説明

水処理装置及び水処理方法

【課題】有機物を含有する廃水や汚染水などの被処理水に含まれる有機物を効率的に分解することにより、後流の濾過装置における負荷を軽減することができ、しかも配管等の腐蝕を回避することができる水処理装置を提供する。
【解決手段】水処理装置12は、有機物を含有する被処理水15aを所定の圧力に加圧する大口径流路22、小口径流路23及び加圧ポンプ24と、加圧された被処理水15aにレーザ光27を照射して所定温度に加熱するレーザ光源25及び集光レンズ26とを有し、レーザ光源25から照射されたレーザ光27を集光レンズ26によって、加圧した被処理水15aが流通する小口径流路23における該流路内の流路壁から離間した領域29に集光させ、この領域29内の廃水15aを加熱して超臨界水又は亜臨界水を生成させ、生成した超臨界水又は亜臨界水を用いて被処理水15a中の有機物を分解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水や汚染水など有機物含有水に含まれる有機物を超臨界水又は亜臨界水で分解する水処理装置及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工場をはじめ、各種製造工場、事業所、集合住宅等から排出され様々な有機物やその他異物を含んだ廃水は、一般に、雨水と共に大型の下水処理施設で浄化され飲料水などに利用可能な上水に造水されて再利用されるが、例えば、都市部から遠く離れた一部の地域、発展途上国の内陸部等においては必要な浄化のための設備が整備されていない地方もあり、廃水の流入により或いはその他の理由により汚染された河川などの汚染水の使用を余儀なくされていることもある。
【0003】
また、都市部や先進国においても、地震等の災害直後の一時期においては、飲料水を確保できない状況に陥る虞もある。従って、工場又は家庭の排水、雨水、その他汚染水等から上水を効率よく製造し且つ煩雑でない設備により実施できる造水技術の確立が望まれている。
【0004】
ところで、従来の下水処理施設においては、例えば物理的処理と生物的処理を併用し、大規模な貯水槽において汚物等の比較的大きい固形物を沈殿除去した後(物理的処理)、活性汚泥処理(生物的処理)を行い、その後、例えば緩慢濾過、凝集剤を適用した急速濾過等によって固形物を取り除き、次いで、色又は臭いを取り除くためのエアレーション、粉末活性炭処理等の高度処理を行い、必要に応じてオゾン酸化、活性炭吸着処理等を施し、最終的に塩素による滅菌処理を施して上水を造水していた。
【0005】
また、最近になって、下水中の有機廃棄物を分解する技術として、超臨界水又は亜臨界水を用いて有機物を分解処理する有機廃棄物の分解処理技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−165142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の下水処理施設を適用した造水技術においては、生物処理後の被処理水に有機物等の固形物が相当量含まれているために濾過装置の負荷が高すぎて、処理できずに廃棄される水が、例えば全体の60%程度を占めるという問題がある。また、超臨界水又は亜臨界水によって有機物を分解する有機廃棄物の分解処理技術においては、超臨界水又は亜臨界水との接触に起因する配管をはじめとする設備の腐蝕を回避するための特別の措置が必要となり、装置構成が複雑になるか又は処理工程が煩雑になるという問題がある。
【0008】
本発明の課題は、廃水や汚染水などの有機物含有水に含まれる有機物をより効率よく分解することによって後流の濾過装置における負荷を軽減することができ、しかも配管をはじめとする設備の腐蝕を回避することができる水処理装置及び水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1記載の水処理装置は、有機物を含有する被処理水を所定の圧力に加圧する加圧装置と、前記加圧装置によって加圧された前記被処理水を所定温度に加熱することにより超臨界水又は亜臨界水を生成させ、該超臨界水又は亜臨界水で前記被処理水に含有されている前記有機物を分解する加熱装置とを有し、前記加熱装置は、前記加圧装置によって加圧された前記被処理水に向けてレーザ光を照射するレーザ光照射装置と、該レーザ光照射装置から照射されたレーザ光を前記加圧された被処理水が流通する流路における該流路内の流路壁から離間した領域に集光させる集光レンズを備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の水処理装置は、請求項1記載の水処理装置において、前記加圧装置は、前記被処理水を大口径の流路から該大口径の流路よりも流路断面積が小さい小口径の流路へ導入することによって前記被処理水を加圧するものであることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の水処理装置は、請求項2記載の水処理装置において、前記小口径の流路の流路壁の少なくとも一部は透明であり、前記レーザ光照射装置は前記透明の流路壁を介して前記小口径の流路内の領域に前記レーザ光を照射することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の水処理装置は、請求項2又は3記載の水処理装置において、前記小口径の流路は二重管構造を有しており、内管と外管との間の空間部に真空断熱層が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の水処理装置は、請求項2又は3記載の水処理装置において、前記小口径の流路は二重管構造を有しており、内管と外管との間の空間部に熱回収用の気体が流通していることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の水処理装置は、請求項2又は3記載の水処理装置において、前記小口径の流路は二重管構造を有しており、内管と外管との間の空間部に空隙を有する充填材が充填されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の水処理装置は、請求項2乃至6のいずれか1項に記載の水処理装置において、前記小口径の流路の前記レーザ光が照射される流路壁と対向する流路壁の、前記流路内側の流路壁面に熱反射板が配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の水処理装置は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水処理装置において、前記所定の圧力は、1.5MPa乃至100MPaであり、前記所定の温度は、200℃乃至500℃であることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の水処理装置は、請求項8記載の水処理装置において、前記所定の圧力は、1.5MPa乃至100MPaであり、前記所定の温度は、200℃乃至374℃で、前記被処理水が液体の状態であることを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の水処理装置は、請求項8記載の水処理装置において、前記所定の圧力は、22MPa乃至100MPaであり、前記所定の温度は、374℃乃至500℃であることを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するために、請求項11記載の水処理方法は、有機物を含有する被処理水を所定の圧力に加圧する加圧ステップと、前記加圧ステップによって加圧された被処理水を所定温度に加熱して超臨界水又は亜臨界水を生成させ、該超臨界水又は亜臨界水で前記有機物を分解する加熱ステップとを有し、前記加熱ステップは、前記加圧ステップによって加圧された前記被処理水に向けてレーザ光を照射するレーザ光照射ステップと、該レーザ光照射ステップで照射されたレーザ光を前記加圧された被処理水が流通する流路における該流路内の流路壁から離間した領域に集光させる集光ステップを備えていることを特徴とする。
【0020】
請求項12記載の水処理方法は、請求項11記載の水処理方法において、前記加圧ステップは、前記被処理水を大口径の流路から該大口径の流路よりも流路断面積が小さい小口径の流路へ導入することによって前記被処理水を加圧することを特徴とする。
【0021】
請求項13記載の水処理方法は、請求項12記載の水処理方法において、前記小口径の流路の流路壁の一部は透明であり、前記レーザ光照射ステップは前記透明の流路壁を介して前記流路内の領域に前記レーザ光を照射することを特徴とする。
【0022】
請求項14記載の水処理方法は、請求項12又は13記載の水処理方法において、前記小口径の流路は二重管構造を有しており、内管と外管との間の空間部に気体を流通させて前記内管から放出される熱を回収する熱回収ステップを有することを特徴とする。
【0023】
請求項15記載の水処理方法は、請求項11乃至14のいずれか1項に記載の水処理方法において、前記所定の圧力は、1.5MPa乃至100MPaであり、前記所定の温度は、200℃乃至500℃であることを特徴とする。
【0024】
請求項16記載の水処理方法は、請求項15記載の水処理方法において、前記所定の圧力は、1.5MPa乃至100MPaであり、前記所定の温度は、200℃乃至374℃で、前記被処理水が液体の状態であることを特徴とする。
