説明

水処理施設用可動式覆蓋

【課題】本発明は、覆蓋本体の不動方向のスペースが狭い場合であっても、ガイド手段を設けることができ、覆蓋本体の移動障害を防止できる水処理施設用可動式覆蓋を提供することを目的とした。
【解決手段】水処理施設用可動式覆蓋1は、開口部を覆って閉塞可能な覆蓋本体7、9と、覆蓋本体7、9を移動させることが可能な車輪部材4と、覆蓋本体7、9の移動方向を一定の方向にガイドするガイド部材6とを有する。ガイド部材6は、開口部の開口縁に沿って延伸した長尺状の立設部11と、その立設部11を挟む位置に配されて覆蓋本体7、9に固定された覆蓋規制部12とを有する。そして、覆蓋本体7、9は、覆蓋規制部12によって片持ち状態にガイドされて立設部11の長手方向に沿って移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪等の移動手段を備えた水処理施設用可動式覆蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理施設には施設の目的や用途に応じて覆蓋が設けられている。例えば、浄水施設における水槽等(ろ過池など)の覆蓋は、主に水槽内における藻類の発生防止や、鳥類の糞やゴミの飛来防止等を目的として設置されている。また、下水処理施設における水槽等(沈砂池など)の覆蓋は、主に防臭や水槽内への転落防止を目的として設置されている。
【0003】
この種の覆蓋は、水槽内の状態(濾過状態や沈殿状態)を確認する場合や、水槽内部の保守点検を行う場合、あるいは一般の見学者が水処理施設内を見学する場合などに開放する必要がある。特に、見学者が施設内を見学する場合には、対象となる水槽等が一時的に開放されるだけなので、覆蓋は容易に開閉できる構成が望ましい。そこで、覆蓋に可動用の車輪のような移動手段を設けて適宜可動させる技術(可動式覆蓋)が知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1の覆蓋は、覆蓋本体に車輪が配され、水槽の1対の開口側面に沿って配されたL型鋼を用いたレール部材に沿って覆蓋本体を移動させることが可能な構成とされている。具体的には、レール部材が垂直部と水平部を有し、垂直部の外側(レール部材に対して水槽側を内側とする)に覆蓋の車輪を配置して、その車輪が水平部の上を転がる構成とされている。
【0005】
一方、保守点検を行う場合には、対象となる水槽等に覆われた覆蓋を全て外すことが望ましいとされている。そのため、通常、水処理施設においては、比較的安価な固定式の覆蓋が多数採用されている。なお、固定式とは、覆蓋が移動できないように、ボルト等の固定手段を用いて構造物(床面等)に固定する方式である。
従って、最近の水処理施設においては、可動式の覆蓋と、固定式の覆蓋が混在して配されているのが一般的である。
【0006】
ところで、近年、浄水施設や下水処理施設などでは、設備の大型化に伴い、水槽や覆蓋自身も大型化する傾向にある。覆蓋が大型化すると、覆蓋の天面壁が自重や外力(例えば、積雪等)などにより撓み易くなる。そして、天面壁が撓むと覆蓋の全体形状が変形してしまう場合がある。その場合、可動式の覆蓋においては、側面壁に取り付けられた車輪の走行方向が変更され、覆蓋を移動させた際に正常に(レールに沿って)走行することができず、車輪がレール部材から脱輪してしまう懸念があった。そのため、特許文献1では、走行用ガイド(立設したレール)を設けて、覆蓋が変形しても走行用の車輪の走行方向がズレないように走行方向を規制している。なお、特許文献1では、走行用ガイドとして走行用の車輪とは別に、レール部材の垂直部の外側面に当接して縦の軸心周りに転がるガイド用の車輪が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−24716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、覆蓋の走行方向と異なる方向に隣接(以下、不動方向に隣接と言う)する覆蓋同士の間隔が狭い場合、ガイド用の車輪を物理的に取り付けることができない場合があった。
【0009】
