説明

水処理装置および水処理方法

【課題】被処理水中の有機化合物の分解効率を向上させるとともに、紫外線照射装置の後段に酸化剤除去装置を配置することを省略可能な水処理装置および水処理方法を提供する。
【解決手段】水処理装置が、被処理水に亜酸化窒素を添加する亜酸化窒素添加手段と、前記亜酸化窒素を添加された被処理水に紫外線を照射し、水中の有機化合物を分解する紫外線照射装置と、前記紫外線照射装置によって処理された被処理水を導入し、水中のイオンを除去するイオン交換樹脂装置と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の有機化合物を除去する水処理装置および水処理方法に係り、特に、超純水製造に好適な水処理装置および水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、イオン交換処理や逆浸透膜処理の施された一次純水に、紫外線照射装置により紫外線を照射して有機化合物を分解し、混床式のイオン交換樹脂装置や限外濾過膜装置で仕上げ処理する超純水製造装置が知られている。
【0003】
この有機化合物の分解にあたっては、有機化合物を効率よく分解するため、被処理水に過酸化水素を溶解させた状態で紫外線を照射する超純水製造装置が知られている。また、有機化合物を効率よく分解するため、被処理水にオゾンを添加して紫外線照射を行う超純水製造装置も提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−241598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紫外線照射装置出口での被処理水中に残存したオゾンや過酸化水素は、イオン交換樹脂装置を構成するイオン交換樹脂や限外濾過膜を構成する膜素材を酸化劣化させる。そのため、劣化成分が被処理水中に混入して水質が低下する、イオン交換樹脂の交換が頻繁になる等の問題を有していた。
このため、紫外線照射装置により紫外線を照射して被処理水中の有機化合物を分解するに際して、オゾンや過酸化水素を被処理水中に添加して有機化合物の分解効率を向上させる場合には、紫外線照射装置の後段、かつイオン交換樹脂装置の前段に、オゾンや過酸化水素を除去する酸化剤除去装置を設ける必要があった。酸化剤除去装置としては、例えば紫外線を照射する手段を挙げることができるが、紫外線を照射する手段はかさばるため、空きスペースの確保の関係から設置することが困難な場合も多かった。また、酸化剤除去装置として、活性炭を挙げることもできるが、過酸化水素の分解が不十分であったり、使用寿命が短い、微粉炭を溶出させる等の問題があった。そのため、被処理水中の有機化合物の分解効率を向上させるとともに、酸化剤除去装置の配置を省略することが可能な水処理の技術が求められていた。
【0005】
上記に鑑み、本発明は、被処理水中の有機化合物の分解効率を向上させるとともに、紫外線照射装置の後段に酸化剤除去装置を配置することを省略可能な水処理装置および水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る水処理装置は、被処理水に亜酸化窒素を添加する亜酸化窒素添加手段と、前記亜酸化窒素を添加された被処理水に紫外線を照射し、水中の有機化合物を分解する紫外線照射装置と、前記紫外線照射装置によって処理された被処理水を導入し、水中のイオンを除去するイオン交換樹脂装置と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被処理水中の有機化合物の分解効率を向上させるとともに、紫外線照射装置の後段に酸化剤除去装置を配置することを省略可能な水処理装置および水処理方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を、具体的に説明する。
【0009】
本発明は、水処理装置および水処理方法に関するものであるが、超純水製造装置および超純水製造方法を例にして説明する。
