説明

水冷ジャケット並びにそれを利用した炉体冷却構造及び炉体冷却方法

【課題】 耐火物及び水冷ジャケットの取替えが永年にわたって不要となる水冷ジャケット並びにそれを利用した炉体冷却構造及び炉体冷却方法を提供する。
【解決手段】 水冷ジャケット10は、内部に冷却水路11を備えたジャケット本体20と、炉内側に向かって突出するようにしてジャケット本体20に配置された複数の冷却突起30と、隣り合う冷却突起30同士を連結するようにして配置され、冷却突起30の突出長さよりも短い長さで突出形成された冷却フィン34とを備え、冷却突起30と冷却フィン34との間には隙間なく耐火物35、37を充填すると共に、少なくとも冷却突起30の先端が覆われるように冷却突起20及び冷却フィン40自体を耐火物37で被覆してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷ジャケット並びにそれを利用した炉体冷却構造及び炉体冷却方法に関し、さらに詳しくは、例えば銅製錬炉のように高温に晒される炉体を効率的に冷却し、それによって炉体を構成する耐火物の溶損を抑制することによって耐火物の交換改修を大幅に減らすことが可能な水冷ジャケット並びにそれを利用した炉体冷却構造及び炉体冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、製錬炉の一つとして自溶炉がある。図7に示すように自溶炉1は、シャフト2と、セットラ3と、アップテイク4を備え、シャフト2の頂部には精鉱バーナー7が配置されて構成されている。精鉱バーナー7から溶剤等と共に装入された原料は、同じく精鉱バーナー7から炉内に供給される反応ガスとシャフト2内で反応し、マット、スラグ及びガスが生成される。マットとスラグはシャフト2内を落下して炉床部でその比重差によりスラグ5とマット6に層状に分離される。このようにして生成されたスラグ5とマット6はセットラ3に穿設された複数の図示しないタップホールから適宜抜き出される。この抜き出しによって湯深変動が起こるためにこれに伴う温度変化が大きく、セットラ3部分の炉壁耐火物には特に激しい熱的負荷がかかる。
【0003】
また、シャフト2の直下部分は原料と反応ガスの酸化反応により生成される高温のマット、スラグ及びガスが最初に通過、接触する箇所であると共に、原料の投入が一時的に停止した場合には温度が低下したガスが最初に通過する箇所であるため雰囲気温度においても熱的変動負荷が大きい場所である。
【0004】
そのため、温度変化の大きい炉壁部分を冷却するための水冷ジャケットを配置することにより、炉壁を構成する耐火物を冷却し、それによって耐火物の熱負荷の抑制を図ることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
特許文献1に示された炉体水冷ジャケットは、内部に冷却水路を備え、表面には凸部と凹部を交互に一列に配列すると共に、凹部には炉内耐火物とは別種の粉状耐火物を充填して構成され、耐火レンガを積み上げて構成した炉壁の外側にさらにキャスタブル耐火物を隣接して配置して構成した炉壁面に炉体水冷ジャケットの凸凹部側をキャスタブル耐火物と面するように配置することにより、凸部は炉内壁耐火物と直接接触して冷却を行い、凹部は充填された耐火物を介して炉壁耐火物を間接的に冷却しようとするものである。尚、凸部の高さは10−30mmである。
【0006】
また、特許文献2に示された炉体水冷構造は、内部に水路を有するスチール製の外殻の表面から銅ロッドをほぼ60mm間隔で多数配置し、そしてこの外殻の表面に銅ロッドの先端が被覆されるようにして耐火性ライニングを施して構成されている。この銅ロッドによって耐火性ライニングの炉内表面(加熱面)に加わる熱を外殻に伝達させ、水路を流れる冷却水によって炉体を冷却しようとするものである。そして、この銅ロッドの直径は、数分の1mmから25mmまでの範囲であり、炉から目的とする熱の除去が難しくなるのでそれを超える直径は好ましくないとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4064387号公報
【特許文献2】特表平10−501877号公報 第9頁第11行から第15行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