【0025】
請求項17記載の水処理方法は、請求項15記載の水処理方法において、前記所定の圧力は、22MPa乃至100MPaであり、前記所定の温度は、374℃乃至500℃であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、廃水や汚染水などの有機物含有水に含まれる有機物をより効率的に分解することによって後流の濾過装置における負荷を軽減することができ、しかも配管をはじめとする設備の腐蝕を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】造水システムの一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る水処理装置の要部を示す説明図であり、図2(A)は、その構成図、図2(B)は、図2(A)のB−B線に沿う断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る水処理方法を示すフローチャートである。
【図4】超臨界水及び亜臨界水の生成条件を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る水処理装置の変形例の要部である被処理水流路の断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る水処理装置の他の変形例の要部である被処理水流路の断面図であり、図6(A)は被処理水導入時、図6(B)は被処理水加圧時、図6(C)は被処理水加熱(レーザ光照射)時、図6(D)は、被処理水排出時を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
本発明の水処理装置は、廃水や汚染水などの有機物を含有する被処理水を所定の圧力に加圧する加圧装置と、加圧装置によって加圧された被処理水を所定温度に加熱して超臨界水又は亜臨界水を生成させ、該超臨界水又は亜臨界水で被処理水中の有機物を分解する加熱装置を有するものであり、下水、工場排水、生活排水、雨水等若しくはこれらが混合した廃水、或いはこれらの水が混入若しくは他の原因により汚染された河川などの汚染水から上水を製造する造水システムの一部を構成する。
【0030】
図1は、造水システムの一例を示すブロック図である。
【0031】
図1において、この造水システム10は、被処理水15中の大きな固形物を分解又は分離して処理負荷が均等化するように調整する汚水拡散槽11と、該汚水拡散槽11の出口液を加熱加圧して超臨界水又は亜臨界水を生成させ、該超臨界水又は亜臨界水で被処理水中の有機物を分解する水処理装置12と、該水処理装置12の出口液に含まれ前記水処理装置12で分解された分解残留物を濾別する逆浸透膜装置13と、該逆浸透膜装置13の出口液に、例えばプラズマ処理を施して上水16を製造する飲料水処理装置14とから主として構成されている。分解残留物には、排水処理装置12で分解され微細な固形物の状態となったものの他、分子レベルまで分解されたものがクラスター状に集まったもの、あるいは大きなサイズの分子も含まれる。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態に係る水処理装置の要部を示す説明図であり、図2(A)は、その構成図、図2(B)は、図2(A)のB−B線に沿う断面図である。
【0033】
図2(A)において、この水処理装置12は、処理対象である有機物含有被処理水(以下、単に「被処理水」ともいう。)15aを大口径の流路22から小口径の流路23に導入して加圧する加圧ポンプ24を有する。小口径の流路23は、透明で、且つ耐熱性に優れた、例えば石英ガラスで構成されている。
【0034】
大口径の流路22から小口径の流路23に導入された被処理水15aは加圧ポンプ24によって、例えば、25MPa乃至40MPaに加圧される。加圧された被処理水15aが流通する小口径の流路23とは空間を隔てた位置にレーザ光照射装置としてのレーザ光源25が配置されている。レーザ光源25は小口径の流路23を流通する被処理水15aに向けてレーザ光27を照射する。レーザ光源25と小口径の流路23との間には集光レンズ26が配置されている。集光レンズ26はレーザ光源25から照射されたレーザ光27を集光して小口径の流路23の流路壁から離間した流路23内の領域29(図2(B)参照)に照射する。
【0035】
レーザ光の照射を受けた高圧の被処理水15aは、高温高圧、例えば300℃乃至400℃、25MPa乃至40MPaとなり、被処理水15a中の水成分から超臨界水又は亜臨界水が生成する。このようにして超臨界水又は亜臨界水となった被処理水15aは、被処理水15aに含有されている有機物を分解する。小口径の流路23の後流には減圧装置28が設けられており、有機物が分解された処理後の被処理水15bは、小口径の流路23から減圧装置28に流入し、ここで、処理後の被処理水15bの圧力が回収される。