図1は、本発明の超純水製造装置1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、超純水製造装置1は、前処理装置2と、2床3塔型イオン交換装置3と、逆浸透装置4と、脱気装置5と、亜酸化窒素添加手段6と、紫外線照射装置7と、イオン交換樹脂装置8と、限外濾過膜装置9とを備えている。超純水製造装置1は、必要に応じて、紫外線照射装置7の後段に(例えば紫外線照射装置7とイオン交換樹脂装置8との間に)亜酸化窒素除去手段(図示せず)を備えることもできる。
【0010】
原水は、前処理装置2に導入され、原水中の懸濁物質等が分離、除去される。次いで、前処理装置2で処理された被処理水は、カチオン交換樹脂塔、脱炭酸塔およびアニオン交換樹脂塔からなる2床3塔型イオン交換装置3によりイオン成分が除去された後、逆浸透装置4に導入されて微粒子およびコロイド状物質等の除去が行われる。次に、被処理水は、例えば窒素ガス添加方式の真空脱気装置のような脱気装置5に導入されて溶存酸素等の溶存気体が除去される。
【0011】
続いて、亜酸化窒素添加手段6によって被処理水に亜酸化窒素が添加された後、紫外線照射装置7に導入されて被処理水中の有機化合物が分解され、例えば混床式イオン交換装置のようなイオン交換樹脂装置8により被処理水中のイオン成分が除去される。最後に、被処理水は限外濾過膜装置9に導入され、極微量の微粒子等が除去される。
【0012】
なお、ここでは前処理装置2が前処理システム、2床3塔型イオン交換装置3から脱気装置5までが一次純水システム、亜酸化窒素添加手段6から限外濾過膜装置9までが二次純水システムと区分される。
【0013】
超純水製造装置1が二次純水システムにおいて備える、亜酸化窒素添加手段6と、紫外線照射装置7と、イオン交換樹脂装置8と、限外濾過膜装置9と、必要に応じて配置される亜酸化窒素除去手段について、以下に詳細に説明する。
【0014】
亜酸化窒素添加手段6は、紫外線照射装置7の前段の被処理水又は紫外線照射装置7内の被処理水に、亜酸化窒素(NO)ガスを添加するものである。亜酸化窒素添加手段6としては、例えば、亜酸化窒素ガスが充填されたガスボンベからの供給によるものを挙げることができる。
亜酸化窒素添加手段6により被処理水中に亜酸化窒素が添加されると、紫外線照射装置7での紫外線の照射によって、被処理水中の有機化合物の分解効率を向上させることができる。
また、有機化合物の分解効率の向上のために従来用いられていたオゾンや過酸化水素に代えて亜酸化窒素を用いれば、紫外線照射装置7の後段、かつイオン交換樹脂装置8の前段に従来配置されていた酸化剤除去装置を省略することができる。
【0015】
また、有機化合物の分解効率の向上のために従来用いられていたオゾンや過酸化水素に代えて亜酸化窒素を用いれば、紫外線照射装置7出口や、イオン交換樹脂装置8出口及び限外濾過膜装置9出口における被処理水の溶存酸素濃度の増加を低減できる。
また、亜酸化窒素を添加して紫外線照射装置7により紫外線を照射することによって、従来の通常の超純水製造装置では除去することが困難であった原水(被処理水)中の尿素等の有機態窒素を効率的に分解することができる。
なお、亜酸化窒素による有機化合物の分解効率の向上や、酸化剤除去装置の配置の省略、紫外線照射装置7出口等における被処理水の溶存酸素濃度の増加の低減、被処理水中の尿素等の有機態窒素の除去については、詳細を後述する。
【0016】
紫外線照射装置7は、被処理水に紫外線を照射して被処理水中の有機化合物を分解するもので、亜酸化窒素を解離(後述する)可能な240nm以下の波長を含む紫外線を照射する光源を備えている。紫外線照射装置7の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、エキシマランプ等を挙げることができる。
低圧水銀ランプ等の光源は、被処理水中に配置してもよいし、被処理水の外部に空間を介して配置してもよい。光源を被処理水の外部に配置する場合には、光源と被処理水との間の空間に不活性ガスを充填することが好ましい。光源から発せられた紫外線が、被処理水に照射される前に大気中の酸素分子等によって吸収されて照射量が減じたり、オゾンが発生することを防止できるためである。
【0017】
