説明

水冷コンデンサ

【課題】放熱性能の向上を図ることができ、車両前方にバンパーレインフォース部材を配置する場合に対応できる水冷コンデンサを提供する。
【解決手段】中間連結部材8の冷媒出口8aを、車両前方に配置されるバンパーレインフォース部材9より車両上下方向のわずかに下方側の位置で空冷コンデンサ3と接続し、ケーシング40内の熱交換部により車室内空調用の冷媒を車両駆動源の冷却用の冷却水との間で熱交換させた後、冷媒を中間連結部材8の冷媒出口8aを介して空冷コンデンサ3へ送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の空調用の冷媒を冷却水との間で熱交換させる水冷コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2010−121604号公報および特開2010−127508号公報で提案されているように、水冷コンデンサがサブラジエータの側部タンクに内蔵されるものや、特開2005−22474号公報で提案されているように、空冷コンデンサ(凝縮器)やラジエータがバンパーレインフォース部材より車両上下方向の下方側に配置されるものがある。(例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−121604号公報
【特許文献2】特開2010−127508号公報
【特許文献3】特開2005−22474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来技術にあって、特許文献1および特許文献2では、車両安全を目的として車両前方にバンパーレインフォース部材が配置されているため、このバンパーレインフォース部材で水冷コンデンサ、サブラジエータや水冷コンデンサの前方が覆われることにより、冷却風量が少なくなるので放熱性能が低下するという問題があった。また、サブラジエータの側部タンクに水冷コンデンサが内蔵されサブラジエータの体積が大きくなるため、車両前方のスペースが比較的小さい車両などではレイアウト上、制約があり不利であった。また、水冷コンデンサから車両前方へ配管が突出するので、車両前方にバンパーレインフォース部材を配置することが困難であるとともに、車両前方が軽く衝突した場合であっても車両前方へ突出する冷媒用配管から冷媒が漏れるおそれがあった。
【0005】
また、特許文献3では、空冷コンデンサやラジエータがバンパーレインフォース部材より車両上下方向の下方側に配置されるので、冷却風量が十分にあり空冷コンデンサやラジエータの放熱性能が良好であるが、水冷コンデンサの設置については考慮されていなかった。
【0006】
そこ、本発明は、放熱性能の向上を図ることができ、車両前方にバンパーレインフォース部材を配置する場合に対応できる水冷コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、車室内の空調用の冷媒を冷却水との間で熱交換させた後、冷媒を冷媒出口を介して空冷コンデンサへ送出する水冷コンデンサであって、前記冷媒出口を、前記空冷コンデンサの空気の流れ方向から見て車両前方に配置されるバンパーレインフォース部材と車両上下方向に重ならない位置で前記空冷コンデンサと接続したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の水冷コンデンサであって、前記冷媒出口を、前記バンパーレインフォース部材より車両上下方向の下方側の位置に設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載された水冷コンデンサであって、前記冷媒出口を、前記バンパーレインフォース部材より車両上下方向の上方側の位置に設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の水冷コンデンサであって、前記冷却水を外気との間で熱交換させるサブラジエータと前記空冷コンデンサを跨いで前記バンパーレインフォース部材が配置されたことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の水冷コンデンサであって、前記サブラジエータへの前記冷却水の入口が前記空冷コンデンサの空気の流れ方向から見て前記バンパーレインフォース部材と車両上下方向に重ならない位置に配置されたことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の水冷コンデンサであって、前記サブラジエータと前記空冷コンデンサの車幅方向の一側外方に前記水冷コンデンサが配置され、他側外方に前記空冷コンデンサを通る冷媒が貯留されるリキッドタンクが配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明において、水冷コンデンサの冷媒出口がバンパーレインフォース部材と車両上下方向に重ならない位置で空冷コンデンサと接続されるので、冷媒が上記冷媒出口を介して流入する際、空冷コンデンサのうち特に上記位置にて冷媒が多く流れるとともに、上記位置にて冷却風量が比較的多くて放熱性能の低下がない。