説明

水分散型粘着剤組成物、水分散型粘着シート、粘着型光学フイルム、画像表示装置

【課題】塗工面における塗工スジや配管への負荷の小さい耐久性を有する水分散型粘着剤組成物を提供すること。
【解決手段】炭素数4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、親水性モノマーを含むモノマー混合物と、メルカプト基を有するシラン系化合物を含む重合性混合物を重合して得られるポリマーを含む水分散型粘着剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型粘着剤組成物、水分散型粘着シート、粘着型光学フイルム、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、偏光フイルム、位相差フイルム、輝度向上フイルム、視野角拡大フイルムなどの光学フイルムが、画像表示機器に用いられており、例えば、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)などの画像表示装置に貼着して用いられている。
【0003】
画像表示装置に貼着される光学フイルムとして、光学フイルムに粘着剤を積層した粘着型光学フイルムが知られている。
【0004】
また、近年、環境負荷の観点から、有機溶剤の使用を低減することが望まれており、溶媒として有機溶剤を使用する溶剤型粘着剤から、分散媒として水を使用する水分散型粘着剤への転換が粘着型光学フイルム等においても望まれている。
【0005】
しかしながら、水分散型粘着剤は、一般に、水分散型粘着剤を形成する水分散型粘着剤組成物を塗工する際に塗工スジが発生して、糊厚が不均一になったり、塗工面に欠陥が発生したり、水分散型粘着剤組成物を送液する際に、配管に大きな負荷がかかりやすくなる、また、水分散型粘着シートの耐久性が低下する等の問題が知られている。
【0006】
そのため、水分散型粘着剤組成物の表面張力を調整した後に塗工する方法(例えば、特許文献1、2、3参照。)や、水分散型粘着剤組成物の高固形分濃度における動的表面張力を調整する方法(例えば、特許文献4参照。)が提案されている。しかし、特許文献1に記載の水分散型粘着剤組成物において、泡発泡速度を調整するのみでは、塗工する際の塗工スジや送液時の配管への負荷を低減し、水分散型粘着剤組成物の耐久性を向上させることはできなかった。また、特許文献2に記載の水分散型粘着剤組成物において、表面積が収縮する際の表面張力値と表面積が拡大する際の表面張力値の差を規定するのみでは、塗工する際の塗工スジや送液時の配管への負荷を低減し、水分散型粘着剤組成物の耐久性を向上させることはできなかった。また、特許文献3に記載の水分散型粘着剤組成物において、表面張力を規定するのみでは、塗工する際の塗工スジや送液時の配管への負荷を低減し、水分散型粘着剤組成物の耐久性を向上させることはできておらず、更なる改善が求められている。
【特許文献1】特開2005−320487号公報
【特許文献2】特開2003−27027号公報
【特許文献3】特開2003−96413号公報
【特許文献4】特開2003−277708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水分散型粘着剤組成物の塗工する際の塗工スジや送液時の配管への負荷を低減し、耐久性を有する水分散型粘着剤組成物、水分散型粘着シート、光学フイルムの少なくとも片面に前記水分散型粘着剤組成物からなる水分散型粘着剤組成物層を備えてなる粘着型光学フイルム、粘着型光学フイルムが液晶パネルのガラス基板間に粘着剤層を介して配置されてなる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、水分散型粘着剤組成物が、炭素数4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、親水性モノマーを含むモノマー混合物と、メルカプト基を有するシラン系化合物を含む重合性混合物を重合して得られるポリマーを含有してなる水分散型粘着剤組成物であることにより、水分散型粘着剤組成物の塗工する際の塗工スジや送液時の配管への負荷を低減し、耐久性を有する水分散型粘着剤組成物を提供することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明における水分散型粘着剤組成物は、モノマー混合物がリン酸基含有ビニルモノマーをさらに含有することが好ましい。
【0010】
また、本発明における水分散型粘着剤組成物は、モノマー混合物がシラン系モノマーをさらに含有することが好ましい。
【0011】
また、本発明の水分散型粘着剤組成物は、前記モノマー混合物100重量部に対して、前記メルカプト基を有するシラン系化合物を0.001〜1重量部含有していることが好ましい。
【0012】
本発明の水分散型粘着剤組成物は、前記モノマー混合物100重量部に対して、前記シラン系モノマーを0.001〜1重量部含有していることが好ましい。
【0013】
また、本発明の水分散型粘着剤組成物のpHが7.0〜8.0であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層が、基材上に積層されていることを特徴とする、水分散型粘着シートである。
【0015】
本発明は、水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層が、光学フイルム上に積層されていることを特徴とする、粘着型光学フイルムである。
【0016】
また、本発明の粘着型光学フイルムは、液晶パネルのガラス基板面に粘着剤層を介して配置されてなる画像表示装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、前記構成を有しているので、水分散型粘着剤組成物の塗工する際の塗工スジや送液時の配管への負荷を低減し、耐久性を有する水分散型粘着剤組成物、水分散型粘着シート、光学フイルムの少なくとも片面に前記水分散型粘着剤組成物からなる水分散型粘着剤組成物層を備えてなる粘着型光学フイルム、粘着型光学フイルムが液晶パネルのガラス基板間に粘着剤層を介して配置されてなる画像表示装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
すなわち、本発明における第一の発明は、炭素数4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、さらに親水性モノマーを含むモノマー混合物と、さらに、メルカプト基を有するシラン系化合物を含む重合性混合物を重合して得られるポリマーを含有してなる水分散型粘着剤組成物である。
【0019】
本発明における第二の発明は、水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層が、基材上に積層されていることを特徴とする、水分散型粘着シートである。
【0020】
また、本発明における第三の発明は、水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層が、光学フイルム上に積層されていることを特徴とする、粘着型光学フイルムである。
【0021】
また、本発明における第四の発明は、粘着型光学フイルムが液晶パネルのガラス基板面に粘着剤層を介して配置されてなる画像表示装置である。
【0022】
