説明

水分散性セルロースと多糖類を含有する増粘安定剤

【課題】 微細な繊維状セルロースである水分散性セルロースと多糖類を含有させることで、安定性は保ちつつ、液切れ性が良く、糊状感やべたつきの少ない粘性を付与することのできる増粘安定剤を提供する。
【解決手段】 植物細胞壁を原料とする、微細な繊維状のセルロースであって、水中で安定に懸濁する成分(長径:0.5〜30μm、短径:2〜600nm、長径/短径比:20〜400)を10質量%以上含有し、かつ、0.5質量%水分散液とした時の損失正接が1未満である水分散性セルロースと、ガラクトマンナン、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、寒天、大豆水溶性多糖類、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、カラヤガム、から選択される少なくとも1種の多糖類を含有する組成物であって、水分散性セルロース:多糖類=1:9〜9:1の質量比で含有し、構造粘性形成作用を有する増粘安定剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
微細な繊維状セルロースである水分散性セルロースと少なくとも1種の多糖類を含有し、安定性は保ちつつ、液切れ性が良く、糊状感やべたつきの少ない粘性を付与できる増粘安定剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より食品や化粧品等の製品を増粘させるための増粘安定剤として、ガラクトマンナン、ペクチン等の多糖類が使用されている。これらの多糖類だけを使用して、安定性や粘性を付与しようとすると、液切れ性が悪くなり、食品や医薬品等においては糊状感により食感が損なわれ、化粧品等においてはべたつきにより触感が悪化するために、商品価値が損なわれる。
微小繊維状セルロースは大きな構造粘性を付与することは可能であるが、商品に添加して時間が経過すると、セルロースの凝集や離水が発生するため、長期保存安定性が要求される食品や化粧品等においては機能が不十分である。
【0003】
微小繊維状セルロースと多糖類を含有する増粘剤としては特許文献1〜3などが知られている。これらに示されている効果は「ままこ防止」や「整腸作用」等であり、液切れ性、食感、触感等については記載されていない。
特許文献4および5には、約80%以上の一次壁からなる細胞から得られたセルロースナノフィブリルとその他の添加剤を配合した組成物に関する開示があるが、添加剤配合の主目的は、あくまで乾燥物の再分散性改良や、セルロースナノフィブリルの機能補填であり、液切れ性、食感、触感等に関する記載は無い。
【0004】
特許文献6の実施例には、水分散性乾燥組成物と多糖類を含む酸性乳飲料やマヨネーズタイプドレッシングについて「糊状感が感じられない」との記載があるが、糊状感を的確に評価できていない。例えば表7では、実施例の50/sにおける粘度が比較例よりも高いにも関わらず「実施例は糊状感がなく、比較例は糊状感がある」という矛盾した結果を導き出しており、評価結果に信憑性がない。また特許文献6の水分散性乾燥組成物と多糖類を含むゲル形成組成物を添加し、水分散液を静置しておくと真性のゲル(True gel)を形成するとされている。それに対して本発明の増粘安定剤は、ゲル化させない、つまり増粘安定剤を添加する水分散液や液状組成物の流動性は維持し、真のゲルを形成させないという点で異なるものである。ゲル化すると、流動性を失って形態が液状でなくなるため、水分散液や液状組成物としての機能や物性を失ってしまうことになり、非常に問題である。
【0005】
【特許文献1】特許第1731182号公報
【特許文献2】特開昭60−260517号公報
【特許文献3】特許第1850006号公報
【特許文献4】特表2001−520180号公報
【特許文献5】特許第3247391号公報
【特許文献6】特開2004−41119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は微細な繊維状セルロースである水分散性セルロースと、多糖類を含有させることで、大きな構造粘性指標を付与し、安定性は保ちつつ、液切れ性が良く、糊状感やべたつきの少ない粘性を付与できる増粘安定剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、植物細胞壁を原料とする微細な繊維状セルロースである水分散性セルロースと、特定の多糖類を含有させることで、課題を解決し、本発明をなすに至った。すなわち本発明は以下の通りである。
【0008】
(1)植物細胞壁を原料とする、微細な繊維状のセルロースであって、水中で安定に懸濁する成分(長径:0.5〜30μm、短径:2〜600nm、長径/短径比:20〜400)を10質量%以上含有し、かつ、0.5質量%水分散液とした時の損失正接が1未満であることを特徴とする水分散性セルロースと、ガラクトマンナン、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、寒天、大豆水溶性多糖類、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、カラヤガムから選択される少なくとも1種の多糖類を含有する組成物であって、水分散性セルロース:多糖類=1:9〜9:1の質量比で含有し、構造粘性形成作用を有することを特徴とする増粘安定剤。
【0009】
(2)(1)記載の水分散性セルロースを50〜95質量%と、水溶性高分子および/または親水性物質を5〜50質量%含む水分散性乾燥組成物と、(1)記載の多糖類から選択される少なくとも1種の多糖類を含有する組成物であって、水分散性乾燥組成物:多糖類=1:9〜9:1の質量比で含有することを特徴とする増粘安定剤。
【0010】
(3)水中で安定に懸濁する成分を30質量%以上含有する(1)記載の水分散性セルロースを50〜95質量%と、水溶性高分子1〜49質量%と、親水性物質1〜49質量%からなる水分散性乾燥組成物と、請求項1記載の多糖類から選択される少なくとも1種の多糖類を含有する組成物であって、水分散性乾燥組成物:多糖類=1:9〜9:1の質量比で含有することを特徴とする増粘安定剤。
【0011】
(4)請求項1〜3記載の多糖類がガラクトマンナン、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ペクチンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1〜3記載の増粘安定剤。
【0012】
(5)(1)〜(4)いずれかに記載の増粘安定剤を添加することにより配合された液状組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、微細な繊維状セルロースである水分散性セルロースと少なくとも1種の多糖類を含有し、良好な液切れ性、食感、触感を付与することができる増粘安定剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について、特にその好ましい形態を中心に、具体的に説明する。本発明の水分散性セルロースは植物細胞壁を原料とする。具体的には、低コストで安定的に原料を入手することができて、工業的に使用が可能なものが好ましく、木材(針葉樹、広葉樹)、コットンリンター、ケナフ、マニラ麻(アバカ)、サイザル麻、ジュート、サバイグラス、エスパルト草、バガス、稲わら、麦わら、葦、竹などの天然セルロースを主成分とするパルプが使用される。綿花、パピルス草、ビート、こうぞ、みつまた、ガンピなども使用が可能だが、原料の安定的な確保が困難であること、セルロース以外の成分の含有量が多いこと、ハンドリングが難しいことなどの理由で好ましくない場合がある。再生セルロースを原料とした場合、充分な性能が発揮されないので、再生セルロースは本発明の原料としては含まれない。
好ましい原料の具体的例は、木材パルプ、コットンリンターパルプ、バガスパルプ、麦わらパルプ、稲わらパルプ、竹パルプなどである。特に好ましいのはイネ科植物の細胞壁を起源としたセルロース性物質であり、具体的にはバガスパルプ、麦わらパルプ、稲わらパルプ、竹パルプである。
【0015】
本発明で使用される微細な繊維状のセルロースの結晶化度は特に定めるものではないが、X線回折法(Segal法)で測定されるところの結晶化度が、50%より大きいことが好ましく、55%以上であればさらに好ましい。本発明で使用する水分散性乾燥組成物は、セルロース以外の成分を含有するが、それらの成分は非晶性であり、非晶性としてカウントされる。
本発明で使用されるセルロースは「微細な繊維状」である。本明細書中で「微細な繊維状」とは、光学顕微鏡および電子顕微鏡にて観察および測定されるところの、長さ(長径)が0.5μm〜1mm程度、幅(短径)が2nm〜60μm程度、長さと幅の比(長径/短径)が5〜400程度であることを意味する。
【0016】
本発明の水分散性セルロースまたは水分散性乾燥組成物は、水中で安定に懸濁する成分を含有する。具体的には、0.1質量%濃度の水分散液状態として、これを1000Gで5分間遠心分離した時においても、沈降することなく水中に安定に懸濁しているという性質を有する成分であり、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察・測定される長さ(長径)が0.5〜30μmであり、幅(短径)が2〜600nmであり、長さと幅の比(長径/短径比)が20〜400である繊維状のセルロースからなる。好ましくは、幅が100nm以下であり、より好ましくは50nmである。
【0017】
本発明の増粘安定剤の構成成分として使用される水分散セルロースまたは水分散性乾燥組成物は、この「水中で安定に懸濁する成分」を10〜100質量%含有する。この成分の含有量が10質量%未満であると、前述の機能、つまり構造粘性形成作用が十分に発揮されない。含有量は多いほど好ましいが、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。なお、この成分の含有量は特に断らない限り、全セルロース中の存在比率を表すものであり、水溶性成分が含まれている場合であってもそれが含まれないように測定・算出される。
