説明

水分含量が低減された(メタ)アクリル酸の製造プロセス

【課題】本明細書では、低アルデヒド濃度および0.2重量%未満の水分を含有する精製(メタ)アクリル酸生成物を提供する(メタ)アクリル酸を精製するための方法が提供される。
【解決手段】本方法の一つの実施態様は、アルデヒド処理化合物の存在下において(メタ)アクリル酸を蒸留するステップを含む。本方法の別の実施態様は、反応性乾燥剤の存在下において粗(メタ)アクリル酸を蒸留するステップを含む。この仕方で生成された(メタ)アクリル酸は、機能性(メタ)アクリル酸ポリマー、たとえば超吸収性ポリマー、バインダー、およびエチレン−(M)AAコポリマーなどにおいて使用するのに特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低水分含量および低アルデヒド含量を有する実質的に純粋な(メタ)アクリル酸の製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸((M)AA)の残留不純物、特にアルデヒドおよび水分は、重合反応を妨害し、これにより、ポリマーの特性に悪影響を及ぼす。低アルデヒドレベルおよび低水分レベルを有する(M)AAは、機能性(specialty)ポリマー組成物、例えば超吸収性ポリマー、アクリルバインダー、エチレン−(M)AAコポリマー、ならびに、油井掘穿泥水用の分散剤として有効なポリマー、および凝集剤として有効なポリマーを生成するのに有用である。従って、機能性ポリマーの製造業者にとっては、低アルデヒド含量と低水分含量の両方を備えた(M)AAを経済的かつ信頼性高く生成することができれば有利であろう。低アルデヒドグレードの(M)AAを生成することができる蒸留プロセスは既知であるが、このようなプロセスは、これまでのところ、機能性ポリマーの生成において望まれる低アルデヒドレベルおよび低水分レベルの両方を信頼性高くかつ経済的に提供することができない。その上、以下でさらに詳細に検討されているように、無水(メタ)アクリル酸の添加は、粗(メタ)アクリル酸蒸留系における水分の除去を改善するための効果的な手段ではないことが判明している。これは、これらの化合物が、精製(メタ)アクリル酸と本質的に適合し、水分を吸収することができるという事実にもかかわらずである。
【0003】
一般的に、粗アクリル酸の生成プロセスは、たとえば、これに限定するものではないが、分子性酸素含有気体を用いるプロパン、プロピレン、および/またはアクロレインの接触気相酸化によって得ることができるアクリル酸を含有する混合気流を生成する第一ステップを含む。同様に、粗メタクリル酸の生成プロセスでは、メタクリル酸を含有する混合気流を、たとえば、これに限定するものではないが、イソブタン、イソブチレン、t−ブチルアルコール、およびメタクロレインからなる群から選択される少なくとも1つの化合物の分子性酸素含有気体による接触気相酸化によって生成することができる。これに限定するものではないが、前記の酸化ステップのうちのいずれかを含め、様々な既知のプロセスの任意の1つの方法によって生成された(メタ)アクリル酸混合気流は、次いで、(M)AA収集塔へ送られ、そこで(M)AA含有溶液が収集される。このような溶液は、典型的には、水分、および他の不純物、たとえば(メタ)アクロレイン、フルフラール、マレイン酸、および酢酸などを含む。(メタ)アクリル酸含有溶液は、実質的な量の(メタ)アクロレイン、酢酸、および水分を除去するべく、1以上の蒸留塔で分離および精製され、典型的には純度が約90%であって、(メタ)アクリル酸エステルの生成において使用するのに適した粗(M)AA生成物となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粗(M)AAを、蒸留などの方法によって更に精製し、蒸留グレードの(M)AAを形成することができる。特に、このような蒸留グレードの(M)AAは、水分レベルとアルデヒドレベルが共に低減されている。アクリル酸中に存在し得るアルデヒド種としては、これらに限定するものではないが、アクロレイン、無水マレイン酸、およびフルフラールが挙げられる。同様の不純物(たとえば、メタクロレインおよびフルフラール)がメタクリル酸中にも存在し得る。これまでに開示されている蒸留法は、機能性(メタ)アクリル酸ポリマーの製造において望まれる低水分濃度と低アルデヒド濃度の両方を達成していない。特に、低フルフラールおよび低水分の(M)AAを信頼性高くかつ経済的に提供することができるプロセスに対するニーズが存在する。より詳細には、粗(メタ)アクリル酸中に存在する水分およびアルデヒド不純物の両方を除去し、高純度の(メタ)アクリル酸を生成することができる、粗(メタ)アクリル酸の精製方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の実施態様において、本発明は、蒸留系内において水分およびアルデヒド化合物を除去することにより粗(メタ)アクリル酸を精製する方法に関する。より詳細には、本発明による(メタ)アクリル酸の精製方法は:少なくとも1種のアルデヒド化合物を含有する(メタ)アクリル酸流れを蒸留系へ差し向けるステップ;前記の少なくとも1種のアルデヒド化合物と反応することができる少なくとも1種のアルデヒド処理化合物を(メタ)アクリル酸流れに添加し、これにより、前記の少なくとも1種のアルデヒド化合物が前記の少なくとも1種のアルデヒド処理化合物と反応して(メタ)アクリル酸よりも高い沸点温度を有する生成物を生成するステップ;および、蒸留により、前記の(メタ)アクリル酸流れから前記の生成物を分離し、これにより、精製された(メタ)アクリル酸流れを生成するステップ;を含む。更に、前記の少なくとも1種のアルデヒド処理化合物を、その蒸留系における蒸留塔の底部側半分の領域に添加することができ、もしくは、蒸留系に入る前に、(メタ)アクリル酸流れに添加することができる。アルデヒド処理化合物は、硫酸、ヒドラジン化合物、グリシン、リジン、メチオニン、アミン化合物、フロログルシノール、アニリン化合物、ヒドラジド化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0006】
(メタ)アクリル酸流れは、前記の蒸留系へ差し向けられる前に3000ppm以下のマレイン酸化合物を含むことができ、もしくは、3000ppmを超えるマレイン酸化合物を含むこともできる。(メタ)アクリル酸流れが3000ppmを超える濃度のマレイン酸化合物を有している場合には、本発明の方法は、更に、(メタ)アクリル酸流れを蒸留系へ差し向ける前に:前記の(メタ)アクリル酸に少なくとも1種の第二のアルデヒド処理化合物を添加するプロセス、前記の(メタ)アクリル酸流れを蒸留するプロセス、および、前記の(メタ)アクリル酸流れに少なくとも1種の第二のアルデヒド処理化合物を添加し、前記の少なくとも1種の第二のアルデヒド処理化合物を含有する(メタ)アクリル酸流れを蒸留するプロセス:からなる群から選択されるプロセスによって、前記の(メタ)アクリル酸中におけるマレイン酸化合物の濃度を3000ppm未満に低減するステップを含む。
【0007】
