説明

水処理装置および水処理方法

【課題】金属イオンと配位結合を形成する有機化合物を含む水に含有される当該有機化合物をフェントン反応で処理する水処理において、処理水の全有機炭素(TOC)が低減され、処理水の濁りが減少する水処理装置を提供する。
【解決手段】金属イオンと配位結合を形成する有機化合物を含む水を処理対象とし、前記水のフェントン処理を行うフェントン処理手段と、前記フェントン処理を行ったフェントン処理水を、イオン交換性材料を用いて処理するイオン交換処理手段と、を有する水処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置および水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法等のように、静電潜像を経て画像情報を可視化する方法は、現在各種の分野で広く利用されており、前記電子写真法においては、帯電工程、露光工程等を経て形成された電子写真用感光体表面の静電潜像を静電潜像現像用トナー(以下、単に「トナー」と称する場合がある)により現像し、転写工程、定着工程等を経て前記静電潜像が可視化される。
【0003】
トナーの製造方法としては、従来、混練粉砕法で行われていたが、トナーの小径化や粒度分布の制御やオイルレス定着のための離型剤を内包させるなどの観点から、懸濁重合法や凝集合一法などの湿式製法が盛んに行われるようになってきた。これらの湿式製法では、トナー成分である樹脂、着色剤、離型剤の他にトナー製造工程で、分散性をあげるために界面活性剤や、金属イオンと配位結合を形成する多価アミノカルボン酸化合物等の有機化合物(以下、「キレート剤」と呼ぶ場合がある。)が加えられることがある。このため、トナー製造工程で、これらの成分を含む水溶液が発生することがある。
【0004】
通常、一般の水処理としては、凝集沈殿処理が利用される場合が多い。凝集沈殿処理に関しては、公害防止の技術と法規水質編等の一般文献に多く記載されている。水中の難処理成分を分解させて除去する方法として、フェントン反応を用いる例が知られており(例えば、特許文献1参照)、キレート化剤を含有するフッ素、リン含有水の処理方法として、フェントン処理を用いた例もある(特許文献2参照)。
【0005】
また、特許文献3には、各種機械、機器、これらの構成部材等各種部品を水系洗浄剤にて洗浄する洗浄工程、および同洗浄処理工程にて洗浄処理された各種部品を水で仕上げ洗浄する仕上洗浄工程の両工程を有する洗浄システムから排出される排水の処理方法であり、前記洗浄工程から排出され油性エマルジョンの分離処理された排水処理水を、酸化分解処理した後、活性炭処理およびイオン交換処理する洗浄システムから排出される排水の処理方法が記載されている。
【0006】
特許文献4には、過酸化水素その他の酸化剤を含有する酸性水を高性能活性炭により処理する方法において、前記排水を前記高性能活性炭より酸化剤に対する分解能の低い活性炭により処理する第1の活性炭処理工程と、前記第1の活性炭処理工程で処理した処理水を、イオン交換装置により処理するイオン交換処理工程と、前記イオン交換処理工程で処理された処理水を、前記高性能活性炭で処理する第2の活性炭処理工程とを含む排水処理方法が記載されている。
【0007】
特許文献5には、洗浄装置において使用される界面活性剤を含んだ被処理水中の前記界面活性剤を、アニオン交換体、又は、カチオン交換体により吸着して除去処理する界面活性剤吸着処理工程と、該界面活性剤吸着処理工程で処理された前記被処理水を、前記洗浄装置にて使用する水再利用工程とを含む、洗浄装置における水再利用方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−181472号公報
【特許文献2】特開2007−125481号公報
【特許文献3】特開平7−195091号公報
【特許文献4】特開2003−245659号公報
【特許文献5】特開2008−154656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物を含む水に含有される当該有機化合物をフェントン反応で処理する水処理において、処理水の全有機炭素(TOC)が低減され、処理水の濁りが減少する水処理装置および水処理方法である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物を含む水を処理対象とし、前記水のフェントン処理を行うフェントン処理手段と、前記フェントン処理を行ったフェントン処理水を、イオン交換性材料を用いて処理するイオン交換処理手段と、を有する水処理装置である。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記イオン交換処理手段において、前記イオン交換性材料を含む粒状物質を用いる、請求項1に記載の水処理装置である。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記イオン交換性材料を用いて処理する際のフェントン処理水のpHが7±3である、請求項1または2に記載の水処理装置である。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記イオン交換性材料を用いて処理されたイオン交換処理水を、活性炭を用いて処理する活性炭処理手段を有し、前記活性炭を用いて処理する際のイオン交換処理水のpHが5±2.5である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水処理装置である。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記イオン交換性材料が、ゼオライトおよび珪酸アルミニウムのうち少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水処理装置である。
