説明

水中航走体の自動動作確認方法及び装置

【課題】水中航走体の動作確認に要する時間、手間、人手を削減する自動動作確認方法および装置を提供する。
【解決手段】アクチュエータ動作確認ステップSaにて、水中航走体の各スラスタと各舵に個別の動作指令を順次与えて、各スラスタと各舵に生じる動作と、対応するスラスタ回転数センサ、舵角センサの検出結果との整合性を確認する。次いで、水面動作確認ステップSbにて、各スラスタや各舵の動作と対応するセンサの検出結果との整合性がすべて確認された水中航走体を水面に浮かべて配置し、各スラスタを順に動作させて、そのときに生じる水中航走体の動作と、水中航走体に搭載してあるINS(慣性航法装置)とDVL(ドップラー式対水速度計)とGPS装置による検出結果との整合性を確認することで、各スラスタと対応するスラスタ回転数センサの同時接続間違いがなく、更に、水中航走体に搭載されたINSとDVLの向きが正しいことを確認させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬時やメンテナンス時に分解できるようにしてある水中航走体について、水中航走体を分解状態から組み立てた後、該水中航走体における各アクチュエータ及び自律航走用の各センサが正常に機能するか否かを確認するために用いる水中航走体の自動動作確認方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海底(湖底)や水中における種々の調査等を行うための手段の1つとして、自律航走する無人の水中航走体が使用されている。
【0003】
この種の水中航走体の1つとして、たとえば、巡航式の水中航走体は、水中での航走を行うために、筒型の胴体の後端側(尾部)に前後進用(推進用)のメインスラスタを備えると共に、胴体の所要個所、たとえば、胴体の後部に垂直舵(ラダー)と水平舵(エレベータ)を備えた構成としてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
又、上記水中航走体では、水中での運動性を向上させるために、胴体の前部、又は、胴体の前部と後部に水平スラスタを設ける構成や、胴体の前部、又は、胴体の前部と後部に垂直スラスタを設けてなる構成とすることがある。
【0005】
更に、上記自律航走式の水中航走体は、該水中航走体自身のロール、ピッチ及びヨーの姿勢を検出することができるようにしてある慣性航法装置(Inertial Navigation System、以下、INSと記す)と、水中航走体の対水速度を検出できるようにしてあるドップラー式対水速度計(Doppler Velocity Log、以下、DVLと記す)を、胴体の所要個所に備えた構成としてある。
【0006】
ところで、比較的大型の水中航走体では、その輸送時に胴体を複数部分に分解(分割)することが必要とされることがあり、この種の分解、組立可能な形式の水中航走体では、分解することに伴って、上記メインスラスタ、水平スラスタ、垂直スラスタを駆動するアクチュエータや、上記垂直舵や水平舵を動作させるアクチュエータ及びその動作を検知するセンサ用のケーブルに設けてあるコネクタを外すことがある。
【0007】
又、メンテナンス時にも上記各スラスタや各舵のアクチュエータ及びその動作を検知するセンサ用のケーブルのコネクタを外すことがある。
【0008】
そのため、分解状態で輸送した水中航走体を使用可能な状態となるよう組み立てる際や、メンテナンスした水中航走体を組み立てる際には、上記各スラスタ及び各舵に対応するアクチュエータ及びその動作を検知するセンサ用のケーブルのコネクタを再接続するが、このとき、物理的に接続できないコネクタ以外は接続を間違える可能性がある。
【0009】
更に、上記INSやDVLについては、メンテナンス時等に取り外すことがあり、この取り外したINSやDVLを再度取り付ける(組み付ける)ときに、向きを間違えて取り付ける可能性がある。
【0010】
更には、上記各アクチュエータのケーブルの接続や、INS及びDVLの取り付けが正しく行われているとしても、故障により上記各アクチュエータが指令値通りに動かなかったり、上記INSやDVLの計測誤差が極めて大きくなることがある。
【0011】
そのため、分解状態からの組み立てを行った水中航走体や、メンテナンスを行った後の水中航走体については、自律航走を実施させる前に、自律航走に関わる上記各アクチュエータやINSやDVLの動作確認を行なって、上記各アクチュエータについては、管制装置、たとえば、水中航走体の母船に設けてある艦上管制装置より指令を受けたアクチュエータが、指令値通りに動作することを確認すると共に、上記INSやDVLについては、水中航走体の動作に伴って上記艦上管制装置へ信号が入力され、且つ水中航走体に対するセンサの設置された向きが正しいことを確認する必要がある。
【0012】
そのため、従来、自律航走前の水中航走体の動作確認を行う場合は、各スラスタ及び各舵に対応する各アクチュエータに、個別の動作指令を与え、該動作指令を与えたアクチュエータに対応するスラスタや舵が指令された通りに動作しているか否かを、作業者が、目視、及び、スラスタや舵に取り付けてあるスラスタ回転数センサや舵角センサにより検知される値を確認するようにする手法が採られている。
【0013】
又、水中航走体に搭載されたINSの向きを確認する場合は、水中航走体にINSを取り付けた状態としてから、該水中航走体についてロール、ピッチ、ヨーをそれぞれの軸回りに変化させ、この水中航走体のロール、ピッチ、ヨーを各軸回りに動かすことに伴って上記INSによって検出される姿勢が変化することと、該姿勢のINSによる検出値が、方位磁石で検出される方位や、水中航走体を水平から傾けた角度にほぼ等しいことを、作業者が確認するようにしている。
【0014】
更に、水中航走体に搭載されたDVLの計測値の向きの確認を行う場合は、水中航走体を前後、左右、上下に曳航し、運動させた向きの速度が卓越して大きく、符号と絶対値が与えた運動にだいたい一致していることを、作業者が確認するようにしている。
【0015】
なお、複数のバルブと分岐した配管を備えた圧力系統について、該圧力系統の設計情報を基に、バルブ点検シーケンスを作成し、このバルブ点検シーケンスに基いて、上流側から下流側に向けて漸次点検対象バルブを開閉操作させると共に、該点検対象バルブの開閉状態と下流側の圧力変化状態とを確認することで、上記各バルブの点検を自動的に行う手法は従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007−1565号公報
【特許文献2】特開2009−210338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところが、分解状態からの組み立てを行った水中航走体や、メンテナンスを行った後の水中航走体について行う上記従来の自律航走実施前の動作確認手法では、各スラスタ及び各舵に対応する各アクチュエータに、個別の動作指令を与えて、該動作指令を与えられたアクチュエータに対応するスラスタや舵が、指令された通りに動作しているか否かを、作業者が、目視と、スラスタ回転数センサや舵角センサの値を基に確認する手法では、1つのアクチュエータごとに作業者が動作確認を行う必要上、時間と手間が嵩むというのが実状である。
【0018】
一方、実海域での水中航走体の運用には多くの費用がかかり、又、天候や海象によっては水中航走体の航走を実施できない場合も生じてしまうことから、上記のような水中航走体の動作確認に要する時間は最小限にすることが望まれる。
【0019】
そのために、作業者に慣れが生じてくると、動作確認に要する手間や時間を削減しようとして、複数のスラスタや舵を同時に動作させて双方が動くことだけを確認するようにしたり、スラスタについては動作の有無だけを確認して回転方向の確認を怠る虞が懸念され、このような動作確認作業を実施した場合は、コネクタの接続に間違いが生じていても、確実な検出ができなくなる虞が生じてしまう。
【0020】
又、上記水中航走体に搭載されたINSの向きを確認するための従来の手法は、INSを取り付けた状態の水中航走体について、ロール、ピッチ、ヨーをそれぞれの軸回りに動かす必要があるため、水中航走体をドーリー(台車)等に載せて実際に動かす必要が生じ、時間と手間と人手を要する。更に、大型の水中航走体の場合は、天秤のような吊具を介してクレーンで吊って動かす必要が生じるため、時間と手間と人手が更に嵩んでしまう。
