説明

水中搬送装置及び水中搬送方法

【課題】炉内における搬送物の搬送作業時間を短縮するとともに、その搬送物の搬送中に搬送物を保護することのできる水中搬送装置を提供する。
【解決手段】原子炉の炉水中を遊泳して搬送物を搬送する水中搬送装置1は、炉水中における浮力を調整可能とする浮力調整部2と、原子炉の上下方向及び水平方向に推力を生じさせるとともに、鉛直軸周りに自転可能とする水中移動部3と、搬送物を把持する搬送物把持部4と、搬送物を把持した状態で搬送物を保護する保護リング40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば原子力発電プラントにおいて水中に設置された燃料や制御棒などの搬送物を移動させて他の場所に設置するなどの搬送作業を行う水中搬送装置及び水中搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力発電プラントにおいて燃料の交換や制御棒の取替えなどの取扱い作業は、天井クレーン、燃料交換機の燃料交換用マスト、又は補助ホイストを用いて行われている。このような前後の作業に影響を及ぼす作業、いわゆるクリティカル作業を短時間で行う装置やシステムを実現することは、定期検査期間を短縮化するとともに、プラント寄与率の向上に貢献することとなる。
【0003】
このように原子力発電プラントにおいて、水中での燃料の交換作業を短時間で行う水中航行式燃料交換装置としては、例えば特許文献1に記載された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−226993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載された技術では、燃料や制御棒などの搬送物を掴み機構部で掴んで炉内を搬送する際、搬送物が炉壁やプール壁などに接触し、搬送物を損傷させる可能性がある。
【0006】
本発明は、炉内における搬送物の搬送作業時間を短縮するとともに、その搬送物の搬送中に搬送物を保護することのできる水中搬送装置及び水中搬送方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態に係る水中搬送装置は、原子炉の炉水中を遊泳して搬送物を搬送する水中搬送装置であって、前記炉水中における浮力を調整可能とする浮力調整部と、前記原子炉の上下方向及び水平方向に沿う推力を生じさせるとともに、鉛直軸周りに自転可能とする水中移動部と、前記搬送物を把持する搬送物把持部と、前記搬送物を把持した状態で前記搬送物を保護する保護部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の実施形態に係る水中搬送方法は、原子炉の炉水中を遊泳して搬送物を搬送する水中搬送方法であって、前記炉水中における浮力を調整する浮力調整ステップと、前記原子炉の上下方向及び水平方向に沿う推力を生じさせるとともに、鉛直軸周りに自転する水中移動ステップと、前記搬送物を把持する搬送物把持ステップと、を有し、前記搬送物を把持した状態で前記水中移動するとき、前記搬送物を保護することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る水中搬送装置の第1実施形態を示す立面図である。
【図2】図1の保護リングが下方に移動した状態を示す立面図である。
【図3】図1の浮力調整部を示す立断面構成図である。
【図4】図3において水面が低下した状態を示す立断面構成図である。
【図5】第1実施形態の水中搬送装置による搬送物の搬送手順を示す概略図である。
【図6】図5の次の搬送手順を示す概略図である。
【図7】図6の次の搬送手順を示す概略図である。
【図8】図7の次の搬送手順を示す概略図である。
【図9】図8の次の搬送手順を示す概略図である。
【図10】本発明に係る水中搬送装置の第2実施形態のグリッドガイドを示す部分立面図である。
【図11】図10のグリッドガイドの上部格子板との位置関係を示す平断面構成図である。
【図12】図10のグリッドガイドが上部格子板を通過する状態を示す部分立面図である。
【図13】図10のグリッドガイドが受ける反力の作用方向を示す平断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る水中搬送装置の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、搬送物として燃料支持金具、制御棒及び制御棒案内管を適用し、原子炉内の制御棒取替え作業を例にして説明する。
【0011】
(第1実施形態)
(全体の構成)