(炭素数4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル)
本発明におけるモノマー混合物中に含有される炭素数4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C4-14アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C4-10アルキルエステル]などが挙げられる。なお、炭素数4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の「(メタ)・・・」は全て同様の意味である。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独使用または併用することができる。例えば、アクリル酸ブチルとアクリル酸2−エチルヘキシルとを併用することができ、その配合割合(重量比)は、例えば、1/99〜55/45(アクリル酸ブチル/アクリル酸2−エチルヘキシル)、好ましくは、5/95〜60/40、さらに好ましくは10/90〜65/35である。
【0023】
前記炭素数4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合は、モノマー混合物の総量100重量部に対して、70〜99.9重量部、好ましくは、80〜99.5重量部、さらに好ましくは、90〜99重量部である。
【0024】
(親水性モノマー)
また、前記モノマー混合物には、親水性モノマーを含有する。
【0025】
親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸、例えば、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和ジカルボン酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、2−メタクリロイルオキシエチルプロメリット酸などの不飽和トリカルボン酸モノエステル、カルボキシエチルアクリレート(β−カルボキシエチルアクリレートなど)、カルボキシペンチルアクリレートなどのカルボキシアルキルアクリレート、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸などの不飽和ジカルボン酸無水物などのカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。これらの親水性モノマーの中でも、カルボキシル基含有モノマーや水酸基含有モノマーを好適に使用することができる。その中でも、アクリル酸を特に好適に使用することができる。
【0026】
なお、これらの親水性モノマーは単独又は併用して使用することができる。
【0027】
親水性モノマーの使用量としては、特に制限されないが、通常、モノマー混合物の総量100重量部に対して、親水性モノマーを0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部含有する。
【0028】
親水性モノマーを、0.1重量部以上含有することで、水分散型粘着剤組成物の凝集力の低下を防ぎ、高いせん断力を得られる。また、30重量部以下とすることで、凝集力の上昇を防ぎ、常温(25℃)でのタック感を維持できる。
【0029】
(リン酸基含有ビニルモノマー)
また、本発明におけるモノマー混合物は、リン酸基含有ビニルモノマーをさらに含有する水分散型粘着剤組成物であることが好ましく、リン酸基含有ビニルモノマーは、例えば、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートリン酸エステルである。
【0030】
【化1】

・・・(1)
(一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を、R2は、ポリオキシアルキレン基を、Xは、リン酸基またはその塩を示す。)
2で示されるポリオキシアルキレン基としては、下記一般式(2)で表される。
【0031】
【化2】

・・・(2)
(一般式(2)中、nは1〜4の整数、mは2以上の整数を示す。)
例えば、ポリオキシエチレン基(一般式(2)中、n=2に相当。)、ポリオキシプロピレン基(一般式(2)中、n=3に相当。)およびこれらのランダム、ブロックまたはグラフトユニットなどが挙げられ、これらオキシアルキレン基の重合度、すなわち、一般式(2)中、mは、好ましくは、4以上、通常40以下である。
【0032】
オキシアルキレン基の重合度が高いほど、リン酸基を有する側鎖の運動性が高く、ガラスと迅速に相互作用することから、水分散型粘着剤組成物のガラス基板への接着性が向上する。
【0033】
また、Xで示されるリン酸基またはその塩は、下記一般式(3)で表される。
【0034】
【化3】

・・・(3)
(一般式(3)中、M1およびM2は、それぞれ独立に、水素原子またはカチオンを示す。)
カチオンとしては、特に制限されず、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、例えば、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属などの無機カチオン、例えば、4級アミン類などの有機カチオンなどが挙げられる。
【0035】
また、リン酸基含有ビニルモノマーは、一般に市販されているものを用いることができ、例えば、Sipomer PAM−100(ローディア日華株式会社製)、Phosmer PE(ユニケミカル株式会社製)、Phosmer PEH(ユニケミカル株式会社製)、Phosmer PEDM(ユニケミカル株式会社製)などのモノ[ポリ(エチレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル、例えば、Sipomer PAM−200(ローディア日華株式会社製)、Phosmer PP(ユニケミカル株式会社製)、Phosmer PPH(ユニケミカル株式会社製)、Phosmer PPDM(ユニケミカル株式会社製)などのモノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステルなどが挙げられる。
【0036】
これらリン酸基含有ビニルモノマーは、単独使用または併用することができる。
【0037】
リン酸基含有ビニルモノマーの配合割合は、モノマー混合物の総量100重量部に対して、例えば、0.5〜20重量部、好ましくは、0.7〜10重量部、さらに好ましくは、1.0〜5重量部に設定する。
【0038】
上記した範囲より少ないと、水分散型粘着剤組成物の基板への接着力向上の効果が十分得られず、上記した範囲より多いと、乳化重合時の安定性が低下したり、水分散型粘着剤組成物の弾性率が過度に高くなることにより接着性が低下する場合がある。
【0039】
(シラン系モノマー)
また、本発明において、モノマー混合物に、シラン系モノマーをさらに含有し、重合して得られるポリマーを含む水分散型粘着剤組成物であることが好ましい。前記炭素数4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合されるシラン系モノマーとしては、ケイ素原子を有する重合性化合物であれば特に限定されないが、上記炭素数4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに対する共重合性に優れている点で、アルコキシシリル基含有ビニルモノマーを好適に使用することができる。アルコキシシリル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーや、シリコーン系ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0040】
シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリブトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリアルコキシシラン、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0041】
シリコーン系ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシランなどのビニルトリアルコキシシランの他、これらに対応するビニルアルキルジアルコキシシランや、ビニルジアルキルアルコキシシラン、例えば、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシランなどのビニルアルキルトリアルコキシシランの他、これらに対応する(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシランや、(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0042】
これらアルコキシシリル基含有ビニルモノマーのうち、好ましくは、シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、さらに好ましくは、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503;信越シリコーン株式会社製)等が挙げられる。
【0043】
これらシラン系モノマーは、単独使用または併用することができる。
【0044】
シラン系モノマーを用いることにより、水分散型粘着剤組成物のポリマー鎖に架橋構造を形成することができる。特に、アルコキシシリル基含有モノマーを用いることにより、均一な架橋構造を形成することができるため、水分散型粘着剤組成物の基板への接着固定性を向上させることができる。また、モノマー中のアルコキシシリル基が基板と相互作用して、水分散型粘着剤組成物の基板との接着性を高めることができる。
【0045】
シラン系モノマーの配合割合は、モノマー混合物100重量部に対して、例えば、0.001〜1重量部、好ましくは、0.005〜0.5重量部、更に好ましくは、0.01〜0.1重量部である。上記した範囲より少ないと、架橋が不足して、水分散型接着剤組成物の凝集力の低下を招いたり、水分散型接着剤組成物と基板との接着力の向上が得られず、上記した範囲より多いと、乳化重合時の安定性低下や水分散型接着剤組成物の接着性の低下を招く場合がある。
【0046】
(任意成分)
その他のモノマー成分としては、例えば、カルボキシル基含有モノマーや水酸基含有モノマー等の前記親水性モノマー以外の官能基を含有するビニルモノマー等が挙げられる。
【0047】
そのような官能基を含有するビニルモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有不飽和モノマー、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有不飽和モノマー、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有不飽和モノマー、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー、例えば、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー、例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマーなどが挙げられる。
【0048】
さらに、上記した官能基を含有するビニルモノマーとしては、多官能性モノマーが挙げられる。
【0049】
多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの他、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、例えば、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。また、多官能性モノマーとして、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなども挙げられる。
【0050】
また、前記官能基含有ビニルモノマーの他に、例えば、スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族系ビニルモノマー、例えば、シクロペンチルジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステル、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有不飽和モノマー、例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー、例えば、ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー、例えば、塩化ビニルなどのハロゲン原子含有不飽和モノマー、その他、例えば、N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどのビニル基含有複素環化合物、例えば、フッ素(メタ)アクリレートなどの、フッ素原子などのハロゲン原子を含有するアクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。
【0051】
これら、上記モノマー成分の配合割合は、モノマー混合物の総量100重量部に対して、例えば、0.5〜12重量部、好ましくは、1〜8重量部、更に好ましくは、2〜6重量部である。
【0052】
さらに、前記モノマー混合物に、連鎖移動剤や開始剤、乳化剤等を、水中において適宜配合することにより重合性混合物を調整する。そして、それらの配合と同時に、または、配合の後に、乳化装置により乳化させる。その後、重合性混合物を共重合(乳化重合)することにより、重合性混合物を共重合(乳化重合)して得られるポリマーを含有してなる水分散型粘着剤組成物を得ることができる。
【0053】
開始剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用される重合開始剤が用いられ、例えば、水溶性開始剤又は油溶性開始剤を好適に使用することができる。
【0054】
水溶性開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2'−アゾビス(N,N'−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などのアゾ系開始剤(油溶性アゾ系開始剤を除く。)、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤(油溶性過酸化物系開始剤を除く。)、例えば、フェニル置換エタンなどの置換エタン系開始剤、例えば、芳香族カルボニル化合物などのカルボニル系開始剤、例えば、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化水素とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せなどレドックス系開始剤などが挙げられる。
