水処理装置および水処理装置濾材層の洗浄方法
【課題】処理水量(濾過水量)に対する洗浄水量の比率を減少させることによって水処理効率を向上させるとともに、コンパクトで簡素化された機構の水処理装置とその洗浄方法を提供する。
【解決手段】 原水混流ジェットノズル(7)と、原水混流ジェットノズルの下方に配置された上層(2)と下層(3)の2層からなり、上層は下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層(4)を収容する濾過槽(5)と、濾過水を取出すとともに逆洗時には濾材層に逆洗水を供給する集配水管(13)と、動力源に接続された振動素子(9)およびこの振動素子(9)の振動が伝達されるように上層(2)に埋設される振動拡張素子(10)を有し濾材の各粒を振動させる濾材振動手段と、濾材層の上方に設けられた排水トラフ(12)とを備えることを特徴とする水処理装置。
【解決手段】 原水混流ジェットノズル(7)と、原水混流ジェットノズルの下方に配置された上層(2)と下層(3)の2層からなり、上層は下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層(4)を収容する濾過槽(5)と、濾過水を取出すとともに逆洗時には濾材層に逆洗水を供給する集配水管(13)と、動力源に接続された振動素子(9)およびこの振動素子(9)の振動が伝達されるように上層(2)に埋設される振動拡張素子(10)を有し濾材の各粒を振動させる濾材振動手段と、濾材層の上方に設けられた排水トラフ(12)とを備えることを特徴とする水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置に関し、特に地下水等の中の鉄、マンガンその他の溶解性成分を、酸化剤や凝集剤等の化学品を使用することなく、簡単で小型の装置で酸化させ、不溶化することにより処理することができる水処理装置およびその濾材層の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水は、水道水の原水として、また食品工業、清涼飲料、醸造、公衆浴場、染色業など水を大量に必要とする産業で利用されているが、現在地下水に含まれる鉄、マンガン成分が大きな問題となっている。鉄やマンガンは人体にとって必要な成分であるが、一定量を超えると水に金属味を与えたり、赤水や黒水の原因となり、飲用に不適となるばかりでなく、これらの産業において様々な問題が生じる。また、建築基礎工事において基礎工事前の地下水抜き取り工事は必要不可欠な工程であるが、地下水に大量の鉄、マンガンが含まれている場合は、そのまま下水道に放流することは法令で禁止されており、地下水中の鉄、マンガンを除去してから放流しなければならないという問題がある。
【0003】
現在もっとも普及している除鉄、除マンガン装置は、原水に次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤やポリ塩化アルミニウム(PAC)等の凝集剤を添加し、水中に溶け込んでいる鉄、マンガンを酸化させて不溶性の酸化鉄、酸化マンガンとし、これを濾過砂により濾過して取り除くものである。
【0004】
しかし、この酸化剤や凝集剤を注入する方式の水処理装置においては、比較的に多量の酸化剤、凝集剤を消費するのでこれらの購入コストが大きい。また酸化剤として使用される次亜塩素酸が鉄、マンガンを酸化させた後も処理後の浄水の中に残留するために、発癌物質であるトリハロメタンを生成し、その対策のためさらに水を活性炭層を通して処理しなければならず不経済である。また、経済的考慮から活性炭層の設置を見送るとすれば、過剰な酸化剤の注入によるトリハロメタンの発生を防止するため濾過後の水を耐えず分析して監視し、状況に応じて酸化剤の注入量を調整する必要があり、薬品購入コストに加えて維持管理費が嵩むという欠点がある。また、この薬品注入方式による水処理装置は、曝気槽、凝集槽、沈殿槽、砂濾過塔、除鉄、除マンガン塔および薬液タンクからなり、システムは複雑であり装置全体は大規模化して広大な設置スペースを必要とするため、市街地等設置スペースが限られた環境においては装置を設置することができない、という問題点がある。さらに、この薬品注入方式による水処理装置において使用した濾過砂は不純物の堆積による目詰まりのため時々取り替える必要があるが、その場合砂が薬品を含有しているため産業廃棄物として処理しなければならず、その放棄場所も制限される等の不便がある。
【0005】
上記従来の薬品注入方式による水処理装置の欠点を除去し、地下水等の中の鉄、マンガンその他の溶解性成分を、酸化剤や凝集剤等の薬品を使用することなく、簡単で小型の装置で酸化させ不溶化することにより処理することができる水処理装置を提供することを目的として、特許文献1記載の水処理装置が提案されている。この水処理装置によれば、ジェットノズルにより原水をジェット水流とする一方ジェットノズル内に開口する空気導入管または気体導入管からジェットノズル内に空気を導入することにより、多数の気泡を含むジェット水流がジェットノズルの原水噴出口からその下方に配置された濾材層上の水面に叩きつけられ、水中および濾材表面において激しいエアレーションが起こることにより、水中の鉄、マンガン等の溶解性成分が酸化されて不溶性成分となり、濾材層を形成する濾過砂等の濾材粒子の表面で捕捉され、したがって、酸化剤や凝集剤等の薬品を一切使用することなく、簡単で小型の装置で原水中の鉄、マンガンその他の溶解性成分を不溶化し濾過することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−126768公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1記載の水処理装置その他同型の水処理装置においては、皮膜化された鉄は濾材層の上層部と下層部とで洗浄過多と洗浄不足が常に同居した状態にある。また一口に鉄、マンガンを除去するといっても、後述のように、鉄は濾材層の上層部において酸化作用により皮膜化する一方マンガンは濾材層の下層部において生物処理により濾材粒子の表面で捕捉されるが、原水中の鉄の濃度がマンガンの濃度に比べて顕著に大きい場合は、濾材層の上層部で捕捉された鉄を除去するために大量の洗浄水で濾材層全体を洗浄すれば下層部においてマンガン処理のために棲息している生物も洗い流されてしまってその後のマンガンの生物処理に支障を来たすことになる。
【0008】
一方水処理装置はその単位時間当たりの濾過速度を高速化すればするほど、装置の規模とスペースを削減することができるので有利である。特に水処理装置を設置するスペースが設置場所の関係で限られており、大規模な装置を設置することが不可能な場合は、狭い敷地に設置された小規模な装置により必要な量の原水を濾過処理しなければならず、濾過速度を高める必要に迫られる。
【0009】
水処理装置の濾過速度を上げるために必要な一つの重要な条件は、水処理装置の洗浄を効率よく行うことである。
【0010】
水処理装置においては、一般に濾過作用を継続すると時間がたつにつれて濾材層特にその表面に水酸化鉄等の酸化物のフロックやその他の異物で覆われた時は濾材の濾過機能が減少するので、濾過処理を一時停止して濾材層の洗浄を行わなければならない。したがって濾材層の洗浄を効率よく行わなければ濾過処理の高速化は実現できない。
【0011】
上記特許文献1記載の水処理装置においては、原水送水管を濾材層の表面と平行な面上に往復動させ、原水送水管から噴出す多数の気泡を含むジェット水流により閉塞した濾材層を閉塞状態から開放して濾過機能を回復させるようにしている。また、この水処理装置は、濾過砂からなる1層の濾材層の底部に濾材層を支持する板状スクリーンからなる濾材層受が配置されており、濾材層受の下方には濾材層を逆洗浄するための逆洗管が配置されている。濾材層の上部特に表面が酸化物のフロックやその他の異物で覆われた時は濾過槽への原水供給を一時停止し、逆洗管から逆洗水を濾材槽受を介して濾材層全般にわたって下方から上方へ流すことにより濾材層上部を覆う異物を濾材層から剥離するとともに濾材層内に捕捉された鉄、マンガン成分を洗い流し、逆洗水排出口から系外に排出するように構成されている。
【0012】
この水処理装置の濾過速度は60m/日〜130m/日であるが、より高速で濾過処理を行う必要がある場合は、濾材層の洗浄もより頻繁に行わなければならず、このため濾材層の下層部の生物処理に対する負荷量も一層増大するので、この水処理装置では濾材層の洗浄効率に限界があり、これ以上の高速化は不可能である。
【0013】
また上記水処理装置を含め、従来の水処理装置は、濾材層の上記洗浄のため濾過水量の約10%〜15%の水を消費しなければならず、このため水処理の効率を大きく低下させている。
【0014】
また上記水処理装置は、濾材層の表面を洗浄するために原水送水管を濾材層の表面と平行な面上に往復動させる機構を備えているが、この機構は原水供給管を電動モータで往復動させなければならないので表面洗浄のために多大の動力を必要とするばかりでなく、往復動のための機構が複雑となり、さらに原水送水管の移動用レールの磨耗、原水送水管に水を供給するホースの損耗等部品のメンテナンスの手間と費用が嵩むという問題点がある。また直線状に配列された一連の原水送水管を同時に移動させるために濾過槽の形状は矩形で無ければならずこのため装置が大きくなり、装置の設置場所が狭い場合でも装置のコンパクト化が不可能であるという問題点もある。
【0015】
本発明は、上記従来の水処理装置の問題点にかんがみなされたものであって、従来の水処理装置より高速での濾過処理を可能とする新規な水処理装置の洗浄方法およびこの洗浄方法を適用することができる水処理装置を提供しようとするものである。
【0016】
さらに、本発明は、上記従来の水処理装置においては、原水送水管を往復動させることにより洗浄を行うので、原水送水管が通過する点以外の濾材層表面は洗浄が行われず、濾材層表面の全体にわたり必要な洗浄を完了するまでにかなりの時間を要し、高速処理には限界があるので、この点を改良しようとするものである。
【0017】
また、本発明は、濾過水量に対する洗浄水量の比率を減少させることによって水処理効率の率を向上させるとともに、多大の動力を必要とせず、コンパクトで簡素化された機構でメンテナンスも簡単な水処理装置とその洗浄方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記問題を解決するために鋭意研究と実験を重ねた結果、水処理装置によって捕捉されるべき鉄とマンガンの中で鉄はその大部分が濾材層の上層部に沈着し、マンガンは逆に大部分が濾材層の下層部に沈着する事実があるとともに、原水中の鉄とマンガンの濃度は一定ではなく、原水によっておおむね一定の濃度差があり、通常鉄の濃度はマンガンの濃度より大幅に高いことに着目し、これらの事実を洗浄に利用して、濾材振動手段により濾材層中の濾材を振動させながら濾材層を洗浄することにより濾材層上層部において鉄を除去する洗浄効果を顕著に改善することを見出し、本発明に到達した。また本発明者は、原水中の鉄は濾材層の部分洗浄により除去し、マンガンは濾材層の全体洗浄により除去することにより洗浄効果を顕著に改善し、これによって従来実現できなかった高速濾過を可能とするとともに洗浄水が節約できることを発見し、本発明に到達した。
【0019】
すなわち、上記目的を達成する本発明の第1の構成は、原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を備える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置され濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層に埋設される部分を有し該濾材層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備える水処理装置の該濾材層を洗浄する方法であって、該逆洗水供給管から逆洗水を流入させながら該濾材層の濾材を振動させるようにして該濾材層を洗浄することを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法である。
【0020】
本発明の第2の構成は、原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を備える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置された上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該上層に埋設される部分を有し該上層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備える水処理装置の該濾材層を洗浄する方法であって、該濾材層の洗浄を、主として該上層の洗浄を行う部分洗浄と該上層および該下層の双方を洗浄する全体洗浄のいずれかを選択して行い、該部分洗浄工程は、
(イ)原水の供給を一時停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を上向流として上層洗浄速度で流入させながら該上層の濾材を振動させることにより濾材を擦り合わせ濾材を閉塞させている水酸化鉄を濾材から剥離させて上向流により洗い流す上層洗浄工程
(ハ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備え、該全体洗浄工程は、
(イ)原水の供給を停止し、濾過処理を行うことにより濾過槽の水位を所定の水位まで下げる濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を該上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度よりも速い全体洗浄速度で流入させ該上層および該下層の濾材を攪拌しながら該濾材振動手段を作動させ、該上層および該下層の濾材を洗浄する洗浄工程
(ハ)該上層および下層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下の速度で上向流の供給を継続しながら該上層および下層の濾材を沈降させる静置工程
(ニ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層および下層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備えることを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法である。
【0021】
本発明の第3の構成は、第1または第2の構成に加え、濾過処理のための通常運転時の濾過槽の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき該部分洗浄工程を自動的に開始することを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法である。
【0022】
本発明の第4の構成は、第2の構成に加え、濾過処理のための通常運転時の濾過槽の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき該部分洗浄工程を行い、該部分洗浄工程後に濾過槽の抵抗値が所定値に達するまでの時間が所定の時間以下となった時に該全体洗浄工程を自動的に開始することを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法である。
【0023】
本発明の第5の構成は、原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を供える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置された濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層に埋設される部分を有し該濾材層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備えことを特徴とする水処理装置である。
【0024】