製錬炉における溶体保持部及び高温ガス接触部は、特許文献1のように、溶湯及び高温ガスと接触する面を耐火物で構成し、その耐火物を炉外側から水冷ジャケットで冷却する方法が主流である。しかし、耐火物への冷却が不十分である場合、耐火物の溶損が進行し、水冷ジャケットが溶体及び高温ガスと直接接触する機会が生じる。耐火物の溶損によって水冷ジャケットと溶湯が直接接触すると水冷ジャケット自体が減肉し、炉内への水漏れトラブルが生じることとなる。従って、定修において定期的に耐火物の交換・復旧が必要であった。特に、高負荷部分においては、耐火物の損耗速度が早く長期間水冷ジャケットが直接溶湯と接触する操業を余儀なくされ、水冷ジャケットの短寿命化が懸念されていた。
【0009】
また、引用文献1の水冷ジャケットは、炉内耐火物を積極的に冷却する構造ではなく、炉内耐火物が溶損した後に、ジャケット表面にスラグセルフコーティング層を形成してそれを保持することによって水冷ジャケット自体を保護することを主目的とした設計である。しかし、操業中の熱負荷の変動により度々生じるセルフコーティングの脱落によって溶湯とジャケットの接触が繰り返されると徐々に水冷ジャケット自体が減肉するので、水冷ジャケットからの水漏れが発生する前に水冷ジャケットを更新する必要がある。
【0010】
上述のように、特許文献1の水冷ジャケットでは耐火物への冷却が必ずしも十分とはいえないことから耐火物の溶損による水冷ジャケットの減肉が問題となっていた。そのため、従来は毎年の定修での耐火物更新、また設置エリアにもよるが2−6年間隔での水冷ジャケットの更新が必要となっていた。ここで、水冷ジャケットの交換に際しては、上述したように水冷ジャケットの炉内側には耐火レンガが積まれているので溶損した耐火レンガの除去及び新たな耐火レンガの積み上げ作業が必要となり大変な手間と工事期間を要する作業となっていた。
【0011】
また、近年では従来よりも時間当たりの処理量の増加を図るために製錬炉の高負荷操業が行われており、引用文献2に示された炉体水冷構造では冷却機能が十分に発揮されないおそれがある。特に高負荷操業においては高温に晒される耐火ライニングの溶損も激しく、引用文献2の銅ロッドでは溶損の進行が早く十分な冷却効果が期待できないおそれがある。そうなると冷却水路を備えたスチール製の外殻に溶湯が直接接触するおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、耐火物及び水冷ジャケットの取替えが永年にわたって不要となる水冷ジャケット並びにそれを利用した炉体冷却構造及び炉体冷却方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、銅製錬炉の溶体保持部(シャフト下部、セットラの側面部、アップテイク下部)や高温ガス接触部において、耐火物及び水冷ジャケットの交換が長期、少なくとも6年以上、にわたり不要となる水冷ジャケット並びにそれを利用した炉体冷却構造及び炉体冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内部に冷却水路を備えたジャケット本体と、炉内側に向かって突出するようにしてジャケット本体に配置された複数の冷却突起と、隣り合う冷却突起同士を連結するようにして配置され、冷却突起の突出長さよりも短い長さで突出形成された冷却フィンとを備え、冷却突起と冷却フィンとの間には隙間なく耐火物を充填すると共に、少なくとも冷却突起の先端が覆われるように冷却突起及び冷却フィン自体を耐火物で被覆してなることを特徴とする水冷ジャケットを提供する。
【0014】
上記目的を達成するため請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水冷ジャケットにおいて、水冷ジャケットは縦方向に複数に分割して構成したことを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の水冷ジャケットにおいて、冷却突起及び冷却フィンは、ジャケット本体と一体鋳造により形成され、冷却突起及び冷却フィンは内部に冷却水路を設けず、ジャケット本体の内部にのみ冷却水路を配置することで熱伝導により冷却突起及び冷却フィンを冷却し、耐火物が溶損した場合に冷却突起及び冷却フィン間をジャケット本体に向かって進行してくる溶体を凝固させ、冷却水路を備えたジャケット本体が溶体と直接接触しないようにしたことを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するため請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