本発明の別の実施態様は、(メタ)アクリル酸を精製する方法に関するものであって、その方法は:少なくとも水分を含む(メタ)アクリル酸流れを蒸留系へ差し向けるステップ;少なくとも1種の反応性乾燥剤を蒸留系に添加するステップであって、ここで、前記の少なくとも1種の反応性乾燥剤は、前記の水分と反応することができ、そして、少なくとも1種の反応性乾燥剤はアセタール類、ケタール類、ハロゲン化無水物類、イソシアネート類、1,3−フェニレンジイソシアネート、テトラメトキシ−1,4シクロヘキサジエン、トリフルオロ酢酸無水物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、これにより、前記の少なくとも1種の反応性乾燥剤が前記の水分と反応して、(メタ)アクリル酸よりも高い沸点温度を有する生成物を生成するステップ;および、前記の(メタ)アクリル酸流れから前記の生成物を分離し、これにより、精製された(メタ)アクリル酸流れを生成するステップ;を含む。一つのさらなる実施態様において、少なくとも1種の反応性乾燥剤は、水分と反応して少なくとも1種のアルデヒド処理化合物を提供する。
【0008】
(メタ)アクリル酸を精製するための本発明の方法における一つの代替的な実施態様は:少なくとも水分と少なくとも1種のアルデヒド化合物を含有する(メタ)アクリル酸流れを蒸留系へ差し向けるステップ;(メタ)アクリル酸流れに前記の少なくとも1種のアルデヒド化合物と反応することができる少なくとも1種のアルデヒド処理化合物を添加し、これにより、前記の少なくとも1種のアルデヒド化合物が前記の少なくとも1種のアルデヒド処理化合物と反応して、(メタ)アクリル酸よりも高い沸点温度を有する第一生成物を生成するステップ;少なくとも1種の反応性乾燥剤を蒸留系に添加するステップであって、ここで、前記の少なくとも1種の反応性乾燥剤は前記の水分と反応することができ、これにより、前記の少なくとも1種の反応性乾燥剤が前記の水分と反応して、(メタ)アクリル酸よりも高い沸点温度を有する第二生成物を生成するステップ;および、蒸留により、前記の(メタ)アクリル酸流れから前記第一および第二生成物を分離し、これにより、精製された(メタ)アクリル酸流れを生成するステップ;を含む。少なくとも1種の反応性乾燥剤は、アセタール類、ケタール類、ハロゲン化無水物類、イソシアネート類、1,3−フェニレンジイソシアネート、テトラメトキシ−1,4シクロヘキサジエン、トリフルオロ酢酸無水物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0009】
本発明は、1%未満の不純物および5ppm未満のフルフラールを含む(メタ)アクリル酸生成物も包含する。(メタ)アクリル酸生成物は、更に、(メタ)アクリル酸生成物の合計重量をベースとして0.2重量%以下の水分を含む場合もある。代替的に、(メタ)アクリル酸生成物は、更に、5ppm以下のアクロレイン、5ppm以下のベンズアルデヒド、および5ppm以下のプロトアネモニンを含む場合もある。
【0010】
一つのさらなる実施態様において、本発明は、少なくとも前記の(メタ)アクリル酸生成物から誘導される単位を含む機能性ポリマー組成物を包含する。代替的に、本発明は、更に、本発明の第一実施態様の方法により生成された少なくとも1種の(メタ)アクリル酸生成物から誘導される単位を含む機能性ポリマー組成物を包含する。
【0011】
本発明のなおさらなる実施態様は、蒸留器を用いて(メタ)アクリル酸流れを精製する方法に関するものであり、蒸留器の底部における温度を110℃以下の温度に維持するステップを含む。この温度では、蒸留器内におけるメチルビニルケトンの生成が最小化される。その上、この方法は、更に、25ppm以下のメチルビニルケトンを含む最終生成物(メタ)アクリル酸流れを生成するステップを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明による高純度(メタ)アクリル酸を生成するための方法の一つの実施態様の概略的な代表図を表している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
他のさらなる特徴および利点は、本発明の様々な実施態様に関する以下の説明から明らかであろう。これらの実施態様は開示の目的で与えられたものであり、添付図面と結び付けて斟酌することができる。
【0014】
本実施態様ならびにそれらの利点についての一層完全な理解は、添付図面と結び付けて行われる以下の説明を参照することによって得ることができる。添付図面では、同様の参照番号は、同様の特質を指示している。
【0015】
本発明の方法で使用するのに適した粗(メタ)アクリル酸は、当技術分野において既知の任意の数多くのプロセス、たとえば本明細書前記にて述べられているプロセスなどから生成することができる。更に、このような粗(M)AA生成プロセスの代表的な例は、これらに限定するものではないが、米国特許第6,540,881号;欧州特許第1,070,700号;米国特許第6,348,638号;米国特許第6,399,817号;および欧州特許第1,041,062号に開示されている。
【0016】
1%未満の不純物、5ppm未満のフルフラール、および0.05%以下の水分を伴うアクリル酸を、本明細書において以後、「高純度アクリル酸」または「HPAA」という。また、1%未満の不純物、5ppm未満のフルフラール、および0.05%以下の水分を伴うメタクリル酸を、本明細書において以後、「高純度メタクリル酸」または「HPMAA」という。このようなHPAAおよびHPMAA生成物は、アクリル酸ベースおよびメタクリル酸ベースの機能性ポリマーの製造において使用するのに特に適している。
【0017】
本明細書において今後使用する、「(メタ)アクリル酸」という用語は、メタクリル酸とアクリル酸の両方を指し、同様に、「(メタ)アクロレイン」という用語は、メタクロレインとアクロレインの両方を指す。同様に、本明細書で使用する、「(M)AA」という用語は、(メタ)アクリル酸という用語と同義である。
【0018】
簡明化するため、本発明の精製方法は、アクリル酸に関して説明される。しかし、本発明の創意に富んだ方法は、メタクリル酸の生成プロセスにも同等に適用することができることを理解されたい。更に、本発明の方法は、上記に具体的に引用されているプロセス以外のプロセスから誘導される(M)AA流れの精製にも同じく良好に適用されることを理解されたい。
【0019】
図1に図示されている実施態様において、蒸留塔101、102などの1以上の蒸留ユニットを有する蒸留系100を用いて、粗アクリル酸流れ1が、低アルデヒド含量および低水分含量を有する実質的に純粋な、最終生成物アクリル酸流れ7に精製される。より詳細には、純度が少なくとも90%の粗アクリル酸流れ1が第一蒸留塔101へ提供される。第一塔101において、粗アクリル酸流れ1から、アルデヒド不純物、たとえばマレイン酸および無水マレイン酸(以後、「マレイン酸化合物」または「マレイン酸物質(maleics)」という)などが除去される。粗アクリル酸流れ1は、典型的な商業的品質のものであってよく、一般的には、数ある他の不純物の中でもとりわけ、アクロレインおよび酢酸の両方を低レベル含む。たとえば、図1の実施態様において、粗アクリル酸流れ1は、30ppm未満のアクロレイン、1500ppm未満の酢酸、8500ppm未満のマレイン酸物質、300ppm未満のベンズアルデヒド、300ppm未満のフルフラール、および0.2%未満の水分を含む。塔101内における粗アクリル酸流れ1の蒸留は、少なくとも精製されたアクリル酸を含む塔頂部流れ3、および、少なくともマレイン酸化合物を含む底部流れ2を生成する。
【0020】
図1には示されていないが、塔101は塔付属品も含み、ここで、「塔付属品」という用語は、塔に接続される任意のすべての二次的な機器および関連する配管、たとえば真空機器、リボイラー、凝縮器、ポンプ、および、これらに限定するものではないが、フィードライン、底部ライン、塔頂部ライン、通気ライン、抑制剤添加ライン、酸素添加ライン、還流ライン、およびランダウンラインを含むプロセスラインを意味する。