【0015】
請求項6に係る発明は、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物を含む水を処理対象とし、前記水のフェントン処理を行うフェントン処理工程と、前記フェントン処理を行ったフェントン処理水を、イオン交換性材料を用いて処理するイオン交換処理工程と、を含む水処理方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1によると、イオン交換性材料を用いて処理するイオン交換処理手段を有さない場合に比較して、処理水の全有機炭素(TOC)が低減され、処理水の濁りが減少する。
【0017】
本発明の請求項2によると、イオン交換処理手段において、イオン交換性材料を含む粒状物質を用いない場合に比較して、処理水の全有機炭素(TOC)が低減され、処理水の濁りが減少する。
【0018】
本発明の請求項3によると、イオン交換性材料を用いて処理する際のフェントン処理水のpHが7±3ではない場合に比較して、処理水の全有機炭素(TOC)が低減され、処理水の濁りが減少する。
【0019】
本発明の請求項4によると、活性炭を用いて処理する際のイオン交換処理水のpHが5±2.5ではない場合に比較して、処理水の全有機炭素(TOC)が低減され、処理水の濁りが減少する。
【0020】
本発明の請求項5によると、イオン交換性材料が、ゼオライトおよび珪酸アルミニウムのうち少なくとも1つではない場合に比較して、処理水の全有機炭素(TOC)が低減され、処理水の濁りが減少する。
【0021】
本発明の請求項6によると、イオン交換性材料を用いて処理するイオン交換処理工程を含まない場合に比較して、処理水の全有機炭素(TOC)が低減され、処理水の濁りが減少する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0024】
キレート剤を含む水を処理対象とするフェントン反応では、キレート剤の酸化分解反応が起こり、一部は有機酸等のイオン性化合物となって水中に残留することがある。この有機酸等のイオン性化合物は、凝集沈殿処理、生物分解処理、活性炭処理等を行っても除去できない場合があり、処理水の全有機炭素(TOC)が低減されず、金属等と結合して難溶塩となって処理水に濁りが生じることがある。本発明者らは、フェントン処理を行ったフェントン処理水を、イオン交換性材料を用いて処理することにより、処理水の全有機炭素(TOC)が低減され、処理水の濁りが減少することを見出した。また、そのようにイオン交換性材料を用いて処理されたイオン交換処理水を、活性炭を用いて処理することにより、フェントン処理水を活性炭処理する場合に比べて、活性炭の使用量が低減される。
【0025】
図1には本実施形態に係る水処理を行うための水処理装置の一例の概略構成を示す。本実施形態に係る水処理装置1は、フェントン処理手段としてのフェントン処理装置10と、凝集処理手段としての凝集処理装置12と、生物処理手段としての生物処理装置14と、イオン交換処理手段としてのイオン交換処理装置16と、活性炭処理手段としての活性炭処理装置18とを備える。凝集処理装置は、例えば、無機系凝集剤添加槽、高分子凝集剤添加槽および沈殿槽等を備える。水処理装置1において、凝集処理装置12、生物処理装置14、活性炭処理装置18のうち少なくとも1つは含まれなくてもよい。
【0026】
水処理装置1において、フェントン処理装置10、凝集処理装置12、生物処理装置14、イオン交換処理装置16、活性炭処理装置18の入口と出口とがそれぞれ直列に配管等を介して接続されている。
【0027】
本実施形態に係る水処理装置の動作および水処理方法を、図1を参照して説明する。
【0028】
キレート剤を含む原水は、原水槽等から原水配管等を通してフェントン処理装置10へ送液される。キレート剤を含む原水に対して、まず鉄イオンを触媒としてフェントン処理が行われる(フェントン処理工程)。
【0029】
キレート剤としては、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物であればよく、特に制限はないが、例えば、金属イオンと配位結合を形成する酸基を2つ以上6つ以下有する有機化合物が挙げられる。酸基としては、カルボキシル基(−COOH基)、スルホ基(−SO3H)、ホスホ基(−P(=O)(OH)2)等が挙げられる。