水中漂流物の移動制御構造物、移動制御方法及びこれらに使用可能な構造体
【課題】流入防止対象域の外へ水中漂流物を自然エネルギーにより移送可能でかつ運用コストが基本的に発生しない水中漂流物の移動制御構造物、移動制御方法及びこれらに用いる構造体を提供する。
【解決手段】この水中漂流物の移動制御構造物は、緩やかな勾配面11と急な勾配面12とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱10を短手方向に複数並べて構成される構造体20を水底に設置し、構造体20を三角柱10の長手方向に対する法線が波の進行方向に対して斜めになるように位置決めすることで、波によるエネルギーによって水中漂流物が流入防止対象域から外れる方向に移動するような水流を発生させる。
【解決手段】この水中漂流物の移動制御構造物は、緩やかな勾配面11と急な勾配面12とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱10を短手方向に複数並べて構成される構造体20を水底に設置し、構造体20を三角柱10の長手方向に対する法線が波の進行方向に対して斜めになるように位置決めすることで、波によるエネルギーによって水中漂流物が流入防止対象域から外れる方向に移動するような水流を発生させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中漂流物の流入を防ぐための水中漂流物の移動制御構造物、移動制御方法及びこれらに使用可能な構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
多量の冷却水を取水する発電所のある港湾などでは、コンブなどの海藻類が流入することで取水系統に影響を及ぼし、発電ロスを引き起こすことがある。このような海藻類などの水中漂流物の流入を防ぐために、特許文献1〜3の方法や装置が提案されているが、ネットやスクリーン等を用いて漂流物を回収する方法・装置であるため回収・処分費が必要となる。また、特許文献4〜7に提案された方法や装置は水流や気泡などによって流入を防ぐものであるが、水流・気泡を発生させる動力が別途必要となる。
【0003】
また、特許文献8は海底に構造体を設置することで沖側から岸側に砂を輸送し、海岸侵食を防ぐものであり、この構造体は砂れんに近似した「歪み砂れん」により構造体法線の直角方向に砂を輸送させるものである。特許文献9は、漂砂を制御するために、海岸方向に上り勾配に傾斜した複数の傾斜板からなる砂防止構造物を提案し、砂防止構造物の長手方向が海流の流れ方向と直交する向きになるように海底に設置し、沖側への砂流出を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−209667号公報
【特許文献2】特開2000−73336号公報
【特許文献3】特開2001−140245号公報
【特許文献4】特開平10−298964号公報
【特許文献5】特開2000−204537号公報
【特許文献6】特開2000−290966号公報
【特許文献7】特開2003−47955号公報
【特許文献8】特許第3333431号公報
【特許文献9】特開2003−342930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
海藻類などの水中漂流物の港湾への流入による被害を防ぐため、何らかの方法や装置で水中漂流物を回収すると、その処分に多大な費用を必要とする。また、水流等を発生させて漂流物を別の区域へ移送することは可能であるが、その動力の発生に多くのコストが掛かってしまう。
【0006】
したがって、回収・処分費や動力コストなどの多大な費用を掛けずに水中漂流物の移動を制御し、流入を防ぎたい区域の外へ漂流物を移送する方法・手段が求められている。海藻などの水中漂流物を回収せずに流入を防ぐためには、流入を防ぎたい区域の外へ水中漂流物を移送する必要がある。また、人工的な動力を用いることなく水中漂流物の移動を制御するには、波や潮流といった自然エネルギーを活用することが必要である。
【0007】
本発明は、流入防止対象域の外へ水中漂流物を自然エネルギーにより移送可能でかつ運用コストが基本的に発生しない水中漂流物の移動制御構造物、移動制御方法及びこれらに用いる構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための水中漂流物の移動制御構造物は、緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べて構成される構造体を水底に設置し、前記構造体を前記三角柱の長手方向に対する法線が波の進行方向に対して斜めになるように位置決めすることで、波によるエネルギーによって水中漂流物が流入防止対象域から外れる方向に移動するような水流を発生させることを特徴とする。
【0009】
この水中漂流物の移動制御構造物によれば、緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べた構造体を水底に設置し、波エネルギーによって流れを発生させ、その流れによって水中漂流物の移動を制御し、水中漂流物を流入防止対象域から外れる方向に移動させることができる。自然エネルギーである波エネルギーを用いるので、費用は構造体の建設コストのみであり、運用コストは基本的に発生せずに経済的である。
【0010】
上記水中漂流物の移動制御構造物において前記三角柱の非対称断面の高さtと前記水底側の一辺の幅uとの比(t:u)が1:2〜1:1の範囲内であることが好ましい。
【0011】
前記構造体は、前記複数の三角柱を水底に直接設置するか、または、水底に形成されたマウンドに設置することが好ましい。なお、前記構造体が水底側に板状部を有し、その板状部上に複数の三角柱が一体に形成されて水底に設置されるようにしてもよい。
【0012】
なお、前記構造体を、例えば、港湾防波堤の出入口近くの水底に設置する場合、前記水流が前記出入口から前記防波堤の外の方向に向かうように位置決めることが好ましい。前記構造体を波の進行方向に対して斜めに設置することで、波の進行方向に対して直角方向成分の流れを発生させることができる。
【0013】
上記目的を達成するための水中漂流物の移動制御方法は、緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べて構成された構造体を水底に設置し、前記構造体を前記三角柱の長手方向に対する法線が波の進行方向に対して斜めになるように位置決めすることで、波によるエネルギーによって水流を発生させて水中漂流物を流入防止対象域から外れる方向に移動させることを特徴とする。
【0014】
この水中漂流物の移動制御方法によれば、緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べた構造体を水底に設置し、波エネルギーによって流れを発生させ、その流れによって水中漂流物の移動を制御し、水中漂流物を流入防止対象域から外れる方向に移動させることができる。自然エネルギーである波エネルギーを用いるので、費用は構造体の建設コストのみであり、運用コストは基本的に発生しないので、経済的である。
【0015】
上記水中漂流物の移動制御方法において前記三角柱の非対称断面の高さtと前記水底側の一辺の幅uとの比(t:u)が1:2〜1:1の範囲内であることが好ましい。
【0016】
前記水流として前記波の進行方向に対して直角方向成分の流れが形成されることが好ましい。
【0017】
なお、前記構造体を、例えば、港湾防波堤の出入口近くの水底に設置する場合、前記水流が前記出入口から前記防波堤の外の方向に向かうように位置決めることが好ましい。前記構造体を波の進行方向に対して斜めに設置することで、波の進行方向に対して直角方向成分の流れを発生させることができる。