亜酸化窒素は不活性ガスのため、被処理水中に残留した場合でも酸化性物質として機能せず、また、被処理水のpH変化の影響も無視できる。そのため、必ずしも超純水製造装置1に亜酸化窒素除去手段を設ける必要はない。しかし、必要に応じて、紫外線照射装置7の後段に(例えば紫外線照射装置7とイオン交換樹脂装置8との間に)亜酸化窒素除去手段(図示せず)を備えてもよい。
亜酸化窒素除去手段は、紫外線照射装置7の後段の被処理水中に残留した亜酸化窒素を分解するものである。亜酸化窒素除去手段としては、例えば、亜酸化窒素を残留する被処理水に240nm以下の波長を含む紫外線を照射する装置や、減圧脱気装置等を挙げることができる。
【0018】
イオン交換樹脂装置8は、紫外線照射装置7において分解生成された有機酸等を含む被処理水中のイオン成分を除去する装置であり、例えば、アニオン交換樹脂を充填したアニオン交換樹脂装置、又はアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合型装置を挙げることができる。
限外濾過膜装置9は、イオン交換樹脂装置8において処理された被処理水中に残存している微粒子等を除去する装置であり、例えば、PAN(ポリアクリロニトリル)、セルロースアセテート、あるいはフッ素系等の各種限外濾過膜を装備した一般的な限外濾過膜装置を適宜用いることができる。
【0019】
亜酸化窒素添加手段6により、有機化合物を含んだ被処理水(1次純水)に亜酸化窒素が添加される。被処理水中に溶解させる亜酸化窒素(NO)濃度は、5mg/L以上、1000mg/L以下であることが好ましく、10mg/L以上、100mg/L以下がさらに好ましい。亜酸化窒素濃度が5mg/L未満であると、亜酸化窒素の添加による有機化合物の分解効率の向上が十分でないおそれがある。亜酸化窒素濃度が高いほど有機化合物の分解効率は向上するものの、亜酸化窒素濃度が1000mg/Lを超えると、亜酸化窒素が雰囲気中に散逸してコストが高くなってしまうおそれがあり、また、気泡が発生するおそれがある。
【0020】
紫外線照射装置7により、亜酸化窒素が添加された被処理水に240nm以下の波長を含む紫外線が照射されると、亜酸化窒素は反応式(1)で示す反応をして、被処理水中に励起状酸素原子(O)が発生する。
O → N+O ……(1)
励起状酸素原子(O)は直ちに水と反応式(2)で示す反応をして、ヒドロキシラジカル(・OH)を生成する。
O+HO → 2・OH ……(2)
亜酸化窒素を被処理水に添加して紫外線を照射すると、このように亜酸化窒素からヒドロキシラジカルが生成するため、水中でのヒドロキシラジカル生成が加速化され、亜酸化窒素を添加せずに紫外線を照射した場合と比較して、有機化合物の分解効率が向上できる。
【0021】
また、以下の反応式(3)、(4)によっても、ヒドロキシラジカルが生成する。
被処理水に紫外線が照射されると、水は反応式(3)で示す分解をして、ヒドロキシラジカル(・OH)と水素ラジカル(・H)を発生する。
O → ・OH+・H ……(3)
従来、この・Hは、有機化合物の・OH分解過程における中間生成物である有機ラジカルと反応して、有機化合物の分解過程を妨げることが知られていた。本実施形態では、被処理水中に亜酸化窒素が添加されているため、紫外線によって分解されていない亜酸化窒素と、・Hが、反応式(4)で示す反応をすることが可能である。
O+・H → N+・OH ……(4)
これにより、・Hと有機ラジカルとの反応を抑制できるとともに、ヒドロキシラジカルを生成させ、有機化合物の分解効率を向上させることができる。
【0022】
反応式(1)〜(4)によって生成したヒドロキシラジカルは、被処理水中の有機化合物を酸化分解し、有機化合物はカルボン酸等の有機酸に酸化分解され、一部は二酸化炭素にまで分解される。
【0023】
紫外線照射装置7により紫外線を照射して被処理水中の有機化合物を分解するに際して、有機化合物の分解効率の向上のために従来用いられていたオゾンや過酸化水素に代えて、亜酸化窒素を被処理水中に添加している。