【0021】
更に、上記水中航走体に搭載されたDVLの計測値の向きを確認するための従来の手法は、水上又は水中で水中航走体を曳航する必要があるため、この水中航走体の曳航のために、曳航船を要すると共に時間と手間と人手を要するというのが実状である。
【0022】
なお、特許文献2に示された手法は、複数のバルブを備えた圧力系統における各バルブの点検を自動的に行うのに有効であるが、上記したような水中航走体の各スラスタや各舵に対応するアクチュエータの動作確認と、水中航走体の実際の動きが必要とされる水中航走体に搭載したINSやDVLの向きの確認を行う処理にそのまま適用できるものではない。
【0023】
そこで、本発明は、水中航走体の各スラスタ及び各舵の動作確認、及び、水中航走体に搭載されたINSとDVLの向きの確認を確実に実施することができると共に、上記各確認作業を行うために要する時間、手間、人手を削減することができるようにするための水中航走体の自動動作確認方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、水中航走体に装備されたスラスタに、該スラスタを回転させるための動作指令を与えて、該スラスタに生じる動作と、対応するスラスタ回転数センサによる検出結果との整合性を確認するスラスタ動作確認プロセスと、水中航走体に装備された舵に、該舵を操舵させるための動作指令を与えて、該舵に生じる動作と、対応する舵角センサによる検出結果との整合性を確認する舵動作確認プロセスからなるアクチュエータ動作確認ステップを実施し、次いで、上記アクチュエータ動作確認ステップでスラスタ及び舵の動作指令に応じた動作について対応するセンサの検出結果との整合性が確認された水中航走体を水面に浮かべて配置した状態で、上記スラスタを駆動させる際に該水中航走体に生じる動作について、該水中航走体に装備してある慣性航法装置による水中航走体の姿勢変化の検出結果、及び、ドップラー式対水速度計による水中航走体の対水速度の検出結果との整合性を確認する水面動作確認ステップを行う水中航走体の自動動作確認方法とする。
【0025】
又、上記構成において、水面動作確認ステップにて、スラスタを個別に駆動させて水面に浮かべて配置した状態の水中航走体に生じる動作について、該水中航走体に装備してある慣性航法装置による水中航走体の姿勢変化の検出結果、及び、ドップラー式対水速度計による水中航走体の対水速度の検出結果との整合性を確認した後、該整合性の確認されたスラスタを駆動させた状態で舵を操舵する際に上記水中航走体に生じる動作について、該水中航走体に装備してある慣性航法装置による水中航走体の姿勢変化の検出結果、及び、ドップラー式対水速度計による水中航走体の対水速度の検出結果との整合性を確認するようにする。
【0026】
更に、上記各構成において、アクチュエータ動作確認ステップを、水中航走体を水から引き上げた状態で行うようにする。
【0027】
又、請求項4に対応して、水中航走体に装備されたスラスタに該スラスタを回転させるための動作指令を与えて、該スラスタに生じる動作と対応するスラスタ回転数センサによる検出結果との整合性を確認する機能と、水中航走体に装備された舵に該舵を操舵させるための動作指令を与えて、該舵に生じる動作と対応する舵角センサによる検出結果との整合性を確認する機能と、水中航走体を水面に浮かべて配置した状態で上記スラスタに該スラスタを駆動させるための動作指令を与えると共に、該動作指令に基く上記スラスタの動作により上記水中航走体に生じる動作について、該水中航走体に装備してある慣性航法装置による水中航走体の姿勢変化の検出結果、及び、ドップラー式対水速度計による水中航走体の対水速度の検出結果との整合性を確認する機能を有する動作確認用制御部を備えてなる構成を有する水中航走体の自動動作確認装置とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)水中航走体に装備されたスラスタに、該スラスタを回転させるための動作指令を与えて、該スラスタに生じる動作と、対応するスラスタ回転数センサによる検出結果との整合性を確認するスラスタ動作確認プロセスと、水中航走体に装備された舵に、該舵を操舵させるための動作指令を与えて、該舵に生じる動作と、対応する舵角センサによる検出結果との整合性を確認する舵動作確認プロセスからなるアクチュエータ動作確認ステップを実施し、次いで、上記アクチュエータ動作確認ステップでスラスタ及び舵の動作指令に応じた動作について対応するセンサの検出結果との整合性が確認された水中航走体を水面に浮かべて配置した状態で、上記スラスタを駆動させる際に該水中航走体に生じる動作について、該水中航走体に装備してある慣性航法装置による水中航走体の姿勢変化の検出結果、及び、ドップラー式対水速度計による水中航走体の対水速度の検出結果との整合性を確認する水面動作確認ステップを行うようにする水中航走体の自動動作確認方法、及び、水中航走体に装備されたスラスタに該スラスタを回転させるための動作指令を与えて、該スラスタに生じる動作と対応するスラスタ回転数センサによる検出結果との整合性を確認する機能と、水中航走体に装備された舵に該舵を操舵させるための動作指令を与えて、該舵に生じる動作と対応する舵角センサによる検出結果との整合性を確認する機能と、水中航走体を水面に浮かべて配置した状態で上記スラスタに該スラスタを駆動させるための動作指令を与えると共に、該動作指令に基く上記スラスタの動作により上記水中航走体に生じる動作について、該水中航走体に装備してある慣性航法装置による水中航走体の姿勢変化の検出結果、及び、ドップラー式対水速度計による水中航走体の対水速度の検出結果との整合性を確認する機能を有する動作確認用制御部を備えてなる構成を有する水中航走体の自動動作確認装置としてあるので、アクチュエータ動作確認ステップにより、スラスタ及び舵について、その動作する向きと、それぞれ対応するスラスタ回転数センサや舵角センサの検知の向きが一致していることを自動的に確認することができる。
(2)その後、水面動作確認ステップにて、上記アクチュエータ動作確認ステップで対応するスラスタ回転数センサにより動作する方向の整合性が既に確認されたスラスタを駆動した場合に水中航走体に生じる動作を、慣性航法装置による水中航走体の姿勢変化の検出結果、及び、ドップラー式対水速度計による水中航走体の対水速度の検出結果で検証することにより、上記スラスタの回転方向が動作指令に一致していることを、上記慣性航法装置とドップラー式対水速度計の検出結果を用いたクロスチェックにより確認することができる。
(3)同時に、上記慣性航法装置とドップラー式対水速度計の水中航走体に搭載された向きが正しいことを、該慣性航法装置とドップラー式対水速度計の検出結果を用いて、相互に確認することができる。
(4)したがって、上記水中航走体に装備してあるスラスタ及び舵が、動作指令に応じた動作を行うことの確認、及び、水中航走体に搭載された慣性航法装置及びドップラー式対水速度計の向きの確認を、自動的に行うことができて、上記各確認作業に要する時間、手間及び人手を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の水中航走体の自動動作確認方法の実施の一形態を示すもので、手順の概要を示す図である。
【図2】図1の自動動作確認方法におけるアクチュエータ動作確認ステップの処理手順の詳細を示すフロー図である。
【図3】図1の自動動作確認方法における水面動作確認ステップの処理手順の詳細を示すフロー図である。
【図4】図1の自動動作確認方法の実施に用いる水中航走体の自動動作確認装置の概要を示すブロック図である。
【図5】本発明の水中航走体の自動動作確認方法及び装置を適用する水中航走体の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0031】
図1乃至図5は本発明の水中航走体の自動動作確認方法及び装置の実施の一形態として、図5に示す如き水中航走体1に適用する場合の例を示すもので、以下のようにしてある。
【0032】
ここで、先ず、図5に示した水中航走体1について概説すると、該水中航走体1は、筒型の胴体2の後端側(尾部)に、前後進用(推進用)のメインスラスタ3を備えた構成としてある。又、胴体の所要個所、たとえば、上記胴体2の後端寄り個所における上部と下部に、一対の垂直舵(ラダー)4をそれぞれ備え、更に、上記胴体2の後端寄り個所の左右両側部に、左右一対の水平舵(エレベータ)5をそれぞれ備えた構成としてある。