【0055】
油溶性開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシドなどの油溶性過酸化物系開始剤、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの油溶性アゾ系開始剤が挙げられる。
【0056】
これら開始剤は、適宜、単独または併用して用いられる。重合開始剤のうち、好ましくは、過硫酸塩系開始剤、さらに好ましくは、過硫酸アンモニウムが用いられる。
【0057】
重合開始剤の使用量は、モノマー混合物100重量部に対して、例えば、0.001〜1重量部、好ましくは、0.005〜0.5重量部、さらに好ましくは、0.01〜0.1重量部程度である。
【0058】
(メルカプト基を有するシラン系化合物)
本発明のモノマー混合物に添加する連鎖移動剤として、メルカプト基を含有するシラン系化合物を用いる。例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803;信越シリコーン株式会社製)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられるが、その中でも、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803;信越シリコーン株式会社製)を特に好ましく使用することができる。メルカプト基を有するシラン系化合物を使用することにより、メルカプト基が連鎖移動剤として作用し、水相中で生成されるポリマー(ポリアクリル酸)の分子量を小さくするため、低粘度を維持することができる。同時に、シラン系化合物でもあるため、シランカップリング剤(架橋剤)として作用して、バルク物性を維持することができる。これらの効果により、バルク物性は維持したまま、低粘度を実現することができる。
【0059】
前記メルカプト基を有するシラン系化合物の配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.001〜1重量部、好ましくは、0.005〜0.5重量部、さらに好ましくは、0.01〜0.1重量部である。メルカプト基を有するシラン系化合物の配合割合が、上記した範囲より多いと、連鎖移動により、塗工できない程度まで粘度が低下し、且つゲル分率も低下する場合があり、上記した範囲より少ないと、粘度が高くなり、塗工スジが入ったり、配管等への圧力がかかる場合がある。
【0060】
本発明においては、発明の効果を損なわない範囲で、他の連鎖移動剤を併用することもできる。例えば、1−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノ−ルなどのメルカプタン類などが挙げられる。これら連鎖移動剤は、適宜、単独または併用して用いられる。また、他の連鎖移動剤の配合割合は、モノマー混合物100重量部に対して、例えば、1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、より好ましくは0.1重量部以下である。
【0061】
乳化剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用される公知の乳化剤が用いられる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。
【0062】
また、これら乳化剤の中でも、アニオン系乳化剤(LA16;第一工業製薬株式会社製)やノニオン系乳化剤(HS1025;第一工業製薬株式会社製)等を好適に使用できる。
【0063】
これら乳化剤は、適宜、単独使用または併用することができる。また、乳化剤の配合割合は、モノマー混合物100重量部に対して、例えば、0.2〜10重量部、好ましくは、0.5〜5重量部、更に好ましくは、1.0〜3重量部である。
【0064】
乳化装置としては、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(PANDA 2K、NIRO−SOAVI株式会社製)、マイクロフルイダイザー(Microfluidics株式会社製)、ナノマイザー(吉田機械工業株式会社製)、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)、TKフィルミックス(プライミクス株式会社製)などが用いられる。
【0065】
超音波ホモジナイザーでは、使用される超音波の周波数は特に制限されず、例えば、20〜40kHzである。超音波ホモジナイザーでは、超音波照射によるキャビテーション効果によって、油滴が上記したメジアン径にまで微細化される。
【0066】
高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザーおよびナノマイザーでは、加圧される圧力は特に制限されず、例えば、10〜300MPaである。
【0067】
これら乳化装置は、単独使用することができ、また、2種以上を組み合わせて多段で使用することもできる。
【0068】
開始剤や連鎖移動剤を乳化液中の重合性混合物成分中に存在させるには、開始剤を予め分散液に溶解させた後、乳化液中に混合することができる。あるいは、開始剤を予め水性媒体(例えば、水)に溶解させて、これを乳化液中に加えることができる。また、開始剤を乳化液中に直接加えることができる。
【0069】
なお、上記した重合性混合物成分に、重合開始剤を配合する前、または配合しながら、窒素置換を行うことによって、重合性混合物を含有する乳化液中の溶存酸素濃度を低減することができる。
【0070】
より具体的な重合性混合物の共重合(乳化重合)法としては、例えば、一括仕込み法(一括重合法)、モノマー滴下法、モノマーエマルション滴下法などの公知の共重合法を採用することができる。
【0071】
なお、モノマー滴下法では、連続滴下又は分割滴下が適宜選択される。反応条件等は、適宜選択されるが、重合温度は、例えば、20〜100℃、好ましくは30〜90℃、さらに好ましくは40〜80℃である。
【0072】
さらに、乳化液中には、例えば、必要に応じて、粘度調整剤(例えば、アクリル系増粘剤など)、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料など)、老化防止剤、界面活性剤などを添加してもよい。これら添加剤の配合割合は、特に制限されず、適宜、選択することができる。
【0073】
このような乳化重合によって、得られる水分散型共重合体を、水分散液(エマルション)として調整することができる。
【0074】
なお、水分散液は、例えば、上記した反応成分を、乳化重合以外の有機溶剤を使用しない方法によって重合して、水分散型共重合体を得た後に、上記した乳化剤により、水分散型共重合体を水に分散させるようにして水分散型粘着剤組成物を調整することもできる。
【0075】
得られた水分散型粘着剤組成物の塗工時の粘度範囲として、Shear rate 1における粘度は好ましくは0.1〜10Pa・s、さらに好ましくは2〜6Pa・sである。粘度が0.1Pa・s以下の場合、水分散型粘着剤組成物の圧力がかからずきれいな塗工面が得られない。粘度が10Pa・s以上の場合、水分散型粘着剤組成物の圧力が大きくなり、きれいな塗工面が得られない。また、水分散型粘着剤組成物の配管にかかる圧力も大きくなってしまう。
