説明

水力発電装置および水力発電システム

【課題】水槽内の水面に浮上するフロートとフローとの直線運動を回転運度に変換する直線−回転変換機構との新規な組み合わせにより、構造が簡単で、しかも多様な水源に適応させやすい水力発電装置およびこれを用いた水力発電システムを提供する。
【解決手段】水力発電装置は、水槽1、フロート3、直線−回転変換機構4および発電機5を具備している。水槽1は、その内部の給水および排水が可能である。フロート3は、水槽1内に浮上するよう配設され、水槽1内への給水および排水に伴う水面の変動にしたがって上昇および下降する。直線−回転変換機構4は、雄ねじ軸41および雌ねじ体42を備えている。雄ねじ軸41は、回転自在に支持され、雌ねじ体42は、雄ねじ軸41に螺合してフロート3の上昇および下降の際の直線運動に連動し、かつその連動時の直線変位により雄ねじ軸41を回転させる。発電機5は、雄ねじ軸41の回転によって駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力を利用して発電する水力発電装置およびこの装置を用いた水力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
干満の潮位差により海水の流入および排出ができるドッグ内に浮船を浮かべ、浮船の側面にピニオン軸を備えたピニオンを突設し、ドッグ側にピニオンに歯合するラックを設けて、浮船の昇降によりピニオンを回転させ、ピニオンの回転を増速機構により回転数を高めて発電機を駆動することにより、干満の潮位差を利用して発電することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、築堤内の水面を外部の海面と同一にして、築堤内に発電機構および原動機構を設けた発電船と、発電船から昇降可能に垂下して逆転機構により発電船の昇降とは逆方向に昇降させるフロートとを具備し、上げ潮時に発電船の上昇運動を腕杆および伝導杆などを備えた連絡機構を用いて回転運動に変換して発電し、下げ潮時にフロートを上昇させ、その際に昇降機構を介して発電することも知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−274145号公報
【特許文献2】特公平05−032592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の従来技術は、ラック&ピニオン機構を用いているため、発電機を駆動するのに必要な回転数およびトルクを高変換効率の下で得るのが困難である。後者の従来技術は、構造が複雑で製作が困難であるとともにコストアップを招く。いずれの従来技術も水面に浮上する船に発電設備を搭載するので、発電電力の外部へ取り出すための構成が必要になるばかりか、設備全体のメンテナンスにも解決すべき課題がある。
【0006】
また、従来技術は、潮力発電のみを目指しており、河川水や水道水などの多様な水源に適応させることができない。さらに、発電能力の規模についても大小様々な要求があるが、従来技術は多様な発電能力に応えることが困難である。
【0007】
本発明は、水槽内の水面に浮上するフロートとフロートの直線運動を回転運度に変換する直線−回転変換機構との新規な組み合わせにより、構造が簡単で、直線運動の回転運動への変換が容易であり、動作の信頼性も高くて、しかも多様な水源および多様な発電能力に適応させやすい水力発電装置およびこれを用いた水力発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水力発電装置は、水槽、フロート、直線−回転変換機構および発電機を具備している。水槽は、そこに対する給水および排水が可能である。フロートは、水槽内に浮上するよう配設され、水槽内への給水および排水に伴う水面の変動にしたがって上昇および下降する。直線−回転変換機構は、雄ねじ軸および雌ねじ体を備えている。雄ねじ軸は、回転自在に支持されている。雌ねじ体は、雄ねじ軸に螺合してフロートの上昇および下降の際の直線運動に連動し、かつその連動時の直線変位により雄ねじ軸を回転させる。発電機は、雄ねじ軸の回転によって駆動されて発電する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水力発電装置によれば、雄ねじ軸および雄ねじ軸に螺合した雌ねじ体を備えた直線−回転変換機構を用いてその雌ねじ体をフロートの上昇および下降の際の直線運動に連動させ、雄ねじ軸を雌ねじ体の直線運動に応じて回転させて発電機を駆動して発電するので、水力発電装置の構造が簡単で、直線運動の回転運動への変換が容易であり、動作の信頼性が高くなるとともに、多様な水源および多様な発電容量に適応させることが容易な水力発電装置およびこれを用いた水力発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の水力発電装置の第1の実施形態に係わる正面縦断面図である。