従来用いられていたオゾンは、紫外線照射装置7による紫外線の照射によりOを発生し、紫外線照射装置7出口での被処理水中の溶存酸素濃度を増加させる。また、従来用いられていた過酸化水素は、イオン交換樹脂装置8に充填されたイオン交換樹脂表面近傍において酸素と水に分解され、イオン交換樹脂装置8を通過した被処理水中の溶存酸素濃度を増加させる。また、後述する酸化剤除去装置を用いて、紫外線照射装置7の後段において残留するオゾンや過酸化水素を分解する際にも酸素を生成し、被処理水中の溶存酸素を増加させる。
これに対して、本発明に用いられる亜酸化窒素は、反応式(1)、(2)に示すように、紫外線の照射によってOを発生しない。また、亜酸化窒素は、安定な物質であるためイオン交換樹脂装置8に充填されたイオン交換樹脂との反応性は低く、イオン交換樹脂近傍での分解によるOの発生は殆どない。そのため、本発明の超純水製造装置1では、紫外線照射装置7出口や、イオン交換樹脂装置8出口及び限外濾過膜装置9出口での被処理水の溶存酸素濃度の増加を低減することができる。
【0024】
亜酸化窒素を含む被処理水に照射される紫外線は、173nm以上、240nm以下の範囲内の波長を含むものが好ましい。紫外線の波長が240nmを超えると、亜酸化窒素は240nmを超える光を吸収しないため、亜酸化窒素(NO)はNとOに解離せず、有機化合物の分解効率を向上させることが困難である。また、紫外線の波長が173nm未満であると、水による紫外線の吸収ピークが167nmであり、亜酸化窒素の紫外線の吸収ピークが190nmであることから、水による紫外線の吸収の割合が大きくなり、その結果、電力コストが大きくなるおそれがある。
【0025】
亜酸化窒素を含む被処理水の温度は、15℃以上、30℃以下が好ましい。被処理水の温度が15℃未満であると、有機化合物の分解速度が低下するおそれがあり、被処理水の温度が30℃を超えると、被処理水への亜酸化窒素の溶解濃度が低下してしまうおそれがある。
【0026】
必要に応じて紫外線照射装置7の後段に亜酸化窒素除去手段(図示せず)を設けて、紫外線照射装置7によって処理された被処理水中に残存する亜酸化窒素を除去してもよい。
【0027】
紫外線照射装置7において分解生成された有機酸、二酸化炭素等の被処理水中のイオン成分は、イオン交換樹脂装置8によって除去され、最後に限外濾過膜装置9によって極微量の微粒子等が除去され、全有機性炭素濃度(TOC)の少ない超純水(2次純水)を得ることができる。
【0028】
紫外線照射装置7により紫外線を照射して被処理水中の有機化合物を分解するに際して、有機化合物の分解効率の向上のために従来用いられていたオゾンや過酸化水素に代えて、亜酸化窒素を被処理水中に添加している。
従来用いられていたオゾンや過酸化水素は、紫外線照射装置7出口での被処理水中に残存すると、イオン交換樹脂装置8を構成するイオン交換樹脂や、限外濾過膜装置9の中空糸等を酸化劣化させ、劣化成分が被処理水中に混入して水質を低下させたり、イオン交換樹脂の交換が頻繁になる等の問題を有していた。このため、従来は、紫外線照射装置の後段、かつイオン交換樹脂装置の前段に、オゾンや過酸化水素を除去する酸化剤除去装置(例えば、紫外線を照射する手段や活性炭等)を設ける必要があった。
これに対して、本発明に用いられる亜酸化窒素は不活性ガスのために酸化剤として機能しないので、紫外線照射装置7出口での被処理水中に亜酸化窒素が残存していたとしても、イオン交換樹脂装置8を構成するイオン交換樹脂や、限外濾過膜装置9の中空糸等を酸化劣化させることはない。そのため、本発明の超純水製造装置1では、紫外線照射装置7の後段、かつイオン交換樹脂装置8の前段に従来配置されていた酸化剤除去装置を省略することができる。
【0029】
本発明の超純水製造装置1は、亜酸化窒素添加手段6を備えているため、従来の通常の超純水製造装置によって除去することが困難であった原水(被処理水)中の尿素等の有機態窒素を、分解除去することが可能である。
超純水製造用の原水(河川水、地下水等)中には、例えば、窒素肥料や医薬品の原料等に由来して、尿素(NHCONH)が含まれている。しかしながら、尿素は、従来の通常の超純水製造装置では、その除去が容易でない。逆浸透装置での尿素の除去率は、例えば約60%であり、紫外線照射装置では尿素の分解が困難であり、また、イオン交換樹脂装置では尿素は交換されない。そのため、超純水中の全有機性炭素(TOC)のうち、通常50%以上を尿素が占めており、原水中の尿素は、超純水中のTOCの低減を阻む原因となっていた。