【0018】
上記目的を達成するための構造体は、上記水中漂流物の移動制御構造物、または、上記水中漂流物の移動制御方法の前記構造体として使用可能であることを特徴とする。
【0019】
この構造体によれば、緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べて水底に設置し、波エネルギーによって流れを発生させ、その流れによって水中漂流物の移動を制御し、水中漂流物を流入防止対象域から外れる方向に移動させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水中漂流物の移動制御構造物、移動制御方法及びこれらに用いる構造体によれば、水中漂流物を流入防止対象域の外へ自然エネルギーである波エネルギーにより移動させることができ、運用コストが基本的に発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態における三角柱を示す平面図(a)、正面図(b)及び側面図(c)である。
【図2】図1の三角柱を複数並べて構成された本実施形態による構造体を示す斜視図である。
【図3】波による水粒子の軌道を示す模式図である。
【図4】本実施形態の構造体における水粒子の移動を模式的に示す平面図である。
【図5】本実施形態の構造体による水中漂流物の移動方向を模式的に示す平面図である。
【図6】従来の構造体による砂の移動方向を模式的に示す平面図である。
【図7】本実施形態において図2の構造体を港湾の出入口に設置し水中漂流物の移動制御構造物とした例を示す平面図である。
【図8】従来の港湾における水中漂流物の流れを示す図である。
【図9】実験例1において水中に投入されたトレーサーの軌道を示す平面図である。
【図10】比較例において水中に投入されたトレーサーの軌道を示す平面図である。
【図11】実験例1において計測した、波の進行方向に対して直角方向の流速値の時系列変化を示す図である。
【図12】比較例において計測した、波の進行方向に対して直角方向の流速値の時系列変化を示す図である。
【図13】本実施形態において三角柱の断面形状の変形例を示す図1(c)と同様の側面図である。
【図14】実験例2で設置した模型を概略的に示す上面図である。
【図15】実験例2の模型で鉛直方向の流速測定位置を示す図である。
【図16】実験例2の三角柱の側断面図であり、(a)は三角柱の高さtと底面の幅uとの比(t:u)が1:2、(b)は1:1.5、(c)は1:1である。
【図17】(a)は、実験例2で計測した、波高H=1.0mに対する沿岸方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフであり、(b)は、同じく岸沖方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフである。
【図18】(a)は、実験例2で計測した、波高H=4.0mに対する沿岸方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフであり、(b)は、同じく岸沖方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態における三角柱を示す平面図(a)、正面図(b)及び側面図(c)である。図2は図1の三角柱を複数並べて構成された本実施形態による構造体を示す斜視図である。
【0023】
図1(a)〜(c)に示すように、三角柱10は、第1面11と第2面12と第3面13とを有し細長く延びている。第1面11は比較的緩やかな平面状の勾配面からなり、第2面12は比較的急な平面状の勾配面からなり、三角柱10は非対称断面となっている。すなわち、三角柱10では、図1(c)のように、第3面13と比較的急な勾配面である第2面12とが直角に交差し、三角柱10の断面は、これらの面12,13を直角に交差する二辺とし、比較的緩やかな勾配面である第1面11を斜辺とする直角三角形となっている。
【0024】
また、三角柱10は、コンクリートや鉄鋼材料などから作製することができ、複雑な形状ではなく比較的単純な形状であるので、三角柱10の製造は容易であり、製造コストがかからず有利である。
【0025】
図2のように、本実施形態による構造体20は、複数の三角柱10を備え、各三角柱10が各第3面13を底面とし、三角柱10の短手方向に並べられて構成されている。すなわち、構造体20は、複数の三角柱10を長手方向に平行に並べて構成され、構造体20の上面が比較的緩やかな勾配面である第1面11からなり、下面が第3面13により平面になっており、また、比較的急な勾配面である第2面12が下面に対し直立している。
【0026】
上述のように、構造体20の上面において、複数の第1面11が鉛直方向に対し緩やかに傾斜し、複数の第2面が直立しており、その断面形状が鋸歯状になっている。
【0027】
上述のような構造体20を第3面13からなる下面が水底側になるように水底に設置し、その際、構造体20を三角柱10の長手方向に対する法線が波の進行方向に対して斜めになるように位置決めることで、水中漂流物の移動制御構造物を水底に構築することができる。なお、移動制御構造物は、水底に設置される際に、公知の固定手段により水底に適宜固定されるようにしてもよい。
【0028】
構造体20を水底面に設置する方法としては、複数の三角柱10を図2のように並べるようにして直接設置してよく、また、水底にマウンドを形成しそのマウンド面上に設置してもよい。また、図2の破線で示すように、複数の三角柱10を板状部21上に並べて設置してもよく、また、複数の三角柱10と板状部21とを一体に形成した構造体として設置するようにしてもよい。
【0029】
次に、水底に設置された構造体20による水流の発生作用について図3,図4を参照して説明する。図3は波による水粒子の軌道を示す模式図である。図4は本実施形態の構造体における水粒子の移動を模式的に示す平面図である。
【0030】
通常、波が通過すると水粒子は、図3のように楕円軌道で移動する。図3で、波の山mが水粒子の軌道m’(上半分)に対応し、波の谷nが軌道n’(下半分)に対応する。水粒子は、このように移動するため、波の進行方向Xに移動するものの波の進行方向Xに対して直角方向には移動しない。したがって、この構造体を設置しない従来の場合には、水粒子は波の進行方向Xにしか移動しない。
【0031】
これに対し、図4に示すように、構造体20を三角柱10の長手方向に対する法線j(一点鎖線で示す)が波の進行方向Xに対して斜めになるように設置すると、水粒子は波の進行方向Xに対してほぼ直角方向Yへ移動する。すなわち、水粒子は構造体20において比較的急な勾配面である第2面12については波の入射角とほぼ同じ角度で乗り越える。他方、比較的緩やかな勾配面である第1面11については面の傾斜に沿って乗り越えていく。ここで、法線jとは、三角柱10の長手方向に平行な直線に対し垂直な線をいう。
【0032】
図4のように、水粒子が図3の波の山mで波の進行方向Xと同じ方向aへと構造体20に入ると、急な勾配面12を方向aに乗り越えて移動し、波の谷nで波の進行方向Xとほぼ反対方向bへ緩やかな勾配面11に沿って乗り越えて移動する。
【0033】
以上のように、水粒子は、波の進行方向Xと同じ方向a、その反対方向bへと移動し、続いて、同じように、方向c、その反対方向dへと、方向e、その反対方向fへと、方向g、その反対方向hへと移動を繰り返し、平面的にジグザグ運動する。すなわち、図4のように、水粒子は、図3の波の山mで方向a、c、e、gへと移動し、波の谷nでハッチングにより示す反対方向b、d、f、hへと移動することで、全体として平面的にジグザグ運動し、波の進行方向Xに対して直角方向成分の流れを発生させることができ、結果的に、波の進行方向Xに対してほぼ直角方向Yへ移動することになる。
