説明

水処理のための方法および装置

【課題】バラスト水を処理する方法を提供する。
【解決手段】縦パイプ(1)を通してバラストタンクに搬入されるバラスト水を処理するための方法であって、前記バラスト水中で気泡の形成を誘発する、前記縦パイプ(1)の上部において負圧が形成され、前記縦パイプ(1)に入る前に、前記バラスト水は、絞り装置(14)を介して、当該縦パイプ(1)の上部の閉容器(4)に通水され、前記閉容器(4)は、前記縦パイプ(1)の通水領域(b)よりも大きな通水領域(B)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法に関する。より詳細には、本発明は、水、主にバラスト水の処理のための方法に関し、バラスト水が縦パイプを通してバラストタンクに搬入され、縦パイプの上部に生成される負圧がバラスト水中での気泡の形成を誘発する。本発明はまた、本発明を実施するための装置を含む。
【背景技術】
【0002】
船の技術的理由のため、船が航行している時、船内にいくつかのカーゴがなくてはならない。周知のように、収入をもたらさないカーゴはバラストと呼ばれている。
【0003】
海水は、積載または荷降しするには比較的容易なため、広くバラストとして使用されている。しかしながら、非常に多種の生物が、バラスト水が積載される場所から荷降しする場所へ、バラスト水中で運ばれてしまう。
【0004】
生物の大部分は運搬中に死滅し、より多くの生物は、荷降しの場所で解放される時に死滅する。しかしながら、好ましい条件下では、繁殖力のある種は生き残る。新地に外来生物を導入することは、とりわけ、全海域内の水産業に破滅的な結果をもたらすことが知られている。
【0005】
生物を無害にする観点で、バラスト水処理のための新しい指示が、国際的な団体内で作成されている。当該指示は、バラスト水の処理は安全で、環境的に受け入れられるものであり、使用に合理的であり、有効でなくてはならないことを強調する。
【0006】
たとえばザリガニ等のより大きな生物を死滅させるために、バラスト水を負圧にさらすことが知られている。また、バクテリアやウィルスを死滅させるために、バラスト水を化学物質で処理することが知られている。
【0007】
使用されるいくつかの化学物質は、荷降しする場所における環境に不利な効果を有すると疑われる。
【0008】
WO文献2009/022913には、バラスト水内に負圧および気泡を生成するために、縦パイプを通して運ばれるバラスト水を処理する方法が開示されている。
【0009】
WO文献2005/009907は、とりわけ、バラスト水の酸素含有量を低減するために、縦パイプ内におけるバラスト水の処理を論じている。
【0010】
水の紫外線放射、いわゆるUV放射は、とりわけ、飲料水内の病原生物を無害にすることがよく知られている。バラスト水、噴水および非病原生物が生きていることが望ましくないその他の目的の水等から、これらの生物を死滅させるためにUV放射を使用することも知られている。
【0011】
UV放射は、水が比較的強いUV光を通して運搬される、いわゆるUV集中という方法によって実施される。UV光の生物への影響は累積的であり、とりわけ、UVランプの強度、UVランプから生物までの距離、行渡っている温度、および生物がUV光下にある時間に依存する。生物が死滅されるように、UV光下での十分な滞留時間を水すなわち生物に与えるには、UV集中による水の流率はしばしば低い。
【0012】
人口密集地における飲み水または搭乗船上のバラスト水等のような主要な水が処理される時、相当規模のUV集中への必要性があり、ゆえに大きなエネルギー消費が伴う。所望の効果を得るために、化学物質が液体に注入される。高額であったり環境に害を及ぼしたり等、化学物質の様々な性質が、関連する化学物質の消費を可能な限り低量に維持することを望ましいものとしている。
【0013】
水中の生物を無害にするための水処理はよく知られており、いくつかの分野で使用されている。たとえば、病原生物を無害にするために、たとえば塩素を飲料水に追加するのが通常である。たとえばバラスト水、噴水、および非病原生物が生きていることが望ましくないその他の目的の水から、非病原生物を死滅させるために、しばしば二酸化塩素ClOの形態の塩素等の化学物質を使用することも知られている。
【0014】