【0036】
以下に、このような構成の水処理装置を用いて実行される本発明の実施の形態に係る水処理方法について説明する。本水処理は、造水システム(図1)における逆浸透膜装置13による濾過処理の前処理として位置づけられるものであり、図示しない造水システム10の制御部におけるメモリに格納された水処理用のプログラムに従って同制御部におけるCPUに実行させることもできる。
【0037】
図3は、本発明の実施の形態に係る水処理方法を示すフローチャートである。
【0038】
図3において、被処理水を処理する際は、先ず、汚水拡散槽11(図1参照)で拡散させ、処理負荷が均等になるように調整した被処理水15aを水処理装置12(図2)に導入し(ステップS1)、加圧ポンプ24を用いて大口径の流路22を経て小口径の流路23に流入させ、これによって廃水15aを所定圧力、例えば25MPa乃至40MPaに加圧する(ステップS2)。
【0039】
次いで、小口径の流路23を流通する加圧された被処理水15aに向けてレーザ光源25からレーザ光27を照射し(ステップS3)、該レーザ光27を集光レンズ26によって集光させ、透明の流路壁を介して、例えば、図2(B)に示したように小口径の流路23の流路壁から離間した流路23内の領域29に照射して300℃乃至400℃に加熱し、これによって被処理水15a中の水成分から超臨界水又は亜臨界水を生成し(ステップS4)、超臨界水又は亜臨界水となった被処理水15aを用いて被処理水15a中の有機物を分解する(ステップS5)。
【0040】
このとき、超臨界水は、有機物をCOに分解し、亜臨界水は有機物をメタン(CH)ガスと微小なアミノ酸に分解する。
【0041】
次いで、有機物が分解された処理後の被処理水15bを減圧装置28に導入し、ここで被処理水15bの圧力を低減して有機物の分解によって生成したCO、メタン(CH)等のガス成分を分離し(ステップS6)、その後、処理後の被処理水15bを後流の逆浸透膜装置13(図1参照)に導入して処理後の被処理水15b中に残留する分解残留物を分離する(ステップS7)。次いで、分解残留物が分離された処理後の被処理水15bをそのさらに後流の飲料水処理装置14(図1)に導入し、ここで、例えばプラズマを用いた飲料水処理を施して飲料水としての上水を調製し(ステップS8)、一連の水処理を終了する。
【0042】
図3の水処理によれば、有機物を含有する被処理水15aを加圧、加熱して超臨界水又は亜臨界水を生成させ、該超臨界水又は亜臨界水によって被処理水15aに含まれる有機物を分解するようにしたので、後流の逆浸透膜装置13における負荷が軽減し、結果として、上水の精製効率が高くなり、廃水や汚水などである被処理水15aをほぼ完全に上水16としてリサイクルすることができる。
【0043】
また、超臨界水又は亜臨界水は酸化力が強く、被処理水15a中の有機物を強力に分解する一方、これに接触する容器、配管、シール部等の設備を腐蝕させる原因ともなるが、本実施の形態によれば、レーザ光源25から照射されたレーザ光27を集光レンズ26によって集光させ、小口径の流路23の流路壁から離間した流路23内の領域29に局所的に照射して流路壁から離間した流路23内の領域29内で超臨界水又は亜臨界水を生成して有機物を分解すると共に、その後、直ちに減圧装置28に導入して減圧するようにしたので、発生した超臨界水又は亜臨界水が流路23の壁面をはじめとする設備部材に接触することがない。このため、配管をはじめとする設備の腐蝕を未然に防止することができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、被処理水15aを連続的に大口径の流路22から小口径の流路23に導入して加圧し、レーザ光27を連続的に照射して有機物を連続的に分解することができ、大容量の処理装置へのスケールアップも容易である。
【0045】
図4は、超臨界水及び亜臨界水の生成条件を示す図である。超臨界水とは圧力22MPa以上且つ温度が374℃以上の水の状態を指し、亜臨界水とは超臨界状態以下の圧力または温度の液体の水を指す。
【0046】
