説明

水分散性セサミン類粉末およびその製造方法

【課題】水分散性セサミン類粉末を提供する。
【解決手段】次の各工程からなる水分散性セサミン類粉末の製造方法。
(1)セサミン類、エタノールおよび界面活性剤を混合する工程、
(2)混合物をその沸点に保持してセサミン類および界面活性剤をエタノールに溶解し溶液とする工程、
(3)溶液から、冷却またはエタノールの除去によりセサミン類と界面活性剤を含む固形物を分離する工程
(4)分離した固形物を乾燥する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散性セサミン類の粉末およびその製造方法に関する。より具体的には、セサミン類と界面活性剤を含有する粉末であり、セサミン類にエタノールおよび界面活性剤を加えて沸点に加熱し溶解する工程により製造される。本発明は、水分散性セサミン類の紛末を高純度で効率的に、かつ容易、安価に製造することができ、この粉末から健康食品などとして有用な飲料であるセサミン類の水分散液を簡便に得ることができる。
【背景技術】
【0002】
リグナンは抗酸化作用が強い細胞壁を形成するための物質であって、代表的なリグナンとしては、セサミン、セサモリン、セサミノール、セサモールなどがあり、ゴマに含まれるゴマリグナンが特に有名である。ゴマ種子には様々な種類のゴマリグナンが存在しており、セサミンが0.1〜0.5重量%程度含まれる他、セサモール、セサモリン、セサミノールなどが含有されていることが知られている。また、セサミンは強い抗酸化作用が知られているが、セサミンそのままでは抗酸化作用はなく、人間の体内に入り、肝臓に届くと構造が変わり抗酸化作用を示すといわれ、各種の健康食品などとして利用されている。
【0003】
セサミン類を含むリグナン類化合物に関しては、種々の生体内作用が報告され、例えば、セサミンがアルコール中毒やアルコールや喫煙の禁断症状の緩和に有効であること、セサミノールやエピセサミノールが気管支喘息などのアレルギー症の治療・予防に有効であることが報告されている。さらに、リグナン類化合物の用途が種々開発されており、現在までに血中コレステロール低下、肝機能改善、コレステロール降下、悪酔防止、コレステロール及び胆汁酸の代謝阻害、コレステロール低下、発癌抑制、過酸化脂質生成抑制、活性酸素除去の効果があると報告されている。
【0004】
セサミン類は水には殆ど溶解しない性質を有しており、医薬用または食用に使用可能な有機溶媒に対してもある程度溶解するだけである。水に対して難溶性の生理活性成分を含む健康食品、医薬品ないし医薬部外品などにおいては、生理活性成分の吸収率の改善が課題となっており、これまでに難溶性生理活性成分の吸収性を改善する目的で生理活性成分の微細化や、乳化剤添加による難溶性生理活性成分の溶解性改善が試みられている。
例えば、精油などの非水溶性物質にポリグリセリン脂肪酸エステルと水および多価アルコールを混合し可溶化する可溶化液の製造法(特許文献1)や、乳化剤や乳化安定剤由来の雑味が少なく、凝集・沈殿を生じ難いリグナン類化合物含有飲料を提供するにあたり、親水性乳化剤及び乳化安定剤(メチルセルロース)を、それぞれ所定濃度になるようにイオン交換水に溶解させて水相とする。油脂及び親油性乳化剤を所定の比率に混和しその混和物を80℃に加温し融解させたところにリグナン類化合物を溶解させて油相とする。油脂の融点以上に加温し融解させた上記油相に、80℃に加温した上記水相を投入して、乳化・分散機を用いて攪拌し、攪拌終了後に冷却することによってリグナン類化合物が分散した飲料を得ること(特許文献2)が報告されている。
【0005】
また、1)リグナン類化合物の一種以上を油脂に溶解してリグナン類化合物溶解液を得る工程;2)前記リグナン類化合物溶解液を水相に乳化させてO/W型エマルションを形成させる工程;及び3)前記O/W型エマルションをさらに油相に乳化させて、O/W/O型エマルションを得る工程;によりリグナン類化合物の体内吸収量を高めたリグナン類化合物を含有する組成物(特許文献3)や、セサミンおよび/またはエピセサミンを、炭素数8〜12の中鎖脂肪酸トリグリセリドである油脂に溶解し、該溶解液を乳飲料に混合することを特徴とする、乳飲料の製造方法(特許文献4)が報告されている。
