基、アミノオキシ基、アミド基またはアリルオキシ基である。上記式(II)において、加水分解性基の数nは3または4であることが好ましい。
【0012】
具体的な化合物としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン等のアセトキシシラン類、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、アリルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、テトラキス(メチルエチルケトキシミノ)シラン等のケトキシミノシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等のアルコキシシラン類、ビニルトリスイソプロペノキシシラン、ジイソプロペノキシジメチルシラン、トリイソプロペノキシメチルシラン等のアリルオキシオキシシラン類、テトラアリロキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、修正液の硬化速度、取扱い性などの観点から、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類が好ましい。
【0013】
(b)架橋剤の含有量は、修正液の安定性の観点から、修正液中0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。また、修正液から得られる硬化膜の膜強度、耐傷性の観点から、修正液中20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0014】
(c)触媒としては、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、トルエンスルホン酸、ホウ酸等の酸類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ、アミン、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどの金属アルコキシド、鉄アセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナートジプロポキシドなどの金属ジケテネート、金属の有機酸塩などを挙げることができる。これらの中で、金属の有機酸塩が好ましく、特に錫、鉛、亜鉛、鉄、コバルト、カルシウム、マンガンから選ばれる金属の有機酸塩が好ましい。このような化合物の具体例の一部としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄などを挙げることができる。(c)触媒の含有量は、修正液の硬化性、接着性の観点から、修正液中0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましい。また、修正液の安定性の観点から、修正液中15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0015】
本発明の修正液は、(d)有色顔料を含有することを特徴とする。本発明において(d)有色顔料とは、可視光波長域(380〜780nm)における何れかの光を吸収する顔料をいう。一般に、顔料は水や脂肪族炭化水素などの有機溶剤に不溶であるため、顔料を含むことにより、水や有機溶剤に可溶な染料を含む場合に比べて、印刷工程において用いられるインキ中の溶剤や各種洗浄剤等による色素抽出が格段に抑えられる。
【0016】
有色顔料は、無機顔料、有機顔料に分類される。
【0017】
無機顔料としては、例えば、べんがら、酸化クロム、コバルトブルー、鉄黒等の酸化物、黄色酸化鉄、ビリジアン等の水酸化物、朱、カドミウムエロー、カドミウムレッド等の硫化物・セレン化物、紺青などのフェロシアン化物、黄鉛、ジンククロメート、モリブデンレッド、ストロンチウムクロメート等のクロム酸塩、含水硅酸塩、群青、ガーネット等の硅酸塩、マンガンバイオレット等の燐酸塩、カーボンブラック等が挙げられる。
【0018】
有機顔料としては、例えば、体質顔料に染料を染め付けた捺染系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料や、アルカリブルー、アニリンブラック等が挙げられる。捺染系顔料の材料となる染料としては、ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料、キノリンエロー、ピーコックブルー、アルカリブルー等の酸性染料、マラカイトグリーン等の建染染料、アリザリン等の媒染染料が挙げられる。また、アゾ系顔料の具体例としては、リソールレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、ウォッチヤングレッド、ボルドー10B等の溶性アゾ、ファストエロー、ジスアゾエロー、ピラゾロンオレンジ、パラレッド、レーキレッド4R、ナフトールレッド等の不溶性アゾ、クロモフタルエロー3G、クロモフタルスカーレットRN等の縮合アゾ、ニッケルアゾエロー等のアゾ錯塩、パーマネントオレンジHL等のベンズイダゾロンアゾが挙げられる。