説明

水処理装置

【課題】大量の処理水を高速で処理できる水処理装置を提供する。
【解決手段】水平方向に対して0゜〜40°未満の範囲で螺旋状に巻回した密閉通路からなる螺旋流路を備えたスパイラル式分離装置と、前記スパイラル式分離装置の下流に中空糸膜式濾過装置を備え、前記スパイラル式分離装置は、螺旋流路は上下平坦壁と内周壁および外周壁で囲んだ断面矩形状とし、該螺旋流路の中心側の端部を処理液入口、該螺旋流路の最外円周部の端部を処理済み液出口とし、前記螺旋流路の内周壁および外周壁の内面に沿って処理液中の除去物の捕捉板を着脱自在に設置し、該捕捉板に前記捕捉できる捕捉部を設けていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置に関し、詳しくは、液体から被除去物を精密かつ高速に濾過でき、特に、船舶の原水タンクに貯留されたバラスト水の処理用、原子力発電所や火力発電所の復水処理用として好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水処理装置は多数提案されており、例えば、金属類を含む水溶液が分離するため、特開2007−111606号公報(特許文献1)の分離膜の改質方法では、スパイラル型膜エレメントを用いる方法が開示されている。なお、該スパイラル型膜エレメントの具体的な構造の開示はない。
前記スパイラル型膜エレメントとは、特開2000−271460号公報(特許文献2)に記載の図8(A)(B)に示すスパイラル型膜モジュールを指すと認められる。
該スパイラル型膜モジュールは、該特許文献2の請求項5に記載のように、有孔中空管100の外周に複数の封筒状膜(封筒状の濾過膜)101を放射状に配置し、該封筒状膜101の外周に流通させる原液中の除去物を封筒状膜101で捕捉し、前記有孔中空管100から透過液を取り出している。
即ち、スパイラル型膜エレメントを用いる水処理装置では、原水(処理液)をスパイラル状に濾過膜に流通させ、該流通時に濾過膜で除去物を捕捉している。
【0003】
しかしながら、前記スパイラル型膜エレメントを用いた水処理装置では、濾過膜の空孔が小さいと濾過膜に目詰まりが発生し易い問題があると共に、除去物が堆積した濾過膜の洗浄が容易でない問題がある。
【0004】
また、特公平6−96083号公報(特許文献3)には、図9に示すように、処理液の直線状の導管110に螺旋状の突起111を設けて処理液を螺旋状に流通させ、該導管110の下流側に円錐状のフィルタ112を導管110の内周面と隙間113をあけて設け、隙間から粗粒子を流出させ、他の粒子は前記フィルタ112で捕捉するスパイラルセレーション装置が提案されている。
しかしながら、特許文献3では、導管110内にスパイラル状に流通する処理液中の粗粒子が遠心力で導管110の内面に付着しても、導管の内面で捕捉できないため、再度、処理液中に浮遊し、最終的にフィルタ112と導管110との隙間113に流出するとは限らず、粗粒子の捕捉率は低く、粗粒子がフィルタ112に付着して、フィルタ112に目詰まりが発生しやすい。
【0005】
前記のように、濾過膜を用いた水処理装置では、目詰まりの発生により、大量の処理液を高速で処理することは容易でない。かつ、復水等の高温の処理液を濾過膜で濾過する場合、高温の復水を低温にする工程が必要となり、工程数が増える等の問題もある。
【0006】
また、近年、船舶に積載するバラスト水の処理が問題となっている。バラスト水は空荷状態でも安全に航行するために積載される海水であり、バラスト水は出港時に付近の海域から取水し、入港時の積荷の積載時に海洋へ排水される。即ち、出港地の海水からなるバラスト水が入港地で排水され、例えば、日本から出港したオイルタンカーがオイル産油国のクエート等の中近東へ航行してオイルを搭載する場合、日本海域の海水がバラスト水として積載され、中近東の海域で洋上に排水されることとなる。
このようにバラスト水が取水した海域と異なる海域に排水されると、海水中の生物が本来の生息地でない海域に移動させられることとなり、海洋の生態系に大きな影響を及ぼすこととなる。
【0007】
このため、一部の国では既にバラスト水の排出を規制しており、2004年2月には、国際海事機関において、「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理」のための国際条約が採択され、2009年以降の建造船に対し、基準に適合したバラスト水処理システムの設置が求められ、かつ、95%以上のバラスト水を浄化処理することが求められている。
