説明

水処理装置

【課題】単一槽内で被処理水中の化合物を水素ガスの存在下に水素酸化細菌により生物的に還元処理するに当たり、水素ガスの利用効率を高め、更には処理槽中に浸漬された膜の膜面洗浄のための処理水循環を不要とする。
【解決手段】処理槽10内に水素ガスを供給する水素ガス供給手段としての膜エレメント21と、処理槽10内の上部から水素を含んだガスを散気部材30より処理槽内に供給するガス循環手段31とを設ける。水素酸化細菌による還元処理に使用されなかった残留水素ガスを含む処理槽内上部のガスを循環使用することができるため、水素ガスの利用効率を高め、処理コストを低減することができる。この散気による水の対流で膜の膜面洗浄を行うことができ、膜面洗浄のための処理水の循環を不要とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、セレン酸イオン、臭素酸イオン、有機塩素化合物等を水素供与体としての水素ガスの存在下に水素酸化細菌により生物的に還元処理するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中の硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、セレン酸イオン、臭素酸イオン、有機塩素化合物等を還元処理する装置として、図8に示す如く、ガス透過膜を備えた膜モジュール51を処理槽50内に浸漬し、配管52より膜モジュール51の膜の内側に加圧で水素ガスを供給して、これを膜透過させることにより槽内の水に水素ガスを供給し、膜表面で水素を利用する生物群を含む生物膜を形成させて、水中のこれらの物質を還元する装置が提案されている(特許第2901323号公報)。この装置では、原水(被処理水)は、配管53より処理槽50に導入され、処理水が配管54より排出されるが、この処理水の一部は、通常、膜表面での生物膜の過剰な増殖による膜同士の固着およびそれに起因する反応面積の低下を防ぐために、ポンプPを有する循環配管55で循環され、その水勢により膜表面で過剰増殖した生物膜を適度に剥離しながら生物膜の膜厚を調整している(以下、このような生物膜の膜厚調整のための剥離操作を「膜面洗浄」と称す場合がある。)。なお、図8において、56は、排ガスの排出配管であり、循環配管55には、pH計55Aと、このpH計に連動して循環配管55内の水にpH調整剤として酸又はアルカリを添加するpH調整添加手段55Bが設けられている。
【0003】
この特許第2901323号公報に開示されている装置であれば、単一槽内で被処理水への水素ガスの供給と、水素酸化細菌による還元処理とを行うことができる。
【特許文献1】特許第2901323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような水素酸化細菌による還元処理において、原水中の硝酸性窒素や亜硝酸性窒素は、生物的還元処理によって窒素ガスにまで還元処理される。そして、発生したガスは処理槽内の気相中に移行し、排ガス排出配管より大気中に排出されるが、この気相ガス中には、反応に使われなかった水素ガスが数〜数十容積%含まれる。原水中に硝酸性窒素や亜硝酸性窒素のような、還元処理でガスを生成する化合物を含まない場合には、分解生成物としてガスが殆ど発生しないため、気相中の残留水素ガスの割合はさらに高くなる。しかし、水素ガスは高価であることから、この気相中に残留する水素ガスを有効利用しないと、水素ガスを無駄に排出することになり、処理コストの増大につながる。
【0005】
なお、特許第2901323号公報には、膜モジュールから流出した未使用の水素ガスを膜モジュールのガス排出側から回収してガス導入側へ循環させるようにした装置も記載されているが、この水素ガスの循環は、膜モジュールと循環配管とを直接つなぐものであり、別途、処理水の循環を行う必要がある。従って、処理水の循環のためのポンプ及び循環配管と、水素ガス循環のためのブロワ及び循環配管とを必要とし、設備が複雑になると共に、動力費も高くつくという欠点がある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、単一槽内で被処理水中の化合物を水素ガスの存在下に水素酸化細菌により生物的に還元処理するに当たり、水素ガスの利用効率を高め、更には処理槽中に浸漬された膜モジュールの膜面洗浄のための処理水循環を不要とすることができる水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(請求項1)の水処理装置は、被処理水を処理槽内で水素ガスの存在下に水素酸化細菌と接触させることにより、該被処理水中の化合物を水素酸化細菌により生物的に還元処理する水処理装置において、前記処理槽内に水素ガスを供給する水素ガス供給手段と、該処理槽内の上部から水素を含んだガスを回収して該処理槽内の下部に設けられた散気部材より該処理槽内に供給するガス循環手段とを備えてなることを特徴とする。
