説明

水力機械用ステーリングおよび水力機械

【課題】ステーベーンの入口側端部における衝突損失および出口側端部における排棄損失を低減して性能向上を図るとともに、ステーベーンの強度部材としての役割も考慮した水力機械用ステーリングを提供する。
【解決手段】ステーリング10は、環状の上部板11と、上部板11の下方に、上部板11と対向するよう配置された環状の下部板12と、上部板11と下部板12の間において周方向に配列された複数のステーベーン13とを備えている。各ステーベーン13は、上部板11および下部板12に対して固定されている。また各ステーベーン13の入口側端部13aには、水流に対して入口側端部13aを覆う入口ピース21が配置されている。さらに各ステーベーン13の出口側端部13bには、水流に対して出口側端部13bを覆う出口ピース31が配置されている。これら入口ピース21および出口ピース31は、上部板11および下部板12により支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングから流入する水流をランナに導く水力機械用ステーリングに関する。また本発明は、当該水力機械用ステーリングを備えた水力機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なフランシス水車において、水力機械用ステーリングのステーベーンは、ケーシングからの水流を整流してガイドベーンへ導く役割を果たしている。この場合、ステーベーンの入口側端部におけるステーベーンの厚みが大きいと、水流との間に生じる衝突損失が増大する。また、ステーベーンの出口側端部におけるステーベーンの厚みが大きいと、ステーベーンの出口側端部における後流が大きくなり、これによって排棄損失が増大する。従って、ケーシングからの水流を整流してガイドベーンへ導く上では、ステーベーンの厚みが小さいことが望ましい。
【0003】
一方、ステーベーンは、ケーシングが水流からの圧力によって広がるのを防止する強度部材としての役割も果たしている。このためステーベーンは、ケーシングから引張または圧縮応力を受けている。この場合、ステーベーンの入口側端部または出口側端部における厚みが小さいと、そのような引張または圧縮応力に耐えられなくなり、これによってステーベーンが破断することが考えられる。従って、ステーベーンの入口側端部または出口側端部における厚みを、ケーシングからの応力に耐えることができるよう設計しなければならない。
【0004】
特許文献1において、ステーベーンの出口側端部における排棄損失を低減して性能向上を図るとともに、ステーベーンの強度部材としての役割も考慮された水力機械が開示されている。この場合、ステーベーンの出口側端部において、ステーベーンの肉厚がその上端部および下端部よりもその中央部で薄くなるようステーベーンが設計されており、これによって、排棄損失を低減するとともに強度を保つことを可能としている。
【0005】
また特許文献2において、既設のステーベーンの入口側端部または出口側端部に部品を追加し、これによって性能が改善されたステーベーンが開示されている。特許文献2において、ステーベーンの入口側端部には、水流に対して入口側端部を覆う入口ピースが溶接により取り付けられている。またステーベーンの出口側端部には、水流に対して出口側端部を覆う出口ピースが溶接により取り付けられている。このようにして、ステーベーンの性能向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−140078号公報
【特許文献2】特開2008−261292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、入口ピースおよび出口ピースを溶接によりステーベーンに取り付ける場合、入口ピースおよび出口ピースが薄すぎると、入口ピースおよび出口ピースがステーベーンから受ける応力に耐えることができず、入口ピースおよび出口ピースが破断することが考えられる。また入口ピースおよび出口ピースをステーベーンに溶接する際、既設のステーベーンが熱により変形することも考えられる。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ステーベーンの入口側端部における衝突損失および出口側端部における排棄損失を低減して性能向上を図るとともに、ステーベーンの強度部材としての役割も考慮した水力機械用ステーリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ケーシングから流入する水流をランナに導く水力機械用ステーリングにおいて、環状の上部板と、前記上部板の下方に、上部板と対向するよう配置された環状の下部板と、前記上部板と下部板の間において周方向に配列され、上部板および下部板に対して固定された複数のステーベーンと、を備え、各ステーベーンは、ケーシング側にある入口側端部と、ランナ側にある出口側端部とを有し、各ステーベーンの入口側端部には、水流に対して入口側端部を覆う入口ピースが配置され、各ステーベーンの出口側端部には、水流に対して出口側端部を覆う出口ピースが配置され、各入口ピースおよび各出口ピースは、前記上部板および下部板により支持されることを特徴とする水力機械用ステーリングである。
【0010】
本発明は、内周側に開口部が設けられたケーシングから流入する水流をランナに導く水力機械用ステーリングにおいて、環状の上部板と、前記上部板の下方に、上部板と対向するよう配置された環状の下部板と、前記上部板と下部板の間において周方向に配列され、上部板および下部板に対して固定された複数のステーベーンと、を備え、各ステーベーンは、ケーシング側に位置する入口側端部と、ランナ側に位置する出口側端部とを有し、各ステーベーンの入口側端部には、水流に対して入口側端部を覆う入口ピースが配置され、各ステーベーンの出口側端部には、水流に対して出口側端部を覆う出口ピースが配置され、各入口ピースおよび各出口ピースは、対応するステーベーンの入口側端部および出口側端部に、各々連結具により固定されていることを特徴とする水力機械用ステーリングである。
【0011】
本発明は、上記記載の水力機械用ステーリングを備えたことを特徴とする水力機械である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各ステーベーンの入口側端部には、水流に対して入口側端部を覆う入口ピースが配置され、各ステーベーンの出口側端部には、水流に対して出口側端部を覆う出口ピースが配置されている。また、各入口ピースおよび各出口ピースは、前記上部板および下部板により支持されている。このことにより、ステーベーンの入口側端部における衝突損失および出口側端部における排棄損失を低減することができる。また、各入口ピースおよび各出口ピースをステーベーンに例えば溶接により取り付ける必要がないので、ステーベーンが熱により変形することもなく、このため、ステーベーンの強度を保つことができる。
