説明

水処理方法およびその装置

【課題】 膜ろ過処理による安定した処理水量を確保し得るとともに、オゾン処理の効果を十分に発揮して、オゾン注入率の削減や副生成物の生成の抑制を可能とする水処理方法またはその装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 オゾン酸化を利用した水処理方法であり、膜ろ過装置6の前段で被処理水にオゾンを注入して膜ろ過する際に、膜ろ過水中に残留する残留オゾン濃度が所定範囲内となるように、残留オゾン濃度の測定値に基づいて、膜ろ過装置6の前段の供給配管15から供給されるオゾン注入量を調整する水処理方法であり、膜ろ過水中の残留オゾン濃度を監視することによって、膜ろ過装置6の前段で必要最小限のオゾンを供給して、膜ろ過装置6の通水抵抗を高めることなくろ過水を得ることができるとともに、オゾンの副生成物の生成を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、上水道、下水道、工業用水または廃水処理の水処理方法およびその装置に関し、詳しくはオゾン処理と膜ろ過処理を組み合わせて、膜ろ過処理効率が高く、しかもオゾン処理の効果が高い水処理方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、膜ろ過装置による水処理では、水中の溶解性有機物を除去する目的で、生物処理、オゾン処理、活性炭処理のような高度処理装置を前処理装置あるいは後処理装置として組み合わせた処理法が実施されている。
【0003】上水道における水処理では、原水中の溶解性有機物であるトリハロメタン前駆物質や臭気物質を除去するために、膜ろ過処理にオゾン処理と活性炭処理とを付加することが有効である。オゾン処理では、原水中の有機物を生物易分解性有機物に変えることが可能であり、オゾン処理によって後段の活性炭処理による有機物の除去率が向上する。また、オゾン処理により溶存酸素が過飽和になるために、後段の活性炭処理が生物処理能力を持った生物活性炭となり、活性炭処理による有機物等の除去率を長期に渡って維持することができ、活性炭の交換コストを低減することができる。この原水のオゾン処理では、副生成物が生成されるために、後段の活性炭処理による副生成物の除去は不可欠である。因みに、水道施設設計指針・解説(1990版)によれば、浄水処理においてオゾン処理が用いられた場合は、活性炭処理を併用しなければならないことが掲載されている。
【0004】通常、オゾン処理を用いた浄水処理では、水処理の組み合わせとして、以下の2方式が主な処理フローであった。その処理フローは、■オゾン処理→活性炭処理→膜ろ過処理と、■膜ろ過処理→オゾン処理→活性炭処理である。■の処理方式は、原水にオゾンを直接注入してオゾン処理した後に、活性炭処理を行って、最後に膜ろ過処理を行い懸濁物質及び細菌類を除去するものである。この場合は、原水に直接オゾンが注入されるため、オゾンの注入率が大きくなり経済的でない。■の処理方式は、膜ろ過処理で懸濁物質及び細菌類を除去した後に、オゾン処理および活性炭処理により有機物質等を除去するものである。この場合は、原水を直接膜ろ過処理するため、膜の目詰まりの進行が早いという問題がある。なお、■および■の処理方式とも凝集沈殿処理あるいは凝集処理を前処理として付加することができるが、膜ろ過による懸濁物質除去性能を生かすことができなくなるために望ましくない。
【0005】一方、膜ろ過装置では、膜ろ過を継続していくと膜の目詰まりが起り、定期的に薬品洗浄を行って膜のろ過性能を回復させなければならない。これらの問題点を解決するために、従来例1の水処理装置では、図5R>5に示すように、被処理水をオゾン溶解槽兼接触槽1に送り込んでオゾン酸化処理を行って、循環槽兼膜供給槽3に供給して、膜供給ポンプ5から膜ろ過装置6に送り込み、その膜ろ過水を活性炭処理装置(または、活性炭塔)8に送り込んでいる。このように、膜ろ過の前にオゾン接触槽を設けて、膜ろ過する方法によって膜の目詰まりを解消する処理方法が考えられた。しかし、この処理方式の場合は以下のような問題点がある。先ず、原水に対して直接オゾンを注入して反応させるため、オゾン注入率を大きくしなければならず経済的ではない。また、オゾン注入率を大きくすることにより副生成物を生じ、後段の活性炭に対する負荷が大きくなる欠点がある。さらに、オゾンが残量している被処理水を膜供給ポンプ5で膜ろ過装置6に供給しなければならないために、膜供給ポンプに耐オゾン性の素材を使用しなければならない。