【0008】
請求項2の水処理装置は、請求項1において、前記水素ガス供給手段は、前記処理槽内に膜を浸漬配置したものであり、前記水素ガスは、該膜を透過して被処理水中に供給されることを特徴とする。
【0009】
請求項3の水処理装置は、請求項2において、前記膜の被処理水側の膜面に水素酸化細菌が付着、増殖されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の水処理装置は、請求項3において、前記散気部材は、前記処理槽内の前記膜の鉛直下方領域及び/又は鉛直下方領域から外れた領域に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の水処理装置は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記処理槽内に水素酸化細菌を担持した担体の流動床が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6の水処理装置は、請求項5において、前記処理槽内は上下方向に延在した区画部材によって、複数の室に区画されており、各室の上部同士が連通すると共に下部同士が連通しており、一部の該室に前記膜が配置され、他の室に前記流動床が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水処理装置によれば、水素酸化細菌による還元処理に使用されなかった残留水素ガスを含む処理槽内上部のガスを回収して該処理槽内の下部に設けられた散気部材より散気して循環使用することができるため、水素ガスの利用効率を高め、処理コストを低減することができる。
【0014】
また、水素ガス供給手段として、処理槽内に膜を浸漬配置し(請求項2)、この膜の膜面に水素酸化細菌を付着増殖させた場合において(請求項3)、膜よりも下側に循環ガスの散気部材を設けておくことにより(請求項4)、この散気により発生する槽内の水の対流で膜の膜面洗浄を行うことができ、膜面洗浄のための処理水の循環を不要とすることができる。
【0015】
この場合、散気部材は、膜の鉛直下方領域に設けても良く、鉛直下方領域から外れた領域に設けても良い(請求項5)。散気部材を膜の鉛直下方領域に設けた場合には、散気部材からのガスの上昇流を直接膜の膜面に付与することにより効率的な膜面洗浄を行うことができる。また、散気部材を膜の鉛直下方領域から外れた領域に設けた場合には、ガスの上昇流を膜に直接付与しないことにより、水素酸化細菌の増殖の遅い処理において、生物膜の過度な剥離を防止することができる。
【0016】
本発明においては、処理槽内に更に水素酸化細菌を担持した担体の流動床を設けることが好ましく、これにより、被処理水と水素酸化細菌との接触効率を高めて水素ガスをより一層有効に利用すると共に、処理槽内上部の気相部に局所的に水素ガスが貯留される危険を回避することができる(請求項6)。
【0017】
この場合、処理槽内を上下方向に延在した区画部材によって、複数の室に区画し、一部の室に膜を配置し、他の室に流動床を形成することにより、散気部材からのガスの上昇流による水の対流を制御することができ、好ましい(請求項7)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1〜7は本発明の実施の形態を示す系統図であり、図1〜7において、同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0020】
図1の水処理装置では、処理槽10の下部に原水導入配管11が設けられ、上部に処理水の排出配管12が設けられている。この処理槽10内の一半側には膜20が浸漬配置され、この膜20の膜内に水素ガスを供給する配管13が設けられている。この膜20の下側の鉛直下方領域には散気管30が設けられている。
【0021】
この散気管30には、処理槽10内の気相部10Gのガスを抜き出して散気管30に循環させるための、ブロワBを備えるガス循環配管31が連結されている。このガス循環配管31には、循環ガスの一部を系外に排出する排ガス排出配管32が分岐している。
【0022】
また、処理槽10の上部には、処理水排出口付近のpHを測定するpH計10Aが設けられ、また、このpH計10Aの測定結果に基いて、処理槽10内の水が所定のpH値となるように、酸又はアルカリのpH調整剤を処理槽10に添加するpH調整剤添加手段10Bが設けられている。
【0023】