信頼性のある効果を得るために、通常3〜4ppmの量のそのような化学物質が加えられる。これは、関連する化学物質または使用後通常自然界に放たれる化学物質の比較的大量な消費をもたらし、環境的に懸念される事項である。
【0015】
バラスト水以外の水からの脂質および炭化水素の分離は、いくつかの条件下で実施される。それは、石油坑から生成された水の処理、または、乳製品内のプロセス水からの脂質の分離、商業的なキッチンまたは食肉処理場にわたる多様な事業にあるかもしれない。
【0016】
先行技術は、浮選、遠心分離、膜技術、またはサイクロンの使用等の様々な技術を含む。さもなければ水面に上昇できない滴を集めるために、水中の異なる形態の合体液滴も使用される。
【0017】
使用される既知の方法の多くに共通なことは、プロセスを経た水中には、いくらかの残留脂質または残留炭化水素が依然としてあることである。公共的な基準により許容できる純度を得るために、これらのより小さな残留物を取り除くことは、比較的高くつく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、先行技術の少なくとも一つの欠陥を改良または低減することを目的とする。
【0019】
当該目的は、以下の記載およびそれに続く特許請求の範囲に特定される特徴をもって、本発明により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
水、典型的にはバラスト水を処理する方法が提供される。ここで、バラスト水は、縦パイプを通してバラストタンクに搬入され、縦パイプの上部において生成された負圧は、バラスト水内で気泡の形成を誘発する。本方法では、搬入されているバラスト水は、縦パイプに入る前に、絞り装置を介して、当該縦パイプの上部の閉容器に通水され、当該閉容器は、縦パイプの通水領域よりも大きな通水領域を有する。
【0021】
入口圧力、絞り領域、容器フローの断面積、縦パイプフロー断面積、および縦パイプの長さの適切な選択により、容器内のバラスト水が沸騰している間、同時に、相当の圧力降下が絞りを隔てて達成されうる。そのような圧力降下および容器内における後続の滞留時間は、真核性生物類に属する非常に多くの種を破壊するには十分である。
【0022】
容器内、少なくとも容器の上部において、沸騰状態を維持することが必要である。そのような沸騰状態が無い場合、バラスト水から分離された空気等の気体は、容器および縦パイプ内で上昇する容量を占める。これにより、容器および縦パイプの上部では、負圧が相当量減少される。
【0023】
開水路水理学理論から、いわゆるフルード数が知られている。無次元数のフルード数Fは、流体に作用している慣性力および重力間の比率として定義される。
【0024】
【数1】

【0025】
公式内の流体平均深度hをパイプの直径Dによって置き換えることによって、表現が適切なパイプ径の選択に適していることが見出された。
【0026】
【数2】

【0027】
開発作業中、容器のフルード数は0.2よりも小さくてはならない一方、縦パイプのフルード数は0.3よりも大きくなくてはならないことがわかった。縦パイプの垂直高さは、通常の海水温度でバラスト水を含む容器内で十分な沸騰効果を達成するために、10メートルを超すべきである。
【0028】
流量制限が容器内の圧力を上昇させるので、縦パイプの出口は、解放されているべきである。
【0029】
容器内のフルード数が0.1より小さく、縦パイプ内のフルード数が0.8〜1.7である場合、最良の機能性が達成される。
【0030】
バラスト水を処理する方法は、さらに、
−流水方向に分岐した、分離体内の貫通開口を形成し、
−バラスト水内の圧力を上昇し、
−最小開口寸法が1.5mmより小さい開口を通してバラスト水を流すことをさらに含む。
【0031】
水が開口の最小開口寸法を通った後、開口の下流側における圧力上昇を最大限回避するために、開口は、分岐に形成される。圧力低下および開口寸法の適切な選択によって、バラスト水内の相当部分の生物が、開口を通して流れる間に死滅されることが試行によって示された。大きな圧力低下および小さい開口寸法は、より高い死滅率に寄与する。開口は、たとえば、細長い溝またはランダムな断面の開口によって構成されうる。純粋に実質的な観点から、0.75〜1mm間の最小開口寸法で、少なくとも3バールの圧力低下をもたらす溝は、良好な結果となることがわかった。
【0032】