【0021】
塔101およびそれ塔付属品は、好ましくは、腐食に対して抵抗性を有する材料から構成される。腐食効果に対して抵抗性を有する適切な構成材料としては、これらに限定するものではないが:300シリーズのステンレス鋼(たとえば、304、316L、および317L)、904L、6−モリステンレス鋼、HASTELLOY(登録商標)(たとえば、B、B−2、B−3、C−22、およびC−276)、タンタル、およびジルコニウムが挙げられる。幾つかの実施態様において、製造業者は、被覆ベースメタル(base metal)材料を利用することにより、構築費を下げることができる。「被覆ベースメタル」材料は、一般的に耐食性でないと考えられている材料、たとえば炭素鋼などを、腐食に抵抗することができる被覆、たとえばガラス、エポキシ、エラストマー、フルオロポリマー(たとえばTEFLON(登録商標))、または上記でリストアップされている耐食性金属のうちの1つと組み合わせた材料である。被覆ベースメタルは、腐食に抵抗することができる被覆をベースメタル上に配置し、任意に、被覆をベースメタルに結合することにより構成される。被覆は、ベースメタルがプロセス流れと接触するのを防ぐ。被覆ベースメタル構造は、特に、大直径配管(3.8cm以上の見かけの直径)および高流動速度運転(0.15メートル/秒以上の流動速度)における熱交換器チューブ、および、構造的な強度を提供するためにかなりの金属厚み(3mm以上の金属厚み)が使用され得る場合の他のコンポーネントに好適である。300シリーズのステンレス鋼、904L、6−モリステンレス鋼、HASTELLOY(登録商標)(たとえば、B、B−2、B−3、C−22、およびC−276)、タンタル、ジルコニウムなどの上記で説明された材料、および被覆ベースメタル材料を、以後あわせて互換的に「耐食性材料」という。
【0022】
望ましい場合には、トレーまたはパッキンなどの内部コンポーネントを塔101内において使用することができる。もし存在する場合、このような内部コンポーネントは、塔自体と同じ材料から製作することができ、もしくは、1以上の異なる材料から構成することができる;たとえば、一つの実施態様において、塔101は、316Lステンレス鋼を含むことができ、317L+ステンレス鋼を含む内部構造物を伴うことができる。
【0023】
第一塔101内においてトレーを使用することができ、たとえば、これに限定するものではないが、多孔プレートトレーを使用することができ、これは特にポリマー堆積に対する抵抗性を有していることが判明しているためである。本明細書で使用する、「多孔プレートトレー」という用語は、平坦な部分を含み、前記の平坦な部分を通じる複数の穴を伴う任意のトレーを意味する。これらに限定するものではないが、ウェヤー、下降管、バッフル、分配器、弁、バブルキャップ、および排水孔等の任意のトレー特質も有することができる。多孔プレートトレーの例としては、これらに限定するものではないが、シーブトレー、デュアルフロートレー、および組合せ弁と穿孔トレーが挙げられる。塔101内においてトレーが使用される場合には、35個から65個の多孔プレートトレーを使用することが提案される。
【0024】
一つの実施態様において、たとえば、第一塔101は少なくとも39個のデュアルフロートレーを含み、粗アクリル酸流れ1は、トレー番号1(即ち、塔101内の最も底部側に位置するトレー)の下側で塔に入る。別の実施態様において、塔101は少なくとも50個のデュアルフロートレーを含み、粗アクリル酸流れ1は、トレー番号17(最も底部側のトレーから上向きに数え始めて)で塔101に入る。一つの代替的な実施態様において、塔101は少なくとも63個のシーブトレーを含み、粗アクリル酸流れ1は、トレー30で塔に入る。
【0025】
第一塔101は、塔101の底部における温度を最小化するため、大気圧以下で運転することができる。たとえば、一つの実施態様において、塔101の底部における圧力を95mmHgから135mmHgまでに維持することができ、これにより、塔101の底部を85℃から115℃までの温度で運転することが可能になる。本発明の方法の実施態様は、塔101の底部を110℃以下、または105℃以下、または100℃以下、更には90℃以下に維持するステップを含む。塔101内における底部温度を最小化することは、塔頂部留分流れ4において、軽留分不純物、たとえばメチルビニルケトン(MVK)が少なくなり、従って、最終生成物アクリル酸流れ7においても軽留分含量が少なくなることが知見されている。本発明の生成物の実施態様は、25ppm以下のMVK、または20ppm以下のMVK、または15ppm以下のMVK、または10ppm以下のMVK、更には5ppm以下のMVKを含む最終生成物(メタ)アクリル酸流れ7を包含する。
【0026】
縮合重合を最小化するため、塔101およびその付属品、たとえば凝縮器および相互連結蒸気ラインにおけるベーパースペースを、AAの露点を超える温度に維持することができる。このためには、絶縁および電気式または蒸気式のトレーシングが効果的である。AAの重合を最小化するため、塔101およびその付属品に水溶性またはアルコールに可溶性の重合禁止剤を添加することが有用な場合が多い。このような重合禁止剤の適切な例としては、これらに限定するものではないが:ヒドロキノン(HQ);4−メトキシフェノール(MEHQ);4−エトキシフェノール;4−プロポキシフェノール;4−ブトキシフェノール;4−ヘプトキシフェノール;ヒドロキノンモノベンジルエーテル;1,2−ジヒドロキシベンゼン;2−メトキシフェノール;2,5−ジクロロヒドロキノン;2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン;2−アセチルヒドロキノン;ヒドロキノンモノベンゾエート;1,4−ジメルカプトベンゼン;1,2−ジメルカプトベンゼン;2,3,5−トリメチルヒドロキノン;4−アミノフェノール;2−アミノフェノール;2−N,N−ジメチルアミノフェノール;2−メルカプトフェノール;4−メルカプトフェノール;カテコールモノブチルエーテル;4−エチルアミノフェノール;2,3−ジヒドロキシアセトフェノン;ピロガロール−1,2−ジメチルエーテル;2−メチルチオフェノール;t−ブチルカテコール;ジ−tert−ブチルニトロキシド;ジ−tert−アミルニトロキシド;2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−エタノールオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ;3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ;2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−3−アザシクロペンチル−3−オキシ;2,2,5,5−テトラメチル−3−ピロリニル−1−オキシ−3−カルボン酸;2,2,3,3,5,5,6,6−オクタメチル−1,4−ジアザシクロヘキシル−1,4−ジオキシ;4−ニトロソフェノラートの塩;2−ニトロソフェノール;4−ニトロソフェノール;銅ジメチルジチオカルバメート;銅ジエチルジチオカルバメート;銅ジブチルジチオカルバメート;銅サリチレート;メチレンブルー;鉄;フェノチアジン(PTZ);3−オキソフェノチアジン;5−オキソフェノチアジン;フェノチアジン二量体;1,4−ベンゼンジアミン;n−(1,4−ジメチルペンチル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン;n−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン;n−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンおよびそれらの塩;酸化窒素;ニトロソベンゼン;p−ベンゾキノン;それらの異性体;それらのうちの2以上の混合物;上記のもののうちの1以上と分子性酸素との混合物;が挙げられる。1種もしくは複数種の重合禁止剤を、それのみで用いることができ、もしくは、適切な希釈剤と組み合わせて用いることができる。適切な希釈剤としては、これらに限定するものではないが、(メタ)アクリル酸、水、およびアセトンを含む有機混合物が挙げられる。