しかしながら、バラスト水タンクの容量が1500トン〜5000トンと大型のタンカーにおいて、出港から入港までの航海中に洋上で、バラスト水を処理液に交換処理する場合、非常に高速に大量処理する必要がある。しかも、海水中には藻等のミクロン単位の微生物が含まれるため、前記した膜エレメントを用いた水処理装置では高速に大量処理することは困難である。
【0008】
さらに、大量の処理液を高速に処理する必要がある場合として油田随伴水がある。油田随伴水は、原油試掘の際、海水を地層の油層に注入して圧力を高めて生産性を確保しており、そのため、油を含む排水が多量に発生し、該含油排水が油田随伴水と称されている。この油田随伴水は、非水性油分を除去処理した後に廃棄する必要があり、油田随伴水の処理も、大量の処理液を高速に処理する処理装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−111606号公報
【特許文献2】特開2000−271460号公報
【特許文献3】特公平6−96083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、被除去物を含むバラスト水、油田随伴水、原子力発電所や火力発電所の復水、さらに、河川、工場排水等を大量処理でき、かつ、該微細な被除去物の捕捉性能も高い水処理装置を供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、水平方向に対して0゜〜40°未満の範囲で螺旋状に巻回した密閉通路からなる螺旋流路を備えたスパイラル式分離装置と、
前記スパイラル式分離装置の下流に中空糸膜式濾過装置を備え、
前記スパイラル式分離装置は、螺旋流路は上下平坦壁と内周壁および外周壁で囲んだ断面矩形状とし、該螺旋流路の中心側の端部を処理液入口、該螺旋流路の最外円周部の端部を処理済み液出口とし、
前記螺旋流路の内周壁および外周壁の内面に沿って処理液中の除去物の捕捉板を着脱自在に設置し、該捕捉板に前記捕捉できる捕捉部を設けていることを特徴とする水処理装置を提供している。
【0012】
前記スパイラル式分離装置の螺旋流路は、その幅、高さ及び内外周壁の曲率半径を、該螺旋流路を流通させる前記処理液の流速、流量および動粘性係数、該処理液中に含まれる前記除去物の密度から、該螺旋流路を流通する前記処理液の遠心力により前記除去物を前記外周壁側へ集めると共に、前記内外周壁に対する前記処理液の反発力の差により生じる前記除去物の横断方向の移動で前記内周壁側へ集める設定としている。
【0013】
前記のように、本発明では、上流にスパイラル式分離装置を設け、該スパイラル式分離装置で大量の処理液を高速で流通させ、該処理液中に含まれる粗粒子を分離するようにしている。
【0014】
該スパイラル式分離装置は、濾過膜を設けることなく、螺旋流路の構造を前記のように、遠心力により外周壁側へ集めると共に、内外周壁に対する処理液の反発力の差により除去物を横断方向に移動させて内周壁側へ除去物を集めるように設定している。
このように、螺旋流路に流すだけで、処理液中の除去物を外周壁側と内周壁側の両方に集め、該内外周壁の内面に沿って前記捕捉板を配置していることにより、濾過膜を設けることなく、除去物の分離を行うことができる。
【0015】
前記内外周壁の内面にそれぞれ配置する前記捕捉板は多数の凹部を有する板材を前記螺旋流路に沿って湾曲させたものとし、前記凹部内で粒子を捕捉している。凹部内に粒子が堆積した後は、粒子を除去するために捕捉板を流路から容易に取り出せる構成としている。
即ち、前記密閉通路の構成材の外周壁および内周壁、あるいは上下壁のいずれか一方を着脱自在に取り外して、前記捕捉板を取り出せる構成としている。
【0016】
また、本発明の水処理装置では、前記のように、スパイラル式分離装置で原水中の粒子を分離した後、分離されなかった粒子を下流の中空糸膜式濾過装置で分離している。
このように、スパイラル式分離装置の下流に中空糸膜式濾過装置を配置すると、除去物を含む処理液を略純水にまで浄化することができる。
【0017】
前記中空糸膜式濾過装置は、フッ素樹脂からなる中空糸を集束した中空糸膜モジュールを槽内に収容した構成とすることが好ましい。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、トリフルオロクロロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等、およびこれらの中から2種類以上混合した樹脂が例示される。これらの中でも、特にPTFE製の中空糸は耐久性、耐熱性等が優れ、特に、高温の復水処理に適している。
