説明

水位検出システム及び方法

【課題】既存の設備に小規模の据付工事で追加して設置することができ、耐放射線性に優れた水位検出システムを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、水位検出システムは、原子炉設備内の水槽21内に設置されて基準ガンマ線を発生する基準ガンマ線源24と、水槽21内において基準ガンマ線源24近傍の同一高さに配置されてガンマ線を検出するガンマ線検出センサ1と、ガンマ線検出センサ1から出力されるガンマ線検出信号を入力して単位時間当たりのガンマ線検出数を計数率とする計数処理を行い、その計数率を出力する信号処理部3と、計数率の閾値を予め記憶しておく閾値記憶部5と、信号処理部3から出力される計数率が閾値を超えた場合にガンマ線検出センサ1が水中から気中に露出した状態であると判定する比較判定部4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば使用済み燃料貯蔵プールなどのように原子炉設備内に設置されたプールの水位を検出する水位検出システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は従来の使用済み燃料貯蔵プールの水位監視装置を示す構成図である。図7に示すように、使用済み燃料貯蔵プール21の水中には、使用済み燃料である貯蔵燃料25が設置されている。使用済み燃料貯蔵プール21の液面26は、通常の液面26近傍に設置されたフロート式レベルスイッチ31により監視されている。このフロート式レベルスイッチ31は、水位高スイッチ32及び水位低スイッチ33を備えている。
【0003】
このように従来の水位監視装置では、液面26が異常に低下した場合の液面26の監視を想定していないため、水位低スイッチ33のレベルより低下した液面26を把握することができない。使用済み燃料貯蔵プール21の液面26は、貯蔵燃料25の健全性を確保する上で重要な監視対象である。最近では、既存の使用済み燃料貯蔵プール21に液面26のレベルを監視する水位計を追加して設置することが求められている。
【0004】
一般的な水位計としては、例えば特許文献1に記載されているように原子炉圧力容器の水位計測計に適用されている差圧式レベル計がある。しかし、この差圧式レベル計は、導圧配管を原子炉圧力容器の外部に引き出す必要があるため、使用済み燃料貯蔵プールに適用することが困難である。
【0005】
また、水位が著しく低下した場合の使用済み燃料貯蔵プールは、高放射線環境となるため、検出部の構造ができるだけ簡素化されたものが望まれている。
【0006】
さらに、耐放射線性に優れた機械式水位計としては、フロート式レベル計やエアパージ式レベル計がある。しかし、このフロート式レベル計は、耐震上の問題がある。また、エアパージ式レベル計は、気体の二次廃棄物が発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−302840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、既存の使用済み燃料貯蔵プールで異常に低下した水位を検出する装置には、次のようなものが求められている。すなわち、その装置としては、第1に、使用済み燃料貯蔵プールの壁面に貫通部を形成する必要がないこと、第2に、耐放射線性を有する簡素な構造の検出部であること、第3に、据付工事が小規模であることといった制約事項を満たす水位計が必要になっている。
【0009】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、既存の設備に小規模の据付工事で追加して設置することができ、耐放射線性に優れた水位検出システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態に係る水位検出システムは、原子炉設備内の水槽内に設置され、基準ガンマ線を発生する基準ガンマ線源と、前記水槽内において前記基準ガンマ線源近傍の同一高さに配置され、ガンマ線を検出するガンマ線検出センサと、前記ガンマ線検出センサから出力されるガンマ線検出信号を入力して単位時間当たりのガンマ線検出数を計数率とする計