説明

水分検知センサおよび水分検知装置

【課題】特別な回路構成を追加することなく、回路内に液体を取り込むこともなく、簡単な構成の水分検出センサを提供すること。
【解決手段】防水もしくは防滴処理がされた無線ICタグ11を用いて、電磁波が透過可能かつ吸水性を有する電磁波透過吸水物質で前記無線ICタグの全部または一部を覆うあるいは接するようにして、被覆手段12が水分を含んでいない時にだけデータ読み出しが可能となり、一般的な無線ICタグと電磁波透過吸水物質だけの極めて簡単な構成で水分の有無を検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ICタグを用いた水分検知センサおよび水分検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線ICタグは電池を内蔵しないが、読取手段が発生させる電磁波領域内に入ると電磁波により励起され、無線ICタグに電源が供給され、さらに読取手段が発生する電磁波にはコマンドが含まれているので、そのコマンドを無線ICタグが受け取ると、個別IDを含むデータを読取手段に返答するという動作原理である。簡単な構成ながら電波で情報を発信することが出来るため、工場や流通関連での在庫管理をはじめとしてあらゆる分野で活用されており、既に無線ICタグと液体センサを組み合わせたものも存在し、介護分野ではおむつの状態検出が行われており、特許文献1に示すように小型かつ安価で再利用可能な液体検知センサを提供することを目的として無線タグと水分検知センサから構成されたものがある。
【特許文献1】特開2004−085277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この液体検査センサでは一般的に使用されている無線ICタグ以外の特殊な回路構成が加えられており、しかも測定しようとする液体を回路構成内に取り込む構造になっているので、食料品や医薬品などを対象にすることは、化学面、物理面、衛生面、心理面などあらゆる面から問題が多く、こういった物に使用することは必ずしも適していなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、前記従来の課題を解決するために、本発明の水分検知センサおよび水分検知装置は、防水もしくは防滴処理がされた無線ICタグを用いて、電磁波が透過可能かつ吸水性を有する電磁波透過吸水物質で前記無線ICタグの全部または一部を覆うあるいは接するようにして、超短波あるいはマイクロ波領域の周波数帯を使用している。これは被覆手段が水分を含んでいない時にだけデータ読み出しが可能となり、回路構成内に液体を取り込むこともなく、水分検出のためのセンサを別途追加する必要もなく、一般的な無線ICタグと電磁波透過吸水物質だけの極めて簡単な構成で水分の有無を検出できる。
【発明の効果】
【0005】
本発明の水分検知センサおよび水分検知装置は、回路構成の内部に液体を取り込むことなく、被覆手段が水分を含んでいない時にだけ電波で情報を発信することが出来るという超短波あるいはマイクロ波領域の周波数帯を使用し、電池を必要としないパッシブ型の無線ICタグ自身の特性を利用しているので、一般的な無線ICタブと電磁波透過吸水物質だけの簡単な構成で水分検出を行い、コスト的に有利な水分検出センサ、もしくは、水分検知装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
第1の発明は、無線ICタグと、前記無線ICタグの全部または一部を覆うあるいは接するように設けられ、電磁波が透過可能かつ吸水性を有する被覆手段から構成された水分検知センサであり、前記無線ICタグは超短波あるいはマイクロ波領域の周波数帯を使用し電池を必要としないパッシブ型であって前記無線ICタグの持つ水分の影響を受けやすいという特性を持つので、被覆手段が水分を含まない時にだけ、前記無線ICタグからデータ読み出しを出来るので、乾燥状態になったこと、あるいは、乾燥状態ではなくなったことが検知出来る。
【0007】
第2の発明は、無線ICタグと、前記無線ICタグの全部または一部を覆うあるいは接するように設けられ、電磁波が透過可能かつ吸水性を有する被覆手段と、前記無線ICタグからデータを読み取るデータ読取手段と、前記データ読取手段よりデータを受信する処理手段とから構成された水分検知装置であり、被測定物に直接接触することなく前記データ読取手段で被覆手段に水が含まれているかどうか検知でき、その情報は前記処理手段を通じて報知できる。
