説明

水位センサ

【課題】 枠体内外部にダイヤフラム、コア、コイル、及びコンデンサなどを備え、コイルとコンデンサの発振周波数変化で水位を検出する水位センサにおいて、全体の小型化に伴いコイルとコンデンサの収納方法、また、コイル部の絶縁方法などが課題となり、価格への影響も大きい。
【解決手段】 ボビンを設け、これにコイルとコンデンサを組付けてボビン部組とし、このボビン部組を枠体の内部に収納することで水浸入を防止しコイルの絶縁処理が廃止でき、更に、コイル、コンデンサ、タンシの3部品を1ヶ所で効率よく接続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に洗濯機、洗濯乾燥機、及び食器洗い機などの水位を検出するために使用される水位センサに係わり、特に枠体の内外部にダイヤフラム、コア、コイル、及びコンデンサ等を有するもので小型化するための全体形状、及び構造に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機などに使用される水位検出用の水位センサは発振周波数の変化で水位を検出するものが主流で、その概要は以下の通りである。
枠体内外部にダイヤフラム、コア、コイル、及びコンデンサなどを備え、外部からの空気圧をダイヤフラムで受け、前記ダイヤフラムに固定されたコア(鉄分)はバネに抗してコイル内径部を上下動する。このことでコイルのリアクタンス(抵抗分)は変化し、コイルとコンデンサで構成されるLC発振回路の発振周波数を変化させるものである。
最近、このものにおいて小型低価格化、及び品質安定などの要求があり、全体、特にコイル部の部品構成、及びタンシの固定方法、また、小型化に適したダイヤフラムの形状などの見直しが急務となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−19043号公報
【特許文献2】特開2001−170393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の基本構造はダイヤフラム、コア、及びバネを枠体内部にコイル、コンデンサ、及びタンシは枠体外部上面に配置している。
コイル、コンデンサ、及びタンシは枠体の形状を工夫し適宜配置し、この3部品が電気的に接続されるように半田固定されているが、タンシにコンデンサリードとコイルを個別に半田固定するため半田個所が多く、半田付け時は枠体を基台に行なうため全体が大きくなり取扱い性が悪くなっている。また、タンシは形状が複雑で大きく固定構造も複雑で不安定である。更に、コイルを含む充電部が露出していること、各部品の固定が確実でないことなどからウレタン注型剤などで封止する必要がある。
ダイヤフラムは膜以外の平面部は受圧力で変形しない程度の剛性が必要である。
本品は平面中央部を薄肉としコアのツバ(円板)部で剛性を確保する構造になっている。このためコアは必要以上に大きくなっている。
コアはダイヤフラム中央薄肉部の段差付き棒状突起に嵌合固定されているが、コア挿入時に薄肉部が撓み挿入作業性が劣る。
【0005】
特許文献2の基本構造は前記特許文献1同様、ダイヤフラム、コア、及びバネを枠体内部に、コイル、コンデンサ、及びタンシは枠体外部に配置している。但し、コイル、コンデンサ、タンシはボビン部組として構成し枠体外部上面に取付け水がかからないように防滴カバーで覆う構造としている。
ボビン部組はタンシをインサート成形したボビンにコイルを巻き、コイル引出し線をタンシに半田接続し、更にコンデンサリードもタンシに半田接続した構成で半田個所が多くなっている。但し、半田付け作業はボビン部組の状態でできるため全体が小さく、取扱い性は問題ない。
コイルのみは絶縁確保のため熱硬化性樹脂で成形封止しているが、コンデンサリード、及び半田付け部は露出したままとなっている。
ダイヤフラムは全体が薄肉で平面部の剛性は樹脂成形品の円板部で確保する構造となっている。
コアはこの樹脂成形品の中央部に爪嵌合で固定されている。
【0006】
本発明は前記の公知例の改善個所に鑑み、全体構造、ボビン部組の構造、タンシの形状、ダイヤフラムの形状、コアの固定方法などの見直しを行い、コイルの絶縁封止の廃止、部品の削減、及び小型化を図り小型で安価な水位センサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は枠体内にダイヤフラム、コア、バネ以外にボビン部組とタンシ(半田付け部)を配置し、充電部への水浸入を防止する構造としたことを特徴とし、ボビン部組はコンデンサが取付いたボビンの円筒部にコイルを挿入固定し、コイル引出し線をコンデンサリード部に絡める構造とした。