【0034】
上述のようにして、構造体20を波の進行方向Xに対し斜めに水底Sに設置することで、波のエネルギーによって水粒子が構造体の第1面11,第2面12を乗り越えジグザグ運動し、波の進行方向Xに対してほぼ直角方向Yへ移動することにより、波の進行方向Xに対しほぼ直角方向Yに水流を発生させることができる。
【0035】
なお、構造体20を波の進行方向Xに対し斜めに水底Sに設置する際に、波の進行方向Xが構造体20の急な勾配面12側に向くように設置する。
【0036】
また、図1(c)のように三角柱10の第3面(底面)13から頂点までの高さtと第3面(底面)13の幅uとの比(t:u)は、1:2〜1:1の範囲内であることが好ましい。
【0037】
次に、水底に設置された構造体20による水中漂流物の移動方向について図5,図6を参照して説明する。図5は本実施形態の構造体による水中漂流物の移動方向を模式的に示す平面図である。図6は従来の構造体による砂の移動方向を模式的に示す平面図である。
【0038】
上述の図4のように、構造体20を三角柱10の長手方向に対する法線が波の進行方向Xに対して斜めになるように設置することで、波の進行方向Xに対しほぼ直角方向Yに水流を発生させることができる。したがって、かかる水流によって、図5のように、海藻類などの水中漂流物が波の進行方向Xに沿って流されてきたとき、かかる水中漂流物を波の進行方向Xに対しほぼ直角方向Yに移動させることができ、直角方向Yが水中漂流物の移動方向となる。
【0039】
なお、例えば、特許文献8のような従来例は、海底に構造体を設置することで沖側から岸側に砂を輸送し海岸侵食を防ぐものである。すなわち、従来例の構造体は砂れんに近似した「歪み砂れん」により、図6のように、構造体法線の直角方向に砂を移動させる。
【0040】
次に、本実施形態の水中漂流物の移動制御構造物の具体例を図7,図8を参照して説明する。図7は本実施形態において図2の構造体を港湾の出入口に設置し水中漂流物の移動制御構造物とした例を示す平面図である。図8は従来の港湾における水中漂流物の流れを示す図である。
【0041】
図7のように、発電所等の港湾30が主防波堤31と、副防波堤32とから構成され、主防波堤31と副防波堤32との間に船舶等の出入口33があり、岸壁に発電所の取水口34がある。このような港湾30において、出入口33近くの水底に波の進行方向Xに対し構造体20を図5のように構造体20の長手方向の法線が斜めになるように設置することで、港湾30の出入口33に水中漂流物の移動制御構造物を構築する。
【0042】
上述のように、構造体20により波の進行方向Xに対しほぼ直角方向Yに水流を発生させることができるが、ここで、図7のように、海藻類などの水中漂流物が波の進行方向Xに対し斜め方向Pから流れてきた場合、直角方向Yへの水流によって水中漂流物は方向Pに対しほぼ直角方向Qへと移動し、副防波堤32の外へと流れる。
【0043】
上述のようにして、構造体20を波の進行方向Xに対して斜めに設置することで、波の進行方向に対してほぼ直角方向に流れを発生させることができるので、水中漂流物を港湾30の外へと移送でき、取水口34に海藻類などの水中漂流物が流入することを未然に防止できる。このため、多量の冷却水を取水する発電所の港湾30において取水口34からの取水系統に海藻類などの水中漂流物の影響が及ぶことがなく、発電ロスを引き起こすことがない。
【0044】
これに対し、図8のように、水中漂流物の移動制御構造物が構築されていない従来の場合、海藻類などの水中漂流物が方向Pから流れてきたとき、方向Xからの波によって出入口33から港湾30の中に流入して入り込み、取水口34に水中漂流物が流入してしまい、発電所港湾において取水口34からの取水系統に悪影響を及ぼしてしまう。
【0045】
海藻類などの水中漂流物は波や潮流などの流れによって移動するので、図7のように流入を防ぎたい区域外の方向へ流れを発生させれば、漂流物の流入を防ぐことができる。また、波は恒常的に来襲するため、自然エネルギーである波エネルギーによって流れを発生させれば効率的に漂流物の移動を制御することが可能となる。
【0046】
本実施形態は、上述のように、流入を防ぎたい区域の外へ水中漂流物を移送するために、移送する動力として波エネルギーを用い、水底に図2の構造体20を設置し、波エネルギーによって流れを発生させ、その流れによって漂流物の移動を制御するものである。図2の構造体20を水底に設置するだけでよいので、費用は構造体・構造物の建設コストのみであり、運用コストは基本的に発生しない。
【0047】
本実施形態によれば、構造体20を波の進行方向に対して斜めに設置することで、波の進行方向に対してほぼ直角方向の流れを発生させ、この流れによって水中漂流物を、流入を防ぎたい区域の外へと漂流物を移送することが可能になる。その結果、海藻類などの水中漂流物の回収・処分量を減らすことができ、回収や処分のコストや手間を省くことができる。
【実験例1】
【0048】
本発明の効果を確認するため、水理模型実験を実施した。確認方法としては、トレーサー(水粒子の軌道を可視化するもの)による軌跡の確認と流速計による流れの大きさ・方向の把握である。
【0049】
実験例1として、三角柱を水槽の底面に5本並べて構造体とし、人工的に波を発生させ、トレーサーを水中に投入して水流の軌跡を確認し、流速計により流れの大きさ・方向を確認した。また、比較例として構造体を設置しない場合についても同様の実験を行った。なお、実験は現地で想定されるスケールの1/20の縮尺で行った。
【0050】
なお、三角柱の寸法・材質、水槽の大きさは、次のとおりである。括弧内は現地で想定される実寸法であり、一例である。
・三角柱の寸法:高さ7cm(1.4m),幅11.6cm(2.32m),長さ80cm(16m)
・三角柱の材質:木材およびモルタル
・水槽の大きさ:長さ29.0m,高さ1.5m,幅1.0m
また、発生させた波は、次のとおりである。
・波高:10cm(2m),15cm(3m),20cm(4m)
・周期:2.0秒(8.9秒)
【0051】
構造体を波の進行方向に対して斜めに設置した実験例では、水槽を上部からみた図9のように、トレーサーを投入点から投入すると、全体として平面的にジグザグ運動し終点へと移動する。このように、波の進行方向に対してほぼ直角方向にトレーサーが移動することがわかる。これは、トレーサーは傾斜角が急な面(ここでは沖側の直角面)については波の入射角とほぼ同じ角度で乗り越えるが、傾斜角が緩い面(ここでは岸側の傾斜面)については面の傾斜に沿って乗り越えていくため、図4のように、水粒子は結果的に波の進行方向に対してほぼ直角方向へ移動することになるためと考えられる。
【0052】
これに対し、構造体を設置しない比較例の場合には、図10のように、トレーサーは波の進行方向にしか移動しないことがわかる。
【0053】
上記結果を定量的に把握するため、実験例において流速計によって計測した、波の進行方向に対して直角方向の流速値(構造体直上の位置)を図11に示す。流速の平均値が+10cm/sとなっており、構造体を設置することにより波の進行方向に対して直角方向に流速が発生しているのが確認できた。この流れによって水中漂流物を移送し、港湾等への漂流物の流入を防ぐことが可能となる。これに対し、構造体を設置しない比較例の場合、図12のように、流速の平均値がほぼゼロであり、波の進行方向に対して直角方向への流速は発生しない。
【0054】
また、本発明者等のさらなる実験及び検討によれば、波の進行方向に対する構造体の設置角度に関し、図4に示すように、波の進行方向Xと、構造体20の三角柱10の長手方向に対する法線jとのなす角度αが60度以下になるように構造体20を波の進行方向に対し斜めに設置することで同様の効果が得られることが判明した。