【0018】
本発明の増粘安定剤の構成成分として使用される水分散性セルロースまたは水分散性乾燥組成物は、0.5質量%濃度の水分散液において、歪み10%、周波数10rad/sの条件で測定される損失正接(tanδ)が1未満であり、好ましくは0.6未満である。0.6未満であるとそれらの性能はさらに秀でたものとなる。損失正接が1以上であると、後述する構造粘性指標が小さくなってしまう。
本発明の増粘安定剤の構成成分として使用される水分散性セルロースまたは水分散性乾燥組成物の損失正接を1未満にするためには、植物細胞壁由来のミクロフィブリルを短く切断することなく取り出す必要がある。しかしながら現在の技術では全く「短繊維化」させることなく、「微細化」だけを行うことはできない。(ここで言う「短繊維化」とは繊維を短く切断すること、あるいは短くなった繊維の状態を意味する。また「微細化」とは引き裂く等の作用を与えて繊維を細くすること、あるいは細くなった繊維の状態を意味する。)つまり損失正接を1未満にするためには、セルロース繊維の「短繊維化」を最低限に抑えつつ「微細化」を進行させることが重要である。そのための好ましい方法を以下に示すが、これらの方法に何ら限定されるものではない。
【0019】
セルロース繊維の「短繊維化」を最低限に抑えつつ「微細化」を進行させるために、原料として選択する植物細胞壁を起源とするセルロース性物質は、平均重合度400〜12000で、かつ、α−セルロース含量(%)が60〜100質量%のものが好ましく、より好ましくは60〜85質量%のものである。
またセルロース繊維の「短繊維化」を最低限に抑えつつ「微細化」を進行させるために使用される装置としては、高圧ホモジナイザーが好ましい。高圧ホモジナイザーの具体例としては、エマルジフレックス(AVESTIN Inc.製)、アルティマイザーシステム(株式会社スギノマシン製)、ナノマイザーシステム(ナノマイザー株式会社製)、マイクロフルイダイザー(MFIC Corp.製)、バルブ式ホモジナイザー(三和機械株式会社製、Invevsys APV社製、Niro Soavi社製、株式会社イズミフードマシナリー社製)などがある。高圧ホモジナイザーの処理圧力としては60〜414MPaが好ましい。
【0020】
本発明に使用する多糖類はガラクトマンナン、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、寒天、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、大豆水溶性多糖類、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、カラヤガムからなる群、好ましくはガラクトマンナン、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ペクチンからなる群から少なくとも1種が選択される。また、ガラクトマンナンの種類がグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムであればさらに好ましい。
【0021】
本発明で使用されるガラクトマンナンとは、β−D−マンノースがβ−1,4結合した主鎖と、α−D−ガラクトースがα−1,6結合した側鎖からなる構造を有する多糖類である。ガラクトマンナンの例としては、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム等があり、マンノースとグルコースの比率は、グアーガムで約2:1、ローカストビーンガムで約4:1、タラガムで約3:1である。
本発明で使用されるキサンタンガムは、主鎖はD−グルコースがβ−1,4結合した構造を有し、この主鎖のアンヒドログルコースにD−マンノース、D−グルクロン酸、D−マンノースからなる側鎖が結合したものである。主鎖に付くD−マンノースの6位はアセチル化され、末端のD−マンノースがピルビン酸とアセタール結合している枝分かれの多い構造である。
本発明で使用されるタマリンドシードガムとは、主鎖がグルコースで、キシロースを側鎖に持つキシログルカンである。
【0022】
本発明で使用するペクチンは、主鎖はα−D−ガラクツロン酸がα−1,4結合しており、部分的にメタノールでエステル化されている。ガラクツロン酸の主鎖にβ−L−ラムノースが入ることによって、
分子にねじれが生じている。また中性のアラバン、ガラクタン、キシラン等が側鎖として結合している場合と、混在しているものがある。ペクチンを構成するガラクツロン酸は、メチルエステルの形と酸の2つの形で存在している。そのエステルの形で存在するガラクツロン酸の割合をエステル化度と呼び、エステル化度が50%以上のものがHMペクチン、50%未満のものをLMペクチンと言われている。
本発明で使用するカラギーナンは、β−D−ガラクトースとα−D−ガラクトースのβ−1,4結合と、α−1,3結合が交互に繰り返され、ガラクトースユニットが結合した構造をとっている。
本発明で使用するジェランガムは、グルコース、グルクロン酸、グルコースとL−ラムノースの4つの糖が、反復ユニットで直鎖状に結合したものである。ネイティブ型ジェランガムは、このグルコースのC−6位に3〜5%アセチル基が、C−2位にグリセリル基が結合している。脱アセチル化ジェランガムは、ネイティブ型ジェランガムを脱アセチル化処理して、精製したものである。
【0023】
本発明で使用する寒天は、β−D−ガラクトースとα−L−ガラクトースのβ−1,4結合と、α−1,3結合が交互に繰り返し構造を持つアガロースと、アガロース以外のイオン性多糖類であるアガロペクチンからなる多糖類である。
本発明で使用する大豆水溶性多糖類は、ガラクトース、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノース、キシロース、グルコース等の糖から構成され、ラムノガラクツロン酸鎖にガラクタンとアラビナンが結合したものであると推定されている。
本発明で使用されるグルコマンナンは、D−グルコースとD−マンノースがβ−1,4結合した構造を有し、グルコースとマンノースの比率が約2:3の多糖類であるが、精製度が低いと独特の刺激臭があるので、精製度の高いものを使用することが望ましい。
【0024】
本発明で使用されるアルギン酸ナトリウムとは、アルギン酸がナトリウムで中和された水溶性の多糖類である。アルギン酸はβ−D−マンヌロン酸(Mと略する)とα−L−グルロン酸(Gと略する)からなる1,4結合のブロック共重合体である。Mからなるブロック(M−M−M−M)と、Gからなるブロック(G−G−G−G)と、両残基が交互に入り交じっているブロック(M−G−M−G)、という3つのセグメントから成り立っている。
本発明で使用されるカラヤガムとは、部分的にアセチル化した分岐のある多糖類で、約40%のウロン酸と8%以下のアセチル基を含んでいる。その主鎖にラムノースとガラクツロン酸があり、グルクロン酸が側鎖にあると推定されている。
【0025】
本発明の構造粘性形成作用は、「回転数3rpmにおける粘度(η3)」と「回転数100rpmにおける粘度(η100)」から算出される構造粘性指標(TI値)によって表される。安定性はη3に依存する傾向があるので、η3が同程度の粘度を示すように調整した水分散液(または液状組成物)同士で、構造粘性指標(TI値)を比較する。ここで言うTI値とは、「TI=η3/η100」で表され、TI値が大きいほど、液切れ性が良く、糊状感やべたつきが少ないということを表している。以下に示す構造粘性指標が「TIα>TIβ」となる時に、構造粘性形成作用を持つと判定する。
【0026】
本発明の増粘安定剤の、水分散液あるいは本発明の増粘剤を添加、配合した液状組成物の構造粘性指標(TIα)は、「TIα=η3α/η100α」から求められる。
η3α:本発明の増粘安定剤の、水分散液あるいは本発明の増粘剤を添加、配合した液状組成物の3rpmにおける粘度
η100α:本発明の増粘安定剤の、水分散液あるいは液状組成物の100rpmにおける粘度
粘度η3αおよびη100αの調整に用いた本発明の増粘安定剤に含まれる多糖類の、水分散液あるいは該多糖類を添加配合した液状組成物の構造粘性指標(TIβ)は、「TIβ=η3β/η100β」から求められる。
η3β:粘度η3αの調整に用いた本発明の増粘安定剤に含まれる多糖類の、水分散液あるいは該多糖類を添加配合した液状組成物の3rpmにおける粘度〔ただしη3β≒η3α、つまり「0.9≦η3α/η3β≦1.1」となるように多糖類の添加量を調整する。〕
η100β:粘度η100αの調整に用いた本発明の増粘安定剤に含まれる多糖類の、水分散液あるいは該多糖類を添加配合した液状組成物の100rpmにおける粘度
ここで言う液切れ性とは、水分散液または液状組成物を容器から移す場合の液の切れ具合を指す。つまり容器を傾けてから戻したとき、液切れ性が良ければ容器開口部付近への液の付着が少ないが、液切れ性が悪ければ容器開口部付近への液の付着が多く、さらに状態が悪くなると液が糸を引いて切れなくなる。
【0027】
本発明の糊状感とは、人間が液体を口にしたときに感じる「糊っぽさ」や「ぬめり」であり、一般的にずり速度10〜50/sにおける粘度と相関し、この粘度が高いほど糊状感を強く感じると言われている。B形粘度計における回転数(rpm)をずり速度(/s)に換算すると、100rpmは20〜70/s程度に相当する。よってη100が低いほど、つまり本発明ではη3β≒η3αなので、構造粘性指標(TI値)が大きいほど、糊状感が少なく感じられる。
本発明のべたつきとは、皮膚に塗布したときの触感を示しており、同様に構造粘性指標(TI値)が大きいものほど、べたつきが少なく感じる。
【0028】
本発明の増粘安定剤には増粘安定剤の他に、デンプン類、油脂類、蛋白質類、ペプチド、アミノ酸類、食塩、各種リン酸塩等の塩類、界面活性剤、乳化剤、酸味料、甘味料、香料、色素、pH調整剤、消泡剤、ミネラル、食物繊維、調味料、酸、アルカリ、アルコール等の成分が適宜配合されていても良い。