フタロシアニン顔料の具体例としては、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、フタロシアニングリーン等が挙げられる。縮合多環顔料の具体例としては、アントラキノン系顔料、アントラピリミジンエロー、ペリノンオレンジ、ペリレンレッド、チオインジゴレッド、インダントロンブルー等のスレン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット等のキナクリドン系顔料、ジオキサジンバイオレット等のジオキサジン系顔料、イソインドリノンエロー等のイソインドリノン系顔料等が挙げられる。また、ニトロ系顔料としてはナフトールエローS等、ニトロソ系顔料としてはナフトールグリーンB等が挙げられる。
【0019】
本発明の修正液において、有色顔料の含有量は、硬化膜中の0.1体積%以上が好ましく、0.2体積%以上がより好ましい。また、硬化膜のインキ反発性を維持する観点から、20体積%以下が好ましく、10体積%以下がより好ましい。
【0020】
次に(e)顔料分散剤について説明する。修正液中、および修正液から得られる硬化膜中での顔料分散性を向上させるために、修正液中に顔料分散剤を含有することが重要である。特に、顔料表面をよく濡らし、水酸基含有オルガノポリシロキサンや修正液に一般的に含有される炭化水素系溶剤のような低極性化合物との親和性が良好な顔料分散剤が極めて有効である。顔料分散剤を含有することにより、有色顔料の凝集の生じやすい低粘度の液であっても良好な顔料分散性を保持することができ、良好な塗膜を得ることができる。
【0021】
(e)顔料分散剤としては、顔料表面をよく濡らし、且つ水酸基含有オルガノポリシロキサンや炭化水素系溶剤のような低極性化合物との親和性が良好な顔料分散剤であれば公知の顔料分散剤を用いることができる。顔料分散剤は界面活性剤や表面改質剤等の名称で用いられることもある。顔料分散剤としては、金属と有機化合物からなる有機錯化合物、アミン系顔料分散剤、酸系顔料分散剤、ノニオン界面活性剤等を挙げることができる。中でも、金属と有機化合物からなる有機錯化合物、アミン系顔料分散剤が好ましく用いられる。分散性向上効果が大きく、修正液の保存安定性に優れる点でアミン系分散剤がより好ましい。
【0022】
以下に、金属と有機化合物からなる有機錯化合物として好ましく用いられるものを例示する。金属としては、Cu(I)、Ag(I)、Hg(I)、Hg(II)、Li、Na、K、Be(II)、B(III)、Zn(II)、Cd(II)、Al(III)、Co(II)、Ni(II)、Cu(II)、Ag(II)、Au(III)、Pd(II)、Pt(II)、Ca(II)、Sr(II)、Ba(II)、Ti(IV)、V(III)、V(IV)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Fe(II)、Fe(III)、Co(III)、Pd(IV)、Pt(IV)、Sc(III)、Y(III)、Si(IV)、Sn(II)、Sn(IV)、Pb(IV)、Ru(III)、Rh(III)、Os(III)、Ir(III)、Rb、Cs、Mg、Ni(IV)、Ra、Zr(IV)、Hf(IV)、Mo(IV)、W(IV)、Ge、In、ランタニド、アクチニド等が挙げられる。これらの中でもAl、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Zr、Hfが好ましく、特にシリカ、ガラス以外の無機フィラーに対する分散性向上効果が大きく、修正液の保存安定性に優れるAl、Tiがより好ましい。
【0023】
有機化合物としては、O(酸素原子)、N(窒素原子)、S(硫黄原子)などをドナー原子として有する配位基を有する化合物が挙げられる。配位基の具体例としては、酸素原子をドナー原子とするものとしては、−OH(アルコール、エノールおよびフェノール)、−COOH(カルボン酸)、>C=O(アルデヒド、ケトン、キノン)、−O−(エーテル)、−COOR’(エステル、R’:脂肪族または芳香族炭化水素を表す)、−N=O(ニトロソ化合物)、−NO(ニトロ化合物)、>N−O(N−オキシド)、−SOH(スルホン酸)、−PO(亜リン酸)など、窒素原子をドナー原子とするものとしては、−NH(1級アミン、アミド、ヒドラジン)、>NH(2級アミン、ヒドラジン)、>N−(3級アミン)、−N=N−(アゾ化合物、複素環化合物)、=N−OH(オキシム)、−NO(ニトロ化合物)、−N=O(ニトロソ化合物)、>C=N−(シッフ塩基、複素環化合物)、>C=NH(アルデヒド、およびケトンイミン、エナミン類)、−NCS(イソチオシアナト)など、硫黄原子をドナー原子とするものとしては、−SH(チオール)、−S−(チオエーテル)、>C=S(チオケトン、チオアミド)、=S−(複素環化合物)、−C(=O)−SHあるいは−C(=S)−OHおよび−C(=S)−SH(チオカルボン酸)、−SCN(チオシアナト)などが挙げられる。中でも、カルボン酸やリン酸、スルホン酸などの酸化合物や、金属との間でキレート環を形成できるジケトンやケトエステル、ジエステル化合物を用いることが金属との配位力の点から好ましい。以下に有機化合物の具体例を挙げるがこれらに限定されない。