【図2】図1のII−II´線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III´線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV−IV´線に沿う断面図である。
【図5】図1のV−V´線に沿う断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係わる水力発電装置の直線−回転変換機構を示す(a)拡大横断面図および(b)拡大要部縦断面図である。
【図7】本発明の水力発電装置の第2の実施形態に係わる正面縦断面図である。
【図8】同じく一部切欠側面断面図である。
【図9】本発明の水力発電装置の第3の実施形態に係わる正面縦断面図である。
【図10】本発明の水力発電装置の第4の実施形態に係わる正面縦断面図である。
【図11】本発明の水力発電装置の第5の実施形態に係わる正面縦断面図である。
【図12】図1のII−II´線に沿う断面図である。
【図13】図1のIII−III´線に沿う断面図である。
【図14】本発明の水力発電装置の第6の実施形態に係わる正面縦断面図である。
【図15】本発明の水力発電装置の第7の実施形態に係わる正面縦断面図である。
【図16】本発明の水力発電システムの第1の実施形態に係わる模式配置図である。
【図17】同じく給水および排水の1周期におけるタイミングチャートである。
【図18】本発明の水力発電システムの第2の実施形態に係わる模式配置図である。
【図19】本発明の水力発電システムの第3の実施形態に係わる正面断面図である。
【図20】同じく各水力発電装置の連係動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[水力発電装置の第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態において、水力発電装置は、図1に示すように、水槽1、給排水手段2、フロート3、直線−回転変換機構4および発電機5を具備している。本実施形態は、水力発電装置に係る発明を具現化したものであり、また本発明の水力発電システムを実施する際に用いることができる。以下、図1ないし図6を参照して各構成要素について説明する。
【0012】
〔水槽1〕
水槽1は、図1に示すように、給排水手段2を備えていて、カップ状の水槽本体13の内部への給水および内部に貯留した水の排水が可能であるように構成されている。水槽1内へ給水することにより、水槽1に貯留した水の水位が所定の高さまで上昇する。なお、この場合の所定の高さとは、後述するフロート3が水槽1内で上昇が許容される高さをいう。また、水槽1内に所定の高さまで貯留した水を排水することにより、水の水位が所定の高さまで降下する。なお、この場合の所定の高さとは、後述するフロート3の降下が許容される高さをいい、水槽1内の水がほぼ全部排水された状態であってもよい。すなわち、給水および排水に伴って水槽1内の水面が上下動する。しかし、水槽1内の水面の上記所定の高さは、水槽1が許容する範囲で適宜の値に設定することができる。
【0013】
(水槽本体13)
水槽1は、その水槽本体13の内容積および形状が特段限定されない。そして、発電容量に応じて適当な内容積、延いては水槽1の開口面積、例えば直径と高さを適宜選定することができる。なお、水槽1の開口面積は、水槽1内に導入する後述するフロート3の最大面積を収容可能なように選定することができる。そして、フロート3の最大面積は、得られる浮力の大きさを決定する。また、水槽1の高さは、フロート3の上下方向の直線変位量を決定する。
【0014】
水槽1の構成材料は、特段限定されない。例えば、金属、例えば鋼、ステンレス鋼など、コンクリート、ガラス、炭素、金属の酸化物や窒化物などの無機質繊維で強化したプラスチックス、セラミックスまたは煉瓦などの適宜の材料を用いて、あるいは自然地形などを利用して、水槽1を構築することができる。水槽1は、図示実施形態において、円筒状をなしているので、好ましい形状であるが、所望により多角形筒状などの形状であってもよい。
【0015】
さらに、水槽1は、水槽本体13の上部開口を閉止する上蓋11を開閉可能に付加することができ、これにより水槽1の内部のメンテナンスを行いやすくなるとともに、水槽1内に塵埃などの異物が進入するのを阻止することが可能になる。また、メンテナンスのために、水槽1の側面に図示しないマンホールを配設することができる。
【0016】