の水冷ジャケットにおいて、冷却突起及び冷却フィンの溶損進行度を把握するための一又は複数の熱電対を備え、熱電対によって測定された温度をコンピュータを用いて解析することによって冷却突起の溶損進行度を常時監視するようにしたことを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するため請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の水冷ジャケットを製錬炉の炉壁として配置したことを特徴とする水冷ジャケットを利用した炉体冷却構造を提供する。
【0018】
上記目的を達成するため請求項6に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の水冷ジャケットを製錬炉の炉壁として配置し、冷却水路に冷却水を流すことにより操業中の炉壁を冷却することを特徴とする水冷ジャケットを利用した炉体冷却方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る水冷ジャケット並びにそれを利用した炉体冷却構造及び炉体冷却方法によれば、水路を有するジャケット本体に、耐火物の冷却及び溶損代として機能する冷却突起及び冷却フィンを設けたので耐火物の溶損進行を極力抑えて耐火物の長寿命化を図ることができるという効果がある。
【0020】
また、本発明に係る水冷ジャケット並びにそれを利用した炉体冷却構造及び炉体冷却方法によれば、万一冷却突起及び冷却フィンが溶損し、冷却フィンの存在するエリアにまで溶体が進行した場合には、残存している冷却突起に加えて冷却フィンが溶体を効率的に冷却凝固させるので、溶体がジャケット本体に直接接触することを防止する。これにより、水冷ジャケットの水漏れトラブルの発生が防止され製錬炉の長期安定操業に寄与することとなる。
【0021】
また、本発明に係る水冷ジャケット並びにそれを利用した炉体冷却構造及び炉体冷却方法によれば、ジャケット本体及び冷却突起と冷却フィンによって耐火物を積極的に冷却することとしたので耐火物の更新や水冷ジャケットの更新が永年不要となり、これまで毎年実施されていた製錬炉の高負荷部分の耐火物更新が少なくとも6年以上の長期にわたり不要になるという効果がある。従って、炉寿命が延び、炉補修工事の短縮、連続操業期間の延長が可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る水冷ジャケットの一実施形態の炉外側を示す背面図である。
【図2】図1に示す水冷ジャケットの平面図である。
【図3】図1に示す水冷ジャケットを代表的な製錬炉である自溶炉に配置した状態の側面断面図である。
【図4】分割した水冷ジャケットの1ユニットの正面図である。
【図5】図4に示す分割した水冷ジャケットの1ユニットを示す斜視図である。
【図6】自溶炉の横断面図である。
【図7】熱電対による温度監視の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る水冷ジャケット並びにそれを利用した炉体冷却構造及び炉体冷却方法について好ましい一実施形態に基づいて説明する。図1は本発明に係る水冷ジャケットの一実施形態の炉外側を示す背面図、図2は図1に示す水冷ジャケットの平面図である。
【0024】
図示された水冷ジャケット10は、概略として、内部に冷却水路11を備えたジャケット本体20と、図2に示すようにジャケット本体20の表面から突出するようにして形成された複数の冷却突起30と、隣り合う冷却突起30同士を互いに連結するようにして配置された冷却フィン34を備えて構成されている。ジャケット本体20と冷却突起30及び冷却フィン34は、ジャケット本体20の内部に冷却水路11となる金属パイプを内装した状態で一体鋳造することによって形成されている。ジャケット本体20と冷却突起30及び冷却フィン34並びに冷却水路11となる金属パイプは熱伝導性が高い金属、例えば銅によって形成されており、ジャケット本体20に充填配置される後述する耐火物35や不定形耐火物37を効率的に冷却する。なお、水冷ジャケット10は炉壁を構成することになるので炉の外形形状に即して上部側がやや外側に向かって傾斜した形状となっている。
【0025】