本発明の第6の構成は、第5の構成に加え、該濾材層中に溶存酸素を追加供給する手段をさらに備えることを特徴とする水処理装置である。
【0025】
本発明の第7の構成は、原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を供える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置された上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該上層に埋設される部分を有し該上層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備えることを特徴とする水処理装置である。
【0026】
本発明の第8の構成は、第7の構成に加え、該水処理装置は、濾過水取出し方向に見て該濾過水取出し管の下流側に該下層の濾材と同一材料からなる後段濾材層を収容する後段濾過槽を備え、該後段濾過槽は、該濾過水取出し管に連通し該後段該濾材層の上方に開口するする濾過水流出口と、該後段濾材層によって濾過された水を取り出すための濾過水取出し管と該後段濾材層に逆洗水を供給するための逆洗水供給管と、該後段濾材層の上方において該後段濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とをさらに備えることを特徴とする水処理装置である。
【0027】
本発明の第9の構成は、第5〜第8の構成のいずれかに加え、該濾過水取出し管および該逆洗水供給管は、該濾過槽の底部に水平方向に複数本並行に配置された集配水管からなり、各集配水管は外筒であるスクリーン筒とその内側中央に配置された内部多孔管からなり、該内部多孔管は長手方向に複数の集配水孔が両側に形成されていることを特徴とする水処理装置である。
【0028】
本発明の第10の構成は、第5〜第8の構成のいずれかに加え、該濾材振動手段は、動力源に接続された1または複数の振動素子と、濾材中に埋設されるようにして該振動素子に取り付けられ、該振動素子の振動を濾材層の濾材に伝達する振動拡張手段を備えることを特徴とする水処理装置である。
【0029】
本発明の第11の構成は、第10の構成に加え、該振動拡張手段は、該振動子に取り付けられる枠体と、該枠体に固定された複数の振動拡張素子を備え、該振動拡張素子は、それぞれ、濾材層の上下方向に延長して上端部において該枠体に固定された支持棒と、該濾材層の上下方向に所定の間隙を設けて相互に平行に配置されるようにして該支持棒に固定された複数の第1振動伝達板と、該第1振動伝達板と直交するようにしてかつ相互に平行に配置されるようにして該第1振動伝達板の該間隙において該支持棒に固定された複数の第2振動伝達板を備えることを特徴とする水処理装置である。
【0030】
本発明の第12の構成は、第11の構成に加え、隣り合う2つの該振動拡張素子によって平面視ほぼ正方形の濾材面が形成されるように該複数の振動拡張素子を配置したことを特徴とする水処理装置である。
【0031】
本発明のだい13の構成は、第11の構成に加え、隣り合う2つの該振動拡張素子によって平面視ほぼ長方形の濾材面が形成されるように該複数の振動拡張素子を配置したことを特徴とする水処理装置である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の第1の構成によれば、濾材層に埋設される部分を有し濾材層の濾材の各粒を振動させる振動手段により濾材層の濾材全体を強く振動することができる。したがって、この振動手段により濾材を振動している間は濾材層の濾材は継続的に絶え間なく擦れあうことにより洗浄され、洗浄ノズルの通過時のみ濾材が攪拌される洗浄ノズル往復動方式に比べて単位時間当たり洗浄能率を飛躍的に向上させることができ、これによって高速濾過を促進することができる。また洗浄ノズル往復動方式のように多大の動力と複雑な機構を必要としないので装置の製造コストを節約することができる上に濾過槽を平面視丸型に構成することができるので、コンパクトで簡素化された機構でメンテナンスも簡単な水処理装置を提供することができる。
【0033】
本発明の第2の構成によれば、濾材層を上層と下層の2層構造とし、上層は下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材を使用して部分洗浄、全体洗浄を実施することにより、上層で捕捉された濃度の高い鉄は、振動手段による濾材粒子の振動と比較的に緩やかな流速の上向流による洗浄の組み合わせによる部分洗浄により上層の洗浄を頻繁に行うことにより洗浄、除去される一方下層で捕捉された濃度が低いマンガンは上層の洗浄よりも少ない頻度で行う流速の早い上向流による全体洗浄で上層の鉄とともに洗浄、除去される。したがって、濃度が高く上層における蓄積量が多い鉄は頻繁な洗浄により充分に除去される一方濃度が低く下層における蓄積量が少ないマンガンは少ない頻度の全体洗浄により充分に除去され、頻繁な洗浄によって下層における生物の棲息が妨げられることがなく、上下濾材層全体としての洗浄効果を最高度に達成することができ、これによって必要とされる高速濾過を達成することができる。本発明によれば、特許文献1記載の水処理装置の濾過速度60m/日〜120m/日に比べて画期的な500m/日の濾過速度を挙げることが可能である。また、上層の鉄の除去のため水量の多い逆洗水での全体洗浄を頻繁に行う必要がなく、その結果全体としての洗浄水の使用量が節約され、従来の薬品注入方式の水処理装置において濾過水量の約10〜15%使用されていた洗浄水の量を本発明によれば濾過水量の約3〜5%に減少させることができる。
【0034】
また本発明によれば、洗浄の頻度が高い上層は比重が比較的に小さく粒径が比較的に大きい濾材で構成されているので、上層洗浄時に濾材が攪拌されて大きく上方に舞い上がり濾材の洗浄効果を高め、同一洗浄効果を収めるための洗浄水の使用量を最小限にとどめることができる。一方下層は比重が比較的に大きく粒径が比較的に小さい(目の細かい)濾材で構成されているので単位容量に対する比表面積が大きく、生物処理効果が高い。また全体洗浄の際には上層の濾材も下層の濾材もともに攪拌されて混合されるが、下層の濾材は上層の濾材よりも比重が大きく沈降速度が大きいので、上層の濾材が沈降する前に沈降して下層に静置され、その上に上層の濾材が沈降して静置され元の上層、下層の状態に復元することができる。このように洗浄効果の高い上層の濾材と生物処理効果の高い下層の濾材を組み合わせることにより鉄、マンガンのほか原水に含まれる濁質を充分に捕捉しながら、最高の洗浄効率を挙げることができる。また上層は粒径が比較的に大きい濾材で構成されているので、水流に対する抵抗が小さく、したがって高速濾過を促進することができる。
本発明の第3の構成によれば、濾過処理のための通常運転時の濾過槽の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき部分洗浄工程を自動的に開始するようにしたので、濾材層の上層において洗浄が必要な程度に目詰まりが生じたとき、自動的に部分洗浄工程が開始されるので、部分洗浄工程を予め決まった日程に従って行うよりも能率的に行うことができる。
【0035】
本発明の第4の構成によれば、全体洗浄工程を行う時期を部分洗浄工程後抵抗値が所定値となる時間が所定の時間以下となった時に自動的に行うので、濾過槽の抵抗値を計測するだけで自動的に全体洗浄工程を行うことができ、濾材層を常に理想的な状態に維持することができる。
【0036】
本発明の第5の構成によれば、上記第1の構成の効果を奏する水処理装置を提供することができる。
【0037】
本発明の第6の構成によれば、原水が高濃度のアンモニア性窒素を含有している場合、溶存酸素を追加供給する手段により濾材層中に溶存酸素を供給することにより、この溶存酸素によりアンモニア性窒素を酸化させ除去することができる。
【0038】
本発明の第7の構成によれば、上記第2の構成の効果を奏する水処理装置を提供することができる。
【0039】
本発明の第8の構成によれば、上記第3の構成の効果を奏する水処理装置を提供することができる。
【0040】
本発明の第9の構成によれば、スクリーン筒および内部多孔管からなる集配水管を濾過槽底部に埋設することにより、原水中のマンガン濃度が非常に高い場合でも、マンガンは集配水管のスクリーン筒の外周部に堆積するので、多孔管のみを取り外してスクリーン筒内側からスクリーンを直接洗浄することにより比較的に簡単な作業で濾過槽底部の清掃を完了することができる。
【0041】
本発明の第10の構成によれば、振動手段は動力源に接続された1または複数の振動素子と、濾材中に埋設されるようにして振動素子に取り付けられ、振動素子の振動を濾材に伝達する振動拡張手段を備えているので、動力源に接続される振動素子の数は少なくても、所望の振動を濾材層中の全濾材に伝達して濾材の各粒を振動させることができ、振動拡張手段を使用しないで動力源に接続された振動素子のみにより全濾材を振動させる場合に比べて電力等の動力を著しく節約することができ、水処理作業の省エネルギー化に貢献することができる。
【0042】
本発明の第11の構成によれば、振動拡張素子の複数の第1振動伝達板と複数の第2の振動伝達板は、それぞれ、上下方向に各振動伝達板の間に所定の間隙を設けてあるので、濾過工程中は被処理水はこの間隙を通って横方向に自由に流動することができ、偏流を生じることがなく、したがって、均一な濾過を達成することができる。
【0043】
本発明の12の構成によれば、隣り合う2つの振動拡張素子によって平面視ほば正方形の濾材面が形成されるように複数の振動拡張素子を配置することにより、隣り合う4個の振動拡張子によって正方形の濾材面を形成する場合に比べて正方形の面積を小さくすることができ、これによって、正方形の中の濾材中各振動伝達板からの距離が最も遠い位置の濾材の該振動伝達板からの距離を比較的に短くすることができる。
【0044】
本発明の第13の構成によれば、隣り合う2つの振動拡張素子によって平面視ほぼ長方形の濾材面が形成されるように複数の振動拡張素子を配置することにより、長方形の中の濾材中各振動伝達板からの距離が最も遠い位置の濾材の該振動伝達板からの距離を振動拡張素子の他の配置に比べて比較的に短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る水処理装置の1実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【図2】濾材振動手段の1実施形態を示す平面図である。
【図3】図1の実施形態において使用する振動拡張素子の1例を示す斜視図である。
【図4】同振動拡張素子の正面図である。
【図5】同振動拡張素子の拡大平面図である。
【図6】同振動拡張素子の配置状態の1例を示す平面図である。
【図7】同振動拡張素子の配置状態の他の例を示す平面図である。
【図8】同振動拡張素子の配置状態の他の例を示す平面図である。
【図9】同振動拡張素子の配置状態の他の例を示す平面図である。
【図10】本発明に係る水処理装置の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図11】本発明に係る水処理装置の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図12】集配水管の変更例を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図13】本発明に係る水処理装置の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図14】本発明に係る水処理装置の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図15】部分洗浄工程を一定時間経過ごとに行う場合の時間と濾過槽の抵抗値(差圧)Δpの関係を示すグラフである。
【図16】集配水管の配置状態を示す支持砂利層の断面平面図である。
【図17】振動拡張素子の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、上層と下層の2層構造からなる濾材層を有する水処理装置に限らず、1層構造の濾材層を有する水処理装置にも適用できるものであるが、以下の説明においては、好ましい実施形態として上層と下層の2層構造の濾材層を有する水処理装置に本発明を適用した場合を例にとって説明する。
【0047】
図1は本発明に係る水処理装置の1実施形態を模式的に示す概略図である。
図1において、水処理装置1は、主たる構成要素として、上層2および下層3からなる濾材層4を収容した濾過槽5、原水送水管6、原水混流ジェットノズル7、上層濾材振動手段8、排水トラフまたは排水口12、濾過水取出し管と逆洗水供給管を兼ねる集配水管13を備える。
【0048】
濾過槽5に濾過されるべき地下水を供給する鋼管等からなる原水送水管6は送水ポンプ(図示せず)に接続されており、この送水ポンプは、必要により受水槽(図示せず)を介して原水の水源から原水を供給され、所定の流速で原水送水管6に原水を供給する。
【0049】
原水送水管6は濾材層4の表面と平行な面上に延長するようにして濾過槽5の一端部の上方に配設されている。
【0050】
原水送水管6から垂直に分岐するようにして、1本ないし複数本(図示の実施形態においては2本)の原水混流ジェットノズル7が設けられている。各ジェットノズル7の上流側の端部7aは、内部が原水送水管6に連通するようにして原水送水管6に嵌め込まれており、下流側の端部には原水をジェット水流として噴出する原水噴出口7bが形成されている。原水混流ジェットノズル7の内径はたとえば3〜30mm程度が好適である。
【0051】
原水混流ジェットノズル7には、それと同数(図示の実施形態においては2本)の空気導入管15が設けられている。各空気導入管15の上流側の端部は大気に開放されるようにして原水混流ジェットノズル7から斜め上方に突出しており、下流側の端部は原水噴出口7bよりも上流の原水混流ジェットノズル7内に開口している。空気導入管15の内径はたとえば1〜10mm程度が好適である。空気導入管15の上端部は大気開放に限らず、純粋酸素が供給されるようにしてもよい。
【0052】
濾過槽5内において、濾材層5の上層2はその表面が原水混流ジェットノズル7の原水噴出口7bと所定の間隔をおいて原水混流ジェットノズル7の下方に配置されている。濾材層4の上層2に充填される濾材は下層3に充填され濾材よりも比重が小さく粒径が大きい材質のものであることが必要である。この条件を満たす上層の濾材としてはゼオライト等が好適であり、特にゼオライト(粒径約1.2mm)が好ましい。またこの条件を満たす下層の濾材として濾過砂(粒径約0.6mm)が好適である。濾過槽4はジェットノズルから供給されたジェット流として供給される原水中の酸化物フロックその他の異物を捕捉することにより原水を濾過する機能を果たすとともに鉄バクテリアその他の微生物が生息し原水中の鉄、マンガンを酸化して吸着する機能を果たすものである。オキシ水酸化鉄の自触媒作用により鉄は主として上層2の表面に皮膜化し(濾材層の表面から200mm程度の部分に最も多い)、マンガンは主として生物処理により下層3の濾過砂表面に皮膜化する(濾材層の表面から500〜800mm程度の部分に最も多い)。
【0053】
濾材層4を支持砂利層17により支持する。支持砂利層17は上層から順に小粒径層、中粒径層、大粒径層の複数層からなるように構成することが好ましいがこれに限るものではない。
【0054】
濾過槽5の支持砂利層17の中心部には集配水管13が水平方向に配置されている。本実施形態においては、集配水管13は濾材層4により濾過された水を取り出すための濾過水取出し管と濾材層4に逆洗水を供給するための逆洗水供給管を兼用している。集配水管13には図16に示すように複数本の支管14が集配水管13に連通するようにして枝分かれして水平方向に延長するように取り付けられている。なお、濾過水取出し管と逆洗水供給管は上記の例に限らず、別個の濾過水取出し管と逆洗水供給管を設けるようにしてもよい。
【0055】
上層2の表面よりも上方の濾過槽5には、逆洗時にオーバーフローした水を排水するための排水トラフ12が設けられている。逆洗時にオーバーフローした水を排水するには排水トラフ12に限らず、他の形状の排水口を使用してもよい。