図示実施形態において、上蓋11には、図1ないし図3に示すように、中央部および中央に対して同心円上に等配された複数の開口11a、11bが形成されている。中央部の開口11aは、そこに支柱12の上端が露出して、そこに後述する軸受44を埋設している。軸受44は、後述する直線−回転変換機構4の雄ねじ軸41の下部を、回転自在で、かつ雄ねじ軸41の長手方向の移動を阻止して支持する。等配された複数の開口11bは、そこをフロート3から水槽1外へ延在する後述する連動手段31が移動自在に挿通する。複数の開口11bは、例えば四角形であり、その各辺に対向するようにローラーベアリング11cが配設されていて、連動手段31の円滑な挿通を支援していると同時に、フロート3の回転を阻止しながら上下方向の直線運動をスムーズに行わせる。
【0017】
また、図1に示す実施形態において、支柱12は、水槽1の内部において、底部中央部から鉛直に起立して上蓋11の開口11aに達している。なお、所望により水槽1をドーナツ状に形成することができる。そうすれば、そのドーナツ形状の中央窓部が水槽1の外側となるので、その部位に直線−回転変換機構4の軸受44を配設することができる。しかし、上述の形態とは逆に、直線−回転変換機構4を水槽1の内部に水に浸かるように配設することも許容される。したがって、本発明において、水槽1の形状および直線−回転変換機構4との関係は、多様な形態を採用することができるので、特段限定されるものではないことを理解できるであろう。
【0018】
さらに、水槽1には、後述するフロート3を水槽1内の所定位置で停止させるために、フロート3の下部停止位置および上部停止位置を検出する位置センサおよびフロート3の機械式ロック機構(いずれも図示しない。)を配設することができる。そして、位置センサの検出出力を給水および排水などを制御する制御手段(図示しない。)に連動させることができる。なお、下部停止位置および上部停止位置は、水面が予め所定の下限高さおよび上限高さのときのフロート3の位置である。上記下限高さは、水位0を含むが、好ましくは下限高さのときにフロート3が浮上している状態であると、次に給水したときにフロート3が速やかに上昇を開始するので、発電休止時間を最小限にすることができる。また、機械式ロック機構は、フロート3を例えばその上限高さ付近で機械的にロックする手段であり、水槽1内の水を抜いて内部のメンテナンスを行う場合などに使用することができる。
【0019】
さらにまた、水槽1は、その内壁面にガイドレール14を配設していることが許容される。このガイドレール14は、後述するフロート3のガイドローラー32との協働により、フロート3の上下動が円滑に行われるようにガイドする。図示の実施形態の場合、水槽1の内面が円形のであるから、4本のガイドレール14を、図4および図5に示すように、90°間隔で配設している。
【0020】
(給排水手段2)
給排水手段2は、水槽1内への給水および排水を可能にする手段である。そして、給水により水槽1内の水面を上昇させ、次に排水により水槽1内の水面を下降させることで、水面を周期的に繰り返し上下変動させる。図示の実施形態においては、図2などに示すように、給排水手段2は、互いに独立したそれぞれ一対の給水口21および排水口22を備えている。この場合、給水口21および排水口22の数は自由に設定することができる。また、所望により単一の給排水口を備えていて、給水と排水を時間的に切り換えるように構成してもよい。
【0021】
給水口21は、水槽1内に水を供給してフロート2を水槽1内で上昇させる手段であるが、単位時間当たりの給水能力をなるべく大きくすること望ましい。この場合、給水時に水面がフロート3の上面を越えても差し支えないばかりか、このときフロート3の上昇スピードを最大限まで高めることが可能になる。なお、給水口21は、図7に示す集水部8との間が配管で連絡されている場合、給水口21と集水部8との間の落差、換言すれば水圧が、水槽1内の水面が許容される範囲内のどの高さであっても、十分な運動エネルギーすなわち水力で水槽1内に給水できるような値に設定されているのが好ましい。なお、給水口21に対して、配管は、給水管21aとして機能する。
【0022】
また、給水口21の複数、例えば一対を、水槽1内面の同一水平面内において点対称関係に離間して配設すると、給水速度を高めるのに都合がよい。図示の実施形態においては、給水口21の一対が水槽1に対して正対すなわち180°間隔で配設されている。
【0023】
排水口22は、水槽1内の水を外部へ排出して水面を下降させるための手段であるが、単位時間当たりの排水能力をなるべく大きくするように形成するのが望ましい。そうすれば、排水時に水面がフロート3の下端より低下しても差し支えないばかりか、このときフロート3の下降スピードを最大限まで高めることが可能になる。また、排水口22には、排水管22aが接続している。なお、排水口22は、これを水槽1の下部に配設することにより、配水管22aを経由して水槽1内の水を容易に外部へ排出することができる。