【0076】
このように調整された水分散型粘着剤組成物(固形分)のゲル分率は、例えば、50〜100重量%、好ましくは、60〜100重量%である、ゲル分率が上記した値より低いと、この水分散型粘着剤組成物を粘着型光学フイルムに適用して、高温高湿の雰囲気下で使用したときに、発泡や剥がれが生じる場合がある。
【0077】
この水分散型粘着剤組成物を、テフロンシート(登録商標)で被覆し、これを酢酸エチルに7日間浸漬したときに、下記式で算出することができる。
【0078】
ゲル分率(重量%)=(浸漬後のテフロンシートに付着する水分散型粘着剤組成物の重量/(浸漬前に水分散型粘着剤組成物の重量)×100
また、本発明の水分散型粘着剤組成物は、粒子を安定化するため通常アンモニアのような塩基を用いてそのpHを7.0〜9.0、好ましくはpH7.1〜8.6、さらに好ましくはpH7.2〜8.2に調整する。残存アンモニア量が多いとシリコーン処理された離型シートからの重剥離化が進行するためその添加量は少ないほうがよい。
【0079】
以下、図1(a)を参照して、本発明の水分散型粘着シートについて、説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0080】
図1は、基材(光学フイルム)上に、粘着剤層を有する水分散型粘着シートの一例を模式的に示す断面図である。
【0081】
図1において、1は基材を、2は粘着剤層を、3は離型シートをそれぞれ示している。
【0082】
水分散型粘着シートを得るには、まず、基材1を用意する。本発明における基材としては、例えば、ポリプロピレンフイルム、エチレン−プロピレン共重合体フイルム、ポリエステルフイルム、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフイルム類;和紙やクラフト紙などの紙類;綿布やスフ布などの布類;ポリエステル不織布やビニロン不織布などの不織布類;金属箔などを使用できる。前記プラスチックフイルムは、無延伸フイルム及び延伸(一軸延伸又は二軸延伸)フイルムの何れであってもよい。また、基材のうち粘着剤を塗布する面には、通常使用される下塗剤やコロナ放電方式などによる表面処理が施されていてもよい。基材の厚みは、目的に応じて適宜選択できるが、一般には10〜500μm程度である。
【0083】
そして、基材1の片面に、前記水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層2を設ける。粘着剤層2を設けるには、例えば、上記した基材1に、粘着剤層2が形成された離型シート3から、粘着剤層2を転写する。粘着剤層2が形成された離型シート3は、離型シート3にナイフコーティング法などの公知のコーティング方法により、水分散型粘着剤組成物を直接コーティングする。その後、これを、例えば、80〜150℃で、1〜10分間加熱して乾燥することにより、粘着剤層2を離型シート3の上に設ける。また、粘着剤層2を転写するには、粘着剤層2が形成された離型シート3を、基材1に、貼り合わせた後、粘着剤層2から離型シート3を引き剥がす。
【0084】
また、粘着剤層2を設けるには、例えば、基材1に、水分散型粘着剤組成物をナイフコーティング法などの公知のコーティング方法により、直接コーティングし、その後、例えば、80〜150℃で、1〜10分間加熱して、乾燥するようにすることもできる。
【0085】
粘着剤層2の厚み(乾燥後厚み)は、例えば、1〜100μm、好ましくは、5〜50μm、さらに好ましくは、10〜30μmの範囲に設定される。
【0086】
離型シート3としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フイルム、例えば、ゴムシート、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、またこれら積層シート体などが挙げられる。離型シート3の表面には、粘着剤層2からの剥離性を高めるため、必要に応じて、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの処理(剥離処理)がなされていてもよい。
【0087】
このように、基材1の片面に、水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層2を設けることにより、本発明の水分散型粘着シートを得ることができる。
【0088】
また、図1(b)に示すように、基材1には、粘着剤層2との接着力(投錨力)を向上させるため、あらかじめ、基材1と粘着剤層2との間に下塗り層4を設けるなどの下塗り処理を施すことができる。
【0089】
下塗り層4は、例えば、樹脂を含み、このような樹脂としては、例えば、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、好ましくは、これらの樹脂を反応性官能基で変性した樹脂などが挙げられる。反応性官能基としては、例えば、オキサゾリン基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基が挙げられる。
【0090】
下塗り層4を設けるには、例えば、基材1に、樹脂を含む下塗り液(溶液または分散液)を、コーティング法、ディッピング法、スプレー法などの公知の塗布方法により、直接塗布して乾燥する方法が挙げられる。
【0091】
下塗り層4の厚みは、乾燥前の厚みが、例えば、1〜500μm、好ましくは、10〜100μm、さらに好ましくは、20〜50μmで、乾燥後の厚みが、例えば、1〜1000nm、好ましくは、10〜500nm、さらに好ましくは20〜400nmとなるように設定する。
【0092】
なお、本発明により得られる水分散型粘着剤組成物は、塗工面に対する塗工スジの発生を抑制し、また、送液工程において、配管に負荷がかからず、かつ、耐久性を有している。
【0093】
そのため、本発明の水分散粘着剤組成物は、ガラス基板に接着する場合にも、塗工スジの発生を抑制し、耐久性にも優れ、ガラス基板へ水分散型粘着シートを好適に貼り合せることができる。
【0094】
このようにして得られる水分散型粘着シートは、偏光フイルム、位相差フイルム、輝度向上フイルム、視野角拡大フイルムなどの粘着型光学フイルムなどとして、画像表示装置等に好適に用いられる。
【0095】
従って、基材1の中でも、光学フイルムを好適に使用する。光学フイルムは、光学特性を有し、液晶ディスプレイなどに貼着されるフイルムであれば特に制限されず、例えば、偏光フイルム、位相差フイルム、輝度向上フイルム、視野角拡大フイルムなどが挙げられる。
【0096】
偏光子としては、特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコール系フイルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フイルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フイルムなどの親水性高分子フイルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質で染色し一軸延伸したものや、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などポリエン系配向フイルムなどが挙げられる。好ましくは、ポリビニルアルコール系フイルムをヨウ素で染色して一軸延伸した偏光子が挙げられる。