数処理を行い、その計数率を出力する信号処理部と、前記計数率の閾値を予め記憶しておく閾値記憶部と、前記信号処理部から出力される計数率が前記閾値を超えた場合に前記ガンマ線検出センサが前記水中から気中に露出した状態であると判定する比較判定部と、前記比較判定部から気中露出判定結果を受けて気中露出判定信号を出力する判定出力部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の実施形態に係る水位検出方法は、原子炉設備内の水槽内に基準ガンマ線源及びガンマ線検出センサが近傍であって同一高さに設置され、前記基準ガンマ線源から照射されたガンマ線を前記ガンマ線検出センサにより検出するガンマ線検出工程と、前記ガンマ線検出工程にて出力されるガンマ線検出信号を入力して単位時間当たりのガンマ線検出数を計数率とする計数処理を行い、その計数率を出力する信号処理工程と、前記計数率の閾値を予め記憶しておく閾値記憶工程と、前記信号処理工程にて出力される計数率が前記閾値を超えた場合に前記ガンマ線検出センサが水中から気中に露出した状態であると判定する比較判定工程と、前記比較判定工程にて判定された気中露出判定結果を受けて気中露出判定信号を出力する判定出力工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、既存の設備に小規模の据付工事で水位検出システムを追加して設置することができ、耐放射線性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る水位検出システムの第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る水位検出システムの第2実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る水位検出システムの第3実施形態を示すブロック図である。
【図4】第3実施形態の水位正常時における自動操作を示す構成図である。
【図5】第3実施形態の水位低下時における自動操作を示す構成図である。
【図6】本発明に係る水位検出システムの第4実施形態を示すブロック図である。
【図7】従来の使用済み燃料貯蔵プールの水位監視装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る水位検出システムの各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図1〜図6において、使用済み燃料貯蔵プールの構造は、図7と同様であるので、同一の符号を付して説明する。さらに、以下の各実施形態は、原子炉設備内の使用済み燃料貯蔵プールの水位を検出する水位検出システムに適用した場合について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る水位検出システムの第1実施形態を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の水位検出システムは、固定式ガンマ線検出センサ1と、基準ガンマ線源24と、信号処理部3と、比較判定部4と、閾値記憶部5と、判定出力部6と、閾値書換操作入力部41とを備えている。
【0017】
固定式ガンマ線検出センサ1は、原子炉設備内において水22が貯蔵された水槽としての使用済み燃料貯蔵プール21の水中に設置されている。固定式ガンマ線検出センサ1は、使用済み燃料貯蔵プール21内の鉛直方向に対して所定の高さ位置に位置決めされた状態で設置されている。固定式ガンマ線検出センサ1は、基準ガンマ線源24から照射されたガンマ線を検出し、そのガンマ線検出信号を出力する。
【0018】
基準ガンマ線源24は、基準ガンマ線を発生する。基準ガンマ線源24は、支持部材23を介して固定式ガンマ線検出センサ1と接続されている。基準ガンマ線源24は、固定式ガンマ線検出センサ1の近傍に配置される。基準ガンマ線源24は、固定式ガンマ線検出センサ1の高さと同一の高さに設置されている。
【0019】
固定式ガンマ線検出センサ1と基準ガンマ線源24は、例えば使用済み燃料貯蔵プール21の開口端部の図示しないオペレーションフロアからガイドロッドなどによって吊り下げられ、これらは使用済み燃料貯蔵プール21の内壁面に予め設けられている突起部などに位置決め手段により確実に位置決めされる。