【0024】
〔フロート3〕
フロート3は、水槽1内の水面に浮上しながら上限方向に直線運動が可能なように配設されている。すなわち、水槽1内への給水および排水に伴う水面の上下の変動にしたがって上昇および下降する。また、フロート3の上昇時に直線−回転変換機構4に対して所望の駆動力を与えるために、所望の浮力を有しているように構成する。このためには、フロート3の排水量を所望の値になるように設定すればよい。なお、フロート3の浮力は、フロート3が水面に浮かぶことによって押しのけた水の質量に等しい。これに対して、フロート3の下降時に直線−回転変換機構4に対して所望の駆動力すなわち重力を与えるために、フロート3が所望の質量を有しているように構成する。このためには、フロート3の質量を所望の値になるように設定すればよい。
【0025】
したがって、フロート3の上昇時と下降時とにおける直線−回転変換機構4の駆動力を等しくすることにより、発電電力を等しくすることができる。このためには、フロート3の浮力と質量とが略等しくなるようにフロート3を構成するのがよい。本発明において、そのための具体的構造は特段限定されないが、例えばフロート3の内部または外部にバラストを付加したり、フ図1に示すようにロート3の肉厚を大きくしたりすることができる。その結果、フロート3の排水質量が大きくなり、水面からの沈み込みが増大する。したがって、本発明において、フロート3は、その上部が水面上に露出する程度であるように構成すれば、浮力と質量がバランスするので好ましい。
【0026】
また、フロート3は、その上昇および下降の際の直線運動に後述する直線−回転変換機構4の雌ねじ体42を連動させるために、連動手段31を備えていることが許容される。すなわち、連動手段31は、フロート3の直線運動を直線−回転変換機構4の雌ねじ体42に伝えて、雌ねじ体42を直線運動させる手段である。しかし、連動部材31は、その余の構成が特段限定されない。例えば、フロート3と雌ねじ体42を直結することができる。また、所望により連動部材31は、運動比率を1対1でないリンク機構やレバー機構などであってもよい。
【0027】
図示の実施形態において、連動手段31は、水槽1内のフロート3と水槽1の外部に配設された直線−回転変換機構4の雌ねじ体42を直結している。すなわち、連動手段31の一端が水槽1の上部に固定し、中間部が水槽1の上蓋11を上下動可能に貫通し、他端が水槽1の外側へ延在して、直線−回転変換機構4の雌ねじ体42に接続している。
【0028】
さらに、フロート3は、基本的には水面の変化に応じて上下動する際に連動部材31を利用することにより、フロート3を水槽1に対して非回転にしている。すなわち、連動手段31は、4個の鍵形部材31aからなる。そして、それぞれの鍵形部材31aの下端部がフロート3の上面の重心位置を中心とする仮想円に沿って90°間隔で固定されている。さらに、各鍵形部材31aは、フロート3の上面から垂直に起立し、その中間部が水槽1の上蓋11を緩く貫通している。なお、上貫通部には滑動部材11c、例えばローラーを配設してフロート3の直線運動を円滑化して直線運動の動力損失を低減するように配慮するのが好ましい。さらに、鍵形部材31aの折曲された他端部が直線−回転変換機構4の入力端である雌ねじ体42の外周部に90°間隔で接合している。以上の構造の連動手段31と水槽1の上蓋11との間でフロート3が非回転で、かつ直線運動に対して自由であるとともに、直線−回転変換機構4がフロート3の重心位置に配置されるように構成されている。
【0029】
さらにまた、フロート3は、その形状が特段限定されないとともに、水槽1の形状にも制約を受けることがない。図示の実施形態において、フロート3は、平面視でドーナツ状をなしているが、これは水槽1内に支柱12が配設されているため、これを避ける目的でこのような形状を採用しているにすぎない。しかし、フロート3が円形または環形をなしていれば、その重心位置を容易に見出すことができる。
【0030】
また、水面が下降する際には、これに伴ってフロート3が下方へ直線移動する。フロート3が直線移動する際に、フロート3は、その質量または排水重力によって、直線−回転変換機構4を介して回転する。そのために、フロート3は、水面が上昇する際の浮力に等しい質量を有しているのがフロート3の上昇時と下降時との発電量を等しくうえで望ましい。要約すれば、水面が上昇する際には、フロート3の浮力を発電に利用することができる。一方、水面が低下していく際には、水位の低下とフロート3の低下が同期する場合にはフロート3の排水重力を、また排水を早めてフロート3の降下速度より水位の低下速度が大きい場合にはフロート3の質量を、それぞれ発電に利用することができる。
【0031】