図1及び図2に示すように、本実施形態では水冷ジャケット10は縦方向に3つに分割した水冷ジャケット10a、10b、10cを互いに連結することによって構成されている。また、水冷ジャケット10a、10b、10cの各ジャケット本体20a、20b、20cには、多数の冷却突起30がジャケット本体20a、20b、20cの炉内側に位置する表面のほぼ全面にわたって縦横に均等に規則正しく配置されている。本実施形態では冷却突起30は円柱状に形成され、縦方向に3列、横方向に8列配置されているがこれに限るものではない。必要とする冷却効率を満たし、後述する耐火物を保持し易い形状であればその配列、本数、直径、長さ、形状はこれに限らず、冷却突起30によって後述する耐火物35や不定形耐火物37を効率よく冷却するように配置すればよい。冷却突起30は、具体的には、断面が円形状の他、楕円形状、四角形状、多角形状、星型形状、ハート型形状などであってもよく、また、先端側を太くあるいは細くした形状であってもよい。
【0026】
冷却突起30及び冷却フィン34は、耐火物35や不定形耐火物37及び水冷ジャケット10の目標とする更新期間に合わせて、その溶損の程度を考慮して溶損代としてその形状及びサイズを決定することが好ましい。すなわち、冷却突起30及び冷却フィン34は耐火物35や不定形耐火物37を積極的に冷却するための重要な役割を果たすものではあるが、いかに冷却を強化しても耐火物35や不定形耐火物37及び冷却突起30を全く溶損させずに、半永久的に維持することは物理的に極めて困難である。そこで、本実施形態では操業の継続による耐火物35や不定形耐火物37及び冷却突起30の溶損は、少なくとも冷却突起30の突出長さの半分程度までを溶損代と考え、それ以上の溶損を食い止めるよう、冷却突起30のほぼ半分の突出長さの冷却フィン34を互いに隣接する冷却突起30、30同士を連結するようにして網目状に配置することとしている。
【0027】
冷却フィン34は、上述のように複数の冷却突起30の隣り合う冷却突起30同士を互いに連結するようにして略均等に配置され、冷却突起30の突出長さよりも短い長さで突出形成されている。本実施形態では冷却フィン34は冷却突起30の配列方向に沿って縦横に互いに直交する方向に配置されている。この他にも、例えば、冷却突起30を斜めに結ぶようにして配置することもできる。
【0028】
これにより、ジャケット本体20に内設された冷却水路11を通る冷却水によって直接又は冷却フィン34を介して冷却突起30をその根元から先端に至るまで確実に冷却する。また、冷却突起30の溶損に伴ってジャケット本体20の表面近くまで近づいてくる溶体を冷却フィン34がこれを冷却することによりスラグコーティングが行われ、それによって溶体がジャケット本体20と直接接触することを防止している。尚、このような機能は引用文献2には全く示されていない。
【0029】
冷却突起30は、具体的には冷却効率の観点からジャケット本体20a、20b、20cの表面から約300mmの突出長さで、直径を約30−80mmとし、冷却突起30と冷却突起30との間の幅はその中心間の距離を約50−150mmとすることが好ましい。また、互いに隣り合う冷却突起30同士を連結するようにして網目状に配置された冷却フィン34は、その突出長さは約150mmで、幅サイズは約20mm程度とすることが好ましい。尚、冷却突起30と冷却フィン34の内部には冷却水路11は形成されておらず冷却水は流通しないようになっている。
【0030】
また、冷却突起30と冷却フィン34との間には隙間なく耐火物35が充填されていると共に、少なくとも冷却突起30の先端が覆われるように冷却突起30及び冷却フィン34自体は耐火物35で被覆されている。耐火物35は、予め冷却突起30及び冷却フィン34と嵌り合う形状に形成した定型耐火物を冷却突起30と冷却フィン34の隙間に嵌め込むと共に不定形耐火物37でしっかりと隙間を埋め、さらに冷却突起30の先端部が約30−50mm程度の厚みで被覆されるように不定形耐火物37でコーティングする。これによって耐火物35及び不定形耐火物37を積極的に冷却するようにしている。なお、耐火物35はこれに限らず、定型耐火物の代わりに不定形耐火物37を冷却突起30と冷却フィン34を埋設するようにしてジャケット本体20表面に充填すると共に冷却突起30の先端が覆われるようにコーティングして構成することも出来る。尚、不定形耐火物37によるコーティングは冷却突起30の先端から少なくとも30mm以上の厚さを確保することが好ましい。
【0031】
