説明

水処理装置および水処理方法

【課題】コストの増大や装置サイズの拡大を招かずに、水処理装置による除去対象物の除去性能を向上させることを課題とする。
【解決手段】電気分解反応槽12に導入された第一の処理原水に対して電気分解処理を行う電気分解手段と、除去対象物を含む第二の処理原水と電気分解手段によって生成された電気分解処理水とを混合反応槽14に導入することで混合させ、混合された水に含まれる除去対象物の凝集物を生成する混合手段と、混合反応槽14から送られた混合処理水を沈殿槽16において滞留させることで、生成された凝集物を沈殿させる沈殿手段と、を備え、混合手段は、沈殿槽16に沈殿した沈殿物の少なくとも一部を、前記混合反応槽に導入することで電気分解処理水および第二の処理原水に更に混合させる、水処理装置1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理原水から何らかの除去対象物を除去するための水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理水内に溶出させた金属イオンと不純物とを反応させることにより、不純物を凝集させる技術がある(特許文献1を参照)。その他、溶出させた鉄イオンまたはアルミニウムイオンを生物膜濾過槽へ供給する汚水処理技術等がある(特許文献2から7を参照)。
【特許文献1】特開2006−122840号公報
【特許文献2】特許3948779号公報
【特許文献3】特開2006−110482号公報
【特許文献4】特開2008−194631号公報
【特許文献5】特開2007−203233号公報
【特許文献6】特開2005−246328号公報
【特許文献7】特開2007−237027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
接水表面にスケールを生成させたり、蒸発残渣物として蓄積したりする主成分の一つとして、水に溶解している溶解性シリカがある。スケール生成は、例えば配管の閉塞や熱交換器の熱交換効率の低下を招く。また、残渣物蓄積は、加湿装置やボイラ蒸気発生装置において性能低下および保守メンテナンスの大幅な増加を招く。このため、従来、シリカ除去技術として、逆浸透膜による除去(以下、逆浸透膜法)や、イオン交換樹脂による除去(以下、イオン交換膜法)、凝集剤添加による凝集沈殿分離(以下、凝集剤添加法)、電気分解による凝集沈殿分離(以下、電気分解法)、等が提案されている。
【0004】
ここで、逆浸透膜法を採用した場合、シリカは膜の目詰まり原因物質の最たるものでもあり、膜寿命を大幅に短縮させるため、運転コストが膨大になる。そのため、逆浸透膜法は、純水プラントの原水としてシリカ濃度の高い原水を処理するには適さない。また、イオン交換膜法を採用した場合、技術的には確実にシリカを吸着除去できるが、運転コストが逆浸透膜法以上に高くなる。シリカ除去量によるが、一般的な地下水(シリカ濃度50〜100ppm)の処理を仮定すると、1t当たり数千円以上の処理コストとなり、超純水よりも遙かに高い精製コストが発生するため、実用は困難である。また、凝集剤添加法は、地下水や水道水レベルの濃度のシリカ除去に用いるには非常に効率が悪いことが実証されており、凝集剤添加法は実用に適さない。
【0005】
電気分解法では、電気分解により凝集作用に有効な例えばアルミニウムイオンなどの金属イオンを電極から溶出させることで、弱酸性の負電荷を持つシリカイオンとの反応効率を向上させる。更に、電気分解法では、負電極からの水素ガスの発生で処理水中の水酸化物イオン量を増加させる効果により、水酸化アルミニウムによる、コロイド物質の吸着が促進される。
【0006】
図4および図5は、電気分解法によって除去対象物質の除去を行う従来の装置の構成を示す図である。図4に示す装置は、処理の対象となる水の流れにおいて、上流から順に、処理原水に対して電気分解処理が行われる電気分解反応槽と、凝集物の沈殿による除去対象物の分離・除去が行われる沈殿槽と、を有する。また、図5に示す装置は、図4と同様の電気分解反応槽および沈殿槽に加えて、電気分解反応槽で生成された凝集物と除去対象
物の接触反応を促進させ、凝集物を更に大きなフロックに成長させることで、沈殿槽における凝集物の沈降時間を短縮化させるための緩速攪拌槽を有する。
【0007】
比較的低コストでのシリカ除去が可能な電気分解法は、実用化可能性の高い技術である。しかし、性能面、コスト面、装置サイズ面で決して十分ではなく、更なる高性能化、低コスト化、コンパクト化の達成が必須である。性能と、コストおよび装置サイズと、の関係はトレードオフの関係にある。例えば、除去性能を向上させるには、より多くの金属イオンを溶出させかつ反応時間を長くすることで達成できるが、溶出量の増加は金属電極の交換頻度を上昇させランニングコストが大幅に上がってしまう。本方式でのランニングコストに占める金属電極の交換費用は50%以上であり、電極の消費増加は望ましくない。また、反応時間を長くするためには、電気分解反応槽を大型化する必要があり、装置コストの増大および設置スペースの拡大を招く。反対に、装置サイズのコンパクト化および低コスト化は、除去性能を犠牲にする。
