説明

水再分散性を有する粉状塗料

【課題】、容易に粉状のエナメル塗料が作成でき、さらに高光沢塗膜を形成する粉状塗料の設計が可能な、水再分散性に優れた粉状塗料を提供する。
【解決手段】水分散型樹脂(a)及び着色顔料(b)を、該樹脂(a)固形分100重量部に対して顔料(b)が1〜200重量部となるように含む水分散液(I)を乾燥してなる粉状エナメルを含有する粉状塗料であって、使用時に水性媒体を加えて攪拌混合し液状化することを特徴とする水再分散性を有する粉状塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水再分散性を有する粉状塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全の観点から、コーティング材料や各種添加剤等に用いられる合成樹脂は、無公害、省資源で作業性等の観点から溶剤系樹脂より水分散型樹脂や水溶性樹脂等の合成樹脂水分散体に移行しつつある。この合成樹脂水分散体のうち、水を加えて攪拌混合することにより、容易に水に分散する粉末樹脂は再分散性樹脂粉末あるいは易水分散性樹脂粉末と呼ばれ、輸送や保管、廃棄処理等の容易さから、従来、土木用、紙用、接着剤用又は塗料用等のバインダー、セメントやモルタルへの混入剤として適用されている。
【0003】
上記粉末樹脂を含む粉末塗料としては、主に建築工事で行われるセメントモルタル塗り、石膏プラスター塗り等に用いられる、例えば再分散性粉末樹脂、セメント成分、消石灰、プラスター、珪藻土、無機質軽量骨材などを含む粉末状の下地調整材や仕上塗材が挙げられ、これらは使用前に水を加えて調製され、壁面などに塗工することが行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−40277号公報
【特許文献2】特開2002−348168号公報
【特許文献3】特表2002−541299号公報
【特許文献4】特開2004−27225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらは製造時や使用時にダスト等発塵の問題があり、また容器に小分けして使用するため、製造時に容器内に配合混合された内容物が、製造工程によってはブロッキング現象を起こす不具合があった。
【0006】
さらに従来の粉末塗料では、専用の原色塗料或いは原色ペーストなどがないため調色を行なうことができず、所望の塗色に仕上げることが困難であった。着色顔料を易水分散可能な粉末、顆粒、フレーク又はペレットにする顔料調整物について提案されている(例えば、特許文献3参照)が、粉状塗料とするものではない。一方、特許文献4では、顔料成分を含む粉末の各プレ塗料とポリマーバインダーを含む粉末のプレ塗料とを含む塗料について提案されているが、ポリマーバインダーを含む粉末のプレ塗料の作成には抗粘結剤として炭酸カルシウムなどの体質顔料が必要で、高光沢塗膜を形成する塗料の設計が困難であり、また塗料の各成分について夫々に粉状化しているので、粉状化の工数が多大である。
【0007】
本発明の目的は、容易に粉状のエナメル塗料が作成でき、さらに高光沢塗膜を形成する粉状塗料の設計が可能な、水再分散性に優れた粉状塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水分散型樹脂(a)及び着色顔料(b)を、該樹脂(a)固形分100重量部に対して顔料(b)が1〜200重量部となるように含む水分散液(I)を乾燥してなる粉状エナメルを含有する粉状塗料であって、使用時に水性媒体を加えて攪拌混合し液状化することを特徴とする水再分散性を有する粉状塗料に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被膜形成成分である水分散型樹脂(a)と着色顔料(b)を共に含む水分散液(I)を噴霧乾燥してなる粉状エナメルを用いるので、粉状化の工数が低減でき、また炭酸カルシウムなどの抗粘結剤を用いなくとも樹脂が融着することなく、高光沢塗膜を形成する粉状塗料の設計が可能である。さらに着色顔料(b)としてチタン白を用いた場合には、得られる粉状エナメルを白ベース塗料として使用することができ、これに所望の易分散性色材を配合することによって容易に調色作業を行なうことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の粉状塗料は、水分散型樹脂(a)及び着色顔料(b)を含む水分散液(I)を噴霧乾燥してなる粉状エナメルを含有する。
【0011】