【0020】
信号処理部3を含む以下の測定系は、使用済み燃料貯蔵プール21の外部に設置されている。信号処理部3は、信号伝達線2を通して固定式ガンマ線検出センサ1と電気的あるいは光学的に接続されている。信号処理部3は、図示しないが、増幅部、波形整形部、波高値弁別部、及び計数部などを備えている。上記増幅部は、固定式ガンマ線検出センサ1により検出されたガンマ線検出信号を増幅する。上記波形整形部は、増幅されたガンマ線検出信号を波形整形して信号パルスとする。上記波高値弁別部は、上記波形整形部により得られた信号パルスを予め設定された閾値と比較判定し、その閾値を超えたパルスを信号パルスとする。計数部は、その信号パルスの数を計数する。したがって、信号処理部3は、固定式ガンマ線検出センサ1から出力されるガンマ線検出信号を入力して単位時間当たりのガンマ線検出数を計数率とする計数処理を行い、その計数率を出力する。
【0021】
閾値記憶部5は、上記単位時間当たりのガンマ線検出数である計数率の閾値が予め記憶されている。この閾値は、液面26が固定式ガンマ線検出センサ1と同じ高さにある時の計数率である。
【0022】
比較判定部4は、閾値記憶部5に予め記憶されている計数率の閾値と、信号処理部3から出力される計数率との大小が比較される。比較判定部4は、信号処理部3から出力される計数率が上記閾値を超えた場合に固定式ガンマ線検出センサ1が水中から気中に露出した状態であると判定する。
【0023】
判定出力部6は、比較判定部4から気中露出判定結果を受けて気中露出判定信号を出力する。この場合、判定出力部6は、出力接点がオンし、液面26が固定式ガンマ線検出センサ1より低い位置にあるという情報がモニターなどに画像表示されるか、又は音声告知される。
【0024】
閾値書換操作入力部41は、校正手段であり、図示しない押しボタンなどの操作部を備える。つまり、閾値書換操作入力部41は、外部から閾値書換操作入力を受けて閾値記憶部5に記憶されている閾値を信号処理部3から出力される計数率に書き換える。具体的には、閾値書換操作入力部41は、目視あるいは他の水位計測手段により液面26が固定式ガンマ線検出センサ1と同じ高さの位置にあると確認した時点で、外部からの閾値書換操作入力である閾値書換操作入力部41の上記押しボタンを押す。これにより、閾値書換操作入力部41は、閾値記憶部5に記憶されている閾値をその時点の信号処理部3から出力される計数率で上書きする。その結果、計数率と液面26との関係を校正することができる。
【0025】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0026】
例えば、使用済み燃料貯蔵プール21の液面26が、固定式ガンマ線検出センサ1が設置された鉛直方向の高さよりも低下したと仮定する。
【0027】
すると、固定式ガンマ線検出センサ1と基準ガンマ線源24との間の水がなくなり、空気になる。ここで、水は空気と比較してガンマ線の大きな遮蔽能を有する。そのため、水がなくなることで、固定式ガンマ線検出センサ1に入射するガンマ線が増大する。これにより、信号処理部3から出力される計数率が増大する。
【0028】
なお、この計数率は、必要に応じて測定系外部へ出力し、水中の放射能レベル指標として参照するようにしてもよい。
【0029】
液面26が固定式ガンマ線検出センサ1と同じ高さにある時の計数率を閾値記憶部5に閾値として記憶させておく。計数率は、液面26の低下に伴い単調に増加するため、信号処理部3から出力された計数率は、比較判定部4において閾値記憶部5に記憶されている閾値よりも大きいと判定される。
【0030】
信号処理部3から出力された計数率が閾値記憶部5に記憶されている閾値より大きい場合、判定出力部6の出力接点がオンし、液面26が固定式ガンマ線検出センサ1より低い位置にあるという情報がモニターなどに画像表示されるか、又は音声告知される。これにより、操作員は、液面26が固定式ガンマ線検出センサ1より低い位置にあるということを認識することができる。
【0031】