【0013】
また本発明によれば、各ステーベーンの入口側端部には、水流に対して入口側端部を覆う入口ピースが配置され、各ステーベーンの出口側端部には、水流に対して出口側端部を覆う出口ピースが配置されている。また、各入口ピースおよび各出口ピースは、対応するステーベーンの入口側端部および出口側端部に、各々連結具により固定されている。このことにより、ステーベーンの入口側端部における衝突損失および出口側端部における排棄損失を低減することができる。また、各入口ピースおよび各出口ピースをステーベーンに例えば溶接により取り付ける必要がないので、ステーベーンが熱により変形することもなく、このため、ステーベーンの強度を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態におけるステーリングを示す縦断面図。
【図2】図2は、本発明の第2の実施の形態におけるステーリングを示す縦断面図。
【図3】図3は、本発明の第3の実施の形態におけるステーリングを示す縦断面図。
【図4】図4は、本発明の第3の実施の形態における変形例を示す縦断面図。
【図5】図5は、本発明の第3の実施の形態におけるその他の変形例を示す縦断面図。
【図6】図6は、本発明の第4の実施の形態におけるステーリングを示す縦断面図。
【図7】図7は、本発明の第5の実施の形態におけるステーリングを示す横断面図。
【図8】図8は、比較例としてのステーリングを示す横断面図。
【図9】図9は、フランシス水車を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の実施の形態
以下、図1および図9を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるステーリングを示す図であり、図9は、フランシス水車を示す縦断面図である。
【0016】
まず図9により、本実施の形態におけるフランシス水車(水力機械)1について説明する。図9に示すように、フランシス水車1は、水が流入するケーシング2と、回動自在に設けられたランナ3とを備えている。このランナ3により、ケーシング2から流入する水のエネルギが回転駆動力に変換される。またケーシング2とランナ3の間において、ケーシング2の内周側には、ケーシング2から流入する水流をランナ3に導くステーリング10が設けられている。このステーリング10の出口側には、ランナ3へ流入する水量を変化させるガイドベーン4が設けられている。ランナ3は複数のランナベーン3aを有しており、またランナ3には、主軸6を介して発電機7が連結されている。この場合、ランナベーン3aがランナ3に流入された水の流れを受け、これによってランナ3が回転駆動され、この結果、主軸6を介して発電機7が駆動される。一方、ランナ3を回転駆動させた水は、吸出管5を経て図示しない放水路へと流出する。
【0017】
次に図1を参照して、ステーリング10について詳述する。図1は、本実施の形態におけるステーリング10の子午断面を示す図である。図1に示すように、ステーリング10は、環状の上部板11と、上部板11の下方に、上部板11と対向するよう配置された環状の下部板12と、上部板11と下部板12の間において周方向に配列された複数のステーベーン13とを備えている。ステーベーン13は、上部板11および下部板12に対して固定されている。なお図1には、ステーリング10の複数のステーベーン13のうち所定の1個のステーベーン13の子午断面を示している。
【0018】
また図1に示すように、ステーベーン13は、ケーシング2側にある入口側端部13aと、ランナ3側にある出口側端部13bとを有している。このうちステーベーン13の入口側端部13aには、水流に対して入口側端部13aを覆う入口ピース21が配置されている。またステーベーン13の出口側端部13bには、水流に対して出口側端部13bを覆う出口ピース31が配置されている。これら入口ピース21および出口ピース31は、上部板11および下部板12により支持されている。この場合、入口ピース21は、上部板11に形成された入口側溝部11aと下部板12に形成された入口側溝部12aに嵌め込まれており、同様に、出口ピース31は、上部板11に形成された出口側溝部11bと下部板12に形成された出口側溝部12bに嵌め込まれている。このようにして、入口ピース21および出口ピース31がステーベーン13に溶接されることなく、入口ピース21および出口ピース31が上部板11および下部板12により支持されている。
【0019】
なお入口ピース21は、外周側(ケーシング2側)に向かうにつれてその肉厚が薄くなるのが好ましい。同様に、出口ピース31は、内周側(ガイドベーン4側)に向うにつれてその肉厚が薄くなるのが好ましい。
【0020】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、ステーベーン13に入口ピース21および出口ピース31を取り付ける方法について説明する。
【0021】
まず、入口ピース21および出口ピース31を、ステーベーン13の数に対応する所要数量分だけ準備する。なお、ステーベーン13は、上部板11および下部板12に対して予め固定されている。
【0022】
次に図1に示すように、入口ピース21を、ステーベーン13の入口側端部13aを覆うよう配置する。この場合、はじめに入口ピース21を上部板11に形成された入口側溝部11aおよび下部板12に形成された入口側溝部12aに嵌め込み、次に、図1に示すように、入口側溝部11a、12aの端部にステーベーン押さえ15を取り付ける。これによって、入口ピース21を上部板11および下部板12により支持することができる。
【0023】
次に、図1に示すように、出口ピース31を、ステーベーン13の出口側端部13bを覆うよう配置する。この場合も、入口ピース21の場合と同様に、はじめに出口ピース31を上部板11に形成された出口側溝部11bおよび下部板12に形成された出口側溝部12bに嵌め込み、次に、出口側溝部11b、12bの端部にステーベーン押さえ15を取り付ける。これによって、出口ピース31を上部板11および下部板12により支持することができる。
【0024】