【0006】また、特開平10−113659号公報(以下、従来例2)には、図6に示すように、膜ろ過の前でオゾンを注入して膜ろ過する方法が示されている。被処理水が循環槽兼膜供給水槽3に供給され、凝集剤注入ポンプ4から凝集剤が供給され、その処理水が膜供給ポンプ5によって膜ろ過装置6に供給される。その過程でオゾン発生器2からオゾンが注入されて膜ろ過される。7は循環ラインである。ろ過水は、オゾン接触槽9に送り込まれて活性炭処理装置8でろ過水中のオゾン副生成物等が除去されている。
【0007】この従来例2の処理方式では、以下のような問題点がある。先ず、オゾンがインライン注入されているため、オゾンと有機物等が反応するための接触時間を十分に確保することができないまま膜ろ過装置6に供給される。さらに、膜ろ過装置6では、定期的に膜供給ポンプ5を停止して物理洗浄を行わねばならないが、オゾナイザー(オゾン発生器2)の間欠運転を行うことは難しく、物理洗浄の間、オゾンを無駄に消費しなけれはならない。
【0008】さらに、従来例2では、膜ろ過装置6による膜ろ過の前段でオゾンを注入して膜ろ過した後に、再度オゾンをオゾン接触槽9に注入し、オゾン酸化反応を触媒に通水する方法である。しかし、オゾンと有機物質との反応においては、十分なオゾン濃度との接触時間が必要であり、このような方式のオゾンのインライン注入方式では、オゾンと有機物質との接触時間を十分に確保することができない欠点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のような従来技術の問題点を克服しようとするものであり、膜ろ過処理による安定した処理水量が得られるとともに、オゾン処理の効果を十分に発揮して、オゾン注入率の削減や副生成物の生成の抑制を可能とする水処理方法およびその装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を達成するために、請求項1の発明は、オゾン酸化を利用した水処理方法において、被処理水を供給配管から膜ろ過装置に供給して膜ろ過する際に、前記供給配管に供給されるオゾン注入量を、前記膜ろ過水中の残留オゾン濃度が所定範囲内となるように調整し、前記膜ろ過装置の後段のオゾン溶解槽兼接触槽に膜ろ過水を供給するとともに、前記オゾン溶解槽兼接触槽にオゾンを再注入して処理することを特徴とする水処理方法である。この構成によれば、膜ろ過水の残留オゾン濃度を監視し、膜ろ過装置前段の供給配管から供給されるオゾン注入量を制御し、必要最小限のオゾンによって、膜目詰まりを抑制し、膜ろ過装置の通水抵抗を高めることなく膜ろ過水が得られ、しかもオゾンの副生成物の生成を抑制され、オゾンによる腐食が抑制される。
【0011】また、請求項2の発明は、前記残留オゾン濃度が、0.05〜1.0mg/Lの範囲内となるように、前記オゾン注入量を調整することを特徴とする請求項1に記載の水処理方法である。この構成によれば、膜供給水にオゾンを注入して、膜ろ過水の残留オゾン濃度が、0.05〜1.0mg/Lの範囲内となるように、膜ろ過装置前段の供給配管内にオゾンを注入して、注入膜ろ過装置の膜の目詰まりが抑制されるとともに、オゾンによる腐食の影響が抑制でき、オゾン消費量を必要最小限に抑制することができる。
【0012】また、請求項3の発明は、オゾンが注入される前記供給配管が、前記膜ろ過装置に被処理水を供給するための膜供給ポンプの直前または直後の供給配管であることを特徴とする請求項1または2に記載の水処理方法である。この構成によれば、膜ろ過水に残留するオゾン濃度を計測して、この残留オゾン濃度によって、膜ろ過装置前段の供給配管からのオゾン注入量を制御しており、必要以上に大量のオゾンを注入することなく、膜ろ過装置の膜の目詰まりが抑制されるとともに、オゾンによる腐食の影響を抑制することができる。
【0013】また、請求項4の発明は、前記オゾン溶解槽兼接触槽における滞留時間が5分以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の水処理方法である。この構成によれば、オゾン停滞時間が確保し得るように、膜ろ過装置の形状や供給配管長を設定するとともに、オゾン溶解槽接触槽の容積やオゾンの溶解方法を調整することによって、膜ろ過水中の有機物とのオゾン反応が十分になされるように水処理を行うことができ、膜ろ過処理装置の膜ろ過処理効率を損なうことなく、オゾンと有機物との酸化反応時間を確保することができる。