【0027】
一つの実施態様において、アクリル酸溶媒中におけるHQ/PTZの混合物が、塔101およびその付属品における重合禁止剤として使用される。フェノール系禁止剤、たとえばHQおよびMeHQなどが使用されるときには、禁止剤の有効性を増強するため、酸素含有気体が、蒸留塔およびその付属品全体を通じ、1以上の箇所へ添加されることが一層好適である。本明細書で使用する場合、「酸素含有気体」という用語は、0.01%から100%までの分子性酸素を含む任意の気体を指している。酸素含有気体は、バブリングなどにより、アクリル酸含有溶液と直接的に混合することができ、もしくは、前もって溶媒中に溶解しておき、結果として得られた溶液を間接的な混合で使用することもできる。バブリングは、蒸留塔の底部を通じて、および/または、リボイラーを通じて酸素含有気体を供給することにより容易に実施することができる。分子性酸素は、一般的に、約0.1〜1.0容積%の範囲内におけるある率で供給することができ、また、代替的に、約0.2〜0.5容積%の範囲内におけるある率で供給することができる。供給される分子性酸素の量は、蒸留塔内のアクリル酸蒸気の量に基づいて決めることができる。
【0028】
底部流れ2を、残留するアクリル酸を回収すべく更に処理することができる。一つの実施態様(図示せず)において、底部流れ2は、加水分解式回収ユニット(「HRU」)−たとえば参照により本明細書に援用される米国特許第5,877,345号に開示されているものなど−において処理される。更に、第一塔101を出た底部流れ2を、残留するアクリル酸を回収すべく、アクリル酸エステル生成プロセス内において処理することができる。
【0029】
図1に示されているように、塔頂部流れ3を、1以上の凝縮器104において少なくとも部分的に凝縮させることができる。結果として生じる凝縮させた流れのうちの0%から100%までの間の量を塔101へ還流し、残りの塔頂部留分流れ4の純度を所望のレベルにすることができ、塔頂部留分流れ4は、蒸留系100の第二の塔102へ運ばれる。一つの実施態様において、塔頂部流れ3を、流れ内におけるアクリル酸の凍結を回避するため、1つもしくは複数の凝縮器104内の適温の冷却水を用いて凝縮させる。
【0030】
一つの実施態様において、塔頂部留分流れ4の一部を、1つもしくは複数の凝縮器104へ、および任意に1つもしくは複数の凝縮器104へ入る前の蒸気インレットラインへ戻して再循環させることができ(図示せず)、凝縮器の汚損を最小化し、凝縮器の効率を改善することができる。塔頂部留分流れ4から再循環された凝縮物を、再循環ラインから自由に流出させ、1つもしくは複数の凝縮器104へ流入させることができ、あるいは凝縮物を、チューブシートへ、凝縮器の内面へ、および/またはインレット蒸気ラインの内壁へ適用することができる。1つもしくは複数の凝縮器104へ重合禁止剤が添加される場合には、重合禁止剤を、禁止剤の分配を改善するため、この凝縮物再循環の流れを通じて添加することができる。一つの代替的な実施態様において、この凝縮物再循環の流れの少なくとも一部は、塔101および/またはその付属品の内面に凝縮物を噴霧して重合可能な凝縮物を洗い落とす装置に通すことができる。
【0031】
塔頂部留分流れ4は、約0.5%までの水分を含むことができる。本発明の方法のさらなる実施態様は、0.30%以下の水分、または0.15%以下の水分、更には0.10%以下の水分を含む塔頂部留分流れ4を利用する。
【0032】
塔頂部留分流れ4中のマレイン酸物質に関して説明すると、この流れは、約3000ppmまでのマレイン酸物質を含むことができる。本発明の方法の様々な実施態様は、2000ppm以下のマレイン酸物質、または1000ppm以下のマレイン酸物質、または500ppm以下のマレイン酸物質、更には100ppm以下のマレイン酸物質を有する塔頂部留分流れ4を利用する。
【0033】
更に、塔頂部留分流れ4は、100ppmまでのプロトアネモニン(PTA)を含むことができる。本発明の方法の様々な実施態様は、50ppm以下のPTA、または30ppm以下のPTA、更には10ppm以下のPTAを有する塔頂部留分流れ4を利用する。
【0034】
図1に示されているように、塔頂部留分流れ4は、さらなる精製のため、蒸留系100の第二の蒸留塔102へ供給することができる。
【0035】
任意に、本プロセスの外部のソースからもたらされる低マレイン酸物質含量の粗アクリル酸(流れ10)を塔頂部留分流れ4と合わせ、3000ppm以下のマレイン酸物質を含む、混合された最終蒸留塔フィード流れ11を形成することができる。本明細書で使用する、「低マレイン酸物質含量の粗アクリル酸」という用語は、3000ppm未満のマレイン酸物質を含む粗アクリル酸流れを意味する。たとえば、低マレイン酸物質含量の粗アクリル酸流れ10は、たとえば欧州特許第1,070,700号に開示されているプロセスなどの抽出精製プロセスによって生成することができ、1600ppm以下のマレイン酸物質、15ppm以下のアクロレイン、1200ppm以下の酢酸、300ppm以下のベンズアルデヒド、および300ppm以下のフルフラールを含む場合がある。
【0036】
混合フィード流れ11は、0%から100%までの間の低マレイン酸物質含量の粗アクリル酸を含むことができる。一つの実施態様において、たとえば、混合フィード流れ11は、100%の低マレイン酸物質含量の粗アクリル酸(10)を含み、塔101およびその付属品は省略される。本発明の方法の代替的な実施態様は、50%未満の流れ10、または35%未満の流れ10、または15%未満の流れ10、更には5%未満の流れ10を含む混合フィード流れ11を使用する。本発明のさらなる実施態様は、約2000ppm以下のマレイン酸物質、たとえば約1000ppm以下のマレイン酸物質を有する混合フィード流れ11を含む。
【0037】
混合フィード流れ11は、アルデヒド、たとえばフルフラールなどが低い精製された蒸気流れ6を生成すべく、蒸留塔102内で更に精製される。この精製された蒸気流れ6を、少なくとも部分的に凝縮させることができ、所望の純度レベルの最終生成物アクリル酸流れ7を得るべく、流れの0%から100%までの間のある量を(図1に示されている如く)塔102へ還流させることができる。このような調節は、任意に、塔102内において(以下で説明されている如くに)利用される任意のアルデヒド処理化合物の添加速度を斟酌して行うことができ、これは本開示が与えられたとすれば、蒸留技術分野における当業者が有する能力の範囲内である。生成物の保管および輸送における安定性をもたらすべく、任意に、最終生成物アクリル酸流れ7にMeHQまたは他の重合禁止剤を添加することができる。
【0038】