このようなキレート剤としては、例えば、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸(TTHA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸(HIDA)、ジカルボキシメチルグルタル酸テトラナトリウム塩(GLDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、ヒドロキシエチルエチレンジアミンテトラ酢酸(HEDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、L−グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸(HIDS)、L−アスパラギン酸−N,N−ジ酢酸(ASDA)、メチルグリシジンジ酢酸(MGDA)、ヘプトグルコン酸(GH−NA)、タウリン−N,N−ジ酢酸等の、2つ以上のカルボキシル基、好ましくは4つ以上のカルボキシル基を有するアミノ化合物である多価アミノカルボン酸化合物、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)等の多価ホスホン酸化合物等、あるいはそれらのナトリウム等のアルカリ金属塩、水和物等が挙げられる。キレート剤は水溶性であることが好ましい。これらのうち、キレート剤がエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(EDTA・4Na)である場合に、本実施形態に係る水処理装置および水処理方法が好適に適用される。
【0030】
フェントン処理は、過酸化水素と2価の鉄イオンとの反応により生成したヒドロキシラジカルにより、有機物を酸化分解する方法である。フェントン処理装置10において、原水に過酸化水素と2価の鉄塩が添加され、キレート剤等の有機化合物が酸化により分解される。
【0031】
フェントン反応液は酸等によりpH1.5以上4.0以下の酸性に調整されることが好ましい。また、酸化分解処理後、フェントン反応液中の残留過酸化水素を分解するために例えばpH7.5以上11.0以下の条件で重亜硫酸ソーダ等の還元剤を用いて還元処理されてもよい。
【0032】
2価の鉄塩としては、例えば、硫酸第一鉄、塩化第一鉄などが挙げられる。フェントン反応は、2価の鉄イオンが触媒として働いていると見られるが、硫酸第二鉄や塩化第二鉄などの3価の鉄イオンでもよい。この場合、系内で還元されて、反応が進むと見られる。
【0033】
過酸化水素の添加量は、例えば、キレート剤1質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の範囲である。鉄塩の添加量は、例えば、キレート剤1質量部に対して鉄量が0.01質量部以上1.0質量部以下の範囲である。
【0034】
本実施形態において、原水中のキレート剤の量が、0.001質量%以上1質量%以下の範囲である場合に、本実施形態に係る水処理装置および水処理方法が好適に適用される。原水中のキレート剤の量が0.001質量%未満の場合は、分解効率が悪い場合があり、1質量%を超えると、分解生成物が多量に発生して、分解が進まなくなる場合があるので、別の処理方法で前処理を行うのが望ましい。
【0035】
フェントン処理が行われたフェントン処理水は、必要に応じてpH調整された後、凝集処理装置12または生物処理装置14へ送液されて、凝集処理および生物処理のうち少なくとも1つが行われてもよいし、凝集処理および生物処理を経ずにイオン交換処理装置16へ送液されて、イオン交換処理が行われてもよい。通常は、フェントン処理水は、凝集処理装置12へ送液されて、凝集処理が行われる。この場合、フェントン処理水は、例えば、凝集処理装置12へ送液され、凝集剤が添加されてフロックを成長させ、凝集処理が行われる(凝集処理工程)。凝集処理装置12は、凝集処理を行うことができるものであればよく、特に制限はない。凝集処理装置12は、例えば、無機系凝集剤添加槽、高分子凝集剤添加槽、沈殿槽等を備える。凝集処理は、例えば、無機系凝集剤添加槽における、上記処理水への無機系凝集剤の添加および凝集反応を行い、凝集物を得る無機系凝集剤添加工程(凝集反応工程)と、高分子凝集剤添加槽における、凝集反応した凝集反応液への高分子凝集剤の添加および凝集物からフロックを形成するフロック形成工程と、沈殿槽における、凝集沈殿によりフロックを含む汚泥スラリと分離液とに分離する固液分離工程と、を含む。なお、凝集沈殿処理の代わりに加圧浮上処理等による固液分離処理を行ってもよい。また、無機系凝集剤添加槽と高分子凝集剤添加槽とを一体化した槽を使用して、1つの槽内で無機系凝集剤添加工程とフロック形成工程とが行われてもよい。
【0036】
この凝集処理工程において使用される凝集剤としては、一般の無機系凝集剤、有機系凝集剤を用いればよい。無機系凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム、ポリシリカ鉄凝集剤等が用いられ、安価であること、凝集性が良好であること等から、塩化第二鉄が用いられることが好ましい。また、汚泥の発生量を低減する点等から、シリカおよび鉄を含むポリシリカ鉄凝集剤が用いられてもよい。
【0037】
また、有機系凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸ソーダ系等のアニオン性高分子凝集剤;ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸エステル系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリアミン系、ポリジシアンジアミド系等のカチオン性高分子凝集剤;ポリアクリルアミド系、ポリエチレンオキサイド系等のノニオン性高分子凝集剤;アクリル酸ジメチルアミノエチル系等の両性高分子凝集剤を使用すればよい。凝集性が良好であること等から、ポリアクリルアミド系アニオン性高分子凝集剤を使用することがより好ましい。また、凝集剤として、上記無機系凝集剤および有機系凝集剤から選択される2つ以上の凝集剤を組み合わせて使用してもよく、無機系凝集剤として塩化第二鉄を使用し、さらにフロックを成長させるために有機系凝集剤としてポリアクリルアミド系アニオン性高分子凝集剤を併用することが好ましい。有機系凝集剤は無機系凝集剤添加工程において添加してもよい。