図1の実施形態において、濾材振動手段8は、交流電源等の動力源に接続された1または複数の振動素子9(図示の実施形態では1個)と、濾材中に埋設されるようにして振動素子9に取り付けられ、振動素子9の振動を上層2の濾材に伝達する振動拡張手段を備える。振動拡張手段は、枠体40とこの枠体に固定された複数の振動拡張素子10からなる。
【0056】
振動素子9としては、たとえばコンクリートバイプレーターとして公知の棒状の振動素子を使用することができる。この振動素子9はケーブル47を介してコントローラ48に接続され、コントローラ48は交流電源に接続されている。
【0057】
振動拡張手段の枠体40は、複数の鋼棒を交差するように配置して各交点を溶接してなるネット上の形状のもので、上層2の表面から5cm〜10cm程度の間隔をおいて上層の表面と平行に配置されている。枠体の中央部には図2に示すように振動素子取付け板41が嵌め込まれて周囲の鋼棒に溶接されている。振動素子取付け板41の中央部に形成された取付け孔41aには振動素子9が取付け孔41aの内壁に密接するようにして嵌め込まれている。枠体40の各交点40aには複数の振動拡張素子10が取り付けられている。 各振動拡張素子10は、それぞれ、濾材層の上下方向に延長して上端部において枠体40に固定された鋼製の支持棒42と、濾材層の上下方向に所定の間隙を設けて相互に平行に配置されるようにして支持棒42に溶接固定された複数(図3の例では5枚)の横長の長方形をした鋼製の第1振動伝達板44と、第1振動伝達板44と直交するようにしてかつ相互に平行に配置されるようにして第1振動伝達板44の間隙において支持棒42に固定された複数(図3の例では5枚)の横長の長方形をした鋼製の第2振動伝達板46を備えている。
【0058】
図3〜図5に示す振動拡張素子10において、第1振動伝達板44および第2振動伝達板46は、それぞれ、1つの振動拡張素子10全体としての重量バランスをとるために、上から順に1段目、3段目および5段目の振動伝達板は支持棒42の一方側に溶接され、2段目および4段目の振動伝達板は支持棒42の反対側に溶接されている。
【0059】
振動拡張素子10の構造は図3〜図5に示すものに限らず、たとえば図17の平面図に示すように、第1振動伝達板44、第2振動伝達板46をそれぞれ2つの板部分に分割して支持棒42の両側に溶接するように形成してもよい。
【0060】
この濾材振動手段においては、動力源に接続された振動素子9をオンにして作動させると、振動素子9が振動し、この振動が枠体40を介して複数の振動拡張素子10の支持棒から第1振動伝達板および第2振動伝達板に伝わり、これらの振動伝達板の振動が上層2の濾材全体に伝播して濾材の各粒自体がそれぞれ振動する。
【0061】
本発明の上記実施形態によれば、振動手段は動力源に接続された1または複数の振動素子9と、濾材中に埋設されるようにして振動素子9に取り付けられ、振動素子9の振動を濾材に伝達する振動拡張手段を備えているので、動力源に接続される振動素子9の数は少なくても、所望の振動を濾材層中の全濾材に伝達して濾材の各粒を振動させることができ、振動拡張手段を使用しないで動力源に接続された振動素子のみにより全濾材を振動させる場合に比べて電力等の動力を著しく節約することができ、水処理作業の省エネルギー化に貢献することができる。
【0062】
したがって、本発明が適用される振動手段としては、上記構成に限らず、動力源に接続された棒状振動素子を複数本上下方向に延長するように濾材中に適宜間隔をおいて配置しても濾材を振動させる作用を得ることはできるが、上記実施形態の構成は省力化の点で有利であり、好ましい実施形態である。
【0063】
本発明の上記実施形態によれば、振動拡張素子10の複数の第1振動伝達板44と複数の第2振動伝達板46は、それぞれ、上下方向に各振動伝達板の間に所定の間隙を設けてあるので、濾過工程中は被処理水はこの間隙を通って横方向に自由に流動することができ、偏流を生じることがなく、したがって、均一な濾過を達成することができる。
【0064】
本発明の上記実施形態においては、図2の平面図およびその拡大図である図6の平面図に示すように、隣り合う2つの振動拡張素子10−1、10−2(図6)によって平面視ほば正方形の濾材面Sが形成されるように複数の振動拡張素子10が配置されている。この構成により、図7の例に示すように隣り合う4個の振動拡張子10−1、10−2、10−3、10−4によって正方形の濾材面Sを形成する場合に比べて正方形の面積を小さくすることができ、これによって、正方形Sの中の濾材中各振動伝達板44、46からの距離が最も遠い位置の濾材の該振動伝達板44、46からの距離を比較的に短くすることができる。
【0065】
振動拡張素子10の他の配置方法を図8の平面図に示す。この配置方法は、各振動拡張素子10を図8中1点鎖線によって示される位置(図7の位置と同じ)から支持棒42を回転軸として反時計方向に30度回転させた位置である。この構成によれば、隣り合う2つの振動拡張素子10−1、10−2によって平面視ほぼ長方形の濾材面Rが形成されることにより、長方形Rの中の濾材中各振動伝達板44、46からの距離が最も遠い位置の濾材の該振動伝達板からの距離を振動拡張素子の他の配置に比べて比較的に短くすることができる。
【0066】
図9は振動拡張素子の他の配置方法を示す平面図である。この配置方法は、各振動拡張素子10aを平面視で縦横それぞれ3個づつ配置することにより正方形を形成し、この正方形の中央に、この正方形の2つの対角線の方向に延長する振動拡張素子10aより大きい寸法の振動拡張素子10bを配置するものである。この構成により振動拡張素子10bとその周囲の各振動拡張素子10aとの間にほ2等辺3角形の濾材面Tが形成される。この方法によっても、濾材面Tの濾材中各振動伝達板44、46からの距離が最も遠い位置の濾材の該振動伝達板44、46からの距離を比較的に短くすることができる。
【0067】
なお、振動素子、振動拡張手段の構成は上記のものに限られるものではなく、濾材層の大きさ、濾材の構成、種類、粒径等に応じて種々の改変が可能である。また、振動拡張手段として枠体と複数の振動拡張素子を使用する場合でも、枠体の形状、振動拡張素子の振動伝達板の枚数、形状、上下方向のピッチ、各振動拡張素子間のピッチ等は適宜変更が可能である。また、上記実施形態においては、振動拡張手段の枠体および振動拡張素子としては鋼製のものを使用し、各構成要素は溶接により固定しているが、これらの構成要素を硬質プラスチックで作成し、接着剤で固定するようにしてもよい。
【0068】
振動素子としては、10Hz以上の振動数を濾材に伝えることができる振動素子を使用することが好ましい。特に振動数が40Hz〜500Hzの範囲内の振動素子は市販のものが容易に入手できるので好適である。ただし、超音波発生装置による振動は振動の到達距離が数mmと短いので、本発明の水処理装置における振動手段として使用するには不適である。
【0069】
次に図1の実施形態にかかる水処理装置の動作について説明する。
原水濾過時には、上層2の表面上の水の水深を所定の深さに維持しつつ送水ポンプから原水送水管6を介して原水混流ジェットノズル7に原水を供給し、ジェットノズル7における水の流速をたとえば1.5〜3リットル/分とすることにより原水をジェット水流とする一方ジェットノズル7内に開口する空気導入管15から原水混流ジェットノズル7内に空気がたとえば流速0.5〜1リットル/分で吸気され、これによってジェット水流が空気を巻き込み多数の小さい気泡とし、この多数の気泡を含む混流ジェット水流がジェットノズル7の原水噴出口7bから上層2の上の水中に放出されることにより、水中の溶存酸素は飽和状態に近くなっている。水中の鉄は溶存酸素と反応して濾材表面で水酸化鉄として捕捉される。こうして水中の鉄等の溶解性成分が酸化されて不溶性成分となり、鉄成分は主として上層2を形成するゼオライトの粒子の表面で捕捉され、マンガン成分は主として下層3を形成する濾過砂の粒子の表面で高濃度の溶存酸素により活性化されたバクテリアによりにより生物処理で捕捉される。これらの不溶性成分およびその他の異物が濾材層4により濾過された濾過水は濾過水取出し管として機能する集配水管13から外部に取出される。
【0070】
上記の濾過作用を継続すると、時間が経つにつれて上層2の表面に酸化物のフロックその他の異物が蓄積し、上層2の表面部はフロックその他の異物で覆われ目詰まりを起こして閉塞するために濾材層4はその濾過機能が減少する。上層表面部の目詰まりが生じると上層表面上の水位が徐々に高まるので、水位がある一定のレベルに達したら次の部分洗浄工程と全体洗浄工程のいずれかを選択して実施することにより濾材層4の洗浄を行う。
【0071】
部分洗浄工程
(1)原水の供給を一時止める濾過処理中断工程を行う。
【0072】
(2)逆洗時に逆洗水供給管として機能する集配水管13から逆洗水を上層洗浄速度(たとえば5〜30m/h)で流入させながら振動素子9をオンして作動させ、その振動を振動拡張素子10により上層2の濾材全体に伝播することによって上層2の濾材を振動させ濾材を擦り合わせることにより濾材表面を閉塞している水酸化鉄を濾材から剥離させ、逆洗水による上向流により洗い流す上層洗浄工程を行う。逆洗水を比較的低速の上層洗浄速度で供給することにより振動手段による濾材振動によって剥離されたスラッジを排水トラフへ排出する。
【0073】
(3)集配水管13から逆洗水を上層洗浄速度で流入させ下層3および上層2の濾材を上向流で洗浄することにより主として上層において捕捉された鉄成分を含む水を排水トラフ12から排水する濁水排水工程を行う。
【0074】
全体洗浄工程
(1)原水の供給を止め、上層の濾材の表面近傍まであるいは上層中の所定の高さまで水位が下がるまで濾過処理を行う濾過処理中断工程を行う。
【0075】
(2)集配水管13から逆洗水を上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度より速い全体洗浄速度(たとえば30〜60m/h)で流入させ下層3および上層2の濾材を急速上向流で洗浄する洗浄工程を行う。
【0076】
(3)上層および下層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下で速度で上向流の供給を行いながら上層および下層の濾材を沈降させる静置工程。
【0077】
(4)上層洗浄速度で上向流の供給を継続して上層および下層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を排水トラフ12から排出する濁水排水工程。
【0078】
上記部分洗浄工程と全体洗浄工程のいずれを選択するかは、原水中の鉄とマンガンの濃度比および濾過処理速度等に応じて部分洗浄工程と全体洗浄工程のそれぞれの頻度を決定し、その頻度に応じていずれかの工程を選択し、以後この頻度で部分洗浄および全体洗浄を行えばよい。
【0079】
図10は本発明の水処理装置の他の実施形態を模式的に示す概略図である。図10において、図1の実施形態と同一構成要素は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0080】
図10の装置においては、集配水管13には濾過水を吸引して取り出すためのポンプ18が接続されており、また濾過槽5の上部には上層2の上の水位を計測する水位計19が設けられている。
【0081】
このポンプ18の制御は次にように行う。ポンプ18による単位時間あたり処理水量を原水供給量よりもやや多く設定しておく。濾過作用を継続すると上層2上の水位は徐々に低下するので、この水位を水位計19で計測し、水位が所定の水位まで下がったらポンプ18を一時停止して水位が一定のレベルまで回復するのを待つ。水位がこのレベルまで回復したらポンプ18を再稼動し、以後上記動作を繰り返す。
【0082】
ポンプ18の制御は、上記と逆にポンプ18による単位時間あたり処理水量を原水供給量よりもやや少なく設定しておいて、水位が所定の水位まで上がったら原水供給を一時停止して水位が一定のレベルまで上がるのを待ち、水位がこのレベルまで上がったら原水供給を再稼動し、以後上記動作を繰り返すようにしてもよい。
【0083】
また、本発明の他の実施形態においては、濾過処理のための通常運転時の濾過槽5の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき部分洗浄工程を自動的に開始するように構成する。抵抗値を計測するには差圧計により濾過槽の差圧を計測してもよいし、水位系により計測した水位が所定値まで上がったらこの水位を所定の抵抗値とみなしてもよい。これによって、濾材層の上層において洗浄が必要な程度に目詰まりが生じたとき、自動的に部分洗浄工程が開始されるので、部分洗浄工程を予め決まった日程に従って行うよりも能率的に行うことができる。
【0084】
他の方法として、濾過槽の抵抗値が所定値に達したら部分洗浄を行うこととし(自動的でもよいし、所定値を随時計測してもよい)、部分洗浄後に抵抗値が所定値に達するまでの時間が所定時間以下になったら自動的に全体洗浄工程を行うようにしてもよい。
【0085】
図15は一定時間Tが経過するごとに部分洗浄工程を行う場合の時間と濾過槽の抵抗値(差圧)Δpの関係を示すグラフであり、横軸は時間、縦軸は抵抗値を示す。図15において、部分洗浄工程ごとに抵抗値Δpが所定値bに達する時間を図ると、この時間は次のように変化する。すなわち、運転開始時の初期抵抗値をaとし、最初の部分洗浄時P1における抵抗値を所定値bとし、この抵抗値に達するまでの時間をt1とすると、最初の部分洗浄P1により抵抗値はcまで低下するが、この抵抗値は初期抵抗値aまでは低下しないので、次に濾過処理のための運転を行うと、抵抗値が所定値bに達する時間t2はt1よりも短い。2回目の部分洗浄P2により抵抗値はeまで下がるがこの値はcよりも高い。したがって次に濾過処理のための運転を行うと、抵抗値が所定値bに達する時間t3は時間t2よりも短い。
【0086】
そこで、部分洗浄工程を抵抗値が所定値に達するごとに行うこととし、その場合に濾過処理のための通常運転時に濾過槽の抵抗値Δpが部分洗浄工程ごとに所定値bに達する時間t1、t2、t3を予め計測しておき、2回目の部分洗浄P2の後最後の部分洗浄工程P3の前に抵抗値が所定値bに達する時間t3が所定の時間Ta以下である時、自動的に全体洗浄工程を開始することとすれば、所定値bを計測するだけで、簡単な方法で全体洗浄を効率的に行うことができ、濾材層を常に理想的な状態に維持することができる。
【0087】
図11は本発明の方法を実施するための水処理装置の他の実施形態を示す該略図である。この実施形態は、原水中のマンガンの濃度が非常に高く、図1または図10に示す装置では充分にマンガンを除去することができない場合でも有効にマンガンを除去することができる洗浄方法である。図11の装置において、図1の装置と同一構成要素は図1と同一符号で示し、説明を省略する。
【0088】
この水処理装置60は、図1の装置の集配水管13の下流側に下層3の濾材と同一材料からなる後段濾材層33を収容する後段濾過槽35を備え、後段濾過槽35は、濾過水取出し管として機能する集配水管13に連通し後段該濾材層33の上方に開口するする濾過水流出口27と、後段濾材層33によって濾過された水を取り出すための濾過水取出し管および後段濾材層33に逆洗水を供給するための逆洗水供給管として機能する集配水管43、後段濾材層33の上方において後段濾過槽35に設けられた排水トラフまたは排水口12とをさらに備える。濾過水流出口27の構造および作用は原水混流ジェットノズル7と同一であるので、その説明を省略する。集配水管13および43は逆洗水送水管47に接続しており、逆洗水送水管47には開閉弁48、55が介設されている。また、集配水管43には濾過水送水管49が接続しており、この濾過水送水管49には開閉弁50が介設されている。また、集配水管13と濾過水流出口27は濾過水送水管54によって相互に接続されており、濾過水送水管54には濾過水を後段濾材層33に供給するためのポンプ52および開閉弁53が介設されている。
【0089】
なお、図1および図11の実施形態においては、支持砂利層17が設けられているが、支持砂利層を使用せず、集配水管を濾材層の下層および後段濾材層の底部に埋設するように変更することも可能である。
【0090】