【実験例2】
【0055】
実験例2の水理模型実験では、三角柱の模型を水槽の底面に5本並べて構造体とし、人工的に波を発生させ、流速計により流れの大きさ・方向を複数の鉛直方向位置で確認した。
【0056】
図14は実験例2で設置した模型を概略的に示す上面図である。図15は実験例2の模型で鉛直方向の流速測定位置を示す図である。図16は実験例2の三角柱の側断面図であり、(a)は三角柱の高さtと底面の幅uとの比(t:u)が1:2、(b)は1:1.5、(c)は1:1である。
【0057】
〔実験条件〕
実験例2の実験条件は次のとおりである。実験縮尺は、1/25であり、括弧内は現地で想定される実寸法であり、一例である。
・水深:0.4m(10m)
・実験水槽の幅:0.6m(15m)
・波高:0.04m(1m),0.16m(4m)
・周期:1.8s,(9.0s)
【0058】
流速計測地点については、平面位置を図14の黒丸(●)で示す位置とし、鉛直方向位置を図15のように最大で7点とした(実験条件によって計測点数は変化する)。三角柱の模型は木材により作製し、三角柱の幅を2.4mとし、高さを1.2m, 1.8m, 2.4mとし、次の三つのケースとした。すなわち、図16(a)では高さtが48mm(1.2m)、底面の幅uが96mm(2.4m)、図16(b)では高さtが72mm(1.8m)、底面の幅uが96mm(2.4m)、図16(c)では高さtが96mm(2.4m)、底面の幅uが96mm(2.4m)である。なお、波向に対する模型設置角度は30度である。
【0059】
〔実験結果〕
図17(a)は、実験例2で計測した、波高H=1.0mに対する沿岸方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフであり、図17(b)は、同じく岸沖方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフである。図18(a)は、実験例2で計測した、波高H=4.0mに対する沿岸方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフであり、図18(b)は、同じく岸沖方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフである。なお、図17,図18では、全て現地スケールに換算している。また、流速の符号(+−)は、図14に示すとおりである。
【0060】
波高H=1.0mの場合、図17(a)(b)に示すように、沿岸方向と岸沖方向でともに三角柱高さ1.8mと2.4mのケースが三角柱高さ1.2mのケースよりも全体的に制御する方向に対する平均流速が大きくなっている。三角柱高さが1.8mと2.4mのケースでは底面からの高さが高い位置においても平均流速が大きく、構造体から離れた位置でも水中漂流物の動きを制御できることがわかる。
【0061】
波高H=4.0mの場合、図18(a)(b)に示すように、岸沖方向に対する平均流速はいずれのケースにおいてもほぼ変化がないが、沿岸方向に対する平均流速は三角柱高さが1.8mと2.4mのケースが1.2mのケースよりも大きい。いずれのケースでも、底面からの高さが高い位置においても平均流速が大きく、構造体から離れた位置でも水中漂流物の動きを制御できることがわかる。
【0062】
以上の結果により、三角柱高さは、実験例2の実験内では1.8mと2.4mのケースで効果がより大きいことから、1.2m以上の三角柱高さを有している構造体が有効であるといえる。
【0063】
また、三角柱の高さtと底面の幅uとの比(t:u)に関しては、1:2のケース(図16(a))よりも1:1のケース(図16(c))の平均流速が大きかったことから、1:2以上が有効であることがわかった。
【0064】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、本実施形態では、図1(c)のように三角柱10の断面形状を直角三角形としたが、図13のように、第1面11が比較的緩やかな勾配面からなり、第2面12が比較的急な勾配面からなる非対称断面形状となるように、θ1<θ2(ただし、θ1:第1面11と第3面13とのなす角度、θ2:第2面12と第3面13とのなす角度)であればよく、直角三角形には限定されない。この場合、三角柱の高さtは、図13に示すように、第3面(底面)13から頂点までの高さである。
【0065】
また、本実施形態では、本発明の効果を発揮する対象物として海藻類などを例にして説明したが、流れによって移動するものであれば、海藻類などに限定されず、例えば、砂や海底ゴミなどに対しても効果がある。
【0066】
また、本実施形態では、水中漂流物の流入防止対象域として港湾を例とし、水中漂流物の移動制御構造物を港湾の出入口に構築したが、本発明は、これに限定されず、水中漂流物の流入防止対象域はいずれであってもよく、流入防止が効果的である任意の水底に設置可能である。
【0067】
なお、本発明によれば、上述のように水底に設置した構造体により波の進行方向に対しほぼ直角方向に水流を発生させることができるが、本明細書において、「ほぼ直角方向に水流を発生させる」とは、波の進行方向に対して直角方向成分の流れを発生させることを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の水中漂流物の移動制御構造物、移動制御方法及びこれらに用いる構造体によれば、水中漂流物を流入防止対象域の外へ自然エネルギーである波エネルギーにより移動させることができるので、例えば発電所港湾の取水系統における海藻類などの水中漂流物の流入による悪影響を低減することができ、海藻類などの水中漂流物の回収・処分量を減らすことができ、回収や処分のコストや手間を省くことができる。
【符号の説明】
【0069】
10 三角柱
11 第1面、比較的緩やかな勾配面
12 第2面、比較的急な勾配面
13 第3面、底面
20 構造体
21 板状部
30 港湾
33 出入口
34 取水口
u:三角柱の底面の幅
t:三角柱の点面からの高さ
S 水底
X 波の進行方向
Y 波の進行方向Xに対し直角方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中漂流物の流入を防ぐための水中漂流物の移動制御構造物、移動制御方法及びこれらに使用可能な構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
多量の冷却水を取水する発電所のある港湾などでは、コンブなどの海藻類が流入することで取水系統に影響を及ぼし、発電ロスを引き起こすことがある。このような海藻類などの水中漂流物の流入を防ぐために、特許文献1〜3の方法や装置が提案されているが、ネットやスクリーン等を用いて漂流物を回収する方法・装置であるため回収・処分費が必要となる。また、特許文献4〜7に提案された方法や装置は水流や気泡などによって流入を防ぐものであるが、水流・気泡を発生させる動力が別途必要となる。
【0003】
また、特許文献8は海底に構造体を設置することで沖側から岸側に砂を輸送し、海岸侵食を防ぐものであり、この構造体は砂れんに近似した「歪み砂れん」により構造体法線の直角方向に砂を輸送させるものである。特許文献9は、漂砂を制御するために、海岸方向に上り勾配に傾斜した複数の傾斜板からなる砂防止構造物を提案し、砂防止構造物の長手方向が海流の流れ方向と直交する向きになるように海底に設置し、沖側への砂流出を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−209667号公報