【0038】
凝集処理工程において凝集処理された凝集処理水は、生物処理装置14へ送液される。生物処理装置14において凝集処理水に対して生物処理が行われ、溶存有機物が除去される(生物処理工程)。生物処理では、例えば、生物処理槽で活性汚泥に生息するバクテリア等で溶存有機物が分解処理され、次の汚泥沈殿槽で自然沈降等により、活性汚泥と上澄み水に分離される。
【0039】
生物処理装置14において分離された上澄み水(生物処理水)は、イオン交換処理装置16へ送液される。イオン交換処理装置16において、イオン交換性材料を含む粒状物質を用いてイオン交換処理される(イオン交換処理工程)。活性炭処理の前に活性炭吸着において吸着されにくい有機酸等のイオン性化合物を事前に除去することで、処理水のTOCと活性炭使用量とが低減される。
【0040】
イオン交換性材料は、処理対象水に含まれる有機酸等のイオン性化合物が有するイオンを交換するものであればよく、特に制限はない。イオン交換性材料としては、例えば、ゼオライト、珪酸アルミニウム等のカチオン交換性物質が主に用いられるが、例えばアニオン交換性物質や、有機酸のMg2+、Ca2+等の難溶性カチオンをH+等の易溶性カチオンに交換するカチオン交換性物質が好ましく用いられる。使用するpHの条件が広い等の汎用性等の点からゼオライトおよび珪酸アルミニウムのうち少なくとも1つであることが好ましい。イオン交換性材料は、再生利用してもよい。イオン交換性材料は、例えば、粒状である。粒状のイオン交換性材料の平均粒径は、顕微鏡等による目視観察により求められ、例えば、0.5mm以上2mm未満である。
【0041】
イオン交換処理装置16において、例えば、イオン交換性材料を含む粒状物質を用いてイオン交換処理される。粒状物質としては、砂、ガラスビーズ等が挙げられる。粒状物質の平均粒径は、顕微鏡等による目視観察により求められ、例えば、0.5mm以上2.5mm未満である。粒状物質として砂を用いて、既存の砂ろ過装置等を利用してもよい。
【0042】
イオン交換性材料を含む粒状物質は、例えば、イオン交換性材料と粒状物質とを混合することにより得られる。
【0043】
イオン交換処理装置16において、イオン交換処理は、例えば、イオン交換性材料を含む粒状物質を充填したろ過塔に生物処理水等の処理対象水を通過させる方法等により行えばよい。
【0044】
イオン交換処理の前に、生物処理水等の処理対象水のpHを7±3に調整することが好ましく、7±2に調整することがより好ましい。pHを7±3に調整することにより、有機酸等のイオン性化合物が解離型の状態でイオン交換され、除去されやすくなる。pHの調整方法は、特に制限はなく、イオン交換処理装置16の前段側にpH調整槽等を設けて行ってもよいし、生物処理装置14等とイオン交換処理装置16とを接続する配管等へのライン注入によって行ってもよい。pHの調整は、酸またはアルカリの添加により行えばよい。
【0045】
イオン交換処理装置16においてイオン交換処理されたイオン交換処理水は、活性炭処理装置18へ送液される。活性炭処理装置18においてイオン交換処理水に対して活性炭吸着処理が行われ、活性炭によりイオン交換処理水に含まれるCOD成分が主に吸着除去される(活性炭処理工程)。
【0046】
活性炭処理の前に、イオン交換処理水のpHを5±2.5に調整することが好ましく、5±1に調整することがより好ましい。pHを5±2.5に調整することにより、イオン交換されたイオン性化合物が、活性炭により吸着除去されやすくなる。pHの調整方法は、特に制限はなく、活性炭処理装置18の前段側にpH調整槽等を設けて行ってもよいし、イオン交換処理装置16と活性炭処理装置18とを接続する配管等へのライン注入によって行ってもよい。pHの調整は、酸またはアルカリの添加により行えばよい。
【0047】
活性炭処理装置18としては、活性炭による吸着処理を行うものであればよく、特に制限はないが、例えば、多段流動床式活性炭吸着装置、固定床式活性炭吸着装置等を用いればよいが、運転管理および吸着効率等の点から多段流動床式活性炭吸着装置が好ましい。
【0048】
用いる活性炭としては特に制限はないが、石炭系、ヤシガラ系等の粉末活性炭、粒状活性炭等を用いればよい。
【0049】
活性炭処理工程において活性炭処理された処理水は、再利用あるいは河川等に放流される。必要に応じて、活性炭処理の後に、砂ろ過処理等が行われてもよい。
【0050】
一方、沈殿槽において分離液と分離された汚泥スラリは、ポンプ等にて例えば汚泥濃縮装置等に送液される。汚泥濃縮装置において汚泥スラリは水分である汚泥分離液と固形分とに分離される(分離工程)。濃縮後の固形分は、例えば脱水装置で脱水処理された(脱水処理工程)後、産業廃棄物の汚泥として処理される。なお、汚泥濃縮装置および脱水装置で発生した濾過液である汚泥分離液は、新たな原水と混合された後、上述の水処理方法で処理されてもよい。