〔直線−回転変換機構4〕
直線−回転変換機構4は、本実施形態における水力発電装置の特徴的構成部分であり、雄ねじ軸41およびこの雄ねじ軸41に螺合した雌ねじ体42を備えて構成されている。そして、雄ねじ軸41は回転自在に支持されている。これに対して、雌ねじ体42は、フロート3の上昇および下降の際の直線運動に連動して直線運動を行うが回転しないように構成されている。雌ねじ体42が直線運動を行うと、これに螺合する雄ねじ軸41を回転させるので、運動の直線−回転変換を行うことができる。すなわち、本発明において、直線−回転変換機構4は、直線運動を回転運動に変換する機構として機能する。そうして、雄ねじ軸41の回転を後述する発電機5に伝導することで、これを駆動して発電することができる。
【0032】
雄ねじ軸41は、図6に示すように、所要の有効長さの部分に雄ねじ溝41aが連続して形成されている。なお、図1に示す実施形態においては、雄ねじ軸41の図において上端すなわち軸受45から上方へ同軸関係に延長したギア軸43が一体的に延長している。なお、ギア軸43は、その外周に雄ねじ溝41aが形成されていないで、かつ後述する第1のギア71aを装架している。
【0033】
雌ねじ体42は、図6に示すように、ナットと称することもでき、中央に形成された貫通孔を有し、その内面に雌ねじ溝42aが形成されている。そして、雌ねじ体42は、その雌ねじ溝42aが雄ねじ軸41の雄ねじ溝41aに螺合していて、雄ねじ軸41の長手方向に沿って滑動して移動可能になっている。なお、雌ねじ体42が回転することなしに雄ねじ軸41に沿って上記滑動すると、雄ねじ軸41は、回転する。
【0034】
雄ねじ軸41の雄ねじ溝41aおよび雌ねじ体42の雌ねじ溝42aのそれぞれのリード角は、本発明において特段限定されない。リード角が相対的に大きいと、滑り抵抗(摩擦抵抗)が相対的に小さくなり、単位直線距離当たりで得られる回転数が相対的に少なくなるがトルクは相対的に大きくなる。反対に、リード角が相対的に小さいと、滑り抵抗(摩擦抵抗)が相対的に大きくなり、単位直線距離当たりで得られる回転数が相対的に多くなるが、得られるトルクが相対的に小さくなる。しかし、直線−回転変換機構4において、例えば雌ねじ体42の雌ねじ溝42aにボールベアリングを付加するなど滑り抵抗を低減する既知の手段を採用することができることはよく知られている。そして、この手段を適宜採用することにより、雄ねじ軸41および雌ねじ体42のリード角が相対的に小さくても、単位直線距離当たりで得られる回転数およびトルクをともに相対的に大きくすることができる。したがって、以上の事情を勘案すると、本実施形態において、雄ねじ軸41および雌ねじ体42のリード角は、約10°程度以上であればよい。しかし、好ましくは約15〜25°程度の範囲内である。
【0035】
また、直線−回転変換機構4は、前述のとおり水槽1の内部および外部のいずれにも配設することが許容される。水槽1の内部に配設すれば、水力発電装置の構造が簡単になる。また、水槽1の外部に配設すれば、直線−回転変換機構4の耐久性が高くなるとともに、そのメンテナンスが容易になるばかりか、直線−回転変換機構4の動作によって水が汚れる心配がなくなる。
【0036】
直線−回転変換機構4を水槽1に配設する位置は、本発明において一般的には特段限定されない。しかし、好適には水槽1の重心位置である。このように重心位置に直線−回転変換機構4を配設する場合、単一の直線−回転変換機構4を用いるだけでよいし、しかも直線−回転変換機構4の動作が最も安定する。
【0037】
さらに、直線−回転変換機構4は、雌ねじ体42がフロート3の上下の直線運動に1対1の連動比率で連動する場合、フロート3の上下の直線移動距離に等しい雄ねじ軸41の有効長さがあればよい。しかし、例えばリンク機構やレバー機構などを介して雌ねじ体42がフロート3の直線運動に連動する場合のように、フロート3および雌ねじ体42の連動比率が1対1より小さくなるときには、雄ねじ軸41の有効長さも同じ比率で小さくてもよい。反対に、連動比率が1対1より大きくなるときには雄ねじ軸41の有効長さも同じ比率で大きくする必要がある。図示の実施形態においては、連動比率が1対1であり、直線−回転変換機構4は、そのねじ軸41が水槽1の上面から上方へ起立している。
【0038】
直線−回転変換機構4の雄ねじ軸41を回転自在に支持する手段は、本発明において特段限定されない。図示の実施形態においては、雄ねじ軸41の両端を軸受44、45により回転自在で、かつ軸方向の移動を阻止するように支持されている。なお、軸受44は、その断面を模式的に示しているが、軸受45もほぼ同様な構造であることを許容する。また、軸受44は、図1および図3に示すように、水槽1内の底部中心部から起立する支柱12の上端に固定、例えば埋設されている。軸受45は、図1に示すように、ブラケット62を介して後述する外被6に固定されている。なお、外被6は、水槽1の上部側に配置されていて、円筒状の外被本体61と、外被本体61の上端に配置される蓋体62とから構成されている。