本発明の増粘安定剤の構成成分として使用される水分散性乾燥組成物は、水分散性セルロースを50〜95質量%と、水溶性高分子および/または親水性物質5〜50質量%からなり、好ましくは、水分散性セルロース:水溶性高分子:親水性物質が50〜95:1〜49:1〜49質量%の範囲、さらに好ましくは、60〜75:5〜20:15〜25質量%の範囲から構成される乾燥物である。この組成物は、顆粒状、粒状、粉末状、鱗片状、小片状、シート状を呈する。この組成物は水中に投入し、機械的な剪断力を与えた時、粒子が崩壊し、微細な繊維状のセルロースが水中に分散するようになることが特徴である。水分散性セルロースが50質量%未満になると、セルロースの比率が低くなって効果が発揮されない。
【0029】
本発明に使用される前記水分散性乾燥組成物の成分である水溶性高分子とは、乾燥時におけるセルロース同士の角質化を防止する作用を有するものであり、具体的にはアラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸およびその塩、カードラン、ガッティーガム、カラギーナン、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、グアーガム、酵素分解グアーガム、クインスシードガム、ジェランガム、ゼラチン、タマリンドシードガム、難消化性デキストリン、トラガントガム、ファーセルラン、プルラン、ペクチン、ローカントビーンガム、水溶性大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムなどから選ばれた1種または2種以上の物質が使用される。
中でも、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムが好ましい。このカルボキシメチルセルロース・ナトリウムとしては、カルボキシメチル基の置換度が0.5〜1.5、好ましくは0.5〜1.0、さらに好ましくは0.6〜0.8である。また1質量%水溶液の粘度は5〜9000mPa・s程度、好ましくは1000〜8000mPa・s程度、さらに好ましくは2000〜6000mPa・s程度のものである。
【0030】
本発明に使用される前記水分散性乾燥組成物の成分である親水性物質とは冷水への溶解性が高く、粘性を殆どもたらさず、常温で固体の物質であり、デキストリン類、水溶性糖類(ブドウ糖、果糖、庶糖、乳糖、異性化糖、オリゴ糖、キシロース、トレハロース、カップリングシュガー、パラチノース、ソルボース、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)、糖アルコール類(キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール等)、より選ばれた1種または2種以上の物質である。水溶性高分子は前述の通り、セルロースの角質化を防ぐ効果があるが、物質によっては乾燥組成物内部への導水性が劣るため、水中での機械的剪断力を強く、長い時間与える必要が生じる場合がある。親水性物質は主としてこの導水性を強化する機能があり、具体的には乾燥組成物の水崩壊性を促進させる。中でも、デキストリン類やトレハロースが好ましく、デキストリン類を用いるのがさらに好ましい。
【0031】
本発明に使用されるデキストリン類とは、デンプンを酸、酵素、熱で加水分解することによって生じる部分分解物のことであり、グルコース残基が主としてα−1,4結合およびα−1,6結合からなり、DE(dextrose equivalent)として2〜42程度、好ましくは20〜42程度のものが使用される。ブドウ糖や低分子オリゴ糖が除去された分枝デキストリンも使用することができる。
本発明に使用されるトレハロースとは、D−グルコース2分子が結合した二糖類であり、通常この結合はα,α(1→1)結合のものが使用される。
本発明の水分散性乾燥組成物には水分散性セルロースと水溶性高分子と親水性物質以外に、デンプン類、油脂類、蛋白質類、食塩、各種リン酸塩等の塩類、乳化剤、酸味料、甘味料、香料、色素等の食品、医薬品、化粧品に使用できる成分を適宜配合されていても良い。
【0032】
本発明の水分散性乾燥組成物は、前述の通り、水中に投入し、機械的な剪断力を与えた時、構成単位(粒子)が崩壊し、微細な繊維状のセルロースが水中に分散するようになる。このとき「機械的な剪断力」とは、0.5質量%水分散液を、回転型のホモジナイザーで、最大でも15000rpmで15分間分散するようなものであり、温度は80℃以下で処理することを意味する。
【0033】
このようにして得られた水分散液は、乾燥前の状態、すなわち、「水中で安定に懸濁する成分」が全セルロース分に対して10質量%以上存在する。そして、この水分散液の0.5質量%における損失接は1未満である。水分散性セルロース中の「水中で安定に懸濁する成分」の含有量と損失正接の測定条件は後述する。水分散性セルロースは前述したとおり、長径は0.5〜30μm、短径は2〜600nmである。長径/短径比は20〜400である。好ましくは、幅が100nm以下であり、より好ましくは50nmである。
【0034】
本発明の液状組成物とは、室温で液状あるいはペースト状の形態をとるものであり、液状食品組成物、液状化粧品組成物、液状医薬医療品組成物、液状工業用組成物等が含まれる。これらの液状組成物は、スプレー、チュアパック、レトルト食品、冷凍食品、電子レンジ用食品等のように、形態または用時調製の加工手法が異なっていても本発明に含まれる。
液状食品組成物の例としては、「コーヒー、紅茶、抹茶、ココア、汁粉、ジュース、豆乳、アルコール等の嗜好飲料」、「生乳、加工乳、乳酸菌飲料等の乳成分含有飲料」、「カルシウム強化飲料等の栄養強化飲料並びに食物繊維含有飲料等を含む各種の飲料類」、「コーヒーホワイトナー、ホイッピングクリーム、カスタードクリーム、ソフトクリーム等の乳製品類」、「スープ類」、「シチュー類」、「ソース、タレ、ドレッシング等の調味料類」、「練りがらしに代表される各種練り調味料」、「フルーツソース、フルーツプレパレーションに代表される果肉加工品」、「経管流動食等の流動食類」、「液状あるいはペースト状のサプリメント類」および「液状あるいはペースト状のペットフード類」等があげられる。医薬医療品組成物の例としては、「シロップ薬、ビタミン薬、滋養強壮薬などの経口医薬品」、「ホルモン剤などの経鼻医薬品」、「輸液、抗腫瘍薬、化学療法剤などの点滴・経管医薬品」、「医薬品に区分される経管流動食などの流動食類」、「外皮用薬などの軟膏」、「薬用化粧品、ビタミン含有保健剤、毛髪用剤、薬用歯磨き剤、浴用剤、殺虫剤・防虫剤、腋臭防止剤、口内清涼剤などの医薬部外品」、「人工軟骨、生体用接着剤等の生体材料」、貼布剤、コーティング剤などがあげられる。液状化粧品組成物の例としては、「化粧水、乳液、美容液、パック、モイスチャークリーム、マッサージクリーム、コールドクリーム、クレンジングクリーム、洗顔料、バニシングクリーム、エモリエントクリーム、ハンドクリーム、日焼け止め用化粧料などの皮膚用化粧品」、「ファンデーション、おしろい、口紅、リップクリーム、ほほ紅、サンスクリーン化粧料、まゆ墨、マスカラ等まつげ用化粧料、マニキュアや除光液等のつめ化粧料などの仕上用化粧品」、「シャンプー、ヘアリンス、ヘアトニック、ヘアトリートメント、ポマード、チック、ヘアクリーム、香油、整髪料、ヘアスタイリング剤、ヘアスプレー、染毛料、育毛剤や養毛剤などの頭髪用化粧品」、さらにはハンドクリーナーのような洗浄剤、浴用化粧品、ひげそり用化粧品、芳香剤、歯磨き剤、軟膏、貼布剤等があげられる。液状工業用組成物の例としては、顔料、塗料、インク類、消臭・芳香剤、抗菌・防カビ剤、接着剤、コーティング剤、界面活性剤、衛生材料、培養材料、洗剤、液体石けんなどがあげられる。
液状食品組成物は、通常、pH3〜8、食塩濃度0.001〜20%で供給されるため、このような条件下で効果を発現することが求められる。
【0035】
本発明の増粘安定剤の液状組成物に対する添加量は、特に限定するものではないが、好ましくは0.001質量%以上、1質量%未満、さらに好ましくは0.05〜0.7質量%程度である。
本発明のゲル化とは、水分散液あるいは液状組成物を静置しておくと、ゼリーやプリンのようなゲル、つまり真性のゲル(true gel)を形成する機能のことで、静置後24時間の時点で判断する。またゲル化した水分散液および液状組成物は流動性を持たない。
【0036】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお本願発明にかかる物質の諸物性の評価は以下の手法に拠った。
<セルロース性物質の平均重合度>
ASTM Designation: D 1795−90「Standerd Test Method for Intrinsic Viscosity of Cellulose」に準じて行う。
<セルロース性物質のα−セルロース含有量>
JIS P 8101−1976(「溶解パルプ試験方法」5.5 αセルロース)に準じて行う。
<セルロース性物質の結晶化度>
JIS K 0131−1996(「X線回折分析通則」)に規定されるX線回析装置で得られたX線回折図の回折強度値から、Segal 法により算出したもので次式によって定義される。
結晶化度(%)={(Ic−Ia)/Ic}×100
ここで、Ic:X線回析図の回折角2θ=22.5度での回折強度、Ia:同じく回析角2θ=18.5度付近のベースライン強度(極小値強度)である。
【0037】
<セルロース繊維(粒子)の形状(長径、短径、長径/短径比)>
セルロース繊維(粒子)のサイズの範囲が広いので、一種類の顕微鏡で全てを観察することは不可能である。そこで、繊維(粒子)の大きさに応じて光学顕微鏡、走査型顕微鏡(中分解能SEM、高分解能SEM)を適宜選択し、観察・測定する。
光学顕微鏡を使用する場合は、固形分濃度が0.25質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、「エクセルオートホモジナイザー」(日本精機株式会社製)で、15000rpmで15分間分散したものを、適当な濃度に調整し、それをスライドガラスにのせ、さらにカバーグラスをのせて観察する。