一方、ジャケット本体20aの図1における右側の側縁部にはジャケット本体20aの縦方向(図1における上下方向)に沿って平面状の取付部23が形成されている(図4、図5参照)。また、冷却突起30及び冷却フィン34が設けられた表面側とは反対側の背面側(炉の外側面となる側)の上部にはジャケット本体20aの内部に配置した冷却水路11へ冷却水を供給排出するための供給口13aと排出口13bが配置されている。冷却水路11はジャケット本体20aの上部側に設けられた供給口13aから内部を通って下へ伸びた後、略直角に曲げられてジャケット本体20aの底部側近傍を幅方向に進み、さらに略直角に折り曲げられてジャケット本体20aに上部へ至り排出口13bへと至るようにして配置されている。
【0032】
また、水冷ジャケット10cは、水冷ジャケット10aと左右対称の形状に形成されており、ジャケット本体20cの図1における左側の側縁部にはジャケット本体20cの縦方向(図1における上下方向)に沿って平面状の取付部23が形成されている(図2参照)。そして、ジャケット本体20cの内部に配置した冷却水路11へ冷却水を供給排出するための供給口13aと排出口13bが配置されている。
【0033】
水冷ジャケット10aと水冷ジャケット10cの間に配置される水冷ジャケット10bは、図2における左側の側縁部に水冷ジャケット10aの取付部23と密着される取付部25がジャケット本体20bの縦方向(図1における上下方向)に沿って形成されており、取付部23に複数穿設された孔部19a、19aを介してボルトなどの締着部材19によって両者が強固に連結されている。同様にして、水冷ジャケット10bは、図2における右側の側縁部に水冷ジャケット10cの取付部23と密着される取付部25がジャケット本体20bの縦方向(図1における上下方向)に沿って形成されており、ボルトなどの締着部材19によって両者が強固に連結されている。これにより水冷ジャケット10a、10b、10cは一体とされて水冷ジャケット10を構成している。なお、水冷ジャケット10の分割形状はこれに限るものではなく水冷ジャケット10a、10bを一ユニットとして左右に連続配置することも可能である。
【0034】
このように、水冷ジャケット10を分割して構成するのは、水冷ジャケット10の設置及び更新工事施工時におけるハンドリング、および、冷却水路11のレイアウト等を考慮したためである。具体的な幅サイズとしては水冷ジャケット10a、10cの場合は約400mmで、水冷ジャケット10bの場合は600mm程度、すなわち400−600mm程度とするのが好ましい。また、溶体の湯深に合わせて高さは1,000−1,600mm程度とするのが好ましい。
【0035】
上述したように、冷却水路11有するジャケット本体20と、冷却水路11を有しない冷却突起30及び冷却フィン34で構成された水冷ジャケット10には耐火物35が充填され、さらに冷却突起30の先端部を含めてその全体が不定形耐火物37によってコーティングされている。初期状態では冷却突起30の先端は直接溶体と接しないように不定形耐火物37でコーティングされているが、不定形耐火物37によるコーティングは操業に伴って次第に溶損し、冷却突起30先端と耐火物35はいずれ溶体と接触し、徐々に溶損が進行することになる。なお、従来の水冷ジャケットの場合は、耐火レンガが水冷ジャケットの前方に積み上げられているため、改修時には、溶損した耐火レンガを撤去した後、全更新という工程が必要となるが、本発明の場合には、耐火物35が溶損した部分に補修が必要な場合、定修時に不定形耐火物37で上塗り補修することを容易に行うことが出来る。
【0036】
一方、水冷ジャケット10には冷却突起30の溶損進行度を把握するために3つの熱電対40が配置されており、この熱電対40によって測定された温度をコンピュータ50(図7参照)を用いて解析することによって冷却突起30の溶損進行度を常時監視するようになっている。水冷ジャケット10a、10b、10cに設けられた所定の冷却突起30の基端部にはそれぞれ3つの熱電対40が取り付けられており、この部分で測定された温度が図示しないコントロールルームに設置されたコンピュータ50に常時取り込まれて監視される。この温度によって冷却突起30及び冷却フィン34の溶損の進行状態を把握することができる。これにより冷却突起30及び冷却フィン34の寿命を推定し、予め交換の必要な水冷ジャケット10を準備しておくことが可能となる。また、予めコンピュータ50に所定の温度を設定しておき、熱電対40による測定温度がその設定温度になった場合には水冷ジャケット10の交換を促すアラームを起動させるように構成することも出来る。尚、熱電対40の数はこれに限るものではなく、1又は複数設けることが出来る。