このように本実施の形態によれば、入口ピース21は、上部板11に形成された入口側溝部11aと下部板12に形成された入口側溝部12aに嵌め込まれており、同様に、出口ピース31は、上部板11に形成された出口側溝部11bと下部板12に形成された出口側溝部12bに嵌め込まれている。これによって、入口ピース21および出口ピース31をステーベーン13に溶接することなく、入口ピース21および出口ピース31を上部板11および下部板12により支持することができる。従って、ステーベーン13、上部板11または下部板12において、熱による劣化および変形が生じることはない。また、入口ピース21および出口ピース31がステーベーン13から溶接部分を介して応力を受けることもない。このため、入口ピース21および出口ピース31をステーベーン13に溶接する場合に比べて、入口ピース21および出口ピース31の肉厚を薄くすることができる。このことにより、ステーベーン13の強度を保った上で、ステーベーン13における衝突損失および排棄損失をより大きく改善することができる。
【0025】
次に、本実施の形態を比較例と比較して説明する。比較例として、図8に、入口ピース21と出口ピース31が溶接により取り付けられたステーベーン13の横断面図を示す。入口ピース21および出口ピース31が溶接によりステーベーン13に取り付けられている場合、入口ピース21および出口ピース31が薄すぎると、入口ピース21および出口ピース31がステーベーン13から受ける応力に耐えることができない。このため、入口ピース21および出口ピース31の肉厚を薄くすることが困難である。また入口ピース21および出口ピース31をステーベーン13に溶接する際、既設のステーベーン13または環状の上部板および下部板が熱により変形することも考えられる。
【0026】
これに対して、上述のように本実施の形態によれば、入口ピース21および出口ピース31をステーベーン13に溶接することなく、入口ピース21および出口ピース31を上部板11および下部板12により支持することができる。このため、入口ピース21および出口ピース31をステーベーン13に溶接する場合に比べて、入口ピース21および出口ピース31の肉厚を薄くすることができる。このことにより、ステーベーン13の強度を保った上で、ステーベーン13における衝突損失および排棄損失をより大きく改善することができる。
【0027】
なお図1に示すように、入口ピース21および出口ピース31と、上部板11および下部板12との間に、若干の隙間が形成されている。この隙間に、図1に示すように、柔軟性を有する物質、例えば樹脂17を充填してもよい。これによって、入口ピース21および出口ピース31を、上部板11および下部板12によりさらに安定に支持することができる。
【0028】
第2の実施の形態
次に図2を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。ここで図2は、本発明の第2の実施の形態におけるステーリングを示す縦断面図である。
【0029】
図2に示す第2の実施の形態は、入口ピースが上下方向において3つの入口ピース片に分割され、出口ピースが上下方向において3つの出口ピース片に分割されている点が異なるのみであり、他の構成は、図1に示す第1の実施の形態と略同一である。図2に示す第2の実施の形態において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0030】
図2に示すように、入口ピース21は上下方向において、上部板11側にある上部入口ピース片22aと、下部板12側にある下部入口ピース片22cと、上部入口ピース片22aと下部入口ピース片22cの間にある中央入口ピース片22bとに分割されている。この場合、はじめに上部入口ピース片22aを上部板11の入口側溝部11aに嵌め込み、同様に下部入口ピース片22cを下部板12の入口側溝部12aに嵌め込む。次に、上部入口ピース片22aと下部入口ピース片22cの間に中央入口ピース片22bを嵌め込む。その後、中央入口ピース片22bを、上部入口ピース片22aおよび下部入口ピース片22cに対して、例えば溶接により固定する。
【0031】
入口ピース21の場合と同様に、図2に示すように、出口ピース31は上下方向において、上部板11側にある上部出口ピース片32aと、下部板12側にある下部出口ピース片32cと、上部出口ピース片32aと下部出口ピース片32cの間にある中央出口ピース片32bとに分割されている。この場合、はじめに上部出口ピース片32aを上部板11の出口側溝部11bに嵌め込み、同様に下部出口ピース片32cを下部板12の出口側溝部12bに嵌め込む。次に、上部出口ピース片32aと下部出口ピース片32cの間に中央出口ピース片32bを嵌め込む。その後、中央出口ピース片32bを、上部出口ピース片32aおよび下部出口ピース片32cに対して、例えば溶接により固定する。
【0032】
このように本実施の形態において、入口ピース21は、上下方向において3つの入口ピース片22a、22b、22cに分割され、これらの入口ピース片22a、22b、22cは、溶接により互いに接合されている。また出口ピース31は、上下方向において3つの出口ピース片32a、32b、32cに分割され、これらの出口ピース片32a、32b、32cは、溶接により互いに接合されている。このため、入口ピース21および出口ピース31が上下方向において分割されていない場合に比べて、より容易に入口ピース21および出口ピース31をステーベーン13に取り付けることができる。
【0033】
なお本実施の形態において、入口ピース21は、上下方向において3つの入口ピース片22a、22b、22cに分割され、出口ピース31は、上下方向において3つの出口ピース片32a、32b、32cに分割されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、入口ピース21を上下方向において4つ以上の入口ピース片に分割してもよく、また、出口ピース31を上下方向において4つ以上の出口ピース片に分割してもよい。
【0034】
第3の実施の形態
次に図3を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。ここで図3は、本発明の第3の実施の形態におけるステーリングを示す縦断面図である。
【0035】
図3に示す第3の実施の形態において、入口ピースおよび出口ピースは、上下方向に延びる貫通孔を有している。また入口ピースおよび出口ピースは、貫通孔内に挿入される支持部材を介して上部板および下部板により支持されている。図3に示す第3の実施の形態において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0036】