また、中分解能SEM(日本電子株式会社製、「JSM−5510LV」)を使用する場合は、サンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約3nm蒸着して観察する。
高分解能SEM(株式会社日立サイエンスシステムズ製、「S−5000」)を使用する場合は、サンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約1.5nm蒸着して観察する。
セルロース繊維(粒子)の長径、短径、長径/短径比は撮影した写真から15本(個)以上を選択し、測定した。繊維はほぼまっすぐから、髪の毛のようにカーブしているものがあったが、糸くずのように丸まっていることはなかった。短径(太さ)は、繊維1本の中でもバラツキがあったが、平均的な値を採用した。高分解能SEMは、短径が数nm〜200nm程度の繊維の観察時に使用したのだが、一本の繊維が長すぎて、一つの視野に収まらなかった。そのため、視野を移動しつつ写真撮影を繰り返し、その後写真を合成して解析した。
【0038】
<「水中で安定に懸濁する成分」の含有量>
以下の(1)〜(5)および(3’)〜(5’)より求める。
(1)セルロース濃度が0.1質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、エースホモジナイザー(日本精機株式会社製、AM−T型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)サンプル液20gを遠沈管に入れ、遠心分離機にて1000Gで5分間遠心分離する。
(3)上層の液体部分を取り除き、沈降成分の質量(a)を測定する。
(4)次いで、沈降成分を絶乾し、固形分の質量(b)を測定する。
(5)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2) [質量%]
但し、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。(ここで、k1:上層の液体部分に含まれる「微細な繊維状のセルロース」の量、k2:沈殿成分に含まれる「微細な繊維状のセルロース」の量、w1:上層の液体部分に含まれる水の量、w2:沈殿成分に含まれる水の量、s2:沈殿成分に含まれる「水溶性高分子+親水性物質」の量とする。)
k1=0.02−b+s2
k2=k1×w2/w1
(水溶性高分子+親水性物質)/セルロース
=d/f [配合比率]
w1=19.98−a+b−0.02×d/f
w2=a−b
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
【0039】
「水中で安定に懸濁する成分」の含有量が非常に多い場合は、沈降成分の重量が小さな値となるので、上記の方法では測定精度が低くなってしまう。その場合は(3)以降の手順を以下のようにして行う。
(3’)上層の液体部分を取得し、質量(a’)を測定する。
(4’)次いで、上層成分を絶乾し、固形分の質量(b’)を測定する。
(5’)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2) [質量%]
但し、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。(ここで、k1:上層の液体部分に含まれる「微細な繊維状のセルロース」の量、k2:沈殿成分に含まれる「微細な繊維状のセルロース」の量、w1:上層の液体部分に含まれる水の量、w2:沈殿成分に含まれる水の量、s2:沈殿成分に含まれる「水溶性高分子+親水性物質」の量とする。)
k1=b’−s2×w1/w2
k2=k1×w2/w1
(水溶性高分子+親水性物質)/セルロース
=d/f [配合比率]
w1=a’−b’
w2=19.98−a’+b’−0.02×d/f
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
もし、(3)の操作で上層の液体部分と沈降成分の境界が明瞭ではなく分離が難しい場合は適宜セルロース濃度を下げて操作を行う。
【0040】
<損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)>
以下の(1)〜(3)の手順で求める。
(1)固形分濃度が0.5質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、「エクセルオートホモジナイザー」(日本精機株式会社製)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)25℃の雰囲気中に3時間静置する。
(3)動的粘弾性測定装置にサンプル液を入れてから5分間静置後、以下の条件で測定し、周波数10rad/sにおける損失正接(tanδ)を求める。
装置:「ARES」(Rheometric Scientific,Inc.製、100FRTN1型)
ジオメトリー:Double Wall Couette
温度:25℃
歪み:10%(固定)
周波数:1→100rad/s(約170秒かけて上昇させる)
【0041】
<水分散液の調製、ゲル化状態および液切れ性の確認、粘度測定>
まず固形分が1質量%の水分散液となるようにサンプルと水を量り取り、「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)を使用して、8000rpmで10分間分散する。さらに後述の「回転数3rpmにおける増粘安定剤水分散液の粘度」が2500〜3000mPa・sとなるように、この1質量%のサンプル水分散液と水を任意の倍率で混合し、さらに5分間分散して、サンプル水分散液を調製した。この時の温度は特に規定するものではないが、サンプルの分散に適した温度を選択する。また使用する多糖類の性質に合わせて、機能の発現に不可欠な添加剤(カルシウム、ナトリウム等)を加えても良い。本実施例では、ペクチン使用時に、塩化カルシウムを添加した。
次にこのサンプル水分散液を、3つのビーカーに充填する。ビーカーに充填されたサンプル水分散液1つを、25℃の雰囲気中に24時間静置した後に、ビーカーを傾けて、サンプル水分散液が流動化してこぼれ落ちれば、流動性を維持しており、ゲル化していないと判断した。ただしゲル化状態の確認が不要なサンプルについては、この操作を省略した。ビーカーを傾けて戻した際に、サンプル水分散液がべっとりとビーカー開口部に付着した場合や糸を引いた場合は液切れ性が悪く、付着せず液が切れた場合は液切れ性が良いと判断した。
またビーカーに充填されたサンプル水分散液2つを、25℃の雰囲気中に3時間静置し、静置状態で回転粘度計(B形粘度計、東機産業株式会社製、「TV−10形」)をセットし、60秒後の粘度を読みとる。この時、ローター回転数3rpmで一方のビーカーに充填されたサンプル水分散液の粘度を測定し、ローター回転数100rpmでもう一方のビーカーに充填されたサンプル水分散液の粘度を測定した。なお、ローターおよびアダプターは粘度によって適宜変更した。
【0042】
<液状組成物(フルーツソース、はっ酵乳飲料、焼き肉のたれ、コーンスープ、化粧水)のゲル化状態および液切れ性の確認、粘度測定>
後述の実施例により調製された液状組成物を、各々3つのビーカーに充填した。ビーカーに充填された液状組成物1つを、24時間静置した後に、ビーカーを傾けて、液状組成物が流動化してこぼれ落ちれば、流動性を維持しており、ゲル化していないと判断した。ただしゲル化状態の確認が不要なサンプルについては、この操作を省略した。ビーカーを傾けて戻した際に、液状組成物がべっとりとビーカー開口部に付着した場合や糸を引いた場合は液切れ性が悪く、付着せず液が切れた場合は液切れ性が良いと判断した。
またビーカーに充填された液状組成物2つを、25℃の雰囲気中に3時間静置し、静置状態で回転粘度計(B形粘度計、東機産業株式会社製、「TV−10形」)をセットし、60秒後の粘度を読みとる。この時、ローター回転数3rpmで一方のビーカーに充填された液状組成物の粘度を測定し、ローター回転数100rpmでもう一方のビーカーに充填された液状組成物の粘度を測定した。なお、ローターおよびアダプターは粘度によって適宜変更した。
【0043】
<構造粘性指標(TI値)の算出と、構造粘性形成作用の判定>
上述の方法で得られたサンプル水分散液または液状組成物の「回転数3rpmにおける粘度(η3)」と「回転数100rpmにおける粘度(η100)」から、構造粘性指標(TI=η3/η100)を算出する。
本発明の増粘安定剤の、水分散液あるいは液状組成物の構造粘性指標(TIα)は、「TIα=η3α/η100α」から求められる。
η3α:本発明の増粘安定剤の、水分散液あるいは液状組成物の3rpmにおける粘度
η100α:本発明の増粘安定剤の、水分散液あるいは液状組成物の100rpmにおける粘度
粘度η3αおよびη100αの調整に用いた本発明の増粘安定剤に含まれる多糖類の、水分散液あるいは液状組成物の構造粘性指標(TIβ)は、「TIβ=η3β/η100β」から求められる。
η3β:粘度η3αの調整に用いた本発明の増粘安定剤に含まれる多糖類の、水分散液あるいは液状組成物の3rpmにおける粘度〔ただしη3β≒η3α、つまり「0.9≦η3α/η3β≦1.1」となるように多糖類の添加量を調整する。〕
η100β:粘度η100αの調整に用いた本発明の増粘安定剤に含まれる多糖類の、水分散液あるいは液状組成物の100rpmにおける粘度
上記で求められた構造粘性指標TIαとTIβが「TIα>TIβ」の関係となる場合に、増粘安定剤が構造粘性形成作用を持つと判定した。
【0044】
<液状組成物(フルーツソース、はっ酵乳飲料、焼き肉のたれ、コーンスープ)の糊状感の判定>
上述の「回転数3rpmにおける粘度(η3)」の測定で使用した、液状組成物の残りを1gずつ20人のパネラーに食べさせることによって、官能検査を実施し、「糊状感を感じた人の割合(%)=糊状感を感じた人数/20×100」を求める。後述の実施例の官能検査については、全て同じパネラー20人が行った。
<液状組成物(化粧水)の触感の判定>
上述の「回転数3rpmにおける粘度(η3)」の測定で使用した、液状組成物の残りを1gずつ20人のパネラーに手の甲に塗布してもらい、「べたつきを感じた人の割合(%)=べたつきを感じた人数/20×100」を求める。後述の実施例については、全て同じパネラー20人が行った。