【0008】
本発明は、上記した問題に鑑み、コストの増大や装置サイズの拡大を招かずに、水処理装置による除去対象物の除去性能を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するために、凝集反応に必要な溶出物(アルミニウム電極や鉄電極より溶出するアルミニウムイオンや鉄イオン)の生成と、このような溶出物を含む電気分解処理水の処理原水への混合と、を個別に行い、この混合の際に、高濃度な凝集物を含む沈殿物を同時に混合させることで、コストの増大や装置サイズの拡大を招かずに、水処理装置による除去対象物の除去性能を向上させることを可能にした。
【0010】
詳細には、本発明は、第一の処理原水に対して電気分解処理を行う電気分解手段と、所定の除去対象物を含む第二の処理原水と、前記電気分解手段によって生成された電気分解処理水とを混合させることで、混合された水に含まれる前記除去対象物の凝集物を生成する混合手段と、前記混合手段によって生成された前記凝集物を沈殿させる沈殿手段と、を備え、前記混合手段は、前記沈殿手段によって沈殿された沈殿物の少なくとも一部を、前記電気分解手段によって生成された前記電気分解処理水および前記第二の処理原水に更に混合させる、水処理装置である。
【0011】
本発明に係る水処理装置は、処理の対象となる原水から、所定の除去対象物を除去するための装置である。即ち、第二の処理原水は、除去対象物を含む原水であり、除去対象物としては、例えば、処理原水に溶解した溶解性シリカが挙げられる。但し、除去対象物は溶解性シリカに限られず、本発明に係る水処理装置では、除去対象物として、シリカ、鉄、Mn(マンガン)、F(フッ素)、SS(Suspended Solids、浮遊物質)等、広範囲の物質を除去することが可能であり、除去対象物は特定の一物質に限定されるものではない。
【0012】
なお、第一の処理原水は、凝集反応に必要な溶出物を含ませることを主な目的として用いられるものであるため、必ずしも除去対象物を含む必要はないが、第二の処理原水と同様、除去対象物を含んでもよい。即ち、前記第一の処理原水および前記第二の処理原水には、同一の水源から取得された処理原水が用いられてもよいし、前記第一の処理原水および前記第二の処理原水には、互いに異なる水源から取得された処理原水が用いられてもよい。
【0013】
また、電気分解手段による電気分解処理は、処理原水に外部から電気エネルギーを与えることで電気分解反応を起こさせ、除去対象物を凝集させて分離する処理である。例えば、アルミニウムイオンなどの金属イオンを電極から溶出させることで、弱酸性の負電荷を
持つシリカイオンとの反応効率を向上させることが出来る。なお、アルミニウムイオンを溶出させるために、前記電気分解手段は、前記処理原水に対して、アルミニウム板を正電極として用いる電気分解処理を行ってもよい。但し、本発明に係る水処理装置では、電気分解処理の時点で同時に除去対象物の凝集反応を積極的に促進させることはせずに、金属イオン等凝集作用のための溶出物が含まれることとなった電気分解処理水を、続く第二の処理原水および沈殿物との混合に用いる。但し、電気分解処理が行われた時点で、電気分解処理水内に若干の凝集物が含まれることとなってもよい。例えば、第一の処理原水に除去対象物が含まれる場合には、電気分解処理と並行して凝集反応が起きるため、電気分解処理水は、混合手段による混合が行われる前に若干の凝集物を含むこととなる。
【0014】
ここで、本発明では、除去対象物を含む第二の処理原水に、電気分解手段によって生成された、凝集反応のための溶出物を含む電気分解処理水と、沈殿手段によって沈殿した沈殿物(高濃度の凝集物)と、が混合される。即ち、本発明では、未だ凝集反応に用いられていない溶出物と、まだ除去対象物を取り込む能力が残存している沈殿物との双方によって、処理原水に含まれる除去対象物の凝集が促進される。また、これと同時に、除去対象物を凝集物に最大限に取り込むことで、凝集物の沈降性の向上、更には余剰汚泥の脱水性能の向上といった効果を得ることが可能である。
【0015】
このようにすることで、本発明に係る水処理装置によれば、従来に比べて大幅に電気分解槽のサイズを小型化した場合でも、電極消費量が同様であれば、従来以上の除去性能を得ることが可能である(例えば、処理時間を1/5程度にし、電圧を5倍にすることで、イオン溶出量を同等としたまま電気分解槽のサイズを1/5程度にすることが可能である)。即ち、本発明によれば、電極の消費を増やすことなく、且つ電気分解反応槽の小型化を達成しつつ、水処理装置による除去対象物の除去性能を向上させることが出来る。また、上記の通り余剰汚泥の脱水性能が向上することで、脱水汚泥量を削減することが出来る。