図1は本発明に係る水中搬送装置の第1実施形態を示す立面図である。図2は図1の保護リングが下方に移動した状態を示す立面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の水中搬送装置1は、炉水中において水中搬送装置1自体の浮力を調整する浮力調整部2と、この浮力調整部2の下方に取り付けられた水中移動部3と、この水中移動部3にグリッドガイド9を介して連結された搬送物把持部4と、水中移動部3とグリッドガイド9との間に取り付けられたワイヤドラム41からワイヤを介して吊り下げられた保護リング40とを備えている。
【0013】
水中移動部3は、複数の推進用スラスタにより構成されている。具体的には、本実施形態の水中移動部3は、原子炉の炉水中で上下方向の推力を生じさせる2つの上下スラスタ7と、炉水中で水平方向の推力を生じさせて水平移動と鉛直軸回りに自転するための4つの水平スラスタ8とがそれぞれ鉛直軸周りに対称に配置されている。これにより、水中搬送装置1は、水中移動部3により水中を3次元方向に移動するとともに、鉛直軸回りに自転可能である。
【0014】
なお、水平スラスタ8の個数は、上記のように4つに限定することはない。例えば、水中搬送装置1を水平移動させるとともに、鉛直軸回りに自転させるためには、一直線上に対称に配置された2つの水平スラスタと、この直線と直交する位置に配置された1つの水平スラスタとの合計3つの水平スラスタによっても、上記と同様の移動機能を実現することができる。
【0015】
搬送物把持部4は、原子炉の炉内構造物である上部格子板を通過するときにガイドとなる長尺構造物としてのグリッドガイド9を介して水中移動部3と連結されている。本実施形態の搬送物把持部4は、図1及び図2に示すように搬送物として燃料支持金具5、図示しない制御棒及び制御棒案内管6を把持して吊り下げている。この制御棒案内管6内には、上記制御棒が配設されている。
【0016】
(保護リングの構成及び作用)
次に、保護リング40の構成及び作用について説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、保護リング40は、円環状の構造物から形成され、内径寸法がグリッドガイド9及び制御棒案内管6の外径寸法より大きくなるように規定されている。なお、保護リング40は、グリッドガイド9及び制御棒案内管6に対して自重で上下移動可能な最小の内径寸法であればよい。保護リング40は、複数本のワイヤ42に吊り下げられている。これらのワイヤ42は、ワイヤドラム41により巻取り又は繰出し可能である。
【0018】
したがって、保護リング40は、ワイヤドラム41によりワイヤ42を巻取り又は繰出すことにより、グリッドガイド9及び制御棒案内管6に対して上昇又は下降可能である。すなわち、保護リング40は、図2に示すようにワイヤ42を繰出すことにより、制御棒案内管6の下方の位置まで下降させることが可能である。ここで、保護リング40は、図7に示すように燃料支持金具5、図示しない制御棒及び制御棒案内管6を搬送物把持部4により掴んで吊り下げて炉内を遊泳移動する際には、制御棒案内管6の下方の位置まで下降させておく。
【0019】
このように構成された保護リング40は、搬送物としての燃料支持金具5、図示しない制御棒及び制御棒案内管6を搬送物把持部4により掴んで吊り下げて炉内を遊泳移動する際、仮に炉壁37やプール壁38に水中搬送装置1が接触したとしても、炉壁37やプール壁38とは浮力調整部2、水中移動部3又は保護リング40が接触し、上記搬送物を未然に保護することができる。
【0020】
なお、保護リング40は、遊泳移動時の搬送物の保護を目的としているものの、炉壁37やプール壁38を傷つけないために、弾性変形可能な材質で構成される。すなわち、保護リング40は、例えば、リング状に成形されたゴムが使用可能であり、衝撃吸収能力に優れた多数の微小な空洞を備えるスポンジゴムや、内部が空洞のゴムチューブであってもよい。
【0021】
また、保護リング40は、必ずしも全体が弾性変形する必要はなく、リング形状に形成された部材の上下面を除いた内側と外側にスポンジゴムなどの弾性変形可能な材料を貼り付けて構成したとしても、上記搬送物、炉壁37やプール壁38を損傷させないための保護機能が確保される。
【0022】
さらに、本実施形態の保護リング40は、複数本のワイヤ42で吊り下げられ、ワイヤドラム41により巻取り又は繰出して上下動する構成としたが、この構成に限定されるものではなく、例えば多段で伸縮するガイド部材によって上下動させることも可能である。
【0023】