【0008】
第3の発明は、2つ以上の無線ICタグと、前記2つ以上の無線ICタグの全部または一部を覆うあるいは接するように設けられ、電磁波が透過可能かつ吸水性を有する被覆手段から構成された水分検知センサであり、前記2つ以上の無線ICタグのうちで直近に水分がないものだけからデータ読み出しが出来るので、被覆手段のどの部分に水分が含まれているのか、どの部分が乾燥しているのか、どの程度の割合で水分が含まれているのか、乾燥しているのかどうかを検知できる。
【0009】
第4の発明は、2つ以上の無線ICタグと、前記2つ以上の無線ICタグの全部または一部を覆うあるいは接するように設けられ、電磁波が透過可能かつ吸水性を有する被覆手段と、前記2つ以上の無線ICタグからデータを読み取るデータ読取手段と、前記データ読取手段よりデータを受信する処理手段とから構成された水分検知装置であり、被測定物に直接接触することなく前記データ読取手段で、前記2つ以上の無線ICタグのうちで直近に水分がないものだけからデータ読み出しが出来るので、被覆手段のどの部分に水分が含まれているのか、どの部分が乾燥しているのか、どの程度の割合で水分が含まれているのか、乾燥しているのかどうかを検知でき、その情報は前記処理手段を通じて報知できる。
【0010】
第5の発明は、2.45GHz付近の周波数帯を用いる無線ICタグを使用したことを特徴とする請求項1または3記載の水分検知センサであり、2.45GHz付近の周波数帯を用いる無線ICタグを使用したので、周波数帯域の低い無線ICタグよりも更に水分の影響を受けやすく、まわりに水分が多い時にはデータは読み取れなくなるので確実な水分検出が可能となる。
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて一実施形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
図1は第1、および第2の発明の水分検知センサ、および、水分検知システムの構成一例を示す図であり、水分検知センサは無線ICタグ11の全部または一部を覆うあるいは接するように設けられた電磁波が透過可能かつ吸水性を有する被覆手段12で構成されている。無線ICタグ11は電池を内蔵しないが、被覆手段12が乾いている時には、読取手段13が発生させる電磁波領域内に入ると、電磁波により励起され、無線ICタグ11に電源が供給される。
【0013】
読取手段13が発生する電磁波にはコマンドが含まれているので、そのコマンドを無線ICタグ11が受け取ると、無線ICタグ11は応答信号を送信するので、個別IDを含むデータを読取手段13が読み取ることが出来る。一方、被覆手段12が濡れている時には無線ICタグ11は電磁波領域内であっても電磁波により励起されないのでデータを読取手段13は無線ICタグ11よりデータを読み出すことが出来ない。
【0014】
つまり、被覆手段12が乾いている時だけデータを読み出せることになる。一例として、患者のおむつの中に水分検知センサを設置、患者の近くの電磁波領域内に読取手段13を設置、看護人詰め所に処理手段14を設置しておくと、患者のおむつが濡れた時点で水分検知センサの無線ICタグ11からデータが読み出せなくなるので、濡れたことを看護人に報知できる。すなわち、看護人詰め所にいながらにして患者のおむつの状態を検知することが出来る。一定時間ごとにおむつの状態を確認する手間が著しく省ける。
【0015】
また、物干しで乾燥させようとするGパンのポケットに水分検知センサを設置、物干し竿の近くの電磁波領域内に読取手段13を設置、リビングルームに処理手段14を設置しておくと、Gパンが乾燥した時点で水分検知センサの無線ICタグ11からデータが読み出せるようになるので、洗濯物が乾燥したことをリビングルームで知ることが可能となる。
【0016】
(実施の形態2)
図2は第3、および第4の発明の水分検知センサ、および、水分検知システムの構成一例を示す図であり、水分検知センサは2つ以上の無線ICタグ11A、11B、11C、11Dの全部または一部を覆うあるいは接するように設けられた電磁波が透過可能かつ吸水性を有する被覆手段12で構成されている。
【0017】