一方、液面26が固定式ガンマ線検出センサ1より高い位置にある時は、上述した作用とは逆になる。比較判定部4においては、信号処理部3から出力される計数率が閾値記憶部5に記憶されている閾値よりも小さいと判定される。
【0032】
信号処理部3から出力された計数率が閾値記憶部5に記憶されている閾値より小さい場合、判定出力部6の出力接点がオフし、液面26が固定式ガンマ線検出センサ1より高い位置にあるという情報がモニターなどに画像表示されるか、又は音声告知される。
【0033】
このように本実施形態は、固定式ガンマ線検出センサ1を用いた水位計測レベルスイッチとして機能する。本実施形態によれば、水中に設置する部材は、固定式ガンマ線検出センサ1及び基準ガンマ線源24だけの小型の部材で済み、水中に設置するだけでよい。したがって、既存の使用済み燃料貯蔵プール21へ適用する際に大きな据付工事が不要になる。また、検出部が固定式ガンマ線検出センサ1であることから、耐放射線性に優れている。さらに、他の水位計測手段により水位の変動を把握していれば、プール水の放射能の増大を監視することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、外部から閾値書換操作入力を受けて閾値記憶部5に記憶されている閾値を信号処理部3から出力される計数率に書き換える閾値書換操作入力部41を備えているので、計数率と液面26との関係を容易に校正することができる。
【0035】
なお、本実施形態の支持部材23は、固定式ガンマ線検出センサ1と基準ガンマ線源24を接続する部材に限らず、例えば固定式ガンマ線検出センサ1及び基準ガンマ線源24を内部に配置する遮蔽容器を用いてもよい。この遮蔽容器は、上下にそれぞれ連通孔が形成され、これらの連通孔を介して周囲の液面26に合わせて水22が出入り自在に構成されている。
【0036】
(第2実施形態)
図2は本発明に係る水位検出システムの第2実施形態を示すブロック図である。なお、前記第1実施形態と同一の構成部分には、同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0037】
図2に示すように、本実施形態の水位検出システムは、前記第1実施形態の固定式ガンマ線検出センサ1に代えて可動式ガンマ線検出センサ7を用いている。この可動式ガンマ線検出センサ7は、原子炉設備内において水22が貯蔵された使用済み燃料貯蔵プール21の水中の鉛直上下方向に移動可能に設置されている。可動式ガンマ線検出センサ7は、基準ガンマ線源24から照射されたガンマ線を検出し、そのガンマ線検出信号を出力する。
【0038】
基準ガンマ線源24は、支持部材23を介して可動式ガンマ線検出センサ7と接続されている。基準ガンマ線源24は、可動式ガンマ線検出センサ7の近傍に配置される。基準ガンマ線源24は、可動式ガンマ線検出センサ7と共に移動可能である。可動式ガンマ線検出センサ7と基準ガンマ線源24は、常に同じ相互位置関係にあると共に、常に同じ鉛直上下方向の位置にある。
【0039】
本実施形態は、使用済み燃料貯蔵プール21の外部に設置されている前記第1実施形態の測定系に加え、駆動部8と、駆動制御部9と、センサ位置手動入力部14と、駆動量検出部10と、センサ位置情報変換部11と、水位算出部12と、水位出力部13とを備える。
【0040】
可動式ガンマ線検出センサ7は、駆動部8と駆動力伝達部51を介して接続されている。駆動部8は、例えばモータなどの駆動手段であり、駆動力伝達部51を介して可動式ガンマ線検出センサ7及び基準ガンマ線源24を鉛直上下方向に移動させる。
【0041】
駆動力伝達部51は、例えば駆動部8であるモータの出力軸に取り付けられたギヤ、チェーンなどの回転力伝達手段と、この回転力伝達手段から回転力が伝達され、使用済み燃料貯蔵プール21の鉛直方向に立設されるボールネジと、このボールネジに螺合し、可動式ガンマ線検出センサ7及び基準ガンマ線源24が固定されるボールナットと、このボールナットの移動を案内するガイドレールとを備えている。
【0042】
したがって、駆動力伝達部51は、駆動部8であるモータが回転駆動すると、その回転力が上記回転力伝達手段を介してボールネジに伝達される。すると、このボールネジは、軸心回りに回転することで、上記ボールナットがガイドレールに沿って移動する。これにより、可動式ガンマ線検出センサ7及び基準ガンマ線源24が例えば鉛直上方又は鉛直下方に移動することになる。