本実施の形態においては、有機物を含有する被処理水15aを22MPa以上の圧力をかけながら374℃以上に加熱、又は液体状態を保つような適切な圧力をかけながら200℃以上に加熱する。これによって、被処理水15a中の水成分から超臨界水又は亜臨界水を生成させ、超臨界水又は亜臨界水となった被処理水15aを用いて被処理水15aに含まれる有機物を分解除去することができる。なお、前述の通り、被処理水は超臨界状態以下の圧力において亜臨界水となりうるが、実効的に亜臨界水となるためには200℃以上の温度において液体である必要があり、そのため、亜臨界水であるためには1.5MPa以上の圧力とする必要がある。また、超臨界状態であるためには原理的には圧力及び温度の上限は無い。しかしながら、実用上の観点から、本願技術の効果を得るためには100MPa以下の圧力及び500℃以下の温度でよい。
【0047】
本実施の形態において、水処理装置12の出口液を逆浸透膜装置13で処理した際に濾別された分解残留物濃度の高い被処理水15bを再度水処理装置12の入口に戻して循環処理することもできる。
【0048】
また、本実施の形態において、有機物が分解された処理後の被処理水15bが有する圧力は減圧装置28で回収される。圧力回収装置としては、例えばターボチャージャーが適用される。本実施の形態では、ターボチャージャーは、減圧装置28内に配された一方の羽根車と、該羽根車の回転軸に対して同軸で連結され、且つ加圧ポンプ24内に配された他方の羽根車とからなり、例えば、減圧装置28において流体を高圧から低圧に減圧する際、圧力差を利用して流体の流れを形成させ、その流れによって一方の羽根車を回転させ、他方の羽根車を回転させることによって、被処理水15aを流路22から流路23へ流入させる。
【0049】
本実施の形態において、減圧装置28によって圧力が回収され、圧力が低下した被処理水15bからガス成分が放出される。ガス成分には、加圧の際に被処理水15aに溶融した大気の成分のほか、固形物を分解した際に発生した分解生成物としてのガスも含まれる。ガス成分を放出した処理後の被処理水15bは、有機物が分解した微小なアミノ酸を含む水であり、例えば肥料として好適な利用価値を有する。
【0050】
本実施の形態において、小口径の流路23の長さは、例えば1m程度であり、小口径の流路23におけるレーザ光27が照射される流路壁と対向する流路壁の、流路内側の流路壁面に熱反射板を配置させることが好ましい。これによって、小口径の流路23からの熱の放散を防止することができる。
【0051】
本実施の形態において、水処理装置12の出口液である処理後の被処理水15bは、後流の逆浸透膜装置13に流入して分解残留物が分離されるが、超臨界水又は亜臨界水によって有機物の大部分が分解されているので、逆浸透膜装置13における負荷が低減し、詰まり等のトラブルが生じることはない。
【0052】
次に本発明の実施の形態に係る水処理装置の変形例について説明する。
【0053】
図5は、本発明の実施の形態に係る水処理装置の変形例の要部である被処理水流路の断面図である。この被処理水流路は図2の大口径の被処理水流路22と、該大口径の被処理水流路22に連結された小口径の被処理水流路23に相当する加圧装置である。
【0054】
図5において、この被処理水流路50は内径が大口径から小口径に順次縮径するテーパ状の内管51と、該内管51を覆うように同心円状に設けられた外管52とから主として構成された二重管構造を呈している。
【0055】
テーパ状の内管51の内壁面には、複数のバッフル板54が、例えば等間隔に設けられている。従って、被処理水15aは、バッフル板54によって速やかな流通が阻害され、内管51内を蛇行するように流通する。これによって、内管51における被処理水15aの滞留時間が長くなり、有機物の分解が促進される。
【0056】
このような構成の被処理水流路50を備えた水処理装置において、内管51の大口径側から被処理水15aを導入し、図示省略した加圧ポンプによって小口径側に押し出すことによって加圧し、以下、上述の実施の形態と同様にして、加圧された被処理水15aが流通する内管51の小口径側における流路壁から離間した流路51内の領域(図2(B)参照)にレーザ光を照射してその領域のみに超臨界水又は亜臨界水を生成し、以下同様にして廃水15aに含まれる有機物を分解する。
【0057】
本実施の形態の変形例によれば、加圧された被処理水15aが流通する内管51の小口径側における流路内の流路壁から離間した領域のみにレーザ光を照射して超臨界水又は亜臨界水を生成し、該超臨界水又は亜臨界水によって被処理水15aに含まれる有機物を分解するようにしたので、上記実施の形態と同様、後流の濾過装置における負荷を軽減することができると共に、配管をはじめとする設備の腐蝕を防止することができる。
【0058】
本実施の形態の変形例において、二重管構造を形成する内管51と外管52との間の空間53を、1.33×10−2Pa(1×10−4Torr)乃至1.33×10Pa(1Torr)程度に減圧された真空断熱層とすることが好ましい、これによって内管51からの熱の放散によるエネルギー損失を低減することができる。また、内管51と外管52との間の空間53を真空断熱層とする代わりに、空間53に空隙率の大きい充填材を充填することもできる。これによって、テーパ状の内管51から熱の輻射を防止して断熱効果を向上させることができる。