塔102とその塔付属品(図示せず)は、好ましくは、耐食性材料から構成される。所望の場合には、トレーまたはパッキンなどの内部コンポーネントを塔102内で使用すことができる。存在する場合、内部構造物を、塔自体と同じ材料から製作することができ、あるいは、1以上の異なる材料から構築することができる。多孔プレートトレーを使用する場合、それらは、塔102内に28個から42個のトレーを含むことができる。
【0039】
一つの実施態様において、塔102は少なくとも29個のデュアルフロートレーを含み、混合フィード流れ11は、トレー番号1(即ち、最も底部側に位置するトレー)の下側で塔102に入る。一つの代替的な実施態様において、塔102は少なくとも39個のシーブトレーを含み、混合フィード流れ11は、トレー番号5(最も底部側のトレーから上向きに数え始めて)で塔に入る。
【0040】
塔102は、塔102の底部における温度を最小化するため、大気圧以下で運転することができる。たとえば、一つの実施態様において、塔102の底部における圧力を60mmHgから100mmHgまでに維持することができる;この圧力設定は、塔の底部を65℃から110℃までの温度で運転することを可能にする。
【0041】
塔102およびその付属品に水溶性またはアルコールに可溶性の重合禁止剤を添加することが有用な場合が多い。適切な重合禁止剤の例としては、これらに限定するものではないが、塔101に関して上文にてリストアップされているものが挙げられる。一つの実施態様において、たとえば、アクリル酸溶媒中におけるHQ/PTZの混合物が塔102およびその付属品におけるプロセス禁止剤として利用される。HQ禁止剤が使用されるときには、重合禁止剤の有効性を増強するため、酸素含有気体を添加することができる。
【0042】
縮合重合を最小化するため、塔102およびその付属品、たとえば凝縮器および相互連結蒸気ラインにおけるベーパースペースを、アクリル酸の露点を超える温度に維持することができる;たとえば、絶縁および電気式または蒸気式のトレーシングがこの目的にとって有効である。
【0043】
本発明の一つの実施態様において、精製された蒸気流れ6を、流れ6内のアクリル酸が凍結するのを回避するため、1以上の凝縮器105内において適温の冷却水を用いて凝縮させる。
【0044】
代替的に、最終生成物アクリル酸流れ7の一部を、1つもしくは複数の凝縮器105へ、および任意に1つもしくは複数の凝縮器105へ入る前の蒸気インレットラインへ戻して再循環させることができる。この再循環によって、凝縮器の汚損を最小化し、凝縮器の効率を改善することができる。凝縮物を、再循環ラインから自由に流出させ、1つもしくは複数の凝縮器105へ流入させることができ、あるいは、凝縮物をチューブシートへ、凝縮器の内面へ、および/またはインレット蒸気ラインの内壁へ適用するができる。1つもしくは複数の凝縮器105へ重合禁止剤が添加される場合には、重合禁止剤を、禁止剤の分配を改善するため、この凝縮物再循環の流れを通じて添加することができる。別の実施態様において、この凝縮物再循環流れの少なくとも一部は、塔102および/またはその付属品の内面に凝縮物を噴霧して重合可能な凝縮物を洗い落とす装置に通すことができる。
【0045】
本明細書において先に述べられているように、混合フィード流れ11は、他の種々あるものの中でもとりわけ、アルデヒド不純物(たとえば、これらに限定するものではないが、マレイン酸物質、アクロレイン、フルフラール、ベンズアルデヒドの1以上)を含む。混合フィード流れ11からアルデヒドの少なくとも一部を除去することを促進するため、混合フィード流れ11に少なくとも1種のアルデヒド処理化合物が添加される。以降で更に詳細に検討されているように、適切なアルデヒド処理化合物は、混合フィード流れ11中のアルデヒドと反応することができる化合物である。1種もしくは複数種のアルデヒド処理化合物を、任意の様々な既知の方法によって混合フィード流れ11に添加することができ、このような方法は、これらに限定するものではないが、1種もしくは複数種のアルデヒド処理化合物を混合フィード流れ11へ、蒸留塔102へ入る前のあるプロセスポイントにおいて(たとえば、混合フィード流れ11を蒸留塔102へ運ぶラインに)導入する方法、または、混合フィード流れ11が塔102に入るのと同じ蒸留塔102への進入ポイントにおいて(たとえば、蒸留塔102への同じインレットにおいて)導入する方法、更には、混合フィード流れ11が蒸留塔102へ入る場所とは異なる別のラインもしくはインレットを介して、蒸留塔に直接的に導入する方法が挙げられる。更に、混合フィード流れ11を蒸留塔102へ供給する前に、少なくともある時間の間、1種もしくは複数種のアルデヒド処理化合物を混合フィード流れ11の少なくとも一部とプレミックスする方法も、1種もしくは複数種のアルデヒド処理化合物と混合フィード流れ11中に存在するアルデヒドとの反応を促進しすることができると認識される。このようなプレミックスは、任意の既知の方法および装置によって適切に果たすことができ、たとえば、これらに限定するものではないが、静的ミキサー、動的ミキサー、ジェット混合、または配管内における乱流混合を用いることにより果たすことができる。
【0046】
アルデヒド処理化合物の添加は、混合フィード流れ11の組成をマレイン酸物質が3000ppm以下となるように抑制することと相俟って、アルデヒド含量が低い最終生成物アクリル酸流れ7をもたらし、このアクリル酸流れ7は、5ppm以下のフルフラール、5ppm以下のアクロレイン、および5ppm以下のPTAを含む。一つの実施態様において、結果として生じる最終生成物アクリル酸流れ7は、1ppm以下のフルフラール、1ppm以下のアクロレイン、および1ppm以下のPTAを含む。このような低いアクロレイン、フルフラール、およびPTAレベルは、超吸収性ポリマーの生成にとって特に望ましい。
【0047】
多くのアルデヒド処理化合物がマレイン酸物質ならびに他のアルデヒド(たとえば、アクロレイン、フルフラール、ベンズアルデヒド)と反応し得るため、混合フィード流れ11のマレイン酸物質含量を3000ppm以下となるように維持することは、アルデヒド処理化合物の添加速度が本発明の方法の範囲内で最小化されることを可能にし、これにより、製造に対する経済的な利点が提供される。本発明の一つの代替的な実施態様は、混合フィード流れ11内のマレイン酸物質含量を2000ppm以下となるように維持するステップを含む。代替的な実施態様は、混合フィード流れ11内のマレイン酸物質含量を1000ppm以下となるように、または500ppm以下となるように、または100ppm以下となるように、更には25ppm以下となるように維持するステップを含む。
【0048】
アルデヒド処理化合物を、(図1に示されているように)ライン8を介して最終蒸留塔102の底部に添加することができ、あるいは代替的に、混合フィード流れ11と混合することができる(図示せず)。
【0049】
アルデヒド処理化合物として使用するのに適した様々な化合物が開示されており、たとえば、それらのすべてが参照により本明細書に援用される米国特許第5,571,386号;米国特許第6,228,227号;および米国特許公開第2001/0004960A1号に開示されている。このようなアルデヒド処理化合物は、これに限定するものではないが、以下:硫酸、ヒドラジン化合物、グリシン、リジン、メチオニン、アミン化合物、フロログルシノール、アニリン化合物、ヒドラジド化合物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種が挙げられる。
【0050】