【0014】また、請求項5の発明は、前記膜ろ過装置の膜ろ過出口に設置したオゾン検知器によって、膜ろ過水の残量オゾン濃度を連続的に測定し、その測定値に基づいて、膜ろ過水の残留オゾン濃度が所定範囲内となるように、前記オゾン注入量をフィードバック制御することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の水処理方法である。この構成によれば、膜ろ過水中の残留オゾン濃度を測定して、残留オゾン濃度が上記範囲とすることにより、必要最小限のオゾンを供給して、オゾン反応による腐食や膜目詰まりの抑制と、オゾンの副生成物の生成を抑制することができる。仮に、原水のオゾン要求量が変動したとしても最適な量に設定することができる。また、上記オゾン検出器は、溶存オゾン濃度検知器を含むものである。
【0015】また、請求項6の発明は、オゾンを被処理水に溶解して膜ろ過装置で膜ろ過し、そのろ過水をオゾン溶解槽兼接触槽に送って水処理する水処理装置であって、前記膜ろ過装置に被処理水を送り込む膜供給ポンプを備える供給配管と、前記供給配管内に流れる被処理水にオゾンを注入するオゾン注入設備と、前記膜ろ過装置の膜ろ過出口に設置した膜ろ過水中の残留オゾン濃度を計測するオゾン検出器と、前記オゾン検出器によって膜ろ過水中の残留オゾン濃度を測定し、その計測値に基づいて、前記オゾンの注入量を調整し、膜ろ過水中の残留オゾン濃度を所定範囲内とするように制御する制御手段とを具備することを特徴とする水処理装置である。この構成によれば、膜ろ過水に残留するオゾン濃度をオゾン検出器によって計測することにより、膜ろ過水中の残留オゾン濃度を制御手段によって監視し、膜ろ過装置前段の供給配管から供給されるオゾン注入量を制御することにより、膜目詰まりが抑制できるとともに、オゾンによる有機物の分解と装置の腐食を抑制することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の水処理方法およびその装置について、図面を参照して詳細に説明する。図1R>1〜3は、それぞれ異なった実施形態の処理フローを示す図である。
【0017】(実施形態1)図1は、本発明の水処理方法およびその装置の一実施形態を説明するための処理フローを示す図である。同図において、被処理水は、循環槽兼膜供給水槽3に供給され、循環槽兼膜供給水槽3には、凝集剤注入ポンプ4から凝集剤が供給されている。循環槽兼膜供給水槽3の凝集処理した膜供給水は、膜供給ポンプ5を備える供給配管15を通して膜ろ過装置6に供給される。オゾン発生器2からオゾンが膜供給ポンプ5の後段の供給配管15に注入されて、膜供給水にオゾンが溶解して膜ろ過装置6に供給される。膜ろ過装置6を透過した膜ろ過水は、供給配管17を通してオゾン溶解槽兼接触槽11に送り込まれる。オゾン溶解槽兼接触槽11には、オゾン発生器2から必要量のオゾンが供給されて膜ろ過水とオゾンとが接触している。膜ろ過水は、膜ろ過装置6からオゾン溶解槽兼接触槽11に送り込まれる過程で、オゾン検出器12によって膜ろ過水中の残留オゾン濃度が検出され、そのオゾン濃度の計測値に基づいて、オゾン発生器2から供給配管15へ供給されるオゾン供給量が制御されている。オゾン溶解槽兼接触槽11で十分にオゾンと接触した膜ろ過水は、活性炭処理装置(活性炭塔)8に送り込まれ、オゾン副生成物等が活性炭に吸着されて、浄化された処理水が得られる。また、膜ろ過装置6と循環槽兼膜供給水槽3からの排オゾンと、オゾン溶解槽兼接触槽11から排出される排オゾンは、排オゾン処理設備13で処理される。膜ろ過膜6からの循環水は、循環ライン7を通して循環槽兼膜供給水槽3や膜供給ポンプ5の前段の供給配管15に返送される。なお、以下の実施形態においても同様であるが、オゾン検出器12は、溶存オゾン濃度検知器であってもよい。
【0018】本実施形態では、オゾン検出器12によって、膜ろ過水中の残留オゾン濃度が常時計測されており、残留オゾン濃度が、0.05〜1.0mg/Lの範囲となるように、オゾン発生器2から膜供給ポンプ5の後段の供給配管15へ供給されるオゾン注入量がバルブの開閉操作によって調整されている。例えば、CPU(中央処理装置)等による制御手段によって、膜ろ過水中の残留オゾン濃度を算出して、供給配管15に注入されるオソン注入量をフィードバック制御している。そして、本水処理装置では、オゾン溶解槽兼接触槽11でのオゾン滞留時間を5分以上とする。また、オゾン発生器2では、オゾン検出器12の計測値に基づいて、供給配管15に供給されるオゾン注入量が設定されるとともに、膜ろ過水の残存オゾン濃度を考慮して、オゾン溶解槽兼接触槽11に供給されるオゾン注入量が設定され、必要最小限のオゾンが供給されている。なお、以下の実施形態も同様であるが、オゾン発生器2から発生するオゾンは、オゾン供給配管を通して、供給配管15とオゾン溶解槽兼接触槽11に供給する配管系で接続され、これらの供給配管15に供給する設備やオゾン溶解槽兼接触槽11に所定量のオゾンを供給するための設備を含めてオゾン注入設備と称する。