これに対し、本発明の超純水製造装置1は、亜酸化窒素添加手段6により亜酸化窒素を添加した状態で紫外線照射装置7により紫外線を照射して尿素を分解し、イオン交換樹脂装置8によって尿素の分解成分を除去して、被処理水中の尿素を効率的に分解除去することができる。
【0030】
このように、亜酸化窒素添加手段6を備えた超純水製造装置1を用いることによって、被処理水中の全有機性炭素(TOC)濃度を、原水(被処理水)中の例えば0.5mg/Lから、例えば1μg/Lにまで低減することができる。
【0031】
以上のように、本発明の超純水製造装置1は、紫外線照射装置7により紫外線を照射して被処理水中の有機化合物を分解するに際して、亜酸化窒素を被処理水中に添加することにより、被処理水中の有機化合物の分解効率を向上させることができる。
【0032】
また、紫外線照射装置7により紫外線を照射して被処理水中の有機化合物を分解するに際して、有機化合物の分解効率の向上のために従来用いられていたオゾンや過酸化水素に代えて、亜酸化窒素を被処理水中に添加している。亜酸化窒素は不活性ガスのために酸化剤として機能しないので、紫外線照射装置7出口での被処理水中に亜酸化窒素が残存していたとしても、イオン交換樹脂装置8を構成するイオン交換樹脂等を酸化劣化させることはない。これに対して、従来用いられていたオゾンや過酸化水素を添加した場合には、紫外線照射装置7出口での被処理水中にオゾンや過酸化水素が残存すると、オゾンや過酸化水素は酸化剤として機能するため、イオン交換樹脂装置8を構成するイオン交換樹脂等を酸化劣化させてしまう。したがって、本発明の超純水製造装置1では、酸化剤として機能しない亜酸化窒素を添加しているので、イオン交換樹脂等の酸化劣化を防止でき、紫外線照射装置7の後段、かつイオン交換樹脂装置8の前段に酸化剤除去装置(例えば、紫外線を照射する手段や活性炭等)を配置することを省略することができる。このように、本発明の水処理装置及び水処理方法は、水処理装置の構成や、製造工程の簡略化が可能である。
【0033】
また、従来用いられていたオゾンや過酸化水素に代えて酸化剤として機能しない亜酸化窒素を添加すれば、イオン交換樹脂装置8に充填されたイオン交換樹脂等の酸化劣化を防止できるため、イオン交換樹脂等の劣化成分が超純水中に混入することを低減できる。このため、本発明の水処理装置及び水処理方法は、安定した品質の超純水を得ることが可能であり、超純水の製造に好適である。
【0034】
また、本発明の超純水製造装置1は、紫外線照射装置7出口や、イオン交換樹脂装置8出口及び限外濾過膜装置9出口での被処理水の溶存酸素濃度の増加を低減できるので、溶存酸素を除去するために、紫外線照射装置の後段(例えば紫外線照射装置7とイオン交換樹脂装置8の間)に、例えば脱気装置のような溶存酸素除去手段を設けなくてもよい。そのため、本発明の水処理装置及び水処理方法は、水処理装置の構成や、製造工程の簡略化が可能である。
また、本発明の超純水製造装置1によれば、紫外線照射装置7出口での被処理水の溶存酸素濃度の増加を低減できるので、紫外線照射装置の後段(例えば紫外線照射装置7とイオン交換樹脂装置8の間)に、例えば脱気装置のような溶存酸素除去手段を設けた場合にも、この溶存酸素除去手段の負荷を低減することができる。
超純水中の溶存酸素濃度は、超純水の使用量の多い半導体洗浄において、3μg/L以下であることが要求されている(国際半導体技術ロードマップ、ITRS:International Technology Roadmap for Semiconductors)。本発明の水処理装置及び水処理方法は、紫外線照射装置7の後段への溶存酸素除去手段の配置を省略したり、溶存酸素除去手段を設けた場合にも溶存酸素除去手段の負荷を低減することができるので、超純水の製造に好適である。
【0035】