上記水分散型樹脂(a)は被膜形成成分であり、該水分散型樹脂(a)としては、通常、再分散性樹脂粉末として従来公知のものが特に制限なく使用でき、例えば酢酸ビニル樹脂系、エチレン酢酸ビニル樹脂系、アクリル(スチレン)樹脂系などのエマルションが挙げられ、またこのような樹脂系のエマルション以外の水系樹脂をブレンドあるいは複合化粒子化等の公知の方法により複合化せしめた樹脂のエマルションも使用可能である。
【0012】
上記水分散型樹脂(a)として、特に、再分散性確保の観点から、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース誘導体、水溶性アクリル樹脂等の公知の水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種を保護コロイドとして重合性不飽和モノマーを乳化重合して得られるエマルションが好適に使用できる。保護コロイドとしては、特にポリビニルアルコール系樹脂が水再分散性の点から好適である。
【0013】
重合性不飽和モノマーは、通常、分子中に少なくとも1個、好ましくは1個の重合性不飽和基、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などを含有する化合物を包含するものであり、主に(メタ)アクリロイル基を含有するものが好適に使用できる。
【0014】
上記重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有不飽和モノマー;アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有不飽和モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物、該多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物などの水酸基含有不飽和モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、ブタジエン、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0015】
尚、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタクリレート」を表す。
【0016】
また上記保護コロイドとして、カルボキシル基含有不飽和モノマー、メタクリロイル基含有不飽和モノマー、及び必要に応じてその他の重合性不飽和モノマーを含有するモノマー混合物を、付加開裂型の連鎖移動剤である2,4−ジフェニル−4−メチル−1―ペンテン(α−メチルスチレンダイマーとも呼称されることもある)の存在下にラジカル重合して得られるラジカル重合体を用いることも可能である。
【0017】
上記重合性不飽和モノマーを乳化重合する際には、上記保護コロイドに、必要に応じて分散安定性向上のため、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤などを併用してもよい。アニオン性乳化剤は、特に限定されるものではなく、例えばスルホン酸基、リン酸基等を有する乳化剤を用いることができる。ノニオン性乳化剤としては、ポリエチレングリコール型、多価アルコール型、アマイド系等のノニオン性乳化剤を用いることができ、一般にはHLBが5〜20のものが使用される。カチオン性乳化剤としてはアンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などのカチオン性基を有するものを使用することができる。これらのアニオン性、カチオン性及びノニオン性の乳化剤は、ラジカル反応性不飽和基を有する反応性乳化剤であってもよい。
【0018】
乳化重合する際に、保護コロイドと重合性不飽和モノマーとの配合比率は、特に限定されるものではないが、通常、前者/後者の固形分比で2/98〜40/60、特に5/95〜20/80の範囲内にあることが好適である。また乳化重合において、レドックス系重合開始剤や水溶性の過酸化物、アゾ系開始剤などの従来公知の重合開始剤を使用することができる。また、乳化重合反応温度は200℃以下が好ましい。
【0019】
上記着色顔料(b)としては、特に制限なく従来公知のものが使用でき、例えばチタン白、チタンイエロー、ベンガラ、カーボンブラック、黄鉛等の無機着色顔料;アゾ系、キナクリドン系、シアニンブルー、シアニングリーン、ベンゾイミダゾロン系、イソインドリン系、キノフタロン系等の有機着色顔料などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0020】
