説明

水再利用装置

【課題】水浄化ユニットの構成の簡素化を図ると共に、ユニットの小型化を図る。
【解決手段】水浄化ユニット(10)は、雨水を貯留する貯留タンク(11)と、貯留タンク(11)内に設けられ、貯留タンク(11)における貯留水中でストリーマ放電を生起する電極対と、電極対に直流電圧を印加する直流電源とを有し、ストリーマ放電によって貯留水中に過酸化水素を生成して貯留水を浄化する放電ユニット(62)とを備えている。放電ユニット(62)は、貯留タンク(11)内の底部に設けられている。貯留タンク(11)には、雨水を導く樋(21)が接続されると共に、放電ユニット(62)によって浄化された貯留タンク(11)の浄化水を所定箇所に供給する送水管(12)が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水または井戸水を浄化する水再利用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、雨水を再利用するための水再利用装置が提案されている。この水再利用装置は、特許文献1に示すように、雨水を貯留する貯留タンクと、電解水供給装置とを備えている。該電解水供給装置は、上水配管と食塩供給管とが接続されると共に、一対の陰極と陽極とを備えている。そして、上記電解水供給装置は、食塩が添加された上水を電解処理して電解水を生成し、この電解水を貯留タンクに供給して貯留タンク内の雨水を浄化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−343643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の水再利用装置においては、電気分解を利用しているので、電解水を生成するために上水や食塩を用いる必要があった。つまり、雨水や井戸水は塩素を含まないので、雨水や井戸水のみでは電気分解によって電解水を生成することができず、浄化することができない。したがって、従来の水再利用装置は、上水や食塩を供給する装置を別個に設ける必要があるので、構成が複雑になると共に、装置自体が大型化するという問題があった。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、構成の簡素化を図ると共に、装置自体の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、雨水または井戸水を貯留する貯留タンク(11)と、該貯留タンク(11)内に設けられ、上記貯留タンク(11)における貯留水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)と、該電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)とを有し、上記ストリーマ放電によって上記貯留水中に過酸化水素を生成して上記貯留水を浄化する放電ユニット(62)とを備えている。
【0007】
上記第1の発明では、貯留タンク(11)に貯留された雨水または井戸水が放電ユニット(62)のストリーマ放電による過酸化水素水によって浄化され、浄化された水が再利用される。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、上記放電ユニット(62)が、貯留タンク(11)の内部における底部に設けられたものである。
【0009】
上記第2の発明では、ストリーマ放電に伴う熱によって過酸化水素水が貯留タンク(11)内を対流し、貯留タンク(11)内の貯留水が浄化される。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、上記貯留タンク(11)に、雨水を導く導入管(21)が接続されると共に、放電ユニット(62)によって浄化された貯留タンク(11)の浄化水を所定箇所に供給する送水管(12)が接続されたものである。
【0011】
上記第3の発明では、雨水が貯留タンク(11)に貯留され、浄化水が送水管(12)を介して所定箇所に供給される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、貯留水の水中でストリーマ放電を生起させて過酸化水素を生成するようにしたために、雨水や井戸水を確実に浄化することができる。
【0013】
特に、ストリーマ放電によって過酸化水素を生成するので、電気分解を利用して雨水や井戸水を浄化する場合に比して上水や食塩を用いる必要がなく、単にストリーマ放電を生起させる放電ユニット(62)を設けるのみで貯留タンク(11)の貯留水を確実に浄化することができる。この結果、本実施形態では、上水や食塩を供給する装置を設ける必要がないので、構成の簡素化を図ることができると共に、装置自体の小型化を図ることができる。
【0014】
また、上記第2の発明によれば、上記放電ユニット(62)が貯留タンク(11)の底部に設けられているので、過酸化水素がストリーマ放電に伴う熱によって貯留タンク(11)内を対流する。この対流により、水中での過酸化水素の拡散が促される。この結果、貯留タンク(11)内の貯留水全体が確実に浄化される。
【0015】
また、上記第3の発明によれば、上記貯留タンク(11)に送水管(12)が接続されているので、トイレなどに確実に浄化水を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施形態1に係る給湯システムの全体構成を示す概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図3】図3は、実施形態1に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図5】図5は、実施形態1の変形例に係る水浄化ユニットの全体構成図である。
【図6】図6は、実施形態1の変形例に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図7】図7は、実施形態2に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図8】図8は、実施形態2に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図9】図9は、実施形態2の変形例に係る絶縁ケーシングの蓋部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
〈発明の実施形態1〉
図1に示すように、本実施形態の水再利用装置である水浄化ユニット(10)は、家屋(20)に設けられ、貯留タンク(11)と放電ユニット(62)とを備えている。
【0019】
上記貯留タンク(11)は、家屋(20)の庭等に設けられ、雨水(22)を貯留するように構成されている。そして、上記貯留タンク(11)には、雨水(22)を導く導入管である樋(21)が接続されると共に、放電ユニット(62)によって浄化された貯留タンク(11)の浄化水をトイレなどの所定箇所に供給する送水管(12)が接続されている。上記送水管(12)には、送水ポンプ(13)が設けられている。