原水は配管11より処理槽10に導入され、処理槽10内を上昇する間に、膜20を透過して供給された水素ガスの存在下に、膜モジュールの膜面に付着、増殖した水素酸化細菌により所定のpH条件下に還元処理された後、配管12より系外へ排出される。
【0024】
処理槽10内の上部気相部10Gには、この還元処理で使用されなかった残留水素ガスが移行するが、本実施例の装置では、この気相部10GのガスをブロワBによる吸引で抜き出して循環配管31で循環し、処理槽10の膜20の下方に設けられた散気管30から処理槽10内に散気させるため、未使用水素ガスの有効利用を図ることができる。
【0025】
そして、処理槽10内では、散気管30からの散気により、膜20が設けられた一半側で上昇し、他半側で下向する水の対流が生じることにより、水と膜20の膜との接触効率が十分に確保され、膜面の生物膜により、効率的な還元処理が行われる。
【0026】
また、散気管30からの気泡を含む水の上昇流により、処理水を循環する場合と同様の膜面洗浄効果を得ることができ、生物膜の過剰増殖が防止される。
【0027】
この水処理装置は、硝酸性窒素及び/又は亜硝酸性窒素といった水素酸化細菌に還元処理される基質濃度の高い水、例えば硝酸性窒素濃度が20mg/L以上の水の処理に好適である。即ち、このような基質濃度の高い水では、生物膜の増殖速度が高いため、膜20の膜面の生物膜が過剰増殖となり易い。従って、この場合には、散気管30を膜20の鉛直下方領域に設け、剥離作用の大きい散気管30からの気泡を含む水流を直接膜20に接触させて膜面洗浄を行うようにすることが好ましい。
【0028】
なお、処理槽10内の気相部10Gには、ガスの循環により原水由来のガスや反応により生成した窒素等のガスが蓄積するため、循環ガスの一部は配管32より排ガスとして系外へ引き抜く。
【0029】
図2に示す水処理装置は、図1の水処理装置において、散気管30を膜20の鉛直下方領域ではなく、鉛直下方領域から外れた処理槽10内の他半側の領域に設け、原水導入配管11を膜20の上部に設けたこと以外は同様の構成とされている。この水処理装置では、図1の水処理装置と同様に、処理槽10内の気相部10Gのガスを循環することによる残留水素ガスの有効利用と、散気管30からの散気による水の対流で膜面洗浄効果が得られる。
【0030】
ただし、この水処理装置では、散気管30を膜20の鉛直下方領域から外れる領域に設けたため、処理槽10内には、膜20を設けた一半側で下向流、他半側で上昇流となる対流が生じ、膜20と散気管30からの気泡とが直接接触せず、従って、この水流による膜面洗浄効果は、図1における膜面洗浄効果に比べて小さいものとなる。
【0031】
このような水処理装置は、原水中の硝酸性窒素及び/又は亜硝酸性窒素等の水素酸化細菌に還元処理される基質濃度が低く、生物膜の増殖速度の小さい、例えば硝酸性窒素濃度20mg/L未満の水の処理に好適である。
【0032】
図3に示す水処理装置は、原水導入配管11を膜20の直下部に設けると共に、膜20の鉛直下方領域と鉛直下方領域から外れる領域にそれぞれ散気管30A,30Bを設け、バルブV,Vの手動又は自動切り替えで処理槽10の一半側の膜20の下方からの散気と、他半側の、膜20の下方から外れた位置からの散気とを切り替えるようにしたものであり、このような水処理装置であれば、原水の基質濃度が変動する場合においても、膜20の下方からの散気による大きな膜面洗浄効果と、膜20の下方から外れる位置からの散気による比較的おだやかな膜面洗浄効果とを切り替え、膜20の膜面の生物膜の増殖の程度に応じた膜面洗浄効果を得、良好な処理を行える。
【0033】
図4の水処理装置は、図2の水処理装置において、処理槽10内に水素酸化細菌の担体を投入して流動床40を形成したものである。この水処理装置では担体上に増殖させた生物膜により原水をより一層効率的に還元処理することができ、水素ガスのより一層の有効利用を図ることができる。即ち、膜20を浸漬することにより、膜面に形成された生物膜表面で水素を利用した生物的還元処理が行われるが、生物膜により有効利用しきれない水素が水中に移行する。臭素酸やセレン酸など1mg/L以下の低濃度で存在する物質を処理する場合は、処理水中にわずかに水素が残留しても処理効率低下につながる。そこで、処理槽10内に流動床40を形成することによって、水中に移行した水素も有効利用しながら臭素酸やセレン酸などを還元処理することが望ましい。
【0034】
なお、図1,3の装置にも図4と同様に流動床を設けることができる。
【0035】
図5の水処理装置は、図2の水処理装置において、上下方向に延在した区画部材(以下「仕切板」と称す。)41により処理槽10内を2つの室10a,10bに区画し、一方の室10aに膜20を浸漬配置し、他方の室10bに流動床40を形成したものである。仕切板41は、その上部が処理槽10内の水面より下方に位置し、下部が処理槽10の底面より上方に位置することにより、処理槽10内の一方の室10aと他方の室10bとは上部同士が連通すると共に下部同士が連通している。