上記着色顔料(b)は、特にチタン白を含むことが形成塗膜の下地/素地面の隠蔽性や仕上り性の点から好適である。
【0021】
上記着色顔料(b)と前記水分散型樹脂(a)との混合方法としては、好適には、着色顔料(b)に顔料分散剤及び水を加え、分散処理によって得られる顔料ペーストを、水分散型樹脂(a)と混合するのが望ましい。
【0022】
本発明では、前記水分散型樹脂(a)及び上記着色顔料(b)を、該樹脂(a)固形分100重量部に対して顔料(b)が1〜200重量部、好ましくは0.5〜100重量部の範囲内となるように含む水分散液(I)を乾燥して粉状エナメルを製造する。特に着色顔料(b)が、チタン白のみである場合には、樹脂(a)固形分100重量部に対してチタン白が10〜200重量部、好ましくは30〜80重量部の範囲内となるように使用するのが適当である。
【0023】
上記水分散液(I)には、水分散型樹脂(a)及び上記着色顔料(b)以外に必要に応じて、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、珪酸アルミニウム、シリカ、タルク、アルミナホワイトなどの体質顔料;軽量骨材、石膏、セメント、消石灰粉末などの充填剤;顔料分散剤、増粘剤、硬化剤、抗菌剤、消泡剤、造膜助剤、反応調整剤、有機溶剤などの塗料用添加剤を適宜選択して添加することができる。特に炭酸カルシウムなどの抗粘結剤に使用される体質顔料を水分散液(I)の全固形分中に1〜15重量%、好ましくは5〜10重量%添加すると噴霧乾燥性がより向上する場合がある。また消泡剤を水分散液(I)の全固形分中に固形分で0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%添加すると形成塗膜の仕上り性等が向上するので好ましい。消泡剤としては、従来公知のものが特に制限なく採用でき、特にジオルガノポリシロキサン及びシリカ微粉末を主成分とするものが好適である。
【0024】
上記水分散液(I)は、噴霧乾燥等のし易さから、通常、固形分濃度が1〜60重量%、好ましくは20〜50重量%の範囲内となるように、水で希釈する等調整することが望ましい。
【0025】
上記水分散液(I)の乾燥粉末化の方法は種々あり、例えば噴霧乾燥法、凍結乾燥法、減圧乾燥法等が挙げられ、特に噴霧乾燥が好適である。噴霧乾燥には、液体を噴霧して乾燥する通常の噴霧乾燥機(噴霧の形式によりディスク式やノズル式等)が使用でき、熱源としては熱風や加熱水蒸気等が用いられる。乾燥条件は、噴霧乾燥機の大きさや種類、水分散液の固形分濃度、粘度、流量等によって適宜選択される。乾燥温度は通常80〜150℃程度が好適である。
【0026】
乾燥した粉状エナメルは、フィルタ砕解機等を介して、特定の粒度以下をカットすることでダストを少なくすることが可能である。該粉状エナメルの平均粒子径は、1〜3000μm、好ましくは20〜500μm程度が適当である。
【0027】
本発明の粉状塗料は、上記の通り得られる粉状エナメルを含有するものであり、これのみでも本発明の粉状塗料として使用可能であるが、必要に応じて体質顔料、軽量骨材、石膏、セメント、消石灰粉末の群から選ばれる少なくとも1種の粉末状充填剤、及び/又は増粘剤、抗粘結剤、架橋剤、分散剤、抗菌剤、消泡剤、造膜助剤、反応調整剤、繊維の群から選ばれる少なくとも1種の粉末状添加剤を含有することができる。さらに粉末状添加剤としてホルマリンキャッチャーなども添加できる。また調色を行なう場合には、易分散性色材を適宜配合することもできる。
【0028】
上記抗粘結剤としては、前述の炭酸カルシウムなどの体質顔料に代表される微粒子の無機粉末が使用され、該抗粘結剤の粉末エナメルへの添加方法としては、乾燥粉末化後の粉末エナメルに添加し均一に混合する方法、水分散液(I)を乾燥する際に抗粘結剤を同時に噴霧する方法の何れも採り得る。均一混合性と選択的な表面付着性が得られより少量で粘結防止効果が得られることから後者の方法が好ましい場合があるが、高光沢塗膜形成を目的とする場合には使用しないことが望ましい。
【0029】
上記易分散性色材としては、従来公知のノンダスティングな均一顔料調整物であれば特に制限はなく使用でき、例えば赤、青、緑、黄、黒、白色など前述の如き着色顔料を易水分散可能な粉末、顆粒、フレーク又はペレットにしたものが挙げられ、好適には主として球形の顆粒状粒子が望ましい。該顆粒状の色材は、平均粒子径が1〜3,000μm、好ましくは20〜2,000μmで、嵩密度が0.2〜0.6g/ml程度であることが望ましい。該顆粒状の色材としては、特に中空体構造を有するものが、易分散性の点から好適である。
【0030】