支持砂利層を使用しない場合の集配水管13の好適な1例を図12(a)の断面側面図および図12(b)の平面図に示す。なお図示の例は集配水管13を示すものであるが、集配水管43も同一構成のものである。集配水管13は濾過槽5内に水平方向に複数本並行に配置されており、各集配水管は外筒であるスクリーン筒70の内側中央に内部多孔管72が配置されており、各内部多孔管72は長手方向に複数の集配水孔74が両側に形成されている。スクリーン筒70はらせん状ワイヤを周方向に所定間隔で配置された支持ロッドに巻き付けて形成した公知の構造のものを使用することができる。なお図12(a)においてはスクリーン筒70は一部を取り除いて示してある。
【0091】
各内部多孔管72はフランジ部78によりスクリーン筒70に接続されるとともにフランジ部80により集配水本管76に接続されている。
【0092】
図1の装置1においては、原水中のマンガンの濃度が非常に高い場合は、支持砂利層17にもマンガンが堆積して被膜を作り支持砂利層および集配水管に目詰まりが生じる場合があり、この場合は支持砂利層17の砂利や集配水管は全体洗浄工程によっても洗浄できないので、支持砂利層17全体および集配水管を取り出して洗浄する必要があり、非常に手間がかかる作業が必要になるが、支持砂利層を使用せず、スクリーン筒70および内部多孔官72からなる集配水管13、43を炉材槽4の下層3および後段濾材層33に埋設する場合は、原水中のマンガン濃度が非常に高い場合でも、マンガンは集配水管のスクリーン筒の外周部に堆積するので、この場合は、スクリーン筒内の内部多孔管72のみを取り外しスクリーン内部からスクリーンを洗浄することにより比較的に簡単な作業ですみ、有利である。
なお、この集配水管は装置60だけでなく、図1の装置1に使用することもできる。この場合図1の装置1において支持砂利層17は使用しないで、集配水管を下層3の底部に埋設すればよい。
【0093】
また、支持砂利層の洗浄のため、動力源に接続された棒状振動素子を支持砂利層にまで差し込んで逆洗水を流しながら支持砂利層を洗浄すれば、支持砂利層を取り出さなくても簡単に洗浄することができる。
【0094】
次にこの装置60の動作について説明する。
濾過時には、上層2によって鉄が除去され、下層3によってマンガンの相当部分が除去された濾過水は集配水管13から濾過水送水管54を介して後段濾材層33に供給され、残余のマンガンが後段濾材層33によって除去される。この時逆洗水送水管47の弁48、55は閉じており、濾過水送水管54、49の弁53、50は開いている。
部分洗浄工程および全体洗浄工程は以下のように行われる。
部分洗浄工程
(1)原水の供給を止める濾過処理中断工程を行う。この時逆洗水送水管47の弁48、55は閉じており、濾過水送水管54、49の弁53、50は開いている。
(2)逆洗水送水管47の弁55は閉じたまま弁48を開き、濾過水送水管54、49の弁53、50は閉じた状態で、集配水管13から逆洗水を上層洗浄速度(たとえば5〜30m/h)で流入させながら振動拡張素子10を作動させて上層2の濾材を擦り合わせ洗浄する上層洗浄工程を行う。上層洗浄工程は水位が排水トラフ12に達する前に終了する。
(3)上層濾材の攪拌洗浄を終了した後上層2の攪拌された濾材を沈降させる静置工程を行う。
(4)集配水管13から逆洗水を上層洗浄速度で流入させ下層3および上層2の濾材を上向流で洗浄することにより主として上層において捕捉された鉄成分を含む水を排水トラフ12から排水する濁水排水工程を行う。
【0095】
全体洗浄工程
(1)原水の供給を止める濾過処理中断工程を行う。
(2)濾過水送水管54の弁53および濾過水送水管49の弁50を閉じ逆洗水送水管47の弁48および55を開いた状態で、集配水管13および43から逆洗水を上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度よりも速い全体洗浄速度(たとえば30〜60m/h)で流入させ下層3、上層2の濾材および後段濾材層33の濾材を急速上向流でそれぞれ攪拌しながら、上層2および後段濾材層33の振動拡張素子10を作動させて上層、下層および後段濾材層の濾材を洗浄する洗浄工程を行う。
(3)上層、下層および後段濾材層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下の速度で上向流の供給を行いながら上層、下層および後段濾材層の濾材を沈降させる静置工程を行う。
(4)上層洗浄速度で上向流の供給を継続して上層、下層および後段濾材層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を排水トラフ12から排出する濁水排水工程を行う。
【0096】
上記部分洗浄工程と全体洗浄工程のいずれを選択するかは、原水中の鉄とマンガンの濃度比および濾過処理速度等に応じて部分洗浄工程と全体洗浄工程のそれぞれの頻度を決定し、その頻度に応じていずれかの工程を選択し、以後この頻度で部分洗浄および全体洗浄を行えばよい。
【0097】
図13および図14は本発明の他の実施の態様を模式的に示す概略図である。
原水中に高濃度のアンモニア性窒素が含有されている場合、アンモニア性窒素を捕捉除去するためには鉄やマンガンに比べ10倍以上の大量の溶存酸素を必要とする。したがって、濾過処理中に原水混流ジェットノズルからの混流ジェット水流によるエアレーションのみでは濾材層においてアンモニア性窒素を充分に捕捉除去することが困難な場合が生じることがわかった。
【0098】
そこで、このような事態に対処するため、原水が高濃度のアンモニア性窒素を含有する場合には、濾材層中に溶存酸素を追加的に供給して、混流ジェット水流によるエアレーションを補うことが好ましい。
【0099】
濾材層中に溶存酸素を追加供給するには、種々の方法があるが、好ましい方法の一つとして、直径が数百μm以下の微細気泡を濾材層中に注入することが有効である。
【0100】
図13はその1例を示すもので、溶存酸素供給装置90は、処理水の一部を吸入する処理水吸入管92と、この吸入管92から処理水の一部を吸入し、処理水と微細気泡が混合した気液混合流体を気液注入管91から濾材層中に注入する微細気泡発生装置93を備えている。この微細気泡発生装置93としては、公知の装置を使用することができる。また処理水吸入管92と気液注入管91としては集配水管13と同様の構造のものを使用することができる。気泡の直径が大きいと気泡は濾材層の濾材中に滞留し空気溜りを生じやすく、この空気溜りは濾材の水処理面積を減少させるので濾過効率を妨げることになるが、本実施形態で使用する微細気泡は浮力が小さく浮上速度が遅いので、処理水流の流速を早くすることにより流されて、濾材層に溶存酸素を供給しながら濾材層の下層に達し、集配水管13から排出され、空気溜りを生じるおそれがない。したがって、高速処理を目標とする本願発明においては、溶存酸素の追加供給方法として、微細気泡の注入は好ましい方法である。微細気泡の注入量は、アンモニア性窒素の濃度等原水の状態に依存する溶存酸素の追加必要量に応じて最適値を決定すればよい。
【0101】
図14は同一目的を達成するための他の例を示すもので、溶存酸素供給装置95は、集配水管13から分岐するように接続され処理水の一部を吸入する処理水吸入管96と、この吸入管96から処理水の一部を吸入し、処理水と微細気泡が混合した気液混合流体を気液注入管97から濾材層中に注入する微細気泡発生装置98を備えている。処理水吸入管96と気液注入管97の構造及は図13の装置と同様である。
【実施例】
【0102】
以下本発明の実施例について説明する。
図1の水処理装置を用いて地下水を原水とする水処理を行った。
【0103】
水処理装置の濾過槽は内径1200mmの平面視円形のものを使用した。上層に埋設した各振動拡張素子10の相互間のピッチ(4つの振動拡張素子10によって形成される正方形の1辺の長さ)は150mmであった。振動拡張素子10の配置方法は図6に示す方法を使用した。振動拡張素子10の支持棒の長さは640mmであった。
【0104】
振動素子9としては、市販のコンクリートバイブレーター1本を使用し、この振動素子9を枠体40の中央に配置した。この振動素子は動力源として商用交番電流を使用し、インバータにより電流の周波数を400Hzに変換するもので、振動素子の振動数は200Hz(12000VPM)であった。
【0105】
この水処理装置を使用して、濾過、部分洗浄、全体洗浄を行うことにより濾過速度500m/日で下表1の濾過処理結果を得た。
【0106】
【表1】
【0107】
この結果、本発明による水処理処理装置を使用して部分洗浄、全体洗浄を実施することにより、濾過速度500m/日で充分な濾過処理を達成することができることが判った。
【符号の説明】
【0108】
1、60 水処理装置
2 上層
3 下層
4 濾材層
5 濾過槽
6 原水送水管
7 原水混流ジェットノズル
8 振動手段
9 振動素子
10 振動拡張素子
12 排水トラフまたは排水口
13 集配水管
33 後段濾材層
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置に関し、特に地下水等の中の鉄、マンガンその他の溶解性成分を、酸化剤や凝集剤等の化学品を使用することなく、簡単で小型の装置で酸化させ、不溶化することにより処理することができる水処理装置およびその濾材層の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水は、水道水の原水として、また食品工業、清涼飲料、醸造、公衆浴場、染色業など水を大量に必要とする産業で利用されているが、現在地下水に含まれる鉄、マンガン成分が大きな問題となっている。鉄やマンガンは人体にとって必要な成分であるが、一定量を超えると水に金属味を与えたり、赤水や黒水の原因となり、飲用に不適となるばかりでなく、これらの産業において様々な問題が生じる。また、建築基礎工事において基礎工事前の地下水抜き取り工事は必要不可欠な工程であるが、地下水に大量の鉄、マンガンが含まれている場合は、そのまま下水道に放流することは法令で禁止されており、地下水中の鉄、マンガンを除去してから放流しなければならないという問題がある。
【0003】
現在もっとも普及している除鉄、除マンガン装置は、原水に次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤やポリ塩化アルミニウム(PAC)等の凝集剤を添加し、水中に溶け込んでいる鉄、マンガンを酸化させて不溶性の酸化鉄、酸化マンガンとし、これを濾過砂により濾過して取り除くものである。
【0004】
しかし、この酸化剤や凝集剤を注入する方式の水処理装置においては、比較的に多量の酸化剤、凝集剤を消費するのでこれらの購入コストが大きい。また酸化剤として使用される次亜塩素酸が鉄、マンガンを酸化させた後も処理後の浄水の中に残留するために、発癌物質であるトリハロメタンを生成し、その対策のためさらに水を活性炭層を通して処理しなければならず不経済である。また、経済的考慮から活性炭層の設置を見送るとすれば、過剰な酸化剤の注入によるトリハロメタンの発生を防止するため濾過後の水を耐えず分析して監視し、状況に応じて酸化剤の注入量を調整する必要があり、薬品購入コストに加えて維持管理費が嵩むという欠点がある。また、この薬品注入方式による水処理装置は、曝気槽、凝集槽、沈殿槽、砂濾過塔、除鉄、除マンガン塔および薬液タンクからなり、システムは複雑であり装置全体は大規模化して広大な設置スペースを必要とするため、市街地等設置スペースが限られた環境においては装置を設置することができない、という問題点がある。さらに、この薬品注入方式による水処理装置において使用した濾過砂は不純物の堆積による目詰まりのため時々取り替える必要があるが、その場合砂が薬品を含有しているため産業廃棄物として処理しなければならず、その放棄場所も制限される等の不便がある。
【0005】
上記従来の薬品注入方式による水処理装置の欠点を除去し、地下水等の中の鉄、マンガンその他の溶解性成分を、酸化剤や凝集剤等の薬品を使用することなく、簡単で小型の装置で酸化させ不溶化することにより処理することができる水処理装置を提供することを目的として、特許文献1記載の水処理装置が提案されている。この水処理装置によれば、ジェットノズルにより原水をジェット水流とする一方ジェットノズル内に開口する空気導入管または気体導入管からジェットノズル内に空気を導入することにより、多数の気泡を含むジェット水流がジェットノズルの原水噴出口からその下方に配置された濾材層上の水面に叩きつけられ、水中および濾材表面において激しいエアレーションが起こることにより、水中の鉄、マンガン等の溶解性成分が酸化されて不溶性成分となり、濾材層を形成する濾過砂等の濾材粒子の表面で捕捉され、したがって、酸化剤や凝集剤等の薬品を一切使用することなく、簡単で小型の装置で原水中の鉄、マンガンその他の溶解性成分を不溶化し濾過することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−126768公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1記載の水処理装置その他同型の水処理装置においては、皮膜化された鉄は濾材層の上層部と下層部とで洗浄過多と洗浄不足が常に同居した状態にある。また一口に鉄、マンガンを除去するといっても、後述のように、鉄は濾材層の上層部において酸化作用により皮膜化する一方マンガンは濾材層の下層部において生物処理により濾材粒子の表面で捕捉されるが、原水中の鉄の濃度がマンガンの濃度に比べて顕著に大きい場合は、濾材層の上層部で捕捉された鉄を除去するために大量の洗浄水で濾材層全体を洗浄すれば下層部においてマンガン処理のために棲息している生物も洗い流されてしまってその後のマンガンの生物処理に支障を来たすことになる。
【0008】
一方水処理装置はその単位時間当たりの濾過速度を高速化すればするほど、装置の規模とスペースを削減することができるので有利である。特に水処理装置を設置するスペースが設置場所の関係で限られており、大規模な装置を設置することが不可能な場合は、狭い敷地に設置された小規模な装置により必要な量の原水を濾過処理しなければならず、濾過速度を高める必要に迫られる。
【0009】
水処理装置の濾過速度を上げるために必要な一つの重要な条件は、水処理装置の洗浄を効率よく行うことである。
【0010】
水処理装置においては、一般に濾過作用を継続すると時間がたつにつれて濾材層特にその表面に水酸化鉄等の酸化物のフロックやその他の異物で覆われた時は濾材の濾過機能が減少するので、濾過処理を一時停止して濾材層の洗浄を行わなければならない。したがって濾材層の洗浄を効率よく行わなければ濾過処理の高速化は実現できない。
【0011】
上記特許文献1記載の水処理装置においては、原水送水管を濾材層の表面と平行な面上に往復動させ、原水送水管から噴出す多数の気泡を含むジェット水流により閉塞した濾材層を閉塞状態から開放して濾過機能を回復させるようにしている。また、この水処理装置は、濾過砂からなる1層の濾材層の底部に濾材層を支持する板状スクリーンからなる濾材層受が配置されており、濾材層受の下方には濾材層を逆洗浄するための逆洗管が配置されている。濾材層の上部特に表面が酸化物のフロックやその他の異物で覆われた時は濾過槽への原水供給を一時停止し、逆洗管から逆洗水を濾材槽受を介して濾材層全般にわたって下方から上方へ流すことにより濾材層上部を覆う異物を濾材層から剥離するとともに濾材層内に捕捉された鉄、マンガン成分を洗い流し、逆洗水排出口から系外に排出するように構成されている。
【0012】
この水処理装置の濾過速度は60m/日〜130m/日であるが、より高速で濾過処理を行う必要がある場合は、濾材層の洗浄もより頻繁に行わなければならず、このため濾材層の下層部の生物処理に対する負荷量も一層増大するので、この水処理装置では濾材層の洗浄効率に限界があり、これ以上の高速化は不可能である。
【0013】
また上記水処理装置を含め、従来の水処理装置は、濾材層の上記洗浄のため濾過水量の約10%〜15%の水を消費しなければならず、このため水処理の効率を大きく低下させている。
【0014】