具体的には、特許文献1は、ガイド用の車輪がレール部材の垂直部の外側面に対して転がるように配されるため、レール部材から外側に向かって少なくとも車輪の外径以上の間隔を必要とする。また、特許文献1では、走行用ガイド及びガイド用の車輪は、通常レール部材に当接しておらず、一定の間隔を設けて配されることが望ましいとされているため、ガイド用の車輪を設ける場合は、レール部材とガイド用車輪との間隔がさらに増すこととなる。
【0010】
従って、これらの条件を考慮すると、不動方向に隣接する覆蓋同士の間隔が狭い場合、ガイド用車輪のスペースを十分に確保することができず、当該車輪を取り付けることができないという不満があった。即ち、不動方向に隣接する覆蓋同士の間隔が狭い場合、覆蓋の移動がガイドされないため、覆蓋の天面壁の変形による移動障害を防止することができないという不具合があった。
【0011】
そこで、本発明では、従来技術の問題に鑑み、覆蓋本体の不動方向のスペースが狭い場合であっても、ガイド手段を設けることができ、覆蓋本体の移動障害を防止できる水処理施設用可動式覆蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、水槽又は水路の上部に形成された開口を覆って閉塞可能な覆蓋本体と、覆蓋本体を移動させることが可能な移動手段と、覆蓋本体の移動方向を一定の方向にガイドするガイド手段とを有した水処理施設用可動式覆蓋であって、ガイド手段は、前記開口近傍の床面から立設し開口縁に沿って延伸した長尺状の立設部と、前記立設部を挟む位置に配され覆蓋本体に固定された覆蓋規制部とを有するものであって、覆蓋本体は、覆蓋規制部によって片持ち状態にガイドされて立設部の長手方向に沿って移動することを特徴とする水処理施設用可動式覆蓋である。
なお、ここで言う「立設部を挟む位置」とは、覆蓋規制部が実際に立設部を挟持した位置と、覆蓋規制部が立設部に当接することなく単に立設部を間に介して対向するように配された位置の双方を意味している。
【0013】
本発明の水処理施設用可動式覆蓋は、覆蓋本体の移動方向をガイドするガイド手段が、開口近傍の床面から立設し開口縁に沿って延伸した長尺状の立設部と、その立設部を挟む位置に配された覆蓋規制部とを有するものであって、覆蓋本体が覆蓋規制部によって片持ち状態にガイドされて立設部の長手方向に沿って移動する構成とされている。即ち、本発明によれば、従来技術のように、ガイド手段を水槽等を間に介して対向する位置の双方に配する必要がない。換言すれば、本発明では、水槽等を間に介して対向する位置のうち、一方のみにガイド手段を設けても、ガイド機能を果たし得る。これにより、覆蓋本体の走行方向と交差する方向(覆蓋本体の不動方向)に十分な間隔が確保できない場合に、ガイド手段を配する位置を適宜変更することで、ガイド機能を備えた可動式覆蓋を提供することが可能となる。即ち、例えば、水槽等を間に介して対向する位置のうち、一方の不動方向の間隔が狭く、他方の不動方向の間隔が広い場合であれば、前記他方側にガイド手段を配することができる。
また、本発明では、覆蓋規制部が立設部を挟む位置に配されてガイド機能を果たす構成であるため、例えば、覆蓋規制部として十分強度を備えた板状部材を採用すれば、覆蓋規制部に要する設置スペースは小さくて済む。即ち、本発明によれば、覆蓋本体の不動方向の双方に十分な間隔が確保できない場合であっても、覆蓋規制部に板状部材を採用すれば、ガイド手段を設けた覆蓋を提供することができる。
従って、本発明の水処理施設用可動式覆蓋によれば、覆蓋本体の不動方向のスペースが狭い場合であっても、ガイド手段を設けることができ、覆蓋本体の移動障害を防止できる。
【0014】
本発明の水処理施設用可動式覆蓋は、前記覆蓋規制部は、1対の長尺部材からなり、当該1対の長尺部材の間に立設部を配置してガイド手段が形成されるものであって、覆蓋本体には1対以上の長尺部材が設けられていることが望ましい。(請求項2)
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記覆蓋規制部は、潤滑性の樹脂で成型されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理施設用可動式覆蓋である。