本発明の粉状塗料は、上述の粉状エナメル、及び必要に応じて粉末状充填剤、粉末状添加剤を夫々計量配合し、そのまま容器詰めして製造することができる。
【0031】
容器としては、紙パック(防水紙袋や防水箱等)、金属缶、プラスチック缶、プラスチックパック(スタンディングパウチ等)など特に制限なく使用可能であり、容量は用途や必要量に応じて適宜選択可能である。各粉末成分は、製品としての容器内に計量配合することが可能である。
【0032】
粉状塗料の容器への充填量は、容器容量の10〜80%の範囲内となるように各粉末成分を計量配合することが望ましい。これによって使用時に、水性媒体を該容器内に添加し攪拌混合して液状化することができ、塗装現場で飛沫化の心配もなく利便性が高くなる。本発明において「使用時」とは、塗装に供する使用直前であっても、塗装までの一定期間前であってもよく、水性媒体を添加して液状化した状態で一定期間放置しておくこともできる。
【0033】
上記製品としての容器内の各粉末成分を均一に攪拌混合する手段としては、従来公知の攪拌装置が使用可能であり、通常、塗料容器を閉蓋して該塗料容器自体の回転や振動などに供する装置、例えばジャイロミキサーなどによって均一攪拌することができるが、好ましくは原材料がすべて粉状であって上記述べた方法にて計量詰めされたものであれば、塗装現場で、必要な水を入れ液状の塗料とする際の攪拌により均一な混合が可能なことから、塗料充填後の攪拌を除くことが可能となる。これによって製品としてそのまま出荷もしくは使用に供し得る容器入り粉末塗料が得られる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を示す。
【0035】
水分散液(I)の製造
製造例1〜6
容器に、表1の組成(A)に示される各成分を順次仕込み、ディスパーで30分間均一になるまで攪拌、分散処理を続け各顔料ペーストを得た。その後、表1の組成(B)に示される水分散型樹脂(注9)を該各顔料ペーストに添加し、攪拌混合して各水分散液(I−1)〜(I−6)を得た。尚、表1中の(注1)〜(注9)は以下の通りである。
【0036】
(注1)「スラオフ72N」:商品名、武田薬品社製、防腐剤
(注2)「BYK190」:商品名、ビックケミー社製、顔料分散剤
(注3)「BYK192」:商品名、ビックケミー社製、顔料分散剤
(注4)「ノプコサントK」:商品名、サンノプコ社製、顔料分散剤
(注5)「BYK024」:商品名、ビックケミー社製、消泡剤
(注6)「SNデフォーマーA−70」:商品名、サンノプコ社製、消泡剤
(注7)「チタンJR−605」:商品名、テイカ社製、チタン白
(注8)「タンカル300」:商品名、竹原化学工業社製、炭酸カルシウム
(注9)水分散型樹脂(a):平均重合度約1000、平均ケン化度約88〜90のポリビニルアルコール樹脂を保護コロイドとして重合性不飽和モノマー(メチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート=40/60)を乳化重合して得られる固形分50%のエマルション。保護コロイド/重合性不飽和モノマーの使用比は10/90。
【0037】
【表1】

【0038】
粉状塗料の作成
実施例1〜7及び比較例1、2
上記各製造例で得た水分散液(I−1)〜(I−6)を、夫々、140℃の熱風中に噴霧して乾燥し、各粉状白エナメル(1)〜(6)を得た。各水分散液の噴霧乾燥性を評価し、特に良好なものを◎とし、良好なものを○、得られる粉末の融着が多く困難なものを×とした。結果を表1に併記する。
【0039】
密封可能な内面コート缶の中に、得られた各粉状白エナメル、粉末状充填剤や添加剤などを表2に示す配合組成で、各々秤量して順次加えた。配合後、容器を密閉して、軽く容器を手で振って目的の各粉状塗料を得た。
【0040】
(注10)「SNデフォーマー14HP」:商品名、サンノプコ社製、粉状消泡剤
(注11)「DM2072P」:商品名、クラリアントポリマー社製、再分散性粉末樹脂
(注12)「ペガール450」:商品名、三井高圧ガス社製、再分散性粉末樹脂
【0041】
【表2】

【0042】
粉状塗料の水溶解性評価
各塗料容器の蓋を開け、実施例及び比較例の各粉状塗料60部に対して夫々水を40部の比率で加えて塗料用ミキサーなどの簡単な攪拌器で攪拌して、塗料の水再分散状態を下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0043】
評価基準 ◎:1〜2分の攪拌で、ブツが見られず通常の水性塗料の状態と同じになる
○:3〜4分の攪拌で、ブツが見られず通常の水性塗料の状態と同じになる
△:5分の攪拌で、全体は溶解するがややブツが見られる