【0097】
透明保護フイルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマーフイルム、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマーフイルム、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマーフイルム、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマーフイルム、ポリカーボネート系ポリマーフイルムなどを挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロまたはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマーフイルム、塩化ビニル系ポリマーフイルム、ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマーフイルム、イミド系ポリマーフイルム、スルホン系ポリマーフイルム、ポリエーテルスルホン系ポリマーフイルム、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマーフイルム、ポリフェニレンスルフィド系ポリマーフイルム、ビニルブチラール系ポリマーフイルム、アクリレート系ポリマーフイルム、ポリオキシメチレン系ポリマーフイルム、エポキシ系ポリマーフイルム、または上記したポリマーのブレンド物のフイルムなども挙げられる。
【0098】
透明保護フイルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0099】
透明保護フイルムとしては、好ましくは、セルロース系ポリマーが挙げられる。透明保護フイルムの厚さは、特に制限されず、例えば、500μ以下、好ましくは、1〜300μm、さらに好ましくは、5〜200μmである。
【0100】
偏光子と透明保護フイルムとを接着処理するには、例えば、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系接着剤、ラテックス系接着剤、水系ポリエステル系接着剤などを用いて接着する。
【0101】
位相差フイルムとしては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フイルム、液晶ポリマーの配向フイルム、液晶ポリマーの配向層をフイルムにて支持したものなどが挙げられる。位相差フイルムの厚さは、特に制限されず、例えば、20〜150μmである。
【0102】
高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などが挙げられる。これら高分子素材は、延伸などにより配向物(延伸フイルム)となる。
【0103】
液晶性ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側差に導入された主鎖型や側差型の各種のものなどが挙げられる。主鎖型の液晶ポリマーとしては、例えば、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造であり、具体的には、ネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコチックポリマーやコレステリックポリマーなどが挙げられる。側鎖型の液晶性ポリマーとしては、例えば、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートまたはポリマロネートを主鎖骨格とし、側差として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどが挙げられる。これら液晶性ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコールなどの薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化珪素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより得られる。
【0104】
また、位相差フイルムは、例えば、各種波長フイルムや液晶層の複屈折による着色や視野角などの拡大を目的としたもの、その他使用目的に応じて、適宜、位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差フイルムを積層して位相差などの光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0105】
輝度向上フイルムとしては、例えば、誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フイルムの多層積層体など、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フイルムやその配向液晶層をフイルム基材上に支持したものなど、左回りまたは右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどが挙げられる。
【0106】
視野角拡大フイルムは、液晶ディスプレイの画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフイルムであり、例えば、位相差フイルム、液晶ポリマーなどの配向フイルムや透明基材上に液晶ポリマーなどの配向層を支持したものなどが挙げられる。視野角拡大フイルムとして用いられる位相差フイルムには、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフイルムや、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フイルムのような二方向延伸フイルムなどが用いられる。
【0107】
そのため、このようにして得られる粘着型光学フイルムを、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)、プラズマディスプレイパネル(PDP)などの画像表示装置の基板の表面に、粘着剤層を介して貼着することにより、塗工面に対する塗工スジの発生を抑制し、耐久性にも優れた画像表示装置を得ることができる。
【0108】
なお、上記した説明において、粘着剤層2及び必要により設けられる下塗り層4を、基材(光学フイルム)1の片面に設けたが、基材(光学フイルム)1の両面に設けてもよい。
【実施例】
【0109】
以下の各実施例及び各比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において「部」及び「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0110】
(実施例1)
(分散液の調整)