【0036】
この水処理装置では、仕切板41を設けたことにより、散気管30からの散気による水の対流を制御して、膜20を設けた一半側(室10a)で下降流、流動床40を設けた他半側(室10b)で上昇流となる良好な水の対流が生じる。これにより、被処理水が流動床40の担体上の生物膜及び膜20の膜上の生物膜と確実に接触するようになり、処理効率を高めることができる。
【0037】
図6の水処理装置は、図5の水処理装置において、処理槽10内の上部気相部10Gに炭酸ガスを供給する配管42を設けたものである。即ち、水中の硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、セレン酸イオン、臭素酸イオン、有機塩素化合物等の還元処理を、有機物が存在しなくても増殖可能な独立栄養性細菌を利用して行う場合、これら細菌の増殖を促進させるためには炭素源として二酸化炭素を添加する必要がある。そこで、図6では、気相中に炭酸ガスを添加して循環させることによって水中に炭素源を供給する。また、このように炭酸ガスを供給することにより、硝酸性窒素などの還元処理によって生成するアルカリの中和を図ることもできる。また、水素ガスの拡散による安全性の向上、槽内の対流に必要なガスの安定供給可能の点でも有効である。
【0038】
図7の水処理装置は、図5の水処理装置において、膜として中空糸膜エレメント21を設けたものであり、水素ガスは処理槽10の底部に設けられた配管13から中空糸膜エレメント21の下端側から中空糸膜エレメント21内に導入され、ガス透過性膜を透過した水素ガスにより還元処理がなされる。未使用の水素ガスは膜エレメント21の上端側から水中に流出し、処理槽10内の気相部10Gに移行し、ブロワBにより散気管30に循環される。
【0039】
この水処理装置では仕切板41の上部と下部にメッシュ42,42が設けられ、流動床40の担体の膜エレメント21側への流入を防止している。
【0040】
なお、本発明の水処理装置では、水素ガスを含むガスを循環して散気するため、水素ガスの爆発の危険性に留置する必要がある。そのため、例えば、循環ガス中の水素濃度をモニタリングし、この結果に基いて膜への水素ガスの供給圧を制御するなどして、水素ガス濃度を爆発限界である4体積%以下に保つようにすることが望ましい。
【0041】
この循環ガス流量は、用いる処理槽の容積や、水素ガス供給量、必要とされる膜面洗浄効果、その他の条件によって適宜決定され、一概に言うことはできないが、通常、曝気対象領域に対して1〜20m/hr程度とすることが好ましい。
【0042】
本発明において、水素ガス供給手段として処理槽内に浸漬配置される膜としては、精密濾過(MF)膜、限外濾過(UF)膜、ナノ濾過(NF)膜、その他の膜が挙げられ、その型式としては、中空糸膜、平膜等の各種のものを採用することができる。
【0043】
また、流動床を形成する担体としては、直径2〜5mm程度のスポンジ担体、例えばポリエーテル系ポリウレタンフォームなどの材料を用いることができ、その充填量は、流動床形成領域の容積に対して10〜40容積%程度とすることが好ましい。
【0044】
このような本発明の水処理装置は、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、セレン散イオン、臭素酸イオン、有機塩素化合物等の還元分解可能な各種化合物を含有する水の処理に有効に利用することができる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0046】
実施例1〜5、比較例1,2
図7に示す水処理装置を用いて、10mg−N/Lの硝酸性窒素を含む原水の還元処理を行った。
【0047】
処理槽10内の中空糸膜エレメント21としては(株)クラレ製「ラボエレメント8258A」を用い、中空糸膜内側に水素ガスを加圧注入して供給した。流動床40側には、直径5mmのスポンジ担体を添加した。また、処理槽10内の処理水出口付近のpHを測定し、原水入口直下で酸又はアルカリを添加してpH調整した。処理槽10内上部の気相ガスはペリスタティックポンプで流動床40下部の散気管30に送り、流動床40を曝気した。膜エレメント21側へのスポンジ担体の流入を防ぐため、仕切り板41の上下の連通部にはメッシュ42,42を設けた。
【0048】
原水は、水道水に亜硫酸ナトリウムを添加して残留塩素を除去し、さらに空気曝気して余剰の亜硫酸ナトリウムを除去した後、リン酸塩、微量金属、及び硝酸ナトリウムを添加して調製した。
【0049】