【0019】(実施形態2)図2は、本発明の水処理方法およびその装置の他の実施形態を説明するための処理フローを示す図である。同図の水処理装置は、オゾン注入設備のオゾン供給配管が、膜供給ポンプ5の前段の供給配管15に接続され、オゾンが供給配管15に供給され、循環水が膜供給ポンプ5の前段の供給配管15に供給されている。他の構成は、図1の水処理装置と同一である。
【0020】本実施形態では、オゾン検出器12によって、膜ろ過水中の残留オゾン濃度が計測され、残留オゾン濃度が上記範囲となるように、オゾン発生器2から膜供給ポンプ5の前段の供給配管15に供給されるオゾン注入量が、バルブの開閉操作等によって調整されている。そして、本水処理装置では、図1の実施形態と同様に、オゾンが供給された供給配管15またはオゾン発生器2から膜ろ過装置6までのオゾン滞留時間を5分以内とし、オゾン溶解槽兼接触槽11でのオゾン滞留時間を5分以上とする。また、オゾン溶解槽兼接触槽11に供給されるオゾンも残存オゾン濃度は、上記実施形態と同様に設定されている。
【0021】(実施形態3)図3は、本発明の水処理方法およびその装置の他の実施形態を説明するための処理フローを示す図である。同図において、原水が循環槽兼膜供給槽3に送り込まれ、この槽には凝集剤注入ポンプ4から凝集剤が供給されている。循環槽兼膜供給槽3からの凝集処理水は、供給配管16を通して脱泡槽または気液分離槽14に供給される。この過程で、オゾン発生器2で発生したオゾンは、オゾン供給配管を通して供給配管16に供給して凝集処理水に溶解して、脱泡槽または気液分離槽14に供給される。そして、膜供給ポンプ5によって、供給配管15を通して膜ろ過装置6に供給されている。膜ろ過装置6を透過した膜ろ過水とその残留オゾンは、オゾン発生器2からオゾンが供給されているオゾン溶解槽兼接触槽11に送り込まれる。膜ろ過装置6から膜ろ過水が供給配管17を通してオゾン溶解槽兼接触槽11に供給される過程で、膜ろ過水中の残留オゾン濃度がオゾン検出器12で検出され、その残留オゾン濃度の計測値に基づいてオゾン発生器2から供給配管16に供給されるオゾン供給量が制御され、膜ろ過水中の残存オゾン濃度が所定範囲となるようにフィードバック制御されている。オゾン溶解槽兼接触槽11で十分にオゾンと接触した膜ろ過水は、活性炭処理装置8に送り込まれて、オゾン副生成物等が活性炭に吸着されて、浄化された処理水が得られる。脱泡槽または気液分離槽14と循環ライン7とオゾン溶解槽兼接触槽11から放出される排オゾンは、排オゾン処理設備13で処理される。循環水は、循環槽兼膜供給槽3、脱泡槽または気液分離槽14、或いは供給配管16に返送される。
【0022】本実施形態では、オゾン検出器12によって、膜ろ過水中の残留オゾン濃度が計測されており、残留オゾン濃度が上記範囲となるように、オゾン発生器2から供給配管16へ供給されるオゾン注入量がバルブの開閉操作によって調整されている。そして、残留オゾン濃度に応じて、オゾン発生器2からオゾン溶解槽兼接触槽11に供給されるオゾンが設定されている。オゾン溶解槽兼接触槽11に供給されるオゾン注入量の算出は、オゾン検出器12か、オゾン発生器2に設けた制御手段によってなされ、残留オゾン濃度に従って、オゾン溶解槽兼接触槽11に供給されるオゾン注入量が設定されている。そして、本水処理装置では、オゾン溶解槽兼接触槽11でのオゾン滞留時間を5分以上とする。
【0023】次に、本発明を示す上記実施形態1〜3の各構成要素について、さらに詳細に説明する。なお、以下の個々の要素説明によって、上記実施形態に基づく発明に限定を加えるものではないが、下記の個々の記述には、本発明に付随する発明を包含している。