これにより、空冷コンデンサおよび水冷コンデンサのトータルでの放熱性能が向上し、車両前方にバンパーレインフォース部材を配置する場合に対応できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水冷コンデンサを備えた複合熱交換器の正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、(a)は空冷コンデンサ内の冷媒流速を測定する際の冷媒入口と冷媒出口の位置を示す正面図、(b)は空冷コンデンサ内の冷媒流速の測定結果をチューブ位置毎に示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示し、空冷コンデンサ内の冷媒流速の測定結果を比較する図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示し、冷却水流路の変形例を示す正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る水冷コンデンサを備えた複合熱交換器の正面図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示し、冷却水流路の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1に示す複合熱交換器1は、自動車のエンジン以外の発熱体、例えばインバータ(図示せず)を冷却する冷却水(LCC)を外気との間で熱交換させるサブラジエータ2と、このサブラジエータ2の車両上下方向の下方側に配置され車室内の空調用の冷媒を外気との間で熱交換させる空冷コンデンサ3と、サブラジエータ2および空冷コンデンサ3の車幅方向の一側(図1の左側)に配置される本実施形態の水冷コンデンサ4とから主として構成されている。これらのサブラジエータ2、空冷コンデンサ3および水冷コンデンサ4の車両前後方向の前方には、車両安全のためバンパーレインフォース部材9が配置されている。
【0017】
空冷コンデンサ3は、車両上下方向に沿ってチューブおよび放熱フィン(図示せず)が交互に積層されるコア部30と、このコア部30の車幅方向の両側にそれぞれ立設され、上記チューブと連通されるタンク部31,32とから主として構成されている。この空冷コンデンサ3では、各タンク部31,32が図1の破線を境として上下に仕切られている。そのため、コア部30のうち図1の破線より上方側に位置する上部30aでは図1の右方向に冷媒が流れた後、第2タンク部32に接続されるリキッドタンク33に流出する。次いで、リキッドタンク33から第2タンク部32を介して、コア部30のうち図1の破線より下方側に位置する下部30b(過冷ゾーン)に流入して図1の左方向に冷媒が流れた後、第1タンク部31を介して流出する。
【0018】
そして、本実施形態の水冷コンデンサ4では、サブラジエータ2および空冷コンデンサ3と連結され、可撓性を有する上側冷却水管5を介して冷却水がサブラジエータ2から水冷コンデンサ4の上部に流入して流下した後、下側冷却水管6を介してインバータへ戻される。一方、冷媒は冷媒流入管7を介して水冷コンデンサ4の上部に流入して流下した後、冷媒出口8aを備えた中間連結部材8を介して水冷コンデンサ4から空冷コンデンサ3へ流入される。上記中間連結部材8は、バンパーレインフォース部材9より車両上下方向のわずかに下方側の位置で空冷コンデンサ3の第1タンク部31と接続されている。
【0019】
また、本実施形態の水冷コンデンサ4は、車両上下方向にそれぞれ延設され、外殻を形成するケーシング40を有し、このケーシング40内に、冷媒と冷却水との熱交換を行なう熱交換部(図示せず)と、この熱交換部とケーシング40との間に形成され、冷却水を収容するタンク部(図示せず)とを備えている。
【0020】
上記構成において、水冷コンデンサ4を空冷コンデンサ3の車両幅方向の一側に配置して、水冷コンデンサ4に連結した中間連結部材8の先端を空冷コンデンサ3の第1タンク部31の側壁に係合させるとともに、サブラジエータ2を空冷コンデンサ3の車両上下方向の上方側で、かつ水冷コンデンサ4の車両幅方向の側部に配置して、水冷コンデンサ4のブラケット41,42をそれぞれサブラジエータ2と空冷コンデンサ3に固定する。また、上側冷却水管5をサブラジエータ2の側壁20と水冷コンデンサ4の上部との間に介設する。