アクリル酸ブチル93重量部、アクリル酸5重量部、モノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(SipomerPAM−200;ローディア日華株式会社製)2重量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503;信越シリコーン株式会社製)固形分で0.03重量部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803;信越シリコーン株式会社製)固形分で0.03重量部、アニオン系乳化剤として、ハイテノールLA16(第一工業製薬株式会社製)水溶液(20%)固形分で1重量部、水83.5重量部を混合して、置換窒素を行った。窒素置換後、5分、6000rpm(TKホモミクサー、プライミクス株式会社製)で乳化して、重合性混合物を含有する水分散液を作製した。重合性混合物を含有する水分散液は窒素雰囲気中に置いた。
【0111】
(水分散型粘着剤組成物の調整)
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、水51.6重量部、ハイテノールLA16(第一工業製薬株式会社製)水溶液(20%)固形分で2重量部を窒素雰囲気下で60分、150rpmで攪拌した。その後、重合性混合物を含有する水分散液75重量部を添加して、内浴温度65℃にして、アンモニウムペルオキソ硫酸ナトリウム(APS)水溶液(5%)固形分で0.01重量部を添加した後、攪拌速度150rpmで攪拌しながら一括重合を開始した。重合は内浴温度を65℃に保ちながら、2時間行った。
【0112】
一括重合後、内浴温度を70℃まで上げてアンモニウムペルオキソ硫酸ナトリウム(APS)水溶液(5%)固形分で0.07重量部添加して、内浴温度を70℃に保ちながら、10分重合した。それから、内浴温度を70℃に保ちながら、残りの水分散液を滴下しながら、3時間、滴下重合を行った。
【0113】
滴下重合終了後、内浴温度を70℃に保ちながら、3時間重合を行った。
【0114】
重合性混合物を重合して得られるポリマーを含有する水分散液を室温まで冷却し、10%アンモニア水を添加して、pHを7.8に調整し、重合性混合物を重合して得られるポリマーを含有してなる水分散型粘着剤組成物を作成した。
【0115】
(粘着型光学フイルムの作製)
調整した水分散型粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤を塗布した厚さ38μmのフイルム(MRF38;三菱化学ポリエステル株式会社製)にダイ方式で塗工し、乾燥温度120℃で塗工速度5m/分で2分間加熱して厚さ23μmの粘着剤層を形成した。これを事前に下塗り処理した偏光フイルム(偏光子:ポリビニルアルコール系フイルム、透明保護フイルム(両面):トリアセチルセルロース(40μm))に貼付して光学用フイルムを形成した。
【0116】
下塗り処理はエポクロスWS700をイソプロピルアルコール(IPA)と水の重量比1/1(IPA/水)の混合液で希釈して、0.25wt%エポクロスWS700を調整し、これを光学フイルムに40℃で1分間加熱処理して厚さ50nmになるように塗布した。
【0117】
(実施例2)
実施例1の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803;信越シリコーン株式会社製)(連鎖移動剤)を0.06重量部とした以外は実施例1と同様にして粘着型光学フイルムを作製した。
【0118】
(実施例3)
アクリル酸ブチル93重量部、アクリル酸5重量部、PAM−200 2重量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503;信越シリコーン株式会社製)0.03重量部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803;信越シリコーン株式会社製)0.09重量部、アクアロンHS1025(三洋化成工業株式会社製)(25%)固形分で1重量部、水105gを混合して、窒素置換を行った。窒素置換後、5分、6000rpm(TKホモミキサー、プライミクス株式会社製)で乳化して、重合性混合物を含有する水分散液を作製した。重合性混合物を含有する水分散液は窒素雰囲気中に置いた。
【0119】
(水分散型粘着剤組成物の調整)
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に水59.8重量部、アクアロンHS1025(三洋化成工業株式会社製)(25%)固形分で2重量部を窒素雰囲気下で60分、150rpmで攪拌した。それから、重合性混合物を含有する水分散液75重量部を添加して、内浴温度60℃にして、アンモニウムペルオキソ硫酸ナトリウム(APS)水溶液(5%)固形分で0.03重量部を添加して、攪拌速度150rpmで攪拌しながら一括重合を開始した。重合は内浴温度を60℃に保ちながら、2時間行った。
【0120】
一括重合終了後、内浴温度を60℃まで上げて、アンモニウムペルオキソ硫酸ナトリウム(APS)水溶液(5%)固形分として0.07重量部添加して、内浴温度を60℃に保ちながら、10分重合した。それから、残りの重合性混合物を含有する水分散液を滴下しながら、3時間滴下重合を行った。
【0121】
滴下重合終了後、内浴温度を60℃に保ちながら、そのまま3時間重合を行った。
【0122】
その他は実施例1と同様にして粘着型光学フイルムを作製した。
【0123】
(比較例1)
実施例1の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803;信越シリコーン株式会社製)を使用しなかった以外は実施例1と同様にして粘着型光学フイルムを作製した。
【0124】
(比較例2)
実施例1の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803;信越シリコーン株式会社製)(連鎖移動剤)の代わりに1−ドデカンチオール(和光純薬株式会社製)を使用し、添加量を0.01重量部とした以外は実施例1と同様にして粘着型光学フイルムを作製した。
【0125】
(比較例3)
実施例1の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803;信越シリコーン株式会社製)(連鎖移動剤)の代わりに1−ドデカンチオール(和光純薬株式会社製)を使用し、添加量を0.03重量部とした以外は実施例1と同様にして粘着型光学フイルムを作製した。
【0126】
(比較例4)
実施例1の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803;信越シリコーン株式会社製)(連鎖移動剤)の代わりに3−メルカプトプロピオネート(TMMP;堺化学株式会社製)に変更し、添加量を0.007重量部とした以外は実施例1と同様にして粘着型光学フイルムを作製した。
【0127】
(比較例5)
実施例1の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803;信越シリコーン株式会社製)(連鎖移動剤)の代わりに3−メルカプトプロピオネート(TMMP;堺化学株式会社製)に変更し、添加量を0.021重量部とした以外は実施例1と同様にして粘着型光学フイルムを作製した。
【0128】
以下の実施例及び比較例で得た粘着シートについて次の特性を調べた。
(粘度)