また、本実施形態では、搬送物を保護するためにリング状に形成された保護リング40を搬送物の下端まで降下させて保持するようにしたが、これに限らず上下方向に伸縮可能な薄い蛇腹状の円筒カーテンを使用してもよい。この場合には、グリッドガイド9の上端部分におけるワイヤドラム41の下部に上記円筒カーテンの上端を固定するとともに、その下端を搬送物の下端まで伸ばすことができるようにすれば、搬送物全体を覆うことが可能となる。なお、上記円筒カーテンには、水中搬送装置1の遊泳移動時の流体抵抗を軽減するため、複数の通水孔を開けておくことが望ましい。
【0024】
ところで、本実施形態において、搬送物を吊り下げていない場合に保護リング40は上方に位置するものの、搬送物を吊り下げた時には保護リング40が図2に示すように下方に位置するので、水中での全体重心が下がることになる。
【0025】
その結果、水中搬送装置1は、全体の浮力中心と重心との間の距離が離れるので、搬送時に装置全体が傾いても復帰モーメントが大きくなる。これにより、水中移動部3による推進力で移動開始時や移動中及び移動停止時に水中搬送装置1が傾いても、鉛直方向に復帰し易くなり、操作時の安定性を向上させることができる。
【0026】
(浮力調整部の構成及び作用)
次に、浮力調整部2について図3及び図4に基づいて説明する。
【0027】
図3は図1の浮力調整部を示す立断面構成図である。図4は図3において水面が低下した状態を示す立断面構成図である。
【0028】
図3及び図4に示すように、浮力調整部2は、耐圧容器10内部の水の量を調整することで浮力を調整している。この耐圧容器10の外周部には、圧縮空気ボンベ11が配置されている。この圧縮空気ボンベ11は、バルブ操作部12により開閉される注入バルブ13に接続されている。この注入バルブ13は、耐圧容器10の注入口14に接続され、圧縮空気の供給と停止を切替える。これにより、圧縮空気ボンベ11の圧縮空気は、バルブ操作部12により開閉される注入バルブ13を操作することで、注入口14から耐圧容器10内へ供給されるか、停止される。
【0029】
また、耐圧容器10の上部には、空気吐出口17が配置されている。この空気吐出口17には、空気制御弁としての吐出バルブ16が取り付けられている。この吐出バルブ16は、バルブ操作部15により開閉され、耐圧容器10内部の空気の排出と停止を切替える。これにより、耐圧容器10内の空気は、バルブ操作部15により開閉される吐出バルブ16を開閉操作することで、空気吐出口17から排出されるか、停止される。
【0030】
さらに、耐圧容器10の下部には、水吐出口20が配置されている。この水吐出口20には、水制御弁としての吐出バルブ19が取り付けられている。この吐出バルブ19は、バルブ操作部18により開閉され、耐圧容器10内部の水の排出と停止を切替える。これにより、耐圧容器10内の水は、バルブ操作部18により開閉される吐出バルブ19を開閉操作することで、水吐出口20から排出されるか、停止される。
【0031】
耐圧容器10内は、水中設置状態において上方が空気で下方が水で満たされている。この水面22の位置は、水位検出部材としてのフロート式液面計21により検出することができる。具体的には、図3に示すように水面23に対応する位置に位置検出センサ24が、水面25に対応する位置に位置検出センサ26が設置されている。フロート式液面計21は、各々の水位に応じて位置が上下動するので、位置検出センサ24や位置検出センサ26により水面の位置を検出することができる。
【0032】
例えば、図3の水位における浮力により、搬送物を吊り下げていないときは、水中搬送装置1全体の水中重量が中性浮力となった状態、すなわち水中で浮きも沈みもしない水中重量がほぼ0の状態とする。一方、図1及び図2に示すように、燃料支持金具5、制御棒及び制御棒案内管6を搬送物把持部4に把持して搬送する場合には、これらの水中重量以上の浮上力が必要になる。上記3種の水中重量は、数百kgfを越えるため上下スラスタ7によってこの上昇力を得ることは現実的ではない。したがって、この浮力調整部2により浮力を発生させる。
【0033】
以下に、浮力を付与するための操作手順について説明する。
【0034】
まず、浮力を増加する場合は、図3において、バルブ操作部18を操作することにより吐出バルブ19を開き、バルブ操作部15を操作することにより吐出バルブ16を閉じる。そして、バルブ操作部12を操作することにより注入バルブ13を開いて圧縮空気ボンベ11から耐圧容器10内に圧縮空気を供給する。
【0035】
すると、耐圧容器10内の水が水吐出口20から排出され、内部の空気量が増えて水面22が低下することにより、水中での水中搬送装置1の浮力を増やすことができる。また、図4に示すように、水面22が水面25の位置になったことを位置検出センサ26により検出し、バルブ操作部18を操作することにより吐出バルブ19を閉じて水の排出を停止し、バルブ操作部12を操作することにより注入バルブ13を閉じる。