【0039】
〔発電機5〕
発電機5は、フロート3の直線運動を直線−回転変換機構4によって回転運動に変換して雄ねじ軸41から得たトルクにより駆動されて発電する。発電機5は、雄ねじ軸41に直結して駆動されてもよいし、間接的に駆動されてもよい。図示の実施形態において、発電機5は、後者の態様であり、後述するトルク伝達部7を介して間接的に駆動されるように構成されている。また、発電機5は、その種類が特段限定されない。例えば、同期発電機、誘導発電機、直流発電機などを適宜選択して用いることができる。
【0040】
(トルク伝達部7)
トルク伝達部7は、フロート3の浮力および質量による直線運動に伴って直線−回転変換機構4の雄ねじ軸41に生じたトルクを取り出して、発電機5を所要の回転数で駆動する手段である。また、トルク伝達部7は、その機能が、トルク取出部71、回転方向切替部72および増速器73により構成されている。以下、上記各機能部分について説明する。
【0041】
トルク取出部71は、直線−回転変換機構4の回転する雄ねじ軸41からトルクを取り出すための機能であり、本発明において、その具体的な構造は特段限定されない。例えば、図1に示す実施形態のように第1および第2のギア71a、71bにより構成されている。第1のギア71aは、雄ねじ軸41の図の上端から一体的に延長したギア軸43に固定されている。なお、ギア軸43の図1において上端は、外被6の蓋体62の内面に配設された軸受46によって回転自在に支持されている。第2のギア71bは、第1のギアに歯合している。そうして、雄ねじ軸41の回転は、第1および第2のギア71a、71bからなるトルク取出部71によりフロート3の上昇および下降によって生じたトルクが第2のギア71bから取り出される。
【0042】
回転方向切替部72は、雄ねじ軸41の回転が上昇時と下降時とで互いに逆転するが、この場合に発電機7の回転を常に所定の一定方向に転換するための機能手段である。具体的な構造は、本発明において特段限定されない。既知の各種回転方向切替手段を適宜選択して用いることができる。図示の実施形態において、回転方向切替部72は、一例としてスラスト軸72a、互いに逆向きの一対の駆動かさ歯車72b、72c、スラスタ72d、従動軸72eおよび従動かさ歯車72fを備えて構成されている。
【0043】
スラスト軸72aは、直線−回転変換機構4の雄ねじ軸42と平行に配設され、長手方向の一部の外面にスプライン溝72a1が形成されている。そして、前記第2のギア71bの内歯がスプライン溝72a1にスプライン結合している。なお、第2のギア71bは、スラスト軸72aがスラスタ72dにより上下移動をしても、第1のギア71aとの噛み合いが外れないように、図1では図示を省略しているが、上下方向の位置が規制されている。また、スラスト軸72aは、軸方向に所定距離だけスラスト可能に軸止されている。
【0044】
逆向きの一対の駆動かさ歯車72b、72cは、45°傾斜したかさ歯の部分が互いに離間対向した状態でスラスト軸72aに固定して装荷されている。また、一対の駆動かさ歯車72b、72cは、スラスト軸72aのスラストの際に、後述する従動かさ歯車72fがいずれか一方の駆動かさ歯車72bまたは72cにのみ選択的に噛み合えるような距離だけ離間している。
【0045】
従動軸72eは、スラスト軸72aと直交して配設されるとともに、回転可能に軸止されている。なお、従動軸72aは、後述する増速器73の入力軸がこれを兼ねることができる。
【0046】
従動かさ歯車72fは、従動軸72eに固定して装荷されているとともに、一対の駆動かさ歯車72b、72cのいずれか一方に噛み合い、雄ねじ軸41のトルクが上述のトルク取出部71および回転方向切替部72を経由して伝道され、従動軸(入力軸)72eを回転させる。
【0047】
スラスタ72dは、スラスト軸72aを軸方向にスライドさせて、一対の駆動かさ歯車72b、72cのうち必要な方を従動かさ歯車72fに噛み合わせるための手段である。そして、例えば電動、油圧などの遠隔操作手段を用いて遠隔制御および連動制御を可能にすることができる。
【0048】
増速器73は、回転方向切替部72および発電機5の間に介在して、回転方向切替部72から得られた回転数を発電機5の効率が高くなる回転数まで増速して、出力軸73aから出力して発電機5を駆動する手段である。既知の遊星ギアを用いた増速器を用いることができる。
【0049】
〔発電ユニットGU〕
