説明

水中環境改善素材

【課題】 沿岸海域等におけるいわゆる磯焼け、赤潮、青潮等の水中生物の生息環境を阻害する現象の発生を確実に防止することができ、しかも環境に優しい水中環境改善素材を提供すること。
【解決手段】 少なくとも黒鉛珪石と生分解性樹脂とを有効成分として有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中環境改善素材に係り、沿岸海域等におけるいわゆる磯焼け、赤潮、青潮等の水中生物の生息環境を阻害する現象の発生を防止することに好適な水中環境改善素材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、沿岸域における護岸設備の設置の進行に従って、海域の水質が汚染され、コンブ、ワカメ、アラメ、海苔等の有用海藻の付着、定着、成育が低下するといういわゆる磯焼けが発生したり、水中における栄養過多や栄養成分のバランスの崩壊によって赤潮や青潮等が発生して、水中生物の生息環境が阻害されるという問題点が発生している。この原因は、護岸設備のほとんどがアルカリ性のコンクリート製であるため、海域の水質が汚染され、海藻の付着、定着、成育が低下し、生態系が大きく変化したためと考えられる。
【0003】
この磯焼け等を防止するために、従来から鉄や鉄化合物を利用して海藻を増殖させる等の種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−127029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来方法においては、磯焼け等の防止効果が十分なものではなく、また、環境中に人工構築物が残留してしまい、環境に悪影響を与える問題点もあった。
【0006】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、沿岸海域等におけるいわゆる磯焼け、赤潮、青潮等の水中生物の生息環境を阻害する現象の発生を確実に防止することができ、しかも環境に優しい水中環境改善素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明の水中環境改善素材は、少なくとも黒鉛珪石と生分解性樹脂とを有効成分として有することを特徴とする。
【0008】
このように形成されている本発明の水中環境改善素材を水中に施設すると、生分解性樹脂の表面や樹脂中にある黒鉛珪石若しくは生分解性樹脂より離脱した黒鉛珪石が、自ら保有する環境改善機能を発揮して水質を改善させ、さらに生分解性樹脂は自然と分解されることにより環境汚染を発生させることのない環境に優しいものとなる。
【0009】
また、本発明の水中環境改善素材は、天然繊維をさらに有することを特徴とする。
【0010】
このように水中環境改善素材中に天然繊維を更に有することにより、水中環境改善素材としての強度の向上図ることができ、生分解樹脂の分解においても天然繊維であるために、環境にも優しいものとなる。
【0011】
さらに、本発明の水中環境改善素材は、長尺物、網、シート、フイルム、不織布、繊維、塗料の少なくとも1つの形態に形成されたり組み合わされていることを特徴とする。
【0012】
このように形成されている本発明の水中環境改善素材によれば、岩礁、魚礁、人工構造物等の水中環境を良好に維持すべき設置場所への設置態様を、設置場所の状態に応じて適正な形態の水中環境改善素材を選択して設置することができ、環境改善機能を十分に発揮することができる。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明の水中環境改善素材は構成され作用するものであるから、沿岸海域等におけるいわゆる磯焼け、赤潮、青潮等の水中生物の生息環境を阻害する現象の発生を確実に防止することができ、しかも環境に優しいという優れた効果を奏することができる。
【0014】
具体的には、少なくとも黒鉛珪石と生分解性樹脂とを有効成分として有する本発明の水中環境改善素材を水中に施設すると、生分解性樹脂の表面や樹脂中にある黒鉛珪石若しくは生分解性樹脂より離脱した黒鉛珪石が、自ら保有する環境改善機能を発揮して水質を改善させ、さらに生分解性樹脂は自然と分解されることにより環境汚染を発生させることのない環境に優しいものとなる。
【0015】
また、本発明の水中環境改善素材は、天然繊維を更に有することにより、水中環境改善素材としての強度の向上図ることができ、生分解樹脂の分解においても天然繊維であるために、環境にも優しいものとなる。
【0016】