<pH>
pH計(東亜ディーケーケー株式会社製、「HM−50G形」)で測定した。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例と比較例を示して、具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。実施例で使用する水分散性セルロース、水分散性乾燥組成物、グアーガム、ペクチン、グルコマンナン、キサンタンガム、タマリンドシードガムについて、次の(1)〜(8)に示す。
【0046】
(1)水分散性乾燥組成物Aの調整:市販木材パルプ(平均重合度=1720、α−セルロース含有量=78質量%)、6×6mm角の矩形に裁断し、固形分濃度が80質量%になるように水を加えた。これを、水とパルプチップができるだけ分離しないよう注意して、カッターミル(カッティングヘッド/水平刃間隙:2.03mm、インペラー回転数:3600rpm)に1回通した。
セルロース濃度が1.5質量%になるように、カッターミル処理品と水を量り取り、繊維の絡みがなくなるまで撹拌した。この水分散液を砥石回転型粉砕機(グラインダー回転数:1800rpm)で処理した。処理回数は2回で、グラインダークリアランスを110→80μmと変えて処理した。
次いで得られた水分散液をそのまま高圧ホモジナイザー(処理圧力:55MPa)で30パスし、水分散性セルロースAスラリーを得た。
水分散性セルロースA:カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:キサンタンガム:トレハロース=70:15:2:13(質量部)となるように、水分散性セルロースAスラリーにカルボキシメチルセルロース・ナトリウム(1質量%水溶液粘度:約3400mPa・s)とトレハロース(株式会社林原商事製)を添加し、15kgを攪拌型ホモジナイザー(特殊機化工業株式会社製、「T.K.AUTO HOMO MIXER」)で、8000rpmで30分間撹拌・混合し、水分散性セルロースA’スラリーを得た。
次いでこの水分散性セルロースA’スラリーをアプリケータにより厚さ2mmでアルミニウム板状にキャストし、熱風乾燥機を使用し、120℃で45分間乾燥してフィルムを得た。これをカッターミル(不二パウダル株式会社製)で、目開き1mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕し、水分散性乾燥組成物Aを得た。
水分散性乾燥組成物Aの結晶化度は68%以上、損失正接は0.63であり、「水中で安定に懸濁する成分」の含有量は19質量%だった。それを高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜20μm、短径が10〜150nm、長径/短径比が20〜300のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
【0047】
(2)水分散性セルロースBの調整:市販麦わらパルプ(平均重合度=930、α−セルロース含有量=68質量%)を、6×12mm角の矩形に裁断し、4質量%となるように水を加え、家庭用ミキサーで5分間撹拌した。これを高速回転型ホモジナイザー(ヤマト科学、「ULTRA−DISPERSER」)で1時間分散した。
この水分散液を砥石回転型粉砕機(グラインダー回転数:1800rpm)で処理した。処理回数は2回で、グラインダークリアランスを60→40μmと変えて処理した。
次いで得られた水分散液を水で希釈して2質量%にし、高圧ホモジナイザー(処理圧力:175MPa)で8パスし、水分散性セルロースBスラリーを得た。結晶化度は74%だった。光学顕微鏡で観察したところ、長径が10〜700μm、短径が1〜30μm、長径/短径比が10〜150の微細な繊維状のセルロースが観察された。損失正接は0.43だった。「水中で安定に懸濁する成分」の含有量は89質量%だった。それを高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜20μm、短径が6〜300nm、長径/短径比が30〜350のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
【0048】
(3)水分散性乾燥組成物Cの調整:市販バガスパルプ(平均重合度=1320、α−セルロース含有量=77%)を、6×16mm角の矩形に裁断し、固形分濃度が77質量%になるように水を加えた。これを、水とパルプチップができるだけ分離しないよう注意して、カッターミル(カッティングヘッド/水平刃間隙:2.03mm、インペラー回転数:3600rpm)に1回通した。セルロース濃度が2質量%、そしてカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの濃度が0.118質量%になるようにカッターミル処理品とカルボキシメチルセルロース・ナトリウム(1質量%水溶液粘度:約3400mPa・s)と水を量り取り、繊維の絡みがなくなるまで撹拌した。
得られた水分散液をそのまま、高圧ホモジナイザー(処理圧力90MPa)で9パスし、水分散性セルロースCスラリーを得た。光学顕微鏡および中分解能SEMで観察したところ、長径が10〜500μm、短径が1〜25μm、長径/短径比が5〜190の微細な繊維状のセルロースが観察された。損失正接は0.32だった。「水中で安定に懸濁する成分」は99質量%だった。「水中で安定に懸濁する成分」を高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜20μm、短径が10〜400nm、長径/短径比が20〜300のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
水分散性セルロースC:カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:デキストリン:大豆油=63:15:21.5:0.5(質量部)となるように、水分散性セルロースCスラリーにカルボキシメチルセルロース・ナトリウム(1質量%水溶液粘度:約3400mPa・s)とデキストリン(DE:約28)を添加し、15kgを攪拌型ホモジナイザー(特殊機化工業株式会社製、「T.K.AUTO HOMO MIXER」)で、8000rpmで10分間撹拌・混合した後、前述の高圧ホモジナイザーで20MPa、1パス処理し、水分散性セルロースC’スラリーを得た。
【0049】
水分散性セルロースC’スラリーをドラムドライヤーにて乾燥し、スクレーパーで掻き取り、得られたものをカッターミル(不二パウダル株式会社製)で、目開き2mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕し、さらに衝撃式粉砕機で粉砕したものを目開き425μmの標準ふるいで篩過することによって、水分散性乾燥組成物Cを得た。水分散性セルロース組成物Cの結晶化度は58%以上、損失正接は0.58、「水中で安定に懸濁する成分」は99質量%だった。「水中で安定に懸濁する成分」を高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜12μm、短径が10〜330nm、長径/短径比が20〜220のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
(4)グアーガム(ユニテックフーズ株式会社製)
(5)ペクチン(CPケルコ社製、LMペクチン)
(6)グルコマンナン(清水化学株式会社製)
(7)キサンタンガム(大日本製薬株式会社製)
(8)タマリンドシードガム(大日本製薬株式会社製)
【0050】
[実施例1]
増粘安定剤は、水分散性乾燥組成物A:グアーガムを6:4の比率で含有するものを選択した。まず固形分が1質量%の水分散液となるように上記のサンプルと水を量り取り、「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)を使用して、25℃、8000rpmで10分間分散した。さらにこの1質量%のサンプル水分散液:水を4:6の比率で混合し、さらに5分間分散して、0.4質量%サンプル水溶液を調製し、3つのビーカーに充填した。1つのビーカーに充填された0.4質量%サンプル水分散液を、25℃の雰囲気中に24時間静置後、傾けたところ、流動化してビーカーからこぼれ落ち、ゲル化しておらず、液切れ性も良好であった。
残り2つのビーカーに充填された0.4質量%サンプル水溶液を、25℃の雰囲気中に3時間静置した。静置状態で回転粘度計(B形粘度計、東機産業株式会社製、「TV−10形」)をセットし、60秒後の粘度を読みとった。この時、ローターおよびアダプターは粘度によって適宜変更した。
ローター回転数3rpmで、一方のビーカーに充填された0.4質量%サンプル水分散液の粘度(η3α1)を測定したところ、2600mPa・sであった。さらに回転数100rpmで、もう一方のビーカーに充填された0.4質量%サンプル水分散液の粘度(η100α1)を測定したところ、201mPa・sであった。この時の0.4質量%サンプル水分散液の構造粘性指標(TIα1)は、「TIα1=(η3α1)/(η100α1)=13」であった。
同様の方法で、ローター回転数3rpmにおける、0.62質量%グアーガム水分散液の粘度(η3β1)を測定したところ、2550mPa・sであり、「η3α1/η3β1=1.0」であった。また回転数100rpmにおける、0.62質量%グアーガム水分散液の粘度(η100β1)は、593mPa・sであった。この時の0.62質量%グアーガム水溶液の構造粘性指標(TIβ1)は、「TIβ1=(η3β1)/(η100β1)=4」であった。
上記より、構造粘性指標(TIα1)と構造粘性指標(TIβ1)の関係は、「構造粘性指標(TIα1)>構造粘性指標(TIβ1)」となり、この増粘安定剤は構造粘性形成作用を有すると判断した。
【0051】
[実施例2]
増粘安定剤は、水分散性セルロースBスラリー(2質量%濃度)を用いて、水分散性セルロースB:グアーガムを6:4の質量比で含有するものを選択した。