前記中空糸は空孔径をμm単位、さらにサブμm単位として、前記スパイラル式分離装置、磁気分離装置で分離除去出来なかった微細な除去物の分離を可能としている。
【0018】
前記スパイラル式分離装置と前記中空糸膜式濾過装置との間に、磁気分離装置を介設してもよい。
前記のように、スパイラル式分離装置、続いて磁気分離装置で処理した液を前記中空糸膜に流通させると、処理液中の除去物は微細になると共に少量となり、因って、中空糸膜の目詰まりが発生しにくくなる。
【0019】
前記磁気分離装置は、円筒状磁石の内周あるいは/及び外周に配置した配管中に磁気フィルタを並設している
前記磁気分離装置を用いると、スパイラル式分離装置で捕捉出来なかった微小な鉄粉等の磁性物質を磁気フィルタで確実に捕捉することができる。また、該磁気分離装置に供給前に磁性粒子を添加すると、非磁性物質に磁性粒子を付着させて磁気フィルタで捕捉することができる。特に、船舶に搭載されるタンク内に貯溜されるバラスト水には、非磁性物質の生物が含まれているため、これらの生物に磁性粒子を付着させて磁気フィルタで捕捉できる。かつ、該磁気分離装置も濾過膜を用いていないため、処理液を短時間で大量処理できる。
【0020】
前記のように、スパイラル式分離装置と中空糸膜式濾過装置、あるいは、スパイラル式分離装置と磁気分離装置と中空糸膜式濾過装置で、バラスト水の処理をすると、処理された水は、最小サイズ50μm以上の生物の1mあたりの生個体数が10未満、最小サイズ10μm以上50μm未満の生物の1mlあたりの生個体数が10未満とすることができる。
バラスト水の処理は船舶の航行中の海洋上でなされる場合、前記スパイラル型分離装置と下流の磁気分離装置により、航行日が半日以上で、バラストの総水量が100000トン以下において、バラスト水の排水時に、該バラスト水の95%以上を処理できる設定とすることができる。よって、大半の大型船舶において、前記「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理」のための国際条約が採択された要綱を満たすことができる。
【0021】
かつ、前記バラスト水に限らず、前記スパイラル式分離装置と中空糸膜式濾過装置を組み合わせると、海水、河川水、含油排水、さらには復水等の処理液で5μm〜0.1μmの細菌を含む生物も除去することができ、純水になるまで浄化することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の水処理装置では、フィルタ膜を用いないスパイラル式分離装置により粒子を分離した後、下流に配置する中空糸膜式濾過装置において、スパイラル式分離装置で捕捉されなかった粒子を捕捉しているため、大量の処理液を高速処理することができる。
このように、中空糸膜式濾過装置で濾過する前に、スパイラル式分離装置で粒子を分離除去しているため、中空糸膜式濾過装置の中空糸の目詰まりを低減でき、洗浄時間の短縮ができ、稼働効率を高めることができる。
よって、本発明の水処理装置は、大量の処理液を高速かつ連続的に処理する必要があるバラスト水、油田随伴水、復水等の処理に最適となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第一実施形態のバラスト水処理用の水処理装置を示す全体構成図である。
【図2】螺旋流路を示し、(A)は螺旋流路の概略平面図、(B)は概略断面図、(C)は螺旋流路の水平断面図である。
【図3】(A)〜(C)は螺旋流路に設ける捕捉板を示す図面である。
【図4】中空糸膜式濾過装置を示す図面である。
【図5】第一実施形態の変形例を示す構成図である。
【図6】第二実施形態の構成図である。
【図7】第二実施形態で用いる磁気分離装置を示す図面である。
【図8】(A)(B)は従来例を示す図面である。
【図9】他の従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図5に、第一実施形態を示す。
第一実施形態の水処理装置1は船舶に搭載し、バラスト水の処理に用いている。
図1に示すように、オイルタンカー等の大型船舶60に搭載し、積載したバラスト水に含まれる海洋性生物等の固形物からなる被除去物の除去処理を航行中に洋上で行うものである。
大型船舶60は船底側に複数のバラスト水タンク50を備え、バラスト水の総量は、例えば、1500〜5000トン程度である。前記複数のバラスト水タンク50に貯留されたバラスト水からなる処理液Q1を順次水処理装置1へ送給し、処理済み液を空きとなったバラスト水タンク50に再貯留し、バラスト水を全て処理液としてバラスト水タンク50に戻して貯留している。
【0025】
水処理装置1は、図1に示すように、スパイラル式分離装置2を上流側に配置しその下流に中空糸膜式濾過装置4を順次設置し、バラスト水中に含まれる除去物のうち、比較的大きな除去物をスパイラル式分離装置2で分離した後、中空糸膜式濾過装置4でミクロン単位の微細な除去物を分離している。
【0026】
まず、スパイラル式分離装置2について説明する。
図2(A)に示すように、水平方向で螺旋状に巻回した密閉通路からなる螺旋流路10を設けている。該螺旋流路10は5周回巻とした1段の螺旋流路10を設けている。
なお、複数段の螺旋流路10を上下あるいは並列に配置し、送液管を介して接続してもよい。また、一つの螺旋流路10の巻回は限定されない。
【0027】
前記密閉した螺旋流路10は図2(B)に示すように、平坦な上壁11aと下壁11b、湾曲させた内周壁11cと外周壁11dからなる断面矩形状とした配管11で形成している。
螺旋流路10の内周端を処理液入口10e、外周端を処理済み液出口10fとし、処理液入口10eに処理液供給管20を接続し、処理済み液出口10fは送液管21を介して前記中空糸膜式濾過装置4と接続している。
【0028】
前記断面矩形状の螺旋流路10の内外周壁11cと11d間の幅w、上下壁11aと11b間の寸法の高さh、内外周壁10c、10dの曲率半径R、該螺旋流路10を流通させる処理液Q1の流速、流量および動粘性係数、該処理液中に含まれる除去物(以下、粒子Pと称す)の密度から、該螺旋流路10を流通する処理液の遠心力により除去物を外周壁11dへ集めると共に、内外周壁に対する処理液の反発力の差により生じる除去物の横断方向の移動で内周壁11cへ集める設定としている。
【0029】
前記螺旋流路10を囲む配管11の外周壁11dと内周壁11cの内面に沿って、粒子Pを捕捉する捕捉板5を配置している。該捕捉板5は図3(A)に示すように、上下左右に粒子捕捉用の凹部6を設けており、内外周壁11c、11dに沿わせて湾曲させている。
捕捉板5は流路の流れ方向(周方向)で分断して形成し、図3(B)に示すように、内外周壁11c、11dに周方向に間隔をあけて突設した保持枠部11gに対して上方から挿入して保持し、上壁11aを開くと取り出せるように着脱自在に設置している。
捕捉板5に設ける凹部6は、図3(C)に示すように、流入面に向けた開口6aに対して傾斜させ、凹部底面6bを処理液Q1から分離してくる粒子Pを凹部6に流入しやすくすると共に、凹部6に一旦入ると流出しにくくしている。
【0030】
前記スパイラル式分離装置2の下流に一時貯留槽(図示せず)を介設して、前記中空糸膜式濾過装置4を配置している。該濾過装置4で濾過した処理液は配管を通して空のバラスト水タンク50へ戻している。
【0031】
前記中空糸膜式濾過装置4は図4に示すように、PTFE製の中空糸42を多数本集束した中空糸モジュール43を複数個を槽44に収容し、外圧濾過式で中空糸42を通して、濾過水取出口45で濾過済み液Q2を取り出している。該中空糸42の平均空孔径は4μm〜0.1μmの範囲としている。
【0032】
上記構成からなるスパイラル式分離装置2、中空糸膜式濾過装置4を上流から下流にかけて設置したバラスト水の処理装置では、まず、スパイラル式分離装置2でバラスト水中の比較的大きな除去物からなる粒子Pを分離する。分離されなかった比較的小さい粒子Pを続いて配置する中空糸膜式濾過装置4において分離されなかったミクロン単位の微細な粒子P1を中空糸膜で捕集して分離している。
【0033】
図5に第一実施形態の変形例を示す
該変形例では、スパイラル式分離装置2を複数段接続して設け、該スパイラル式分離装置2における螺旋流路の設定を分離できる粒子Pの大きさを次第に小さくできるようにし、最下段のスパイラル式分離装置2を直接に中空糸膜式濾過装置4と接続している。
【0034】
図6および図7に第二実施形態を示す。
第二実施形態では、スパイラル分離装置2と中空糸膜式濾過装置4との間に磁気分離装置3を介在し、3段階で粒子の除去を行っている。
スパイラル式分離装置2に送液管を介して、図7に示す磁気分離装置3に磁性粒子を投入した処理液を送給している。
【0035】
前記磁性粒子22は平均粒径が1μm〜50μmで、処理液量100質量%に対して磁性粒子22は0.2〜5質量%で添加している。
該磁性粒子をバラスト水中に浮遊する生物等の非磁性物質に付着して磁性物質としている。
【0036】
図7に示すように、磁気分離装置3は、大径の処理管30を備え、該処理管30は非磁性ステンレス、またはFRPやプラスチックからなる透磁性材で形成している。