【0021】
上記構成において、サブラジエータ2から冷却水が上側冷却水管5を介して水冷コンデンサ4の上部に流入して流下した後、水冷コンデンサ4の下部に設けられる下側冷却水管6を介して冷却水が排出される。一方、水冷コンデンサ4の上部に設けられる冷媒流入管7を介して冷媒が流入して流下しつつ冷却水との間で熱交換を行なった後、中間連結部材8を介して冷媒が排出されて空冷コンデンサ3に流入する。
【0022】
以上のように、本実施形態の水冷コンデンサ4によれば、冷媒出口8aを備えた中間連結部材8がバンパーレインフォース部材9より車両上下方向のわずかに下方側の位置、すなわちバンパーレインフォース部材9と車両上下方向に重ならない位置で空冷コンデンサ3と接続されるので、冷媒が冷媒出口8aを介して空冷コンデンサ3に流入する際、空冷コンデンサ3のうち特に上記位置のチューブにて冷媒が多く流れる。しかも、上記位置にて冷却風量が比較的多くて放熱性能の低下がないので、空冷コンデンサ3および水冷コンデンサ4のトータルでの放熱性能が向上し、車両前方にバンパーレインフォース部材9を配置する場合に対応できる。
【0023】
なお、図2の(a)に示すように、空冷コンデンサ3に車両上下方向の中間位置に冷媒入口43および冷媒出口44を設けた場合、空冷コンデンサ3内の冷媒流速分布は図2の(b)に示すように推移する。すなわち、車両上下方向の最上部のチューブ位置を「1」とし、最下部のチューブ位置を「20」とすると、冷媒入口43および冷媒出口44を設けた中間位置であるチューブ位置「10,11」で冷媒流速が最大となり、その近傍のチューブ位置「9,12」で冷媒流速が最小となる。そして、上記冷媒流速は放熱量に比例するため、図3に示すように、空冷コンデンサ3のチューブ位置「10,11」をバンパーレインフォース部材9より車両上下方向のわずかに下方側に設定するとともに、チューブ位置「9」をバンパーレインフォース部材9と車両上下方向に重なるように設定する。これにより、上記のように空冷コンデンサ3および水冷コンデンサ4のトータルでの放熱性能が向上し、車両前方にバンパーレインフォース部材9を配置する場合に対応できる。
【0024】
また、本実施形態の水冷コンデンサ4によれば、当該水冷コンデンサ4をサブラジエータ2の側部タンクに内蔵せず外部に設けたので、サブラジエータ2のコンパクト化を図ることができ、車両前方のスペースが比較的小さい車両などにも複合熱交換器1を配置でき、レイアウト上、優れている。
【0025】
また、本実施形態の水冷コンデンサ4によれば、冷却水管5,6が車両幅方向へ突出して車両前方へ突出することがなく、車両前方にバンパーレインフォース部材9を容易に配置できるので、レイアウト上、優れている。加えて、当該水冷コンデンサ4から車両前方へ冷媒用配管も突出していないので、この点でも車両前方にバンパーレインフォース部材9を配置できるとともに、車両前方が軽く衝突した場合であっても冷媒用配管からの冷媒漏れを抑制することができる。
【0026】
また、本実施形態の水冷コンデンサ4によれば、当該水冷コンデンサ4を介してサブラジエータ2および空冷コンデンサ3を連結し、水冷コンデンサ4を連結ブラケットのように用いることができるので、サブラジエータ2および空冷コンデンサ3を連結する専用ブラケットが不要であり、部品点数を少なくできる。
【0027】
また、本実施形態の水冷コンデンサ4によれば、可撓性を有する上側冷却水管5を介してサブラジエータ2と水冷コンデンサ4とを連結したので、上側冷却水管5が撓むことによりサブラジエータ2および水冷コンデンサ4の組み付け位置のばらつきを吸収することができ、組み付け作業を円滑に行なうことができる。
【0028】
なお、上記第1実施形態では、冷却水が上側冷却水管5を介して水冷コンデンサ4の上部に流入するとともに、下側冷却水管6を介して流出する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、冷却水の流路を逆向きに設定することもでき、すなわち、図4に示すように、冷却水が下側冷却水管6を介して水冷コンデンサ4の下部に流入するとともに、水冷コンデンサ4の上部に設けられる上側冷却水管5を介して流出することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