【0024】
【化1】

【0025】
上記式中、Rは飽和または不飽和の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。分散性の観点から、Rの炭素数は8以上であることが好ましい。Rは炭素数3以上の飽和または不飽和の2価炭化水素連結基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよい。jは繰り返し数を表し、1以上の整数である。分散性の観点から、R×jの炭素数が8以上であることが好ましい。RおよびRは飽和または不飽和の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。分散性の観点から、RとRの合計の炭素数が8以上であることが好ましい。Rは炭素数1以上の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。Rは炭素数3以上の飽和または不飽和の2価炭化水素連結基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよい。lは繰り返し数を表し、1以上の整数である。分散性の観点から、R+R×lの炭素数が8以上であることが好ましい。R10およびR11は炭素数3以上の飽和または不飽和の2価炭化水素連結基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよい。複数のR10、R11はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。mおよびnは繰り返し数を表し、それぞれ1以上の整数である。分散性の観点から、R10×m+R11×nの炭素数が8以上であることが好ましい。R12は水素、アルキル基またはアリール基を表す。AおよびDは2価の連結基を表し、アルカンジイル基、置換/非置換のアリーレン基、または以下に記載の連結基を表す。
【0026】
【化2】

【0027】
上記式中、R12は水素、アルキル基またはアリール基を表す。
【0028】
顔料分散剤として用いられる最も単純な有機錯化合物は、上記有機化合物と金属アルコキシドを室温下または加熱下で撹拌し、配位子を交換することにより得ることができる。1つの金属に対し上記有機化合物を1分子以上配位させることが好ましい。
【0029】
市販されている金属と有機化合物からなる有機錯化合物の一例を以下に挙げる。アルミニウム系:“オクトープ”−Al、“オリープ”−AOO、−AOS(以上、ホープ製薬(株)製)、“プレンアクト”AL−M(味の素ファインテクノ(株)製)等。チタニウム系:“プレンアクト”−KRTTS、−KR46B、−KR55、−KR41B、−KR38S、−KR138S、−KR238S、−KR338X、−KR9SA(以上、味の素ファインテクノ(株)製)、“KEN−REACT”−TTS−B、−5、−6、−7、−10、−11、−12、−15、−26S、−37BS、−43、−58CS、−62S、−36B、−46B、−101、−106、−110S、−112S、−126S、−137BS、−158DS、−201、−206、−212、−226、−237、−262S(以上、KENRICH社製)等。
【0030】
アミン系顔料分散剤としては、その分子中に1個のアミノ基を有するモノアミンタイプ、分子中に複数個のアミノ基を有するポリアミンタイプがあり、何れも好適に使用できる。具体的には、“ソルスパース”−9000、−13240、−13650、−13940、−17000、−18000、−19000、−28000(以上、アビシア社製)や、下記一般式に記載のアミン化合物等を挙げることができる。
【0031】
【化3】

【0032】
上記式中、Rは飽和または不飽和の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。分散性の観点から、Rの炭素数は8以上であることが好ましい。Rは炭素数3以上の飽和または不飽和の2価炭化水素連結基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよい。jは繰り返し数を表し、1以上の整数である。分散性の観点から、R×jの炭素数が8以上であることが好ましい。RおよびRは飽和または不飽和の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。分散性の観点から、RとRの合計の炭素数が8以上であることが好ましい。Rは炭素数1以上の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。Rは炭素数3以上の飽和または不飽和の2価炭化水素連結基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよい。lは繰り返し数を表し、1以上の整数である。分散性の観点から、R+R×lの炭素数が8以上であることが好ましい。R10およびR11は炭素数3以上の飽和または不飽和の2価炭化水素連結基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよい。複数のR10、R11はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。mおよびnは繰り返し数を表し、それぞれ1以上の整数である。分散性の観点から、R10×m+R11×nの炭素数が8以上であることが好ましい。EおよびGは2価の連結基を表し、アルカンジイル基、置換/非置換のアリーレン基、または以下に記載の連結基を表す。