【0036】
逆に、浮力を減ずる場合には、バルブ操作部15を操作することにより吐出バルブ16を開き、バルブ操作部18を操作することにより吐出バルブ19を開く。これにより、水吐出口20から耐圧容器10内に水が浸入し空気吐出口17から空気が排出されて水面22が上昇することにより、水中での浮力を減少させることができる。
【0037】
例えば、図3が搬送物を吊り下げていない状態で全体が中性浮力となるような浮力調整部2の水面位置であり、図4の状態が搬送物を吊り下げている状態とすると、上記のようにバルブを操作することにより水中搬送装置1の浮力を調整することが可能である。
【0038】
なお、本実施形態では、フロート式液面計21の位置を検出するため、2個の位置検出センサを耐圧容器10内の上下に配置したが、これに限らず中性浮力より若干水中重量を増やしたい場合などがあり、この場合には、水面の位置を検出する位置検出センサをさらに増やすようにすればよい。
【0039】
また、本実施形態における水中搬送装置1が原子炉内で遊泳移動中に、この浮力調整部2の故障により沈降してしまい急速に浮上させたいときは、耐圧容器10内にエアバッグを瞬時に膨張させるのに用いられているインフレータなどのガス発生装置を配置してもよい。この場合には、耐圧容器10の内圧が過度に上昇しないように耐圧容器10の下部に逃し弁を取り付けることが望ましい。
【0040】
このような構成により、水中搬送装置1を急速浮上させる場合には、外部信号によりインフレータを作動させてガスを発生し、このガス圧により耐圧容器10内の水を逃がし弁から排出して水面22の位置を低下させて浮力を増加させることが可能である。これにより、水中搬送装置1と原子炉内の炉内構造物との衝突を未然に回避し、水中搬送装置1及び炉内構造物の健全性を保つことができる。
【0041】
ところで、上述したような浮力を調整する水面22の位置を判断するには、水中搬送装置1の水深を把握する必要がある。このためには、例えば次のような3つの方法がある。第1の方法は、炉上部からの直接目視や監視カメラの画像により搬送中の周辺の炉内構造物との相対位置から判断する方法である。第2の方法は、水中搬送装置1に水深計を配置して検出する方法である。第3の方法は、外部の複数の予め固定した位置から水中搬送装置1までの直線距離を計測し、三角測量の原理を応用して水深を検出する方法である。これらの方法によって水深を把握して浮力を調整する水面22の上下位置を判断することができる。
【0042】
(全体の作用)
次に、本実施形態の水中搬送装置を用いて燃料支持金具5、制御棒及び制御棒案内管6をラックへ搬送する手順について説明する。図5〜図9は、燃料支持金具5、制御棒、制御棒案内管6をラックへ搬送する手順を示す概略図である。なお、水中搬送装置は、状態が分かり易いように大きく図示している。
【0043】
図5に示すように、原子炉30内には、燃料支持金具5及び制御棒案内管6が設置され、この制御棒案内管6内には制御棒が設けられている。燃料支持金具5は、炉心支持板32上に設置され、その上方には上部格子板31が配置されている。水中搬送装置1は、これらの燃料支持金具5、制御棒及び制御棒案内管6を炉内から燃料プール35に設置されたラック36に移動させる。水中搬送装置1は既に、上述したように全体の水中重量がほぼ0となる中性浮力に保たれており、水中移動部3を駆動させることにより遊泳移動しながら搬送対象へ接近する。
【0044】
次に、図6に示すように、搬送物把持部4及びグリッドガイド9を、上部格子板31を通過させ、搬送物把持部4により搬送物である燃料支持金具5、制御棒及び制御棒案内管6を把持する。そして、上述したように浮力調整部2により浮力を増大させ、搬送物を含めた全体の水中重量がほぼ0となるように調整する。この状態でグリッドガイド9を上部格子板31に沿わせながら上昇し、図7に示すように搬送物を炉上部へ移動させる。さらに、図8に示すようにラック36へ燃料支持金具5、制御棒及び制御棒案内管6を設置する。次いで、図9に示すように次の搬送対象へ移動し、上記と同様の手順を繰り返す。
【0045】
このように本実施形態による水中搬送装置1は、水中移動部3により原子炉内の炉心部の上部格子板31へ遊泳移動し、燃料支持金具5、制御棒及び制御棒案内管6を搬送物把持部4によって掴み上げてラック36などへ遊泳移動して搬送することができる。水中搬送装置1は、燃料支持金具5、制御棒及び制御棒案内管6の有無により水中重量が異なっているものの、浮力調整部2によって全体の水中重量がほぼ0kgfとなる中性浮力に調整することが可能であり、上下スラスタ7によって上昇や下降が可能である。
【0046】