また上記水処理装置は、濾材層の表面を洗浄するために原水送水管を濾材層の表面と平行な面上に往復動させる機構を備えているが、この機構は原水供給管を電動モータで往復動させなければならないので表面洗浄のために多大の動力を必要とするばかりでなく、往復動のための機構が複雑となり、さらに原水送水管の移動用レールの磨耗、原水送水管に水を供給するホースの損耗等部品のメンテナンスの手間と費用が嵩むという問題点がある。また直線状に配列された一連の原水送水管を同時に移動させるために濾過槽の形状は矩形で無ければならずこのため装置が大きくなり、装置の設置場所が狭い場合でも装置のコンパクト化が不可能であるという問題点もある。
【0015】
本発明は、上記従来の水処理装置の問題点にかんがみなされたものであって、従来の水処理装置より高速での濾過処理を可能とする新規な水処理装置の洗浄方法およびこの洗浄方法を適用することができる水処理装置を提供しようとするものである。
【0016】
さらに、本発明は、上記従来の水処理装置においては、原水送水管を往復動させることにより洗浄を行うので、原水送水管が通過する点以外の濾材層表面は洗浄が行われず、濾材層表面の全体にわたり必要な洗浄を完了するまでにかなりの時間を要し、高速処理には限界があるので、この点を改良しようとするものである。
【0017】
また、本発明は、濾過水量に対する洗浄水量の比率を減少させることによって水処理効率の率を向上させるとともに、多大の動力を必要とせず、コンパクトで簡素化された機構でメンテナンスも簡単な水処理装置とその洗浄方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記問題を解決するために鋭意研究と実験を重ねた結果、水処理装置によって捕捉されるべき鉄とマンガンの中で鉄はその大部分が濾材層の上層部に沈着し、マンガンは逆に大部分が濾材層の下層部に沈着する事実があるとともに、原水中の鉄とマンガンの濃度は一定ではなく、原水によっておおむね一定の濃度差があり、通常鉄の濃度はマンガンの濃度より大幅に高いことに着目し、これらの事実を洗浄に利用して、濾材振動手段により濾材層中の濾材を振動させながら濾材層を洗浄することにより濾材層上層部において鉄を除去する洗浄効果を顕著に改善することを見出し、本発明に到達した。また本発明者は、原水中の鉄は濾材層の部分洗浄により除去し、マンガンは濾材層の全体洗浄により除去することにより洗浄効果を顕著に改善し、これによって従来実現できなかった高速濾過を可能とするとともに洗浄水が節約できることを発見し、本発明に到達した。
【0019】
すなわち、上記目的を達成する本発明の第1の構成は、原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を備える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置され濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層に埋設される部分を有し該濾材層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備える水処理装置の該濾材層を洗浄する方法であって、該逆洗水供給管から逆洗水を流入させながら該濾材層の濾材を振動させるようにして該濾材層を洗浄することを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法である。
【0020】
本発明の第2の構成は、原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を備える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置された上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該上層に埋設される部分を有し該上層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備える水処理装置の該濾材層を洗浄する方法であって、該濾材層の洗浄を、主として該上層の洗浄を行う部分洗浄と該上層および該下層の双方を洗浄する全体洗浄のいずれかを選択して行い、該部分洗浄工程は、
(イ)原水の供給を一時停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を上向流として上層洗浄速度で流入させながら該上層の濾材を振動させることにより濾材を擦り合わせ濾材を閉塞させている水酸化鉄を濾材から剥離させて上向流により洗い流す上層洗浄工程
(ハ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備え、該全体洗浄工程は、
(イ)原水の供給を停止し、濾過処理を行うことにより濾過槽の水位を所定の水位まで下げる濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を該上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度よりも速い全体洗浄速度で流入させ該上層および該下層の濾材を攪拌しながら該濾材振動手段を作動させ、該上層および該下層の濾材を洗浄する洗浄工程
(ハ)該上層および下層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下の速度で上向流の供給を継続しながら該上層および下層の濾材を沈降させる静置工程
(ニ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層および下層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備えることを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法である。
【0021】
本発明の第3の構成は、第1または第2の構成に加え、濾過処理のための通常運転時の濾過槽の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき該部分洗浄工程を自動的に開始することを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法である。
【0022】
本発明の第4の構成は、第2の構成に加え、濾過処理のための通常運転時の濾過槽の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき該部分洗浄工程を行い、該部分洗浄工程後に濾過槽の抵抗値が所定値に達するまでの時間が所定の時間以下となった時に該全体洗浄工程を自動的に開始することを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法である。
【0023】
本発明の第5の構成は、原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を供える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置された濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層に埋設される部分を有し該濾材層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備えことを特徴とする水処理装置である。
【0024】
本発明の第6の構成は、第5の構成に加え、該濾材層中に溶存酸素を追加供給する手段をさらに備えることを特徴とする水処理装置である。
【0025】
本発明の第7の構成は、原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を供える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置された上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該上層に埋設される部分を有し該上層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備えることを特徴とする水処理装置である。
【0026】
本発明の第8の構成は、第7の構成に加え、該水処理装置は、濾過水取出し方向に見て該濾過水取出し管の下流側に該下層の濾材と同一材料からなる後段濾材層を収容する後段濾過槽を備え、該後段濾過槽は、該濾過水取出し管に連通し該後段該濾材層の上方に開口するする濾過水流出口と、該後段濾材層によって濾過された水を取り出すための濾過水取出し管と該後段濾材層に逆洗水を供給するための逆洗水供給管と、該後段濾材層の上方において該後段濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とをさらに備えることを特徴とする水処理装置である。
【0027】
本発明の第9の構成は、第5〜第8の構成のいずれかに加え、該濾過水取出し管および該逆洗水供給管は、該濾過槽の底部に水平方向に複数本並行に配置された集配水管からなり、各集配水管は外筒であるスクリーン筒とその内側中央に配置された内部多孔管からなり、該内部多孔管は長手方向に複数の集配水孔が両側に形成されていることを特徴とする水処理装置である。
【0028】
本発明の第10の構成は、第5〜第8の構成のいずれかに加え、該濾材振動手段は、動力源に接続された1または複数の振動素子と、濾材中に埋設されるようにして該振動素子に取り付けられ、該振動素子の振動を濾材層の濾材に伝達する振動拡張手段を備えることを特徴とする水処理装置である。
【0029】
本発明の第11の構成は、第10の構成に加え、該振動拡張手段は、該振動子に取り付けられる枠体と、該枠体に固定された複数の振動拡張素子を備え、該振動拡張素子は、それぞれ、濾材層の上下方向に延長して上端部において該枠体に固定された支持棒と、該濾材層の上下方向に所定の間隙を設けて相互に平行に配置されるようにして該支持棒に固定された複数の第1振動伝達板と、該第1振動伝達板と直交するようにしてかつ相互に平行に配置されるようにして該第1振動伝達板の該間隙において該支持棒に固定された複数の第2振動伝達板を備えることを特徴とする水処理装置である。
【0030】
本発明の第12の構成は、第11の構成に加え、隣り合う2つの該振動拡張素子によって平面視ほぼ正方形の濾材面が形成されるように該複数の振動拡張素子を配置したことを特徴とする水処理装置である。
【0031】
本発明のだい13の構成は、第11の構成に加え、隣り合う2つの該振動拡張素子によって平面視ほぼ長方形の濾材面が形成されるように該複数の振動拡張素子を配置したことを特徴とする水処理装置である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の第1の構成によれば、濾材層に埋設される部分を有し濾材層の濾材の各粒を振動させる振動手段により濾材層の濾材全体を強く振動することができる。したがって、この振動手段により濾材を振動している間は濾材層の濾材は継続的に絶え間なく擦れあうことにより洗浄され、洗浄ノズルの通過時のみ濾材が攪拌される洗浄ノズル往復動方式に比べて単位時間当たり洗浄能率を飛躍的に向上させることができ、これによって高速濾過を促進することができる。また洗浄ノズル往復動方式のように多大の動力と複雑な機構を必要としないので装置の製造コストを節約することができる上に濾過槽を平面視丸型に構成することができるので、コンパクトで簡素化された機構でメンテナンスも簡単な水処理装置を提供することができる。
【0033】
本発明の第2の構成によれば、濾材層を上層と下層の2層構造とし、上層は下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材を使用して部分洗浄、全体洗浄を実施することにより、上層で捕捉された濃度の高い鉄は、振動手段による濾材粒子の振動と比較的に緩やかな流速の上向流による洗浄の組み合わせによる部分洗浄により上層の洗浄を頻繁に行うことにより洗浄、除去される一方下層で捕捉された濃度が低いマンガンは上層の洗浄よりも少ない頻度で行う流速の早い上向流による全体洗浄で上層の鉄とともに洗浄、除去される。したがって、濃度が高く上層における蓄積量が多い鉄は頻繁な洗浄により充分に除去される一方濃度が低く下層における蓄積量が少ないマンガンは少ない頻度の全体洗浄により充分に除去され、頻繁な洗浄によって下層における生物の棲息が妨げられることがなく、上下濾材層全体としての洗浄効果を最高度に達成することができ、これによって必要とされる高速濾過を達成することができる。本発明によれば、特許文献1記載の水処理装置の濾過速度60m/日〜120m/日に比べて画期的な500m/日の濾過速度を挙げることが可能である。また、上層の鉄の除去のため水量の多い逆洗水での全体洗浄を頻繁に行う必要がなく、その結果全体としての洗浄水の使用量が節約され、従来の薬品注入方式の水処理装置において濾過水量の約10〜15%使用されていた洗浄水の量を本発明によれば濾過水量の約3〜5%に減少させることができる。
【0034】
また本発明によれば、洗浄の頻度が高い上層は比重が比較的に小さく粒径が比較的に大きい濾材で構成されているので、上層洗浄時に濾材が攪拌されて大きく上方に舞い上がり濾材の洗浄効果を高め、同一洗浄効果を収めるための洗浄水の使用量を最小限にとどめることができる。一方下層は比重が比較的に大きく粒径が比較的に小さい(目の細かい)濾材で構成されているので単位容量に対する比表面積が大きく、生物処理効果が高い。また全体洗浄の際には上層の濾材も下層の濾材もともに攪拌されて混合されるが、下層の濾材は上層の濾材よりも比重が大きく沈降速度が大きいので、上層の濾材が沈降する前に沈降して下層に静置され、その上に上層の濾材が沈降して静置され元の上層、下層の状態に復元することができる。このように洗浄効果の高い上層の濾材と生物処理効果の高い下層の濾材を組み合わせることにより鉄、マンガンのほか原水に含まれる濁質を充分に捕捉しながら、最高の洗浄効率を挙げることができる。また上層は粒径が比較的に大きい濾材で構成されているので、水流に対する抵抗が小さく、したがって高速濾過を促進することができる。
本発明の第3の構成によれば、濾過処理のための通常運転時の濾過槽の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき部分洗浄工程を自動的に開始するようにしたので、濾材層の上層において洗浄が必要な程度に目詰まりが生じたとき、自動的に部分洗浄工程が開始されるので、部分洗浄工程を予め決まった日程に従って行うよりも能率的に行うことができる。
【0035】
本発明の第4の構成によれば、全体洗浄工程を行う時期を部分洗浄工程後抵抗値が所定値となる時間が所定の時間以下となった時に自動的に行うので、濾過槽の抵抗値を計測するだけで自動的に全体洗浄工程を行うことができ、濾材層を常に理想的な状態に維持することができる。
【0036】
本発明の第5の構成によれば、上記第1の構成の効果を奏する水処理装置を提供することができる。
【0037】
本発明の第6の構成によれば、原水が高濃度のアンモニア性窒素を含有している場合、溶存酸素を追加供給する手段により濾材層中に溶存酸素を供給することにより、この溶存酸素によりアンモニア性窒素を酸化させ除去することができる。
【0038】
本発明の第7の構成によれば、上記第2の構成の効果を奏する水処理装置を提供することができる。
【0039】
本発明の第8の構成によれば、上記第3の構成の効果を奏する水処理装置を提供することができる。
【0040】
本発明の第9の構成によれば、スクリーン筒および内部多孔管からなる集配水管を濾過槽底部に埋設することにより、原水中のマンガン濃度が非常に高い場合でも、マンガンは集配水管のスクリーン筒の外周部に堆積するので、多孔管のみを取り外してスクリーン筒内側からスクリーンを直接洗浄することにより比較的に簡単な作業で濾過槽底部の清掃を完了することができる。
【0041】
本発明の第10の構成によれば、振動手段は動力源に接続された1または複数の振動素子と、濾材中に埋設されるようにして振動素子に取り付けられ、振動素子の振動を濾材に伝達する振動拡張手段を備えているので、動力源に接続される振動素子の数は少なくても、所望の振動を濾材層中の全濾材に伝達して濾材の各粒を振動させることができ、振動拡張手段を使用しないで動力源に接続された振動素子のみにより全濾材を振動させる場合に比べて電力等の動力を著しく節約することができ、水処理作業の省エネルギー化に貢献することができる。