また、本発明の超純水製造装置1によれば、従来の通常の超純水製造装置によって除去することが困難であった原水(被処理水)中の尿素等の有機態窒素を、効率的に分解除去することが可能である。すなわち、亜酸化窒素添加手段6により亜酸化窒素を添加した状態で紫外線照射装置7により紫外線を照射して尿素を分解し、イオン交換樹脂装置8によって尿素の分解成分を除去して、被処理水中の尿素を効率的に分解除去することができる。これにより、本発明の超純水製造装置1では、超純水中のTOCを、従来よりも低減することができる。
また、本発明の超純水製造装置1によれば、TOCの目標値以下の超純水を安定して製造することが可能である。原水中の尿素の濃度は、地域や季節等の様々な要因によって変動する。従来の通常の超純水製造装置では、尿素を除去することが困難であったため、原水中の尿素濃度が増加するにつれ、得られる超純水中のTOCが上昇する。本発明の超純水製造装置1によれば、原水中の尿素濃度が高い場合にも、尿素を分解除去して超純水中のTOCを低減することができるので、高品質の超純水の安定した製造が可能である。
【0036】
なお、本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず、拡張、変更可能であり、拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、紫外線照射装置、及び紫外線照射装置の後段に配置されるイオン交換樹脂装置を、例えば、一次純水システムに設けてもよく、一次純水システム及び二次純水システムの両方に設けてもよい。
また、上述した実施の形態にあっては、亜酸化窒素添加手段6、紫外線照射装置7、及びイオン交換樹脂装置8を備える水処理装置として超純水製造装置1を例にして説明したが、超純水製造装置に限られるものではなく、例えば、純水製造装置、廃水処理装置、浄水処理装置等として構成してもよい。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例を用いて本発明の内容を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
図2は、亜酸化窒素添加手段及び紫外線照射装置を備えた、有機化合物の模擬分解装置10の構成を示す図である。有機化合物の模擬分解装置10は、模擬水溶液である尿素水溶液を貯槽したガラス製の容器11と、尿素水溶液を攪拌する攪拌子12と、尿素水溶液中に配置され、かつ240nm以下の波長を含む紫外線を照射する紫外線照射装置13(石英試験管14と、石英試験管14内に配置される低圧紫外線ランプ15とで構成される)と、尿素水溶液中に亜酸化窒素ガスを添加する亜酸化窒素添加手段16(NOガス供給ライン17と、NOガス供給ライン17に接続され尿素水溶液中に亜酸化窒素ガスをバブリングするガラス製散気管18とで構成される)を備えている。
【0039】
尿素水溶液を容器11に収容し、NOガス供給ライン17により亜酸化窒素ガスを供給し、ガラス製散気管18を通じて尿素水溶液中にバブリングさせながら添加し、紫外線照射装置13により紫外線を照射して、有機化合物の分解模擬装置10を用いた有機化合物の分解試験を行った。試験条件は、初期尿素濃度1mg・C/L、尿素水溶液量3L、温度23℃、紫外線出力1.32W、NOガス純度99.999vol%以上、注入NOガス流量5mL/minである。
尿素水溶液中の全有機性炭素濃度(TOC)を測定し、紫外線照射量に対するTOC残存率(100×残存有機性炭素濃度/初期有機性炭素濃度)の変化を求めた。図3は、有機化合物の模擬分解装置10を用いて、尿素を分解した結果を示す図である。図3では、比較例として、亜酸化窒素を添加しなかったこと以外は、実施例1と全く同一にして、紫外線を照射した場合も示している。図3の縦軸は、TOC残存率(100×残存有機性炭素濃度/初期有機性炭素濃度)(%)、横軸は、紫外線の照射量(kW・hr/m)を示す。
【0040】
図3から明らかなように、尿素水溶液に亜酸化窒素を添加せずに4kW・hr/mの紫外線を照射した場合(比較例)には、TOC濃度の減少が4%程度であるのに対して、亜酸化窒素を添加して4kW・hr/mの紫外線を照射した場合には、TOC濃度の減少が20%を超えていた。