【0024】(1)本発明のオゾン注入設備について説明する。オゾン注入設備の目的は、膜ろ過装置のろ過速度を高く維持するために膜ろ過供給水にオゾンを溶解させるためと、膜ろ過水中の微量有機物を分解するために設置されている。オゾン発生器2からオゾンは、膜ろ過装置の前段の供給配管内に注入され、膜ろ過装置6を通過した膜ろ過水に残留する残量オゾン量は、膜ろ過装置6のろ過速度を高く維持するために、0.05〜1.0mg/Lとし、望ましくは、0.2〜0.4mg/Lとするとよい。膜ろ過水の残留オゾン濃度が、0.4mg/Lより高くなった場合、膜ろ過装置6のろ過膜として、耐オゾン性の膜素材を用いても長期的にはオゾンとの反応による膜劣化が起こる恐れがあるが、膜モジュールの交換時期を考え合わせると、1.0mg/Lまでは許容される。また、オゾン注入量が1.0mg/Lより多くなると、副生成物量も多くなる問題がある。以上のことから、膜ろ過水の残留オゾン濃度は、0.05〜1.0mg/Lとし、望ましくは、0.2〜0.4mg/Lとするとよい。
【0025】なお、本発明では、膜ろ過の後段で膜ろ過水をオゾン溶解槽兼接触槽に供給してオゾンと再接触させているために、膜ろ過の前段でオゾンと十分に接触させる必要はない。むしろ、濁質が多く含まれている原水とオゾンとの接触時間を長くした場合、濁質とオゾンとの反応によって、オゾンの消費が多くなる欠点があるので、本実施形態では、オゾンを溶解させたら直ちに膜ろ過することによって、濁質とオゾンとの反応によるオゾンの消費を防止することができる。オゾン注入設備からインラインでオゾンを注入することによって、膜供給水に瞬時にオゾンを溶解させることが可能であり、オゾン注入設備から膜ろ過装置6内の停滞時間が5分以内とすることが望ましい。
【0026】(2)本発明のオゾンのインライン注入位置について説明する。オゾンのインライン注入位置は、実施形態1のように膜供給ポンプの後段と、実施形態2,3にように膜供給ポンプの前段とがある。
【0027】■膜供給ポンプの後段でオゾンをインライン注入する場合、図1に示したように、オゾン注入方式は、エジェクタ式またはインジェクタ式となる。インジェクタ式の場合は、膜供給ポンプでは、膜供給ポンプの後で水圧が高い位置で注入する必要があるために、オゾンガスの注入圧を高くしなければならない欠点がある。しかし、図1の実施形態の全量ろ過方式の場合、膜供給ポンプにはオゾンが溶解した液が接触しないので、耐オゾン性の素材を使った膜供給ポンプとする必要がない。また、膜供給ポンプのガスロックの可能性が低く、通常の渦巻きポンプを使用することができる。一方、クロスフローろ過方式の場合は、残留オゾンのある循環水が循環水槽または膜供給ポンプ直前に返送され、原水と混合して残留オゾンが消滅する可能性もあるが、耐オゾン性の素材の材質が好ましい。
【0028】■膜供給ポンプの前段でオゾンをインライン注入する場合、図2に示すように、オゾン注入方式は、エジェクタ方式またはインジェクタ方式となる。オゾンは、圧力が低い所に注入されるので、オゾン注入圧は低くてもよいという利点があるが、図2の実施形態では、耐オゾン性の素材を使った膜供給ポンプを使う必要がある。また、膜供給ポンプのガスロックの可能性が高く、通常の渦巻きポンプを使用することが難しい。膜供給ポンプのガスロック対策としては、図3に示したように、オゾンガスをインライン注入の後に、脱泡槽または気液分離装置を設けることで対応することができる。なお、膜供給ポンプは、ガスロックが発生しない一軸ポンプ等を用いることにより、オゾン注入後の加圧によるオゾン再溶解が起こり、オゾン接触効率が向上する。以上で述べた膜供給ポンプの後段および前段でオゾンをインライン注入する場合、オゾンを溶解した後の膜ろ過までの停滞時間を短くすることが可能であり、オゾン消費量を抑制することができる。
【0029】(3)本発明の膜ろ過装置について説明する。本発明の膜ろ過装置は、膜供給水にオゾンが溶解された状態で膜ろ過することにより、常にオゾンによる前処理が行われている状態で膜ろ過することが可能であり、細菌に発生を抑制して膜の目詰まりを防止することができるので、高い透過流束を得ることができる。膜ろ過装置のろ過膜は、濁質成分および細菌類を除去することができる膜であり、精密ろ過膜または限外ろ過膜が用いられる。精密ろ過膜の場合は、孔径0.01〜0.45μmのものを用いられ、限外ろ過膜の場合は、分画分子量1000〜20万ダルトンのものを用いられる。そして、膜モジュールの形状は、中空糸状、スパイラル状、チューブラ状、平膜状等が用いられる。膜素材およびポッティング部は、高濃度のオゾンに接触するために、耐オゾン性の素材を使うことが望ましい。膜素材については、フッ化ビニリデン重合体樹脂等の耐オゾン性の有機樹脂またはセラミック等の無機材料を用いることができる。