図中、被覆手段12の破線で示された部分は水分を含んでいることを表現している。図においては無線ICタグ11Dのデータが読み取れないことになる。それ以外の無線ICタグ11A、11B、11Cからはデータが読み出せることになる。つまり、被覆手段12のどの部分が乾いているのか、どの部分に水分が含まれるのか、どの程度の割合が濡れているのかということが検知できる。
【0018】
実施の形態1と同様に読取手段13で読み出した無線ICタグ11A、11B、11Cのデータを処理手段14に送信し、乾燥状態を報知する水分検知装置として使用することも出来る。部分的に乾燥、つまり生乾き状態ということも検知できるので実施の形態1で示した洗濯物を生乾きで引き上げてアイロンを掛けるといった用途に使っても構わない。
【0019】
なお、実施の形態1、2のいずれにおいても無線ICタグ11には、現時点の日本でこの分野に使える周波数のうち、最も周波数帯の高いマイクロ波領域(2.54GHz)の物を用いることが効果的である。これは他の周波数帯の無線ICタグよりも水の影響を受けやすく、水分により敏感に反応する。水分検出には2.54GHz帯の無線ICタグが現時点で最適である。
【0020】
なお、本実施例では非常に限られた用途だけを例として用いているが、乾燥あるいは水分を含んでいる状態を検知する場合に、基本的に第1〜第5で説明した発明は適用可能であり、いずれの場合にも同様の効果を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、電磁波が透過可能かつ吸水性を有する電磁波透過吸水物質で無線ICタグの全部または一部を覆うあるいは接するようにしたものであって、超短波あるいはマイクロ波領域の周波数帯を使用した電池を必要としないパッシブ型あって、被覆手段が水分を含んでいない時にだけデータ読み出しが可能となり、水分検出のためのセンサを別途追加する必要もなく、一般的な無線ICタグと電磁波透過吸水物質だけの極めて簡単な構成で水分の有無を検出する水分検出センサを提供可能で、前記水分検出センサの無線ICタグデータを読み出す読取手段とそのデータを受信し報知する処理手段により水分検出装置を構成することが出来る。
【0022】
また、液体は水に限らない。電波透過吸水物質は例えば布、綿である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における水分検出センサとシステム構成の一例図
【図2】本発明の実施の形態2における水分検出センサとシステム構成の一例図
【符号の説明】
【0024】
11 無線ICタグ
12 電磁波透過吸水物質(被覆手段)
13 読取手段
14 処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ICタグと、前記無線ICタグの全部または一部を覆うあるいは接するように設けられ、電磁波が透過可能かつ吸水性を有する被覆手段とから構成された水分検知センサ。
【請求項2】
無線ICタグと、前記無線ICタグの全部または一部を覆うあるいは接するように設けられ、電磁波が透過可能かつ吸水性を有する被覆手段と、前記無線ICタグからデータを読み取るデータ読取手段と、前記データ読取手段よりデータを受信する処理手段とから構成された水分検知装置。
【請求項3】
2つ以上の無線ICタグと、前記2つ以上の無線ICタグの全部または一部を覆うあるいは接するように設けられ、電磁波が透過可能かつ吸水性を有する被覆手段とから構成された水分検知センサ。
【請求項4】
2つ以上の無線ICタグと、前記2つ以上の無線ICタグの全部または一部を覆うあるいは接するように設けられ、電磁波が透過可能かつ吸水性を有する被覆手段と、前記2つ以上の無線ICタグからデータを読み取るデータ読取手段と、前記データ読取手段よりデータを受信する処理手段とから構成された水分検知装置。
【請求項5】
2.45GHz付近の周波数帯を用いる無線ICタグを使用したことを特徴とする請求項1または3記載の水分検知センサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−29993(P2006−29993A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209522(P2004−209522)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】