【0042】
本発明の第11の構成によれば、振動拡張素子の複数の第1振動伝達板と複数の第2の振動伝達板は、それぞれ、上下方向に各振動伝達板の間に所定の間隙を設けてあるので、濾過工程中は被処理水はこの間隙を通って横方向に自由に流動することができ、偏流を生じることがなく、したがって、均一な濾過を達成することができる。
【0043】
本発明の12の構成によれば、隣り合う2つの振動拡張素子によって平面視ほば正方形の濾材面が形成されるように複数の振動拡張素子を配置することにより、隣り合う4個の振動拡張子によって正方形の濾材面を形成する場合に比べて正方形の面積を小さくすることができ、これによって、正方形の中の濾材中各振動伝達板からの距離が最も遠い位置の濾材の該振動伝達板からの距離を比較的に短くすることができる。
【0044】
本発明の第13の構成によれば、隣り合う2つの振動拡張素子によって平面視ほぼ長方形の濾材面が形成されるように複数の振動拡張素子を配置することにより、長方形の中の濾材中各振動伝達板からの距離が最も遠い位置の濾材の該振動伝達板からの距離を振動拡張素子の他の配置に比べて比較的に短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る水処理装置の1実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【図2】濾材振動手段の1実施形態を示す平面図である。
【図3】図1の実施形態において使用する振動拡張素子の1例を示す斜視図である。
【図4】同振動拡張素子の正面図である。
【図5】同振動拡張素子の拡大平面図である。
【図6】同振動拡張素子の配置状態の1例を示す平面図である。
【図7】同振動拡張素子の配置状態の他の例を示す平面図である。
【図8】同振動拡張素子の配置状態の他の例を示す平面図である。
【図9】同振動拡張素子の配置状態の他の例を示す平面図である。
【図10】本発明に係る水処理装置の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図11】本発明に係る水処理装置の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図12】集配水管の変更例を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図13】本発明に係る水処理装置の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図14】本発明に係る水処理装置の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図15】部分洗浄工程を一定時間経過ごとに行う場合の時間と濾過槽の抵抗値(差圧)Δpの関係を示すグラフである。
【図16】集配水管の配置状態を示す支持砂利層の断面平面図である。
【図17】振動拡張素子の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、上層と下層の2層構造からなる濾材層を有する水処理装置に限らず、1層構造の濾材層を有する水処理装置にも適用できるものであるが、以下の説明においては、好ましい実施形態として上層と下層の2層構造の濾材層を有する水処理装置に本発明を適用した場合を例にとって説明する。
【0047】
図1は本発明に係る水処理装置の1実施形態を模式的に示す概略図である。
図1において、水処理装置1は、主たる構成要素として、上層2および下層3からなる濾材層4を収容した濾過槽5、原水送水管6、原水混流ジェットノズル7、上層濾材振動手段8、排水トラフまたは排水口12、濾過水取出し管と逆洗水供給管を兼ねる集配水管13を備える。
【0048】
濾過槽5に濾過されるべき地下水を供給する鋼管等からなる原水送水管6は送水ポンプ(図示せず)に接続されており、この送水ポンプは、必要により受水槽(図示せず)を介して原水の水源から原水を供給され、所定の流速で原水送水管6に原水を供給する。
【0049】
原水送水管6は濾材層4の表面と平行な面上に延長するようにして濾過槽5の一端部の上方に配設されている。
【0050】
原水送水管6から垂直に分岐するようにして、1本ないし複数本(図示の実施形態においては2本)の原水混流ジェットノズル7が設けられている。各ジェットノズル7の上流側の端部7aは、内部が原水送水管6に連通するようにして原水送水管6に嵌め込まれており、下流側の端部には原水をジェット水流として噴出する原水噴出口7bが形成されている。原水混流ジェットノズル7の内径はたとえば3〜30mm程度が好適である。
【0051】
原水混流ジェットノズル7には、それと同数(図示の実施形態においては2本)の空気導入管15が設けられている。各空気導入管15の上流側の端部は大気に開放されるようにして原水混流ジェットノズル7から斜め上方に突出しており、下流側の端部は原水噴出口7bよりも上流の原水混流ジェットノズル7内に開口している。空気導入管15の内径はたとえば1〜10mm程度が好適である。空気導入管15の上端部は大気開放に限らず、純粋酸素が供給されるようにしてもよい。
【0052】
濾過槽5内において、濾材層5の上層2はその表面が原水混流ジェットノズル7の原水噴出口7bと所定の間隔をおいて原水混流ジェットノズル7の下方に配置されている。濾材層4の上層2に充填される濾材は下層3に充填され濾材よりも比重が小さく粒径が大きい材質のものであることが必要である。この条件を満たす上層の濾材としてはゼオライト等が好適であり、特にゼオライト(粒径約1.2mm)が好ましい。またこの条件を満たす下層の濾材として濾過砂(粒径約0.6mm)が好適である。濾過槽4はジェットノズルから供給されたジェット流として供給される原水中の酸化物フロックその他の異物を捕捉することにより原水を濾過する機能を果たすとともに鉄バクテリアその他の微生物が生息し原水中の鉄、マンガンを酸化して吸着する機能を果たすものである。オキシ水酸化鉄の自触媒作用により鉄は主として上層2の表面に皮膜化し(濾材層の表面から200mm程度の部分に最も多い)、マンガンは主として生物処理により下層3の濾過砂表面に皮膜化する(濾材層の表面から500〜800mm程度の部分に最も多い)。
【0053】
濾材層4を支持砂利層17により支持する。支持砂利層17は上層から順に小粒径層、中粒径層、大粒径層の複数層からなるように構成することが好ましいがこれに限るものではない。
【0054】
濾過槽5の支持砂利層17の中心部には集配水管13が水平方向に配置されている。本実施形態においては、集配水管13は濾材層4により濾過された水を取り出すための濾過水取出し管と濾材層4に逆洗水を供給するための逆洗水供給管を兼用している。集配水管13には図16に示すように複数本の支管14が集配水管13に連通するようにして枝分かれして水平方向に延長するように取り付けられている。なお、濾過水取出し管と逆洗水供給管は上記の例に限らず、別個の濾過水取出し管と逆洗水供給管を設けるようにしてもよい。
【0055】
上層2の表面よりも上方の濾過槽5には、逆洗時にオーバーフローした水を排水するための排水トラフ12が設けられている。逆洗時にオーバーフローした水を排水するには排水トラフ12に限らず、他の形状の排水口を使用してもよい。
図1の実施形態において、濾材振動手段8は、交流電源等の動力源に接続された1または複数の振動素子9(図示の実施形態では1個)と、濾材中に埋設されるようにして振動素子9に取り付けられ、振動素子9の振動を上層2の濾材に伝達する振動拡張手段を備える。振動拡張手段は、枠体40とこの枠体に固定された複数の振動拡張素子10からなる。
【0056】
振動素子9としては、たとえばコンクリートバイプレーターとして公知の棒状の振動素子を使用することができる。この振動素子9はケーブル47を介してコントローラ48に接続され、コントローラ48は交流電源に接続されている。
【0057】
振動拡張手段の枠体40は、複数の鋼棒を交差するように配置して各交点を溶接してなるネット上の形状のもので、上層2の表面から5cm〜10cm程度の間隔をおいて上層の表面と平行に配置されている。枠体の中央部には図2に示すように振動素子取付け板41が嵌め込まれて周囲の鋼棒に溶接されている。振動素子取付け板41の中央部に形成された取付け孔41aには振動素子9が取付け孔41aの内壁に密接するようにして嵌め込まれている。枠体40の各交点40aには複数の振動拡張素子10が取り付けられている。 各振動拡張素子10は、それぞれ、濾材層の上下方向に延長して上端部において枠体40に固定された鋼製の支持棒42と、濾材層の上下方向に所定の間隙を設けて相互に平行に配置されるようにして支持棒42に溶接固定された複数(図3の例では5枚)の横長の長方形をした鋼製の第1振動伝達板44と、第1振動伝達板44と直交するようにしてかつ相互に平行に配置されるようにして第1振動伝達板44の間隙において支持棒42に固定された複数(図3の例では5枚)の横長の長方形をした鋼製の第2振動伝達板46を備えている。
【0058】
図3〜図5に示す振動拡張素子10において、第1振動伝達板44および第2振動伝達板46は、それぞれ、1つの振動拡張素子10全体としての重量バランスをとるために、上から順に1段目、3段目および5段目の振動伝達板は支持棒42の一方側に溶接され、2段目および4段目の振動伝達板は支持棒42の反対側に溶接されている。
【0059】
振動拡張素子10の構造は図3〜図5に示すものに限らず、たとえば図17の平面図に示すように、第1振動伝達板44、第2振動伝達板46をそれぞれ2つの板部分に分割して支持棒42の両側に溶接するように形成してもよい。
【0060】
この濾材振動手段においては、動力源に接続された振動素子9をオンにして作動させると、振動素子9が振動し、この振動が枠体40を介して複数の振動拡張素子10の支持棒から第1振動伝達板および第2振動伝達板に伝わり、これらの振動伝達板の振動が上層2の濾材全体に伝播して濾材の各粒自体がそれぞれ振動する。
【0061】
本発明の上記実施形態によれば、振動手段は動力源に接続された1または複数の振動素子9と、濾材中に埋設されるようにして振動素子9に取り付けられ、振動素子9の振動を濾材に伝達する振動拡張手段を備えているので、動力源に接続される振動素子9の数は少なくても、所望の振動を濾材層中の全濾材に伝達して濾材の各粒を振動させることができ、振動拡張手段を使用しないで動力源に接続された振動素子のみにより全濾材を振動させる場合に比べて電力等の動力を著しく節約することができ、水処理作業の省エネルギー化に貢献することができる。
【0062】
したがって、本発明が適用される振動手段としては、上記構成に限らず、動力源に接続された棒状振動素子を複数本上下方向に延長するように濾材中に適宜間隔をおいて配置しても濾材を振動させる作用を得ることはできるが、上記実施形態の構成は省力化の点で有利であり、好ましい実施形態である。
【0063】
本発明の上記実施形態によれば、振動拡張素子10の複数の第1振動伝達板44と複数の第2振動伝達板46は、それぞれ、上下方向に各振動伝達板の間に所定の間隙を設けてあるので、濾過工程中は被処理水はこの間隙を通って横方向に自由に流動することができ、偏流を生じることがなく、したがって、均一な濾過を達成することができる。
【0064】
本発明の上記実施形態においては、図2の平面図およびその拡大図である図6の平面図に示すように、隣り合う2つの振動拡張素子10−1、10−2(図6)によって平面視ほば正方形の濾材面Sが形成されるように複数の振動拡張素子10が配置されている。この構成により、図7の例に示すように隣り合う4個の振動拡張子10−1、10−2、10−3、10−4によって正方形の濾材面Sを形成する場合に比べて正方形の面積を小さくすることができ、これによって、正方形Sの中の濾材中各振動伝達板44、46からの距離が最も遠い位置の濾材の該振動伝達板44、46からの距離を比較的に短くすることができる。
【0065】
振動拡張素子10の他の配置方法を図8の平面図に示す。この配置方法は、各振動拡張素子10を図8中1点鎖線によって示される位置(図7の位置と同じ)から支持棒42を回転軸として反時計方向に30度回転させた位置である。この構成によれば、隣り合う2つの振動拡張素子10−1、10−2によって平面視ほぼ長方形の濾材面Rが形成されることにより、長方形Rの中の濾材中各振動伝達板44、46からの距離が最も遠い位置の濾材の該振動伝達板からの距離を振動拡張素子の他の配置に比べて比較的に短くすることができる。
【0066】
図9は振動拡張素子の他の配置方法を示す平面図である。この配置方法は、各振動拡張素子10aを平面視で縦横それぞれ3個づつ配置することにより正方形を形成し、この正方形の中央に、この正方形の2つの対角線の方向に延長する振動拡張素子10aより大きい寸法の振動拡張素子10bを配置するものである。この構成により振動拡張素子10bとその周囲の各振動拡張素子10aとの間にほ2等辺3角形の濾材面Tが形成される。この方法によっても、濾材面Tの濾材中各振動伝達板44、46からの距離が最も遠い位置の濾材の該振動伝達板44、46からの距離を比較的に短くすることができる。
【0067】
なお、振動素子、振動拡張手段の構成は上記のものに限られるものではなく、濾材層の大きさ、濾材の構成、種類、粒径等に応じて種々の改変が可能である。また、振動拡張手段として枠体と複数の振動拡張素子を使用する場合でも、枠体の形状、振動拡張素子の振動伝達板の枚数、形状、上下方向のピッチ、各振動拡張素子間のピッチ等は適宜変更が可能である。また、上記実施形態においては、振動拡張手段の枠体および振動拡張素子としては鋼製のものを使用し、各構成要素は溶接により固定しているが、これらの構成要素を硬質プラスチックで作成し、接着剤で固定するようにしてもよい。
【0068】
振動素子としては、10Hz以上の振動数を濾材に伝えることができる振動素子を使用することが好ましい。特に振動数が40Hz〜500Hzの範囲内の振動素子は市販のものが容易に入手できるので好適である。ただし、超音波発生装置による振動は振動の到達距離が数mmと短いので、本発明の水処理装置における振動手段として使用するには不適である。
【0069】
次に図1の実施形態にかかる水処理装置の動作について説明する。
原水濾過時には、上層2の表面上の水の水深を所定の深さに維持しつつ送水ポンプから原水送水管6を介して原水混流ジェットノズル7に原水を供給し、ジェットノズル7における水の流速をたとえば1.5〜3リットル/分とすることにより原水をジェット水流とする一方ジェットノズル7内に開口する空気導入管15から原水混流ジェットノズル7内に空気がたとえば流速0.5〜1リットル/分で吸気され、これによってジェット水流が空気を巻き込み多数の小さい気泡とし、この多数の気泡を含む混流ジェット水流がジェットノズル7の原水噴出口7bから上層2の上の水中に放出されることにより、水中の溶存酸素は飽和状態に近くなっている。水中の鉄は溶存酸素と反応して濾材表面で水酸化鉄として捕捉される。こうして水中の鉄等の溶解性成分が酸化されて不溶性成分となり、鉄成分は主として上層2を形成するゼオライトの粒子の表面で捕捉され、マンガン成分は主として下層3を形成する濾過砂の粒子の表面で高濃度の溶存酸素により活性化されたバクテリアによりにより生物処理で捕捉される。これらの不溶性成分およびその他の異物が濾材層4により濾過された濾過水は濾過水取出し管として機能する集配水管13から外部に取出される。
【0070】
上記の濾過作用を継続すると、時間が経つにつれて上層2の表面に酸化物のフロックその他の異物が蓄積し、上層2の表面部はフロックその他の異物で覆われ目詰まりを起こして閉塞するために濾材層4はその濾過機能が減少する。上層表面部の目詰まりが生じると上層表面上の水位が徐々に高まるので、水位がある一定のレベルに達したら次の部分洗浄工程と全体洗浄工程のいずれかを選択して実施することにより濾材層4の洗浄を行う。
【0071】
部分洗浄工程
(1)原水の供給を一時止める濾過処理中断工程を行う。
【0072】