さらに、本発明の水中環境改善素材は、長尺物、網、シート、フイルム、不織布、繊維、塗料の少なくとも1つの形態に形成されたり組み合わされているので、岩礁、魚礁、人工構造物等の水中環境を良好に維持すべき設置場所への設置態様を、設置場所の状態に応じて適正な形態の水中環境改善素材を選択して設置することができ、環境改善機能を十分に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次ぎに、本発明の水中環境改善素材の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明の水中環境改善素材は、少なくとも黒鉛珪石と生分解性樹脂とを有効成分として有している。
【0019】
本実施形態置に用いる生分解樹脂としては、海等に設置されて生分解するものであれば殿ようなものであってもよく、例えば、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバリレート)コポリマー等の微生物生産型、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等の石油合成型、ポリ−L乳酸等の植物合成型、澱粉+ポリビニルアルコール等の天然高分子型等を挙げることができる。
【0020】
本実施形態置に用いる黒鉛珪石としては、天然に産出される黒鉛珪石を用いるとよい。
【0021】
さらに、必要に応じて天然繊維を混入させるとよい。
【0022】
これらの有効成分の割合は、どのような割合でもよい。
【0023】
例えば、溶融状態の生分解樹脂中に黒鉛珪石を混練りさせて成型する場合には、黒鉛珪石を約3〜15重量%(好ましくは約10重量%)、生分解性樹脂を80〜97重量%(好ましくは約90重量%)、その他の不可避的混入物とするとよい。黒鉛珪石が3重量%より少なくなると黒鉛珪石による環境改善効果が少なくなり、15重量%より多くなると樹脂成形が困難となるからである。
【0024】
また、溶融混練り状態の生分解樹脂および黒鉛珪石中にさらに天然繊維を混入させる場合には、海況に応じて天然繊維を混入させるとよい。
【0025】
水中環境改善素材を環境改善位置に設置するためには、前記の溶融混練り上の生分解樹脂と黒鉛珪石さらには天然繊維を公知の方法によって樹脂成形することにより、ロープやトワインやひも状の長尺物としたり、面上のシートやフイルムとしたり、繊維とするとよい。また、トワイン等の長尺物を用いて網を製造したり、繊維を用いてフェルト状等の不織布を製造してもよい。さらに、前記有効成分全体を塗料状に形成してもよい。
【0026】
このように形成されている本実施形態の水中環境改善素材のうち、網、シート、フイルム、不織布等の面状物は、岩礁や魚礁等を覆うようにせっちするとよい。また、長尺物や繊維によっては、面状物の素材としたり、さらには、直接岩礁や魚礁に結びつけて設置するとよい。また、塗料状の水中環境改善素材は、岩礁や魚礁の表面に直接塗布してもちいるとよい。
【0027】
次ぎに、本実施形態の作用を説明する。
【0028】
種々の形態を有する本発明の水中環境改善素材は、岩礁、魚礁、人工構造物等の水中環境を良好に維持すべき設置場所への設置態様を、長尺物、網、シート、フイルム、不織布、繊維、塗料の中から当該設置場所の状態に応じて適正な形態の水中環境改善素材を選択して設置させる。
【0029】
このようにして設置場所に設置された本実施形態の水中環境改善素材においては、生分解性樹脂が自然と分解する。そして、当該生分解性樹脂の表面や樹脂中にある黒鉛珪石若しくは生分解性樹脂より離脱した黒鉛珪石が、自ら保有する環境改善機能を発揮して水質を改善させ、さらに生分解性樹脂は自然と分解されることにより環境汚染を発生させることのない環境に優しいものとなる。
【0030】
さらに説明すると、黒鉛珪石は水と直接ふれることにより、ふれた水に電子を流すことができたり、遠赤外線を発射することにより、水中生物である藻類や魚介類等の生存環境の健全化効果を十分に発揮することとなり、水質を改善させて、磯焼けや赤潮、青潮の発生を防止することができる。
【0031】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも黒鉛珪石と生分解性樹脂とを有効成分として有することを特徴とする水中環境改善素材。
【請求項2】
天然繊維をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の水中環境改善素材。
【請求項3】
水中環境改善素材は、長尺物、網、シート、フイルム、不織布、繊維、塗料の少なくとも1つの形態に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水中環境改善素材。

【公開番号】特開2006−28232(P2006−28232A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205402(P2004−205402)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【出願人】(599125571)株式会社自然環境綜合研究所 (3)
【Fターム(参考)】