【0033】
更に、上記胴体2の前部に、水平スラスタ(前部水平スラスタ)6を設け、胴体2の前部における上記水平スラスタ6と干渉しない位置に前部垂直スラスタ7を設けると共に、胴体2の後部に、後部垂直スラスタ8を設けた構成としてある。
【0034】
上記水中航走体1の胴体2における前後方向の中間部付近の内側には、該水中航走体1のヨー、ピッチ及びロールの各軸周りの姿勢を検出するためのINS9を装備し、更に、上記胴体2の所要個所、たとえば、胴体2の前端部寄り個所の下部に、該個所の前後方向と左右方向と上下方向への変位方向と変位速度(対水速度)を検出するためのDVL10を装備した構成としてある。
【0035】
11a,11bは胴体2の後部の上下両側に設けた垂直安定板、12は上記上部側の垂直安定板11aの上端部に設けたGPS装置である。
【0036】
上記構成としてある水中航走体1に適用する本発明の水中航走体の自動動作確認装置(以下、単に本発明の自動動作確認装置と云う)は、図4に示すように、水中航走体1の制御を行うために図示しない母船(支援船)上や陸上に装備されている管制装置13側に、動作確認用制御部14を備える。
【0037】
更に、上記動作確認用制御部14は通信手段15を、又、上記水中航走体1は通信手段16をそれぞれ備えてなる構成として、上記水中航走体1が図示しない母船上や陸上に配置されている状態、及び、上記水中航走体1が水面に浮かべて配置された状態で且つ電波の送受信が可能なときには、上記通信手段15と16の間での無線LAN等の無線通信を介して、又、上記水中航走体1が水面に浮かべて配置された状態で且つ距離や波浪等の影響により無線通信が不安定化したり無線通信が困難な場合や、水中航走体1が潜航する状態のときには、上記通信手段15と16の間での音響通信を介して、上記動作確認用制御部14と、上記水中航走体1との間で相互通信を行うことができるようにする。
【0038】
これにより、上記動作確認用制御部14と上記水中航走体1との間での上記通信手段15と16を介した相互通信により、上記動作確認用制御装置14から、上記水中航走体1のメインスラスタ3、水平スラスタ6、前部と後部の各垂直スラスタ7と8の図示しない個別のアクチュエータ、及び、垂直舵4と水平舵5の図示しない個別のアクチュエータへ、それぞれ動作指令を与えることができるようにする。
【0039】
一方、上記メインスラスタ3、水平スラスタ6、前部と後部の各垂直スラスタ7と8に個別に装備してあるスラスタ回転数センサ3a,6a,7a,8aからは、対応するスラスタ3,6,7,8の回転方向と回転数の検出結果を、又、上記垂直舵4と水平舵5に個別に装備してある舵角センサ4aと5aからは、対応する垂直舵4と水平舵5の中立状態(水中航走体1の前後方向に平行な状態)から操舵する向きと舵角の検出結果を、上記通信手段16と15を介して上記動作確認用制御部14へ入力できるようにする。
【0040】
更に、上記水中航走体1に装備してある上記INS9より、水中航走体1のヨー、ロール及びピッチの各軸周りの姿勢変化の方向と変化量の検出結果を、又、上記DVL10より、水中航走体1の該DVL10の設置個所に関する前後方向と左右方向と上下方向への変位方向と変位速度の検出結果を、更に、上記GPS装置12より、水中航走体1の位置情報、あるいは、該位置情報の変化に基いて検出される水中航走体1の変位に関する検出結果を、それぞれ上記通信手段16と15を介して上記動作確認用制御部14へ入力できるようにする。
【0041】
以上の構成としてある本発明の自動動作確認装置を用いて実施する本発明の水中航走体の自動動作確認方法は、図1に示すように、先ず、水中航走体1に装備してある各スラスタ3,6,7,8と各舵4,5について、個別の動作指令を順次与えて該各スラスタ3,6,7,8や各舵4,5の図示しないアクチュエータと、それぞれ対応する各スラスタ回転数センサ3a,6a,7a,8a及び各舵角センサ4a,5aの接続状態の正誤を判別するためのアクチュエータ動作確認ステップSaを行う。次いで、上記アクチュエータ動作確認ステップSaにおいて各スラスタ3,6,7,8及び各舵4,5の図示しないアクチュエータとそれぞれ対応する各センサ3a,6a,7a,8a及び4a,5aの接続状態が正しいと判断された水中航走体1を水面に浮かべて配置させた状態で、上記各スラスタ3,6,7,8及び各舵4,5の所定の動作により水中航走体1に姿勢変化及び変位を生じさせて、この姿勢変化及び変位の上記INS9及びDVL10による検出結果を基に、該INS9及びDVL10の設置された向きの正誤を判断するための水面動作確認ステップSbを行うようにする。
【0042】
以下、上記アクチュエータ動作確認ステップSaと、水面動作確認ステップSbについて、動作確認用制御部14の処理手順に即して具体的に説明する。
【0043】
なお、以下においては、メインスラスタ3は、前進推力を発生させる向きの回転を正回転、後進推力を発生させる向きの回転を逆回転と云うものとする。水平スラスタ6は、水中航走体1における該水平スラスタ6の設置個所に対し、右向きに変位させるための推力を発生する向きの回転を正回転、左向きに変位させる推力を発生する向きの回転を逆回転と云うものとする。前部と後部の垂直スラスタ7と8は、水中航走体1における該垂直スラスタ7,8の設置個所に対し、上向きに変位させるための推力を発生する向きの回転を正回転、下向きに変位させる推力を発生させる向きの回転を逆回転と云うものとする。垂直舵(ラダー)4は、水中航走体1を右向きに転向させるための動作を正方向の動作、水中航走体1を左向きに転向させるための動作を負方向の動作と云うものとする。水平舵(エレベータ)5は、水中航走体1を上向きに転向させるための動作を正方向の動作、水中航走体を下向きに転向させるための動作を負方向の動作と云うものとする。更に、INS9で検出される水中航走体1の姿勢変化のうち、ヨー角については、北をゼロ(原点)とし、平面視時計回り方向を正、平面視反時計回り方向を負と云うものとする。INS9で検出されるピッチ角については、水平をゼロ(原点)とし、水中航走体1の前部が上向きになる方向を正、下向きになる方向を負と云うものとする。DVL10で検出される水中航走体1の速度については、水中航走体1の前後方向の速度成分をX方向速度とし、且つ水中航走体1の前進側を正、後進側を負と云い、又、水中航走体1の前後方向に直交する左右方向の速度成分をY方向速度とし、該水中航走体1の右側を正、左側を負と云うものとする。
【0044】
上記アクチュエータ動作確認ステップSaは、図2に詳細な手順を示すように、先ず、水中航走体1に装備されているすべてのスラスタ3,6,7,8について、動作確認順序nを設定すると共に、すべての舵4,5について、動作確認順序mを設定する(ステップSa1)。なお、Nthは総スラスタ数、Mrudは総舵数である。
【0045】
次に、動作確認用制御部14は、スラスタ動作確認プロセスP1として、先ず、n=0と設定し(ステップSa2)、次いで、n=n+1と置いてから(ステップSa3)、動作確認順序n番目のスラスタTHnに対し、正回転の動作指令、たとえば、+100[rpm]の動作指令を与えて、該スラスタTHnを正回転させる(ステップSa4)。
【0046】
上記のようにして動作確認順序n番目のスラスタTHnを正回転させると、該スラスタTHnの動作が、対応するスラスタ回転数センサ3a,6a,7a,8a(図4参照)により検出されて、その回転方向と回転数の検出結果が動作確認用制御部14へ入力されるようになることから、該動作確認用制御部14では、上記スラスタ回転数センサ3a,6a,7a,8a(図4参照)より入力される上記動作確認順序n番目のスラスタTHnの回転方向と回転数の検出結果について、該スラスタTHnに対して与えた動作指令の指令値との誤差が、或るスラスタ回転数閾値の範囲内、たとえば、+100±スラスタ回転数閾値[rpm]の範囲内にあるか否かを判断し(ステップSa5)、範囲内にある場合は、上記動作確認順序n番目のスラスタTHnについての正常な正回転の動作確認が得られたとして処理する。
【0047】
一方、上記ステップSa5にて、上記スラスタ回転数センサ3a,6a,7a,8a(図4参照)より入力される回転方向と回転数の検出結果と、上記スラスタTHnに対して与えた動作指令の指令値との誤差が、或るスラスタ回転数閾値の範囲より外れている場合は、上記動作確認順序n番目のスラスタTHnについて動作確認が異常であるとして、ステップSa16へ進んで、上記動作確認順序n番目のスラスタTHnについてのエラーを表示させるようにする。