(2)逆洗時に逆洗水供給管として機能する集配水管13から逆洗水を上層洗浄速度(たとえば5〜30m/h)で流入させながら振動素子9をオンして作動させ、その振動を振動拡張素子10により上層2の濾材全体に伝播することによって上層2の濾材を振動させ濾材を擦り合わせることにより濾材表面を閉塞している水酸化鉄を濾材から剥離させ、逆洗水による上向流により洗い流す上層洗浄工程を行う。逆洗水を比較的低速の上層洗浄速度で供給することにより振動手段による濾材振動によって剥離されたスラッジを排水トラフへ排出する。
【0073】
(3)集配水管13から逆洗水を上層洗浄速度で流入させ下層3および上層2の濾材を上向流で洗浄することにより主として上層において捕捉された鉄成分を含む水を排水トラフ12から排水する濁水排水工程を行う。
【0074】
全体洗浄工程
(1)原水の供給を止め、上層の濾材の表面近傍まであるいは上層中の所定の高さまで水位が下がるまで濾過処理を行う濾過処理中断工程を行う。
【0075】
(2)集配水管13から逆洗水を上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度より速い全体洗浄速度(たとえば30〜60m/h)で流入させ下層3および上層2の濾材を急速上向流で洗浄する洗浄工程を行う。
【0076】
(3)上層および下層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下で速度で上向流の供給を行いながら上層および下層の濾材を沈降させる静置工程。
【0077】
(4)上層洗浄速度で上向流の供給を継続して上層および下層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を排水トラフ12から排出する濁水排水工程。
【0078】
上記部分洗浄工程と全体洗浄工程のいずれを選択するかは、原水中の鉄とマンガンの濃度比および濾過処理速度等に応じて部分洗浄工程と全体洗浄工程のそれぞれの頻度を決定し、その頻度に応じていずれかの工程を選択し、以後この頻度で部分洗浄および全体洗浄を行えばよい。
【0079】
図10は本発明の水処理装置の他の実施形態を模式的に示す概略図である。図10において、図1の実施形態と同一構成要素は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0080】
図10の装置においては、集配水管13には濾過水を吸引して取り出すためのポンプ18が接続されており、また濾過槽5の上部には上層2の上の水位を計測する水位計19が設けられている。
【0081】
このポンプ18の制御は次にように行う。ポンプ18による単位時間あたり処理水量を原水供給量よりもやや多く設定しておく。濾過作用を継続すると上層2上の水位は徐々に低下するので、この水位を水位計19で計測し、水位が所定の水位まで下がったらポンプ18を一時停止して水位が一定のレベルまで回復するのを待つ。水位がこのレベルまで回復したらポンプ18を再稼動し、以後上記動作を繰り返す。
【0082】
ポンプ18の制御は、上記と逆にポンプ18による単位時間あたり処理水量を原水供給量よりもやや少なく設定しておいて、水位が所定の水位まで上がったら原水供給を一時停止して水位が一定のレベルまで上がるのを待ち、水位がこのレベルまで上がったら原水供給を再稼動し、以後上記動作を繰り返すようにしてもよい。
【0083】
また、本発明の他の実施形態においては、濾過処理のための通常運転時の濾過槽5の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき部分洗浄工程を自動的に開始するように構成する。抵抗値を計測するには差圧計により濾過槽の差圧を計測してもよいし、水位系により計測した水位が所定値まで上がったらこの水位を所定の抵抗値とみなしてもよい。これによって、濾材層の上層において洗浄が必要な程度に目詰まりが生じたとき、自動的に部分洗浄工程が開始されるので、部分洗浄工程を予め決まった日程に従って行うよりも能率的に行うことができる。
【0084】
他の方法として、濾過槽の抵抗値が所定値に達したら部分洗浄を行うこととし(自動的でもよいし、所定値を随時計測してもよい)、部分洗浄後に抵抗値が所定値に達するまでの時間が所定時間以下になったら自動的に全体洗浄工程を行うようにしてもよい。
【0085】
図15は一定時間Tが経過するごとに部分洗浄工程を行う場合の時間と濾過槽の抵抗値(差圧)Δpの関係を示すグラフであり、横軸は時間、縦軸は抵抗値を示す。図15において、部分洗浄工程ごとに抵抗値Δpが所定値bに達する時間を図ると、この時間は次のように変化する。すなわち、運転開始時の初期抵抗値をaとし、最初の部分洗浄時P1における抵抗値を所定値bとし、この抵抗値に達するまでの時間をt1とすると、最初の部分洗浄P1により抵抗値はcまで低下するが、この抵抗値は初期抵抗値aまでは低下しないので、次に濾過処理のための運転を行うと、抵抗値が所定値bに達する時間t2はt1よりも短い。2回目の部分洗浄P2により抵抗値はeまで下がるがこの値はcよりも高い。したがって次に濾過処理のための運転を行うと、抵抗値が所定値bに達する時間t3は時間t2よりも短い。
【0086】
そこで、部分洗浄工程を抵抗値が所定値に達するごとに行うこととし、その場合に濾過処理のための通常運転時に濾過槽の抵抗値Δpが部分洗浄工程ごとに所定値bに達する時間t1、t2、t3を予め計測しておき、2回目の部分洗浄P2の後最後の部分洗浄工程P3の前に抵抗値が所定値bに達する時間t3が所定の時間Ta以下である時、自動的に全体洗浄工程を開始することとすれば、所定値bを計測するだけで、簡単な方法で全体洗浄を効率的に行うことができ、濾材層を常に理想的な状態に維持することができる。
【0087】
図11は本発明の方法を実施するための水処理装置の他の実施形態を示す該略図である。この実施形態は、原水中のマンガンの濃度が非常に高く、図1または図10に示す装置では充分にマンガンを除去することができない場合でも有効にマンガンを除去することができる洗浄方法である。図11の装置において、図1の装置と同一構成要素は図1と同一符号で示し、説明を省略する。
【0088】
この水処理装置60は、図1の装置の集配水管13の下流側に下層3の濾材と同一材料からなる後段濾材層33を収容する後段濾過槽35を備え、後段濾過槽35は、濾過水取出し管として機能する集配水管13に連通し後段該濾材層33の上方に開口するする濾過水流出口27と、後段濾材層33によって濾過された水を取り出すための濾過水取出し管および後段濾材層33に逆洗水を供給するための逆洗水供給管として機能する集配水管43、後段濾材層33の上方において後段濾過槽35に設けられた排水トラフまたは排水口12とをさらに備える。濾過水流出口27の構造および作用は原水混流ジェットノズル7と同一であるので、その説明を省略する。集配水管13および43は逆洗水送水管47に接続しており、逆洗水送水管47には開閉弁48、55が介設されている。また、集配水管43には濾過水送水管49が接続しており、この濾過水送水管49には開閉弁50が介設されている。また、集配水管13と濾過水流出口27は濾過水送水管54によって相互に接続されており、濾過水送水管54には濾過水を後段濾材層33に供給するためのポンプ52および開閉弁53が介設されている。
【0089】
なお、図1および図11の実施形態においては、支持砂利層17が設けられているが、支持砂利層を使用せず、集配水管を濾材層の下層および後段濾材層の底部に埋設するように変更することも可能である。
【0090】
支持砂利層を使用しない場合の集配水管13の好適な1例を図12(a)の断面側面図および図12(b)の平面図に示す。なお図示の例は集配水管13を示すものであるが、集配水管43も同一構成のものである。集配水管13は濾過槽5内に水平方向に複数本並行に配置されており、各集配水管は外筒であるスクリーン筒70の内側中央に内部多孔管72が配置されており、各内部多孔管72は長手方向に複数の集配水孔74が両側に形成されている。スクリーン筒70はらせん状ワイヤを周方向に所定間隔で配置された支持ロッドに巻き付けて形成した公知の構造のものを使用することができる。なお図12(a)においてはスクリーン筒70は一部を取り除いて示してある。
【0091】
各内部多孔管72はフランジ部78によりスクリーン筒70に接続されるとともにフランジ部80により集配水本管76に接続されている。
【0092】
図1の装置1においては、原水中のマンガンの濃度が非常に高い場合は、支持砂利層17にもマンガンが堆積して被膜を作り支持砂利層および集配水管に目詰まりが生じる場合があり、この場合は支持砂利層17の砂利や集配水管は全体洗浄工程によっても洗浄できないので、支持砂利層17全体および集配水管を取り出して洗浄する必要があり、非常に手間がかかる作業が必要になるが、支持砂利層を使用せず、スクリーン筒70および内部多孔官72からなる集配水管13、43を炉材槽4の下層3および後段濾材層33に埋設する場合は、原水中のマンガン濃度が非常に高い場合でも、マンガンは集配水管のスクリーン筒の外周部に堆積するので、この場合は、スクリーン筒内の内部多孔管72のみを取り外しスクリーン内部からスクリーンを洗浄することにより比較的に簡単な作業ですみ、有利である。
なお、この集配水管は装置60だけでなく、図1の装置1に使用することもできる。この場合図1の装置1において支持砂利層17は使用しないで、集配水管を下層3の底部に埋設すればよい。
【0093】
また、支持砂利層の洗浄のため、動力源に接続された棒状振動素子を支持砂利層にまで差し込んで逆洗水を流しながら支持砂利層を洗浄すれば、支持砂利層を取り出さなくても簡単に洗浄することができる。
【0094】
次にこの装置60の動作について説明する。
濾過時には、上層2によって鉄が除去され、下層3によってマンガンの相当部分が除去された濾過水は集配水管13から濾過水送水管54を介して後段濾材層33に供給され、残余のマンガンが後段濾材層33によって除去される。この時逆洗水送水管47の弁48、55は閉じており、濾過水送水管54、49の弁53、50は開いている。
部分洗浄工程および全体洗浄工程は以下のように行われる。
部分洗浄工程
(1)原水の供給を止める濾過処理中断工程を行う。この時逆洗水送水管47の弁48、55は閉じており、濾過水送水管54、49の弁53、50は開いている。
(2)逆洗水送水管47の弁55は閉じたまま弁48を開き、濾過水送水管54、49の弁53、50は閉じた状態で、集配水管13から逆洗水を上層洗浄速度(たとえば5〜30m/h)で流入させながら振動拡張素子10を作動させて上層2の濾材を擦り合わせ洗浄する上層洗浄工程を行う。上層洗浄工程は水位が排水トラフ12に達する前に終了する。
(3)上層濾材の攪拌洗浄を終了した後上層2の攪拌された濾材を沈降させる静置工程を行う。
(4)集配水管13から逆洗水を上層洗浄速度で流入させ下層3および上層2の濾材を上向流で洗浄することにより主として上層において捕捉された鉄成分を含む水を排水トラフ12から排水する濁水排水工程を行う。
【0095】
全体洗浄工程
(1)原水の供給を止める濾過処理中断工程を行う。
(2)濾過水送水管54の弁53および濾過水送水管49の弁50を閉じ逆洗水送水管47の弁48および55を開いた状態で、集配水管13および43から逆洗水を上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度よりも速い全体洗浄速度(たとえば30〜60m/h)で流入させ下層3、上層2の濾材および後段濾材層33の濾材を急速上向流でそれぞれ攪拌しながら、上層2および後段濾材層33の振動拡張素子10を作動させて上層、下層および後段濾材層の濾材を洗浄する洗浄工程を行う。
(3)上層、下層および後段濾材層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下の速度で上向流の供給を行いながら上層、下層および後段濾材層の濾材を沈降させる静置工程を行う。
(4)上層洗浄速度で上向流の供給を継続して上層、下層および後段濾材層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を排水トラフ12から排出する濁水排水工程を行う。
【0096】
上記部分洗浄工程と全体洗浄工程のいずれを選択するかは、原水中の鉄とマンガンの濃度比および濾過処理速度等に応じて部分洗浄工程と全体洗浄工程のそれぞれの頻度を決定し、その頻度に応じていずれかの工程を選択し、以後この頻度で部分洗浄および全体洗浄を行えばよい。
【0097】
図13および図14は本発明の他の実施の態様を模式的に示す概略図である。
原水中に高濃度のアンモニア性窒素が含有されている場合、アンモニア性窒素を捕捉除去するためには鉄やマンガンに比べ10倍以上の大量の溶存酸素を必要とする。したがって、濾過処理中に原水混流ジェットノズルからの混流ジェット水流によるエアレーションのみでは濾材層においてアンモニア性窒素を充分に捕捉除去することが困難な場合が生じることがわかった。
【0098】
そこで、このような事態に対処するため、原水が高濃度のアンモニア性窒素を含有する場合には、濾材層中に溶存酸素を追加的に供給して、混流ジェット水流によるエアレーションを補うことが好ましい。
【0099】
濾材層中に溶存酸素を追加供給するには、種々の方法があるが、好ましい方法の一つとして、直径が数百μm以下の微細気泡を濾材層中に注入することが有効である。
【0100】
図13はその1例を示すもので、溶存酸素供給装置90は、処理水の一部を吸入する処理水吸入管92と、この吸入管92から処理水の一部を吸入し、処理水と微細気泡が混合した気液混合流体を気液注入管91から濾材層中に注入する微細気泡発生装置93を備えている。この微細気泡発生装置93としては、公知の装置を使用することができる。また処理水吸入管92と気液注入管91としては集配水管13と同様の構造のものを使用することができる。気泡の直径が大きいと気泡は濾材層の濾材中に滞留し空気溜りを生じやすく、この空気溜りは濾材の水処理面積を減少させるので濾過効率を妨げることになるが、本実施形態で使用する微細気泡は浮力が小さく浮上速度が遅いので、処理水流の流速を早くすることにより流されて、濾材層に溶存酸素を供給しながら濾材層の下層に達し、集配水管13から排出され、空気溜りを生じるおそれがない。したがって、高速処理を目標とする本願発明においては、溶存酸素の追加供給方法として、微細気泡の注入は好ましい方法である。微細気泡の注入量は、アンモニア性窒素の濃度等原水の状態に依存する溶存酸素の追加必要量に応じて最適値を決定すればよい。
【0101】
図14は同一目的を達成するための他の例を示すもので、溶存酸素供給装置95は、集配水管13から分岐するように接続され処理水の一部を吸入する処理水吸入管96と、この吸入管96から処理水の一部を吸入し、処理水と微細気泡が混合した気液混合流体を気液注入管97から濾材層中に注入する微細気泡発生装置98を備えている。処理水吸入管96と気液注入管97の構造及は図13の装置と同様である。
【実施例】
【0102】
以下本発明の実施例について説明する。
図1の水処理装置を用いて地下水を原水とする水処理を行った。
【0103】
水処理装置の濾過槽は内径1200mmの平面視円形のものを使用した。上層に埋設した各振動拡張素子10の相互間のピッチ(4つの振動拡張素子10によって形成される正方形の1辺の長さ)は150mmであった。振動拡張素子10の配置方法は図6に示す方法を使用した。振動拡張素子10の支持棒の長さは640mmであった。
【0104】
振動素子9としては、市販のコンクリートバイブレーター1本を使用し、この振動素子9を枠体40の中央に配置した。この振動素子は動力源として商用交番電流を使用し、インバータにより電流の周波数を400Hzに変換するもので、振動素子の振動数は200Hz(12000VPM)であった。
【0105】
この水処理装置を使用して、濾過、部分洗浄、全体洗浄を行うことにより濾過速度500m/日で下表1の濾過処理結果を得た。
【0106】
【表1】
【0107】
この結果、本発明による水処理処理装置を使用して部分洗浄、全体洗浄を実施することにより、濾過速度500m/日で充分な濾過処理を達成することができることが判った。
【符号の説明】
【0108】
1、60 水処理装置
2 上層
3 下層
4 濾材層
5 濾過槽
6 原水送水管
7 原水混流ジェットノズル
8 振動手段
9 振動素子
10 振動拡張素子
12 排水トラフまたは排水口