【0016】
かかる構成によれば、覆蓋規制部が潤滑性の樹脂で成型されているため、覆蓋本体の移動を殆ど阻害しない。即ち、覆蓋本体が移動する際に、覆蓋規制部によって走行方向がガイドされたとしても、移動手段による移動性が低下することがない。
【0017】
請求項4に記載の発明は、覆蓋本体の位置を立設部に対して固定可能な固定手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水処理施設用可動式覆蓋である。
【0018】
かかる構成によれば、覆蓋本体の位置を立設部に対して固定できるため、覆蓋本体が強風などにより煽られて、横転するなどの不具合を阻止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水処理施設用可動式覆蓋では、覆蓋本体が覆蓋規制部によって片持ち状態にガイドされて立設部の長手方向に沿って移動するため、覆蓋本体の不動方向のスペースが狭い場合であっても、ガイド手段を設けることができる。これにより、覆蓋本体の移動障害を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る可動式覆蓋を示す斜視図である。
【図2】小型覆蓋を移動して水槽の開口部を開放した状態を示す斜視図である。
【図3】図1の可動式覆蓋を別の角度から見た斜視図である。
【図4】図1に示す可動式覆蓋のA方向矢視図である。
【図5】ガイド部材の分解斜視図である。
【図6】図1に示す可動式覆蓋のB方向矢視図である。
【図7】固定用ピンを固定用長孔に挿通した状態を示す説明図である。
【図8】図7の可動式覆蓋を示すC方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、特に断りがない限り、上下左右の関係は図面を基準とする。
【0022】
本実施形態の可動式覆蓋(水処理施設用可動式覆蓋)1は、図1、2に示すように、水処理施設(下水処理場や浄水場等)における水槽の開口部31の上側に配されるもので、大きさの異なる複数の可動式の覆蓋によって構成されている。本実施形態の可動式覆蓋1は、小型覆蓋2と、その小型覆蓋2より大きい大型覆蓋3を有している。そして、小型覆蓋2及び大型覆蓋3は、それぞれ複数の車輪部材(移動手段)4及びガイド部材6を備えており、それぞれ独立して一定の方向に移動が可能である。
【0023】
この可動式覆蓋1は、図1に示すように、小型覆蓋2及び大型覆蓋3を車輪部材4の走行方向に隣り合う位置に配置し、水処理施設における水槽の開口部31を覆って蓋することが可能である。即ち、可動式覆蓋1により、水槽内に飛来物や、鳥のような動物が水槽内に落下することが防止でき、さらに下水処理場においては水槽から発生する異臭が周囲に拡散すること防止できる。
【0024】
また、本実施形態の可動用覆蓋1は、図2のように大型覆蓋3の下部に小型覆蓋2を移動させて、水槽を開放した状態にすることができる。これにより、水処理施設における水槽の内部の状態を確認することができる。
【0025】
大型覆蓋3は、図1に示すように、大型覆蓋本体7と、取付用部材8と、車輪部材4と、ガイド部材(ガイド手段)6によって構成されている。
大型覆蓋本体7は、繊維強化樹脂(例えば、商品名「エスロンネオランバー FFU」積水化学工業株式会社製)でその一部又は全体を形成されている。そのため、金属製の覆蓋等に比べて耐腐食性が高いという利点がある。またさらに、軽量化と同時にたわみ等に対する剛性を高くすることができるという利点もある。
【0026】
また、大型覆蓋本体7は、図1、3に示すように、下側が開放された略箱状の蓋体であって、天面壁21、2つの側面壁22、前面壁23、後面壁25によって形成されている。具体的には、天面壁21に対して、2つの側面壁22、前面壁23及び後面壁25がそれぞれ下方に向けて立設されている。そして、2つの側面壁22同士は対向する配置であり、前面壁23と後面壁25も対向する配置とされている。従って、大型覆蓋本体7は、天面壁22に対向する側が開放された蓋体である。
【0027】