本方法は、貫通カバー開口を備えるカバーによって開口を覆うことをさらに含む。比較的高速で生物がカバーと衝突することで、生物の大部分は死滅することがわかった。
【0033】
本方法は、大気圧より低く開口下流の圧力を低減させることをさらに含む。圧力は、行渡っている温度、典型的には水温で沸騰するまで低減される。
【0034】
分岐体の下流において、蒸気の形態の水の少なくとも一部によって、開口からの流出水は、カバーに向かって比較的自由に流れ、さらにカバーの下流側に流れる。
【0035】
本方法は、出口を有する密接容器を備える分離体を囲うことをさらに含み、当該容器は、0.3より小さく、好ましくは0.2より小さいフルード数を有する。
【0036】
これにより、上述のフルード数は、水から遊離された空気が容器内で累積するのではなく、容器からの水の流出によって混入されることを防止することに寄与すると同時に、開口の下流の負圧を維持することがより容易である。
【0037】
本方法は、処理装置を通って水流状に流れる水中におけるUV放射効果を向上するために、
−行渡っている水温で、水を沸騰させる負圧に当該水をさらし、
−水が少なくとも部分的に蒸気である間、当該水をUV放射にさらす、ことを含むことを特徴とする。
【0038】
驚くことに、生物が、蒸気および場合によってはその他の気体という形態にある気体を相当割合で有する水を含む流体内にいる間、生物を放射線にさらすことによって、水中生物に対するUV放射の効果が大幅に改善することが見出された。流体は、液体よりも大きな容量比率の蒸気および気体を有する。
【0039】
これは、UV放射の効果は水中に気泡が有る場合は低減し、ゆえにUV処理の前に水中の気泡形成を回避するように努められた、当該分野において確立された知識とは反対の示唆を与える。
【0040】
水から遊離される気体とは、たとえば空気等、圧力が低下されるに連れて水から遊離される気体を意味する。
【0041】
UV光の強度は通常の放射線量の50%より下、いくつかの場合には70%より下に減少されても、依然初期効果を維持することが、試行により示された。
【0042】
本方法は、容器内で水を負圧にさらし、少なくとも容器内または容器の下流側において水をUV放射線にさらすことをさらに含む。
【0043】
そのような方法は、構成するには比較的容易で安価である。容器内で水が負圧にさらされる前に、水流を絞ることは適切である。これは、容器内における所望の負圧の調整を促す。
【0044】
本方法は、処理装置を通って水流状に流れる水中の生存生物に対する化学物質の効果を向上するために、
−水に化学物質を供給し、
−行渡っている水温で水が沸騰する負圧に当該水をさらし、
−水および当該水から遊離された気体を含む流体内の水中の生物に、化学物質を作用させる、ことを含む。
【0045】
流体は、液体よりも大容量の割合の気体を有する。
【0046】
驚くことに、水中生物に対する化学物質の効果は、生物が蒸気および場合によってはその他の気体という形態の気体を相当割合で有する水を含む流体内にある間、生物を放射線にさらすことによって向上することがわかった。
【0047】
加えられた酸化塩素の割合は、通常の3〜4ppmから0.5〜1ppmに減少されても依然初期効果を維持することが、試行によって示された。
【0048】
本方法は、化学物質が水に加えられている間、または化学物質が水に加えられた後に、容器内で水を負圧にさらすことをさらに含む。そのような方法は、構成するには比較的単純で安価である。容器内で水が負圧にさらされる前に、水流を絞ることは適切である。これは、容器内の所望の負圧の調整を促す。
【0049】
本方法は、処理装置を通って水流状に流れる水からの、少なくとも脂質または炭化水素の分離を含み、
−行渡っている水温で水が沸騰する負圧に当該水をさらし、
−少なくとも脂質または炭化水素、および水から遊離された気体を含む流体内の水から、少なくとも脂質または炭化水素を分離させ、
−圧力上昇後に続いて、少なくとも脂質または炭化水素を水面に浮かばせる、ことを含む。
【0050】
流体は、液体よりも大容量の気体を有する。
【0051】
驚くことに、そのような処理中に沸騰している脂質および炭化塩素は、再度より高い、典型的には大気圧にさらされた後続の水においては、わずかな量だけ溶解することが見出された。したがって、脂質および炭化塩素は、水面に浮上し、自体既知の態様ですくい取られる。
【0052】