さらに、乳化剤高濃度使用に伴う潜在的毒性を避ける目的で、最小量(3%)の乳化剤使用に基づく新しい乳化製剤の例が提示されている(非特許文献1)。しかしながら、この例では、使用している乳化剤はポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、また助溶媒にはポリエチレングリコールが使用されていることから、食品添加剤としては適さず健康食品などの加工食品へ使用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−250941号公報
【特許文献2】特開2010−44550号公報
【特許文献3】再表2008−44550号公報
【特許文献4】特許4473765号明細書
【0007】
【非特許文献1】Chem. Pharm. Bull. 46(2) 309-313 (1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
セサミン類は、健康食品、医薬品ないし医薬部外品などとして有用な成分であり、従来、ごまの粉末製品や、セサミン類を含有する錠剤やカプセル剤として供給されてきたが、この形態では服用が困難であるという問題が指摘され、誰もが容易に摂取し得る飲料の形態でのリグナン類化合物の飲食品の開発が望まれていた。しかしながら、セサミン類は水に殆ど溶解せず、水に浮いてしまうため、そのまま飲料中に配合することは困難であった。そこで、分散安定性を付与する目的で、界面張力低下能の高い乳化剤を多量に添加して乳化、分散させた乳剤とすることが従来行われてきた。しかしながら、添加した乳化剤により好ましくない風味を呈することなどの問題があった。さらに、セサミン類を誰もが容易に摂取できるよう、セサミン類を含む飲料を製造する技術が開発され、凝集、沈殿を生じにくく外観的にも優れ、乳化剤や乳化安定剤に由来する香味が少ないセサミン類を含有する飲料が提供されてきた。
【0009】
しかしながら、飲料の形態にすると飲用により簡便にセサミン類を摂取することは可能となったが、飲料は、容器、運送用の包装に経費が掛かるばかりか、水を含めた嵩張る製品を運搬し消費者まで届けなければならない。しかも、飲用した後の多数の容器類の処理にも手間と経費をかけなければならない。これでは、ごく少量のセサミン類を有効成分として含有する飲料を多量に生産し供給することは経済的ではない。そこで、セサミン類を水に易溶な粉末状態として消費者に届け、引用直前に水に溶解または分散して飲用し、セサミン類を摂取することが望まれていたが、セサミン類は非水溶性であるため、水に分散または溶解する粉末を製造することは容易ではなかった。
【0010】
本発明は上述の如き従来法の問題点を解決する新たな水分散性セサミン類粉末の製造方法および水分散性のセサミン類粉末を提供するものである。本発明の目的は、水分散性のセサミン類粉末の製造方法を提供するものである。また、本発明の目的は、セサミン類の含量が高い水分散性の粉末を、効率的に、かつ簡単、安価に製造する方法を提供するものである。本発明の目的は、水に対する分散性が良好なセサミン類粉末を提供することである。
さらに、本発明の目的は、需要者が簡便にセサミン類の分散水溶液を調整し、摂取することができるセサミン類粉末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は下記の水分散性セサミン類粉末の製造方法および製造された水分散性セサミン類粉末よりなる。
(1)下記の工程を順次経ることを特徴とする、水分散性セサミン類粉末の製造方法。

(a)セサミン類、エタノールおよび界面活性剤を混合する工程、
(b)混合物をその沸点に保持してセサミン類および界面活性剤をエタノールに溶解する工程、
(c)溶液からセサミン類と界面活性剤を含む固形物を分離する工程
(d)分離した固形物を乾燥する工程
(2)セサミン類、エタノールおよび界面活性剤を混合する工程において、セサミン類に対して、20倍重量以上のエタノールおよび0.05〜4倍重量の界面活性剤を加える上記(1)に記載の水分散性セサミン類粉末の製造方法。
(3)溶液からセサミン類と界面活性剤を含む固形物を分離する工程が、溶液の冷却、または、エタノールの留去による固形物の分離工程を含む上記(1)または(2)に記載の水分散性セサミン類粉末の製造方法。
(4)冷却により溶液から固形物を生成させるための冷却温度が45℃以下である上記(3)に記載の水分散性セサミン類粉末の製造方法。
(5)界面活性剤が食品用界面活性剤である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の水分散性セサミン類粉末の製造方法。