また、2つの側面壁22及び後面壁25は、天面壁21からの立設長さがほぼ等しく、図1、2に示すように、前面壁23のみが他の壁面より天面壁21からの立設長さが短くされている。換言すれば、前面壁23の下方は、開口状の開放部26が設けられている。即ち、図4に示すように、大型覆蓋本体7においては、下面側の開放部に加えて、前面壁23側の開放部26が、天面壁21と、2つの側面壁22と、前面壁23と、後面壁25とによって囲まれた大型覆蓋空間32に連通している。
【0028】
取付用部材8は、図4に示すように、2つの側面壁22の下端側にそれぞれ取り付けられており、後述する車輪部材4やガイド部材6の一部が接続される部材である。具体的には、取付用部材8は、断面形状がL字型の長尺状の部材(本実施形態ではL型鋼を使用)を2本組み合わせたものであり、組み合わせた断面形状がT字型となるように側面壁22に接続されている。即ち、取付用部材8は、側面壁22と接続された取付部27と、側面壁22から外側に向かって張り出した張出部28を有し、取付部27の鉛直方向中央に張出部28が位置する構成とされている。
【0029】
車輪部材4は、図1〜3に示すように、1つの大型覆蓋本体7に対して4つ設けられており、車輪15と、車輪15の回転軸を備えた車輪保持部材16とによって構成されている。即ち、車輪15は、車輪保持部材16に対して相対的に回転可能に取り付けられており、車輪保持部材16を介して、取付用部材8の張出部28に固定される。
【0030】
ガイド部材6は、車輪部材4による大型覆蓋本体7の走行を一定の方向にガイドするものであって、図1〜3に示すように、床面から上方に立設し水槽の開口部31の縁端に沿って延伸した長尺状の立設部11と、図4に示すように、この立設部11を間に介して対向する位置に配される1対の覆蓋規制部12とにより構成されている。
【0031】
立設部11は、前記した取付用部材8に採用されたL型鋼とほぼ同様の部材が床面に固定されたもので、本実施形態では、床面に固定したL型鋼における床面から上方に立設した部分をガイド部材6の一部として採用している。また、立設部11には、図4、5に示すように、部材の厚み方向に貫通し且つ立設部11の長手方向に延びた固定用長孔17が3箇所設けられている。即ち、固定用長孔17は、立設部11の長手方向両端部近傍と、中間部に1つずつ配されている。なお、本実施形態では、立設部11の一部を形成するL型鋼のうちの床面に接続された平面部分は、車輪部材4の車輪15が走行するレール部13とされている。
【0032】
覆蓋規制部12は、潤滑性を備え且つ十分な強度を備えた樹脂(本実施形態では、エンジニアリングプラスチックが採用されており、具体的にはMCナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール等である)で成型された長尺状の板状部材である。具体的には、本実施形態における覆蓋規制部12の長手方向長さは、立設部11の長手方向長さの10分の1程度の長さで、立設部11の端部から車輪部材4の位置の手前までの長さである。また、覆蓋規制部12は、部材厚が1.0cm程度である。そして、覆蓋規制部12には、長手方向中央の位置に、立設部11に設けられた固定用長孔17と同様の大きさの固定用長孔19が設けられている。なお、固定用長孔19は、覆蓋規制部12の部材厚方向に貫通した孔である。
【0033】
そして、覆蓋規制部材12は、取付用部材8に対して接着剤やネジ、ボルトナットなどの固定手段により固定されている。具体的には、図4、5に示すように、1対の覆蓋規制部12のうちの一方は、直接取付用部材8の取付部27に平面側を当接させて固定されており、他方は、中間部材18を介して、前記一方の覆蓋規制部12から所定間隔離反した状態で、取付用部材8の張出部28の下面側に固定されている。
ここで、中間部材18は、取付用部材8の張出部28の下面に固定される水平部33と、その水平部33に対してほぼ直交し覆蓋規制部12が固定される垂直部34とを有したL型鋼材で、長手方向長さが覆蓋規制部12の長手方向長さとほぼ同じとされている。そして、垂直部34には、覆蓋規制部12に設けられた固定用長孔19と同様の大きさの固定用長孔20が設けられている。なお、固定用長孔20は、垂直部34の部材厚方向に貫通した孔である。