13 集配水管
33 後段濾材層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を備える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置され濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層に埋設される部分を有し該濾材層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備える水処理装置の該濾材層を洗浄する方法であって、該逆洗水供給管から逆洗水を流入させながら該濾材層の濾材を振動させるようにして該濾材層を洗浄することを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法。
【請求項2】
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を備える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置された上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該上層に埋設される部分を有し該上層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備える水処理装置の該濾材層を洗浄する方法であって、該濾材層の洗浄を、主として該上層の洗浄を行う部分洗浄と該上層および該下層の双方を洗浄する全体洗浄のいずれかを選択して行い、該部分洗浄工程は、
(イ)原水の供給を一時停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を上向流として上層洗浄速度で流入させながら該上層の濾材を振動させることにより濾材を擦り合わせ、濾材表面を閉塞している水酸化鉄を濾材から剥離させて上向流により洗い流す上層洗浄工程
(ハ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備え、該全体洗浄工程は、
(イ)原水の供給を停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を該上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度よりも速い全体洗浄速度で流入させながら該濾材振動手段を作動させ、該上層および該下層の濾材を洗浄する洗浄工程
(ハ)該上層および下層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下の速度で上向流の供給を継続しながら該上層および下層の濾材を沈降させる静置工程
(ニ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層および下層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備えることを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法。
【請求項3】
濾過処理のための通常運転時の濾過槽の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき該部分洗浄工程を自動的に開始することを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置濾材層の洗浄方法。
【請求項4】
濾過処理のための通常運転時の濾過槽の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき該部分洗浄工程を行い、該部分洗浄工程後に濾過槽の抵抗値が所定値に達するまでの時間が所定の時間以下となった時に該全体洗浄工程を自動的に開始することを特徴とする請求項2に記載の水処理装置濾材層の洗浄方法。
【請求項5】
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を供える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置された濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層に埋設される部分を有し該濾材層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備えことを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
該濾材層中に溶存酸素を追加供給する手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を供える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置された上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該上層に埋設される部分を有し該上層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
該水処理装置は、濾過水取出し方向に見て該濾過水取出し管の下流側に該下層の濾材と同一材料からなる後段濾材層を収容する後段濾過槽を備え、該後段濾過槽は、該濾過水取出し管に連通し該後段該濾材層の上方に開口するする濾過水流出口と、該後段濾材層によって濾過された水を取り出すための濾過水取出し管と該後段濾材層に逆洗水を供給するための逆洗水供給管と、該後段濾材層の上方において該後段濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の水処理装置。
【請求項9】
該濾過水取出し管および該逆洗水供給管は、該濾過槽の底部に水平方向に複数本並行に配置された集配水管からなり、各集配水管は外筒であるスクリーン筒とその内側中央に配置された内部多孔管からなり、該内部多孔管は長手方向に複数の集配水孔が両側に形成されていることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の水処理装置。
【請求項10】
該濾材振動手段は、動力源に接続された1または複数の振動素子と、濾材中に埋設されるようにして該振動素子に取り付けられ、該振動素子の振動を濾材層の濾材に伝達する振動拡張手段を備えることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の水処理装置。
【請求項11】
該振動拡張手段は、該振動子に取り付けられる枠体と、該枠体に固定された複数の振動拡張素子を備え、該振動拡張素子は、それぞれ、濾材層の上下方向に延長して上端部において該枠体に固定された支持棒と、該濾材層の上下方向に所定の間隙を設けて相互に平行に配置されるようにして該支持棒に固定された複数の第1振動伝達板と、該第1振動伝達板と直交するようにしてかつ相互に平行に配置されるようにして該第1振動伝達板の該間隙において該支持棒に固定された複数の第2振動伝達板を備えることを特徴とする請求項10記載の水処理装置。
【請求項12】
隣り合う2つの該振動拡張素子によって平面視ほぼ正方形の濾材面が形成されるように該複数の振動拡張素子を配置したことを特徴とする請求項11記載の水処理装置。
【請求項13】
隣り合う2つの該振動拡張素子によって平面視ほぼ長方形の濾材面が形成されるように該複数の振動拡張素子を配置したことを特徴とする請求項11記載の水処理装置。
【請求項1】
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を備える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置され濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層に埋設される部分を有し該濾材層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備える水処理装置の該濾材層を洗浄する方法であって、該逆洗水供給管から逆洗水を流入させながら該濾材層の濾材を振動させるようにして該濾材層を洗浄することを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法。
【請求項2】
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を備える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置された上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該上層に埋設される部分を有し該上層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備える水処理装置の該濾材層を洗浄する方法であって、該濾材層の洗浄を、主として該上層の洗浄を行う部分洗浄と該上層および該下層の双方を洗浄する全体洗浄のいずれかを選択して行い、該部分洗浄工程は、
(イ)原水の供給を一時停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を上向流として上層洗浄速度で流入させながら該上層の濾材を振動させることにより濾材を擦り合わせ、濾材表面を閉塞している水酸化鉄を濾材から剥離させて上向流により洗い流す上層洗浄工程
(ハ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備え、該全体洗浄工程は、
(イ)原水の供給を停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を該上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度よりも速い全体洗浄速度で流入させながら該濾材振動手段を作動させ、該上層および該下層の濾材を洗浄する洗浄工程
(ハ)該上層および下層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下の速度で上向流の供給を継続しながら該上層および下層の濾材を沈降させる静置工程
(ニ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層および下層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備えることを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法。
【請求項3】
濾過処理のための通常運転時の濾過槽の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき該部分洗浄工程を自動的に開始することを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置濾材層の洗浄方法。
【請求項4】
濾過処理のための通常運転時の濾過槽の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき該部分洗浄工程を行い、該部分洗浄工程後に濾過槽の抵抗値が所定値に達するまでの時間が所定の時間以下となった時に該全体洗浄工程を自動的に開始することを特徴とする請求項2に記載の水処理装置濾材層の洗浄方法。
【請求項5】
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を供える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置された濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層に埋設される部分を有し該濾材層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備えことを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
該濾材層中に溶存酸素を追加供給する手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混流ジェット水流として噴出する原水噴出口を供える1本または複数本の原水混流ジェットノズルと、表面が該原水混流ジェットノズルの原水噴出口と所定の間隔を置いて該原水混流ジェットノズルの下方に配置された上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該上層に埋設される部分を有し該上層の濾材を振動させる濾材振動手段と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とを備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
該水処理装置は、濾過水取出し方向に見て該濾過水取出し管の下流側に該下層の濾材と同一材料からなる後段濾材層を収容する後段濾過槽を備え、該後段濾過槽は、該濾過水取出し管に連通し該後段該濾材層の上方に開口するする濾過水流出口と、該後段濾材層によって濾過された水を取り出すための濾過水取出し管と該後段濾材層に逆洗水を供給するための逆洗水供給管と、該後段濾材層の上方において該後段濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口とをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の水処理装置。
【請求項9】
該濾過水取出し管および該逆洗水供給管は、該濾過槽の底部に水平方向に複数本並行に配置された集配水管からなり、各集配水管は外筒であるスクリーン筒とその内側中央に配置された内部多孔管からなり、該内部多孔管は長手方向に複数の集配水孔が両側に形成されていることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の水処理装置。
【請求項10】
該濾材振動手段は、動力源に接続された1または複数の振動素子と、濾材中に埋設されるようにして該振動素子に取り付けられ、該振動素子の振動を濾材層の濾材に伝達する振動拡張手段を備えることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の水処理装置。
【請求項11】
該振動拡張手段は、該振動子に取り付けられる枠体と、該枠体に固定された複数の振動拡張素子を備え、該振動拡張素子は、それぞれ、濾材層の上下方向に延長して上端部において該枠体に固定された支持棒と、該濾材層の上下方向に所定の間隙を設けて相互に平行に配置されるようにして該支持棒に固定された複数の第1振動伝達板と、該第1振動伝達板と直交するようにしてかつ相互に平行に配置されるようにして該第1振動伝達板の該間隙において該支持棒に固定された複数の第2振動伝達板を備えることを特徴とする請求項10記載の水処理装置。
【請求項12】
隣り合う2つの該振動拡張素子によって平面視ほぼ正方形の濾材面が形成されるように該複数の振動拡張素子を配置したことを特徴とする請求項11記載の水処理装置。
【請求項13】
隣り合う2つの該振動拡張素子によって平面視ほぼ長方形の濾材面が形成されるように該複数の振動拡張素子を配置したことを特徴とする請求項11記載の水処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−11116(P2011−11116A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155435(P2009−155435)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(305011053)株式会社ナガオカ (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(305011053)株式会社ナガオカ (8)
【Fターム(参考)】
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