【0051】
本実施形態に係る水処理装置および水処理方法により、処理水の全有機炭素(TOC)が低減され、処理水の濁りが減少する。また、イオン交換処理水を、活性炭を用いて処理することにより、フェントン処理水を活性炭処理する場合に比べて、活性炭の使用量が低減される。
【0052】
本発明の実施の形態に係る水処理装置および水処理方法は、キレート剤を含む水を処理対象とするが、キレート剤を使用する静電荷像現像用トナーの製造工程から排出される水等の処理に適用される。例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶解懸濁法などの各種化学的トナー製造方法による製造工程から排出される水の処理により好ましく適用される。乳化重合法では、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させて形成された樹脂分散液と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を水系溶媒中で撹拌、混合しながら、凝集、加熱融合させ、所定の粒径、粒度分布、形状、構造を有する着色樹脂粒子であるトナー粒子を作製する。乳化重合法は、トナーの原材料となる樹脂粒子の製造工程と、着色剤分散液、離型剤分散液等の分散液の製造工程と、現像用トナーの製造工程とに大きく分けられる。以下に、それぞれについて例を挙げて説明する。
【0053】
<静電荷像現像用トナー製造工程>
(樹脂粒子の製造工程)
樹脂粒子を生成するには、通常、重合性単量体と界面活性剤とを水に加え、撹拌してエマルションとする。重合性単量体エマルションが生成したら、該エマルションの好ましくは25質量%以下(すなわち、少量のエマルション)と、遊離基開始剤とを、水相に加えて混合し、所望の反応温度で種重合を開始する。種粒子の生成後、この種粒子含有組成物にさらに残りのエマルションを追加し、所定の温度で、所定の時間、重合を続けて重合を完了し、樹脂粒子(エマルション分散液)を生成させる。この樹脂粒子の製造工程から、製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生した、界面活性剤、樹脂粒子等の固形分を含有するエマルション分散液、界面活性剤水溶液等が排出される。樹脂粒子が生成したら、着色剤分散液、離型剤分散液等とともに凝集させて凝集体粒子とし、次にこれを融合させてトナー粒子とする。
【0054】
前記重合性単量体の種類としては、遊離基開始剤と反応しうるものであれば特に制限はない。重合性単量体の具体例としては、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類等が挙げられ、これらの重合性単量体は重合されて、単独重合体あるいは共重合体とされる。
【0055】
また、自己乳化性を持つポリエステル類、ポリウレタン類のような樹脂を界面活性剤とともに水系媒体中でせん断し、分散させてもよい。また、樹脂粒子として、アンモニア成分を含むものも用いられる。あるいは転相乳化法で樹脂粒子分散液を作製してもよい。転相乳化法は、ポリエステルなどの樹脂を有機溶媒に溶解させ、必要に応じて中和剤や分散安定剤を添加して、撹拌下にて、水系溶媒を滴下して、乳化粒子を得た後、樹脂分散液中の溶媒を除去して、乳化液を得る方法である。
【0056】
樹脂粒子の製造に使用される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤または非イオン系界面活性剤を使用すればよく、一般的にはアニオン系界面活性剤が、分散力が強く、樹脂粒子の分散に優れているため、好ましく用いられる。非イオン系界面活性剤は、前記アニオン系界面活性剤またはカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0057】
遊離基開始剤としては、特に制限はない。具体的には、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。
【0058】
本実施形態において、樹脂粒子の大きさは、レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上1μm以下程度である。
【0059】
(着色剤分散液、離型剤分散液の製造工程)
着色剤分散液は、着色剤、界面活性剤等を、水相中で混合し、分散処理をすることによって得られる。同様にして、離型剤分散液は、離型剤、界面活性剤等を、水相中で混合し、分散処理をすることによって得られる。この着色剤分散液、離型剤分散液の製造工程から、製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生した、界面活性剤、着色剤等の固形分を含有する着色剤分散液や、界面活性剤、離型剤等の固形分を含有する離型剤分散液、界面活性剤水溶液等が排出される。
【0060】
着色剤としては、例えばカーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカライトグリーンオキサレート、などの種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料などが挙げられる。これらの着色剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