本方法は、容器内で水を負圧にさらすことをさらに含む。そのような方法は、構成するには比較的容易で安価である。容器内で水が負圧にさらされる前に、水流を絞ることは適切である。これは、容器内の所望の負圧の調整を促す。
【0053】
本発明に係る方法は、水、典型的にはバラスト水のバラストタンクへの縦パイプにより実施される。ここで、縦パイプ内の負圧は、バラスト水内における気泡の形成を誘発する。本方法は、絞り装置を介して閉容器と連通する入口パイプにより特徴付けられる。当該閉容器は、縦パイプの上部と接続されており、縦パイプの流れ断面積よりも大きい流断面積を有する。
【0054】
上述のように、容器のフルード数は0.2より小さく、縦パイプのフルード数は0.3より大きい。
【0055】
絞り装置は、流率に対する絞り断面積の設定を促す絞り弁により構成される。
【0056】
容器内の負圧をより良く維持可能にするために、容器の出口において渦防止装置を配置することが適切であることがわかった。
【0057】
容器には、より微小な生物を破壊するために、紫外光を生成するランプ(UVランプ)が備えられる。UV光源は、容器上または容器内にあり、場合によっては容器の閉じた配管内に配置される。
【0058】
容器または縦パイプは、たとえば二酸化塩素または次亜塩素酸塩等の化学物質の供給手段が備えられる。
【0059】
UV光および化学物質の効果は、処理が本発明に係る容器内でなされる場合に、大幅に向上することがわかった。
【0060】
上述のように、負圧が生成される縦パイプは、縦パイプの上部において海水中の十分な負圧を得るために十分な高さに、典型的には10メートル単位で、たとえば船舶のデッキ上まで形成される。
【0061】
0.01バールまでの低さの絶対圧力が、縦パイプの上部において達成される。これにより、生存している生物は、大気圧から破滅的な圧力低下にさらされる。経験からすると、いくつかの大型生物は、そのような圧力低下でも生存し、より大きな圧力低下が適切である。
【0062】
縦パイプには、より高圧下のバラスト水が供給される。絞りの上流において、たとえば2バールの絶対圧力を選択することによって、少なくとも100倍の圧力低下が達成される。一方、絶対入口圧力が4バールに選択される場合、これは2倍される。たとえばザリガニおよび軟体動物のようなより大きな生存生物が、突然この処理を受ける場合、そのような高度な圧力低下は、それらを死滅する。
【0063】
本装置は、流れ方向に分岐する少なくとも一つの開口が備えられる分離体を含む。ここで、当該開口の最小開口寸法は、1.5mmよりも小さい。
【0064】
下流側の水から上流側の圧力がかけられた水を分離する分離体は、たとえばパイプにより構成される。分離体は、部分から構成され、補強肋材と共に形成されうる。通常、分離体は、多くの開口を伴って形成される。
【0065】
分岐した開口の開口角は、45度より大きい。水温および水圧によっては45から120度の開口角が、十分に機能することがわかった。比較的小さい開口角は、分離体の所定の領域内において、いくつかの開口を配置することを可能とする。効果および分離体の可能な開口領域に鑑みると、70〜110度が、最も実用的であるようである。
【0066】
開口は、貫通するカバー開口が備えられたカバーによって覆われる。カバーは、分離体のちょうど外側に配置される。カバー開口の最小開口寸法は、開口の最小開口寸法の0.5〜1.5倍であり、好ましくは、カバーの全通水領域が分離体のそれよりも大きくなるように調整される。
【0067】
開口を備える分離体は、出口を有する密接容器により囲われる。当該密接容器は、下流側で接続される縦パイプと共に、容器内における負圧の比較的容易な確立および維持を可能とする。容器の直径は、たとえば流れ出て行かない水および蒸気によって遮られないように、開口からの流出のため、十分に大きくなくてはならない。容器は、起立または横置される。
【0068】
開発作業中、容器のフルード数は0.3よりも小さくあるべきである一方、縦パイプのフルード数は0.3よりも大きくあるべきであることがわかった。縦パイプの垂直高さは、通常海水温のバラスト水により容器内における十分な沸騰効果を達成するために、10メートルを超えるべきである。12.5mを超える長さは、いくつかの場合で、容器内の好ましくない流れパターンに寄与することがわかっており、縦パイプは長過ぎるべきでもない。
【0069】