【0033】
【化4】

【0034】
上記式中、R12は水素、アルキル基またはアリール基を表す。
【0035】
顔料分散剤は、顔料の表面積に対して、2〜30mg/m含有することが好ましい。言い換えると、例えば、比表面積50m/gの顔料を10g含有する場合、顔料分散剤の含有量は、1〜15gが好ましい。
【0036】
更に硬化膜の強度を向上させるために、修正液に各種の充填材、シランカップリング剤、その他添加剤を含有してもよい。
【0037】
本発明の修正液は溶媒を含有してもよい。溶媒としては、パラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、シクロパラフィン系炭化水素、芳香族炭化水素、カルボン酸アルキルエステル類、エーテル類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素、これらの混合物などが好ましくが、塗工性等の点から、パラフィン系あるいはイソパラフィン系炭化水素を主成分とするのが特に好ましい。このような炭化水素類の代表的な例としては石油の分留品およびその改質品などがある。
【0038】
本発明の修正液は、例えば、室温において水酸基含有オルガノポリシロキサンを溶媒に溶解し、そこへ架橋剤、触媒、有色顔料、顔料分散剤および目的に合わせて接着付与剤、充填材などを添加し、よく混合することによって製造できる。
【0039】
本発明の修正液は、例えば筆、綿棒、スポンジ、ピペット、スポイド、注射器等種々の塗布用具を用いて修正部分に塗布することができる。塗布した後適当な手段で加熱したり、光照射したりして、硬化・接着を促進することもできる。
【0040】
本発明の修正液は、シリコーンゴム層をインキ反発層とする平版印刷版ならば、いかなる組成・構成のものに対しても適応することができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。各修正液成分の秤量はボックス内の水分を追いだしたグローブボックス内で行い、各成分を乾燥窒素ガスで充填された容器内で分散、混合することによって修正液を調製した。まず、修正液の評価方法について説明する。
【0042】
<保存安定性評価方法>
修正液を作製後、室温25℃の状態で30日間静置し、着色剤の沈降を目視で評価した。着色剤が沈降するまでの日数で保存安定性を評価した。1〜7日以内に沈降した場合、保存安定性が不良と判断した。また、20日以上経過しても沈降しない場合、保存安定性に優れていると判断した。
【0043】
<作業性評価方法>
東レ(株)製“東レ水なしCTP平版”を半導体レーザーで露光し、現像して刷版を作製した。得られた刷版の画像上に、各実施例に示す組成の修正液を筆またはスポイドを用いて塗布し、室温で乾燥した。塗布後1〜2分で塗膜は乾燥し、べとつきの無い強固な硬化膜となった。本操作により画像は消去され、非画像となる。前記サンプルを2つ作製し、うち1つは、塗布後約5分間放置後、小森印刷機(株)製“スプリント”4色機を使用して5千刷の印刷を行った。印刷に用いていないサンプルを評価基準として、修正部分の脱色度合いを目視により評価した。印刷前の修正部分と比較して脱色していない場合を○とし、少しでも脱色している場合を×とした。なお、印刷後において硬化膜の脱色がないものは作業性に優れていると判断できる。
【0044】
<実施例1>
乾燥窒素ガスで充填された容器内において、“DMS−S45”を“アイソパ”Eと酢酸エチルの混合溶媒に溶解した。そこへメチルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、酢酸ブチル錫、“ファストゲンブルー”EP−CFE、“プレンアクト”KR−TTSを添加し、ラボシェイカーを用いて1時間混合し、修正液を作製した。前記方法で保存安定性および作業性の評価を行ったところ、25日間の静置で顔料の沈降は認められたが、保存安定性に優れていた。また、印刷による脱色もなく、作業性に優れていた。
(1)“DMS−S45”(ポリジメチルシロキサン 重量平均分子量11万、GELEST社製):100重量部
(2)メチルトリアセトキシシラン:20重量部
(3)テトラアセトキシシラン:1重量部
(4)酢酸ブチル錫:2重量部
(5)“アイソパ”E(イソパラフィン系炭化水素混合物、エッソ(株)製):400重量部
(6)酢酸エチル:100重量部
(7)“ファストゲンブルー”EP−CFE(大日本インキ化学工業(株)製):4重量部