また、着色剤分散液中の着色剤の大きさは、例えば、上記レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上0.5μm以下程度である。
【0062】
また離型剤として働くワックスの種類としては特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス類;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャトロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス類;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルワックス類;などが挙げられる。
【0063】
また、離型剤分散液中の離型剤の大きさは、例えば、上記レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上0.5μm以下程度である。
【0064】
界面活性剤としては、上記樹脂粒子の製造に使用される界面活性剤と同様のものが挙げられる。
【0065】
(トナーの製造工程)
上記調製法により得られた樹脂粒子は、次のような方法でトナーの調製に用いられる。上記調製法により得られた樹脂粒子と、着色剤分散液と、離型剤分散液と、必要に応じて凝集剤と、必要に応じて帯電制御剤と、および必要に応じて他の添加剤とを混合し、得られた混合物を樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)近辺の温度、好ましくは、樹脂粒子のTg±10℃で、凝集体を生成するのに効果的な時間、例えば1時間以上8時間以下加熱して、トナー大の凝集体を生成する。次に、この凝集体懸濁液を、樹脂粒子のTgまたはそれより高い温度、好ましくは樹脂粒子のTg+40℃、例えば約60℃以上約120℃以下に加熱して合体または融合させてトナー粒子を造粒し、このトナー粒子をろ過などの手段で母液から分離して、イオン交換水などで洗浄(洗浄工程)した後、乾燥する。
【0066】
樹脂粒子は、通常トナーの結着樹脂として用いられ、トナーの固形分に対して60質量%以上98質量%以下程度トナー内に存在する。
【0067】
着色剤は、通常トナー中に、着色に効果的な量、例えばトナーの固形分に対して1質量%以上25質量%以下程度、好ましくは3質量%以上15質量%以下程度存在する。
【0068】
離型剤として働くワックス類の好ましい量としては、トナーの固形分に対して、5質量%以上20質量%以下程度である。
【0069】
必要に応じて使用される凝集剤は、融合に効果的な量、例えばトナーの固形分に対して0.01質量%以上10質量%以下程度を用いればよい。使用する凝集剤としては、一価以上の電荷を有する化合物が好ましく、その化合物の具体例としては、前述のアニオン系界面活性剤類;塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等の酸類;塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム等の塩類;等が挙げられるが、これらに限るものではない。好ましい凝集剤としては、硝酸等の窒素成分を有するものが挙げられる。
【0070】
また、凝集体を生成する凝集工程等において、キレート剤が用いられることがある。
【0071】
帯電制御剤は、帯電させるのに効果的な量、例えばトナーの固形分に対して0.1質量%以上5質量%以下で使用してもよい。適当な帯電制御剤としては、アルキルピリジニウムハロゲン化物類、重硫酸塩類、シリカ等の帯電制御剤類、アルミニウム錯体のような陰帯電制御剤等が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0072】
その他必要に応じて添加剤として、無機粒子等を湿式添加してもよい。湿式添加する無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど、通常トナー表面の外添剤として使用される全てのものを、イオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基等で水に分散して、シリカ等の無機粒子分散液として湿式添加してもよい。
【0073】
本実施形態において使用される無機粒子の分散液中の大きさは、上記レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、4nm以上150nm以下程度である。
【0074】
以上のような樹脂粒子の製造工程、着色剤分散液の製造工程、離型剤分散液の製造工程、トナー製造工程等の製造工程(トナーの洗浄工程を含む)から、製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生した、界面活性剤、着色剤、離型剤、無機粒子、トナー等の固形分を含有する界面活性剤水溶液、エマルション分散液、着色剤分散液、離型剤分散液、無機粒子分散液、トナー分散液、装置洗浄水等の界面活性剤含有液が排出される。また、凝集体を生成する凝集工程等において、キレート剤を用いた場合に、この製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生した、キレート剤含有溶液が発生することがある。これらの原水は通常、原水槽に集められ、上記水処理装置および水処理方法による処理が施される。