【特許文献2】特開2000−73336号公報
【特許文献3】特開2001−140245号公報
【特許文献4】特開平10−298964号公報
【特許文献5】特開2000−204537号公報
【特許文献6】特開2000−290966号公報
【特許文献7】特開2003−47955号公報
【特許文献8】特許第3333431号公報
【特許文献9】特開2003−342930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
海藻類などの水中漂流物の港湾への流入による被害を防ぐため、何らかの方法や装置で水中漂流物を回収すると、その処分に多大な費用を必要とする。また、水流等を発生させて漂流物を別の区域へ移送することは可能であるが、その動力の発生に多くのコストが掛かってしまう。
【0006】
したがって、回収・処分費や動力コストなどの多大な費用を掛けずに水中漂流物の移動を制御し、流入を防ぎたい区域の外へ漂流物を移送する方法・手段が求められている。海藻などの水中漂流物を回収せずに流入を防ぐためには、流入を防ぎたい区域の外へ水中漂流物を移送する必要がある。また、人工的な動力を用いることなく水中漂流物の移動を制御するには、波や潮流といった自然エネルギーを活用することが必要である。
【0007】
本発明は、流入防止対象域の外へ水中漂流物を自然エネルギーにより移送可能でかつ運用コストが基本的に発生しない水中漂流物の移動制御構造物、移動制御方法及びこれらに用いる構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための水中漂流物の移動制御構造物は、緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べて構成される構造体を水底に設置し、前記構造体を前記三角柱の長手方向に対する法線が波の進行方向に対して斜めになるように位置決めすることで、波によるエネルギーによって水中漂流物が流入防止対象域から外れる方向に移動するような水流を発生させることを特徴とする。
【0009】
この水中漂流物の移動制御構造物によれば、緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べた構造体を水底に設置し、波エネルギーによって流れを発生させ、その流れによって水中漂流物の移動を制御し、水中漂流物を流入防止対象域から外れる方向に移動させることができる。自然エネルギーである波エネルギーを用いるので、費用は構造体の建設コストのみであり、運用コストは基本的に発生せずに経済的である。
【0010】
上記水中漂流物の移動制御構造物において前記三角柱の非対称断面の高さtと前記水底側の一辺の幅uとの比(t:u)が1:2〜1:1の範囲内であることが好ましい。
【0011】
前記構造体は、前記複数の三角柱を水底に直接設置するか、または、水底に形成されたマウンドに設置することが好ましい。なお、前記構造体が水底側に板状部を有し、その板状部上に複数の三角柱が一体に形成されて水底に設置されるようにしてもよい。
【0012】
なお、前記構造体を、例えば、港湾防波堤の出入口近くの水底に設置する場合、前記水流が前記出入口から前記防波堤の外の方向に向かうように位置決めることが好ましい。前記構造体を波の進行方向に対して斜めに設置することで、波の進行方向に対して直角方向成分の流れを発生させることができる。
【0013】
上記目的を達成するための水中漂流物の移動制御方法は、緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べて構成された構造体を水底に設置し、前記構造体を前記三角柱の長手方向に対する法線が波の進行方向に対して斜めになるように位置決めすることで、波によるエネルギーによって水流を発生させて水中漂流物を流入防止対象域から外れる方向に移動させることを特徴とする。
【0014】
この水中漂流物の移動制御方法によれば、緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べた構造体を水底に設置し、波エネルギーによって流れを発生させ、その流れによって水中漂流物の移動を制御し、水中漂流物を流入防止対象域から外れる方向に移動させることができる。自然エネルギーである波エネルギーを用いるので、費用は構造体の建設コストのみであり、運用コストは基本的に発生しないので、経済的である。
【0015】
上記水中漂流物の移動制御方法において前記三角柱の非対称断面の高さtと前記水底側の一辺の幅uとの比(t:u)が1:2〜1:1の範囲内であることが好ましい。
【0016】
前記水流として前記波の進行方向に対して直角方向成分の流れが形成されることが好ましい。
【0017】
なお、前記構造体を、例えば、港湾防波堤の出入口近くの水底に設置する場合、前記水流が前記出入口から前記防波堤の外の方向に向かうように位置決めることが好ましい。前記構造体を波の進行方向に対して斜めに設置することで、波の進行方向に対して直角方向成分の流れを発生させることができる。
【0018】
上記目的を達成するための構造体は、上記水中漂流物の移動制御構造物、または、上記水中漂流物の移動制御方法の前記構造体として使用可能であることを特徴とする。
【0019】
この構造体によれば、緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べて水底に設置し、波エネルギーによって流れを発生させ、その流れによって水中漂流物の移動を制御し、水中漂流物を流入防止対象域から外れる方向に移動させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水中漂流物の移動制御構造物、移動制御方法及びこれらに用いる構造体によれば、水中漂流物を流入防止対象域の外へ自然エネルギーである波エネルギーにより移動させることができ、運用コストが基本的に発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態における三角柱を示す平面図(a)、正面図(b)及び側面図(c)である。
【図2】図1の三角柱を複数並べて構成された本実施形態による構造体を示す斜視図である。
【図3】波による水粒子の軌道を示す模式図である。
【図4】本実施形態の構造体における水粒子の移動を模式的に示す平面図である。
【図5】本実施形態の構造体による水中漂流物の移動方向を模式的に示す平面図である。
【図6】従来の構造体による砂の移動方向を模式的に示す平面図である。
【図7】本実施形態において図2の構造体を港湾の出入口に設置し水中漂流物の移動制御構造物とした例を示す平面図である。
【図8】従来の港湾における水中漂流物の流れを示す図である。
【図9】実験例1において水中に投入されたトレーサーの軌道を示す平面図である。
【図10】比較例において水中に投入されたトレーサーの軌道を示す平面図である。
【図11】実験例1において計測した、波の進行方向に対して直角方向の流速値の時系列変化を示す図である。
【図12】比較例において計測した、波の進行方向に対して直角方向の流速値の時系列変化を示す図である。
【図13】本実施形態において三角柱の断面形状の変形例を示す図1(c)と同様の側面図である。
【図14】実験例2で設置した模型を概略的に示す上面図である。
【図15】実験例2の模型で鉛直方向の流速測定位置を示す図である。
【図16】実験例2の三角柱の側断面図であり、(a)は三角柱の高さtと底面の幅uとの比(t:u)が1:2、(b)は1:1.5、(c)は1:1である。
【図17】(a)は、実験例2で計測した、波高H=1.0mに対する沿岸方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフであり、(b)は、同じく岸沖方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフである。