【0048】
次いで、動作確認用制御部14は、上記動作確認順序n番目のスラスタTHnに対し、逆回転の動作指令、たとえば、−100[rpm]の動作指令を与えて、該スラスタTHnを逆回転させる(ステップSa6)。
【0049】
上記のようにして動作確認順序n番目のスラスタTHnを逆回転させると、該スラスタTHnの動作が、対応するスラスタ回転数センサ3a,6a,7a,8a(図4参照)により検出されて、その回転方向と回転数の検出結果が動作確認用制御部14へ入力されるようになることから、該動作確認用制御部14では、上記スラスタ回転数センサ3a,6a,7a,8a(図4参照)より入力される上記動作確認順序n番目のスラスタTHnの回転方向と回転数の検出結果について、該スラスタTHnに対して与えた動作指令の指令値との誤差が、或るスラスタ回転数閾値の範囲内、たとえば、−100±スラスタ回転数閾値[rpm]の範囲内にあるか否かを判断し(ステップSa7)、範囲内にある場合は、上記動作確認順序n番目のスラスタTHnについての正常な逆回転の動作確認が得られたとして処理する。
【0050】
一方、上記ステップSa7にて、上記スラスタ回転数センサ3a,6a,7a,8a(図4参照)より入力される回転方向と回転数の検出結果と、スラスタTHnに対して与えた動作指令の指令値との誤差が、或るスラスタ回転数閾値の範囲より外れている場合は、上記動作確認順序n番目のスラスタTHnについて動作確認が異常であるとして、ステップSa16へ進んで、上記動作確認順序n番目のスラスタTHnについてのエラーを表示させるようにする。
【0051】
上記のようにして動作確認順序n番目のスラスタTHnについて、正回転と逆回転の動作確認処理が終了すると、上記動作確認用制御部14は、ステップSa8へ進んで、その時点で動作確認したスラスタTHnの動作確認順序nが、総スラスタ数Nthに達している(n=Nth)か否かを判断し、動作確認順序nが総スラスタ数Nthに達していない場合は、上記ステップSa3へ戻って、n=n+1の処理を行うことで、動作確認順序が次のスラスタTHnを選択してから、該ステップSa3から上記ステップSa8までの処理を再び行い、この処理を、上記ステップSa8で、スラスタTHnの動作確認順序nが総スラスタ数Nthに達するまで順次繰り返して行う。これにより、すべてのスラスタTHn(n=1,2,・・・,Nth)、すなわち、メインスラスタ3、水平スラスタ6、前部垂直スラスタ7、後部垂直スラスタ8(図5参照)について、正回転と逆回転の動作確認が、対応するスラスタ回転数センサ3a,6a,7a,8a(図4参照)の検出結果との整合性に基いて行われることになる。
【0052】
上記のようにして、上記ステップSa8にて、その時点で動作確認したスラスタTHnの動作確認順序nが、総スラスタ数Nthに達した場合(n=Nth)は、上記動作確認用制御部14は、スラスタ動作確認プロセスP1を終了して、舵動作確認プロセスP2へ進むようにしてある。
【0053】
上記舵動作確認プロセスP2では、動作確認用制御部14は、先ず、m=0と設定し(ステップSa9)、次いで、m=m+1と置いてから(ステップSa10)、動作確認順序m番目の舵RUDmに対し、正方向の動作指令、たとえば、+15[deg]の動作指令を与えて、該舵RUDmを正方向に動作(操舵)させる(ステップSa11)。
【0054】
上記のようにして動作確認順序m番目の舵RUDmを正方向に動作させると、該舵RUDmの動作が、対応する舵角センサ4a,5a(図4参照)により検出されて、その操舵方向と舵角の検出結果が動作確認用制御部14へ入力されるようになることから、該動作確認用制御部14では、上記舵角センサ4a,5a(図4参照)より入力される上記動作確認順序m番目の舵RUDmの操舵方向と舵角の検出結果について、該舵RUDmに対して与えた動作指令の指令値との誤差が、或る舵角閾値の範囲内、たとえば、+15±舵角閾値[deg]の範囲内にあるか否かを判断し(ステップSa12)、範囲内にある場合は、上記動作確認順序m番目の舵RUDmについての正常な正方向の動作確認が得られたとして処理する。
【0055】
一方、上記ステップSa12にて、上記舵角センサ4a,5a(図4参照)より入力される操舵方向と舵角の検出結果と、上記舵RUDmに対して与えた動作指令の指令値との誤差が、或る舵角閾値の範囲より外れている場合は、上記動作確認順序m番目の舵RUDmについて動作確認が異常であるとして、ステップSa16へ進んで、上記動作確認順序m番目の舵RUDmについてのエラーを表示させるようにする。
【0056】
次いで、動作確認用制御部14は、上記動作確認順序m番目の舵RUDmに対し、負方向の動作指令、たとえば、−15[deg]の動作指令を与えて、該舵RUDmを負方向に動作(操舵)させる(ステップSa13)。
【0057】
上記のようにして動作確認順序m番目の舵RUDmを負方向に動作させると、該舵RUDmの動作が、対応する舵角センサ4a,5a(図4参照)により検出されて、その操舵方向と舵角の検出結果が動作確認用制御部14へ入力されるようになることから、該動作確認用制御部14では、上記舵角センサ4a,5a(図4参照)より入力される上記動作確認順序m番目の舵RUDmの操舵方向と舵角の検出結果について、該舵RUDmに対して与えた動作指令の指令値との誤差が、或る舵角閾値の範囲内、たとえば、−15±舵角閾値[deg]の範囲内にあるか否かを判断し(ステップSa14)、範囲内にある場合は、上記動作確認順序m番目の舵RUDmについての正常な負方向の動作確認が得られたとして処理する。
【0058】
一方、上記ステップSa14にて、上記舵角センサ4a,5a(図4参照)より入力される操舵方向と舵角の検出結果と、舵RUDmに対して与えた動作指令の指令値との誤差が、或る舵角閾値の範囲より外れている場合は、上記動作確認順序m番目の舵RUDmについて動作確認が異常であるとして、ステップSa16へ進んで、上記動作確認順序m番目の舵RUDmについてのエラーを表示させるようにする。
【0059】
上記のようにして動作確認順序m番目の舵RUDmについて、正方向と負方向の動作確認処理が終了すると、上記動作確認用制御部14は、ステップSa15へ進んで、その時点で動作確認した舵RUDmの動作確認順序mが、総舵数Mrudに達している(m=Mrud)か否かを判断して、動作確認順序mが総舵数Mrudに達していない場合は、上記ステップSa10へ戻って、m=m+1の処理を行うことで、動作確認順序が次の舵RUDmを選択してから、該ステップSa10から上記ステップSa15までの処理を再び行い、この処理を、上記ステップSa15で、舵RUDmの動作確認順序mが総舵数Mrudに達するまで順次繰り返して行う。これにより、すべての舵RUDm(m=1,・・・,Mrud)、すなわち、垂直舵(ラダー)4及び水平舵(エレベータ)5(図5参照)について、正方向及び負方向の動作確認が、対応する舵角センサ4a,5a(図4参照)による検出結果との整合性に基いて行われることになる。
【0060】
上記のようにして、スラスタ動作確認プロセスP1と、舵動作確認プロセスP2とからなるアクチュエータ動作確認ステップSaが終了すると、上記動作確認用制御部14は、水面動作確認ステップSbの処理を開始する。
【0061】
上記水面動作確認ステップSbは、図3に詳細な手順を示すように、先ず、水中航走体1を、水面に浮かべて配置した状態とする(ステップSb1)。
【0062】
この状態で、上記動作確認用制御部14は、上記水中航走体1の前部に設けてある水平スラスタ6に対し、正回転させる動作指令を与える(ステップSb2)。
【0063】
上記のようにして、水面に浮いた状態の水中航走体1において水平スラスタ6の正回転を行わせると、該水平スラスタ6の動作が正常であれば、右向きに変位させる推力が生じるため、水中航走体1は、右向きに回頭させられるようになる。
【0064】
このことに鑑みて、上記動作確認用制御部14は、上記水平スラスタ6を正回転させる際、DVL10より入力される水中航走体1の対水速度の検出結果におけるY方向速度が正であるか否かを判断する(ステップSb3)。より具体的には、上記DVL10により検出される水中航走体1のY方向速度であるスウェイ速度が予め設定した或る正の速度範囲内に入り、且つサージ速度及びヒーブ速度の絶対値が、予め別途設定した或る値よりも小さいことを確認するようにする。