【実施例】
【0075】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
(ポリエステル樹脂分散液の調製)
転相乳化法により、ポリエステル樹脂分散液を調製した。ポリエステル樹脂の精製品を100質量部、メチルエチルケトン50質量部および2−プロピルアルコール20質量部を混合し、スリーワンモータで撹拌させながら、樹脂を溶解させた後、10%アンモニア水溶液を5質量部加えた。さらに、イオン交換水350質量部を徐々に加えて、転相乳化を行った後、脱溶媒を行った。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度を30質量%に調整し、ポリエステル樹脂分散液を得た。
【0077】
(シアン顔料分散液の調製)
シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3、銅フタロシアニン、大日精化社製)100質量部、アニオン界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬社製)5質量部およびイオン交換水450質量部を混合し、高圧衝撃式分散機アルチマイザ(HJP30006、スギノマシン社製)を用いて、圧力250mPaで1時間分散させて、シアン顔料分散液)を得た。
【0078】
(ブラック顔料分散液の調製)
黒顔料カーボンブラック(R660R、キャボット社製)100質量部、アニオン界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬社製)7質量部およびイオン交換水650質量部を混合し、高圧衝撃式分散機アルチマイザ(HJP30006、スギノマシン社製)を用いて、圧力250mPaで1時間分散させて、ブラック顔料分散液を得た。
【0079】
(離型剤分散液の調製)
パラフィンワックス(HNP−9、日本精鑞社製)60質量部、アニオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業社製)6質量部およびイオン交換水200質量部を110℃で加熱溶融させた後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社製)で分散処理を行い、離型剤分散液を得た。
【0080】
(トナー作製と処理対象水A)
ポリエステル樹脂分散液100質量部、シアン顔料分散液10質量部、離型剤分散液15質量部と水150質量部とを丸型ステンレス製容器に加えて混合した後、凝集剤として、ポリ塩化アルミニウムの10質量%硝酸水溶液を0.75質量部加えた後、44℃まで昇温して、コア粒子を形成させた。その後、シェル層を形成させるためにポリエステル樹脂分散液50質量部とエチレンジアミン四酢酸(EDTA)2.5質量部とを加えて、コア粒子表面にシェル粒子を被覆させた後、さらに粒子を合一させるために90℃まで昇温した。90℃に2時間保持後、ろ過し、水により洗浄、乾燥して、体積平均粒径6.1μmのトナー粒子を得た。このときの洗浄ろ液を処理対象水Aとした。液体クロマトグラフにより測定したところ、処理対象水A中のEDTAの含有量は720ppmであった。
【0081】
(トナー作製と処理対象水B)
ポリエステル樹脂分散液100質量部、ブラック顔料分散液8質量部、離型剤分散液12質量部と水150質量部とを丸型ステンレス製容器に加えて混合した後、凝集剤として、ポリ塩化アルミニウムの10質量%硝酸水溶液を0.75質量部加えた後、45℃まで昇温して、コア粒子を形成させた。その後、シェル層を形成させるためにポリエステル樹脂分散液50質量部と3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸(HIDS)2質量部とを加えて、コア粒子表面にシェル粒子を被覆させた後、さらに粒子を合一させるために90℃まで昇温した。90℃に2時間保持後、ろ過し、水により洗浄、乾燥して、体積平均粒径6.1μmのトナー粒子を得た。このときの洗浄ろ液を処理対象水Bとした。処理対象水B中のHIDSの含有量は580ppmであった。
【0082】
<実施例1>
処理対象水AのpHを2.5に調整した後、フェントン反応槽へ送液し、硫酸第一鉄をFeとして(以下同じ)600mg/L、過酸化水素水を過酸化水素として(以下同じ)6,000mg/Lとなるように加えて、滞留時間30分にて、撹拌しながらフェントン反応を行った。フェントン処理水について、凝集処理、生物処理を行った後、イオン交換性材料としてゼオライト(新東北化学工業社製、ゼオフィル1424#)を400質量部と、砂を600質量部とを混合したものをろ材として充填したろ過塔に通液した。イオン交換処理における生物処理水のpHを7.0とした。その後、イオン交換処理水について、pH5、25℃の条件で活性炭処理を行った。処理水について、下記の方法でEDTAの残存量および燃焼酸化方式により全炭素量(TC)を測定した。目視による処理水の濁りを以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:純水に比較して、濁りが認識されない
○:純水よりもわずかに濁りが認識される
△:純水に対して濁りが認識されるが許容できる範囲である
×:濁りが許容できない