ヒドラジド化合物としては、たとえば、これらに限定するものではないが、以下の化合物:ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ヒドラジン水和物、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、4−ニトロフェニルヒドラジン、および2,4−ジニトロフェニルヒドラジンが挙げられる。アミン化合物としては、たとえば、これらに限定するものではないが、以下の化合物:モノエタノールアミン(「MEA」)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ならびにオルト−、パラ−、およびメタ−フェニレンジアミン(即ち、「oPD」、「pPD」、および「mPD」)が挙げられる。アニリン化合物としては、たとえば、これらに限定するものではないが、以下の化合物:アニリン、ならびにオルト−、パラ−、およびメタ−メチルアニリンが挙げられる。ヒドラジド化合物としては、たとえば、これらに限定するものではないが、有機酸のヒドラジドおよびそれらの塩(たとえば、カルバミン酸ヒドラジド、セミカルバジド塩酸塩)、ならびに、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、およびペンタン酸のヒドラジド、および、アジピン酸ならびにコハク酸のジヒドラジドが挙げられる。
【0051】
アルデヒド処理化合物は、単独で使用することができ、もしくは、適切な希釈剤、たとえば低アルデヒド含量のアクリル酸(たとえばHPAA)などと組み合わせて使用することができる。幾つかの実施態様においては、ポンピングによる移送を容易化するため、アルデヒド処理化合物の粘度を加熱により低減することができる。たとえば、mPDを、ポンピングを容易化するため、約60℃から約140℃までの間の温度に加熱することができる。任意に、酸化を防ぐため、アルデヒド処理化合物を不活性条件下で保管することができる。たとえば、1種もしくは複数種の選定されたアルデヒド処理化合物を、乾燥窒素または乾燥アルゴン下においてタンク内に保管することができる。
【0052】
一つの実施態様において、少なくとも1種のアルデヒド処理化合物がライン8を介して最終蒸留塔102へ添加される。たとえば、少なくとも1種のアルデヒド処理化合物は、oPD、pPD、およびmPDのうちの1以上であってよい。少なくとも1種のアルデヒド処理化合物を、任意の位置で最終蒸留塔102へ添加することができるが、典型的には、最終蒸留塔102の底部側半分の部分、たとえば、これに限定するものではないが、最も底部側に位置するトレー(即ち、トレー番号1)の下側のポイントで添加する。少なくとも1種のアルデヒド処理化合物を塔102の底部側半分の部分に添加する一つの目的は、アルデヒド処理化合物が塔102内の(メタ)アクリル酸中に存在する任意のアルデヒド化合物と反応するのに充分な塔102内における滞留時間を確保することである。たとえば、アルデヒド処理化合物mPDを、塔102のサンプ112へ、もしくは、リボイラーの循環ライン(図示せず)へ添加することができる。本明細書で使用する場合、「サンプ」という用語は、トレーを有する蒸留塔内の領域であって、塔内の最も底部側に位置するトレーの下側の領域を意味する。上でリストアップされている1以上のアルデヒド処理化合物を、任意に、ライン9を介して塔の上部へ添加することができる。
【0053】
任意に、アルデヒド処理化合物を、塔頂部流れ3に存在し得るアクロレインおよびマレイン酸物質などの不純物の濃度を少なくとも部分的に低減するため、粗アクリル酸流れ1へ添加することができ、もしくは塔101へ直接添加することができる。流れ1または塔101へのアルデヒド処理化合物のこのような添加を、本明細書では、「アルデヒド前処理」という。アルデヒド前処理の実施態様は、粗アクリル酸流れ1のマレイン酸物質含量を12000ppm以下、9000ppm以下、6000ppm以下、および3000ppm以下に低減するのに充分な量のアルデヒド処理化合物を使用するステップを含む。この開示の利益が与えられたとすれば、当業者にとって、粗アクリル酸流れ1のマレイン酸物質含量が3000ppm以下のマレイン酸物質である実施態様において、マレイン酸物質を除去するための塔101の使用は要求されない場合があることが明らかであろう。
【0054】
アルデヒド前処理の実施態様は、約0.1kgMEA/1000kgの粗アクリル酸流れ1から約10.0kgMEA/1000kgの粗アクリル酸流れ1までのフィード速度で、MEAを粗アクリル酸流れ1と混合するステップ、または、MEAを塔101に直接供給するステップを含む。アルデヒド処理化合物の正確なフィード速度は、少なくとも部分的には、粗アクリル酸流れ1中の不純物の開始時レベル、および、反応速度制御因子、たとえば反応温度および滞留時間などに依存する。
【0055】
たとえば、アルデヒド前処理の一つの実施態様において、アルデヒド処理化合物MEAを、容器、たとえば適切混合(well−mixed)タンクまたは回分反応器(図示せず)などにおいて粗アクリル酸流れ1と混合させることができる。容器のサイズの選択、ならびに、容器に流入出する流量などの変数の調節によって、このような容器内における滞留時間を制御することは、当業者の能力の範囲内である。容器内におけるアルデヒド前処理の実施態様は、4時間まで、8時間まで、12時間まで、16時間まで、および24時間までの容器内における滞留時間を使用するステップを含む。アルデヒド前処理の実施態様は、更に、容器の内容物を25℃まで、45℃まで、60℃まで、80℃まで、および100℃までのある温度に維持するステップを含むことができる。
【0056】
任意に、異なるアルデヒド処理化合物を図1に描かれているプロセス内の2以上の場所で添加することができる。たとえば、アルデヒド処理化合物が流れ8および9を介して添加されるケースでは、流れ8は、流れ9中に存在しない少なくとも1種のアルデヒド処理化合物を含むことができる。この添加方法を、本明細書では、アルデヒド処理化合物の「逐次添加」という。アルデヒド処理化合物の逐次添加が用いられる本方法の一つの実施態様において、たとえば、アニリンがライン8を介して添加され、MEAとmPDの混合物がライン9を介して添加される。
【0057】
別の実施態様において、少なくとも1種の第一アルデヒド処理化合物と少なくとも1種の第二アルデヒド処理化合物とを含むアルデヒド処理化合物の組合せを、混合フィード流れ11に直接的に混合することができる(図示せず)。より詳細には、第一および第二アルデヒド処理化合物は、第一アルデヒド処理化合物が第二アルデヒド処理化合物に少なくとも部分的に溶解することができるように選択される。たとえば、これに限定するものではないが、アルデヒド処理化合物の組合せとしては、追加的なアルデヒド処理化合物を伴って、もしくは伴わずに、MEAに溶解させたmPDを挙げることができる。アルデヒド処理化合物のような組合せを利用することは、それらのアルデヒド処理化合物をポンピングすることができるようにするために必要な予熱を最小化することにより、混合フィード流れ11へのそれらの混合を容易化する。
【0058】
高沸点留分、たとえばPTAおよびアルデヒド処理からもたらされた生成物などを含む底部流れ5を、残留するアクリル酸を回収するため、任意に更に処理することができる。図1の実施態様において、たとえば、底部流れ5は、残留するアクリル酸を回収するため、追加的な底部留分回収塔103のサンプ113(即ち、塔103のトレー番号1の下側)へ供給される。底部流れ5は、任意に、底部留分回収塔103の最適な経済的運転で必要なときには、他の底部流れ、おそらくは粗アクリル酸(図示せず)と混合することができる。