0.46質量%増粘剤水分散液を、実施例1と同様の方法で調製し、評価した。この0.46質量%増粘安定剤水分散液は、流動性を維持し、ゲル化しておらず、液切れ性も良好であった。
さらに0.46質量%増粘安定剤水分散液の、回転数3rpmにおける粘度(η3α2)は2520mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100α2)は205mPa・sであった。この時の0.46質量%増粘安定剤水分散液の構造粘性指標(TIα2)は、「TIα2=(η3α2)/(η100α2)=12」であった。
実施例1と同様の方法で得た0.62質量%グアーガム水分散液の粘度(η3β2)を測定したところ、2550mPa・sであり、「η3α2/η3β2=1.0」であった。また回転数100rpmにおける、0.62質量%グアーガム水分散液の粘度(η100β2)は、593mPa・sであった。この時の0.62質量%グアーガム水溶液の構造粘性指標(TIβ2)は、「TIβ2=(η3β2)/(η100β2)=4」であった。
上記より、「構造粘性指標(TIα2)>構造粘性指標(TIβ2)」となり、この増粘安定剤は構造粘性形成作用を有すると判断した。
【0052】
[実施例3]
増粘安定剤は、水分散性乾燥組成物C:グアーガムを8:2の質量比で含有するものを選択した。
0.4質量%増粘安定剤水分散液を、実施例1と同様の方法で調製し、評価した。この0.4質量%増粘安定剤水分散液は、流動性を維持し、ゲル化しておらず、液切れ性も良好であった。
さらに0.4質量%増粘安定剤水分散液の、回転数3rpmにおける粘度(η3α3)は2690mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100α3)は259mPa・sであった。この時の0.4質量%増粘安定剤水分散液の構造粘性指標(TIα3)は、「TIα3=(η3α3)/(η100α3)=10」であった。
実施例1と同様の方法で得た0.62質量%グアーガム水分散液の粘度(η3β3)を測定したところ、2550mPa・sであり、「η3α3/η3β3=1.1」であった。また回転数100rpmにおける、0.62質量%グアーガム水分散液の粘度(η100β3)は、593mPa・sであった。この時の0.62質量%グアーガム水溶液の構造粘性指標(TIβ3)は、「TIβ3=(η3β3)/(η100β3)=4」であった。
上記より、「構造粘性指標(TIα3)>構造粘性指標(TIβ3)」となり、この増粘安定剤は構造粘性形成作用を有すると判断した。
【0053】
[実施例4]
増粘安定剤は、水分散性乾燥組成物C:グアーガムを6:4の質量比で含有するものを選択した。
0.33質量%増粘安定剤水分散液を、実施例1と同様の方法で調製し、評価した。この0.33質量%増粘安定剤水分散液は、流動性を維持し、ゲル化しておらず、液切れ性も良好であった。
さらに0.33質量%増粘安定剤水分散液の、回転数3rpmにおける粘度(η3α4)は2710mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100α4)は204mPa・sであった。この時の0.33質量%増粘安定剤水分散液の構造粘性指標(TIα4)は、「TIα4=(η3α4)/(η100α4)=13」であった。
実施例1と同様の方法で得た0.62質量%グアーガム水分散液の粘度(η3β4)を測定したところ、2550mPa・sであり、「η3α4/η3β4=1.1」であった。また回転数100rpmにおける、0.62質量%グアーガム水分散液の粘度(η100β4)は、593mPa・sであった。この時の0.62質量%グアーガム水溶液の構造粘性指標(TIβ4)は、「TIβ4=(η3β4)/(η100β4)=4」であった。
上記より、「構造粘性指標(TIα4)>構造粘性指標(TIβ4)」となり、この増粘安定剤は構造粘性形成作用を有すると判断した。
【0054】
[実施例5]
増粘安定剤は、水分散性乾燥組成物C:グアーガムを4:6の質量比で含有するものを選択した。
0.5質量%増粘安定剤水分散液を、実施例1と同様の方法で調製し、評価した。この0.5質量%増粘安定剤水分散液は、流動性を維持し、ゲル化しておらず、液切れ性も良好であった。
さらに0.5質量%増粘安定剤水分散液の、回転数3rpmにおける粘度(η3α5)は2580mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100α5)は232mPa・sであった。この時の0.5質量%増粘安定剤水分散液の構造粘性指標(TIα5)は、「TIα5=(η3α5)/(η100α5)=11」であった。
実施例1と同様の方法で得た0.62質量%グアーガム水分散液の粘度(η3β5)を測定したところ、2550mPa・sであり、「η3α5/η3β5=1.0」であった。また回転数100rpmにおける、0.62質量%グアーガム水分散液の粘度(η100β5)は、593mPa・sであった。この時の0.62質量%グアーガム水溶液の構造粘性指標(TIβ5)は、「TIβ5=(η3β5)/(η100β5)=4」であった。
上記より、「構造粘性指標(TIα5)>構造粘性指標(TIβ5)」となり、この増粘安定剤は構造粘性形成作用を有すると判断した。
【0055】
[実施例6]
増粘安定剤は、水分散性乾燥組成物C:グルコマンナンを7.5:2.5の質量比で含有するものを選択した。
0.4質量%増粘安定剤水分散液を、実施例1と同様の方法で調製し、評価した。この0.4質量%増粘安定剤水分散液は、流動性を維持し、ゲル化しておらず、液切れ性も良好であった。
さらに0.4質量%増粘安定剤水分散液の、回転数3rpmにおける粘度(η3α6)は2780mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100α6)は330mPa・sであった。この時の0.4質量%増粘安定剤水分散液の構造粘性指標(TIα6)は、「TIα6=(η3α6)/(η100α6)=8」であった。
実施例1と同様の方法で得た0.67質量%グルコマンナン水分散液の粘度(η3β6)を測定したところ、2910mPa・sであり、「η3α6/η3β6=1.0」であった。また回転数100rpmにおける、0.67質量%グルコマンナン水分散液の粘度(η100β6)は、1312mPa・sであった。この時の0.67質量%グルコマンナン水溶液の構造粘性指標(TIβ6)は、「TIβ6=(η3β6)/(η100β6)=2」であった。
上記より、「構造粘性指標(TIα6)>構造粘性指標(TIβ6)」となり、この増粘安定剤は構造粘性形成作用を有すると判断した。
【0056】
[実施例7]
増粘安定剤は、水分散性乾燥組成物C:グルコマンナンを6:4の質量比で含有するものを選択した。
0.35質量%増粘安定剤水分散液を、実施例1と同様の方法で調製し、評価した。この0.35質量%増粘安定剤水分散液は、流動性を維持し、ゲル化しておらず、液切れ性も良好であった。
さらに0.35質量%増粘安定剤水分散液の、回転数3rpmにおける粘度(η3α7)は2890mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100α7)は243mPa・sであった。この時の0.35質量%増粘安定剤水分散液の構造粘性指標(TIα7)は、「TIα7=(η3α7)/(η100α7)=12」であった。
実施例1と同様の方法で得た0.67質量%グルコマンナン水分散液の粘度(η3β7)を測定したところ、2910mPa・sであり、「η3α7/η3β7=1.0」であった。また回転数100rpmにおける、0.67質量%グルコマンナン水分散液の粘度(η100β7)は、1312mPa・sであった。この時の0.67質量%グルコマンナン水溶液の構造粘性指標(TIβ7)は、「TIβ7=(η3β7)/(η100β7)=2」であった。
上記より、「構造粘性指標(TIα7)>構造粘性指標(TIβ7)」となり、この増粘安定剤は構造粘性形成作用を有すると判断した。
【0057】
[実施例8]
増粘安定剤は、水分散性乾燥組成物C:ペクチンを8:2の質量比で含有するものを選択した。
0.5質量%増粘安定剤水分散液を、80℃の温度で実施例1と同様の方法で分散し、さらに増粘安定剤1gあたり100mgの塩化カルシウムを加えて2分間分散し、実施例1と同様の方法で静置した後に、評価した。この0.5質量%増粘安定剤水分散液は、流動性を維持し、ゲル化しておらず、液切れ性も良好であった。
さらに0.5質量%増粘安定剤水分散液の、回転数3rpmにおける粘度(η3α8)は2760mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100α8)は229mPa・sであった。この時の0.5質量%増粘安定剤水分散液の構造粘性指標(TIα8)は、「TIα8=(η3α8)/(η100α8)=12」であった。
上記増粘安定剤水分散液と同様の方法で分散し、さらにペクチン1gあたり100mgの塩化カルシウムを加えて2分間分散し、実施例1と同様の方法で静置した後に得た、0.78質量%ペクチン水分散液の粘度(η3β8)を測定したところ、2820mPa・sであり、「η3α8/η3β8=1.0」であった。また回転数100rpmにおける、0.78質量%ペクチン水分散液の粘度(η100β8)は、317mPa・sであった。この時の0.78質量%ペクチン水溶液の構造粘性指標(TIβ8)は、「TIβ8=(η3β8)/(η100β8)=9」であった。
上記より、「構造粘性指標(TIα8)>構造粘性指標(TIβ8)」となり、この増粘安定剤は構造粘性形成作用を有すると判断した。
【0058】
〔実施例9〕
水分散性乾燥組成物Cとグアーガムを7:3の質量比で粉末混合した増粘安定剤(以下増粘安定剤aと言う)を用いて、以下の手順でフルーツソースAを調製し、評価を行った。
ビーカーに60℃の水を入れ、「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)で攪拌しながら、60℃の40質量%果糖ブドウ糖液糖(王子コーンスターチ株式会社製、「F−55」)と、0.6質量%の上記増粘安定剤aと、5質量%のグラニュー糖(第一糖業株式会社製)を添加して、合計100質量%となるように調合し、8000rpmで10分間分散させた。