【0008】
タンシは弾性を得るため、中央部に一端が開口したスリットを設け、枠体の角穴部に挿入した時に段差部が嵌合し、半田付け部が枠体内部に覗いた形で固定されるようにした。
枠体に前記ボビン部組を圧入固定した時にコイルを絡めたコンデンサリード部がタンシと係合する構造とし、その係合部を半田固定することでコイル、コンデンサ、タンシの3部品を電気的に接続することを可能にした。また、コイルはボビン部組を圧入固定することでガタが発生しないようにした。
【0009】
ダイヤフラムは膜部を除く平面部全体を厚肉とすることで剛性を確保し、内圧に耐えるようにした。また、コアはダイヤフラムの平面部中央に設けた段差付き棒状突起部に挿入し、段差部で確実に固定できるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ボビン部組を枠体内部に設けることでコイル、コンデンサ部への水浸入を防止することができ、コイル封止、及び防滴カバーなどが不要になり、絶縁確保に必要な部品、及び材料が削減できる。
また、タンシを枠体に取付け、内部にボビン部組を圧入固定することでコイル、コンデンサ、タンシの3部品を簡単に確実に半田接続することができ、作業性の改善が図れる。
また、ダイヤフラムに厚肉平面部を設けることで内圧に耐え安定した特性が得られるため平面部を補強する樹脂成形部品は不要になり、部品の削減が可能である。更にダイヤフラム厚肉平面部の中央に段差付き棒状突起部を設けることでコアの固定が簡単にできる。
以上の点から構成部品の少ない、組付け作業性のよい安価な水位センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係わるもので外観斜視図を示す
【図2】本発明の実施例の係わるもので主要部の断面図を示す
【図3】本発明の実施例の係わるもので分解図を示す
【図4】本発明の実施例の係わるもので枠体内部のボビン部組の組付け状態図を示す
【図5】本発明の実施例の係わるものでボビン部組の状態図を示す
【図6】本発明の実施例の係わるものでタンシの組付け状態図を示す
【図7】本発明の実施例の係わるものでタンシ組付け部の枠体Aの形状図を示す
【図8】本発明の実施例の係わるものでダイヤフラムの形状とコア組付け状態図を示す
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例について、図を引用して説明する。
【0013】
本発明の一実施例の部品構成は図3で示す通り、枠体上1、枠体下2、タンシ3、ばね4、コイル5、ボビン6、コンデンサ7、コア8、ダイヤフラム9、調整ねじ10で構成し、最小限の部品点数としている。また、部組は図6の枠体上部組12、図5のボビン部組13、図8のダイヤフラム部組14で構成する。
【0014】
部組の状態での部品構成を順次説明する。
【0015】
図6は枠体上部組12で枠体上1の外観の一部に形成した角穴1bにタンシ3を挿入固定した状態を示し、タンシ3の固定は凹部3bと枠体上1の凸部1dの係合で行ない、凹部3bはスリット部3aで分割された上片が撓んで凸部1dに嵌合している。この時、タンシ3の一端は枠体上1の内部に覗いた形で固定される。枠体上1の角穴1bの断面形状は図7に示す通りで、前記枠体上1の凸部1dの形状を得るために、金型を(イ)(ロ)(ハ)の方向に型割りしている。
【0016】
図5はボビン部組13でボビン6が基台となり、中央の円筒部6aにはコイル5を挿入し、外周部に設けた固定台6dの挿入穴6dにはコンデンサ7のリード部7aを挿入し、リード部を挿入した後、開く方向に曲げ先端部に前記コイル5の引出し線5aを略均一に絡めた状態としている。
中央の円筒部6aに挿入したコイル5はボビン6の外周部に形成した突起部6bにより内面が押され仮止めされる。
【0017】
図4は枠体上部組12とボビン部組13との結合状態を示し、前記枠体上1の開口部1eにボビン6の圧入円筒部6cを圧入固定している。圧入することでコイル5は枠体上1とボビン間でガタなく固定され、また、コイルの引出し線5aを絡めたリード部7aは枠体上1の内部に覗いたタンシ3の係合溝3cと係合する。この係合部を半田固定することでコイル、コンデンサ、タンシの3部品は容易に電気接続される。
【0018】