なお、本実施形態では、燃料支持金具5、制御棒及び制御棒案内管6を搬送する手順について述べたが、本実施形態の水中搬送装置1は、この他に燃料取替え作業にも適用することができる。
【0047】
以下に、燃料取替え作業の一連の作業手順について説明する。
【0048】
まず、図示しない燃料交換機により上部格子板31の一区画内における対角の2体の燃料集合体燃料を取り出した後、水中搬送装置1により制御棒の転倒を防止するためのダブルブレードガイドを挿入設置する。
【0049】
次に、上記燃料交換機により残りの2体の燃料集合体燃料を取り出す。新しい燃料を設置する場合には、この逆の順序で作業を行う。これにより、ダブルブレードガイドを燃料交換機で搬送する必要がなく、並行して作業することができるので、燃料集合体の取替え作業時間を短縮することができる。
【0050】
さらに、燃料集合体そのものを水中搬送装置1により搬送することも可能である。この場合には、複数の水中搬送装置1により同時に複数の燃料集合体を移動させることができるため、燃料集合体の取替え作業時間を短縮することができる。
【0051】
(効 果)
以上説明したように本実施形態による水中搬送装置1によれば、保護リング40がワイヤ42により吊り下げられ、搬送物を把持した後にその搬送物の下端まで下降し、水中移動時の水流などの外乱を受けて水中搬送装置1が周囲の炉壁37やプール壁38などと接触することがあっても、把持した搬送物と直接的な接触を防止するため、その搬送物を保護することができる。
【0052】
また、本実施形態による水中搬送装置1によれば、保護リング40を下方に下げることによって、搬送時の姿勢を安定させることができるので、搬送作業を容易かつ円滑に行うことが可能になる。
【0053】
なお、本実施形態では、水中搬送装置1にバッテリを搭載し、水中移動部3の制御情報や位置検出センサ24,26などの検出信号は、無線で地上局側と通信を行い、原子炉内水中の位置情報から水中移動部3を駆動制御して移動可能としてもよい。このように構成することにより、動力供給ケーブルや制御ケーブルを除去することができるため、水中搬送装置1の移動性能を向上させるとともに、搬送物の搬送時間を短縮することができる。
【0054】
(第2実施形態)
(構 成)
図10は本発明に係る水中搬送装置の第2実施形態のグリッドガイドを示す部分立面図である。図11は図10のグリッドガイドの上部格子板との位置関係を示す平断面構成図である。図12は図10のグリッドガイドが上部格子板を通過する状態を示す部分立面図である。図13は図10のグリッドガイドが受ける反力の作用方向を示す平断面構成図である。
【0055】
なお、前記第1実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符合を付して説明する。
【0056】
前記第1実施形態において、グリッドガイド9は、上部格子板31を通過するときのガイドとしての機能を有するものの、水中搬送装置1が水流や図示しないケーブルの反力などの外乱を受けて、グリッドガイド9と上部格子板31とが過度に接触して鉛直方向に対して斜めになり、水中搬送装置1の上昇や下降に支障をきたすことが想定される。
【0057】
そのため、本実施形態は、図10に示すようにグリッドガイド9の側面に一定間隔をおいて複数の水吐出口45が形成されている。この水吐出口45を構成するそれぞれの水吐出口45a〜45dは、図11に示すように上部格子板31の内壁に向かう向きに2箇所ずつ複数の位置に設けられており、図12に示すように上部格子板31の上下の幅よりも狭い間隔で設けられている。
【0058】
グリッドガイド9は、内部が中空に形成されており、その内部に水を供給することで、図12に示すようにグリッドガイド9の外側に向かって水流46を発生させることができる。
【0059】
(作 用)
次に、グリッドガイド9に形成された複数の水吐出口45の作用を説明する。
【0060】
図13において、グリッドガイド9が上方に移動して上部格子板31の内壁に近づくと、水吐出口45aが上部格子板31の内壁によって塞がれようとする。すると、グリッドガイド9内の水圧によって水吐出口45aが上部格子板31から離れる方向に反力47aが作用する。したがって、水吐出口45は、上部格子板31と完全に接触することなく、隙間を確保するができる。
【0061】
同様に、水吐出口45b,45c,45dが上部格子板31によって塞がれる方向にグリッドガイド9が移動したとすると、その反力47b,47c,47dが作用する。その結果、グリッドガイド9は、上部格子板31に接触しない位置に自動的に調整される。したがって、グリッドガイド9が上部格子板31に過度に接触することを防止することができ、グリッドガイド9が滑らかに上部格子板31を通過することができる。
【0062】
(効 果)