【0059】
底部留分回収塔103および、もし何か存在する場合には、その塔付属品(図示せず)を、耐食性材料から構築することができる。望ましい場合には、内部コンポーネント、たとえばトレーまたはパッキンなどを塔103内で使用することができる。存在する場合、内部構造物を、塔103自体と同じ材料から製作することができ、もしくは、1以上の異なる材料から構築することができる。任意に、底部留分回収塔103は、8個から18個までの多孔プレートトレーを含むことができる。一つの実施態様において、塔103は少なくとも17個のデュアルフロートレーを含み、底部流れ5は、トレー番号1(即ち、最も底部側に位置するトレー)の下側で塔に入る。一つの代替的な実施態様において、塔103は少なくとも12個のシーブトレーを含み、底部流れ5は、トレー番号1の下側で塔に入る。
【0060】
底部留分回収塔103は、塔の底部における温度を最小化するため、大気圧以下で運転されるべきである。たとえば、底部留分回収塔103の底部における圧力を70mmHgから110mmHgまでに維持することができ、これにより、塔の底部を85℃から125℃までの温度で運転することが可能になる。
【0061】
縮合重合を最小化するため、底部留分回収塔103およびその付属品、たとえば凝縮器および相互連結蒸気ラインにおけるベーパースペースは、好適には、アクリル酸の露点を超える温度に維持される;このためには、たとえば、絶縁および電気式または蒸気式のトレーシングが効果的である。
【0062】
底部留分回収塔103およびその付属品に水溶性またはアルコールに可溶性の重合禁止剤を添加することが有用な場合が多い。適切な例としては、塔101に関して上でリストアップされている重合禁止剤が挙げられる。一つの実施態様において、アクリル酸溶媒中におけるHQ/PTZの混合物が底部留分回収塔103およびその付属品における重合禁止剤として利用される。HQ禁止剤が使用されるときには、重合禁止剤の有効性を増強するため、酸素含有気体を添加することができる。
【0063】
少なくともアクリル酸を含む蒸気流れ12を、少なくとも部分的に凝縮させることができ、所望の純度レベルの回収されたアクリル酸流れ13を得るべく、流れ12のうちの0%から100%までの間の量が底部留分回収塔103へ還流される。一つの実施態様において、蒸気流れ12は、流れ中のアクリル酸が凍結するのを回避するため、1以上の凝縮器106内において適温の冷却水を用いて凝縮させることができる。
【0064】
本発明の一つの実施態様において、回収されたアクリル酸流れ13の一部(図示せず)を、底部留分回収塔103と連合した1つもしくは複数の凝縮器106へ、および任意に1つもしくは複数の凝縮器106へ入る前の蒸気インレットラインへ戻して、再循環させることができる。アクリル酸流れ13の一部のこの再循環は、凝縮器の汚損を最小化し、凝縮器の効率を改善するのに役立ち得る。凝縮物を、再循環ラインから自由に流出させ、1つもしくは複数の凝縮器106へ流入させることができ、もしくは、チューブシートへ、凝縮器の内面へ、および/またはインレット蒸気ラインの内壁へ適用することができる。1つもしくは複数の凝縮器106へ重合禁止剤が添加される場合には、重合禁止剤を、禁止剤の分配を改善するため、この凝縮物再循環流れを通じて添加することができる。代替的に、この凝縮物再循環の流れ(図示せず)の少なくとも一部は、塔103および/またはその付属品の内面に凝縮物を噴霧して重合可能な凝縮物を洗い落とす装置に通すことができる。
【0065】
回収されたアクリル酸流れ13は、典型的には、100ppm未満のフルフラール、200ppm未満のPTA、および0.2%未満の水分を含む。このようなアクリル酸は、アクリル酸エステルの生成および幾つかのエマルジョンポリマーの調製を含む多くの低要求の(less−demanding)用途に適している。代替的に、回収されたアクリル酸流れ13を、総合生成収率を改善するため、保管中の粗アクリル酸と混合し、もしくは、塔101または102へ戻されてリサイクルすることができる。回収された底部流れ14は、たとえばアクリル酸エステル生成プロセス内の加水分解式回収ユニット(HRU)において、残留するアクリル酸を回収すべく更に処理することができる。
【0066】
塔102へ過剰量のアルデヒド処理化合物を添加した場合には、最終生成物アクリル酸流れ7の水分含量が不適当に増大することが知見されている。水分含量のこの増大は、たとえアルデヒド含量が有意に低減されたとしても起こり得る。水分含量が増大した、このような状況では、最終生成物アクリル酸流れ7は、望ましい純度のHPAAを達成し得ない。従って、最終生成物アクリル酸流れ7中における水分含量の増大を防ぐため、添加されるアルデヒド処理化合物の量は、モニタリングして制御されるべきである。
【0067】
mPDがアルデヒド処理化合物に選定され、混合フィード流れ11のマレイン酸物質含量が1000ppm以下のように維持される本発明の方法の一つの実施態様において、混合フィード流れ11へ添加されるmPDの量は、1000kgの混合フィード流れ11当たり約0.5kgのmPDから1000kgの混合フィード流れ11当たり約7.0kgのmPDまでの範囲にわたり得る。本発明の方法の様々な実施態様が可能であり、そこでは、添加されるmPDの量が、1000kgの混合フィード流れ11当たり約5kgであり、または、1000kgの混合フィード流れ11当たり約3.5kgであり、更には、1000kgの混合フィード流れ11当たり約2.5kgである。
【0068】
本発明の方法の一つの実施態様において、最終生成物アクリル酸流れ7を、アルデヒドおよび水分の含量について分析することができる。観測されたアルデヒドおよび水分含量に基づいて、望ましい品質のアクリル酸生成物を提供するようにアルデヒド処理化合物の添加速度を適切に調節することができる。このような調節は、任意に、塔102へ還流される(戻される)、凝縮された塔頂部流れ6の量を斟酌して行うことができる。このような分析および調節は、本開示の利益が与えられたとすれば、当業者の能力の範囲内である。
【0069】
本明細書に開示されているように、本発明の精製プロセスは、5ppm以下のフルフラールおよび0.05%以下の水分を含む最終生成物アクリル酸流れ7を提供することができ−これは、HPAA純度を達成する最終生成物の流れである。水分除去効率を増強し−これにより、HPAA純度を有する最終生成物の流れを達成するため、本発明の蒸留プロセスにおいて、任意の反応性乾燥剤を利用することが有利である場合がある。このような増強は、プロセスの安定性を改善し、経済的に好ましい高生産率条件下において、プロセスを信頼性高く運転することを可能にする。また、適切な運転条件および生産率が与えられれば、反応性乾燥剤を使用することにより、実質的に0.05%より低い水分レベルを達成することができることも想定されている。「反応性乾燥剤」という用語は、水と化学反応することができ、これにより、水分含量を最小化、もしくは、完全に排除することができる1以上の化合物を意味する。より詳細には、「反応性乾燥剤」は、粗(メタ)アクリル酸流れに存在する水分と反応し、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸生成物よりも高い沸点温度を有する高沸点生成物を生成することができるものであってよい。たとえば、無水アクリル酸は、水と反応し、アクリル酸を形成することができる。高沸点生成物が生成される場合、高沸点生成物は、通常の分離方法、たとえば蒸留法などにより、(メタ)アクリル酸から分離することができる。代替的に、「反応性乾燥剤」は、粗(メタ)アクリル酸流れに存在する水分と反応し、少なくとも1種のアルデヒド処理化合物を形成することができるものであってもよい。