(6)エタノールが95容量%以上の純度を有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の水分散性セサミン類粉末の製造方法。
(7)セサミン類が、セサミンおよびエピセサミンである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の水分散性セサミン類粉末の製造方法。
(8)上記(1)ないし(7)のいずれかの方法で製造された、界面活性剤を0.5〜25重量%含有する水分散性セサミン類粉末。
(9)上記(8)に記載の粉末の水分散液であって、セサミン類の濃度が3〜700mg/100mlである水分散性セサミン類の分散液。
(10)セサミン類に対して食品用界面活性剤を0.5〜25重量%含有することを特徴とする水分散性セサミン類粉末。
(11)食品用界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、ソルビタンモノオレート、およびソルビタンモノステアレートから選ばれた1種以上からなる上記(10)に記載の水分散性セサミン類粉末。
【発明の効果】
【0012】
本発明により以下の効果が奏される。
(1)本発明によって得られた水分散性セサミン類粉末は、水に対する分散性が良好であり、水に限らず果実ジュ−ス、野菜ジュ−ス、乳飲料、栄養ドリンクなどの飲料に容易に分散することができる。
(2)消費者が飲用する直前に本発明の水分散性セサミン類粉末を水に分散させて摂取することができる。
(3)粉末状であるため、ビンなどの容器、搬送用の包装ならびに使用後の処理に経費がかからず経済的な水分散性セサミン類と提供することができる。
(4)本セサミン類の粉末を分散させた分散液を約600mg/100mlの高濃度とすることが可能である。
(5)水への分散性の向上から、ゲルやジェル状の食品(ゼリー、プリンなどゲル状食品または、スポーツ用のジェル状ドリンク、)などに素材として利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の水分散性セサミン粉末および未処理セサミンの分散状態を説明する写真である。
【図2】本発明の水分散性セサミンと未処理セサミンの偏向顕微鏡写真(×100水添加)である。
【図3】本発明により得られる水分散性セサミンの時間経過による分散状態の変化を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、水分散性セサミン類粉末の製造方法であって、
(1)セサミン類にエタノールおよび界面活性剤を加える工程、
(2)溶媒の沸点に保持し溶解する工程、
(3)溶液から固形物を分離する工程、
(4)分離した固形物を乾燥する工程、
の各工程を順次経て製造された水分散性セサミン類粉末は界面活性剤を0.5〜25重量%を含んでいる。本発明により製造されたセサミン類の粉末は水中に容易に分散する性質を有し、特別な分散装置を使用することなく分散液を作成することができる。
本発明は、セサミン類に対して特定割合の食品用界面活性剤を含有させることにより従来知られていなかった水分散性セサミン類粉末とすることに成功したものである。
本発明の水分散性のセサミン類粉末を水に分散することにより、7〜45mg/100mlの分散液を容易に製造することができるが、分散するには人の手による撹拌で十分であるから、摂取者が必要としたときに手軽に分散液を作製して飲用することができる。分散液の安定性は1〜2時間保持されるから、摂取者自身が分散液を作製して飲用するには十分な時間分散液は安定な状態を保持するといえる。
【0015】
[セサミン類]
本発明で「セサミン類」とは、セサミン、エピセサミンおよびその類縁体を含む一連の化合物の総称である。セサミン類の具体例としては、セサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモリンなどを例示でき、これらの立体異性体又はラセミ体を単独で、またはそれらの混合物を用いることができるが、本発明においては、セサミンおよび/またはエピセサミンを好適に用いることができる。
【0016】
本発明に用いるセサミン類は、その形態や製造方法などによって何ら制限されるものではない。例えば、セサミン類としてセサミンを選択した場合には、通常、ゴマ油から公知の方法によって抽出したセサミン類を用いることができる、なお、ゴマ油特有の風味が官能的に好ましくないと評価されることもあることから、セサミン抽出物を公知の手段、例えば活性白土処理などにより無味無臭として使用するのもよい。