(8)“プレンアクト”KR−TTS(味の素ファインテクノ(株)製):1.5重量部。
【0045】
<実施例2>
実施例1の“プレンアクト”KR−TTSをアルミ系顔料分散剤“プレンアクト”AL−M(味の素ファインテクノ(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に修正液を作製し、評価を行った。25日間の静置で顔料の沈降は認められたが、印刷による脱色もなく、保存安定性と作業性に優れていた。
【0046】
<実施例3>
実施例1の“プレンアクト”KR−TTSをアミン系顔料分散剤:“ソルスパース”19000((株)Avecia製)に変更した以外は実施例1と同様に修正液を作製し、評価を行った。30日間静置しても顔料の沈降は認められず、印刷による脱色もなく、保存安定性と作業性に優れていた。
【0047】
<実施例4>
実施例1の“プレンアクト”KR−TTSをシリコーン系顔料分散剤:“DC3PA”(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に修正液を作製し、評価を行った。20日間の静置で顔料の沈降は認められたが、印刷による脱色もなく、保存安定性と作業性に優れていた。
【0048】
<実施例5>
実施例1の“ファストゲンブルー”EP−CFE(大日本インキ化学工業(株)製)を“クロモファインレッド”6605(アントラキノン系染料、大日精化(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に修正液を作製し、評価を行った。25日間の静置で顔料の沈降は認められたが印刷による脱色もなく、保存安定性と作業性に優れていた。
【0049】
<実施例6>
実施例1の“ファストゲンブルー”EP−CFE(大日本インキ化学工業(株)製)を“紺青”N650(フェロシアン系染料、大日精化(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に修正液を作製し、評価を行った。25日間の静置で顔料の沈降は認めらたが印刷による脱色もなく、保存安定性と作業性に優れていた。
【0050】
<比較例1>
実施例1の“プレンアクト”KR−TTSを添加しなかった以外は実施例1と同様に修正液を作製し、評価を行った。印刷による脱色は見られなかったが、7日間静置した時点で顔料が沈降した。
【0051】
<比較例2>
比較例1の“ファストゲンブルー”EP−CFE(大日本インキ化学工業(株)製)をOIL BULE 613(トリフェニルメタン系染料、オリヱント化学(株)製)に変更した以外は比較例1と同様に修正液を作製し、評価を行った。1日静置した場合、染料が沈降した。また、印刷によって脱色が認められた。
【0052】
<比較例3>
比較例1の“ファストゲンブルー”EP−CFE(大日本インキ化学工業(株)製)をOIL RED 5B(ジアゾ染料、オリヱント化学(株)製)に変更した以外は比較例1と同様に修正液を作製し、評価を行った。1日静置した場合、染料が沈降した。また、印刷によって脱色が認められた。
【0053】
<比較例4>
実施例1の“ファストゲンブルー”EP−CFE(大日本インキ化学工業(株)製)をOIL BULE 613(トリフェニルメタン系染料、オリヱント化学(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に修正液を作製し、評価を行った。1日静置した時点で染料が沈降した。また、印刷によって脱色が認められた。
【0054】
<比較例5>
実施例3の“ファストゲンブルー”EP−CFE(大日本インキ化学工業(株)製)をOIL RED 5B(ジアゾ染料、オリヱント化学(株)製)に変更した以外は実施例3と同様に修正液を作製し、評価を行った。1日静置した場合、染料が沈降した。また、印刷によって脱色が認められた。
【0055】
以上の結果をまとめて表1に示す。
【0056】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)両末端に各1個以上の水酸基を有するオルガノポリシロキサン、(b)架橋剤、(c)触媒、(d)有色顔料および(e)顔料分散剤を含有することを特徴とする水なし平版印刷版用版面修正液。
【請求項2】
前記(e)顔料分散剤が、金属と有機化合物からなる有機錯化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の水なし平版印刷版用版面修正液。
【請求項3】
前記金属がアルミニウムおよび/またはチタニウムを含むことを特徴とする請求項2記載の水なし平版印刷版用版面修正液。
【請求項4】
前記(e)顔料分散剤がアミン系顔料分散剤を含むことを特徴とする請求項1記載の水なし平版印刷版用版面修正液。

【公開番号】特開2008−158264(P2008−158264A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347114(P2006−347114)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】