【0034】
従って、図4に示すように、ガイド部材6を取付用部材8に固定した状態においては、1対の覆蓋規制部12は所定の間隔を空けて向き合っており、その間隔内に立設部11を配してガイド部材6を形成している。また、1対の覆蓋規制部12は、2つの固定用長孔19が連通するように配されている。なお、1対の覆蓋規制部12の間隔は、立設部11の部材厚に10〜15mm程度加算した大きさとされており、好ましくは10mm程度を加算した大きさである。
【0035】
ここで、大型覆蓋3の組み立て構造について図1〜6を参照しながら説明する。図4に示されるように大型覆蓋本体7の2つの側面壁22には、それぞれの下端側に図示しないボルト等の固定手段によって取付用部材8が取り付けられている。具体的には、取付用部材8の取付部27が側面壁22に取り付けられており、張出部28は、側面壁22に対してほぼ直交方向へ突出している。
【0036】
そして、車輪部材4は、取付用部材8の張出部28の下面であって、取付用部材8には長手方向の両端近傍にそれぞれ2つの車輪部材4が取り付けられている。即ち、大型覆蓋3には、2つの側面壁22に取付用部材8が取り付けられているため、合計4つの車輪部材4が取り付けられている。
【0037】
また、本実施形態では、図4に示すように、大型覆蓋3が一定の方向に移動可能なように、大型覆蓋3の2つの側面壁22に配された取付用部材8のうち、一方の取付用部材8側にガイド部材6が配されている。換言すれば、他方の取付用部材8側には、ガイド部材6が配されていないため、大型覆蓋本体7は片持ち状態にガイドされる。そして、図6に示すように、ガイド部材6の一部を形成する1対の覆蓋規制部12は、一方の取付用部材8の長手方向両端側にそれぞれ配されている。即ち、本実施形態では、一方の取付用部材8の長手方向に2箇所覆蓋規制部12が配されている。
【0038】
ここで、各覆蓋規制部12の取り付け状態について注目すると、1対の覆蓋規制部12が、互いに平面を対向させるように、所定の間隔を空けて配置され、一方の覆蓋規制部12が取付用部材8の張出部28に取り付けられ、他方の覆蓋規制部12が取付用部材8の取付部27に取り付けられている。
なお、前記したように、張出部28に取り付けられた覆蓋規制部12は、中間部材18を介して取り付けられており、覆蓋規制部12と中間部材18は、固定用長孔19、20が連通するように配置されている。
【0039】
そして、1対の覆蓋規制部12における覆蓋規制部12同士の間隔には、ガイド部材6の残部を形成する立設部11が配置されている。即ち、覆蓋規制部12がこの立設部11に沿って移動することでガイド機能が果たされる。また、立設部11における固定用長孔17は、覆蓋規制部12と中間部材18の固定用長孔19、20と連通し得る位置に配されている。
なお、前記したように、立設部11と一体化されたレール部13が水処理施設の床面に固定されており、一方の取付用部材8に取り付けられた2つの車輪部材4の車輪15はそのレール部13の上面で走行する配置である。また、他方の取付用部材8に取り付けられた残り2つの車輪部材4の車輪15は、水処理施設の床面で走行する配置である。
以上が、大型覆蓋3の説明である。
【0040】
次に小型覆蓋2について説明する。なお、以下の説明においては、大型覆蓋3と共通する部材については説明を省略し、同じ番号を使用する。
小型覆蓋2は、図1に示されるように、小型覆蓋本体9に取付用部材8を介して車輪部材4及びガイド部材6を取り付けたものである。具体的には、大型覆蓋3の大型覆蓋本体7とは大きさ及び形状の異なる小型覆蓋本体9に対して、大型覆蓋3と同様の取付用部材8を取り付けたものである。
【0041】
小型覆蓋2の小型覆蓋本体9も大型覆蓋3の大型覆蓋本体7と同様に、下側が開放された略箱状の蓋体であって、図1〜3に示すように、天面壁38、2つの側壁部39、前壁部40、後壁部41により形成されるものである。
ここで、小型覆蓋2の小型覆蓋本体9と大型覆蓋3の大型覆蓋本体7を比較すると、小型覆蓋本体9の天面壁38は、大型覆蓋本体7の天面壁21に比べて、全体的に小型である。具体的には、図4、6に示すように、小型覆蓋本体9は、走行方向の長さは大型覆蓋本体7の走行方向長さとほぼ同じであり、高さ及び幅が大型覆蓋本体7の高さ及び幅より小さい。より具体的に説明すると、小型覆蓋2全体の幅Wと高さHは、大型覆蓋3の開放部26の幅と高さより小さくされている。