【0020】
上記放電ユニット(62)は、貯留タンク(11)の貯留水の水中でストリーマ放電を行って水中に過酸化水素等の浄化成分を生成し、この浄化成分によって貯留水の浄化を行うものである。そして、上記放電ユニット(62)は、図2に示すように、貯留タンク(11)における内部の底部に設けられている。
【0021】
上記放電ユニット(62)は、放電電極(64)及び対向電極(65)とからなる電極対(64,65)と、この電極対(64,65)に電圧を印加する電源部(70)と、放電電極(64)を内部に収容する絶縁ケーシング(71)とを備えている。
【0022】
上記電極対(64,65)は、水中でストリーマ放電を生起するためのものである。上記放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に配置されている。放電電極(64)は、上下に扁平な板状に形成されている。放電電極(64)は、電源部(70)の正極側に接続されている。上記放電電極(64)は、例えば、ステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。
【0023】
上記対向電極(65)は、絶縁ケーシング(71)の外部に配置されている。上記対向電極(65)は、放電電極(64)の上方に設けられている。対向電極(65)は、上下に扁平な板状であって、且つ上下に複数の貫通孔(66)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。対向電極(65)は、放電電極(64)と略平行に配設されている。対向電極(65)は、電源部(70)の負極側に接続されている。対向電極(65)は、例えば、ステンレス、真鍮等の導電性の金属材料で構成されている。
【0024】
上記電源部(70)は、電極対(64,65)に所定の直流電圧を印加する直流電源で構成されている。即ち、電源部(70)は、電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(64,65)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加する。電源部(70)のうち、対向電極(65)が接続される負極側は、アースと接続されている。また、電源部(70)には、電極対(64,65)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。
【0025】
上記絶縁ケーシング(71)は、貯留タンク(11)の底部に設置されている。絶縁ケーシング(71)は、例えば、セラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(71)は、一面(上面)が開放された容器状のケース本体(72)と、該ケース本体(72)の上方の開放部を閉塞する板状の蓋部(73)とを有している。
【0026】
上記ケース本体(72)は、角型筒状の側壁部(72a)と、該側壁部(72a)の底面を閉塞する底部(72b)とを有している。放電電極(64)は、底部(72b)の上側に敷設されている。絶縁ケーシング(71)では、蓋部(73)と底部(72b)との間の上下方向の距離が、放電電極(64)の厚さよりも長くなっている。つまり、放電電極(64)と蓋部(73)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(71)の内部では、放電電極(64)とケース本体(72)と蓋部(73)との間に空間(S)が形成される。
【0027】
上記絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)には、図2及び図3に示すように、該蓋部(73)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74)が形成されている。この開口(74)により、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電界の形成が許容されている。蓋部(73)の開口(74)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(74)は、電極対(64,65)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0028】
以上のように、絶縁ケーシング(71)は、電極対(64,65)のうちの一方の電極(放電電極(64))のみを内部に収容し、且つ電流密度集中部としての開口(74)を有する絶縁部材を構成している。
【0029】
加えて、絶縁ケーシング(71)の開口(74)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71)の開口(74)は、該開口(74)に気相部としての気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0030】
−水浄化ユニット(10)の浄化動作−
次に、上記水浄化ユニット(10)の浄化動作について説明する。
【0031】
先ず、雨水(22)は、家屋(20)の屋根から樋(21)を流れて貯留タンク(11)に導かれ、貯留タンク(11)に貯留される。一方、水浄化ユニット(60)を運転すると、貯留タンク(11)に貯留された雨水(22)である貯留水が浄化される。
【0032】
具体的に、上記水浄化ユニット(60)の運転の開始時には、図2に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば5kV)が印加されると、電極対(64,65)の間に電界が形成される。放電電極(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われている。このため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されとともに、開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0033】
上記開口(74)内の電流密度が上昇すると、開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水の気化が促進されて気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、図4に示すように、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、対向電極(65)に導通する負極側の水と、正極側の放電電極(64)との間に気泡(B)が介在する。従って、この状態では、気泡(B)が、放電電極(64)と対向電極(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴いストリーマ放電が発生する。
【0034】