【0059】
本実施の形態の変形例において、内管51及び外管52における少なくともレーザ光照射部分をそれぞれ透明で高強度の材料、例えば石英ガラスで構成することが好ましく、これによって、レーザ光源から被処理水15aに向かって照射されるレーザ光の減衰を回避することができる。
【0060】
本実施の形態の変形例において、内管51と外管52との間の空間53に熱回収用ガスを流通させて、内管51から放散される熱を回収することもできる。このとき、熱回収用ガスとしては、例えば、窒素(N)、代替フロン、CO等を用いることができ、その圧力は、0.1MPa乃至5MPa程度に維持される。
【0061】
本実施の形態の変形例において、外管52の内壁面に、例えば金属からなる熱反射板を配置し、これによって熱損失を低減することもできる。
【0062】
次に、本発明の実施の形態に係る水処理装置の他の変形例について説明する。
【0063】
図6は、本発明の実施の形態に係る水処理装置の他の変形例の要部である被処理水流路の断面図であり、図6(A)は被処理水導入時、図6(B)は被処理水加圧時、図6(C)は被処理水加熱(レーザ光照射)時、図6(D)は、被処理水排出時を示す図である。この被処理水流路は、図2の大口径の被処理水流路22と、該大口径の被処理水流路22に連結された小口径の被処理水流路23と同様、被処理水15aを所定の圧力に加圧する加圧装置である。
【0064】
図6において、この被処理水流路60は、自動車のロータリーエンジンの原理を適用したものであり、真ん中がくびれた楕円形のケース61と、該楕円形のケース61内で回転する略三角形状のロータ62とから主として構成されている。
【0065】
このような構成の被処理水流路60を有する水処理装置において、ロータ62を回転してケース61内へ被処理水15aを導入し(図6(A))、ロータ62及びケース61の間で被処理水15aを圧縮して加圧し(図6(B))、その後、ケース61から離間したケース61内の領域のみにおいて加圧された被処理水15aへレーザ光27を照射することによって被処理水15aを加熱して高温高圧状態で超臨界水又は亜臨界水を生成させ、該超臨界水又は亜臨界水によって被処理水15a中の有機物を分解する(図6(C))。その後、有機物が分解した処理後の被処理水15bをケース61から排出する(図6(D))。図6(A)乃至図6(D)の一連の処理はロータ62を一回転させる間に行われる。
【0066】
本実施の形態の他の変形例によれば、被処理水15aを加圧するためにロータリーエンジンの原理を採用したので、上述の実施の形態の効果に加え、被処理水15aを効率よく加圧することができ、最終的に、被処理水15aに含まれる有機物を連続的に、且つ効率よく分解処理することができる。
【0067】
また、本実施の形態の他の変形例によれば、ロータ62が概ね三角形であるため1回転する間に被処理水15aを3回加圧することができ、レーザ光を3回照射して超臨界水又は亜臨界水を3回生成することができるので、被処理水15a中の有機物を高効率で分解、処理することができる。
【0068】
本実施の形態の他の変形例において、ケース61における少なくともレーザ光照射部分を透明の材料、例えば石英ガラスで構成することが好ましい。これによってレーザ光源25から照射され、集光レンズ26によって集光されたレーザ光27を減衰させることなくケース61の壁面から離間したケース内の領域に集光させてその領域内に超臨界水又は亜臨界水を生成することができる。
【0069】
また、本実施の形態の他の変形例において、ローラ62の回転数を高めることによって被処理水15aの処理速度を容易により高めることもできる。
【0070】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
12 水処理装置
15、15a 有機物含有被処理水
15b 処理後の被処理水
22 大口径の流路
23 小口径の流路
24 加圧ポンプ
25 レーザ光源
26 集光レンズ
27 レーザ光
28 減圧装置
29 流路壁から離間した流路内の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含有する被処理水を所定の圧力に加圧する加圧装置と、
前記加圧装置によって加圧された前記被処理水を所定温度に加熱することにより超臨界水又は亜臨界水を生成させ、該超臨界水又は亜臨界水で前記被処理水に含有されている前記有機物を分解する加熱装置とを有し、