したがって、被処理水に亜酸化窒素を添加することにより、紫外線照射による有機化合物の分解効率が向上することが確認できた。
また、被処理水に亜酸化窒素を添加して紫外線を照射することにより、従来の通常の超純水製造装置では除去することが困難であった被処理水中の尿素を、効率的に分解できることが確認できた。
【0041】
(実施例2)
図1の超純水製造装置1を用いて超純水を経時的に連続して製造した。前処理装置2に供給する原水として、水道水を使用した。脱気装置5は、窒素ガスと被処理水との体積比率を0.03:1とした窒素ガス添加方式の真空脱気装置である。亜酸化窒素添加手段6は、亜酸化窒素ガスが充填されたガスボンベからの供給によるものであり、亜酸化窒素添加直後の被処理水中の亜酸化窒素濃度は、20mg/Lである。紫外線照射装置7は、低圧紫外線ランプ(千代田化工株式会社、低圧UV酸化用ランプ、照射量0.25KWh/m)であり、185nm付近の波長をピークとする紫外線を発生する。温度は、23℃で実施した。
【0042】
また、比較のため、紫外線照射装置7の前段において亜酸化窒素を添加せずに、オゾンガス、又は過酸化水素を添加したこと以外は、実施例2と全く同一にして、超純水をそれぞれ経時的に連続して製造した。なお、オゾン添加直後の被処理水中のオゾン濃度は、7.3mg/L、過酸化水素添加直後の被処理水中の過酸化水素濃度は、7mg/Lである。
【0043】
限外濾過膜装置9出口での被処理水中の溶存酸素濃度を、亜酸化窒素、オゾン(比較例)、又は過酸化水素(比較例)を添加したそれぞれの場合について、隔膜式の溶存酸素計を用いてそれぞれ測定した。
【0044】
亜酸化窒素を添加した場合には、限外濾過膜装置9の出口における被処理水中の溶存酸素濃度が1.0mg/L以下であったのに対し、オゾンを添加した場合(比較例)においては8.2mg/L、過酸化水素を添加した場合(比較例)においては7.1mg/Lであった。
したがって、紫外線照射装置7により紫外線を照射して被処理水中の有機化合物を分解するに際して、有機化合物の分解効率の向上のために従来用いられていたオゾンや過酸化水素に代えて、亜酸化窒素を被処理水中に添加すれば、限外濾過膜装置9出口での被処理水の溶存酸素濃度の増加を低減できることが確認できた。
また、亜酸化窒素を添加した場合には、イオン交換樹脂装置8に充填されたイオン交換樹脂や、限外濾過膜装置9を構成する中空糸の劣化や分解は確認されなかった。
また、亜酸化窒素を添加した場合に、得られた超純水のTOCは1μg/L以下であり、超純水製造装置1により高品質の超純水が得られることが確認できた。
【0045】
(実施例3)
図2の有機化合物の模擬分解装置10によって模擬水溶液である尿素水溶液中の尿素を分解処理した後、この分解処理後の模擬水溶液をアニオン交換樹脂に通液して、尿素の分解除去試験を行った。
模擬分解装置10での試験条件は、初期尿素濃度1mg・C/L、尿素水溶液量3L、温度23℃、紫外線出力1.32W、NOガス純度99.999vol%以上、注入NOガス流量5mL/minであり、紫外線照射量が異なる2つの条件(1.1kW・hr/m、2.3kW・hr/m)でそれぞれ実施した。亜酸化窒素添加直後の尿素水溶液中の亜酸化窒素濃度は、98mg/Lであった。
アニオン交換樹脂としてA101(ローム・アンド・ハース・ジャパン社製)を100mL使用し、アニオン交換樹脂への通液は流速10mL/minであった。
【0046】
有機化合物の模擬分解装置10によって尿素の分解処理がなされ、かつアニオン交換樹脂通液前の模擬水溶液のTOC(U1)と、アニオン交換樹脂通液後の模擬水溶液のTOC(U2)を測定し、尿素由来のTOC除去濃度(U1−U2)を求めた。図4は、有機化合物の模擬分解装置10及びアニオン交換樹脂を用いて、尿素水溶液中の尿素を分解除去した結果を示す図である。図4では、比較例として、有機化合物の模擬分解装置10において亜酸化窒素を添加しなかったこと以外は、実施例3と全く同一にして、尿素を分解除去した場合も示している。図4の縦軸は、尿素由来のTOC除去濃度(μg/L)、横軸は、紫外線照射量(kW・hr/m)を示す。
【0047】