さらに分散装置をプロペラ攪拌翼に交換し、80℃で加熱殺菌した40質量%イチゴピューレ(冷凍イチゴを解凍し、裏ごししたもの)を加え、400rpmで攪拌した。液温が80℃に達してから2分間経過するまで攪拌を続け、殺菌処理して、これをフルーツソースAとした。
フルーツソースAを3つのビーカーに充填し、1つのビーカーを25℃で24時間静置した後、ビーカーを傾けたところ、流動化してこぼれ落ち、ゲル化しておらず、液切れ性も良好であった。
残り2つのビーカーに充填されたフルーツソースAを用いて測定した、25℃で3時間静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3α9)は12700mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100α9)は1030mPa・sであった。この時のフルーツソースAの構造粘性指標(TIα9)は、「TIα9=(η3α9)/(η100α9)=12」であり、pHは3.3であった。
フルーツソースAを1gずつ20人のパネラーに与えたところ、糊状感を感じた人の割合は5%と非常に少なかった。
【0059】
〔実施例10〕
実施例9のフルーツソースAと下記攪拌ヨーグルトを使用して、以下の手順ではっ酵乳飲料Bを調製し、評価した。
クリーンベンチ内で、実施例9のフルーツソースAを34質量%、下記攪拌ヨーグルト50質量%、水16質量%を、プロペラ攪拌翼を使用して400rpmで、2分間混合した。この溶液を、高圧ホモジナイザーを使用して、10MPaの処理圧力で均質化し、容器に充填したものを、はっ酵乳飲料Bとした。この時のはっ酵乳Bにおける増粘安定剤aの含有量は、0.2質量%であった。
はっ酵乳飲料Bを3つのビーカーに充填し、1つのビーカーを5℃で23時間静置して、さらに25℃で1時間静置した。このビーカーを傾けたところ、はっ酵乳飲料Bは流動化してこぼれ落ち、ゲル化しておらず、液切れ性も良好であった。
残り2つのビーカーに充填されたはっ酵乳飲料Bを用いて測定した、25℃で3時間静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3α10)は4600mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100α10)は235mPa・sであった。この時のはっ酵乳飲料Bの構造粘性指標(TIα10)は、「TIα10=(η3α10)/(η100α10)=20」であり、pHは3.9であった。
実施例1と同様の方法で、はっ酵乳飲料Bを与えたところ、糊状感を感じた人の割合は0%であった。
ここで使用する攪拌ヨーグルトの製造方法は、以下の通りである。
21.7質量%の水と、75質量%の牛乳(南日本酪農協同株式会社製、乳脂肪分3.5%以上、無脂乳固形分8.3%)をステンレスビーカーに注ぎ、プロペラ攪拌翼を使用して、25℃で200rpmで攪拌しながら、3.3質量%の脱脂粉乳(雪印乳業株式会社製)を添加し、10分間攪拌を続けた。
その溶液を、高圧ホモジナイザーを使用し、15MPaの処理圧力で均質化し、プロペラ攪拌翼を用いて、80℃、200rpmで更に30分間攪拌し、殺菌処理した。更にクリーンベンチ内で、200rpmで攪拌しながら、20分で30℃まで冷却した。この溶液に0.01%質量%水溶液としたスターター(ダニスコ カルター社製、「MSK−Mix AB N 1−45 Visbybac DIP」)を、外割で0.32質量%加え、スパチュラで攪拌し、発酵用容器に充填した。これをインキュベーターに移し、42℃で12時間発酵させた。発酵後5℃の冷蔵庫に移し、3日間経過したものを攪拌用ヨーグルト(無脂乳固形分9.4%以上)とした。
【0060】
〔実施例11〕
水分散性乾燥組成物C:グアーガム:タマリンドシードガム=4:5:1の質量比で粉末混合した増粘安定剤(以下増粘安定剤bと言う)を用いて、以下の手順で焼き肉のたれCを調製し、評価を行った。
60℃の水に、「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)で攪拌しながら、60℃の果糖ブドウ糖液糖(王子コーンスターチ株式会社製、「F−55」)を20質量%と、0.4質量%の上記増粘安定剤bと、グラニュー糖(第一糖業株式会社製)5質量%を添加し、8000rpmで10分間分散させ、さらに分散装置をプロペラ攪拌翼に交換し、しょうゆ30質量%(キッコーマン株式会社製、食塩濃度16%)、食塩5質量%(財団法人塩事業センター製)、旭味1質量%(日本たばこ産業株式会社製)、りんご酢5質量%(株式会社ミツカン製、酸度5.0%)、おろしたまねぎ1質量%、おろしにんにく1質量%、りんご果汁2質量%(アイク株式会社製、果汁100%)を加えて、合計100質量%となるように調合する。さらに400rpmで攪拌し、液温が80℃に達してから3分間経過するまで攪拌を続け、殺菌処理したものを、焼き肉のたれDとした。この焼き肉のたれC中に含まれる増粘安定剤bの含有量は0.4質量%であり、焼き肉のたれCの食塩濃度は10%であった。
焼き肉のたれCを3つのビーカーに充填し、1つのビーカーを25℃で24時間静置した後、ビーカーを傾けたところ、流動化してビーカーからこぼれ落ち、ゲル化しておらず、液切れ性も良好であった。
残り2つのビーカーに充填された焼き肉のたれCを用いて測定した、25℃で3時間静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3α11)は870mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100α11)は85mPa・sであった。この時、焼き肉のたれCの構造粘性指標(TIα11)は、「TIα11=(η3α11)/(η100α11)=10」であり、pHは4.2であった。
実施例1と同様の方法で、焼き肉のたれCを与えたところ、糊状感を感じた人の割合は10%と少なかった。
【0061】
〔実施例12〕
水分散性乾燥組成物C:グアーガム:キサンタンガム=6:3:1の質量比で粉末混合した増粘安定剤(以下増粘安定剤cと言う)を用いて、以下の手順でコーンスープDを調整し、評価を行った。
80℃の水を「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)で攪拌しながら、0.3質量%の増粘安定剤cを添加し、80℃、7000rpmで5分間分散し、次いで11質量%の浮き実を除去した市販乾燥スープ(株式会社ポッカコーポレーション製、多糖類を含有しないもの)を添加して、合計が100質量%となるように調整した。さらにこの液状組成物を5分間分散し、コーンスープDとした。この時の食塩濃度は0.73質量%となった。
コーンスープDを3つのビーカーに充填し、1つのビーカーを25℃で24時間静置後、ビーカーを傾けたところ、流動化してビーカーからこぼれ落ち、ゲル化しておらず、液切れ性も良好であった。
残り2つのビーカーに充填されたコーンスープDを用いて測定した、25℃で3時間静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3α12)は6200mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100α12)は450mPa・sであった。この時、コーンスープDの構造粘性指標(TIα12)は、「TIα12=(η3α12)/(η100α12)=14」であり、pHは6.8であった。
実施例1と同様の方法で、コーンスープDを与えたところ、糊状感を感じた人の割合は0%であった。
【0062】
〔実施例13〕
実施例9の増粘安定剤aを用いて、以下の手順で化粧水Eを調整し、評価を行った。
精製水(日本薬局方)を「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)で攪拌しながら、0.4質量%の増粘安定剤aを添加し、8000rpmで10分間分散し、次いで10質量%のエタノール(日本薬局方)と、10質量%のプロピレングリコール(日本薬局方)と、0.02質量%のクエン酸(日本薬局方)と、0.1質量%のアスコルビン酸(日本薬局方)を添加して合計が100質量%となるように調整した。さらにこの液状組成物をプロペラ攪拌翼で200rpmで5分間混合し、化粧水Eとした。
化粧水Eを3つのビーカーに充填し、1つののビーカーを25℃で24時間静置後、ビーカーを傾けたところ、流動化してビーカーからこぼれ落ち、ゲル化しておらず、液切れ性も良好であった。
残り2つのビーカーに充填された化粧水Eを用いて測定した、25℃で3時間静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3α13)は1920mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100α13)は185mPa・sであった。この時、化粧水Eの構造粘性指標(TIα13)は、「TIα13=(η3α13)/(η100α13)=10」であった。
化粧水Eを1gずつ20人のパネラーに与え、手の甲に塗布して触感を評価してもらったところ、べたつきを感じた人の割合は10%であった。
【0063】
〔比較例1〕
実施例1〜5の増粘安定剤水分散液の代わりに、グアーガムを使用して実施例1と同様の方法で調整した、0.62質量%グアーガム水溶液の液切れ性を評価した。ビーカーを傾けて戻した際に、0.62質量%グアーガム水溶液がビーカー開口部に付着し、少し糸引きが見られ、液切れ性が不良であった。
【0064】
〔比較例2〕
実施例6〜7の増粘安定剤水分散液の代わりに、グルコマンナンを使用して実施例6と同様の方法で調整した、0.67質量%グルコマンナン水溶液の液切れ性を評価した。ビーカーを傾けて戻した際に、0.67質量%グルコマンナン水溶液がビーカー開口部とビーカー外側面に付着し、液切れ性が不良であった。
【0065】
〔比較例3〕