×:5分の攪拌では、不溶解物が多く見られる
【0044】
塗装作業性評価
上記の評価で得た各液状塗料を刷毛で、「EPシーラー白」(関西ペイント社製、シーラー)を塗布したスレート板に、約100g/m2の塗布量で塗装し、1分経過後に一部を指で5回転するように擦り、ラビング部を作成した。翌日、塗面の外観評価と、刷毛塗装面とラビング面との色の違いを下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0045】
評価基準 ◎:塗膜表面にブツが見られず、ラビング面との色の違いもない
○:塗膜表面にわずかにブツは見られるが、ラビング面との色の違いはない
△:塗膜表面のブツが目立つ、ラビング面との色の違いもはっきりと判る
×:ブツのため塗装時、筋になって塗装できない
【0046】
貯蔵安定性
実施例及び比較例の各粉状塗料をブリキの密閉容器にて40℃で6ヶ月貯蔵した。この貯蔵後の粉状塗料を使用し、上記の水溶解性と塗装作業性の評価を行った。いずれも貯蔵前後で結果に違いが生じない場合を○、いずれかで異常が認められる場合を×とした。
【0047】
形成塗膜の性能評価
JIS K 5600−1−4に規定する表面調整を行った繊維強化セメント板(150×70×3mm)の上に、「EPシーラー白」(関西ペイント社製、シーラー)を塗布したものを被塗板として使用した。該被塗板上に、実施例及び比較例の各粉状塗料60部に対して各々水を40部の比率で添加し、塗料用ミキサー等で攪拌して得られた各水性塗料を刷毛で、約100g/m2の塗布量で2回塗装した。気温20℃・相対湿度60%の条件下で7日間乾燥させて、各試験塗板を作成した。
【0048】
(*1)仕上がり性:試験塗板の塗膜表面を目視で観察して下記基準で評価した。
評価基準 ○:塗膜表面にザラツキがほとんどなく、シッシング(残泡)がない
△:塗膜表面にザラツキがほとんどなく、シッシングが見られる
×:塗膜表面のザラツキが認められる
(*2)耐水性:上記試験塗板を水中に4日間浸漬した後、引き上げてその塗面のフクレ、軟化等の劣化が認められない場合を○、認められる場合を△とし、塗膜の溶出・剥落が見られるものを×とした。
【0049】
(*3)光沢(60度グロス):上記試験塗板の光沢を、JIS K 5600 4−7 鏡面光沢度の試験方法に準じて測定した。
【0050】
(*4)耐洗浄性:JIS K 5663に準じて試験した。洗浄回数が300回以上を○、300回以下を×とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散型樹脂(a)及び着色顔料(b)を、該樹脂(a)固形分100重量部に対して顔料(b)が1〜200重量部となるように含む水分散液(I)を乾燥してなる粉状エナメルを含有する粉状塗料であって、使用時に水性媒体を加えて攪拌混合し液状化することを特徴とする水再分散性を有する粉状塗料。
【請求項2】
水分散型樹脂(a)が、水溶性高分子を保護コロイドとして重合性不飽和モノマーを乳化重合して得られる請求項1記載の粉状塗料。
【請求項3】
着色顔料(b)に顔料分散剤及び水を加え、分散処理によって得られる顔料ペーストを、水分散型樹脂(a)と混合してなる請求項1記載の粉状塗料。
【請求項4】
着色顔料(b)が、チタン白を含む請求項1記載の粉状塗料。
【請求項5】
体質顔料、軽量骨材、石膏、セメント、消石灰粉末の群から選ばれる少なくとも1種以上の粉末状充填剤、及び/又は増粘剤、抗粘結剤、硬化剤、分散剤、抗菌剤、消泡剤、造膜助剤、反応調整剤、繊維の群から選ばれる少なくとも1種以上の粉末状添加剤を含有する請求項1ないし4のいずれか1項記載の粉状塗料。
【請求項6】
粉状エナメル、及び必要に応じて易分散性色材、粉末状充填剤、粉末状添加剤を夫々計量配合し、そのまま容器詰めしてなる1ないし5のいずれか1項記載の水再分散性を有する粉状塗料の製造方法、
【請求項7】
粉末塗料の容器への充填量が容器容量の10〜80%の範囲内となるように各粉末成分を計量配合する請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
使用時に、水性媒体を容器内に添加し攪拌混合して液状化する、請求項7記載の方法によって製造された粉末塗料の使用方法。


【公開番号】特開2006−52293(P2006−52293A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234286(P2004−234286)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】