図4から明らかなように、尿素水溶液に亜酸化窒素を添加して紫外線を照射した場合では、尿素水溶液に亜酸化窒素を添加せずに紫外線を照射した場合と比較して、尿素由来のTOC除去濃度が、約3〜5倍増加した。
したがって、被処理水に亜酸化窒素を添加して紫外線を照射した後、イオン交換樹脂装置に通液することにより、被処理水中の尿素を効率的に分解除去できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の超純水製造装置の構成の一例を示す図である。
【図2】亜酸化窒素添加手段及び紫外線照射装置を備えた、有機化合物の模擬分解装置の構成を示す図である。
【図3】有機化合物の模擬分解装置を用いて、尿素を分解した結果を示す図である。
【図4】有機化合物の模擬分解装置及びアニオン交換樹脂を用いて、被処理水中の尿素を分解除去した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1…超純水製造装置、2…前処理装置、3…2床3塔型イオン交換装置、4…逆浸透装置、5…脱気装置、6…亜酸化窒素添加手段、7…紫外線照射装置、8…イオン交換樹脂装置、9…限外濾過膜装置、10…有機化合物の模擬分解装置、11…容器、12…攪拌子、13…紫外線照射装置、14…石英試験管、15…低圧紫外線ランプ、16…亜酸化窒素添加手段、17…NOガス供給ライン、18…ガラス製散気管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に亜酸化窒素を添加する亜酸化窒素添加手段と、
前記亜酸化窒素を添加された被処理水に紫外線を照射し、水中の有機化合物を分解する紫外線照射装置と、
前記紫外線照射装置によって処理された被処理水を導入し、水中のイオンを除去するイオン交換樹脂装置と、
を具備することを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記紫外線照射装置より発生する紫外線が、173nm〜240nmの波長範囲内の波長を有することを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂装置は、アニオン交換樹脂装置、又はアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合型装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記有機化合物が、尿素を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記水処理装置が、超純水製造装置であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項6】
被処理水に亜酸化窒素を添加する工程と、
前記亜酸化窒素が添加された被処理水に紫外線を照射して有機化合物を分解する工程と、
前記有機化合物が分解された被処理水をイオン交換樹脂装置で処理する工程と、
を具備することを特徴とする水処理方法。
【請求項7】
前記紫外線が、173nm〜240nmの波長範囲内の波長を有することを特徴とする請求項6に記載の水処理方法。
【請求項8】
前記イオン交換樹脂装置は、アニオン交換樹脂装置、又はアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合型装置であることを特徴とする請求項6又は7に記載の水処理方法。
【請求項9】
前記有機化合物が、尿素を含むことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項10】
前記水処理方法が、超純水製造方法であることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−173617(P2008−173617A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21109(P2007−21109)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】