このように本実施形態の水中搬送装置1によれば、上部格子板31を通過するときのガイドとなるグリッドガイド9の側面から4方向に水流を噴出する水吐出口45を形成したことにより、グリッドガイド9が上部格子板31に引っかかることなく滑らかに移動することができるので、最短時間で搬送作業を行うことができる。
【0063】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく、各実施形態を組み合せ、また種々の変更が可能である。例えば、上記第1実施形態では、搬送物として燃料支持金具、制御棒及び制御棒案内管、あるいは燃料集合体燃料に適用した例について説明したが、これらに限定することなく、搬送物として炉内構造物を適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…水中搬送装置、2…浮力調整部、3…水中移動部、4…搬送物把持部、5…燃料支持金具、6…制御棒案内管、7…上下スラスタ、8…水平スラスタ、9…グリッドガイド、10…耐圧容器、11…圧縮空気ボンベ、12…バルブ操作部、13…注入バルブ、14…注入口、15…バルブ操作部、16…吐出バルブ(空気制御弁)、17…空気吐出口、18…バルブ操作部、19…吐出バルブ(水制御弁)、20…水吐出口、21…フロート式液面計(水位検出部材)、22…水面、23…水面、24…位置検出センサ、25…水面、26…位置検出センサ、30…原子炉、31…上部格子板、32…炉心支持板、35…燃料プール、36…ラック、37…炉壁、38…プール壁、40…保護リング、41…ワイヤドラム、42…ワイヤ、45,45a,45b,45c,45d…水吐出口、46…水流、47a,47b,47c,47d…反力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の炉水中を遊泳して搬送物を搬送する水中搬送装置であって、
前記炉水中における浮力を調整可能とする浮力調整部と、
前記原子炉の上下方向及び水平方向に推力を生じさせるとともに、鉛直軸周りに自転可能とする水中移動部と、
前記搬送物を把持する搬送物把持部と、
前記搬送物を把持した状態で前記搬送物を保護する保護部材と、
を備えることを特徴とする水中搬送装置。
【請求項2】
前記浮力調整部は、
内部に水を貯留可能な耐圧容器と、
前記耐圧容器内に圧縮空気を供給可能な圧縮空気ボンベと、
前記耐圧容器内部の空気の排出と停止を切替える空気制御弁と、
前記耐圧容器内部の水の排出と停止を切替える水制御弁と、
前記耐圧容器内部の水位を検出する水位検出部材と、を備え、
前記搬送物を把持しているか否かに基づき、少なくとも2段階に水位を調整して浮力を調整可能としたことを特徴とする請求項1に記載の水中搬送装置。
【請求項3】
前記水中移動部は、上下移動用の上下スラスタと、水平移動用の水平スラスタとを有し、炉水中を3次元方向に移動可能としたことを特徴とする請求項1に記載の水中搬送装置。
【請求項4】
前記保護部材は、円環状の構造物から形成され、ワイヤにより吊り下げられて搬送する前記搬送物を把持した状態で前記搬送物の下端まで下降し、この搬送物の下端を囲むことを特徴とする請求項1に記載の水中搬送装置。
【請求項5】
前記保護部材は、上下方向に伸縮可能な蛇腹状の円筒カーテンであって、前記搬送物を把持した状態で前記搬送物の下端まで伸ばしたとき、前記搬送物全体を覆うことを特徴とする請求項1に記載の水中搬送装置。
【請求項6】
前記搬送物把持部は、原子炉内の上部格子板を通過する時のガイド部分となる長尺構造物に設けられ、前記長尺構造物の側面から少なくとも水平4方向に水流を噴出可能としたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の水中搬送装置。
【請求項7】
前記水中移動部は、その制御情報を無線で地上局側と通信を行い、水中での位置情報に基づいて前記水中移動部を制御して移動可能としたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の水中搬送装置。
【請求項8】
原子炉の炉水中を遊泳して搬送物を搬送する水中搬送方法であって、
前記炉水中における浮力を調整する浮力調整ステップと、
前記原子炉の上下方向及び水平方向に推力を生じさせるとともに、鉛直軸周りに自転する水中移動ステップと、
前記搬送物を把持する搬送物把持ステップと、を有し、
前記搬送物を把持した状態で前記水中移動するとき、前記搬送物を保護することを特徴とする水中搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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