出口に関連する流れ制限は、容器内の圧力を上昇する可能性があるので、縦パイプの出口は比較的に動きが妨げられないように形成されるべきである。縦パイプの下部における容器および受け手は、縦パイプより大きな直径を有する。
【0070】
分離された空気が容器からその後引き出されるので、容器内のフルード数が0.1〜0.2である時、最良の機能が達成されると同時に、その一方、所望の沸騰効果が維持される。縦パイプのフルード数は、最大限の容量を提供するためには、0.8〜1.7の間である。
【0071】
分離体内において利用可能な流れ領域は、たとえば、いわゆるスライド弁により調整されうる。
【0072】
分離体の上流側の圧力は、適切な効果が現れるまで上昇される。必要とされる圧力低下は、開口の最小開口寸法に依存する。0.8mmの最小開口寸法を有する開口を隔てて、3バールまたはそれより大きな圧力低下が、許容できる効果を達成するために必要となることが試行により示されている。
【0073】
開口に対して、0.01バール下の下流側絶対圧力を形成することによって、生存生物は、大気圧から破壊的な圧力低下にさらされる。上流圧力が2バールに上昇される時、たとえば少なくとも100倍の圧力低下が達成され、絶対入口圧力が4バールに選択される場合にはその2倍となる。
【0074】
本装置は、水中のUV放射の効果を向上するための装置を含む。水は、処理装置を通って流れて容器に搬入され、当該容器において、行渡っている水温で当該水を沸騰させる負圧にさらされる。そして、少なくとも容器内または容器の下流において、当該装置には、UV装置が備えられる。
【0075】
容器内の負圧は、下流側に接続されたポンプによって提供される。
【0076】
本装置は、水中生存生物に対する化学物質の効果を向上するための装置を含む。ここで、水は処理装置を通って流れる。当該処理装置では、水は、行渡っている水温で当該水を沸騰させる負圧にさらす容器に搬入されることを特徴とする。
【0077】
入口パイプまたは容器には、たとえば二酸化塩素、次亜塩素酸塩、オゾンまたは金属イオンの形態の化学物質の供給手段が備えられる。本装置は、水から少なくとも脂質または炭化水素を分離するための装置を含む。ここで、水は処理装置を通って流れる。当該処理装置では、水は、行渡っている水温で当該水を沸騰させる負圧にさらす容器に搬入されることを特徴とする。生存生物に対する向上したUV放射の効果および化学物質の効果のために、そして水からの脂質および炭化水素の分離のためにも、容器内の負圧は、下流側で接続されたポンプによって提供されるべきである。
【0078】
または、負圧は、容器に対して下流側に接続された縦パイプによって提供される。縦パイプが使用される場合、以下に述べるように、容器のフルード数は0.3より小さく、縦パイプのフルード数は0.3よりも大きい。
【0079】
容器の入口には、流量すなわち容器内の負圧の調整のための絞り装置が備えられる。絞り装置は、たとえばスライド弁、ディスク弁、またはその他の適切な絞り若しくは調整装置を含む。
【0080】
容器内または少なくとも容器の一部において、沸騰状態を維持することが必要である。そのような沸騰状態が無い場合、水から分離された空気を含む気体は、容器内および縦パイプ内で増大する容量を占める。これにより、容器内および縦パイプの上部の負圧は、大幅に減少される。
【0081】
分離体の議論における上述同様の状態は、フルード数および絞り装置についても当てはまる。
【0082】
本発明に係る方法および装置は、バラスト水処理のための比較的に簡単で費用効率のよい解決を提供する。より大きな生物は、縦パイプ内の負圧により無害とされる一方、バクテリアおよびウィルス等のようなより小さな生物は、本目的のための、自体既知のUV光または化学物質によって死滅される。
【0083】
本方法は、水処理およびその他の目的によく適している。
【0084】
以下には、添付の図面に視覚化される、好ましい方法および実施形態の例が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明に係る容器および縦パイプを示す。
【図2】図2は、図1のI−I部分を拡大して示す。
【図3】図3は、図2のII−II部分を示す。
【図4】図4は、他の実施形態の容器を示す。
【図5】図5は、図4のIV−IV部分を拡大して示す。
【図6】図6は、図5の一部を依然より拡大して示す。