以上、説明しトルク取出部71、回転方向切替部72、増速器73および発電機5を1単位とする発電ユニットGUを構成することができる。すなわち、直線−回転変換機構4の雄ねじ軸41から得られるトルクの大きさに応じて所望により複数の発電機ユニットGUを第1のギア71aを共有して、その周囲に配設することが可能である。
【0050】
〔水力発電装置のその他の構成〕
本発明の水力発電装置の実施形態は、以上説明した構成部分に加えて、所望により起動手段(図示しない。)を具備することができる。起動手段は、所定高さまで上昇したフロート3が水槽1内の排水に伴って自身の質量に作用する重力により下降する際に、その動きを一時的に助成する手段である。例えば、電磁石界磁形整流子電動機を主体とするセルモーターなどを起動手段として用いることができる。この場合、図示の実施形態においては、起動手段に小径のギアを付設するとともに、当該ギアを図1に示すトルク取出部71の第1のギア71aに歯合させることができる。また、所望により起動手段を給水時におけるフロート3の浮上を支援するのに利用することもできる。なお、起動手段は、本実施形態の発電電力の一部をバッテリーに充電しておき、このバッテリーを電源として付勢することができる。しかし、所望により別の電源を用いることが許容される。
【0051】
〔第1の実施形態における水力発電装置の動作〕
次に、図示の実施形態における水力発電装置の動作について説明する。
【0052】
最初に、給排水手段2により水槽1内に給水を開始すると、水槽1内の水位が上昇し、内部に収納されたフロート3が水面に浮上し、水面の上昇に伴ってフロート3が上昇する。この上昇の際に、フロート3の浮力が連動手段31を経由して直線−回転変換手段4の雌ねじ体42を連動させる。このとき、雌ねじ体42は、回転しないで雄ねじ軸41の長手方向へ移動する。この移動のときには、フロート3は回転しないでその浮力によって雌ねじ体42が押し上げられて直線運動を行うので、雌ねじ体42には浮力による大きな力が作用している。その結果、雄ねじ軸41は、直線運動が変換されて大きなトルクで回転する。この回転は、ギア軸43、トルク取出部71、回転方向切替部72および増速器73すなわちトルク伝達部7を経由して発電機5を駆動するので、フロート3が上昇している間、水力発電装置は第1の発電動作を継続する。
【0053】
次に、給排水手段2により水槽1内の排水を開始すると、水槽1内の水位が下降し、内部に収納されたフロート3がその質量によって下降する。なお、排水時には図示を省略している制御回路によって、トルク伝達部7の回転方向切替部72が従動軸72eを切り替えて回転方向が不変になっている。そうして、フロート3の下降の際に、フロート3に作用する重力が連動手段31を経由して直線−回転変換手段4の雌ねじ体42を連動させる。このとき、雌ねじ体42は、回転しないで雄ねじ軸41の長手方向の上昇時とは逆方向へ移動する。この移動のときには、フロート3に作用する重力によって雌ねじ体42が雄ねじ軸41に対して押し下がる方向に直線運動を行う。このとき、雌ねじ体42にはフロート3に作用する大きな重力が作用している。その結果、雄ねじ軸41は、直線運動が変換されて大きなトルクで上昇時とは逆方向に回転する。この回転は、ギア軸43、トルク取出部71、回転方向切替部72および増速器73すなわちトルク伝達部7を経由して発電機5を上昇時と同一の方向に駆動するので、フロート3が下降している間、水力発電装置は第2の発電動作を継続する。
【0054】
以後、水槽1内の水位の交互上下動に伴って以上の動作を繰り返すことで発電を継続することができる。なお、直線−回転変換機構4がフロート3の重心位置に配設されていることにより、上昇および下降中のフロート3の揺れに対する発電動作への影響が少なくなるとともに、全体に機械的バランスが良好になる。しかし、直線−回転変換機構4は、所望によりフロート3の重心位置以外の位置に配設することができるし、また複数の直線−回転変換機構4および発電ユニットGUをフロート3に配設することもできる。
【0055】
以上説明した本発明の実施形態によれば、水力発電装置の構造が簡単で、直線運動の回転運度への変換が容易で、信頼性が高いとともに、発電容量の割に装置を小型化できるので、小形から大型まで所望の発電容量を有する水力発電装置を製作することが可能になる。したがって、水力発電装置の発電容量について多様な要求に応えることができる。なお、1kW程度から1MW程度の比較的小型の水力発電装置であれば特に好適である。また、発電に用いる水源は、河川水、水道水、井戸水、湧水または海水など多様であってもこれを許容するものである。さらに、本実施形態の水力発電装置を潮汐発電に適用させることもできる。
【0056】
[水力発電装置の第2の実施形態]
図7および図8を参照して本発明の水力発電装置の第2の実施形態について説明する。なお、図1ないし図6と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0057】