【図18】(a)は、実験例2で計測した、波高H=4.0mに対する沿岸方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフであり、(b)は、同じく岸沖方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態における三角柱を示す平面図(a)、正面図(b)及び側面図(c)である。図2は図1の三角柱を複数並べて構成された本実施形態による構造体を示す斜視図である。
【0023】
図1(a)〜(c)に示すように、三角柱10は、第1面11と第2面12と第3面13とを有し細長く延びている。第1面11は比較的緩やかな平面状の勾配面からなり、第2面12は比較的急な平面状の勾配面からなり、三角柱10は非対称断面となっている。すなわち、三角柱10では、図1(c)のように、第3面13と比較的急な勾配面である第2面12とが直角に交差し、三角柱10の断面は、これらの面12,13を直角に交差する二辺とし、比較的緩やかな勾配面である第1面11を斜辺とする直角三角形となっている。
【0024】
また、三角柱10は、コンクリートや鉄鋼材料などから作製することができ、複雑な形状ではなく比較的単純な形状であるので、三角柱10の製造は容易であり、製造コストがかからず有利である。
【0025】
図2のように、本実施形態による構造体20は、複数の三角柱10を備え、各三角柱10が各第3面13を底面とし、三角柱10の短手方向に並べられて構成されている。すなわち、構造体20は、複数の三角柱10を長手方向に平行に並べて構成され、構造体20の上面が比較的緩やかな勾配面である第1面11からなり、下面が第3面13により平面になっており、また、比較的急な勾配面である第2面12が下面に対し直立している。
【0026】
上述のように、構造体20の上面において、複数の第1面11が鉛直方向に対し緩やかに傾斜し、複数の第2面が直立しており、その断面形状が鋸歯状になっている。
【0027】
上述のような構造体20を第3面13からなる下面が水底側になるように水底に設置し、その際、構造体20を三角柱10の長手方向に対する法線が波の進行方向に対して斜めになるように位置決めることで、水中漂流物の移動制御構造物を水底に構築することができる。なお、移動制御構造物は、水底に設置される際に、公知の固定手段により水底に適宜固定されるようにしてもよい。
【0028】
構造体20を水底面に設置する方法としては、複数の三角柱10を図2のように並べるようにして直接設置してよく、また、水底にマウンドを形成しそのマウンド面上に設置してもよい。また、図2の破線で示すように、複数の三角柱10を板状部21上に並べて設置してもよく、また、複数の三角柱10と板状部21とを一体に形成した構造体として設置するようにしてもよい。
【0029】
次に、水底に設置された構造体20による水流の発生作用について図3,図4を参照して説明する。図3は波による水粒子の軌道を示す模式図である。図4は本実施形態の構造体における水粒子の移動を模式的に示す平面図である。
【0030】
通常、波が通過すると水粒子は、図3のように楕円軌道で移動する。図3で、波の山mが水粒子の軌道m’(上半分)に対応し、波の谷nが軌道n’(下半分)に対応する。水粒子は、このように移動するため、波の進行方向Xに移動するものの波の進行方向Xに対して直角方向には移動しない。したがって、この構造体を設置しない従来の場合には、水粒子は波の進行方向Xにしか移動しない。
【0031】
これに対し、図4に示すように、構造体20を三角柱10の長手方向に対する法線j(一点鎖線で示す)が波の進行方向Xに対して斜めになるように設置すると、水粒子は波の進行方向Xに対してほぼ直角方向Yへ移動する。すなわち、水粒子は構造体20において比較的急な勾配面である第2面12については波の入射角とほぼ同じ角度で乗り越える。他方、比較的緩やかな勾配面である第1面11については面の傾斜に沿って乗り越えていく。ここで、法線jとは、三角柱10の長手方向に平行な直線に対し垂直な線をいう。
【0032】
図4のように、水粒子が図3の波の山mで波の進行方向Xと同じ方向aへと構造体20に入ると、急な勾配面12を方向aに乗り越えて移動し、波の谷nで波の進行方向Xとほぼ反対方向bへ緩やかな勾配面11に沿って乗り越えて移動する。
【0033】
以上のように、水粒子は、波の進行方向Xと同じ方向a、その反対方向bへと移動し、続いて、同じように、方向c、その反対方向dへと、方向e、その反対方向fへと、方向g、その反対方向hへと移動を繰り返し、平面的にジグザグ運動する。すなわち、図4のように、水粒子は、図3の波の山mで方向a、c、e、gへと移動し、波の谷nでハッチングにより示す反対方向b、d、f、hへと移動することで、全体として平面的にジグザグ運動し、波の進行方向Xに対して直角方向成分の流れを発生させることができ、結果的に、波の進行方向Xに対してほぼ直角方向Yへ移動することになる。
【0034】
上述のようにして、構造体20を波の進行方向Xに対し斜めに水底Sに設置することで、波のエネルギーによって水粒子が構造体の第1面11,第2面12を乗り越えジグザグ運動し、波の進行方向Xに対してほぼ直角方向Yへ移動することにより、波の進行方向Xに対しほぼ直角方向Yに水流を発生させることができる。
【0035】
なお、構造体20を波の進行方向Xに対し斜めに水底Sに設置する際に、波の進行方向Xが構造体20の急な勾配面12側に向くように設置する。
【0036】
また、図1(c)のように三角柱10の第3面(底面)13から頂点までの高さtと第3面(底面)13の幅uとの比(t:u)は、1:2〜1:1の範囲内であることが好ましい。
【0037】
次に、水底に設置された構造体20による水中漂流物の移動方向について図5,図6を参照して説明する。図5は本実施形態の構造体による水中漂流物の移動方向を模式的に示す平面図である。図6は従来の構造体による砂の移動方向を模式的に示す平面図である。
【0038】
上述の図4のように、構造体20を三角柱10の長手方向に対する法線が波の進行方向Xに対して斜めになるように設置することで、波の進行方向Xに対しほぼ直角方向Yに水流を発生させることができる。したがって、かかる水流によって、図5のように、海藻類などの水中漂流物が波の進行方向Xに沿って流されてきたとき、かかる水中漂流物を波の進行方向Xに対しほぼ直角方向Yに移動させることができ、直角方向Yが水中漂流物の移動方向となる。
【0039】
なお、例えば、特許文献8のような従来例は、海底に構造体を設置することで沖側から岸側に砂を輸送し海岸侵食を防ぐものである。すなわち、従来例の構造体は砂れんに近似した「歪み砂れん」により、図6のように、構造体法線の直角方向に砂を移動させる。
【0040】
次に、本実施形態の水中漂流物の移動制御構造物の具体例を図7,図8を参照して説明する。図7は本実施形態において図2の構造体を港湾の出入口に設置し水中漂流物の移動制御構造物とした例を示す平面図である。図8は従来の港湾における水中漂流物の流れを示す図である。
【0041】
図7のように、発電所等の港湾30が主防波堤31と、副防波堤32とから構成され、主防波堤31と副防波堤32との間に船舶等の出入口33があり、岸壁に発電所の取水口34がある。このような港湾30において、出入口33近くの水底に波の進行方向Xに対し構造体20を図5のように構造体20の長手方向の法線が斜めになるように設置することで、港湾30の出入口33に水中漂流物の移動制御構造物を構築する。
【0042】