【0065】
上記ステップSb3において上記DVL10により検出されたY方向速度が正であると判断された場合は、動作確認用制御部14では、正常であると処理してステップSb4へ進む。一方、Y方向速度が正ではないと判断された場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0066】
上記ステップSb4では、更に、上記INS9より入力される上記水中航走体1の動作に伴う姿勢変化の検出結果を基に、水中航走体1のヨー角の角速度が、正であるか否かを判断する。より具体的には、上記INS9により検出される水中航走体1の姿勢変化におけるヨー角の変化する角速度が、予め指定した正の或る範囲内になり、更に、ロール角及びピッチ角が変化する角速度の絶対値が予め別途指定した或る値よりも小さいという条件と、ロール角及びピッチ角の角度が予め別に指定した値よりも小さいという条件のいずれか一方又は双方の条件を満たされることを確認するようにする。
【0067】
なお、上記INS9により検出される水中航走体1の姿勢変化におけるヨー角の変化する角速度が、予め指定した正の或る範囲内になるという条件を、或る設定時間後にヨー角の増分が設定した範囲内になるという条件に置き換えることもできる。この場合のヨー角の増分の設定範囲は、水槽等の穏やかな水面で予め動作させた結果から定めるものとする。このように、ヨー角の増分に関する条件を用いるようにすることにより、多少の波風がある水面で動作確認を行う場合に有利なものとすることができる。
【0068】
上記ステップSb4において上記INS9により検出されたヨー角の変化が正であると判断された場合は、動作確認用制御部14では、正常であると処理してステップSb5へ進む。一方、ヨー角の変化が正ではないと判断された場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0069】
次いで、上記動作確認用制御部14は、ステップSb5で、上記水平スラスタ6に対し、逆回転させる動作指令を与える。
【0070】
上記のようにして、水面に浮いた状態の水中航走体1において水平スラスタ6の逆回転を行わせると、該水平スラスタ6の動作が正常であれば、左向きに変位させる推力が生じるため、水中航走体1は、左向きに回頭させられるようになる。
【0071】
このことに鑑みて、上記動作確認用制御部14は、上記水平スラスタ6を逆回転させる際、DVL10より入力される水中航走体1の対水速度の検出結果におけるY方向速度が負であるか否かを判断する(ステップSb6)。より具体的には、上記DVL10により検出される水中航走体1のY方向速度であるスウェイ速度が予め設定した或る負の速度範囲内に入り、且つサージ速度及びヒーブ速度の絶対値が、予め別途設定した或る値よりも小さいことを確認するようにする。
【0072】
上記ステップSb6において上記DVL10により検出されたY方向速度が負であると判断された場合は、動作確認用制御部14では、正常であると処理してステップSb7へ進む。一方、Y方向速度が負ではないと判断された場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0073】
上記ステップSb7では、更に、上記INS9より入力される上記水中航走体1の動作に伴う姿勢変化の検出結果を基に、水中航走体1のヨー角の角速度が、負であるか否かを判断する。より具体的には、上記INS9により検出される水中航走体1の姿勢変化におけるヨー角の変化する角速度が、予め指定した負の或る範囲内になり、更に、ロール角及びピッチ角が変化する角速度の絶対値が予め別途指定した或る値よりも小さいという条件と、ロール角及びピッチ角の角度が予め別に指定した値よりも小さいという条件のいずれか一方又は双方の条件が満たされることを確認するようにする。
【0074】
なお、上記INS9により検出される水中航走体1の姿勢変化におけるヨー角の変化する角速度が、予め指定した負の或る範囲内になるという条件を、或る設定時間後にヨー角の減分が設定した範囲内になるという条件に置き換えることもできる。この場合のヨー角の減分の設定範囲は、水槽等の穏やかな水面で予め動作させた結果から定めるものとする。このように、ヨー角の減分に関する条件を用いるようにすることにより、多少の波風がある水面で動作確認を行う場合に有利なものとすることができる。
【0075】
上記ステップSb7において上記INS9により検出されたヨー角の変化が負であると判断された場合は、動作確認用制御部14では、正常であると処理して、次のステップSb8へ進む。一方、ヨー角の変化が負ではないと判断された場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0076】
したがって、上記ステップSb2〜ステップSb4による水平スラスタ6の正回転時におけるDVL10とINS9の検出結果の検証と、上記ステップSb5〜ステップSb7による水平スラスタ6の逆回転時におけるDVL10とINS9の検出結果の検証により、水面に配置された水中航走体1の上記水平スラスタ6を正回転させる場合と、逆回転させる場合について、それぞれに伴って水中航走体1に生じるY方向速度の上記DVL10による検出結果、及び、水中航走体1のヨー角の変化の上記INS9による検出結果の整合性が確認されることになる。よって、この整合性が確認された場合にのみ、以下の処理へ進むことになる。
【0077】
次に、上記動作確認用制御部14は、ステップSb8にて、上記水中航走体1のメインスラスタ3に対し、正回転させる動作指令を与える。
【0078】
上記のようにして、水面に浮かせた状態の水中航走体1においてメインスラスタ3の正回転を行わせると、該メインスラスタ3の動作が正常であれば、水中航走体1は、前方へ直進させられるようになる。
【0079】
このことに鑑みて、上記動作確認用制御部14は、上記メインスラスタ3を正回転させる際、DVL10より入力される水中航走体1の対水速度の検出結果におけるX方向速度が正であるか否かを判断する(ステップSb9)。より具体的には、上記DVL10により検出される水中航走体1のX方向速度であるサージ速度が予め設定した或る正の速度範囲内に入り、且つスウェイ速度及びヒーブ速度の絶対値が、予め別途設定した或る値よりも小さいことを確認するようにする。
【0080】
上記ステップSb9において上記DVL10により検出されたX方向速度が正であると判断された場合は、動作確認用制御部14では、正常であると処理してステップSb10へ進む。一方、X方向速度が正ではないと判断された場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0081】
上記ステップSb10では、上記動作確認用制御部14は、上記INS9より入力される水中航走体1のヨー角の検出結果と、上記DVL10により入力される水中航走体1のX方向速度の検出結果と、上記GPS装置12からの入力を基に、該GPS装置12により検出される水中航走体1の移動する方向と速度の検出結果が、上記水中航走体1が向いている方位であるヨー角の方向へ、上記DVL10により検出されたX方向速度で水中航走体1が移動していることを示すか否かを判断し、上記INS9により検出されたヨー角の方向へ、上記DVL10により検出されたX方向速度で水中航走体1が移動していると判断された場合は、正常であると処理してステップSb11へ進む。一方、上記GPS装置12により検出された水中航走体1の移動する方向が、INS9により検出された水中航走体1のヨー角の方向に一致していない場合、又は、上記GPS装置12により検出された水中航走体1の移動する速度と、DVL10で検出されたX方向速度との差の絶対値が予め設定されている或る設定値よりも大きい場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0082】
次いで、上記動作確認用制御部14は、ステップSb11で、上記メインスラスタ3に対し、逆回転させる動作指令を与える。
【0083】
上記のようにして、水面に浮かせた状態の水中航走体1にてメインスラスタ3の逆回転を行わせると、該メインスラスタ3の動作が正常であれば、水中航走体1は、後方へ直進させられるようになる。
【0084】