【0042】
また、小型覆蓋本体9の前面壁40は、大型覆蓋本体7の前面壁22のように開放部26に当たる部分がない。即ち、小型覆蓋本体9の前面壁40は、2つの側面壁39と後面壁41の高さと等しくされている。換言すれば、小型覆蓋本体9においては、下側に形成された開放部のみが、天面壁38と、2つの側壁部39と、前壁部40と、後壁部41とによって囲まれた図示しない小型覆蓋空間と連通している。
【0043】
そして、図4に示すように、小型覆蓋本体9の2つの側壁部39にもそれぞれの下端側に図示しないボルト等の固定手段によって取付用部材8が取り付けられている。また、図1〜4に示すように、小型覆蓋本体9に取り付けた取付用部材8の高さ方向の位置と、大型覆蓋本体7に取り付けた取付用部材8の高さ方向の位置は同じにされている。したがって、大型覆蓋3と小型覆蓋2の車輪部材4及びガイド部材6の一部を形成する1対の覆蓋規制部12の高さ方向の位置も同じにされている。さらに、ガイド部材6及び中間部材18に設けられた固定用長孔17、19、20の高さ方向の位置も同じにされている。
【0044】
また、ガイド部材6の残部を形成する立設部11は、図1〜4に示すように、大型覆蓋3の立設部11よりも内側(水槽の開口部31側)且つ平行に設けられている。即ち、レール部13が水処理施設の床面に固定され、小型覆蓋2の1対の覆蓋規制部12が立設部11を挟む位置に配されている。
なお、小型覆蓋2における各部材の位置関係は、前記した大型覆蓋3とほぼ同じであるため説明を省略する。
【0045】
次に本実施形態の可動式覆蓋1の動作について説明する。
本実施形態の可動式覆蓋1は、車輪部材4の車輪15を走行させることで、水処理施設等の水槽に対して開閉できるものである。即ち、施設の管理者などが、可動式覆蓋1の車輪15の走行方向に外力等を加えることで、図2に示すように、当該可動式覆蓋1を水槽に対して相対的に移動させることができる。
また、本実施形態では、可動式覆蓋1を移動させる際に、ガイド部材6により、一定の方向に走行させることが可能である。即ち、ガイド部材6は、水処理施設の床面に固定された立設部11を挟むように覆蓋規制部12を配して形成されているため、可動式覆蓋1を移動させる際には、車輪15の走行が覆蓋規制部12が立設部11に対して相対的に移動できる範囲に制限される。
なお、本実施形態では、水槽を間に介して対向する位置のうち、一方のみにガイド部材6を配してガイド機能を形成しているが、立設部11を挟むように配された1対の覆蓋規制部12により、従来と同様、十分なガイド機能を果たすことができる。
【0046】
従って、大型覆蓋3又は小型覆蓋2が、走行時に走行方向と交差する成分を含んだ方向に移動しても、覆蓋規制部12が立設部11に当接して、走行方向が一定の方向に規制される。そして、覆蓋規制部12は、潤滑性が高い部材が採用されているため、覆蓋規制部12が立設部11に接触しても、大型覆蓋3又は小型覆蓋2の走行を妨げない。これにより、大型覆蓋3と小型覆蓋2は、一定の方向へ円滑に移動させることができる。
【0047】
ここで、一般的に、水処理施設などにおける可動式覆蓋は、水槽に蓋をした状態で固定されることはなく、突発的な強風などが発生すると覆蓋が横転する場合がある。そこで、本実施形態においては、ガイド部材6に固定用長孔17、19、20を設け、固定用ピン29(図7、8)が挿通できる構成とされている。
即ち、ガイド部材6において、固定用ピン29を用いることで、大型覆蓋本体7や小型覆蓋本体9を、水処理施設の構造物に対して固定させることができる。具体的には、大型覆蓋本体7や小型覆蓋本体9に固定された覆蓋規制部12と、床面に固定された立設部11とを固定用ピン29を介して接続することで、立設部11に対して、大型覆蓋本体7や小型覆蓋本体9を固定することができる。これにより、本実施形態によれば、突発的な強風により可動式覆蓋1が煽られた場合であっても、可動式覆蓋1が風により吹き飛ばされることが防止される。
【0048】