【0043】
駆動制御部9は、センサ位置手動入力部14による手動操作入力を受けて駆動部8であるモータを駆動制御する。具体的には、駆動制御部9は、上記手動操作入力を受けて可動式ガンマ線検出センサ7及び基準ガンマ線源24の移動方向を鉛直上方又は鉛直下方に制御する他、駆動部8であるモータのオン、オフ制御を行う。ここで、可動式ガンマ線検出センサ7及び基準ガンマ線源24の移動方向を変換する場合は、駆動部8であるモータを逆方向に回転するか、又はギヤ、カムなどから構成される回転方向変更手段によりボールネジの回転方向を逆方向とすることで、前記と逆方向に移動させることができる。
【0044】
駆動量検出部10は、駆動部8の駆動量を検出する。具体的には、駆動量検出部10は、駆動部8であるモータの回転駆動量を検出する。
【0045】
センサ位置情報変換部11は、駆動部8であるモータの回転駆動量を使用済み燃料貯蔵プール21内の鉛直上下方向における可動式ガンマ線検出センサ7及び基準ガンマ線源24の位置情報に変換する。
【0046】
水位算出部12は、判定出力部6からの気中露出判定信号が変化した時点でセンサ位置情報変換部11から出力されている可動式ガンマ線検出センサ7及び基準ガンマ線源24の位置情報に基づいて水位を算出する。すなわち、水位算出部12は、判定出力部6の接点信号が切り替わる時点でのセンサ位置情報変換部11からの出力を液面26の高さと判断する。
【0047】
水位出力部13は、水位算出部12で算出された液面26の値をモニターなどに画像表示されるか、又は音声告知される。
【0048】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0049】
閾値記憶部5に記憶されている閾値は、液面26が可動式ガンマ線検出センサ7と同じ高さにある時の計数率であるように校正されていると仮定する。
【0050】
すると、手動操作によって可動式ガンマ線検出センサ7を鉛直方向に上下動させると、液面26と同じ高さになった時に判定出力部6の接点信号が切り替わり、その時点でのセンサ位置情報変換部11からの出力が液面26の高さであると水位算出部12で算出され、水位出力部13で水位として外部に画像表示されるか、又は音声告知される。
【0051】
このように本実施形態は、可動式ガンマ線検出センサ7を用いた、連続的な水位監視が可能な水位計測レベル計として機能する。本実施形態によれば、概ね可動式ガンマ線検出センサ7及び基準ガンマ線源24以外の部材は、使用済み燃料貯蔵プール21の外部に離隔して設置することが可能である。そのため、使用済み燃料貯蔵プール21の周辺は、小規模な構造とすることができる。したがって、既存の使用済み燃料貯蔵プール21へ適用する際に大きな据付工事が不要になる。また、検出部が固定式ガンマ線検出センサ1であることから、耐放射線性に優れている。さらに、他の水位計測手段により水位の変動を把握していれば、プール水の放射能の増大を監視することができる。
【0052】
なお、支持部材23は、可動式ガンマ線検出センサ7と基準ガンマ線源24を接続する部材に限らず、例えば可動式ガンマ線検出センサ7及び基準ガンマ線源24を内部に配置する遮蔽容器を用いてもよい。この遮蔽容器は、上下にそれぞれ連通孔が形成され、これらの連通孔を介して周囲の液面26に合わせて水22が出入り自在に構成されている。これは、後述する以下の各実施形態についても適用可能である。
【0053】
(第3実施形態)
図3は本発明に係る水位検出システムの第3実施形態を示すブロック図である。図4は第3実施形態の水位正常時における自動操作を示す構成図である。図5は第3実施形態の水位低下時における自動操作を示す構成図である。
【0054】
なお、前記第1実施形態及び第2実施形態と同一の構成部分には、同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0055】
図3に示すように、本実施形態は、前記第2実施形態の構成からセンサ位置手動入力部14を削除し、センサ位置制御演算部15とセンサ位置制御プログラム記憶部16を加えたものである。