原水の水質は表1に示す通りであり、通水条件は表2に示す通りとした。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
処理水出口部の水のpHをモニタリングし、0.1N塩酸または0.1N水酸化ナトリウムを添加して処理槽内pHを7.0に調整しながら、2週間通水した。ただし、通水初日のみ、工業排水処理汚泥を植種した原水を通水した。また、気相容積を常時監視し、ガス発生により気相容積が0.1Lを超える場合はガスを排出し、その排出量を記録した。
【0053】
2週間通水後に処理水中の硝酸性窒素濃度、亜硝酸性窒素濃度、排ガス量、排ガス及び処理水中水素濃度を測定し、結果を表4に示した。
【0054】
比較例1
図8に示す処理装置を用い、実施例1と同様に10mg−N/Lの硝酸性窒素を含む原水を処理した。親水性中空糸膜エレメントとしては、実施例1で用いたものと同様のものを用い、中空糸膜内側に水素ガスを加圧注入して供給した。また、循環ラインでpHを測定し、酸又はアルカリを添加してpHを調整した。
【0055】
このときの通水条件は表3に示す通りであり、循環水のpHをモニタリングし、0.1N塩酸又は0.1N水酸化ナトリウムを添加してpH7.0に調整しながら2週間通水した。ただし、通水初日は、工業排水処理汚泥を植種した原水を通水した。発生したガスはメスシリンダーに受け、その発生量を記録した。
【0056】
【表3】

【0057】
2週間通水後に処理水中の硝酸性窒素濃度、亜硝酸性窒素濃度、排ガス量、排ガス及び処理中水素濃度を測定して、結果を表4に示した。
【0058】
【表4】

【0059】
表4より、処理水循環の代わりに気相ガスの循環曝気を行うことにより、処理水循環と同等の脱窒性能が得られる上に、添加した水素ガスを効率良く利用することができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の水処理装置の実施の形態を示す系統図である。
【図2】本発明の水処理装置の他の実施の形態を示す系統図である。
【図3】本発明の水処理装置の別の実施の形態を示す系統図である。
【図4】本発明の水処理装置の別の実施の形態を示す系統図である。
【図5】本発明の水処理装置の別の実施の形態を示す系統図である。
【図6】本発明の水処理装置の別の実施の形態を示す系統図である。
【図7】本発明の水処理装置の別の実施の形態を示す系統図である。
【図8】従来装置を示す系統図である。
【符号の説明】
【0061】
10 処理槽
20 膜
21 中空糸膜エレメント
30,30A,30B 散気管
40 流動床
41 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を処理槽内で水素ガスの存在下に水素酸化細菌と接触させることにより、該被処理水中の化合物を水素酸化細菌により生物的に還元処理する水処理装置において、
前記処理槽内に水素ガスを供給する水素ガス供給手段と、
該処理槽内の上部から水素を含んだガスを回収して該処理槽内の下部に設けられた散気部材より該処理槽内に供給するガス循環手段と
を備えてなることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記水素ガス供給手段は、前記処理槽内に膜を浸漬配置したものであり、前記水素ガスは、該膜を透過して被処理水中に供給されることを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項2において、前記膜の被処理水側の膜面に水素酸化細菌が付着、増殖されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項3において、前記散気部材は、前記処理槽内の前記膜の鉛直下方領域及び/又は鉛直下方領域から外れた領域に設けられていることを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記処理槽内に水素酸化細菌を担持した担体の流動床が形成されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項5において、前記処理槽内は上下方向に延在した区画部材によって、複数の室に区画されており、
各室の上部同士が連通すると共に下部同士が連通しており、
一部の該室に前記膜が配置され、他の室に前記流動床が形成されていることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−144372(P2007−144372A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346153(P2005−346153)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】