図3に示すように、入口ピース21は、上下方向に延びる貫通孔23を有し、この貫通孔23内には入口ピース用支持部材24が挿入されている。また上部板11において、入口ピース21の貫通孔23に対応する位置に入口側貫通孔11cが形成されている。同様に下部板12において、入口ピース21の貫通孔23に対応する位置に入口側貫通孔12cが形成されている。この場合、はじめに入口ピース21を、ステーベーン13の入口側端部13aを覆うよう配置する。次に入口ピース用支持部材24を、上部板11の入口側貫通孔11c、入口ピース21の貫通孔23、および下部板12の入口側貫通孔12cに挿入する。この際、図3に示すように、下部板12の入口側貫通孔12cに、入口ピース用支持部材24が落下するのを防ぐ下部板用押さえ12eを固定する。これによって、入口ピース21を、入口ピース用支持部材24を介して上部板11および下部板12により支持することができる。
【0037】
入口ピース21の場合と同様に、図3に示すように、出口ピース31は、上下方向に延びる貫通孔33を有し、この貫通孔33内には出口ピース用支持部材34が挿入されている。また上部板11において、出口ピース31の貫通孔33に対応する位置に出口側貫通孔11dが形成されている。同様に下部板12において、出口ピース31の貫通孔33に対応する位置に3口側貫通孔12dが形成されている。この場合、はじめに出口ピース31を、ステーベーン13の出口側端部13bを覆うよう配置する。次に出口ピース用支持部材34を、上部板11の出口側貫通孔11d、出口ピース31の貫通孔33、および下部板12の出口側貫通孔12dに挿入する。この際、図3に示すように、下部板12の出口側貫通孔12dに、出口ピース用支持部材34が落下するのを防ぐ下部板用押さえ12eを固定する。これによって、出口ピース31を、出口ピース用支持部材34を介して上部板11および下部板12により支持することができる。
【0038】
このように本実施の形態によれば、入口ピース21は、上下方向に延びる貫通孔23を有し、この入口ピース21は、貫通孔23内に挿入される入口ピース用支持部材24を介して上部板11および下部板12により支持されている。また出口ピース31は、上下方向に延びる貫通孔33を有し、この出口ピース31は、貫通孔33内に挿入される出口ピース用支持部材34を介して上部板11および下部板12により支持されている。このため、入口ピース21および出口ピース31をステーベーン13に溶接することなく、入口ピース21および出口ピース31を、入口ピース用支持部材24および出口ピース用支持部材34を介して上部板11および下部板12により支持することができる。従って、ステーベーン13または上部板11および下部板12において、熱による劣化および変形が生じることはない。また、入口ピース21および出口ピース31がステーベーン13から溶接部分を介して応力を受けることもない。このため、入口ピース21および出口ピース31をステーベーン13に溶接する場合に比べて、入口ピース21および出口ピース31の肉厚を薄くすることができる。このことにより、ステーベーン13の強度を保った上で、ステーベーン13における衝突損失および排棄損失をより大きく改善することができる。
【0039】
なお本実施の形態において、下部板12の入口側貫通孔12cおよび出口側貫通孔12dに、入口ピース用支持部材24および出口ピース用支持部材34が落下するのを防ぐ下部板用押さえ12eが各々固定される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、入口側貫通孔12cおよび出口側貫通孔12dを非貫通の穴とし、これによって、入口ピース用支持部材24および出口ピース用支持部材34を支持するとともに入口ピース用支持部材24および出口ピース用支持部材34が落下するのを防いでもよい。
【0040】
次に図4により本発明の第3の実施の形態の変形例について説明する。ここで図4は、本発明の第3の実施の形態におけるステーリングの変形例を示す縦断面図である。
【0041】
図4に示す第3の実施の形態の変形例は、入口ピースが上下方向において5つの支持部材片に分割され、出口ピースが上下方向において5つの支持部材片に分割されている点が異なるのみであり、他の構成は、図3に示す第3の実施の形態と略同一である。図4に示す第3の実施の形態の変形例において、図3に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
図4に示すように、入口ピース用支持部材24は上下方向において5つの入口ピース用支持部材片24aに分割されている。この場合、はじめに入口ピース21を、ステーベーン13の入口側端部13aを覆うよう配置する。次に5つの入口ピース用支持部材片24aを、上部板11の入口側貫通孔11c、入口ピース21の貫通孔23、および下部板12の入口側貫通孔12cに順次挿入する。この際、図4に示すように、下部板12の入口側貫通孔12cに、入口ピース用支持部材片24aが落下するのを防ぐ下部板用押さえ12eを固定する。これによって、入口ピース21を、5つの入口ピース用支持部材片24aからなる入口ピース用支持部材24を介して上部板11および下部板12により支持することができる。
【0043】
入口ピース用支持部材24の場合と同様に、図4に示すように、出口ピース用支持部材34は上下方向において5つの出口ピース用支持部材片34aに分割されている。この場合、はじめに出口ピース31を、ステーベーン13の出口側端部13bを覆うよう配置する。次に5つの出口ピース用支持部材片34aを、上部板11の出口側貫通孔11d、出口ピース31の貫通孔33、および下部板12の出口側貫通孔12dに順次挿入する。この際、図4に示すように、下部板12の出口側貫通孔12dに、出口ピース用支持部材片34aが落下するのを防ぐ下部板用押さえ12eを固定する。これによって、出口ピース31を、5つの出口ピース用支持部材片34aからなる出口ピース用支持部材34を介して上部板11および下部板12により支持することができる。
【0044】
このように本変形例によれば、入口ピース用支持部材24および出口ピース用支持部材34は、上下方向において5つの入口ピース用支持部材片24aおよび5つの出口ピース用支持部材片34aに分割されている。このため、入口ピース用支持部材24および出口ピース用支持部材34が上下方向において分割されていない場合に比べて、より容易に入口ピース21および出口ピース31をステーベーン13に取り付けることができる。
【0045】
