説明

水分蒸発機能を高めた創傷被覆材保護用フイルムドレッシング材

【課題】 本発明は、余剰の浸出液を水蒸気の形で周囲の雰囲気中に高効率に蒸発させることにより、多量の浸出液がある場合でも液洩れによる汚染や感染を回避する、防水性かつ防細菌性をもつ水分蒸発機能を高めた創傷被覆材保護用フイルムドレッシング材を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の水分蒸発機能を高めた創傷被覆材保護用フイルムドレッシング材は、皮膚欠損創1を被う創傷被覆材料2の表層部全体を被覆し、前記創傷被覆材料2からの浸出液を吸収・保持する不織布等の繊維材料からなる吸収保水材3と、創傷単位面積当りの面積を増やすため、創傷被覆材料2の上方に細板状の多数のフィン構造6とし、該フィン構造6に前記吸収保水材3を充填し、皮膚に接着する粘着層4を創傷被覆材料2の外周囲に有する通気性、水蒸気透過性、及び防水性・細菌不透過性のフイルム層5とからなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷被覆材に関し、さらに詳しくは創傷面に直接接する生体親和性の良好な各種創傷被覆材の上から保護する水分蒸発機能を高めた創傷被覆材保護用フイルムドレッシング材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遊離分層皮膚移植は、現在の再建外科医療において、皮膚欠損創を閉鎖する際にしばしば用いられる重要な技術である。
皮膚採取部(採皮創)の創面は軟膏処置や生体親和性の良好な各種創傷被覆材(ヒアルロン酸、アルギン酸、ハイドロコロイドなど)の貼付により保護され、1週間から2週間のうちに周辺より表皮の伸長により皮膚が再生する(上皮化)。
その際に病室などの周辺の環境に存在する病原性の細菌から感染しやすい状態にある採皮創を保護するため、ポリウレタン等の素材を用いたフイルムを貼ることが多い。
このフイルムは、微小な孔があることにより水分を透過・蒸発させることができ、かつ水滴の滲入や細菌の侵入をブロックすることができるため、創面を直接保護している創傷被覆材に過剰な湿度が貯留したり外部からの細菌によって創が感染したりせず、またシャワーを浴びることも可能になる。
しかしながら、特許文献1にも指摘されているように、実際には保護フイルムの水蒸気透過性能がまだ低いため、創よりの滲出液が多い場合に水蒸気透過が追いつかず、浸出液がフイルム下に貯留したりフイルムの縁から外に溢れ出ることがあり、フイルムによる密封性が破綻することにより細菌が侵入したりベッドを汚染したりすることがしばしばある。
その結果、創傷被覆材の交換が高頻度になれば、患者側の苦痛も増し、医療スタッフの労力や材料代による医療経済への負荷となる。
【特許文献1】特開2001−17532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、余剰の浸出液を吸収し、一旦保持した後に、水蒸気の形で周囲の雰囲気中に高効率に蒸発させることにより、多量の浸出液がある場合でも液洩れによる汚染や感染を回避する、防水性かつ防細菌性をもつ水分蒸発機能を高めた創傷被覆材保護用フイルムドレッシング材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の水分蒸発機能を高めた創傷被覆材保護用フイルムドレッシング材は、皮膚欠損創を被う創傷被覆材料の表層部上に創傷単位面積当りの面積を増やすために表面積を多くしたフィン構造とし、創傷被覆材料の外周囲に皮膚に接着する粘着層を有する通気性、水蒸気透過性、及び防水性・細菌不透過性のフイルム層と、前記フィン構造内部に充填されると共に創傷被覆材料の表層部全体を被覆し、前記創傷被覆材料からの浸出液を吸収・保持する不織布等の繊維材料からなる吸収保水材とからなるものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の水分蒸発機能を高めた創傷被覆材保護用フイルムドレッシング材は、余剰の浸出液を吸収し、一旦保持した後に、水蒸気の形で周囲の雰囲気中に高効率に蒸発させることにより、多量の浸出液がある場合でも液洩れによる汚染や感染を回避することができる。
本発明の水分蒸発機能を高めた創傷被覆材保護用フイルムドレッシング材は、皮膚欠損創を蔽う創傷被覆材料の表層部全体を被覆するので、いろいろな創傷被覆材と組み合わせて使用することができ、応用範囲が広く、交換回数が減少し患者側の苦痛も和らげることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の水分蒸発機能を高めた創傷被覆材保護用フイルムドレッシング材の一実施例を図面に基づいて、以下に説明する。
図1に示すように、本発明の水分蒸発機能を高めた創傷被覆材保護用フイルムドレッシング材は、皮膚欠損創1を被う創傷被覆材料2の表層部全体を被覆し、前記創傷被覆材料2からの浸出液を吸収・保持する不織布等の繊維材料からなる吸収保水材3と、創傷単位面積当りの面積を増やすため、創傷被覆材料2の上方に細板状の多数のフィン構造6とし、該フィン構造6に前記吸収保水材3を充填し、皮膚に接着する粘着層4を創傷被覆材料2の外周囲に有する通気性、水蒸気透過性、及び防水性・細菌不透過性のフイルム層5とからなるものである。
【0007】
前記創傷被覆材料2は、既存の生体親和性の良好な各種創傷被覆材(ヒアルロン酸、アルギン酸、ハイドロコロイドなど)からなり、外部からの細菌の感染の可能性を最小限にすると共に創傷面から滲み出るかなりの量の滲出液を吸収することができ、且つ滲出液中に含まれる水分を所望な速度内で創傷被覆材料2を通して外部表面に移して、この水分を周囲の環境中に蒸発させることによって、創傷被覆材料2の有効寿命を延長することが出来ると同時に、創面との親和性が良好で、創面の治癒促進作用を有するものである。
【0008】
前記吸収保水材3は、前記フィン構造6の内部先端まで毛細管現象を発揮する不織布等の繊維材料からなり、前記創傷被覆材料2からの滲出液を吸収し、一旦保持した後に、外気に水分を蒸発させる役目をなし、蒸発作用を高めるために表面積を多くした方が良いため、前記フイルム層5のフィン構造6は、細板状に限らず、渦巻き板状や波板状、絨毛状などの表面積を多くしたフィン構造であればどのような形状でも良い。
なお、前記フイルム層5のフィン構造6は、フィンの密度に制限はない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の水分蒸発機能を高めた創傷被覆材保護用フイルムドレッシング材の断面図である。
【符号の説明】
【0010】
1 皮膚欠損創
2 創傷被覆材料
3 吸収保水材
4 粘着層
5 フイルム層
6 フィン構造