【0030】膜ろ過への通水方式は、全量ろ過方式とクロスフローろ過方式がある。オゾン注入された水がすべて膜ろ過される全量ろ過方式の方が望ましい。クロスフローろ過方式では、オゾン注入された水の一部が循環槽に返送されることになる。よって、循環水ラインを含めて考慮すれば膜ろ過までのオゾン接触時間が長くなり、オゾンの自己分解および有機物等とのオゾンの反応が進むため、必要なオゾン注入量が多くなる。
【0031】一方、クロスフローろ過方式の場合、循環槽の容量をなるべく小さくする必要がある。その場合に、循環槽のバッファ機能がなくなることになるが、循環槽または膜供給槽の前にバッファ能力を持つ原水受槽を設けて、その原水受槽より循環槽または膜供給槽の減少分を供給することができる。循環槽の容量は、配管の容量も含めて5分以内分のろ過水量とすることが望ましい。但し、循環水を循環水槽に戻すのではなく、膜供給ポンプの直前に返送することにより、実質的な停滞時間を減少することができる。
【0032】なお、オゾン注入後に排オゾンガスが発生するため、排オゾンガスは排オゾン設備に導入されて処理される。排オゾン設備の形式は、活性炭式、燃焼式、触媒式等のどの形式でも問題がない。また、オゾンガスの大部分は空気であり、膜ろ過装置の1次側においてオゾン化空気を除去する必要がある。クロスフローろ過方式の場合は、循環水とともに気液2相流となって循環槽に返送され、循環槽において気液分離される。クロスフローろ過方式の場合でも膜供給ポンプ直前の配管に返送する場合、または全量ろ過方式の場合は、膜モジュールの上部に気液分離装置を設け、除かれたガスは排オゾン装置に導入される。
【0033】また、膜ろ過装置は、定期的に物理洗浄を行ってろ過性能を維持する。物理洗浄の方式としては、主に、逆圧水洗浄とエアバブリングがあるが、特に逆圧水洗浄の場合は短時間の間、膜ろ過供給ポンプを停止することになる。オゾン発生器は間欠運転することが難しく、その期間は発生したオゾンガスを無駄にすることになる。本発明の図1の装置の場合は、後述するように膜ろ過の後段にオゾン溶解槽兼接触槽を設けているため、その期間は前段のオゾン注入設備へのオゾンガスを止め、オゾン溶解槽兼接触槽のみにオゾンガスを導入することで対応可能である。
【0034】(4)本発明のオゾンの注入制御について説明する。本発明では、膜ろ過水の残留オゾン濃度をオゾン検出器で計測して、オゾン発生器を操作してオゾン注入量を制御する方法である。オゾン発生器で発生したオゾンは、膜ろ過装置の前段の供給配管とオゾン溶解槽兼接触槽に供給される。オゾン検出器で計測された残留オゾン濃度に応じてバルブの開度を調整することによって、調整することができる。または、オゾン濃度の注入制御は、膜供給水のオゾン濃度を制御目的値にすることも考えられるが、この場合、膜ろ過における短時間でも膜の表面の目詰まり物質とオゾンが反応してオゾンが消費される場合があるため、膜ろ過水の残留オゾン濃度を制御目的値とすることが望ましい。
【0035】なお、膜ろ過装置の前段の供給配管に供給されるオゾンの注入率は、膜ろ過水の残留オゾン濃度によりフィードバックされて決定される。なお、原水のオゾン要求量に変動がある場合は、膜ろ過水の残留オゾン濃度を溶存オゾン濃度検出器で測定して、オゾン注入率のフィードバック制御を行うこともできる。むろん、オゾン検出器は、演算手段等を備えるCPU(中央処理装置)を用いたものであってもよい。
【0036】(5)本発明のオゾン溶解槽兼接触槽について説明する。本発明の水処理装置は、膜ろ過装置の後段に、オゾン溶解槽を兼ねるオゾン接触槽が設けられている。このような膜ろ過装置の後段にオゾン溶解槽兼接触槽が設けることにより、膜ろ過水の残留オゾン濃度によって、オゾン溶解槽兼接触槽へのオゾン注入率を調整することができ、有機物質とのオゾン処理を十分行うことが可能である。この膜ろ過装置6の後段に設けたオゾン溶解槽兼接触槽の目的は、■有機物とのオゾン反応に必要な接触時間を確保すること、■オゾンを再注入して、オゾン反応に必要なオゾンを補充することにある。そして、■膜の物理洗浄の時にオゾン注入ラインを後段のオゾン溶解槽兼接触槽のみに切り替えることにより、オゾン発生装置の間欠運転または発生オゾンの無駄を防止する。