なお本変形例において、入口ピース用支持部材24は、上下方向において5つの入口ピース用支持部材片24aに分割され、出口ピース用支持部材34は、上下方向において5つの出口ピース用支持部材片34aに分割されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、入口ピース用支持部材24を上下方向において2つ、3つ、4つまたは6つ以上の入口ピース用支持部材片24aに分割してもよく、また、出口ピース31を上下方向において2つ、3つ、4つまたは6つ以上の出口ピース用支持部材片34aに分割してもよい。
【0046】
また本変形例において、下部板12の入口側貫通孔12cおよび出口側貫通孔12dに、入口ピース用支持部材片24aおよび出口ピース用支持部材片34aが落下するのを防ぐ下部板用押さえ12eが各々固定される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、入口側貫通孔12cおよび出口側貫通孔12dを、入口ピース21および出口ピース31を貫通しないよう形成し、これによって、入口ピース用支持部材片24aおよび出口ピース用支持部材片34aを支持するとともに入口ピース用支持部材片24aおよび出口ピース用支持部材片34aが落下するのを防いでもよい。
【0047】
次に図5により本発明の第3の実施の形態の他の変形例について説明する。ここで図5は、本発明の第3の実施の形態におけるステーリングの他の変形例を示す縦断面図である。
【0048】
図5に示す第3の実施の形態の他の変形例において、入口ピースおよび出口ピースの上端部に上部穴が形成され、また入口ピースおよび各出口ピースの下端部に下部穴が形成されている。図5に示す第3の実施の形態の他の変形例において、図3に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0049】
図5に示すように、入口ピース21の上端部には、入口ピース21を貫通しないよう形成された上部穴27aが形成され、この上部穴27a内には入口ピース用上部支持部材26aが挿入されている。また入口ピース21の下端部には、入口ピース21を貫通しないよう形成された下部穴27bが形成され、この下部穴27b内には入口ピース用下部支持部材26bが挿入されている。この場合、はじめに入口ピース21を、ステーベーン13の入口側端部13aを覆うよう配置する。次に入口ピース用上部支持部材26aを、上部板11の入口側貫通孔11cおよび入口ピース21上端部の上部穴27aに挿入する。また入口ピース用下部支持部材26bを、下部板12の入口側貫通孔12cおよび入口ピース21下端部の下部穴27bに挿入する。この際、図5に示すように、下部板12の入口側貫通孔12cに、入口ピース用下部支持部材26bが落下するのを防ぐ下部板用押さえ12eを固定する。これによって、入口ピース21を、入口ピース用上部支持部材26aおよび入口ピース用下部支持部材26bを介して上部板11および下部板12により支持することができる。
【0050】
入口ピース21の場合と同様に、図5に示すように、出口ピース31の上端部には、出口ピース31を貫通しないよう形成された上部穴37aが形成され、この上部穴37aには出口ピース用上部支持部材36aが挿入されている。また出口ピース31の下端部には、出口ピース31を貫通しないよう形成された下部穴37bが形成され、この下部穴37bには出口ピース用下部支持部材36bが挿入されている。この場合、はじめに出口ピース31を、ステーベーン13の出口側端部13bを覆うよう配置する。次に出口ピース用上部支持部材36aを、上部板11の出口側貫通孔11dおよび出口ピース31上端部の上部穴37aに挿入する。また出口ピース用下部支持部材36bを、下部板12の出口側貫通孔12dおよび出口ピース31下端部の下部穴37bに挿入する。この際、図5に示すように、下部板12の出口側貫通孔12dに、出口ピース用下部支持部材36bが落下するのを防ぐ下部板用押さえ12eを固定する。これによって、出口ピース31を、出口ピース用上部支持部材36aおよび出口ピース用下部支持部材36bを介して上部板11および下部板12により支持することができる。
【0051】
このように本変形例によれば、入口ピース21の上端部には、入口ピース21を貫通しないよう形成された上部穴27aが形成され、この上部穴27aには入口ピース用上部支持部材26aが挿入されている。また入口ピース21の下端部には、入口ピース21を貫通しないよう形成された下部穴27bが形成され、この下部穴27bには入口ピース用下部支持部材26bが挿入されている。このため、入口ピース21の貫通孔23に入口ピース用支持部材24を挿入する場合に比べて、より容易に入口ピース21をステーベーン13に取り付けることができる。
【0052】
また本変形例によれば、出口ピース31の上端部には、出口ピース31を貫通しないよう形成された上部穴37aが形成され、この上部穴37aには出口ピース用上部支持部材36aが挿入されている。また出口ピース31の下端部には、出口ピース31を貫通しないよう形成された下部穴37bが形成され、この下部穴37bには出口ピース用下部支持部材36bが挿入されている。このため、出口ピース31の貫通孔33に出口ピース用支持部材34を挿入する場合に比べて、より容易に出口ピース31をステーベーン13に取り付けることができる。
【0053】
なお本変形例において、入口ピース21および出口ピース31の上端部には、入口ピース21および出口ピース31を貫通しないよう形成された上部穴27a、37aが形成され、入口ピース21および出口ピース31の下端部には、入口ピース21および出口ピース31を貫通しないよう形成された下部穴27b、37bが形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、入口ピース21に貫通孔23を形成し、この貫通孔23内に入口ピース用上部支持部材26aおよび入口ピース用下部支持部材26bを挿入してもよく、また出口ピース31に貫通孔33を形成し、この貫通孔33内に出口ピース用上部支持部材36aおよび出口ピース用下部支持部材36bを挿入してもよい。この場合、各上部支持部材26a、36aは、各上部支持部材26a、36aを上部板11に対して係止する係止機構(図示せず)を有し、同様に各下部支持部材26b、36bは、各下部支持部材26b、36bを下部板12に対して係止する係止機構(図示せず)を有している。
【0054】
なお図3乃至5に示す上記各実施の形態において、入口ピース用支持部材24、26a、26bと、入口ピース21、上部板11および下部板12との間に、若干の隙間が形成されている。この隙間に、図1に示す第1の実施の形態の場合と同様に、柔軟性を有する物質、例えば樹脂17を充填してもよい。これによって、入口ピース21を、入口ピース用支持部材24、26a、26bを介して上部板11および下部板12によりさらに安定に支持することができる。