上述のように、構造体20により波の進行方向Xに対しほぼ直角方向Yに水流を発生させることができるが、ここで、図7のように、海藻類などの水中漂流物が波の進行方向Xに対し斜め方向Pから流れてきた場合、直角方向Yへの水流によって水中漂流物は方向Pに対しほぼ直角方向Qへと移動し、副防波堤32の外へと流れる。
【0043】
上述のようにして、構造体20を波の進行方向Xに対して斜めに設置することで、波の進行方向に対してほぼ直角方向に流れを発生させることができるので、水中漂流物を港湾30の外へと移送でき、取水口34に海藻類などの水中漂流物が流入することを未然に防止できる。このため、多量の冷却水を取水する発電所の港湾30において取水口34からの取水系統に海藻類などの水中漂流物の影響が及ぶことがなく、発電ロスを引き起こすことがない。
【0044】
これに対し、図8のように、水中漂流物の移動制御構造物が構築されていない従来の場合、海藻類などの水中漂流物が方向Pから流れてきたとき、方向Xからの波によって出入口33から港湾30の中に流入して入り込み、取水口34に水中漂流物が流入してしまい、発電所港湾において取水口34からの取水系統に悪影響を及ぼしてしまう。
【0045】
海藻類などの水中漂流物は波や潮流などの流れによって移動するので、図7のように流入を防ぎたい区域外の方向へ流れを発生させれば、漂流物の流入を防ぐことができる。また、波は恒常的に来襲するため、自然エネルギーである波エネルギーによって流れを発生させれば効率的に漂流物の移動を制御することが可能となる。
【0046】
本実施形態は、上述のように、流入を防ぎたい区域の外へ水中漂流物を移送するために、移送する動力として波エネルギーを用い、水底に図2の構造体20を設置し、波エネルギーによって流れを発生させ、その流れによって漂流物の移動を制御するものである。図2の構造体20を水底に設置するだけでよいので、費用は構造体・構造物の建設コストのみであり、運用コストは基本的に発生しない。
【0047】
本実施形態によれば、構造体20を波の進行方向に対して斜めに設置することで、波の進行方向に対してほぼ直角方向の流れを発生させ、この流れによって水中漂流物を、流入を防ぎたい区域の外へと漂流物を移送することが可能になる。その結果、海藻類などの水中漂流物の回収・処分量を減らすことができ、回収や処分のコストや手間を省くことができる。
【実験例1】
【0048】
本発明の効果を確認するため、水理模型実験を実施した。確認方法としては、トレーサー(水粒子の軌道を可視化するもの)による軌跡の確認と流速計による流れの大きさ・方向の把握である。
【0049】
実験例1として、三角柱を水槽の底面に5本並べて構造体とし、人工的に波を発生させ、トレーサーを水中に投入して水流の軌跡を確認し、流速計により流れの大きさ・方向を確認した。また、比較例として構造体を設置しない場合についても同様の実験を行った。なお、実験は現地で想定されるスケールの1/20の縮尺で行った。
【0050】
なお、三角柱の寸法・材質、水槽の大きさは、次のとおりである。括弧内は現地で想定される実寸法であり、一例である。
・三角柱の寸法:高さ7cm(1.4m),幅11.6cm(2.32m),長さ80cm(16m)
・三角柱の材質:木材およびモルタル
・水槽の大きさ:長さ29.0m,高さ1.5m,幅1.0m
また、発生させた波は、次のとおりである。
・波高:10cm(2m),15cm(3m),20cm(4m)
・周期:2.0秒(8.9秒)
【0051】
構造体を波の進行方向に対して斜めに設置した実験例では、水槽を上部からみた図9のように、トレーサーを投入点から投入すると、全体として平面的にジグザグ運動し終点へと移動する。このように、波の進行方向に対してほぼ直角方向にトレーサーが移動することがわかる。これは、トレーサーは傾斜角が急な面(ここでは沖側の直角面)については波の入射角とほぼ同じ角度で乗り越えるが、傾斜角が緩い面(ここでは岸側の傾斜面)については面の傾斜に沿って乗り越えていくため、図4のように、水粒子は結果的に波の進行方向に対してほぼ直角方向へ移動することになるためと考えられる。
【0052】
これに対し、構造体を設置しない比較例の場合には、図10のように、トレーサーは波の進行方向にしか移動しないことがわかる。
【0053】
上記結果を定量的に把握するため、実験例において流速計によって計測した、波の進行方向に対して直角方向の流速値(構造体直上の位置)を図11に示す。流速の平均値が+10cm/sとなっており、構造体を設置することにより波の進行方向に対して直角方向に流速が発生しているのが確認できた。この流れによって水中漂流物を移送し、港湾等への漂流物の流入を防ぐことが可能となる。これに対し、構造体を設置しない比較例の場合、図12のように、流速の平均値がほぼゼロであり、波の進行方向に対して直角方向への流速は発生しない。
【0054】
また、本発明者等のさらなる実験及び検討によれば、波の進行方向に対する構造体の設置角度に関し、図4に示すように、波の進行方向Xと、構造体20の三角柱10の長手方向に対する法線jとのなす角度αが60度以下になるように構造体20を波の進行方向に対し斜めに設置することで同様の効果が得られることが判明した。
【実験例2】
【0055】
実験例2の水理模型実験では、三角柱の模型を水槽の底面に5本並べて構造体とし、人工的に波を発生させ、流速計により流れの大きさ・方向を複数の鉛直方向位置で確認した。
【0056】
図14は実験例2で設置した模型を概略的に示す上面図である。図15は実験例2の模型で鉛直方向の流速測定位置を示す図である。図16は実験例2の三角柱の側断面図であり、(a)は三角柱の高さtと底面の幅uとの比(t:u)が1:2、(b)は1:1.5、(c)は1:1である。
【0057】
〔実験条件〕
実験例2の実験条件は次のとおりである。実験縮尺は、1/25であり、括弧内は現地で想定される実寸法であり、一例である。
・水深:0.4m(10m)
・実験水槽の幅:0.6m(15m)
・波高:0.04m(1m),0.16m(4m)
・周期:1.8s,(9.0s)
【0058】
流速計測地点については、平面位置を図14の黒丸(●)で示す位置とし、鉛直方向位置を図15のように最大で7点とした(実験条件によって計測点数は変化する)。三角柱の模型は木材により作製し、三角柱の幅を2.4mとし、高さを1.2m, 1.8m, 2.4mとし、次の三つのケースとした。すなわち、図16(a)では高さtが48mm(1.2m)、底面の幅uが96mm(2.4m)、図16(b)では高さtが72mm(1.8m)、底面の幅uが96mm(2.4m)、図16(c)では高さtが96mm(2.4m)、底面の幅uが96mm(2.4m)である。なお、波向に対する模型設置角度は30度である。
【0059】
〔実験結果〕
図17(a)は、実験例2で計測した、波高H=1.0mに対する沿岸方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフであり、図17(b)は、同じく岸沖方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフである。図18(a)は、実験例2で計測した、波高H=4.0mに対する沿岸方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフであり、図18(b)は、同じく岸沖方向の平均流速の鉛直分布を示すグラフである。なお、図17,図18では、全て現地スケールに換算している。また、流速の符号(+−)は、図14に示すとおりである。
【0060】
波高H=1.0mの場合、図17(a)(b)に示すように、沿岸方向と岸沖方向でともに三角柱高さ1.8mと2.4mのケースが三角柱高さ1.2mのケースよりも全体的に制御する方向に対する平均流速が大きくなっている。三角柱高さが1.8mと2.4mのケースでは底面からの高さが高い位置においても平均流速が大きく、構造体から離れた位置でも水中漂流物の動きを制御できることがわかる。