セサミン類としては、ゴマ油などの食品由来の素材から抽出および/または精製によりセサミン類の含有濃度を向上させて得られるセサミン類濃縮物を用いるのが好ましい。濃縮の度合いは、用いるセサミン類の種類や配合する組成物の形態により適宜設定すればよいが、通常、セサミン類濃縮物中のセサミン類総含量は、20重量%以上がより好ましく、さらに50重量%以上が好ましく、さらにまた70重量%以上が好ましく、90重量%以上まで濃縮(精製)されたものが最適である。
【0017】
[界面活性剤]
本発明の水分散性セサミン類粉末は主に人が飲用するものであるから、界面活性剤としては食品用のものが好ましくは使用される。食品用の界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンポリグリセリン脂肪酸エステル、ジアセチル酒石酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン、キャラ、カゼインナトリウム、などが知られている。本発明において使用する食品用の界面活性剤は特に限定されることはない。
【0018】
[エタノール]
本発明でセサミン類の溶解に使用されるエタノールは、そのセサミン類の溶解性を考慮すると95容量%以上のものが好ましい。
【0019】
[製造方法]
本発明の水分散性セサミン類を製造する方法は、(1)セサミン類にエタノールおよび界面活性剤を加える工程、(2)液を沸点に保持し溶解する工程、(3)溶液から固形物を分離する工程、(4)分離した固形物を乾燥する工程よりなる各工程を順次経て製造される。
[セサミン類と食品用界面活性剤とエタノールとの混合工程]
セサミン類を含有する原材料と食品用界面活性剤をエタノールに混合する。このとき、エタノールはセサミン類の1重量部に対して20〜30重量部が好ましく、20重量部がさらに好ましい。エタノールが20重量部より少ないとセサミン類を完全に溶解させることが困難となり、30重量部より多くなると溶液を冷却することによりセサミン類が固形物として析出させることが困難となるばかりか、溶液中に残存するするセサミン類の量が増加して分離効率が悪くなる。また、溶媒が増加すると、溶媒の留去によりセサミン類の粉末を回収するためのエネルギーが多くなり経済的ではなくなる。したがって、エタノールの量は上記範囲が好ましい。
【0020】
食品用界面活性剤は、生成したセサミン類の粉末を容易に水に分散することができればその種類や添加量に制限はなくいずれのものでも使用することができるが、セサミン類1重量部に対して0.05〜4重量部添加することが好ましく、0.1〜1重量%の範囲がさらに好ましい。
食品用界面活性剤の中でも、特に、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン、ソルビ反物ステアレート、モノグリセリド、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンが好ましい。食品用界面活性剤の量が上記範囲より少なくなると生成したセサミン類の粉末の水分散性が十分得られない。また、上限値を超えると経済的に問題があるばかりか、食品用界面活性剤のにおいなどが感じられたりするので好ましくない。
セサミン類と食品用界面活性剤とエタノールとの混合工程は通常常温化で行われるが、加温したエタノールを使用してもよい。
【0021】
[溶液を沸点に保持し溶解する工程]
セサミン類と食品用界面活性剤、エタノールとの混合物をエタノールの沸点に保持してエタノール溶液とする。エタノールの沸点は78.3℃であり、水との共沸点でのエタノール濃度は78.2℃であるから溶液はこれらの温度に保持されて均一な溶液とすることができる。沸点に保持するには、冷却用のコンデンサーを取り付けた容器中で加熱し蒸気を還流させることにより通常は行われる。沸点での保持はセサミン類と食品用界面活性剤が溶解するまで適宜の時間行われるが通常は0.25〜2.0時間を要する。
【0022】
[溶液から固形物を分離する工程]
セサミン類、食品用界面活性剤およびエタノールの均一な溶液が作成されたならば、これを冷却することにより溶解したセサミン類を食品用界面活性剤が取り囲んだ状態で析出させる。析出物をフィルターなどにより固液分離することにより固形物のものが得られる。溶液の冷却は、室温での放冷や冷却媒体による冷却などの方法を採用することができるが、冷却温度は20〜45℃の範囲が好ましい。冷却温度が高すぎると分離できる固形物の量が減少することになる。