このことに鑑みて、上記動作確認用制御部14は、上記メインスラスタ3を逆回転させる際、DVL10より入力される水中航走体1の対水速度の検出結果におけるX方向速度が負であるか否かを判断する(ステップSb12)。より具体的には、上記DVL10により検出される水中航走体1のX方向速度であるサージ速度が予め設定した或る負の速度範囲内に入り、且つサージ速度及びヒーブ速度の絶対値が、予め別途設定した或る値よりも小さいことを確認するようにする。
【0085】
上記ステップSb12において上記DVL10により検出されたX方向速度が負であると判断された場合は、動作確認用制御部14では、正常であると処理してステップSb13へ進む。一方、X方向速度が負ではないと判断された場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0086】
上記ステップSb13では、上記動作確認用制御部14は、上記INS9より入力される水中航走体1のヨー角の検出結果と、上記DVL10により入力される水中航走体1のX方向速度の検出結果と、上記GPS装置12からの入力を基に、該GPS装置12により検出される水中航走体1の移動する方向と速度の検出結果が、上記水中航走体1の後方となる方位、すなわち、該水中航走体1のヨー角の方向とは逆方向へ、上記DVL10により検出されたX方向速度で水中航走体1が移動していることを示すか否かを判断し、上記INS9により検出されたヨー角の方向と逆方向へ、上記DVL10により検出されたX方向速度で水中航走体1が移動していると判断された場合は、正常であると処理してステップSb14へ進む。一方、上記GPS装置12により検出された水中航走体1の移動する方向が、INS9により検出された水中航走体1のヨー角と逆方向に一致していない場合、又は、上記GPS装置12により検出された水中航走体1の移動する速度と、DVL10で検出されたX方向速度との差の絶対値が予め設定されている或る設定値よりも大きい場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0087】
したがって、上記ステップSb8〜ステップSb10におけるメインスラスタ3の正回転時におけるDVL10と、INS9及びGPS装置12の検出結果の検証と、上記ステップSb11〜ステップSb13におけるメインスラスタ3の逆回転時におけるDVL10と、INS9及びGPS装置12の検出結果の検証により、上記メインスラスタ3を正回転させる場合と、逆回転させる場合について、水面に配置された水中航走体1に生じる前進や後進と、上記DVL10によるX方向速度の検出結果と、上記INS9及びGPS装置12の検出結果との整合性が確認されることになる。よって、この整合性が確認された場合にのみ、以下の処理へ進むことになる。
【0088】
次いで、上記動作確認用制御部14は、ステップSb14にて、上記水中航走体1の前部垂直スラスタ7に対し、逆回転させる動作指令を与える。
【0089】
上記のようにして、水面に浮かせた状態の水中航走体1において前部垂直スラスタ7の逆回転を行わせると、該前部垂直スラスタ7の動作が正常であれば、前部垂直スラスタ7設置個所を下向きに変位させる方向の推力が生じるため、水中航走体1は、前側が水面下へ没するように動作することになる。
【0090】
このことに鑑みて、上記動作確認用制御部14は、上記前部垂直スラスタ7を逆回転させる際、INS9より入力される水中航走体1の動作に伴う姿勢変化の検出結果を基に、水中航走体1のピッチ角の角速度が、負であるか否かを判断する(ステップSb15)。より具体的には、上記INS9により検出される水中航走体1のピッチ角の角速度が負になると共に、該水中航走体1のピッチ角が或る設定時間後に予め指定してある値よりも小さくなることを確認し、更に、水中航走体1のヨー角、ロール角の変化が予め別途指定した或る値よりも小さいことを確認するようにする。
【0091】
上記ステップSb15において上記INS9により検出された水中航走体1のピッチ角の角速度が負であると判断された場合は、上記動作確認用制御部14は、正常であると処理してステップSb16へ進む。一方、水中航走体1のピッチ角の角速度が負ではない場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0092】
したがって、上記ステップSb14及びステップSb15の処理により、上記水面に配置された水中航走体1に前部垂直スラスタ7の逆回転時に生じる動作と、上記INS9による検出結果との整合性が確認されることになる。
【0093】
なお、図示してないが、水面に配置された上記水中航走体1における前部垂直スラスタ7を逆回転させる際、上記DVL10により検出される水中航走体1のヒーブ速度が予め設定した或る負の速度範囲内に入り、且つサージ速度及びスウェイ速度の絶対値が、予め別に設定した或る値よりも小さいことを確認するようにするようにしてもよい。このようにすれば、上記水面に配置された水中航走体1に前部垂直スラスタ7の逆回転時に生じる動作と、上記DVL10による検出結果との整合性も確認することができるようになる。
【0094】
上記ステップSb16では、上記動作確認用制御部14は、上記水中航走体1の後部垂直スラスタ8に対し、逆回転させる動作指令を与える。
【0095】
上記のようにして、水面に浮かせた状態の水中航走体1において後部垂直スラスタ8の逆回転を行わせると、該後部垂直スラスタ8の動作が正常であれば、後部垂直スラスタ8設置個所を下向きに変位させる方向の推力が生じるため、水中航走体1は、後側が水面下へ没するように動作することになる。
【0096】
このことに鑑みて、上記動作確認用制御部14は、上記後部垂直スラスタ8を逆回転させる際、INS9より入力される水中航走体1の動作に伴う姿勢変化の検出結果を基に、水中航走体1のピッチ角の角速度が、正であるか否かを判断する(ステップSb17)。より具体的には、上記INS9により検出される水中航走体1のピッチ角の角速度が正になると共に、該水中航走体1のピッチ角が或る設定時間後に予め指定してある値よりも大きくなることを確認し、更に、水中航走体1のヨー角、ロール角の変化が予め別途指定した或る値よりも小さいことを確認するようにする。
【0097】
上記ステップSb17において上記INS9により検出された水中航走体1のピッチ角の角速度が正であると判断された場合は、上記動作確認用制御部14は、正常であると処理してステップSb18へ進む。一方、水中航走体1のピッチ角の角速度が正ではない場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0098】
したがって、上記ステップSb16及びステップSb17の処理により、上記水面に配置された水中航走体1に後部垂直スラスタ8の逆回転時に生じる動作と、上記INS9による検出結果との整合性が確認されることになる。
【0099】
以上により、メインスラスタ3、水平スラスタ6、前部と後部の各垂直スラスタ7と8の個別の回転に伴って水中航走体1に生じる動作と、上記INS9、DVL10及びGPS装置12の検出結果との整合性が確認されることに基いて、前述のアクチュエータ動作確認ステップSaのみでは検出することができない、上記各スラスタ3,6,7,8の動作(回転)する向きと、それぞれ対応するスラスタ回転数センサ3a,6a,7a,8aの検知の向きが同時に間違っている場合であっても、その間違いを確実に検出することができるようになる。
【0100】
更に、上記INS9については、該INS9で検出されるピッチ軸とヨー軸の2つの軸が、水中航走体1に対して正しい方向に配置されていることを確認することができるため、ロール軸についても、水中航走体1に対して正しい向きに配置されていることが明らかとなり、よって、上記INS9が水中航走体1に対して正しい向きに搭載されていることが確認できるようになる。
【0101】
更に又、上気DVL10については、該DVL10で検出されるサージ、スウェイ、ヒーブのすべての向きが、水中航走体1に対して正しく配置されていることを確認できるため、該DVL10が水中航走体1に対して正しい向きに搭載されていることが確認できるようになる。
【0102】
その後、上記動作確認用制御部14は、ステップSb18として、メインスラスタ3に対し、正回転させる動作指令を与えると共に、垂直舵(ラダー)4に、正方向に動作させる指令を与える。
【0103】