【0037】オゾン溶解槽兼接触槽の装置形式は、Uチューブ式、ディフューザ式、インジェクタ式、下降注入式等のどの形式も可能である。しかし、オゾンを注入した膜ろ過水に対して、オゾンを溶解させており、高濃度のオゾンを溶解させることは必要はない。装置形式は、接触時間を十分に確保することができるディフューザ式が好ましい。オゾン溶解槽兼接触槽における接触時間は、有機物との十分な反応時間を確保するために5分以上必要である。なお、オゾン溶解槽兼接触槽においても排オゾンガスが発生するため、排オゾンガスは排オゾン設備に導入されて処理される。排オゾン設備の形式は、活性炭式、燃焼式、触媒式等どの形式でも問題がない。
【0038】(6)本発明の活性炭処理装置について説明する。本発明の活性炭処理装置は、オゾンと反応して生物易分解性になった有機物質を吸着除去すると共に、オゾン反応で生成した副生成物を除くためのものであり、図6の従来例で使用されるものと同様のものである。
【0039】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。この実施例では、従来例を比較例とした比較実験と、実施例の試験結果に基づいて説明する。なお、この実施例によって、本発明に限定を加えるものではない。
【0040】(実施例1)実施例1は、図1の処理フローによる水処理装置である。実施例1に対する比較例1は、図6の処理フローによる水処理装置である。実施例1と比較例1の実験装置および実験条件は、表1に示す通りである。この比較実験におけるオゾン注入率の結果は、表2に示した。表2に示したように、比較例1のオゾン注入率が5mg/Lであったのに対して、実施例1の場合は、前段オゾン注入率と後段オゾン注入率とを合わせた総オゾン注入率が2.5mg/Lであり、実施例1では、オゾン消費量を従来例より低減することができた。
【0041】表3には、この比較実験による被処理水(原水)とそれぞれの処理水質を示している。表3から明らかなように、実施例の場合の活性炭処理水の臭素酸イオン濃度は、4μg/mLであり、比較例1の場合は、17μg/mLであった。実施例は、従来例よりもより良好な水質を得ることができた。その他の水質項目については、実施例および比較例とも差はなかった。
【0042】(実施例2)実施例2は、図1の処理フローによる水処理装置を使用したものである。実施例2の実験装置および実験条件は、滞留時間を除いて、表1と同じである。オゾン注入後膜ろ過までの滞留時間と、膜ろ過後活性炭塔までの滞留時間の条件は、表4に示す通りである。実施例2では、膜ろ過水のオゾン濃度が、0.2〜0.4mg/Lとなるようにオゾンを注入して、膜ろ過処理を行った。また、オゾン溶解槽兼接触槽11へのオゾンを注入は、活性炭処理水の紫外線吸光度(波長260nm)がほぼ同等の値となるように、膜ろ過後段におけるオゾン注入率を決定した。この実験結果は、表5に示した。表5から明らかなように、オゾン注入後膜ろ過までの滞留時間が5分を越えると必要なオゾン注入量は大きくなった。
【0043】(実施例3)実施例3は、図1の処理フローによる水処理装置を使用したものである。実施例3は、オゾン注入後膜ろ過までの滞留時間を1分とし、供給配管15におけるオゾン注入率は、1ppm、オゾン溶解槽兼接触槽11におけるオゾン注入率は、2ppmとした。その他の実験装置および実験条件は、表1と同じである。この実験では、膜ろ過装置6の後段のオゾン溶解槽兼接触槽11における滞留時間の変化による影響について調査した。図4に示すように、オゾン溶解槽兼接触槽11における滞留時間を変化させて、膜ろ過後のオゾン溶解槽兼接触槽11におけるオゾン処理水の紫外線吸光度(波長260nm、5cmセル使用)の変化を示している。図4から明らかなように、オゾン注入後膜ろ過までの滞留時間が5分の場合でも、オゾン溶解槽兼接触槽11における滞留時間は5分以上が必要であった。
【0044】
【表1】


【0045】
【表2】


【0046】
【表3】


【0047】
【表4】


【0048】
【表5】


【0049】
【発明の効果】上記のように、本発明の水処理装置及び処理方法によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)膜ろ過水中の残留オゾン濃度を監視して、膜ろ過装置の前段の供給配管に供給されるオゾンによって、必要最少量のオゾンを供給して、膜の目詰まりの抑制と、オゾンの副生成物の生成を抑制とが可能であり、オゾン注入率を小さくすることができので、水処理に要するオゾン消費を抑制することができる。
(2)オゾンの注入量を抑制することができるので、オゾンによる副生成物の発生を低減することができる利点があり、活性炭の寿命低下を抑制することができる利点がある。