【0070】
先述の如く、無水アクリル酸は、生成物との固有の適合性のため、アクリル酸生成プロセスにおけるアクリル酸と共に使用するための反応性乾燥剤として好適な選択肢であると考えられよう。しかし、驚くべきことに、本明細書後記に含まれている実施例から分かるように、無水物、たとえば無水アクリル酸および無水マレイン酸などは、(メタ)アクリル酸を生成するための本発明の方法との関連において、果たされる水分低減能力が乏しいことが知見されている。これらの無水物の遅い反応速度のために、乾燥剤としてそれらが有効性に欠けるものと確信される。更にもっと驚くべきことは、アクリル酸などの適合する化合物を形成するのではなく、代わりに、本アクリル酸精製プロセスにおいて高沸点不純物を形成することができる反応性乾燥剤を使用するのが望ましいと知見されたことである。「高沸点」不純物という用語は、アクリル酸よりも高い沸点を有する不純物を意味する。
【0071】
本開示の利益が与えられたとすれば、選定される任意のかかる反応性乾燥剤は、更に、本発明の方法において実質的に不活性であるべきことは、当業者にとって明らかであろう。「実質的に不活性」という用語は、選定された物質が本プロセスに及ぼす負の影響をもたらさないことを意味しており、このような負の影響は、これらに限定するものではないが、扱いにくい固体の形成、重合禁止剤の不活性化、アルデヒド処理化合物の不活性化または消費、アクリル酸の二量体化または重合の開始、たとえば酢酸などのやっかいな不純物の形成、およびプロセス機器の腐食が挙げることができる。
【0072】
従って、本発明のプロセスにおいて使用するのに適した反応性乾燥剤としては、アセタール類、ケタール類、ハロゲン化無水物類、イソシアネート類、およびそれらの混合物からなる群から選択される1以上の物質が挙げられる。
【0073】
反応性乾燥剤を、第一蒸留塔101、最終蒸留塔102、または追加的な底部留分回収塔103の1以上の場所で添加することができる。たとえば、反応性乾燥剤を、粗アクリル酸フィード流れ1と混合することができ、もしくはライン8、9、または10を通じて添加することができる。本発明の方法の一つの実施態様において、たとえば、これに限定するものではないが、テトラ−メトキシ−1,4−シクロヘキサジエンが流れ8を介して塔102へ添加され、アセタールが流れ9を介して塔102へ添加される。
【0074】
本方法の別の実施態様において、反応性乾燥剤1,3−フェニレンジイソシアネート(1,3PD)が塔102へ添加される。理論に制限されることを意図したものではないが、1,3PDは、水と反応して、および、(M)AAの存在下において、mPDを形成し、次いで、mPDは、更に、塔102内のアルデヒドと反応することができ、これにより、必要となる新鮮なアルデヒド処理化合物の量が低減されるものと確信される。このように、使用する場合、1,3PDを、混合流れ11と混合することができ、または、流れ8を介して塔102へ直接添加することもできる。代替的に、1,3PDは、混合フィード流れ11における水分濃度に関して約0.5:1から3:1までの間のあるモル比で塔102へ添加することもできる。比に対する調節は、最終蒸留生成物の流れ7の水分分析から得られるフィードバックに基づいて行うことができる。
【実施例】
【0075】
実施例−反応性乾燥剤
組み立てる前に、三つ口丸底フラスコをオーブンで乾燥させ、そして、各試験を始める前に、任意の水蒸気を蒸発させるため、器具を乾燥窒素でパージした。すべての試験の間、窒素パージを続けた。各試験は、200ppmのPTZで抑制された150グラムのアクリル酸をフラスコへ添加することから構成された。温度計をフラスコの一つのポートに配置し、(窒素ラインおよびバブラーに取り付けられた)凝縮器を第二のポートに配置し、セプタムを第三のポートに配置した。ポットを撹拌して90℃に加熱し、この時点で、試験対象の反応性乾燥剤を導入した。比較を容易化するため、すべての実施例において、2:1のモル比の乾燥剤:アクリル酸流れ中における初期水分含量を用いた。乾燥剤を添加して直ぐにサンプルを回収し、その後、既知の間隔でサンプルを回収した。サンプルは直ちにドライアイス中で凍結され、カールフィッシャー滴定法で分析することにより水分濃度が決定された。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
【表5】

【0081】
【表6】

【0082】
【表7】

【0083】
【表8】

【0084】
これらの実施例は、アセタール類、ケタール類、ハロゲン化無水物類、およびイソシアネート類が、本発明の創意に富んだプロセスにおける使用で驚くほど良好な結果を呈する卓越した反応性乾燥剤であることを示している。
【0085】
エポキシド、たとえば1,2−エポキシオクタデカンは、アクリル酸の重合をもたらしかねず、従って、本発明の蒸留プロセスにおける反応性乾燥剤として使用することは推奨されないことに留意すべきである。
【0086】
従って、本明細書に記載されている本発明は、目的を実行し、述べられている最終生成物および利点、ならびに、それに固有の他のものを達成すべくうまく適合化されている。開示の目的で、本発明の現時点における幾つかの好適な実施態様が与えられているが、望ましい結果を達成するため、手順の細部に数多くの変更を為し得る。たとえば、本発明は、プロセスの一部として粗メタクリル酸の精製を有する何らかの工業的なプロセスを含むことができる。これらおよび他の同様な変更態様は当業者には容易なし得ることであり、このような変更態様は、ここに開示されている本発明の精神、および、添付の特許請求項の範囲内に包含されるべく意図されている。
【符号の説明】
【0087】
1 粗アクリル酸フィード流れ
2 底部流れ
3 塔頂部流れ
4 塔頂部留分流れ
5 底部流れ
6 蒸気流れ
7 最終生成物アクリル酸流れ
8 ライン
9 ライン
10 粗アクリル酸流れ
11 混合フィード流れ
12 蒸気流れ
13 最終生成物アクリル酸流れ
14 底部流れ
100 蒸留系
101 第一蒸留塔
102 最終蒸留塔
103 底部留分回収塔
104,105,106 凝縮器
111,112,113 サンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留器を用いて(メタ)アクリル酸流れを精製する方法であって、蒸留器の底部における温度を110℃以下の温度に維持するステップを含む方法。
【請求項2】
蒸留器内におけるメチルビニルケトンの生成が最小化される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
更に、25ppm以下のメチルビニルケトンを含む最終生成物(メタ)アクリル酸流れを生成するステップを含む、請求項2記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−231133(P2011−231133A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−182554(P2011−182554)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【分割の表示】特願2008−2963(P2008−2963)の分割
【原出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】