以上のようにして、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、貯留タンク(11)内の水中では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。特に、上記放電ユニット(62)が貯留タンク(11)の底部に設けられているので、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって貯留タンク(11)内を対流する。この対流により、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。また、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、このストリーマ放電に伴ってこの気泡(B)でイオン風を生成し易くなる。よって、貯留タンク(11)内では、このイオン風を利用して、活性種や過酸化水素の拡散効果を更に向上する。
【0035】
また、上記貯留タンク(11)には、樋(21)が銅で形成されると、樋(21)から溶出した銅イオンが供給される。過酸化水素と銅イオンの存在下では、フェントン反応により、銅イオンが触媒的に作用して水酸ラジカルの生成が促進される。これにより、水酸ラジカルによる水の浄化効率が向上する。加えて、銅イオンは菌の繁殖を抑制する効果があるため、水中での殺菌作用も高くなる。
【0036】
以上のようにして、水中に拡散した水酸ラジカル等の活性種は、水中に含まれる被処理成分(例えばアンモニア等)を酸化分解して水の浄化に利用される。また、水中に拡散した過酸化水素は、水の殺菌に利用される。
【0037】
上記貯留タンク(11)に生成された浄化水は、送水ポンプ(13)によって送水管(12)を介してトイレなどの所定箇所に供給される。
【0038】
−実施形態1の効果−
以上のように、本実施形態1によれば、貯留水の水中でストリーマ放電を生起させて過酸化水素を生成するようにしたために、雨水(22)を確実に浄化することができる。
【0039】
特に、ストリーマ放電によって過酸化水素を生成するので、電気分解を利用して雨水(22)を浄化する場合に比して上水や食塩を用いる必要がなく、単にストリーマ放電を生起させる放電ユニット(62)を設けるのみで雨水(22)を確実に浄化することができる。この結果、本実施形態では、上水や食塩を供給する装置を設ける必要がないので、構成の簡素化を図ることができると共に、装置自体の小型化を図ることができる。
【0040】
また、上記放電ユニット(62)が貯留タンク(11)の底部に設けられているので、過酸化水素がストリーマ放電に伴う熱によって貯留タンク(11)内を対流する。この対流により、水中での過酸化水素の拡散が促される。この結果、貯留タンク(11)内の貯留水全体が確実に浄化される。
【0041】
また、上記貯留タンク(11)に送水管(12)が接続されているので、トイレなどに確実に浄化水を供給することができる。
【0042】
〈実施形態1の変形例〉
上記実施形態1は、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている。しかしながら、例えば図5及び図6に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、放電電極(64)及び対向電極(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0043】
この変形例においても、各開口(74)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれストリーマ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
【0044】
〈発明の実施形態2〉
実施形態2に係る給湯システム(10)は、上述した実施形態1と放電ユニット(62)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0045】
図7に示すように、実施形態2の放電ユニット(62)は、貯留タンク(11)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、実施形態2の放電ユニット(62)は、放電電極(64)と対向電極(65)と絶縁ケーシング(71)とが一体的に組立てられている。
【0046】
上記絶縁ケーシング(71)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(71)は、ケース本体(72)と蓋部(73)とを有している。
【0047】
上記ケース本体(72)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(72)は、円筒状の基部(76)と、該基部(76)から貯留タンク(11)側に向かって突出する筒状壁部(77)と、該筒状壁部(77)の外縁部から更に貯留タンク(11)側に向かって突出する環状凸部(78)とを有している。また、ケース本体(72)には、環状凸部(78)の先端側に先端筒部(79)が一体に形成されている。基部(76)の軸心部には、円柱状の挿入口(76a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(77)の内側には、挿入口(76a)と同軸となり、且つ挿入口(76a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0048】
上記蓋部(73)は、略円板状に形成されて環状凸部(78)の内側に嵌合している。蓋部(73)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(73)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(73)を上下に貫通する円形状の1つの開口(74)が形成されている。
【0049】
上記放電電極(64)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。放電電極(64)は、基部(76)の挿入口(76a)に嵌合している。これにより、放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に収容されている。実施形態2では、放電電極(64)のうち貯留タンク(11)とは反対側の端部が、貯留タンク(11)の外部に露出される状態となる。このため、貯留タンク(11)の外部に配置される電源部(70)と、放電電極(64)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0050】