図8はダイヤフラム部組14でダイヤフラム9にコア8を取り付つけた構成となっている。
ダイヤフラム9は円周部にビード部9e、中央に平面厚肉部9b、前記ビード部と平面厚肉部を繋ぐ膜部9aで形成され、平面厚肉部中央には段差部9dを有する棒状突起9cが形成されている。コア8はこの棒状突起9cに挿入され、段差部9dで固定される構造となっている。
【0019】
次に全体構成を図1、図2、図3により説明する。
【0020】
図4は枠体上部組12で枠体下2との間にはダイヤフラム部組14、及びばね4が介在し、枠体上1の爪嵌合枠1aと枠体下2の嵌合爪2bは嵌合し、ダイヤフラム9のビード部9eを撓ませた形で固定している。爪嵌合部は複数個あり枠体下2とダイヤフラム9で形成される室は枠体下2の圧力導入口2aから印加される空気圧に耐えるようになっている。
枠体上1の中央貫通穴に形成したねじ部1cには調整ねじ10が係合し、回動させることで前記ばね4の付与力(ダイヤフラムを押付ける力)を変え、圧力を調整することができる。
【0021】
次に動作と水位検出方法について説明する。
【0022】
ダイヤフラム9は枠体上1の圧力導入口2aからの空気圧とばね4の付与力との関係で上下する。このことでダイヤフラムに固定されたコア8はコイル5の内径部を上下動し、コイル5の抵抗(リアクタンス)を変化させる。コイル5は前記コンデンサ7と電気的に並列に接続されLC発振回路を形成し、空気圧の変化を発振周波数の変化に変換する。このことにより、水位は周波数の変化として検出することができる。
本発明品は空気圧が上昇すると周波数が下がる構造としてある。
【符号の説明】
【0023】
1 枠体上
1a 爪嵌合枠
1b 角穴
1c ねじ部
1d 凸部
1e 開口部
2 枠体下
2a 圧力導入口
2b 嵌合爪
3 タンシ
3a スリット部
3b 凹部
3c 係合溝
4 ばね
5 コイル
5a 引出し線
6 ボビン
6a 円筒部
6b 突起部
6c 圧入円筒部
6d 固定台
6e 挿入穴
7 コンデンサ
7a リード部
8 コア
9 ダイヤフラム
9a 膜部
9b 平面厚肉部
9c 棒状突起部
9d 段差部
9e ビード部
10 調整ねじ
11 爪嵌合部
12 枠体上部組
13 ボビン部組
14 ダイヤフラム部組

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体内外部にダイヤフラム、コア、コイル、及びコンデンサなどを備え、前記コイルとコンデンサでLC発振回路を形成し、圧力を前記ダイヤフラムで受けダイヤフラムに固定されたコアがコイル内径部を上下動することで発振周波数を変化させ、洗濯機の槽などの水位を検出するものにおいて、樹脂等で成形したボビンを個別に設け、これにコイルとコンデンサを固定しコンデンサリード部にコイルを絡めた形でボビン部組とし、枠体に組付ける際にコンデンサリード部が枠体側に固定したタンシと係合する構成とし、係合部を半田固定することでコイル、コンデンサ、タンシの3部品を電気的に接続したことを特徴とする水位センサ。
【請求項2】
請求項1において、ボビン部組を組付ける際、ボビン部組の一端を枠体に圧入固定したことを特徴とする水位センサ。
【請求項3】
請求項1において、タンシは中央に開口部を有するスリットを設け、部材を上下2分割とし上片に設けた凹部が枠体側の角穴部に設けた凸部と係合固定できるようにし、前記枠体側角穴部の凸部は金型上下抜きで構成できるようにしたことを特徴とする水位センサ。
【請求項4】
枠体内外部にダイヤフラム、コア、コイル、及びコンデンサなどを備え、前記コイルとコンデンサでLC発振回路を形成し、圧力を前記ダイヤフラムで受けダイヤフラムに固定されたコアがコイル内径部を上下動することで発振周波数を変化させ、洗濯機の槽などの水位を検出するものにおいて、前記ダイヤフラムは中央に肉厚部を設け、肉厚部の表面中央に段差部を有する棒状突起を設け、この棒状突起部に前記コアを挿入し段差部で固定する構造としたことを特徴とする水位センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−112924(P2012−112924A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276360(P2010−276360)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(500333567)株式会社亀屋工業所 (28)
【Fターム(参考)】