また、固形物の分離は、溶液中のエタノールを蒸留などにより除去することにより行うことができる。エタノールの留去は完全に行う必要はなく固形物の析出状態により途中の段階で止めてもよい。溶液は界面活性剤を多量に含んでいるため、すべての溶媒を留去すると多量の界面活性剤がセサミン類と一体となり好ましくないことがある。すべての溶媒を留去する際には、セサミンへの混合量の界面活性剤を添加することが好ましい。
【0023】
[乾燥工程]
分離された固形物は、セサミン類おおよび食品用界面活性剤が熱変性を起こさない温度条件下で乾燥されて本発明の水分散性セサミン類粉末が製造される。乾燥装置は従来技術が適用される。
【0024】
[賦形剤その他の添加物]
本発明の水分散性のセサミン類粉末を製造する工程において、結晶性セルロース、デキストリン、乳糖、植物ステロールなどの賦形剤を適量混和することにより、セサミン類の濃度や粉末の比重をコントロールすることができ、分散する液体の比重に合わせた調整が可能となる。また分散安定剤の併用も可能である。
本発明のセサミン類粉末には、各種の健康食品、サプリメントなどと称される健康増進剤などをセサミン類に添加混合することにより、人体の健康増進に貢献することができる。
【0025】
以下に本発明の詳細および効果を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
セサミン類に対する食品用界面活性剤を添加する量を変えて製造したセサミン類粉末の水分散性を検討した。
セサミン1重量部に対して、エタノールを20重部用い、これにセサミン類の1重量%,10重量%,100重量%,400重量%にあたる食用界面活性剤(エマゾール S−12V:花王株式会社製)を添加した試料をそれぞれ作成した。次いで、エタノールの沸点である78.3℃に1時間保持することにより均一な溶液とした。均一となった溶液を28℃にまで水冷して固形物を析出させ、これをろ過により回収して乾燥して得た粉末の水分散性を検討した。生成物の分散性は、粉末セサミン0.5gを50mlの水に振り混ぜて分散を検討した。試験の結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
上記のようにして製造した紛末に含まれる食品用界面活性剤は、エタノールに添加した量の数分の一から数十分の一であり、本発明の水分散性セサミン粉末の製造には比較的大量の食品用界面活性剤を必要とすることがわかった。試験した範囲から食品用界面活性剤はセサミンに対して10〜400重量%以上を使用することにより水分散性の粉末が製造できること、また、水分散性の良好な粉末中には2.2〜10.7重量%の界面活性剤が含有されていたことが判明した。
【実施例2】
【0029】
実施例1で製造したセサミン粉末の水への分散状態を図1に示した。図1の上方の写真は未処理のセサミンを水に加えて撹拌した後の状態を示したものであり、容器チューブの壁面にはセサミンが張り付き水への分散性は全く見られなかった。図1の下方の写真は、実施例1で製造した食品用界面活性剤を10重量%添加して得た紛末を水に加えて撹拌した後の状態を示した。セサミンは均一に分散して濁った状態となっていることがわかる。
【実施例3】
【0030】
実施例2で分散性を検討した2つのサンプルを偏光顕微鏡で観察し図2に示す。右の写真2-1は、未処理セサミンを水に添加して100倍の偏光顕微鏡で観察した写真であり、セサミンには撥水性があるために固形粉末同士が集まりその集合体の中に空気を取り込んでいることがわかる。固形物と液体との界面がハッキリとしている。
一方、食品用界面活性剤を3.0重量%含んでいるセサミン粉末を同様に偏光顕微鏡で分散状態を観察すると、図2右上の写真2-2のように固形粉末をコートしている界面活性剤により固形粉末が分散状態となっていることがわかる。
図2の右下写真2-3は食品用界面活性剤を3.0重量%含有する乾燥粉末の拡大写真であり、右下写真2-3は同じ粉末を水中で分散した粉末の拡大写真である。水に添加した前後では固形粉末の境界が変化しており、水に添加した後は水との境界面が明確ではなく、固形粉末の分散が良好であることが明らかとなった。
【実施例4】
【0031】
本実施例ではセサミンを水に分散させた後の分散安定性を検討した。
セサミン1重量部に、20重量部のエタノールとセサミンと等量(100重量%)の食品用界面活性剤を添加し、溶媒の沸騰温度で1時間保持して溶解させて溶液とした。その後、室温までに放冷して冷却して固形分を析出させてフィルターで分離し、乾燥して水分散性のセサミン粉末を得た。得たセサミン粉末の1重量部を100重量部の水に、振り混ぜ分散させた。分散直後からの経過時間と分散液中のセサミン濃度の変化を測定して図3に示した。使用した食品用界面活性剤を表2に示した。