従って、本実施形態によれば、覆蓋本体7,9が変形して車輪15の走行方向が変更された場合であっても、ガイド部材6により走行状態が補正されるため走行障害が発生することが防止される。
また、水処理施設の床面に固定された立設部11と、その立設部11を挟む位置に配された1対の覆蓋規制部12とによってガイド部材6が形成されているため、水槽を間に介して対向する位置の一方のみにそのガイド部材6を配してガイド機能を果たすことができる。即ち、水槽を間に介して対向する位置の他方においては、ガイド部材6を配する必要がないため、車輪15の走行方向に交差する方向のスペースが無い場合であっても、ガイド機能を備えた可動式覆蓋1を設置することができる。
なお、本実施形態では、覆蓋規制部12の部材厚が薄くされているため、ガイド部材6に要するスペースを殆ど必要としない。具体的には、ガイド部材6は、図4の左右方向に6cm程度あれば良いため、図4の左右にスペースが無い場合であっても、ガイド機能を備えた可動式覆蓋1を設置できる。
【0049】
上記実施形態では、1対の覆蓋規制部12を1つの取付用部材8に2箇所設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、取付用部材8の両端側の位置に代えて、2つの車輪部材4の間に上記実施形態で示した覆蓋規制部12より長いものを1対だけ設けた構成や、上記実施形態で示した覆蓋規制部12と同等あるいは短いものを複数対設けた構成であっても構わない。また、取付用部材8の両端側の位置に設けたものに加えて、2つの車輪部材4の間に覆蓋規制部12を設けても構わない。
【0050】
上記実施形態では、固定用ピン29を挿通する孔を長孔としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、円形の孔であっても構わない。また、複数の長孔ではなく、さらに長い長孔を1つだけ設けた構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0051】
1 可動式覆蓋
6 ガイド部材(ガイド手段)
7 大型覆蓋本体(覆蓋本体)
9 小型覆蓋本体(覆蓋本体)
11 立設部
12 覆蓋規制部
17、19、20 固定用長孔(固定手段)
29 固定用ピン(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽又は水路の上部に形成された開口を覆って閉塞可能な覆蓋本体と、覆蓋本体を移動させることが可能な移動手段と、覆蓋本体の移動方向を一定の方向にガイドするガイド手段とを有した水処理施設用可動式覆蓋であって、
ガイド手段は、前記開口近傍の床面から立設し開口縁に沿って延伸した長尺状の立設部と、前記立設部を挟む位置に配され覆蓋本体に固定された覆蓋規制部とを有するものであって、
覆蓋本体は、覆蓋規制部によって片持ち状態にガイドされて立設部の長手方向に沿って移動することを特徴とする水処理施設用可動式覆蓋。
【請求項2】
前記覆蓋規制部は、1対の長尺部材からなり、当該1対の長尺部材の間に立設部を配置してガイド手段が形成されるものであって、覆蓋本体には1対以上の長尺部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水処理施設用可動式覆蓋。
【請求項3】
前記覆蓋規制部は、潤滑性の樹脂で成型されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理施設用可動式覆蓋。
【請求項4】
覆蓋規制部の位置を立設部に対して固定可能な固定手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水処理施設用可動式覆蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−67477(P2012−67477A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211722(P2010−211722)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】