【0016】
また、前記電気分解手段は、電気分解反応槽に導入された前記第一の処理原水に対して電気分解処理を行い、前記混合手段は、前記第二の処理原水、電気分解手段によって生成された電気分解処理水、および前記沈殿物の少なくとも一部を、混合反応槽に導入することで混合させ、前記沈殿手段は、前記混合反応槽から送られた、混合された水を沈殿槽において滞留させることで該凝集物を沈殿させてもよい。
【0017】
ここで、電気分解反応槽は、第一の処理原水が導入される槽であり、混合反応槽は、除去対象物を含む第二の処理原水が導入される槽であり、沈殿槽は、混合反応槽において混合および凝集反応が行われた水が送られる槽である。即ち、水処理装置では、第一の処理原水の流れにおける上流から順に電気分解反応槽、混合反応槽、および沈殿槽が設けられる。本発明では、沈殿槽において沈殿した沈殿物の少なくとも一部を混合反応槽に送り、電気分解処理水と第二の処理原水とに混合させること、換言すると、除去対象物の除去処理の主な対象となる第二の処理原水に、凝集のための溶出物を含む電気分解処理水と凝集のための凝集物を含む沈殿物とを混合させることで、除去対象物の凝集を促進させることとしている。
【0018】
また、混合のために沈殿槽から送られる沈殿物は、沈殿槽内の電気分解処理水と共に送られ、この沈殿槽から混合のために送られる汚泥(沈殿物を含む電気分解処理水)の量は、処理原水の量(第一の処理原水の量と、第二の処理原水の量との合計)に対して、5〜50%であってもよい。
【0019】
また、本発明は、水処理方法の発明としても把握することが可能である。例えば、本発明は、第一の処理原水に対して電気分解処理を行う電気分解ステップと、所定の除去対象
物を含む第二の処理原水と、前記電気分解ステップで生成された電気分解処理水とを混合させることで、混合された水に含まれる前記除去対象物の凝集物を生成する混合ステップと、前記混合ステップで生成された前記凝集物を沈殿させる沈殿ステップと、が実行され、前記混合ステップでは、前記沈殿ステップで沈殿された沈殿物の少なくとも一部が、前記電気分解ステップで生成された前記電気分解処理水および前記第二の処理原水に更に混合される、水処理方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によって、コストの増大や装置サイズの拡大を招かずに、水処理装置による除去対象物の除去性能を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る水処理装置の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る水処理装置1の構成を示す概略図である。水処理装置1は、処理の対象となる水の流れにおいて、上流から順に電気分解反応槽12、混合反応槽14、および沈殿槽16を有する。また、電気分解反応槽12には、第一の処理原水(被処理水)の導入のための配管11が接続されており、混合反応槽14には、第二の処理原水(被処理水)の導入のための配管19が接続されている。また、電気分解反応槽12と混合反応槽14とは配管13で接続されており、混合反応槽14と沈殿槽16とは配管15で接続されており、沈殿槽16には、除去対象物の除去処理が施された処理水を外部に送出するための配管17が接続されている。
【0023】
更に、沈殿槽16には、沈殿槽16の下部に沈殿した沈殿物22を沈殿槽16内の水と共に送り出すための配管およびポンプ23が接続されており、沈殿槽16から送り出された沈殿物を含む水は、配管18を通って混合反応槽14または外部へ送られる。以下、本実施形態において、沈殿槽16から送り出される、沈殿物を含む水を、汚泥と称する。ここで、汚泥の送出先は、弁24および弁25が制御されることで制御される。具体的には、弁24が開弁している状態では、汚泥は混合反応槽14へ送出され、弁25が開弁している状態では、汚泥は外部へ送出される。
【0024】
電気分解反応槽12は、配管11を介して処理の対象となる第一の処理原水が導入され、第一の処理原水に対して電気分解処理が行われる槽である。本実施形態に係る電気分解処理では、電気分解反応槽12に設けられたアルミニウム電極(アルミニウム板を用いた正電極。図示は省略する)から電気分解反応槽12内の水にアルミニウムイオン(溶出物)を溶出させる。溶出される溶出物の量は、混合反応槽14において凝集反応により除去する除去対象物の量に応じて決定されることが好ましい。なお、電気分解法では、負電極からの水素ガスの発生で処理水中の水酸化物イオン量を増加させる効果により、水酸化アルミニウムによるコロイド物質の吸着が促進される。電気分解反応槽12において電気分解処理が施された、溶出物を含む水(以下、電気分解処理水と称する)は、配管13を経て混合反応槽14へ送られる。