【0061】
波高H=4.0mの場合、図18(a)(b)に示すように、岸沖方向に対する平均流速はいずれのケースにおいてもほぼ変化がないが、沿岸方向に対する平均流速は三角柱高さが1.8mと2.4mのケースが1.2mのケースよりも大きい。いずれのケースでも、底面からの高さが高い位置においても平均流速が大きく、構造体から離れた位置でも水中漂流物の動きを制御できることがわかる。
【0062】
以上の結果により、三角柱高さは、実験例2の実験内では1.8mと2.4mのケースで効果がより大きいことから、1.2m以上の三角柱高さを有している構造体が有効であるといえる。
【0063】
また、三角柱の高さtと底面の幅uとの比(t:u)に関しては、1:2のケース(図16(a))よりも1:1のケース(図16(c))の平均流速が大きかったことから、1:2以上が有効であることがわかった。
【0064】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、本実施形態では、図1(c)のように三角柱10の断面形状を直角三角形としたが、図13のように、第1面11が比較的緩やかな勾配面からなり、第2面12が比較的急な勾配面からなる非対称断面形状となるように、θ1<θ2(ただし、θ1:第1面11と第3面13とのなす角度、θ2:第2面12と第3面13とのなす角度)であればよく、直角三角形には限定されない。この場合、三角柱の高さtは、図13に示すように、第3面(底面)13から頂点までの高さである。
【0065】
また、本実施形態では、本発明の効果を発揮する対象物として海藻類などを例にして説明したが、流れによって移動するものであれば、海藻類などに限定されず、例えば、砂や海底ゴミなどに対しても効果がある。
【0066】
また、本実施形態では、水中漂流物の流入防止対象域として港湾を例とし、水中漂流物の移動制御構造物を港湾の出入口に構築したが、本発明は、これに限定されず、水中漂流物の流入防止対象域はいずれであってもよく、流入防止が効果的である任意の水底に設置可能である。
【0067】
なお、本発明によれば、上述のように水底に設置した構造体により波の進行方向に対しほぼ直角方向に水流を発生させることができるが、本明細書において、「ほぼ直角方向に水流を発生させる」とは、波の進行方向に対して直角方向成分の流れを発生させることを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の水中漂流物の移動制御構造物、移動制御方法及びこれらに用いる構造体によれば、水中漂流物を流入防止対象域の外へ自然エネルギーである波エネルギーにより移動させることができるので、例えば発電所港湾の取水系統における海藻類などの水中漂流物の流入による悪影響を低減することができ、海藻類などの水中漂流物の回収・処分量を減らすことができ、回収や処分のコストや手間を省くことができる。
【符号の説明】
【0069】
10 三角柱
11 第1面、比較的緩やかな勾配面
12 第2面、比較的急な勾配面
13 第3面、底面
20 構造体
21 板状部
30 港湾
33 出入口
34 取水口
u:三角柱の底面の幅
t:三角柱の点面からの高さ
S 水底
X 波の進行方向
Y 波の進行方向Xに対し直角方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べて構成される構造体を水底に設置し、
前記構造体を前記三角柱の長手方向に対する法線が波の進行方向に対して斜めになるように位置決めすることで、波によるエネルギーによって水中漂流物が流入防止対象域から外れる方向に移動するような水流を発生させることを特徴とする水中漂流物の移動制御構造物。
【請求項2】
前記三角柱の非対称断面の高さtと前記水底側の一辺の幅uとの比(t:u)が1:2〜1:1の範囲内である請求項1に記載の水中漂流物の移動制御構造物。
【請求項3】
前記構造体は、前記複数の三角柱を水底に直接設置するか、または、水底に形成されたマウンドに設置する請求項1または2に記載の水中漂流物の移動制御構造物。
【請求項4】
緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べて構成される構造体を水底に設置し、
前記構造体を前記三角柱の長手方向に対する法線が波の進行方向に対して斜めになるように位置決めすることで、波によるエネルギーによって水流を発生させて水中漂流物を流入防止対象域から外れる方向に移動させることを特徴とする水中漂流物の移動制御方法。
【請求項5】
前記三角柱の非対称断面の高さtと前記水底側の一辺の幅uとの比(t:u)が1:2〜1:1の範囲内である請求項4に記載の水中漂流物の移動制御方法。
【請求項6】
前記水流として前記波の進行方向に対して直角方向成分の流れが形成される請求項4または5に記載の水中漂流物の移動制御方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水中漂流物の移動制御構造物、または、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の水中漂流物の移動制御方法の前記構造体として使用可能であることを特徴とする構造体。
【請求項1】
緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べて構成される構造体を水底に設置し、
前記構造体を前記三角柱の長手方向に対する法線が波の進行方向に対して斜めになるように位置決めすることで、波によるエネルギーによって水中漂流物が流入防止対象域から外れる方向に移動するような水流を発生させることを特徴とする水中漂流物の移動制御構造物。
【請求項2】
前記三角柱の非対称断面の高さtと前記水底側の一辺の幅uとの比(t:u)が1:2〜1:1の範囲内である請求項1に記載の水中漂流物の移動制御構造物。
【請求項3】
前記構造体は、前記複数の三角柱を水底に直接設置するか、または、水底に形成されたマウンドに設置する請求項1または2に記載の水中漂流物の移動制御構造物。
【請求項4】
緩やかな勾配面と急な勾配面とを有する非対称断面からなる所定長さの三角柱を短手方向に複数並べて構成される構造体を水底に設置し、
前記構造体を前記三角柱の長手方向に対する法線が波の進行方向に対して斜めになるように位置決めすることで、波によるエネルギーによって水流を発生させて水中漂流物を流入防止対象域から外れる方向に移動させることを特徴とする水中漂流物の移動制御方法。
【請求項5】
前記三角柱の非対称断面の高さtと前記水底側の一辺の幅uとの比(t:u)が1:2〜1:1の範囲内である請求項4に記載の水中漂流物の移動制御方法。
【請求項6】
前記水流として前記波の進行方向に対して直角方向成分の流れが形成される請求項4または5に記載の水中漂流物の移動制御方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水中漂流物の移動制御構造物、または、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の水中漂流物の移動制御方法の前記構造体として使用可能であることを特徴とする構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−92643(P2012−92643A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210597(P2011−210597)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]