【0056】
駆動制御部9は、センサ位置制御演算部15から出力された自動操作入力信号を受けて駆動部8を制御する。
【0057】
センサ位置制御プログラム記憶部16は、可動式ガンマ線検出センサ7を使用済み燃料貯蔵プール21内の鉛直上下方向に測定範囲の全域にわたって移動させ、かつ判定出力部6から出力される気中露出信号が変化する位置で可動式ガンマ線検出センサ7を停止させるプログラムを記憶する。
【0058】
具体的には、センサ位置制御プログラム記憶部16には、図4に示すように可動式ガンマ線検出センサ7が測定範囲の全域を1回走査した後、判定出力部6の接点切替信号が切り替わる場所で停止するプログラムが記憶されている。
【0059】
センサ位置制御演算部15は、センサ位置制御プログラム記憶部16に記憶されているプログラムを一定時間毎に実行して駆動制御部9に制御指示信号を出力する。すなわち、センサ位置制御演算部15は、上記プログラムを一定時間毎に呼び出して実行する。
【0060】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0061】
図4に示すように、センサ位置制御演算部15が一定時間毎に上記プログラムを実行することにより、判定出力部6の接点切替信号が切り替わる位置が探索し直される。そのため、水位出力部13から出力される水位が更新される。
【0062】
例えば、図5に示すように上記プログラムの実行前に液面26の高さが可動式ガンマ線検出センサ7の高さより低下していた場合、測定範囲の走査後に低下した液面26の高さで可動式ガンマ線検出センサ7が停止し、低下した水位情報が水位出力部13から出力され、外部に画像表示されるか、又は音声告知される。
【0063】
このように本実施形態によれば、可動式ガンマ線検出センサ7を用いた連続的な水位監視方法において、水位情報を定期的かつ自動的に取得することができる。
【0064】
(第4実施形態)
図6は本発明に係る水位検出システムの第4実施形態を示すブロック図である。
【0065】
なお、前記第1実施形態〜第3実施形態と同一の構成部分には、同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0066】
図6に示すように、本実施形態は、前記第3実施形態の構成に、計数率分布記録部17、計数率分布変化検出部18及び放射能増大情報出力部19を加えたものである。
【0067】
図6に示すように、計数率分布記録部17は、センサ位置制御プログラム記憶部16に記憶されているプログラムの実行中において、信号処理部3から出力される計数率と、センサ位置情報変換部11から出力される可動式ガンマ線検出センサ7の位置情報を入力し、可動式ガンマ線検出センサ7の測定範囲の計数率分布の履歴を記録する。
【0068】
具体的には、計数率分布記録部17は、センサ位置制御プログラム記憶部16に記憶されているプログラムに従って走査を実行する度に、信号処理部3から出力される計数率と、センサ位置情報変換部11から出力される可動式ガンマ線検出センサ7の高さ位置を関係付けた計数率分布が履歴情報として記録される。
【0069】
計数率分布変化検出部18は、計数率分布記録部17に記録されている最新の計数率分布と前回の計数率分布との比較を行う。すなわち、計数率分布変化検出部18は、最新の計数率分布履歴と、その1回前の計数率分布履歴とを比較する。
【0070】
放射能増大情報出力部19は、計数率分布変化検出部18で水中放射能が増大していることが検出された場合に放射能増大情報を出力する。つまり、放射能増大情報出力部19は、水中放射能の特徴的増大があった場合に放射能増大情報を出力する。
【0071】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0072】
センサ位置制御プログラム記憶部16に記憶されているプログラムに従って走査が実行される度に、測定範囲上の計数率分布が計数率分布記録部17に記録される。例えば、図6において貯蔵燃料25が破損し、放射性物質が水中に放出された場合について考える。この時、計数率分布は、全体的に増大するが、水位変動による場合は、液面26の変動範囲近傍のみで分布変化が起こるため、水位変動の影響と区別することが可能である。