【0025】
混合反応槽14は、配管19を介して導入された第二の処理原水に対して、電気分解反応槽12から配管13を介して送られた電気分解処理水と、沈殿槽16から配管18を介して返送された汚泥(沈殿物を含む電気分解処理水)と、が混合される槽である。なお、本実施形態では、第一の処理原水および第二の処理原水には、同一の水源から取得された処理原水(同一の原水)が用いられる。但し、第一の処理原水および第二の処理原水には、互いに異なる水源から取得された処理原水が用いられてもよい。また、第一の処理原水と第二の処理原水とのバランスは、除去対象物の濃度および所望の除去率に応じて最適な値に設定されることが好ましい。本実施形態では、混合反応槽14に直接導入される処理
原水の量と電気分解処理が施されてから導入される電気分解処理水との量の比、即ち第二の処理原水と第一の処理原水との量の比は、4対1である。
【0026】
第二の処理原水に対して、溶出物を多く含む電気分解処理水と、高濃度の凝集物である沈殿物を多く含む汚泥と、が混合されることで、溶出物(アルミニウムイオン等)と弱酸性の負電荷を持つシリカイオンとの反応が促進され、また、返送された汚泥内の凝集物と、水中のシリカイオンやコロイダルシリカとの更なる反応が促進される。また、本実施形態では、攪拌装置21による強制攪拌を常時行うことで、第二の処理原水に対する、電気分解反応槽12から送られた電気分解処理水と沈殿槽16から送られた汚泥との混合を促進させ、混合反応槽14における反応効率を上げることとしている。混合反応槽14において混合されることで除去対象物についての凝集が進行し、多くの凝集物を含むこととなった電気分解処理水は、配管15を経て沈殿槽16へ送られる。
【0027】
図2は、本実施形態において用いられる混合反応槽14を示す図であり、図3は、本実施形態に係る混合反応槽14において用いられた攪拌プロペラを示す図である。試験装置では、内寸として底面が一辺250mmの正方形、深さが400mmの立方体状の混合反応槽14が用いられ、この混合反応槽14に、水深270mmまで電気分解処理水が導入される。また、攪拌プロペラには、回転軸に直交する方向への長さ30mm、高さ25mmの羽根4枚が、回転軸周りに互いに90度の間隔をもって取り付けられているものが用いられる。
【0028】
沈殿槽16は、混合反応槽14から送出された電気分解処理水が導入され、この電気分解処理水からの凝集物の分離が行われる槽である。本実施形態では、混合反応槽14から送出された電気分解処理水が、沈殿槽16内で所定時間滞留することで、凝集物の沈殿による除去対象物の分離・除去が行われる。沈殿した凝集物は、沈殿槽16の下部に溜まることで汚泥となる。なお、混合反応槽14における反応により、除去対象物の除去性能向上に加えて、汚泥の沈降性が改善される。このため、汚泥の返送率にもよるが、例えば返送率5〜30%の範囲では汚泥の返送を行わない場合に比べて沈殿槽16の水量が5〜30%増量することとなり、一見、沈殿槽16の大型化が必要にも思われる。しかし、凝集物の沈降性が向上することによって沈殿に必要な時間が短くなるため、実際には、従来と同等またはよりコンパクトな沈殿槽16を採用することが可能となる。この汚泥は、少なくともその一部がポンプ23および配管18を介して混合反応槽14へ返送されることで、上述した、電気分解反応槽12から送られた電気分解処理水および第二の処理原水との混合による反応に用いられる。この場合、弁24を開弁した状態でポンプ23を駆動することで、汚泥を返送することが出来る。また、汚泥が所定量以上沈殿した場合には、弁25を開弁した状態でポンプ23を駆動することで、汚泥を外部へ排出することが出来る。
【0029】
電気分解処理水が沈殿槽16内に所定時間滞留すると、凝集物は沈殿槽16の下部へ沈殿し、沈殿槽16の上部には、除去対象物(本実施形態では、シリカ等)が除去された処理水が残る。除去対象物が除去された処理水は、配管17を介して外部に送出され、様々な目的に用いることが可能である。
【0030】
また、混合反応槽14における混合反応処理時間、および沈殿槽16からの汚泥返送率は、目標とする除去率に応じて適宜最適な値に設定されることが好ましい。また、汚泥返送率が高い場合、反応時間は短くすることができる。なお、汚泥返送による凝集物の沈降性の改善効果によって沈殿に要する時間が改善され、沈殿槽16における水量増加が相殺されるため、沈殿槽16の大型化は必要ない。本発明の実施にあたっては、除去対象物の濃度に応じて最適な汚泥返送率を選択することで、装置全体のコンパクト化および処理コストの削減を達成することが出来る。おおよその範囲としては、混合反応時間1分〜60分、汚泥返送率5〜50%である。なお、返送率50%の場合、混合反応槽14から沈殿