【図7】図7は、UVランプが備えられた容器の、図1のI−Iに対応する部分を示している。
【図8】図8は、図7のVII−VII部分を示す。
【図9】図9は、UVランプがUV装置内にある実施形態の、図1のI−Iに相当する部分を示す。
【図10】図10は、容器が水平方向に配置された実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図中、参照番号1は、長さ“L”および通水領域“b”の縦パイプを示す。縦パイプ1は、図示されない船舶のバラストタンクと連通するタンク2の下端部において開口する。縦パイプ1は、上端において、図3に示す“b”よりも大きい通水領域“B”を有する密接容器4に接続される。
【0087】
渦防止装置6は、容器4の出口8に配置される。
【0088】
図示しないバラストポンプと連通する入口パイプ10は、容器4の上部において出口開口12を有する。この例示的な実施形態では、出口開口12には、ディスク弁の形態で、絞り装置14が備えられる。絞り装置14の弁ディスク16は、軸方向に移動可能なように、出口開口12を覆う。したがって、調整可能な環状ギャップ18が出口開口23に形成される。
【0089】
入口パイプ10に対向する側上で、弁ディスク16は、たとえば凹状、凸状等の非平面状に形成されたり、図示されないポンプ羽根車の羽根と共に形成されたりする。
【0090】
弁ディスク16は、スタッフィングボックス22を通って伸長するロッド20に接続され、当該ロッド20には、その上端部にねじ山24が備えられている。ねじ山24上に螺合するナット26は、スタッフィングボックス22上に位置し、環状ギャップ18を調整するために使用される。
【0091】
入口パイプ10は、場合によって用いられる化学物質の供給のために開口28が備えられている。
【0092】
バラスト水が、入口パイプ10内において圧力がかかった状態で供給されるに連れ、容器4および縦パイプ1は、バラスト水で満たされる。縦パイプ1の長さLは、縦パイプ1が水で満たされた時、容器4内で負圧を確立させる効果を有する。
【0093】
負圧は、行渡っているバラスト水温に調整され、容器4内のバラスト水は、いかなる付加的な供給エネルギーを伴うことなく沸騰される。
【0094】
通水領域“b”および“B”のフルード数が上述の外の値に選択される場合、気体は比較的急速に水から分離し、当該気体は容器4および縦パイプ1の上部における容量の大部分を占める。
【0095】
しかし、上述のフルード数が特定された値内である場合、分離された気体は、バラスト水および負圧により継続的に混入され、沸騰が維持される。渦防止装置6は、この効果に好適に寄与する。
【0096】
容器4内で維持される負圧というまさにこの事実により、絞り装置14は、所望の圧力低下で設定される。絞り装置14を隔てた圧力低下はさらに、容器4内において乱れた多相流に寄与する。一方、同時に、絞り装置14を隔てた圧力低下およびそれに続く負圧のため、生存生物が死滅する。
【0097】
他の実施形態では、入口パイプ10は、分離体30の形態で絞り装置14に接続される。フランジ32によって密閉される分離体30には、図4を見ると容器2に突出し、流れ方向に分岐したいくつかの開口34が備えられる。開口34は、図5および6を見ると、最小開口寸法“s”および開口角“α”を有する。最小開口寸法“s”における開口34の形状は、ナイフ形状であり、比較的鋭い。
【0098】
当該例示的な実施形態では、開口24は、分離体30内において、比較的細長い溝により形成される。
【0099】
ロッド20により、パイプ体38の形態のスライド弁36は、分離体8の通水領域を調整するために、分離体8内で移動するように配置される。たとえば図示しないアクチュエータ等のその他の調整手段の使用は、多くの場合適切である。
【0100】
カバー開口42を備えるカバー40は、図5および6に見るように、下流側、分離体30近傍に配置される。カバー40は、たとえば、布、網製品、多孔板またはその他の適切な部材により構成される。
【0101】
バラスト水が処理される時、バラスト水は、圧力下で、入口パイプ10を通り、さらに分離体30に流れる。水は開口34を通って降下する圧力下流れ続け、その後、バラスト水は、比較的高速でカバー40に当たり、カバー開口42を通って流れる。縦パイプ1がバラスト水で満たされるに連れ、負圧が容器2内で確立し、バラスト水が行渡っている温度で沸騰する。