【0073】
この分布変化は、計数率分布変化検出部18で検出され、放射能増大情報出力部19において水中放射能が増大した旨や、その程度が外部に出力され、画像表示されるか、又は音声告知される。
【0074】
このように本実施形態によれば、連続的な水位の自動計測と、放射能レベルの監視を同時に実施することが可能となり、使用済み燃料貯蔵プール21内の貯蔵燃料25の破損を検知することができる。
【0075】
以上のように本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0076】
例えば、上記各実施形態では、原子炉設備内の水槽として使用済み燃料貯蔵プール21に適用した場合について説明したが、これに限らず例えばサプレッションチェンバプールにも適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…固定式ガンマ線検出センサ
2…信号伝達線
3…信号処理部
4…比較判定部
5…閾値記憶部
6…判定出力部
7…可動式ガンマ線検出センサ
8…駆動部
9…駆動制御部
10…駆動量検出部
11…センサ位置情報変換部
12…水位算出部
13…水位出力部
14…センサ位置手動入力部
15…センサ位置制御演算部
16…センサ位置制御プログラム記憶部
17…計数率分布記録部
18…計数率分布変化検出部
19…放射能増大情報出力部
21…使用済み燃料貯蔵プール(水槽)
22…水
23…支持部材
24…基準ガンマ線源
25…貯蔵燃料
26…液面
31…フロート式レベルスイッチ
32…水位高スイッチ
33…水位低スイッチ
41…閾値書換操作入力部
51…駆動力伝達部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉設備内の水槽内に設置され、基準ガンマ線を発生する基準ガンマ線源と、
前記水槽内において前記基準ガンマ線源近傍の同一高さに配置され、ガンマ線を検出するガンマ線検出センサと、
前記ガンマ線検出センサから出力されるガンマ線検出信号を入力して単位時間当たりのガンマ線検出数を計数率とする計数処理を行い、その計数率を出力する信号処理部と、
前記計数率の閾値を予め記憶しておく閾値記憶部と、
前記信号処理部から出力される計数率が前記閾値を超えた場合に前記ガンマ線検出センサが前記水中から気中に露出した状態であると判定する比較判定部と、
前記比較判定部から気中露出判定結果を受けて気中露出判定信号を出力する判定出力部と、
を備えることを特徴とする水位検出システム。
【請求項2】
外部から閾値書換操作入力を受けて前記閾値記憶部に記憶されている閾値を前記信号処理部から出力される計数率に書き換える閾値書換操作入力部を備えることを特徴とする請求項1に記載の水位検出システム。
【請求項3】
前記ガンマ線検出センサは、前記水槽内の鉛直方向に前記基準ガンマ線源と共に移動可能に設置された可動式ガンマ線検出センサであって、
前記可動式ガンマ線検出センサを鉛直方向に移動させる駆動部と、
前記駆動部を駆動制御する駆動制御部と、
前記駆動部の駆動量を検出する駆動量検出部と、
前記駆動量を前記水槽内の鉛直方向における前記可動式ガンマ線検出センサの位置情報に変換するセンサ位置情報変換部と、
前記判定出力部からの気中露出判定信号が変化した時点で前記センサ位置情報変換部から出力されている前記可動式ガンマ線検出センサの位置情報に基づいて水位を算出する水位算出部と、
前記水位算出部で算出された水位を出力する水位出力部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の水位検出システム。
【請求項4】
前記可動式ガンマ線検出センサを前記水槽内の鉛直方向に測定範囲全域にわたって移動させ、前記判定出力部から出力される気中露出信号が変化する位置で前記可動式ガンマ線検出センサを停止させるプログラムを記憶するセンサ位置制御プログラム記憶部と、
一定時間毎に前記プログラムを実行して前記駆動制御部に制御指示信号を出力するセンサ位置制御演算部と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の水位検出システム。
【請求項5】