【0037】
上述の水冷ジャケット10は製錬炉の溶体保持部及び高温ガス接触部、すなわち、シャフト2の下部、セットラ3の側面部、アップテイク4の下部に配置することによって炉体冷却構造が構成される。ここで、図3における1bは自溶炉1の路底部、1aは水冷ジャケット10の上部に配置された耐火レンガである。自溶炉1の通常の操業状態において、スラグ5の厚さは約400〜700mmで、マット6の厚さは約500〜850mmであり、スラグ5とマット6を合わせた最大湯深は約1,550mmである。また、温度はスラグ5とマット6とも約1,200〜1,300℃である。従って、この温度に基づいて冷却突起30の長さや幅サイズを設定し、湯深に合わせて水冷ジャケット10の高さを設定することが好ましい。
【0038】
上述の炉体冷却構造を備えた自溶炉1においては冷却水路11の供給口13aから所定の流速で冷却水を流し、それを排出口13bから排出することによって耐火物35及び不定形耐火物37を積極的に冷却して自溶炉1の安定操業を行うことが出来る。また、冷却水路11への冷却水の流量を適宜調整することで冷却の強弱を調整することが出来る。この場合、熱電対40による常時監視のデータを利用して測定温度が上昇した場合には冷却水の流量を増やし、温度が安定してきたら冷却水の流量を減らす等の調整をコンピュータ管理によって行わせることも出来る。
【0039】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
10、10a、10b、10c 水冷ジャケット
11 冷却水路
13a 供給口
13b 排出口
19 締着部材
19a 孔部
20、20a、20b、20c ジャケット本体
23 取付部
25 取付部
30 冷却突起
34 冷却フィン
35 耐火物
37 不定形耐火物
40 熱電対
50 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却水路を備えたジャケット本体と、
炉内側に向かって突出するようにして前記ジャケット本体に配置された複数の冷却突起と、
隣り合う前記冷却突起同士を連結するようにして配置され、前記冷却突起の突出長さよりも短い長さで突出形成された冷却フィンと、
を備え、
前記冷却突起と前記冷却フィンとの間には隙間なく耐火物を充填すると共に、少なくとも前記冷却突起の先端が覆われるように前記冷却突起及び前記冷却フィン自体を耐火物で被覆してなることを特徴とする水冷ジャケット。
【請求項2】
請求項1に記載の水冷ジャケットにおいて、
前記水冷ジャケットは縦方向に複数に分割して構成したことを特徴とする水冷ジャケット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水冷ジャケットにおいて、
前記冷却突起及び前記冷却フィンは、前記ジャケット本体と一体鋳造により形成され、前記冷却突起及び前記冷却フィンは内部に冷却水路を設けず、前記ジャケット本体の内部にのみ冷却水路を配置することにより熱伝導により前記冷却突起及び前記冷却フィンを冷却し、耐火物が溶損した場合に冷却突起及び冷却フィン間をジャケット本体に向かって進行してくる溶体を凝固させ、前記冷却水路を備えた前記ジャケット本体が溶体と直接接触しないようにしたことを特徴とする水冷ジャケット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の水冷ジャケットにおいて、
前記冷却突起の溶損進行度を把握するための一又は複数の熱電対を備え、前記熱電対によって測定された温度をコンピュータを用いて解析することによって前記冷却突起及び冷却フィンの溶損進行度を常時監視するようにしたことを特徴とする水冷ジャケット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の水冷ジャケットを製錬炉の炉壁として配置したことを特徴とする水冷ジャケットを利用した炉体冷却構造。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の水冷ジャケットを製錬炉の炉壁として配置し、前記冷却水路に冷却水を流すことにより操業中の炉壁を冷却することを特徴とする水冷ジャケットを利用した炉体冷却方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate