説明

水出し用麦茶

【課題】室温水中で撹拌等すると、待つことなく本格的な色と風味を呈する麦茶飲料となる、水出し用麦茶及びそれを収納してなるティーバッグを提供する。
【解決手段】α化焙煎した麦と炭焼焙煎した麦とを混合し、その混合物は、混合前焙煎麦の焙煎度を調整して、Lab表色系におけるL値が31以下にすると共に、混合前後の浴焙煎麦を細粒化して、粒度が10メッシュ未満の物を70重量%以上含有する麦茶となるようにすれば、これはそのままの形態で又はティーバッグに収納して、水出し用麦茶として利用できる。なお、前記混合物はα化焙煎した麦の含有量が5〜30重量%であり、炭焼焙煎した麦の含有量が70〜95重量%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水出し用麦茶に関し、特に室温水を用いて、飲用時に待つことを感じさせない短時間で本格的な麦茶の色、味を引き出すことができる水出し用麦茶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水出し用のお茶としては、茶葉から熱湯水で可溶性茶固形分を抽出した茶成分抽出溶液とし、これをそのまま濃縮乾燥、凍結乾燥等して、若しくは該茶成分抽出溶液に、糖、レモン、ハッカー、桃等のような各種フレーバ付与剤を添加した後濃縮乾燥、凍結乾燥等して得たインスタント茶粉末を用いるものや、粉末状にした茶葉の粒経を所定範囲にしたり、粉末状茶葉を入れたティーバッグを工夫した発明が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、前記インスタント茶粉末の風味を改善すべく、前記インスタント茶粉末に茶葉を含有せたものが開示され、特許文献2には、緑茶、紅茶、ウーロン茶、ほうじ茶等の茶成分抽出溶液を凍結時に気泡を10容量%以上混入させた後、真空凍結乾燥し、即溶性粉末にしたお茶が開示されているが、いずれもお茶から茶成分を抽出し、それを乾燥して製品とするので、風味に問題があるばかりか、手間とコストが著しくかかる難点がある。
【0004】
また、特許文献3には、粒経が1乃至40ミクロンである緑茶、紅茶、ウーロン茶等の茶葉又はハーブ微粉末の包装体と容器に収納された溶解水からなる、温湯を必要とせず、短時間で茶の飲用溶液が得られる茶飲用キットが開示されているが、短時間とはどの程度の時間をいうのか不明であるし、お茶の味等が不明である。
【0005】
さらに、特許文献4には、水出しが可能で、喉越しの良い茶を簡単に用意でき、取り扱いが容易で好みの濃さに容易に調節が可能であり、茶葉の栄養成分を余すことなく摂取することができるとする平型ティーバッグが開示され、平型ティーバッグに収納される茶葉としては、粒径分布の90%以上が10〜300μmの範囲にある緑茶、紅茶、烏龍茶等の茶葉微粉が記載されている。しかし、この場合も、ティーバッグを平型にしたことにより、水出しを可能にしたことが記載されているが(段落0022)、水への溶解性の程度、お茶の味等が不明である。
【0006】
一方、茶葉ではなく、大麦等を原料とする麦茶については、前記フレーバーとしてオリゴ糖等を用いるインスタント麦茶が水出し用として市場に出ているが、これは前記したインスタント茶粉末と同様に、麦茶成分の抽出と乾燥に手間とコストが著しくかかるばかりか、麦茶本来の風味を損なう問題がある。また水出し及びお湯出し用とした麦茶のティーバッグが市場に出ているが、いずれも、室温水を用いる場合には、お茶が飲めるようになるまでに、数時間を必要とするものである。また、お湯出しとの併用であり、本格的に水出しのみを追求したお茶は、前記インスタント麦茶を除いては、市場において見出すことができない。
【0007】
ところで、お茶と云えば、麦茶を含め、現在ペットボトル飲料が普及し、市場で占める割合も大きい。ペットボトルの茶飲料が普及する以前には、茶葉等を急須で淹れるのが当たり前であったが、それを進化させたティーバッグは、茶がらの処理などで手間が掛からず、これも普及してきた。しかし、市場に占める割合は、ペットボトル飲料に比べ、はるかに小さいと云える。
【0008】
コスト面で比較すると、麦茶を含むペットボトル飲料の場合、スーパー等で購入すれば、500ミリリットルサイズで1本150円、2リットルサイズで1本200円以上もするが、ティーバッグのお茶の場合、1リットル用ティーバッグ50袋入り商品が200円程度であり、2リットルのお茶を作るのに8円、その他のコストを多く見積もって20円以内に収まり、ティーバッグにするとペットボトル飲料の1/10のコストになる。
【0009】
しかし、市場においてペットボトル飲料の割合が大きいのは、ティーバッグの場合、お湯を沸かす手間が必要であるし、水出しタイプであっても、お茶が飲めるまでに限度を超えた待ち時間を要する点にあると考えられる。例えば、夏の暑い日に屋外から帰宅した場面ですぐ喉の渇きを潤すことのできるペットボトル飲料に対し、ティーバッグのお茶はお湯を沸かして冷やすまでに時間がかかるし、水出しタイプにしても、飲めるまでに1時間〜3時間程度の時間を要することになる。これでは、いくらコストが劇的に安くてもペットボトルの利便性には対抗できないということである。
【0010】
したがって、飲みたいときに直ちに、本格的な味の水出し用麦茶ができれば、需要者のニーズにマッチすると共に、以下に示すように、社会への貢献も大きいと考えられる。すなわち、ペットボトル麦茶は重いため量販店で購入して持ち帰るのに相当の労力が必要となり、また飲用後空にしたペットボトル容器は、分別の対象であり、常時捨てることはできず、また処分に際し、環境への負担も大きいのに対し、上記直ちに飲める本格味の水出し用麦茶及びそれを収納したティーバッグがあれば、ペットボトルを必要とせず、軽量であり、また、ペットボトルを使用する場合でも、該水出し用麦茶や該ティーバッグを、水入りペットボトル中で撹拌又は振蕩して麦茶飲料とすれば、同じペットボトルを何度でも利用できるので、ペットボトル飲料の上記環境問題等は少なくとも麦茶に関して解消できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−221018号公報
【特許文献2】特許第2788157号公報
【特許文献3】実用新案登録第3089566号公報
【特許文献4】特開2009−60826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、このような事情に鑑みなされたもので、室温水中で撹拌等すると、待つことなく本格的な色と風味を呈する麦茶飲料となる、水出し用麦茶及びそれを収納してなるティーバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成すべく、一連の研究を重ねた。そして、原料麦の焙煎方法及び麦茶の場合、従来、麦の粒度を細かくし過ぎるとエグ味及び雑味が出るとされ、タブー視されていた粒度分布の分野を含め、種々検討した結果、終に、α化焙煎した麦と炭焼焙煎した麦とを混合した混合物の特定の粒度分布と色のものが、室温水で容易に麦茶成分が抽出され、本格的な色と風味の麦茶飲料となることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明のうち第1の発明は、α化焙煎した麦と炭焼焙煎した麦との混合物であって、その混合物は、粒度が10メッシュ未満の物を70重量%以上含有して、Lab表色系におけるL値が31以下であることを特徴とする水出し用麦茶である。
【0015】
前記混合物は、粒度が10メッシュ未満の物を70重量%以上含有しておればよいが、好ましくは粒度が10メッシュ未満の物を75重量%以上若しくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上若しくは90重量%以上含有するようにするとよい。さらに、粒度10メッシュ未満の物の中には、14メッシュ未満の物が、麦茶全量に対する割合において、40〜65重量%含まれているようにするのが好ましい。また、前記混合物は、粒度が5.5メッシュ未満の物のみを含むようにし、5.5メッシュ以上の粒度の物を含まないようにするのが好ましい、なお、本発明において、粒度は、後述の「ふるい分け法」により測定した値である。
【0016】
ここで、麦には、大麦、裸麦、ライ麦等が含まれるが、大麦を用いるのが好ましい。また、アルファ化焙煎とは、焙煎の前に麦原料を蒸し、乾燥させてから熱風焙煎する公知の方法であり、炭焼焙煎とは、焙煎機において炭を燃料として用いる公知の焙煎方法である。麦茶は通常、原料の麦を、燃料として主に重油、灯油、ガスなどを用いて熱風焙煎するが、この第1発明の水出し用麦茶は、上記2種類の公知の方法を選択して焙煎した麦を用い、混合前の麦の焙煎の程度の調整や混合前後の麦の粉砕の程度を調整して、双方の混合物の粒度が10メッシュ未満の物を70重量%以上含有し、混合物のLab表色系におけるL値を31以下にしたものである。
【0017】
かかる混合物の色(焙煎度に依存)は、Lab表色系におけるL値が31以下であるとしたが、好ましくは、29以下、より好ましくは27以下とするのがよい。ここで、Lab表色系におけるL値は「明度」を表し、値が大きいほど明度が強いことを意味する。したがって、値が小さいほど、明度が弱く、暗いことになり、焙煎度が強いことを示す。第1発明において、L値を31以下にすると、水出しした場合に、水の色がいわゆる麦茶色に素早くなり、本格的な麦茶色を楽しむことができる。
【0018】
第1発明よって、後述するように、室温水により数十秒〜数分程度で、本格的な麦茶飲料の色及びあっさりして、喉越しがよく、切れの良い麦茶としての風味(本格的風味)が引き出されるが、これは、原料の麦を一度水に浸し蒸して所定時間焙煎した麦と炭火を用いた遠赤外線により所定時間焙煎した麦を混合し、所定範囲のL値としたことにより、水出し麦茶飲料の味(飲んだ時のコクとあっさりして、まろやかな旨み等)と色に好影響を与える成分が混合物内に生じ、これと、粉砕の程度を従来タブー視されていた粒度分布としたことのよる水への溶解性の向上とが相俟って作用し、本格的な麦茶飲料の色、風味を付与する成分が室温水に溶けやすくなったことによると考えられる。
【0019】
本発明のうち第2の発明は、前記混合物は、α化焙煎した麦の含有量が5〜30重量%であり、炭焼焙煎した麦の含有量が70〜95重量%であることを特徴とする第1発明又は第2発明記載の水出し用麦茶である。
【0020】
かかる混合割合とすることにより、水出し麦茶飲料の味や色合いをより好ましくすることができる。なお、好ましくは、α化焙煎麦の含有量を10〜20重量%とし、炭焼焙煎麦の含有量を80〜90重量%とするのがよい。
【0021】
本発明のうち第3発明は、第1又は第2発明記載の水出し用麦茶を内包してなるティーバッグであり、第4発明は水出し用麦茶の7グラム〜11グラムを内包する第3発明記載のティーバッグと1.5リットル〜2.5リットルのプラスチック容器とからなる水出し用麦茶用キットである。
【0022】
第4の発明はティーバッグに収納された麦茶の量と容器の容積との関係が麦茶飲料の色と風味を引き出すのに適切であり、ティーバッグと水を入れた容器を50回程度振蕩することにより若しくは該50回振蕩容器をその後数分程度放置することにより、好ましい色と風味の麦茶飲料を直ちに作ることができる。プラスチック容器としては、持ち運びの便利さから空の状態が好ましいが、水で満たされていてもよいのは勿論である。なお、ティーバッグに内包させる水出し用麦茶は好ましくは8グラム〜10グラムとするのがよい。またティーバッグについて云えば、水出しをする場合に、(1)ティーバッグ材に健康を害する成分が存在しなくて、(2)喉越しや切れ味のよい麦茶飲料に悪影響を及ぼす大きさの微粒子の通過を防止できる程度の微細孔を有するティーバッグ(例えば、目付量が18g/m2程度のもの)を用いるのがよい。(1)、(2)を満足するティーバッグとしては、例えば無漂白紙を材料とするティーバッグ(三木特種製紙株式会社製9018H 2000)が例示される。
【発明の効果】
【0023】
以上詳述したように、
第1発明の水出し用麦茶によれば、室温の水を用いて撹拌等より水出しを行った場合に、数十秒〜数分程度で、水溶液の色がいわゆる麦茶色に素早くなり、本格的な麦茶色と風味を楽しむことができ、
第2発明の水出し用麦茶によれば、水出し麦茶の色合いや風味をより好ましくすることができる。また、
第3発明によれば、喉越しや切れ味に悪影響を及ぼす大きさの麦茶粒子が麦茶飲料中に混入するのを防ぎ、お茶の風味をより向上させることができる水出し用麦茶内包ティーバッグを、
第4発明によれば、ティーバッグに収納された麦茶の量と容器の容積との関係が麦茶飲料の色や風味を素早く引き出すのに適切であって、かつ一般家庭等で取り扱いが便利な水出し用麦茶用キット商品を提供できる。
【0024】
さらに、本発明に係る麦茶はペットボトル飲料に対して、次の点で社会に貢献すると考えられる。
(1)水の量を調整して、自分好みの濃さのお茶が飲める。
(2)前記したように、ペットボトル飲料の1/10の低コスト商品を提供できる。
(3)ペットボトル飲料は重いため量販店で購入して持ち帰るのに相当の労力が必要であるが、夫婦共働きや高齢化世帯でそのような負担を伴うペットボトル飲料の買い置きや買い出しが不必要となる。
(4)ペットボトルの再利用が可能なため、空のペットボトル容器の処分の際に係る煩わしさからの解放及び使用するペットボトルの容器の削減による環境への貢献が実現できる。
【実施例】
【0025】
つぎに、実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明を実施するための具体例とその結果(効果)を示す一例に過ぎず、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0026】
(実施例1)
原料大麦を水に15時間浸漬後3時間の水切りをし、100℃以下の蒸気で30分蒸し、続いて195℃〜320℃の熱風で約5分焙煎した後冷却し、その色として23〜26.99のL値が得られたα化焙煎大麦のうちL値が26.5のα化焙煎大麦(例えば、株式会社梶商店製α化焙煎ST50α)の15重量%と、原料大麦を250℃〜280℃で20分〜40分炭焼き焙煎した後冷却し、その色として23〜28.99のL値が得られた炭焼焙煎大麦のうちL値が26.1の炭焼焙煎大麦(例えば、株式会社梶商店製ST50炭焼)の85重量%とを混合した。
【0027】
次にこの混合物を挽割機(川口市の株式会社山本鉄工所製丸六製粉機ミルトン号A型)を用い粉砕した。この挽割機は、外壁に溝のあるオス臼を内壁に溝のあるメス臼内に挿入し双方を逆方向に回転して両臼間に投入された大麦を粉砕するが、その際、ハンドルを回して内側のオス臼を奥に入れメス臼により接近させると大麦は細かく、手前に引きメス臼への接近度合いを小さくすると大麦は粗くなるので、大麦の粒度はこのハンドルによって調整できる。本実施例では、このハンドルを基準位置(0位置)から6.5回転させた位置に調整し、常温(特に冷やしたり、熱したりしない温度)にて、前記混合物を挽割りし、従来タブー視された粒度分布の麦茶を得た。なお、本発明に係る粒度分布の麦茶を得るための麦茶原料の粉砕手段は、特に限定されず、石臼、ボールミル、ジェットミル、ピンミル等従来の粉砕手段を用いることができるのは勿論である。
【0028】
(実施例2)
実施例1で得られた麦茶の粒度、L値、密度と、水出し用及び湯(又は煮)出し用として市販されているA社の麦茶(比較例1)とB社の麦茶(比較例2)の粒度、L値、密度とをそれぞれ3回測定し、それらの測定結果とそれらの平均値を対比して記載すると、表1の如くなる。
【0029】
【表1】

【0030】
ここで、
(1)粒度は、いわゆる「ふるい分け法」によって測定した。サンプルを100g計量し、5.5、7.5、10、14メッシュの順番に重ねた「ふるい」のトップに入れ、電磁振動ふるい分け器(株式会社セイシン企業製で型番がOCTAGON DIGITAL CE)を用いて約10分間振動させ、各ふるいの上に残っている原料の重量を測定した。表1において、ONはその網目上における残量を示し、PASSはその網目下への通過量を示す。また、該残量及び通過量を表す数値の単位は、重量%((g/100g)×100)である。なお、用いた「ふるい」の規格は次のとおりである。
・5.5メッシュふるい:高さが25mm、オープニングが3.35mm、線経が1.5〜1.06mm
・7.5メッシュふるい:高さが25mm、オープニングが2.36mm、線経が1.15〜0.85mm
・10メッシュふるい:高さが45mm、オープニングが1.7mm、線経が0.92〜0.68mm
・14メッシュふるい:高さが45mm、オープニングが1.18mm、線経が0.72〜0.54mm
・内径(直径)は、いずれの「ふるい」も200mm
【0031】
(2)L値は、実施例1、比較例1及び比較例2のサンプルのうち、(1)のふるい分けに用いていないサンプルを用いて次のように測定した。測定対象を4枚刃のミルで粉砕後、60メッシュの木製ふるいを通過した粉体を9.8mlの測定用丸セルに一杯になるまで入れ、測色色差計(日本電色株式会社製で型番がZE2000)を用いて測定した。測定は3回行い、平均値を求めて得たL値を表2、実施例1に記載している。前記したように、L値は「明度」を表し、値が大きいほど明度が強いことを意味することから、値が小さいほど、明度が弱く、暗いことになり、焙煎度が強いことを示す。
【0032】
(3)密度は、200mlのメスシリンダー(柴田科学株式会社製ガラス製メスシリンダー)を用いてサンプル200mlの重量を風袋引きで測定した。実施例1の麦茶の密度(g/200ml)は3回の平均で77.3である。本発明において、密度(g/200ml)は70以上の麦茶粒子を用いるのが好ましく、より好ましくは、75以上のものを用いるのがよい。
【0033】
実施例1の麦茶は粒度が10メッシュ未満のものを3回の平均で93.3重量%含有し、L値が26.2であるのに対し、比較例1は粒度が10メッシュ未満のものを3回の平均で45.1重量%含有するに過ぎず、L値が33.7であり、比較例2は10メッシュ未満の物を3回の平均で59.2重量%含有するに過ぎず、L値が33.6である。したがって、比較例の麦の種類や加工方法等は不明であるが、比較例の麦茶と実施例の麦茶には、粒度分布、L値において明確で大きな差異が認められる。
【0034】
(実施例3)
実施例1の麦茶、比較例1及び比較例2の麦茶の色、味について官能評価を行った。これらの麦茶は、それぞれの8グラムを同一材質、大きさのティーバッグ(三木特種製紙株式会社製9018H 2000)に入れ、それぞれのティーバッグを2リットルの水を入れた2リットルのスクリュウキャップボトル中に投入し、20℃でボトルを50回手動振蕩した。振蕩直後に得られた水出し麦茶飲料について、その色、味をグループA(GA),グループB(GB),グループC(GC)のパネラーが判定した。
【0035】
GA,GB,GCは、それぞれ地域や職場の異なる別グループであり、GAは10人、GBも10人、GCは7人で構成されている。各グループのパネラーには、前記50回振蕩した直後の水出し麦茶飲料に、実施例とか比較例の表示を示さず、水出し麦茶の色と味を、下記に示す5段階評価に基づき1〜5までの点数を記入する判定を行ってもらった。実施例1の麦茶と比較例1,2の麦茶について、各グループのパネラーの評価結果の全てと、各グループにおけるパネラーの評価結果の平均値を表2に示す。
【0036】
ここで、各点数は次の評価を意味する。
5:煮出し麦茶又はペットボトルの麦茶と同等程度の色又は風味
4:煮出し麦茶又はペットボトルの麦茶にかなり接近した色又は風味
3:5と1との中間の色又は味であり、飲めると感じる程度の色又は風味
2:色、味が共にまだまだ薄く感じられるが、麦茶色と感じることができ、麦茶の味
と感じることができる味
1:着色がほとんどなく、味も水を飲むのとあまり変わらないと感じられる味
【0037】
【表2】

【0038】
実施例1の麦茶飲料の色は、3グループのそれぞれの平均値が3.3、4.1、3.9であり、3グループ全体の平均値は、3.8である。同様に比較例1の色の3グループ全体の平均値は2.0であり、比較例2のそれは1.4である。
【0039】
麦茶飲料の色について云えば、本発明に係る実施例1の麦茶が、室温(20℃)の水により市販品より著しく早く抽出され、50回の振蕩で3.8となり、煮出し麦茶等の色、すなわち本格的な麦茶色に近い色なっているのに対し、比較例のものは2.0と1.4であり、本格的な麦茶色には程遠いことを示す。このような抽出速度の差異から、実施例と比較例の水出し飲料の着色の程度の差は時間がたつとさらに大きくなる。事実、実施例1のティーバッグは水中に入れると沈む状態となるが、比較例のものは浮いている状態にあり、双方には水との親和性の点で差異が認められることから、それだけ実施例1のものは抽出しやすいことはこのことからも明らかである。