【0102】
これにより、開口34から流出するバラスト水は、容器2が水で満たされている時よりも非常にわずかだけ遅らされ、開口34を通しての流れおよびカバー40に対する衝撃の意図した効果を増大する。
【0103】
その後、スライド弁36は、分離体30を隔てた所望の圧力低下となるまで調整される。
【0104】
一実施形態では、図7および8を見ると、容器2は、容器2の外側に向けて開口する、3つの緊密で透明なパイプ44が備えられる。パイプ44には、UVランプ46が配置される。
【0105】
または、図9に見るように、UVランプ46は、自体公知のUV装置48内に配置される。
【0106】
これにより、UV装置48を通る流体は、蒸気および気泡を相当比率で有する水を含み、水中生物に対するUV光の効果は、相当程度に上昇する。
【0107】
水中の蒸気および気泡の相当部分は、水中の化学物質の効果を相当程度に上昇する効果を有する。
【0108】
化学物質は、たとえば、開口28を介して水に追加される。
【0109】
蒸気および気泡を大部分有する水を含む、容器2を通って流れる水中の負圧は、水中に在る脂質および炭化水素を、しばしば水が沸騰する前に沸騰させる。
【0110】
図10は、横置された容器2を備える装置を示し、本発明に係る装置および方法は、この配置の容器2によっても同様に機能する。図10は、ポンプ50が容器2内における十分な負圧の形成に寄与するために出口8に接続されることを示す。ポンプは、通常、容器2から所定距離を置いて、ポンプ50内のキャビテーションのリスクを低減できるように、高さはいくらかより低く配置される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦パイプ(1)を通してバラストタンクに搬入されるバラスト水を処理するための方法であって、前記バラスト水中で気泡の形成を誘発する、前記縦パイプ(1)の上部において負圧が形成され、
前記縦パイプ(1)に入る前に、前記バラスト水は、絞り装置(14)を介して、当該縦パイプ(1)の上部の閉容器(4)に通水され、
前記閉容器(4)は、前記縦パイプ(1)の通水領域(b)よりも大きな通水領域(B)を有する方法。
【請求項2】
前記閉容器(4)は、フルード数が0.2よりも小さく形成される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記縦パイプ(1)は、フルード数が0.6よりも大きく形成される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
流水方向に分岐した、分離体(30)内の貫通開口(34)を形成し、
前記バラスト水中の圧力を上昇し、
最小開口寸法が1.5mmより小さい前記開口(34)を通してバラスト水を流す、ことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
貫通カバー開口(42)が備えられたカバー(40)により前記開口(34)を覆うことをさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
大気圧より低く、前記開口(34)の下流側の圧力を低減することをさらに含む請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
行渡った温度で前記水が沸騰するまで、前記開口(34)の下流側の圧力を低減することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記開口(34)を有する前記分離体(30)を、フルード数が0.3よりも小さい、出口を有する密接容器(4)によって囲うことをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
処理装置を通って水流状に流れる水中におけるUV放射効果を向上するために、
行渡っている水温で、前記水を沸騰させる負圧に当該水をさらし、
前記水が少なくとも部分的に蒸気である間、当該水をUV放射にさらす、ことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記水を前記容器(4)内の負圧にさらし、少なくとも当該容器(4)または当該容器(4)の下流側において、当該水をUV放射にさらす、ことをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