同様に、出口ピース用支持部材34、36a、36bと、出口ピース31、上部板11および下部板12との間に、若干の隙間が形成されている。この隙間に、柔軟性を有する物質、例えば樹脂17を充填してもよい。これによって、出口ピース31を、出口ピース用支持部材34、36a、36bを介して上部板11および下部板12によりさらに安定に支持することができる。
【0055】
第4の実施の形態
次に図6を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。ここで図6は、本発明の第4の実施の形態におけるステーリングを示す縦断面図である。
【0056】
図6に示す第4の実施の形態において、入口ピースは、上下方向において3つの入口ピース片に分割され、このうち最上部の入口ピース片には、上部板に係合する入口側上部突起部が突出して設けられ、最下部の入口ピース片には、下部板に係合する入口側下部突起部が突出して設けられている。また出口ピースは、上下方向において3つの出口ピース片に分割され、このうち最上部の出口ピース片には、上部板に係合する出口側上部突起部が突出して設けられ、最下部の出口ピース片には、下部板に係合する出口側下部突起部が突出して設けられている。図6に示す第4の実施の形態において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
図6に示すように、入口ピース21は上下方向において、最上部にある上部入口ピース片22aと、最下部にある下部入口ピース片22cと、上部入口ピース片22aと下部入口ピース片22cの間にある中央入口ピース片22bとに分割されている。このうち上部入口ピース片22aの上面には、上方に突出する入口側上部突起部29aが設けられている。また下部入口ピース片22cの下面には、下方に突出する入口側下部突起部29cが設けられている。
【0058】
この場合、はじめに、上部入口ピース片22aの入口側上部突起部29aを、上部板11の入口側貫通孔11cに挿入する。また、下部入口ピース片22cの入口側下部突起部29cを、下部板12の入口側貫通孔12cに挿入する。次に、上部入口ピース片22aと下部入口ピース片22cの間に中央入口ピース片22bを嵌め込む。その後、中央入口ピース片22bを、上部入口ピース片22aおよび下部入口ピース片22cに対して、例えば溶接により固定する。これによって、入口ピース21を、入口側上部突起部29aおよび入口側下部突起部29cを介して上部板11および下部板12により支持することができる。
【0059】
入口ピース21の場合と同様に、図6に示すように、出口ピース31は上下方向において、最上部にある上部出口ピース片32aと、最下部にある下部出口ピース片32cと、上部出口ピース片32aと下部出口ピース片32cの間にある中央出口ピース片32bとに分割されている。このうち上部出口ピース片32aの上面には、上方に突出する出口側上部突起部39aが設けられている。また下部出口ピース片32cの下面には、下方に突出する出口側下部突起部39cが設けられている。
【0060】
この場合、はじめに、上部出口ピース片32aの出口側上部突起部39aを、上部板11の出口側貫通孔11dに挿入する。また、下部出口ピース片32cの出口側下部突起部39cを、下部板12の出口側貫通孔12dに挿入する。次に、上部出口ピース片32aと下部出口ピース片32cの間に中央出口ピース片32bを嵌め込む。その後、中央出口ピース片32bを、上部出口ピース片32aおよび下部出口ピース片32cに対して、例えば溶接により固定する。これによって、出口ピース31を、出口側上部突起部39aおよび出口側下部突起部39cを介して上部板11および下部板12により支持することができる。
【0061】
このように本実施の形態によれば、入口ピース21は上下方向において3つの入口ピース片22a、22b、22cに分割されている。このうち上部入口ピース片22aの上面には、上方に突出する入口側上部突起部29aが設けられ、下部入口ピース片22cの下面には、下方に突出する入口側下部突起部29cが設けられている。これによって、入口ピース21をステーベーン13に溶接することなく、入口ピース21を、入口側上部突起部29aおよび入口側下部突起部29cを介して上部板11および下部板12により支持することができる。従って、ステーベーン13または上部板11および下部板12において、熱による劣化および変形が生じることはない。また、入口ピース21がステーベーン13から溶接部分を介して応力を受けることもない。このため、入口ピース21をステーベーン13に溶接する場合に比べて、入口ピース21の肉厚を薄くすることができる。このことにより、ステーベーン13の強度を保った上で、ステーベーン13における衝突損失をより大きく改善することができる。
【0062】
また上述のように、入口ピース21は上下方向において3つの入口ピース片22a、22b、22cに分割されている。このため、入口ピース21が上下方向において分割されていない場合に比べて、より容易に入口ピース21をステーベーン13に取り付けることができる。
【0063】
また本実施の形態によれば、出口ピース21は上下方向において3つの出口ピース片32a、32b、32cに分割されている。このうち上部出口ピース片32aの上面には、上方に突出する出口側上部突起部39aが設けられ、下部出口ピース片32cの下面には、下方に突出する出口側下部突起部39cが設けられている。これによって、出口ピース31をステーベーン13に溶接することなく、出口ピース31を、出口側上部突起部39aおよび出口側下部突起部39cを介して上部板11および下部板12により支持することができる。従って、ステーベーン13または上部板11および下部板12において、熱による劣化および変形が生じることはない。また、出口ピース31がステーベーン13から溶接部分を介して応力を受けることもない。このため、出口ピース31をステーベーン13に溶接する場合に比べて、出口ピース31の肉厚を薄くすることができる。このことにより、ステーベーン13の強度を保った上で、ステーベーン13における排棄損失をより大きく改善することができる。
【0064】
また上述のように、出口ピース31は上下方向において3つの出口ピース片32a、32b、32cに分割されている。このため、出口ピース31が上下方向において分割されていない場合に比べて、より容易に出口ピース31をステーベーン13に取り付けることができる。