実施例及び比較例で得た水分散型粘着剤をRheoStress1(HAAKE株式会社製)で測定した。測定条件は、コーンタイプのロータ(Cone Diameter:35mm、Cone Angle:0.5deg. チタン製)、温度は30℃、せん断速度は0.1(1/s)から14000(1/s)まで20秒で上昇させ、その後14000(1/s)から0.1(1/s)まで20秒で低下させて粘度を測定した。そして得られたデータ(1)0.1→14000(1/s)のデータ)から近似式(累乗近似)(Y=Ax-B)を算出し、Shear rate 1とShear rate 10000の推定値(Y)を粘度として示す。(Aは、せん断係数、Bは、定数、xは、せん断速度を表す。)
【0129】
(塗工性)
塗工性については、以下の基準で確認した。
【0130】
○:塗工性が良好であった(塗工スジが認められなかった)。
【0131】
△:塗工性が良好ではなかった(塗工スジが認められた)。
【0132】
(ガラス接着力)
各実施例および各比較例により得られた粘着型光学フイルムについて、初期及び40℃保存でのガラス接着力を調べた。ガラス接着力の測定は以下の手順で行った。各実施例および各比較例で作製した光学用フイルムを幅25mmに切断し、これを、ガラス板(コーニング#1737;コーニング株式会社製)に貼着し、2kgのゴムローラーを1往復させて圧着して、50℃、5気圧のオートクレーブ中に15分間放置し、次いで、25℃に冷却して、90°剥離接着力(剥離速度300mm/分)を測定した(初期接着力)。
【0133】
また、上記と同条件でオートクレーブから取り出した後、さらに60℃の雰囲気下で、40時間放置し、25℃に冷却して、90°剥離接着力(剥離速度300mm/分)を測定した。
【0134】
(耐久性評価)
各実施例及び各比較例で得た粘着型光学フイルムについて、耐熱(90℃)及び耐湿熱(60℃/湿度90%)の500時間保存での耐久性評価を調べた。評価は以下の手順で行った。各実施例及び各比較例で作製した粘着型光学フイルムを310×230mmに切断し、これをガラス板(コーニング♯1737;コーニング株式会社製)に貼付し、ラミネーターで圧着させて、50℃、5気圧のオートクレーブ中に15分間放置した。次いで、耐熱条件(90℃)と耐湿熱条件(60℃/湿度90%)に500時間投入して、欠陥(ハガレ、発泡)が発生しないか目視で確認した。
【0135】
なお、粘着型光学フイルム発泡の有無については、下記の基準で確認した。
【0136】
○:粘着型光学フイルムに変化が認められなかった。
【0137】
×:粘着型光学フイルムの粘着剤層に発泡が認められた。
【0138】
(実施例と比較例)
以下の表1に実施例及び比較例における組成を示す。尚、組成は重量部で表示している。
【0139】
【表1】

表1中の略号を以下に示す。
PAM-200:Sipomer PAM-200、(ローディア日華株式会社製)(プロピレンオキシドの平均重合度5.0)
KBM−503:3-メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(信越化学株式会社製)
KBM−803:3-メルカプトプロピル−トリメトキシシラン(信越化学株式会社製)
LSH:1-ドデカンチオール(和光純薬株式会社製)
TMMP:3-メルカプトプロピオネート(堺化学株式会社製)
LA16:ハイテノールLA−16(第一工業製薬株式会社製)
HS1025:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩
APS:アンモニウムペルオキソ硫酸ナトリウム
表1の実施例1〜3より明らかなように炭素数4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、さらに親水性モノマーを含むモノマー混合物と、さらに、メルカプト基を有するシラン系化合物を含む重合性混合物を重合して得られるポリマーを含有してなる水分散型粘着剤組成物の塗工性は良好であり、耐久性も向上していることがわかる。また、比較例1より明らかなように、メルカプト基を有するシラン系化合物を含有しない場合は、塗工性は良好ではなく、耐熱性などの耐久性が向上しないことがわかる。また、比較例2〜5より明らかなようにメルカプト基を含有するシラン系以外の連鎖移動剤を添加すると、塗工性は良好であるが、耐熱性などの耐久性が向上しないことがわかる。よって、炭素数4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、さらに親水性モノマーを含むモノマー混合物と、さらに、メルカプト基を有するシラン系化合物を含む重合性混合物を重合して得られるポリマーを含有してなる水分散型粘着剤組成物により、塗工性が良好であり、耐久性も向上している粘着型光学フイルムを得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】(a)本発明の水分散型粘着シート(粘着型光学フイルム)の一実施形態の拡大断面図である。(b)本発明の水分散型粘着シート(粘着型光学フイルム)の他の実施形態の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0141】
1 基材(光学フイルム)
2 粘着剤層
3 離型シート
4 下塗り層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数4〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、親水性モノマーを含むモノマー混合物と、メルカプト基を有するシラン系化合物を含む重合性混合物を重合して得られるポリマーを含む水分散型粘着剤組成物。
【請求項2】
前記モノマー混合物がリン酸基含有ビニルモノマーをさらに含有する請求項1に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項3】
前記モノマー混合物がシラン系モノマーをさらに含有する請求項1又は2のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項4】
前記モノマー混合物100重量部に対して、前記メルカプト基を有するシラン系化合物を0.001〜1重量部含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項5】
前記モノマー混合物100重量部に対して、前記シラン系モノマーを0.001〜1重量部含むことを特徴とする、請求項3に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項6】
前記水分散型粘着剤組成物のpHが7.0〜8.0であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層が、基材上に積層されていることを特徴とする、水分散型粘着シート。
【請求項8】
前記請求項1〜6のいずれか一項に記載の水分散型粘着剤組成物からなる粘着剤層が、光学フイルム上に積層されていることを特徴とする、粘着型光学フイルム。
【請求項9】
請求項8に記載の粘着型光学フイルムが液晶パネルのガラス基板面に粘着剤層を介して配置されてなる画像表示装置。


【図1】
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【公開番号】特開2010−1415(P2010−1415A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162676(P2008−162676)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】