(3)膜ろ過水中の残存オゾン濃度を計測して、オゾン注入量を調整することができるので、必要以上に多量のオゾンを供給することなく、最適な量のオゾンを注入することができるので、水処理装置のオゾン酸化による影響を低減することができる利点がある。
(4)膜ろ過装置の洗浄工程では、オゾン発生器からのオゾンをオゾン溶解槽兼接触槽に供給することによって、間欠運転の必要性がなく、発生オゾンの無駄を解消することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の処理フローを示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態の処理フローを示す図である。
【図3】本発明の他の実施形態の処理フローを示す図である。
【図4】実施例2における紫外線吸光度のオゾン溶解槽兼接触槽における経時変化を示したものである。
【図5】従来例の処理フローを示す図である。
【図6】従来例の処理フローを示す図である。
【符号の説明】
2 オゾン発生器
3 循環槽兼膜供給水槽
4 凝集剤注入ポンプ
5 膜供給ポンプ
6 膜ろ過装置
7 循環ライン
8 活性炭処理装置(活性炭塔)
11 オゾン溶解槽兼接触槽
12 オゾン検出器
13 排オゾン処理設備
14 脱泡槽または気液分離槽
15〜17 供給配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 オゾン酸化を利用した水処理方法において、被処理水を供給配管から膜ろ過装置に供給して膜ろ過する際に、前記供給配管に供給されるオゾン注入量を、前記膜ろ過水中の残留オゾン濃度が所定範囲内となるように調整し、前記膜ろ過装置の後段のオゾン溶解槽兼接触槽に膜ろ過水を供給するとともに、前記オゾン溶解槽兼接触槽にオゾンを再注入して処理することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】 前記残留オゾン濃度が、0.05〜1.0mg/Lの範囲内となるように、前記オゾン注入量を調整することを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】 オゾンが注入される前記供給配管が、前記膜ろ過装置に被処理水を供給するための膜供給ポンプの直前または直後の供給配管であることを特徴とする請求項1または2に記載の水処理方法。
【請求項4】 前記膜オゾン溶解槽兼接触槽における滞留時間が5分以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の水処理方法。
【請求項5】 前記膜ろ過装置の膜ろ過出口に設置したオゾン検知器によって、膜ろ過水の残量オゾン濃度を連続的に測定し、その測定値に基づいて、膜ろ過水の残留オゾン濃度が所定範囲内となるように、前記オゾン注入量をフィードバック制御することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の水処理方法。
【請求項6】 オゾンを被処理水に溶解して膜ろ過装置で膜ろ過し、そのろ過水をオゾン溶解槽兼接触槽に送って水処理する水処理装置であって、前記膜ろ過装置に被処理水を送り込む膜供給ポンプを備える供給配管と、前記供給配管内に流れる被処理水にオゾンを注入するオゾン注入設備と、前記膜ろ過装置の膜ろ過出口に設置した膜ろ過水中の残留オゾン濃度を計測するオゾン検出器と、前記オゾン検出器によって膜ろ過水中の残留オゾン濃度を測定し、その計測値に基づいて、前記オゾンの注入量を調整し、膜ろ過水中の残留オゾン濃度を所定範囲内とするように制御する制御手段とを具備することを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2000−107777(P2000−107777A)
【公開日】平成12年4月18日(2000.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−282705
【出願日】平成10年10月5日(1998.10.5)
【出願人】(000004123)日本鋼管株式会社 (1,044)
【出願人】(000000033)旭化成工業株式会社 (901)
【出願人】(591193602)磯村豊水機工株式会社 (4)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】