【0065】
なお本実施の形態において、入口ピース21は、上下方向において3つの入口ピース片22a、22b、22cに分割され、出口ピース31は、上下方向において3つの出口ピース片32a、32b、32cに分割されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、入口ピース21を上下方向において4つ以上の入口ピース片に分割してもよく、また、出口ピース31を上下方向において4つ以上の出口ピース片に分割してもよい。
【0066】
また本実施の形態において、図6に示すように、上部突起部29a、39aと上部板11との間、および下部突起部29c、39cと下部板12との間に、若干の隙間が形成されている。この隙間に、柔軟性を有する物質、例えば樹脂17を充填してもよい。これによって、入口ピース21および出口ピース31を、上部板11および下部板12によりさらに安定に支持することができる。
【0067】
第5の実施の形態
次に図7を参照して、本発明の第5の実施の形態について説明する。ここで図7は、本発明の第5の実施の形態におけるステーリングを示す横断面図である。
【0068】
図7に示す第5の実施の形態において、ステーベーンの入口側端部には、水流に対して入口側端部を覆う入口ピースが配置され、ステーベーンの出口側端部には、水流に対して出口側端部を覆う出口ピースが配置され、入口ピースおよび出口ピースは、ステーベーンの入口側端部および出口側端部に、各々連結具により固定されている。図7に示す第5の実施の形態において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0069】
後述するように、ステーベーン13の入口側端部13aおよび出口側端部13bには、各々入口側凹部13cおよび出口側凹部13dが形成されている(図7参照)。
【0070】
また図7に示すように、入口ピース21のうちステーベーン側の端部には、ステーベーン13の入口側凹部13cと係合する凸部21cが形成されている。また、ボルト(連結具)41が入口ピース21の凸部21cに、ステーベーン13まで達するよう挿入されている。このようにして、入口ピース21がステーベーン13の入口側端部13aにボルト41により固定される。
【0071】
同様に、図7に示すように、出口ピース31のうちステーベーン側の端部には、ステーベーン13の出口側凹部13dと係合する凸部31cが形成されている。また、ボルト(連結具)41が出口ピース31の凸部31cに、ステーベーン13まで達するよう挿入されている。このようにして、出口ピース31がステーベーン13の出口側端部13bにボルト41により固定される。
【0072】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、ステーベーン13に入口ピース21および出口ピース31を取り付ける方法について説明する。
【0073】
まず、凸部21cが形成された入口ピース21と、凸部31cが形成された出口ピース31と、ボルト41とを、ステーベーン13の数に対応する所要数量分だけ準備する。なおステーベーン13は、上部板11および下部板12に対して予め固定されている。
【0074】
次に、図7に示すように、ステーベーン13の入口側端部13aのうち内周側(ガイドベーン4側)に入口側凹部13cを形成する。同様に、ステーベーン13の出口側端部13bのうち内周側に出口側凹部13dを形成する。
【0075】
次に図7に示すように、ステーベーン13の入口側凹部13cが入口ピース21の凸部21cと係合するよう、入口ピース21をステーベーン13に取り付ける。その後、ボルト41を入口ピース21の凸部21cに、ステーベーン13まで達するよう挿入する。これによって、入口ピース21をステーベーン13の入口側端部13aにボルト41により固定することができる。
【0076】
出口ピース31についても同様に、図7に示すように、ステーベーン13の出口側凹部13dが出口ピース31の凸部31cと係合するよう、出口ピース31をステーベーン13に取り付ける。その後、ボルト41を出口ピース31の凸部31cに、ステーベーン13まで達するよう挿入する。これによって、出口ピース31をステーベーン13の出口側端部13bにボルト41により固定することができる。
【0077】
このように本実施の形態によれば、入口ピース21はステーベーン13の入口側端部13aにボルト41により固定され、出口ピース31はステーベーン13の出口側端部13bにボルト41により固定されている。これによって、入口ピース21および出口ピース31をステーベーン13に溶接することなく、入口ピース21および出口ピース31をステーベーン13に取り付けることができる。従って、ステーベーン13または上部板11および下部板12において、熱による劣化および変形が生じることはない。また、入口ピース21および出口ピース31がステーベーン13から溶接部分を介して応力を受けることもない。このため、入口ピース21および出口ピース31をステーベーン13に溶接する場合に比べて、入口ピース21および出口ピース31の肉厚を薄くすることができる。このことにより、ステーベーン13の強度を保った上で、ステーベーン13における衝突損失および排棄損失をより大きく改善することができる。
【0078】
なお本実施の形態において、ステーベーン13の入口側端部13aのうち内周側に入口側凹部13cが形成され、ステーベーン13の出口側端部13bのうち内周側に出口側凹部13dが形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、ステーベーン13の入口側端部13aのうち外周側(ケーシング2側)に入口側凹部13cを形成してもよく、同様に、ステーベーン13の出口側端部13bのうち外周側に出口側凹部13dを形成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 フランシス水車
2 ケーシング
3 ランナ
3a ランナベーン
4 ガイドベーン
5 吸出し管
6 主軸
7 発電機
10 水力機械用ステーリング
11 上部板
11a 上部板の入口側溝部
11b 上部板の出口側溝部
11c 上部板の入口側貫通孔
11d 上部板の出口側貫通孔
12 下部板
12a 下部板の入口側溝部
12b 下部板の出口側溝部
12c 下部板の入口側貫通孔
12d 下部板の出口側貫通孔
12e 下部板用押さえ
13 ステーベーン
13a ステーベーンの入口側端部
13b ステーベーンの出口側端部
13c ステーベーンの入口側凹部
13d ステーベーンの出口側凹部