前記センサ位置制御プログラム記憶部に記憶されているプログラムの実行中において、前記信号処理部から出力される計数率と、前記センサ位置情報変換部から出力される前記可動式ガンマ線検出センサの位置情報を入力し、前記可動式ガンマ線検出センサの測定範囲の計数率分布の履歴を記録する計数率分布記録部と、
前記計数率分布記録部に記録されている最新の計数率分布と前回の計数率分布との比較を行う計数率分布変化検出部と、
前記計数率分布変化検出部で水中放射能が増大していることが検出された場合に放射能増大情報を出力する放射能増大情報出力部と、
を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の水位検出システム。
【請求項6】
原子炉設備内の水槽内に基準ガンマ線源及びガンマ線検出センサが近傍であって同一高さに設置され、前記基準ガンマ線源から照射されたガンマ線を前記ガンマ線検出センサにより検出するガンマ線検出工程と、
前記ガンマ線検出工程にて出力されるガンマ線検出信号を入力して単位時間当たりのガンマ線検出数を計数率とする計数処理を行い、その計数率を出力する信号処理工程と、
前記計数率の閾値を予め記憶しておく閾値記憶工程と、
前記信号処理工程にて出力される計数率が前記閾値を超えた場合に前記ガンマ線検出センサが水中から気中に露出した状態であると判定する比較判定工程と、
前記比較判定工程にて判定された気中露出判定結果を受けて気中露出判定信号を出力する判定出力工程と、
を有することを特徴とする水位検出方法。
【請求項7】
外部から閾値書換操作入力を受けて記憶されている閾値を前記信号処理工程にて出力される計数率に書き換える閾値書換操作入力工程を有することを特徴とする請求項6に記載の水位検出方法。
【請求項8】
前記ガンマ線検出センサは、前記水槽内の鉛直方向に前記基準ガンマ線源と共に移動可能に設置された可動式ガンマ線検出センサであって、前記基準ガンマ線源から照射されるガンマ線を、前記基準ガンマ線源と共に前記可動式ガンマ線検出センサが前記プールの鉛直方向に移動しながら検出する可動式ガンマ線検出工程と、
前記可動式ガンマ線検出センサを鉛直方向に移動させる駆動工程と、
前記駆動工程を制御する駆動制御工程と、
前記駆動工程における駆動量を検出する駆動量検出工程と、
前記駆動量を前記水槽内の鉛直方向における前記可動式ガンマ線検出センサの位置情報に変換するセンサ位置情報変換工程と、
前記判定出力工程にて出力された気中露出判定信号が変化した時点で前記センサ位置情報変換工程にて出力されている前記可動式ガンマ線検出センサの位置情報に基づいて水位を算出する水位算出工程と、
前記水位算出工程で算出された水位を出力する水位出力工程と、
を有することを特徴とする請求項6に記載の水位検出方法。
【請求項9】
前記可動式ガンマ線検出センサを測定範囲全域にわたって移動させ、前記判定出力工程にて出力される気中露出信号が変化する位置で前記可動式ガンマ線検出センサを停止させるプログラムを記憶するセンサ位置制御プログラム記憶工程と、
一定時間毎に前記プログラムを実行して前記駆動制御工程にて制御指示を出力するセンサ位置制御演算工程と、
を有することを特徴とする請求項8に記載の水位検出方法。
【請求項10】
前記センサ位置制御プログラム記憶工程にて記憶されているプログラムの実行中において、前記信号処理工程にて出力される計数率と、前記センサ位置情報変換工程にて出力される前記可動式ガンマ線検出センサの位置情報を入力し、前記可動式ガンマ線検出センサの測定範囲の計数率分布の履歴を記録する計数率分布記録工程と、
前記計数率分布記録工程にて記録されている最新の計数率分布と前回の計数率分布との比較を行う計数率分布変化検出工程と、
前記計数率分布変化検出工程で水中放射能が増大していることが検出された場合に放射能増大情報を出力する放射能増大情報出力工程と、
を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の水位検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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