【0040】
麦茶飲料の色における実施例と比較例のこれらの差異は、双方の加工方法の差異の影響も大きいと考えられるが、比較例の麦茶の加工方法が不明であるためそのような差異は考慮不可としても、L値の差異と共に、双方の粒度分布の差異又は双方の粒度分布の差異が反映すると考えられる双方の密度の差異(比較例1,2の密度(g/200ml)は、それぞれ、3回の平均で49.8、64.8であるのに対し、本発明において密度(g/200ml)は前記した70以上の麦茶粒子を用いるのが好ましく、より好ましくは、75以上のものを用いるのがよいとしていることに基づく差異)が影響しているとことは明らかである。
【0041】
実施例1の水出し麦茶飲料の味は、3グループのそれぞれの平均値が2.4、3.3、2.4であり、グループ全体の平均値は、2.7である。同様に比較例1の味の3グループ全体の平均値は2.2であり、比較例2のそれは1.7である。
【0042】
麦茶飲料の味について云えば、50回振蕩直後の実施例1の2.7の数値は、5と1との中間の味である3に近く、麦茶の味としては本格的ではないが飲める程度の味を示し、その後数分も経過すると、実施例の麦茶は、煮出し麦茶にかなり接近した本格的な味となる。しかし、比較例のものは、2.2と1.7である。したがって、比較例のものは、色、味ともに麦茶飲料としては薄すぎると感じられ、数十秒〜数分程度の短時間の水出しでは麦茶飲料としては不適であることを示している。なお、麦茶飲料の味におけるこれらの実施例と比較例の差異も、前記麦茶飲料の色の場合と同様に、比較できない双方の麦茶の加工方法の差異を考慮するまでもなく、L値の差異と共に、双方の粒度分布の差異又は双方の前記密度の差異が影響していることは明らかである。
【0043】
すなわち、実施例1の麦茶飲料の風味は、前記3.8という色の評価とも相まって、比較例に対しその優位性が明確に評価され、かつ10メッシュ以下の粒子の麦茶を93重量%用いているにも関わらず、味のエグ味や雑味は指摘されず、ほぼ本格的な麦茶の風味であることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明は、室温水を用いて、飲用時に待つことを感じさせない短時間で本格的な麦茶の色、味を引き出すことができる水出し用麦茶としてそのままの形態で、または、例えば、ティーバッグへの収納形態で、産業上有効に利用され得るものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
α化焙煎した麦と炭焼焙煎した麦との混合物であって、その混合物は、粒度が10メッシュ未満の物を70重量%以上含有して、Lab表色系におけるL値が31以下であることを特徴とする水出し用麦茶。
【請求項2】
前記混合物は、α化焙煎した麦の含有量が5〜30重量%であり、炭焼焙煎した麦の含有量が70〜95重量%であることを特徴とする請求項1記載の水出し用麦茶。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水出し用麦茶を内包してなるティーバッグ。
【請求項4】
水出し用麦茶の7グラム〜11グラムを内包する請求項3記載のティーバッグと1.5リットル〜2.5リットルのプラスチック容器とからなる水出し用麦茶用キット。


【公開番号】特開2011−211987(P2011−211987A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84795(P2010−84795)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(500023842)株式会社 山城物産 (1)
【出願人】(300030978)株式会社オークワ (1)
【Fターム(参考)】