上記のようにして、水面に浮いた状態の水中航走体1について、メインスラスタ3を正回転させると共に、垂直舵4を正方向に動作させると、前述のステップSb8〜ステップSb13において、上記メインスラスタ3を正回転させる場合の水中航走体1の動作については、DVL10によるX方向速度の検出結果と、上記INS9及びGPS装置12の検出結果との整合性を基に、正常であるという動作確認が既に得られているため、上記垂直舵4の正方向への動作が正常であれば、水中航走体1は前進しながら右向きに回頭するようになる。
【0104】
このことに鑑みて、上記動作確認用制御部14は、上記メインスラスタ3を正回転させると共に、垂直舵4を正方向に動作させる際、先ず、DVL10より入力される水中航走体1の対水速度の検出結果におけるY方向速度が正であるか否かを判断し(ステップSb19)、上記DVL10検出の水中航走体1のY方向速度が正であると判断された場合は、上記動作確認用制御部14にて正常であると処理してステップSb20へ進む。一方、上記DVL10検出の水中航走体1のY方向速度が正とならない場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0105】
上記ステップSb20では、上記動作確認用制御部14は、上記INS9より入力される水中航走体1の姿勢変化の検出結果におけるヨー角の角速度が正であるか否かを更に判断し、上記INS9検出の水中航走体1のヨー角の角速度が正であると判断された場合は、上記垂直舵4の正方向の操舵について正常な動作確認が行われたと処理して、次のステップSb21へ進む。一方、上記INS9で検出されたヨー角の角速度が正ではないと判断された場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0106】
なお、上記ステップSb20において、上記INS9より入力される水中航走体1の姿勢変化の検出結果におけるヨー角の角速度が正であるという条件を、或る設定時間後にヨー角の増分が設定した範囲内であるという条件に置き換えることもできる。このように、ヨー角の増分に関する条件を用いるようにすることにより、多少の波風がある水面で動作確認を行う場合に有利なものとすることができる。
【0107】
しかる後、上記動作確認用制御部14は、ステップSb21として、メインスラスタ3に対し、正回転させる動作指令を与えると共に、垂直舵(ラダー)4に、負方向に動作させる指令を与える。
【0108】
上記のようにして、水面に浮いた状態の水中航走体1について、メインスラスタ3を正回転させると共に、垂直舵4を正方向に動作させると、上記したように、ステップSb8〜ステップSb13において、上記メインスラスタ3の正回転による水中航走体1の動作は正常であるという動作確認が既に得られているため、上記垂直舵4の負方向への動作が正常であれば、水中航走体1は前進しながら左向きに回頭するようになる。
【0109】
このことに鑑みて、上記動作確認用制御部14は、上記メインスラスタ3を正回転させると共に、垂直舵4を負方向に動作させる際、先ず、DVL10より入力される水中航走体1の対水速度の検出結果におけるY方向速度が負であるか否かを判断し(ステップSb22)、上記DVL10検出の水中航走体1のY方向速度が負であると判断された場合は、上記動作確認用制御部14にて正常であると処理してステップSb23へ進む。一方、上記DVL10検出の水中航走体1のY方向速度が負とならない場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0110】
上記ステップSb23では、上記動作確認用制御部14は、上記INS9より入力される水中航走体1の姿勢変化の検出結果におけるヨー角の角速度が負であるか否かを更に判断し、上記INS9検出の水中航走体1のヨー角の角速度が負であると判断された場合は、上記垂直舵4の負方向への操舵について正常な動作確認が行われたと処理して、ステップSb25へ進む。一方、上記INS9で検出されたヨー角の角速度が負ではないと判断された場合は、異常が存在していることになるため、ステップSb24へ進んでエラーを表示させる。
【0111】
なお、上記ステップSb23において、上記INS9より入力される水中航走体1の姿勢変化の検出結果におけるヨー角の角速度が負であるという条件を、或る設定時間後にヨー角の減分が設定した範囲内であるという条件に置き換えることもできる。このように、ヨー角の減分に関する条件を用いるようにすることにより、多少の波風がある水面で動作確認を行う場合に有利なものとすることができる。
【0112】
したがって、上記ステップSb18〜ステップSb20によるメインスラスタ3の正回転状態での垂直舵4の正方向への動作時におけるDVL10とINS9の検出結果の検証と、上記ステップSb21〜ステップSb23によるメインスラスタ3の正回転状態での垂直舵4の負方向への動作時におけるDVL10とINS9の検出結果の検証を経ることにより、上記垂直舵4の正方向及び負方向への動作に伴って水中航走体1に生じる動作と、上記DVL10及び上記INS9の検出結果との整合性が確認されることになる。これにより、垂直舵4の動作(駆動)する向きと、対応する舵角センサ4aの検知の向きが同時に間違っている場合であっても、その間違いを確実に検出することができるようになる。
【0113】
よって、上記アクチュエータ動作確認ステップSaと水面動作確認ステップSbをすべて経ることにより、上記水中航走体1におけるメインスラスタ3、水平スラスタ6、前部と後部の各垂直スラスタ7と8、及び、垂直舵4と水平舵5の動作確認が行われると共に、上記INS9とDVL10が水中航走体1に対し正しい向きに搭載されていることが確認されるようになる。
【0114】
よって、上記動作確認用制御部14は、ステップSb25にて、正常確認終了の表示を行わせるようにしてある。
【0115】
このように、本発明の水中航走体の自動動作確認方法及び本発明の自動動作確認装置によれば、上記アクチュエータ動作確認ステップSaにより、先ず、すべてのスラスタ3,6,7,8及びすべての舵4,5について、その動作する向きと、それぞれ対応するスラスタ回転数センサ3a,6a,7a,8a及び舵角センサ4a,5aの検知の向きが一致していることを順次自動的に確認することができる。
【0116】
更に、その後実施する水面動作確認ステップSbにて、上記アクチュエータ動作確認ステップSaで対応するセンサ3a,6a,7a,8aにより動作する方向の整合性が予め確認された各スラスタ3,6,7,8とについて、それぞれ個別に駆動した場合に水中航走体1に生じる動作を、INS9とDVL10とGPS装置12による検出結果で検証することにより、上記各スラスタ3,6,7,8の回転方向が動作指令に一致していることを、上記INS9とDVL10とGPS装置12の検出結果を用いたクロスチェックにより確認することができる。同時に、上記INS9とDVL10の水中航走体1に搭載された向きが正しいことを、該各INS9とDVL10の検出結果と、上記GPS装置12の検出結果を用いて、相互に確認することができる。
【0117】
更に又、対応する舵角センサ4aにより動作する方向の整合性が予め確認された垂直舵4についても、該垂直舵4を動作させた場合に水中航走体1に生じる動作を、INS9とDVL10による検出結果で検証することにより、上記垂直舵4の動作方向が動作指令に一致していることを確認することができる。
【0118】
したがって、上記水中航走体1に装備してある各スラスタ3,5,6,7及び各舵4,5が、動作指令に応じた動作を行うことの確認、及び、水中航走体1に搭載されたINS9及びDVL10の向きの確認を、上記動作確認用制御部14より上記各スラスタ3,6,7,8及び角各舵4,5へ動作指令を与えたときに、該各スラスタ3,6,7,8に個別に対応するスラスタ回転数センサ3a,6a,7a,8a、各舵4,5に個別に対応する舵角センサ4a,5a、INS9、DVL10及びGPS装置12より動作確認用制御部14へ入力される検出結果を基に、自動的に行うことができるため、上記各確認作業に要する時間、手間及び人手を大幅に削減することができる。
【0119】
しかも、水中航走体1に搭載されたINS9の向きを確認するために従来要していたような台車やクレーンを用いて水中航走体1のロール、ピッチ、ヨーをそれぞれの軸回りに動かす作業や、水中航走体1に搭載されたDVL10の向きを確認するために従来要していたような曳航船を用いた水中航走体1の曳航作業を不要にすることができる。
【0120】