【0032】
【表2】

【0033】
セサミン粉末中に含有される食品用界面活性剤の量は、その種類または製造元により0.5〜20.3重量%と大きく変化するが、40〜611mg/100mlの濃度の分散液が得られた。これらの分散液の濃度は、製造後2時間を経過した後は3.6〜45.8mg/100mlへと低下し、2日後には2.2〜4.5mg/100mlに低下した。以後時間の経過とともにさらに分散液の濃度は低下した。
本発明の水分散性セサミン紛末は、分散液を作成した後1〜2時間の間は分散液が安定であるから飲用する直前に飲用者が分散液を作成することにより十分に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、セサミン類を容易に水分散することができる粉末状態として提供することができるものであり、セサミンの分散液をビンなどの容器に詰めて供給していた従来の技術と比較して、製造、輸送のコストが低減され、さらに飲用後の廃物の処理がほとんどない経済的なシステムを構築することができる。セサミン類の摂取者は、本発明の紛末を水に加え撹拌することにより安定な水分散液が作成できる。取扱い、飲用が簡便なセサミン類の摂取形態を提供することができることは、国民の健康の増進に大きく貢献することができ、医療費の低減にも寄与することができる技術を提供することになる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を順次経ることを特徴とする、水分散性セサミン類粉末の製造方法。

(1)セサミン類、エタノールおよび界面活性剤を混合する工程、
(2)混合物をその沸点に保持してセサミン類および界面活性剤をエタノールに溶解する工程、
(3)溶液からセサミン類と界面活性剤を含む固形物を分離する工程
(4)分離した固形物を乾燥する工程
【請求項2】
セサミン類、エタノールおよび界面活性剤を混合する工程において、セサミン類に対して、20倍重量以上のエタノールおよび、0.05〜4倍重量の界面活性剤を加える請求項1に記載の水分散性セサミン類粉末の製造方法。
【請求項3】
溶液からセサミン類と界面活性剤を含む固形物を分離する工程が、溶液の冷却、または、エタノールの留去による固形物の分離工程を含む請求項1または2に記載の水分散性セサミン類粉末の製造方法。
【請求項4】
冷却により溶液から固形物を生成させるための冷却温度が45℃以下である請求項3に記載の水分散性セサミン類粉末の製造方法。
【請求項5】
界面活性剤が食品用界面活性剤である請求項1ないし4のいずれかに記載の水分散性セサミン類粉末の製造方法。
【請求項6】
エタノールが95容量%以上の純度を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の水分散性セサミン類粉末の製造方法。
【請求項7】
セサミン類が、セサミンおよびエピセサミンである請求項1ないし6のいずれかに記載の水分散性セサミン類粉末の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの方法で製造された、界面活性剤を0.5〜25重量%含有する水分散性セサミン類粉末。
【請求項9】
請求項8に記載の粉末の水分散液であって、セサミン類の濃度が3〜700mg/100mlである水分散性セサミン類の分散液。
【請求項10】
セサミン類に対して食品用界面活性剤を0.5〜25重量%含有することを特徴とする水分散性セサミン類粉末。
【請求項11】
食品用界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、ソルビタンモノオレート、およびソルビタンモノステアレートから選ばれた1種以上からなる請求項10に記載の水分散性セサミン類粉末。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−39082(P2013−39082A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178724(P2011−178724)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(596170550)かどや製油株式会社 (3)
【Fターム(参考)】