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚欠損創を被う創傷被覆材料の表層部上に創傷単位面積当りの面積を増やすために表面積を多くしたフィン構造とし、創傷被覆材料の外周囲に皮膚に接着する粘着層を有する通気性、水蒸気透過性、及び防水性・細菌不透過性のフイルム層と、前記フィン構造内部に充填されると共に創傷被覆材料の表層部全体を被覆し、前記創傷被覆材料からの浸出液を吸収・保持する不織布等の繊維材料からなる吸収保水材とからなることを特徴とする水分蒸発機能を高めた創傷被覆材保護用フイルムドレッシング材。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚欠損創を被う創傷被覆材料の表層部上に創傷単位面積当りの面積を増やすために上方に突出した多数のフイン構造とすると共に前記創傷被覆材料の外周囲に皮膚に接着する接着層を有する通気性、水蒸気透過性、及び防水性・細菌不透過性のフイルム層と、前記フイン構造内部に充填されると共に前記創傷被覆材料の表層部全体を被覆し、前記創傷被覆材料からの浸出液を吸収・保持する不織布等の繊維材料からなる吸収保水材とからなることを特徴とする水分蒸発機能を高めた創傷被覆材料保護用フイルムドレッシング材。

【図1】
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【公開番号】特開2006−325892(P2006−325892A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153171(P2005−153171)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【Fターム(参考)】