処理装置(1)を通って水流状に流れる水中の生存生物に対する化学物質の効果を向上するために、
前記水に化学物質を供給し、
行渡っている水温で前記水が沸騰する負圧に当該水をさらし、
前記水および当該水から遊離された気体を含む流体内の水中の前記生物に、化学物質を作用させる、ことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
処理装置(1)を通って水流状に流れる水から、少なくとも脂質または炭化水素を分離するために、
行渡っている水温で前記水が沸騰する負圧に当該水をさらし、
少なくとも脂質または炭化水素、および前記水から遊離された気体を含む流体内の水から、少なくとも脂質または炭化水素を分離し、
圧力上昇後に続いて、少なくとも脂質または炭化水素を水面に浮かばせる、ことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
バラストタンクに延びるバラスト水のための縦パイプ(1)であって、
前記縦パイプ(1)内において、バラスト水中の気泡の形成を誘発する負圧が形成され、
絞り装置(14)を介して、入口パイプ(10)が前記縦パイプ(1)の上部と接続される閉容器(4)と連通し、
前記閉容器(4)は、前記縦パイプ(1)の通水領域(b)よりも大きな通水領域(B)を有する縦パイプ(1)。
【請求項14】
前記容器(4)のフルード数は、0.1よりも小さい請求項13に記載の縦パイプ(1)。
【請求項15】
前記縦パイプ(1)のフルード数は、0.3よりも大きい請求項13に記載の縦パイプ(1)。
【請求項16】
前記絞り装置(14)は、絞り弁により構成される請求項13に記載の縦パイプ(1)。
【請求項17】
前記容器(4)の出口(8)には、渦防止装置(6)が備えられている、請求項13に記載の縦パイプ(1)。
【請求項18】
バラスト水は、前記バラストタンクに搬入される前に、分離体(30)に流れ、
前記分離体(30)は、最小開口寸法が1.5mmよりも小さく、流れ方向に分岐している開口(34)が備えらえる、請求項13に記載の縦パイプ(1)。
【請求項19】
分岐開口(10)の開口角度(α)は、45度よりも大きい、請求項18に記載の縦パイプ(1)。
【請求項20】
前記開口(34)は、貫通カバー開口(42)が備えられたカバー(40)により覆われる、請求項18に記載の縦パイプ(1)。
【請求項21】
前記カバー開口(42)の最小開口寸法は、前記開口(34)の最小開口寸法の0.5〜1.5倍である、請求項21に記載の縦パイプ(1)。
【請求項22】
処理装置を通って流れる水中のUV放射の効果を向上するために、
前記水は、行渡っている水温で沸騰する負圧に当該水がさらされる前記容器(4)に搬入され、
前記処理装置は、少なくとも前記容器(4)内または下流側に備えられる、請求項13に記載の縦パイプ(1)。
【請求項23】
処理装置を通って流れる水中の生存生物に対する化学物質の効果を向上するために、
前記水は、行渡っている水温で沸騰する負圧に当該水がさらされる前記容器(4)に搬入される、請求項13に記載の縦パイプ(1)。
【請求項24】
前記容器(4)は化学物質のための供給手段(28)が備えられる、請求項4に記載の縦パイプ(1)。
【請求項25】
処理装置を通って流れる水から、少なくとも脂質または炭化水素を分離するために、
前記水は、行渡っている水温で沸騰する負圧に当該水がさらされる前記容器(4)に搬入される、請求項1に記載の縦パイプ(1)。
【請求項26】
前記容器(4)は下流においてポンプ(50)に接続されている、請求項22、23または25に記載の縦パイプ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−520312(P2013−520312A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554957(P2012−554957)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【国際出願番号】PCT/NO2011/000064
【国際公開番号】WO2011/105911
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512208855)
【Fターム(参考)】