【0083】
[EDTAの残存量測定方法]
処理水100gをpH10に調整し、BT液を加え撹拌する。これに塩化カルシウム0.01モル/L水溶液を滴下し、色が変化する点から滴下量を求め、相当するEDTA量を計算する。
【0084】
<実施例2>
イオン交換処理における生物処理水のpHを9.7とした以外は、実施例1と同様にして処理対象水Aの処理を行った。結果を表1に示す。
【0085】
<実施例3>
イオン交換処理における生物処理水のpHを4.1とした以外は、実施例1と同様にして処理対象水Aの処理を行った。結果を表1に示す。
【0086】
<実施例4>
イオン交換処理における生物処理水のpHを10.2とした以外は、実施例1と同様にして処理対象水Aの処理を行った。結果を表1に示す。
【0087】
<実施例5>
イオン交換処理における生物処理水のpHを3.8とした以外は、実施例1と同様にして処理対象水Aの処理を行った。結果を表1に示す。
【0088】
<実施例6>
活性炭処理におけるイオン交換処理水のpHを7.4とした以外は、実施例1と同様にして処理対象水Aの処理を行った。結果を表1に示す。
【0089】
<実施例7>
活性炭処理におけるイオン交換処理水のpHを2.6とした以外は、実施例1と同様にして処理対象水Aの処理を行った。結果を表1に示す。
【0090】
<実施例8>
活性炭処理におけるイオン交換処理水のpHを7.7とした以外は、実施例1と同様にして処理対象水Aの処理を行った。結果を表1に示す。
【0091】
<実施例9>
活性炭処理におけるイオン交換処理水のpHを2.3とした以外は、実施例1と同様にして処理対象水Aの処理を行った。結果を表1に示す。
【0092】
<実施例10>
イオン交換性材料として珪酸アルミニウム(和光純薬社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして処理対象水Aの処理を行った。結果を表1に示す。
【0093】
<実施例11>
凝集処理、生物処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして処理対象水Aの処理を行った。結果を表1に示す。
【0094】
<実施例12>
実施例1と同様にして、処理対象水Bの処理を行った。結果を表1に示す。
【0095】
<比較例1>
ろ過塔におけるろ材として砂を1000質量部用いた以外は、実施例1と同様にして処理対象水Aの処理を行った。結果を表1に示す。
【0096】
<比較例2>
フェントン処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして処理対象水Aの処理を行った。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
実施例1〜12のように、キレート剤を含む水のフェントン処理水について、イオン交換性材料を用いて処理するイオン交換処理を行うことにより、処理水の全有機炭素(TOC)が低減され、処理水の濁りが減少した。
【符号の説明】
【0099】
1 水処理装置、10 フェントン処理装置、12 凝集処理装置、14 生物処理装置、16 イオン交換処理装置、18 活性炭処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンと配位結合を形成する有機化合物を含む水を処理対象とし、
前記水のフェントン処理を行うフェントン処理手段と、
前記フェントン処理を行ったフェントン処理水を、イオン交換性材料を用いて処理するイオン交換処理手段と、
を有することを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記イオン交換処理手段において、前記イオン交換性材料を含む粒状物質を用いることを特徴とする、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記イオン交換性材料を用いて処理する際のフェントン処理水のpHが7±3であることを特徴とする、請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記イオン交換性材料を用いて処理されたイオン交換処理水を、活性炭を用いて処理する活性炭処理手段を有し、
前記活性炭を用いて処理する際のイオン交換処理水のpHが5±2.5であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記イオン交換性材料が、ゼオライトおよび珪酸アルミニウムのうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項6】
金属イオンと配位結合を形成する有機化合物を含む水を処理対象とし、
前記水のフェントン処理を行うフェントン処理工程と、
前記フェントン処理を行ったフェントン処理水を、イオン交換性材料を用いて処理するイオン交換処理工程と、
を含むことを特徴とする水処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−255335(P2011−255335A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133090(P2010−133090)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】