上記放電電極(64)のうち貯留タンク(11)側の端部(64a)は、絶縁ケーシング(71)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、図7に示す例では、上記放電電極(64)の端部(64a)が、挿入口(76a)の開口面よりも上側(貯留タンク(11)側)に突出しているが、この端部(64a)の先端面を挿入口(76a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(64a)を挿入口(76a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、放電電極(64)は、実施形態1と同様、開口(74)を有する蓋部(73)との間に所定の間隔が確保されている。
【0051】
上記対向電極(65)は、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する鍔部(65b)とを有している。電極本体(65a)は、絶縁ケーシング(71)のケース本体(72)に外嵌している。鍔部(65b)は、貯留タンク(11)の壁部に固定されて放電ユニット(62)を保持する固定部を構成している。放電ユニット(62)が貯留タンク(11)に固定された状態では、対向電極(65)の電極本体(65a)の一部が浸水された状態となる。
【0052】
上記対向電極(65)は、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有している。内側筒部(65c)及び連接部(65d)は、貯留タンク(11)内の水中に浸漬している。内側筒部(65c)は、その内部に円柱空間(67)を形成している。内側筒部(65c)の軸方向の一端は、蓋部(73)と当接して該蓋部(73)を保持する保持部を構成している。また、電極本体(65a)と内側筒部(65c)と連接部(65d)の間には、ケース本体(72)の先端筒部(79)が内嵌している。内側筒部(65c)の軸方向の他端側には、円柱空間(67)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(68)が設けられている。この漏電防止材(68)は、対向電極(65)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(68)は、貯留タンク(11)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(67)の内側から外側への漏電を防止している。
【0053】
上記対向電極(65)は、電極本体(65a)の一部が貯留タンク(11)の外部に露出される状態となる。このため、電源部(70)と対向電極(65)とを電気配線によって容易に接続することができる。その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0054】
−水浄化ユニットの運転動作−
実施形態2の給湯システム(10)においても、水浄化ユニット(60)が運転されることで、水流路(12)を流れる水の浄化がなされる。
【0055】
水浄化ユニット(60)の運転の開始時には、図7に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(74)の内部の電流密度が上昇していく。
【0056】
図7に示す状態から、電極対(64,65)へ更に直流電圧が継続して印加されると、開口(74)内の水が気化されて気泡(B)が形成される(図8を参照)。この状態では、気泡(B)が開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(67)内の負極側の水と、放電電極(64)との間に気泡(B)による抵抗が付与される。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電位差が保たれ、気泡(B)でストリーマ放電が発生する。その結果、水中では、水酸ラジカルや過酸化水素を生成され、これらの成分が水の浄化に利用される。その他の作用及び効果は、上記実施形態1と同様である。
【0057】
〈実施形態2の変形例〉
上記実施形態2では、円板状の蓋部(73)の軸心に1つの開口(74)を形成しているが、この蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。図9に示す例では、蓋部(73)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(74)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(73)に複数の開口(74)を形成することで、各開口(74)の近傍でそれぞれストリーマ放電を生起させることができる。
【0058】
〈その他の実施形態〉
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0059】
上記各実施形態は、雨水(22)の浄化について説明したが、本発明は、雨水(22)の他、井戸水の浄化に適用してもよい。
【0060】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は、雨水または井戸水を浄化する水再利用装置について有用である。
【符号の説明】
【0062】
10 水浄化ユニット(水再利用装置)
11 貯留タンク
12 送水管
20 家屋
22 雨水
62 放電ユニット
64 放電電極(電極対)
65 対向電極(電極対)
70 電源部(直流電源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水または井戸水を貯留する貯留タンク(11)と、
該貯留タンク(11)内に設けられ、上記貯留タンク(11)における貯留水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)と、該電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)とを有し、上記ストリーマ放電によって上記貯留水中に過酸化水素を生成して上記貯留水を浄化する放電ユニット(62)とを備えている
ことを特徴とする水再利用装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記放電ユニット(62)は、貯留タンク(11)の内部における底部に設けられている
ことを特徴とする水再利用装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記貯留タンク(11)には、雨水を導く導入管(21)が接続されると共に、放電ユニット(62)によって浄化された貯留タンク(11)の浄化水を所定箇所に供給する送水管(12)が接続されている
ことを特徴とする水再利用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−77438(P2012−77438A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220417(P2010−220417)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】