前記処理管30の内部には円板形状とした磁気フィルタ31を軸線方向と直交方向に一定ピッチをあけて多数(本実施形態では24枚)並設している。かつ、該処理管30内で多数枚の磁気フィルタ31を供給口30a側に向けて取出口30bから一定ピッチを保持した状態で移動可能に配置している。
さらに、処理管30には、供給口30aに近接した外周に磁気フィルタ取出口30cを設けると共に、取出口30bに近接した外周に磁気フィルタ入口30dを外周に設け、径方向に出入可能としている。
【0037】
前記各磁気フィルタ31は磁性体からなる金属線材のメッシュからなる。本実施形態では、ステンレス網から形成し、該ステンレス網の空孔で5μm以上の粒子Pを磁着して捕捉できるようにしている。
処理管30の外周面には超電導磁石32を外嵌固定している。該超電導磁石32は超電導線材が巻回されたコイルで形成し、該コイルを超電導温度に保持する冷却容器33内に収容している。
前記超電導磁石32で発生する磁場内に、処理管30内の全ての磁気フィルタ31は位置させ、全ての磁気フィルタ31は超電導磁石により強い磁場を発生させるようにしている。
前記磁気フィルタ31には除去する粒子が付着するため、定期的に洗浄する機構35を設けている。
【0038】
前記磁気分離装置3の下流に前記中空糸膜式濾過装置4を配置し、該中空糸膜式濾過装置4で濾過した処理液は配管を通して空のバラスト水タンク50へ戻している。
【0039】
前記水処理装置では、膜濾過を行わないスパイラル式分離装置2、磁気分離装置3で大量のバラスト水を高速に処理できる。かつ、該スパイラル式分離装置2と磁気分離装置3で粒子Pを分離した後の処理済み液を中空糸膜式濾過装置4に通すため、中空糸膜には目詰まりが発生しにくくなる。よって、中空糸膜を洗浄することによる稼働停止時間を大幅に低減できる。
【0040】
前記実施形態はバラスト水の処理装置に用いているが、大量の処理液を高速で処理する必要がある油田随伴水、発電所で発生する復水を含め、河川、海水等の浄化処理にも、本発明の水処理装置を好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 水処理装置
2 スパイラル式分離装置
3 磁気分離装置
4 中空糸膜式濾過装置
5 捕捉板
6 凹部(捕捉部)
10 螺旋流路
11 配管
11a 上壁
11b 下壁
11c 内周壁
11d 外周壁
Q1 処理液
Q2 処理済み液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に対して0゜〜40°未満の範囲で螺旋状に巻回した密閉通路からなる螺旋流路を備えたスパイラル式分離装置と、
前記スパイラル式分離装置の下流に中空糸膜式濾過装置を備え、
前記スパイラル式分離装置は、螺旋流路は上下平坦壁と内周壁および外周壁で囲んだ断面矩形状とし、該螺旋流路の中心側の端部を処理液入口、該螺旋流路の最外円周部の端部を処理済み液出口とし、
前記螺旋流路の内周壁および外周壁の内面に沿って前記除去物の捕捉板を着脱自在に設置し、該捕捉板に前記捕捉できる捕捉部を設けていることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記捕捉板は多数の凹部を有する板材からなり、前記螺旋流路を形成する配管の一部を着脱自在に取り外して、前記捕捉板を取り出せる構成としている請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記中空糸膜式濾過装置はフッ素樹脂からなる中空糸を用いている請求項1または請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記スパイラル式分離装置と前記中空糸膜式濾過装置との間に、磁気分離装置を備え、
前記磁気分離円筒状磁石の内周あるいは/及び外周に配置した配管中に磁気フィルタを並設している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項5】
バラスト水、油田随伴水、原子力発電所あるいは火力発電所の復水からなる処理液の処理用としている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−172827(P2010−172827A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18607(P2009−18607)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】