比較例8の増粘安定剤水溶液の代わりに、ペクチンを使用して実施例8と同様の方法で調整した、0.78%ペクチン水溶液の液切れ性を評価した。ビーカーを傾けて戻した際に、0.78質量ペクチン水溶液がビーカー開口部に付着し、液切れ性が不良であった。また部分的にゲル化を起こしており、滑らかに流動しなかった。
【0066】
〔比較例4〕
実施例9の、0.6質量%の増粘安定剤aの代わりに、0.82質量%のグアーガムを配合してフルーツソースFを調製し、評価を行った。
フルーツソースFを3つのビーカーに充填し、1つのビーカーを実施例9と同じ条件で静置した後、ビーカーを傾けて戻したところ、フルーツソースFがビーカー開口部に付着して糸を引き、液切れ性が不良であった。
残り2つのビーカーに充填されたフルーツソースFを用いて測定した、実施例9と同じ条件で静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3β9)は11800mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100β9)は1950mPa・sであった。この時のフルーツソースFの構造粘性指標(TIβ9)は、「TIβ9=(η3β9)/(η100β9)=6」であり、pHは3.3であった。
実施例9のフルーツソースAを用いて測定した、25℃で3時間静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3α9)は12700mPa・sであり、「η3α9/η3β9=1.1」が成立する。
フルーツソースFを1gずつ20人のパネラーに与えたところ、糊状感を感じた人の割合は65%と高かった。
【0067】
〔比較例5〕
実施例10のフルーツソースAの代わりに、比較例4のフルーツソースFを配合してはっ酵乳飲料Gを調製し、評価を行った。はっ酵乳飲料Gにおけるグアーガムの含有量は、0.28質量%であった。
はっ酵乳飲料Gを3つのビーカーに充填し、1つのビーカーを実施例10と同じ条件で静置した後、ビーカーを傾けて戻したところ、はっ酵乳飲料Gがビーカー開口部に付着して、液切れ性が不良であった。
残り2つのビーカーに充填されたはっ酵乳飲料Gを用いて測定した、実施例10と同じ条件で静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3β10)は4020mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100β10)は353mPa・sであった。この時のはっ酵乳飲料Gの構造粘性指標(TIβ10)は、「TIβ10=(η3β10)/(η100β10)=11」であり、pHは3.9であった。
実施例10のはっ酵素乳飲料Bを用いて測定した、25℃で3時間静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3α10)は4600mPa・sであり、「η3α10/η3β10=1.1」が成立する。
はっ酵乳飲料Gを1gずつ20人のパネラーに与えたところ、糊状感を感じた人の割合は40%であり、実施例10よりも高かった。
【0068】
〔比較例6〕
実施例11の、0.4質量%の増粘安定剤bの代わりに、「グアーガム:タマリンドシードガム=5:1」で混合した多糖類を0.63質量%添加して、焼き肉のたれHを調製し、評価を行った。
焼き肉のたれHを3つのビーカーに充填し、1つのビーカーを実施例11と同じ条件で静置した後、ビーカーを傾けて戻したところ、焼き肉のたれHは糸を引き、液切れ性が不良であった。
残り2つのビーカーに充填された焼き肉のたれHを用いて測定した、実施例11と同じ条件で静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3β11)は790mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100β11)は128mPa・sであった。この時の焼き肉のたれHの構造粘性指標(TIβ11)は、「TIβ11=(η3β11)/(η100β11)=6」であり、pHは4.2であった。
実施例11の焼き肉のたれCを用いて測定した、25℃で3時間静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3α11)は870mPa・sであり、「η3α11/η3β11=1.1」が成立する。
焼き肉のたれHを1gずつ20人のパネラーに与えたところ、糊状感を感じた人の割合は45%であり、実施例11よりも高かった。
【0069】
〔比較例7〕
実施例12の、0.3質量%の増粘安定剤cの代わりに、「グアーガム:キサンタンガム=3:1」で混合した多糖類を0.4質量%添加して、コーンスープIを調製し、評価を行った。
コーンスープIを3つのビーカーに充填し、1つのビーカーを実施例12と同じ条件で静置した後、ビーカーを傾けて戻したところ、ビーカー開口部に付着し、液切れ性が不良であった。
残り2つのビーカーに充填されたコーンスープIを用いて測定した、実施例12と同じ条件で静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3β12)は5850mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100β12)は720mPa・sであった。この時のコーンスープIの構造粘性指標(TIβ12)は、「TIβ12=(η3β12)/(η100β12)=8」であり、pHは6.8であった。
実施例12のコーンスープDを用いて測定した、25℃で3時間静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3α12)は6200mPa・sであり、「η3α12/η3β12=1.1」が成立する。
コーンスープIを1gずつ20人のパネラーに与えたところ、糊状感を感じた人の割合は60%であり、実施例12よりも高かった。
【0070】
〔比較例8〕
実施例13の、0.4質量%増粘安定剤aの代わりに、グアーガムを0.68質量%添加して、化粧水Jを調製し、評価を行った。
化粧水Jを3つのビーカーに充填し、1つのビーカーを実施例13と同じ条件で静置した後、ビーカーを傾けて戻したところ、ビーカー開口部に付着し、液切れ性が不良であった。
残り2つのビーカーに充填された化粧水Jを用いて測定した、実施例13と同じ条件で静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3β13)は2010mPa・sであり、回転数100rpmにおける粘度(η100β13)は478mPa・sであった。この時の化粧水Jの構造粘性指標(TIβ13)は、「TIβ13=(η3β13)/(η100β13)=4」であった。
実施例13の化粧水Eを用いて測定した、25℃で3時間静置した後の回転数3rpmにおける粘度(η3α13)は1920mPa・sであり、「η3α13/η3β13=1.0」が成立する。
化粧水Jを1gずつ20人のパネラーに与え、手の甲に塗布して触感を評価してもらったところ、べたつきを感じた人の割合は70%であった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の微細な繊維状セルロースである水分散性セルロースと、少なくとも1種類の多糖類を含有する増粘安定剤は、安定性は保ちつつ、液切れ性が良く、糊状感やべたつきの少ない粘性を付与することが可能である。この性質は、食品分野のみならず、医薬品、化粧品等の用途においても使用が可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物細胞壁を原料とする、微細な繊維状のセルロースであって、水中で安定に懸濁する成分(長径:0.5〜30μm、短径:2〜600nm、長径/短径比:20〜400)を10質量%以上含有し、かつ、0.5質量%水分散液とした時の損失正接が1未満であることを特徴とする水分散性セルロースと、ガラクトマンナン、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、寒天、大豆水溶性多糖類、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、カラヤガム、から選択される少なくとも1種の多糖類を含有する組成物であって、水分散性セルロース:多糖類=1:9〜9:1の質量比で含有し、構造粘性形成作用を有することを特徴とする増粘安定剤。
【請求項2】
請求項1記載の水分散性セルロースを50〜95質量%と、水溶性高分子および/または親水性物質を5〜50質量%含む水分散性乾燥組成物と、請求項1記載の多糖類から選択される少なくとも1種の多糖類を含有する組成物であって、水分散性乾燥組成物:多糖類=1:9〜9:1の質量比で含有することを特徴とする増粘安定剤。
【請求項3】
水中で安定に懸濁する成分を30質量%以上含有する請求項1記載の水分散性セルロースを50〜95質量%と、水溶性高分子1〜49質量%と、親水性物質1〜49質量%からなる水分散性乾燥組成物と、請求項1記載の多糖類から選択される少なくとも1種の多糖類を含有する組成物であって、水分散性乾燥組成物:多糖類=1:9〜9:1の質量比で含有することを特徴とする増粘安定剤。
【請求項4】
請求項1〜3記載の多糖類がガラクトマンナン、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ペクチンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1〜3記載の増粘安定剤。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の増粘安定剤を添加することにより配合された液状組成物。


【公開番号】特開2008−50376(P2008−50376A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90467(P2005−90467)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】