15 ステーベーン押さえ
17 樹脂
21 入口ピース
21a 入口ピースの上端部
21b 入口ピースの下端部
21c 入口ピースの凸部
22a 上部入口ピース片
22b 中央入口ピース片
22c 下部入口ピース片
23 入口ピースの貫通孔
24 入口ピース用支持部材
24a 入口ピース用支持部材片
26a 入口ピース用上部支持部材
26b 入口ピース用下部支持部材
27a 入口ピースの上部穴
27b 入口ピースの下部穴
28a 上部入口ピース片の貫通孔
28b 中央入口ピース片の貫通孔
28c 下部入口ピース片の貫通孔
29a 上部入口ピース片の入口側上部突起部
29c 下部入口ピース片の入口側下部突起部
31 出口ピース
31a 出口ピースの上端部
31b 出口ピースの下端部
31c 出口ピースの凸部
32a 上部出口ピース片
32b 中央出口ピース片
32c 下部出口ピース片
33 出口ピースの貫通孔
34 出口ピース用支持部材
34a 出口ピース用支持部材片
36a 出口ピース用上部支持部材
36b 出口ピース用下部支持部材
37a 出口ピースの上部穴
37b 出口ピースの下部穴
38a 上部出口ピース片の貫通孔
38b 中央出口ピース片の貫通孔
38c 下部出口ピース片の貫通孔
39a 上部出口ピース片の出口側上部突起部
39c 下部出口ピース片の出口側下部突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングから流入する水流をランナに導く水力機械用ステーリングにおいて、
環状の上部板と、
前記上部板の下方に、上部板と対向するよう配置された環状の下部板と、
前記上部板と下部板の間において周方向に配列され、上部板および下部板に対して固定された複数のステーベーンと、を備え、
各ステーベーンは、ケーシング側にある入口側端部と、ランナ側にある出口側端部とを有し、
各ステーベーンの入口側端部には、水流に対して入口側端部を覆う入口ピースが配置され、
各ステーベーンの出口側端部には、水流に対して出口側端部を覆う出口ピースが配置され、
各入口ピースおよび各出口ピースは、前記上部板および下部板により支持されることを特徴とする水力機械用ステーリング。
【請求項2】
各入口ピースおよび各出口ピースは、前記上部板および下部板に形成された溝に嵌め込まれることを特徴とする請求項1に記載の水力機械用ステーリング。
【請求項3】
各入口ピースは、上下方向において少なくとも3つの入口ピース片に分割され、これらの入口ピース片は互いに連結され、
前記各出口ピースは、上下方向において少なくとも3つの出口ピース片に分割され、これらの出口ピース片は互いに連結されていることを特徴とする請求項2に記載の水力機械用ステーリング。
【請求項4】
各入口ピースおよび各出口ピースは、上下方向に延びる貫通孔を有し、
各入口ピースおよび各出口ピースは、貫通孔内に挿入される支持部材を介して前記上部板および前記下部板により支持されることを特徴とする請求項1に記載の水力機械用ステーリング。
【請求項5】
各入口ピースおよび各出口ピースに挿入される前記支持部材は、上下方向において複数の支持部材片に分割されていることを特徴とする請求項4に記載の水力機械用ステーリング。
【請求項6】
各入口ピースおよび各出口ピースの上端部には上部穴が形成され、
各入口ピースおよび各出口ピースの下端部には下部穴が形成され、
各入口ピースは、上部穴内に挿入される上部支持部材および下部穴内に挿入される下部支持部材を介して、前記上部板および前記下部板により支持され、
各出口ピースは、上部穴内に挿入される上部支持部材および下部穴内に挿入される下部支持部材を介して、前記上部板および前記下部板により支持されることを特徴とする請求項1に記載の水力機械用ステーリング。
【請求項7】
前記各入口ピースは、上下方向において少なくとも3つの入口ピース片に分割され、これらの入口ピース片は互いに連結されるとともに、入口ピース片のうち最上部の入口ピース片には、前記上部板に係合する入口側上部突起部が突出して設けられ、入口ピース片のうち最下部の入口ピース片には、前記下部板に係合する入口側下部突起部が突出して設けられ、
前記各出口ピースは、上下方向において少なくとも3つの出口ピース片に分割され、これらの出口ピース片は互いに連結されるとともに、出口ピース片のうち最上部の出口ピース片には、前記上部板に係合する出口側上部突起部が突出して設けられ、出口ピース片のうち最下部の出口ピース片には、前記下部板に係合する出口側下部突起部が突出して設けられることを特徴とする請求項1に記載の水力機械用ステーリング。
【請求項8】
各入口ピースおよび各出口ピースと、前記上部板および前記下部板との間に、柔軟性物質が充填されていることを特徴とする請求項1乃至7に記載の水力機械用ステーリング。
【請求項9】
内周側に開口部が設けられたケーシングから流入する水流をランナに導く水力機械用ステーリングにおいて、
環状の上部板と、
前記上部板の下方に、上部板と対向するよう配置された環状の下部板と、
前記上部板と下部板の間において周方向に配列され、上部板および下部板に対して固定された複数のステーベーンと、を備え、
各ステーベーンは、ケーシング側に位置する入口側端部と、ランナ側に位置する出口側端部とを有し、
各ステーベーンの入口側端部には、水流に対して入口側端部を覆う入口ピースが配置され、
各ステーベーンの出口側端部には、水流に対して出口側端部を覆う出口ピースが配置され、
各入口ピースおよび各出口ピースは、対応するステーベーンの入口側端部および出口側端部に、各々連結具により固定されていることを特徴とする水力機械用ステーリング。
【請求項10】
前記連結具はボルトからなり、
各ステーベーンの入口側端部には凹部が形成され、
各入口ピースのステーベーン側端部には、対応するステーベーンの凹部に係合する凸部が形成され、各入口ピースの当該凸部に前記ボルトをステーベーンまで達するよう挿入し、
各ステーベーンの出口側端部には凹部が形成され、
各出口ピースのステーベーン側端部には、対応するステーベーンの凹部に係合する凸部が形成され、各出口ピースの当該凸部に前記ボルトをステーベーンまで達するよう挿入することを特徴とする請求項9に記載の水力機械用ステーリング。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の水力機械用ステーリングを備えたことを特徴とする水力機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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