図5に示すように、本実施形態の水冷コンデンサ4Aでは、冷媒出口8aを備えた中間連結部材8がバンパーレインフォース部材9より車両上下方向のわずかに上方側の位置で空冷コンデンサ3と接続されている。この空冷コンデンサ3は、サブラジエータ2の車両上下方向の上方側に配置され、これらのサブラジエータ2および空冷コンデンサ3の車幅方向の一側に本実施形態の水冷コンデンサ4Aが配置されている。なお、図5において前述した第1実施形態と同様のものには同一符号を付してある。
【0030】
上記構成において、冷却水がサブラジエータ2から可撓性を有する下側冷却水管6Aを介して水冷コンデンサ4Aの下部に流入して上昇した後、水冷コンデンサ4Aの上部に設けられる上側冷却水管5Aを介して冷却水が排出される。一方、水冷コンデンサ4Aの上部に設けられる冷媒流入管7を介して冷媒が流入して流下しつつ冷却水との間で熱交換を行なった後、中間連結部材8の冷媒出口8aを介して冷媒が排出されて空冷コンデンサ3に流入する。
【0031】
本実施形態の水冷コンデンサ4Aにあっても、冷媒出口8aを備えた中間連結部材8がバンパーレインフォース部材9より車両上下方向のわずかに上方側の位置、すなわちバンパーレインフォース部材9と車両上下方向に重ならない位置で空冷コンデンサ3と接続されるので、冷媒が冷媒出口8aを介して空冷コンデンサ3に流入する際、空冷コンデンサ3のうち、特に上記位置のチューブにて冷媒が多く流れる。しかも、上記位置にて冷却風量が比較的多くて放熱性能の低下がないので、空冷コンデンサ3および水冷コンデンサ4Aのトータルでの放熱性能が向上し、車両前方にバンパーレインフォース部材9を配置する場合に対応できる。
【0032】
なお、上記第2実施形態では、冷却水がサブラジエータ2から下側冷却水管6Aを介して水冷コンデンサ4Aの下部に流入するとともに、上側冷却水管5Aを介して流出する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、冷却水の流路を逆向きに設定することもできる。すなわち、図6に示すように、冷却水が上側冷却水管5Aを介して水冷コンデンサ4Aの上部に流入するとともに、水冷コンデンサ4Aの下部に設けられる下側冷却水管6Aを介してサブラジエータ2へ流出することができる。
【符号の説明】
【0033】
3 空冷コンデンサ
4,4A 水冷コンデンサ
8a 冷媒出口
9 バンパーレインフォース部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の空調用の冷媒を冷却水との間で熱交換させた後、冷媒を冷媒出口(8a)を介して空冷コンデンサ(3)へ送出する水冷コンデンサ(4,4A)であって、
前記冷媒出口(8a)を、前記空冷コンデンサの空気の流れ方向から見て車両前方に配置されるバンパーレインフォース部材(9)と車両上下方向に重ならない位置で前記空冷コンデンサ(3)と接続したことを特徴とする水冷コンデンサ(4,4A)。
【請求項2】
請求項1記載の水冷コンデンサ(4、4A)であって、
前記冷媒出口(8a)を、前記バンパーレインフォース部材(9)より車両上下方向の下方側の位置に設けたことを特徴とする水冷コンデンサ(4)。
【請求項3】
請求項1に記載された水冷コンデンサであって、
前記冷媒出口(8a)を、前記バンパーレインフォース部材(9)より車両上下方向の上方側の位置に設けたことを特徴とする水冷コンデンサ(4)。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の水冷コンデンサ(4、4A)であって、
前記冷却水を外気との間で熱交換させるサブラジエータ(2)と前記空冷コンデンサ(3)を跨いで前記バンパーレインフォース部材(9)が配置されたことを特徴とする水冷コンデンサ(4、4A)。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の水冷コンデンサ(4、4A)であって、
前記サブラジエータ(2)への前記冷却水の入口が前記空冷コンデンサの空気の流れ方向から見て前記バンパーレインフォース部材(9)と車両上下方向に重ならない位置に配置されたことを特徴とする水冷コンデンサ(4、4A)。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の水冷コンデンサ(4、4A)であって、
前記サブラジエータ(2)と前記空冷コンデンサ(3)の車幅方向の一側外方に前記水冷コンデンサ(4、4A)が配置され、他側外方に前記空冷コンデンサ(3)を通る冷媒が貯留されるリキッドタンクが配置されていることを特徴とする水冷コンデンサ(4、4A)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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