更に、図2に示したアクチュエータ動作確認ステップSaにおけるステップSa16でエラーの表示が生じた場合は、該ステップSa16に至る原因となったステップを確認することで、各スラスタ3,6,7,8と各舵4,5のうち、コネクタの接続が正しく行われていないもの、又は、対応するスラスタ回転数センサ3a,6a,7a,8aや舵角センサ4a,5aのコネクタの接続が正しく行われていないものを特定することができる。
【0121】
又、図3に示した水面動作確認ステップSbにおけるステップSb24でエラーの表示が生じた場合は、該ステップSb24に至る原因となったステップを確認すると共に、そのステップを行っている時点で、INS9で検出される水中航走体のヨー、ピッチ、ロールのいずれの軸の値が変化しているか、あるいは、DVL10で検出されるスウェイ、サージ、ヒーブのいずれの値が変化しているかを確認することで、上記スラスタ3,6,7,8や垂直舵4の対応するセンサ3a,6a,7a,8aや4aとの同時の接続間違い、又は、上記INS9やDVL10の水中航走体に搭載した向きの間違いを、容易に特定することができるようになる。
【0122】
上記において、アクチュエータ動作確認ステップSaでは、水中航走体1自身を変位させる必要はないため、ステップSa16におけるエラーの表示が生じた場合に、速やかにその原因の特定と、不正確な部分の解消に当たることができるようにするという観点からすると、アクチュエータ動作確認ステップSaは、水中航走体1の母船上、あるいは、地上等、水中航走体1を水から引き上げた状態で実施することが望ましい。しかし、上記アクチュエータ動作確認ステップSaを、水中航走体1を水面に浮かせて配置した状態で実施することも可能である。
【0123】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、アクチュエータ動作確認ステップSaは、スラスタ動作確認プロセスP1と、舵動作確認プロセスP2の順序を入れ替えて実施してもよい。
【0124】
水面動作確認ステップSbは、水平スラスタ6の動作について、DVL10及びINS9の検出結果を用いて検証を行うようにしてあるステップSb2〜ステップSb7の処理と、メインスラスタ3の動作について、DVL10、INS9及びGPS装置12の検出結果を用いて検証を行うようにしてあるステップSb8〜ステップSb13の処理と、前部垂直スラスタ7の動作について、INS9の検出結果を用いて検証を行うようにしてあるステップSb14〜ステップSb15の処理と、後部垂直スラスタ8の動作について、INS9の検出結果を用いて検証を行うようにしてあるステップSb16〜ステップSb17の処理は、適宜順序を入れ替えるようにしてもよい。
【0125】
本発明の水中航走体の自動動作確認方法及び装置は、図5に示した以外の形式、すなわち、装備されるスラスタの数や位置及び舵の数や位置が図示したものとは異なる形式の水中航走体1に適用してもよい。この場合、アクチュエータ動作確認ステップSaでは、すべてのスラスタ、すべての舵について、個別の動作指令を順次与えて、対応するセンサによる検出結果との整合性が得られることを確認するようにし、その後、水面動作確認ステップSbにて、スラスタについては、該スラスタを単独で正回転や逆回転させたときに水中航走体1に生じると考えられる動作と、該スラスタを単独で実際に回転させたときにINS9やDVL10やGPS装置12による水中航走体1の動作の検出結果との整合性が得られるか否かを判断することで、該スラスタの動作確認を行うようにすればよい。又、舵については、既に動作確認が得られている或るスラスタを駆動した状態で該舵を操舵するときに水中航走体1に生じると考えられる動作と、上記或るスラスタを実際に駆動し且つ該舵を操舵したときにINS9やDVL10やGPS装置12による水中航走体1の動作の検出結果との整合性が得られるか否かを判断することで、該舵の動作確認を行うようにすればよい。
【0126】
又、動作確認用制御部14は、水中航走体1の内部に装備する構成としてもよい。この場合には、母船又は陸上に設置した管制装置13に、自動動作確認指令を与えることにより、通信手段15、16を通して該自動動作確認指令が上記水中航走体1の内部の動作確認用制御部14に伝えられるようにして、該動作確認用制御部14が自動動作確認を開始するようにし、その後、上記動作確認用制御部14が、確認結果を通信手段16、15を通して上記管制装置13に返すようにすればよい。
【0127】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0128】
1 水中航走体
3 メインスラスタ(スラスタ)
3a スラスタ回転数センサ
4 垂直舵(舵)
4a 舵角センサ
5 水平舵(舵)
5a 舵角センサ
6 水平スラスタ(スラスタ)
6a スラスタ回転数センサ
7 前部垂直スラスタ(スラスタ)
7a スラスタ回転数センサ
8 後部垂直スラスタ(スラスタ)
8a スラスタ回転数センサ
9 INS(慣性航法装置)
10 DVL(ドップラー式対水速度計)
14 動作確認用制御部
P1 スラスタ動作確認プロセス
P2 舵動作確認プロセス
Sa アクチュエータ動作確認ステップ
Sb 水面動作確認ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中航走体に装備されたスラスタに、該スラスタを回転させるための動作指令を与えて、該スラスタに生じる動作と、対応するスラスタ回転数センサによる検出結果との整合性を確認するスラスタ動作確認プロセスと、水中航走体に装備された舵に、該舵を操舵させるための動作指令を与えて、該舵に生じる動作と、対応する舵角センサによる検出結果との整合性を確認する舵動作確認プロセスからなるアクチュエータ動作確認ステップを実施し、次いで、上記アクチュエータ動作確認ステップでスラスタ及び舵の動作指令に応じた動作について対応するセンサの検出結果との整合性が確認された水中航走体を水面に浮かべて配置した状態で、上記スラスタを駆動させる際に該水中航走体に生じる動作について、該水中航走体に装備してある慣性航法装置による水中航走体の姿勢変化の検出結果、及び、ドップラー式対水速度計による水中航走体の対水速度の検出結果との整合性を確認する水面動作確認ステップを行うことを特徴とする水中航走体の自動動作確認方法。
【請求項2】
水面動作確認ステップにて、スラスタを個別に駆動させて水面に浮かべて配置した状態の水中航走体に生じる動作について、該水中航走体に装備してある慣性航法装置による水中航走体の姿勢変化の検出結果、及び、ドップラー式対水速度計による水中航走体の対水速度の検出結果との整合性を確認した後、該整合性の確認されたスラスタを駆動させた状態で舵を操舵する際に上記水中航走体に生じる動作について、該水中航走体に装備してある慣性航法装置による水中航走体の姿勢変化の検出結果、及び、ドップラー式対水速度計による水中航走体の対水速度の検出結果との整合性を確認するようにする請求項1記載の水中航走体の自動動作確認方法。
【請求項3】
アクチュエータ動作確認ステップを、水中航走体を水から引き上げた状態で行うようにする請求項1又は2記載の水中航走体の自動動作確認方法。
【請求項4】
水中航走体に装備されたスラスタに該スラスタを回転させるための動作指令を与えて、該スラスタに生じる動作と対応するスラスタ回転数センサによる検出結果との整合性を確認する機能と、水中航走体に装備された舵に該舵を操舵させるための動作指令を与えて、該舵に生じる動作と対応する舵角センサによる検出結果との整合性を確認する機能と、水中航走体を水面に浮かべて配置した状態で上記スラスタに該スラスタを駆動させるための動作指令を与えると共に、該動作指令に基く上記スラスタの動作により上記水中航走体に生じる動作について、該水中航走体に装備してある慣性航法装置による水中航走体の姿勢変化の検出結果、及び、ドップラー式対水速度計による水中航走体の対水速度の検出結果との整合性を確認する機能を有する動作確認用制御部を備えてなることを特徴とする水中航走体の自動動作確認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−180024(P2012−180024A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44773(P2011−44773)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】