前記加熱装置は、前記加圧装置によって加圧された前記被処理水に向けてレーザ光を照射するレーザ光照射装置と、該レーザ光照射装置から照射されたレーザ光を前記加圧された被処理水が流通する流路における該流路内の流路壁から離間した領域に集光させる集光レンズを備えていることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記加圧装置は、前記被処理水を大口径の流路から該大口径の流路よりも流路断面積が小さい小口径の流路へ導入することによって前記被処理水を加圧するものであることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
前記小口径の流路の流路壁の少なくとも一部は透明であり、前記レーザ光照射装置は前記透明の流路壁を介して前記小口径の流路内の領域に前記レーザ光を照射することを特徴とする請求項2記載の水処理装置。
【請求項4】
前記小口径の流路は二重管構造を有しており、内管と外管との間の空間部に真空断熱層が形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の水処理装置。
【請求項5】
前記小口径の流路は二重管構造を有しており、内管と外管との間の空間部に熱回収用の気体が流通していることを特徴とする請求項2又は3記載の水処理装置。
【請求項6】
前記小口径の流路は二重管構造を有しており、内管と外管との間の空間部に空隙を有する充填材が充填されていることを特徴とする請求項2又は3記載の水処理装置。
【請求項7】
前記小口径の流路の前記レーザ光が照射される流路壁と対向する流路壁の、前記流路内側の流路壁面に熱反射板が配置されていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記所定の圧力は、1.5MPa乃至100MPaであり、前記所定の温度は、200℃乃至500℃であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記所定の圧力は、1.5MPa乃至100MPaであり、前記所定の温度は、200℃乃至374℃で、前記被処理水が液体の状態であることを特徴とする請求項8記載の水処理装置。
【請求項10】
前記所定の圧力は、22MPa乃至100MPaであり、前記所定の温度は、374℃乃至500℃であることを特徴とする請求項8記載の水処理装置。
【請求項11】
有機物を含有する被処理水を所定の圧力に加圧する加圧ステップと、
前記加圧ステップによって加圧された被処理水を所定温度に加熱して超臨界水又は亜臨界水を生成させ、該超臨界水又は亜臨界水で前記有機物を分解する加熱ステップとを有し、
前記加熱ステップは、前記加圧ステップによって加圧された前記被処理水に向けてレーザ光を照射するレーザ光照射ステップと、該レーザ光照射ステップで照射されたレーザ光を前記加圧された被処理水が流通する流路における該流路内の流路壁から離間した領域に集光させる集光ステップを備えていることを特徴とする水処理方法。
【請求項12】
前記加圧ステップは、前記被処理水を大口径の流路から該大口径の流路よりも流路断面積が小さい小口径の流路へ導入することによって前記被処理水を加圧することを特徴とする請求項11記載の水処理方法。
【請求項13】
前記小口径の流路の流路壁の一部は透明であり、前記レーザ光照射ステップは前記透明の流路壁を介して前記流路内の領域に前記レーザ光を照射することを特徴とする請求項12記載の水処理方法。
【請求項14】
前記小口径の流路は二重管構造を有しており、内管と外管との間の空間部に気体を流通させて前記内管から放出される熱を回収する熱回収ステップを有することを特徴とする請求項12又は13記載の水処理方法。
【請求項15】
前記所定の圧力は、1.5MPa乃至100MPaであり、前記所定の温度は、200℃乃至500℃であることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項16】
前記所定の圧力は、1.5MPa乃至100MPaであり、前記所定の温度は、200℃乃至374℃で、前記被処理水が液体の状態であることを特徴とする請求項15記載の水処理方法。
【請求項17】
前記所定の圧力は、22MPa乃至100MPaであり、前記所定の温度は、374℃乃至500℃であることを特徴とする請求項15記載の水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−81453(P2012−81453A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231861(P2010−231861)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】