槽16への流入量は、処理水量の1.5倍となる。
【0031】
本実施形態に係る水処理装置1では、電気分解反応槽12で生成された溶出物(アルミニウム電極や鉄電極より溶出されるアルミニウムイオンや鉄イオン)の多くが電気分解反応槽12における凝集に用いられることなく混合反応槽14に供給されることに加え、混合反応槽14に、処理原水、前記溶出物(金属イオン)を多く含む電気分解水、および沈殿槽16で分離された高濃度な凝集物(汚泥)が投入され、前記溶出物と、まだ凝集作用が十分残っている汚泥との反応により処理原水中の除去対象物質が析出凝集される。即ち、本実施形態に係る水処理装置1によれば、従来の装置(図4および図5を参照)と同様の電気分解に必要な電力コストおよびアルミ電極の消費量で、従来以上の除去効率を達成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係る水処理装置の構成を示す概略図である。
【図2】実施形態に係る混合反応槽を示す図である。
【図3】実施形態に係る攪拌プロペラを示す図である。
【図4】電気分解法によって除去対象物質の除去を行う従来の装置の構成を示す図である。
【図5】電気分解法によって除去対象物質の除去を行う従来の装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1、1b、1c 水処理装置
12 電気分解反応槽
14 混合反応槽
16 沈殿槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の処理原水に対して電気分解処理を行う電気分解手段と、
所定の除去対象物を含む第二の処理原水と、前記電気分解手段によって生成された電気分解処理水とを混合させることで、混合された水に含まれる前記除去対象物の凝集物を生成する混合手段と、
前記混合手段によって生成された前記凝集物を沈殿させる沈殿手段と、を備え、
前記混合手段は、前記沈殿手段によって沈殿された沈殿物の少なくとも一部を、前記電気分解手段によって生成された前記電気分解処理水および前記第二の処理原水に更に混合させる、水処理装置。
【請求項2】
前記電気分解手段は、電気分解反応槽に導入された前記第一の処理原水に対して電気分解処理を行い、
前記混合手段は、前記第二の処理原水、電気分解手段によって生成された電気分解処理水、および前記沈殿物の少なくとも一部を、混合反応槽に導入することで混合させ、
前記沈殿手段は、前記混合反応槽から送られた、混合された水を沈殿槽において滞留させることで該凝集物を沈殿させる、
請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記第一の処理原水および前記第二の処理原水には、同一の水源から取得された処理原水が用いられる、
請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記第一の処理原水および前記第二の処理原水には、互いに異なる水源から取得された処理原水が用いられる、
請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記除去対象物は、前記処理原水に溶解した溶解性シリカである、
請求項1から4の何れか一項に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記電気分解手段は、前記処理原水に対して、アルミニウム板を正電極として用いる電気分解処理を行う、
請求項1から5の何れか一項に記載の水処理装置。
【請求項7】
第一の処理原水に対して電気分解処理を行う電気分解ステップと、
所定の除去対象物を含む第二の処理原水と、前記電気分解ステップで生成された電気分解処理水とを混合させることで、混合された水に含まれる前記除去対象物の凝集物を生成する混合ステップと、
前記混合ステップで生成された前記凝集物を沈殿させる沈殿ステップと、が実行され、
前記混合ステップでは、前記沈殿ステップで沈殿された沈殿物の少なくとも一部が、前記電気分解ステップで生成された前記電気分解処理水および前記第二の処理原水に更に混合される、水処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−137179(P2010−137179A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316819(P2008−316819)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【Fターム(参考)】