本実施形態は、水槽1の上下動からトルクを取り出して利用するように構成している。そして、水槽1、水槽上下動手段110、直線−回転変換手段120およびトルク利用手段130を具備している。
【0058】
〔水槽1〕
水槽1は、給排水手段2´を備えていて、水槽1の内部に対する給水と、その内部に貯留した水を外部へ排水するのが可能である。したがって、水槽1は、その内部に貯留した水を含む全体の質量が給水および排水に伴って変化する。水槽1は、上記以外の機能を備えていることが許容される。例えば、図1に示す第1の実施形態におけるように、水槽1内にフロート3を配設することができる。そして、水槽1内の水位の上下動に伴うフロート3の上下動を回転運動に変換してトルクを取り出して発電の動力源とする。
【0059】
図示の実施形態において、水槽1は、それ自体の上下運動の妨げにならない給排水手段2´を備えていて、給水および排水を可能にするように構成されている。しかし、そのための具体的な手段は、既知の各種手段を選択して採用すればよいので、特段限定されない。例えば、図8に示すように、テレスコピック配管構造をそれぞれ備えた給水管21´および排水管22´を用いて給排水手段2´を構成している。なお、本実施形態において、給水管21´および排水管22´は、後述する一対のポンプ装置Pと直交する方向において、水槽1の底部に中心を挟んで対称的に配置されている。
【0060】
給水管21´は、水槽1の底部から外部へ水密に延在する外側管21aおよびこの外側管21a´の内側へシール構造21c´を介して進退可能に嵌合する内側管21b´を備えている。そして、内側管21b´が水源(図示しない。)に接続する。
【0061】
排水管22´は、水槽1の底部から外部へ水密に延在する内側管22aおよびこの内側管22aの外側へシール構造22cを介して進退可能に嵌合する外側管22bを備えている。そして、外側管22bから外部へ排水が行われる。
【0062】
〔水槽上下動手段110〕
水槽上下動手段110は、水槽1内への給水および排水に伴う水槽1の質量変化に応じて水槽1を上下運動させる手段である。水槽1の上下動は、水槽1の上記全体の質量が大きくなると降下し、反対に質量が小さくなると上昇して元の位置に復帰する態様で上下動するのが好ましい。
【0063】
図示の実施形態において、水槽上下動手段110は、水槽抱持体111および復帰機構112を備えて構成されている。
【0064】
水槽抱持体111は、水槽1を外側から抱持して水槽1が上下動を円滑に行えるように案内する案内部111a、基底部111bおよび滑動手段111cを備えて構成されている。水槽案内部111aは、水槽1を外側から緩く抱持する筒状ないし枠状をなしている部分である。水槽1は、水槽案内部111aの内部を上下動する。基底部111bは、水槽案内部111aの基部に位置して水槽抱持体111を支えている。また、図示の実施形態においては、2重底構造を構成していて、上底部Aが水槽1の底部に対向している。また、下底部Bと上底部Aの間の空間内に後述するトルク利用手段130と直線−回転変換手段120の一部が配置されている。滑動手段111cは、水槽案内部111aの側面と水槽1の側面の間に介在して水槽1の滑りを良好にする手段であり、例えばローラーを水槽案内部111aの内面に支持することによって構成されている。
【0065】
復帰機構112は、給水により内部に貯留する水の量が増加して水槽1全体の質量が大きくなったときに水槽1が下降した後、排水により水槽1全体の質量が小さくなったときに水槽1を上昇させて元の位置に戻す手段である。復帰機構112のその余の構成は特段限定されない。
【0066】
図示の実施形態においては、一例として油圧シリンダー112aおよびコイルばね112bの併用により復帰機構112が構成されている。この復帰機構112は、水槽1の下面と上底部Aとの間において水槽1の周囲に適数組、例えば90°間隔で4組が等配して配設される。なお、水槽1の底部は、復帰機構112の上端部を受け入れて定置させるために、適当な深さの凹窪部1aが上記上端部の受け入れ部分に形成されている。しかし、復帰機構112は、水槽1全体の質量が大きいときに水槽1が下降した後、排水によって水槽1の質量が小さくなったときに水槽1を上昇させて元の位置に復帰させる機構であればよいので、上記実施形態に限定されないことを理解できるであろう。
【0067】
〔直線−回転変換手段120〕
直線−回転変換手段120は、水槽1の上下運動を回転運動に変換してトルクを取り出す手段である。直線−回転変換手段120のその余の構成は特段限定されない。例えば、水槽1の底部中心部に直線−回転変換手段120を配設するのが好ましい。
【0068】
図示の実施形態において、直線−回転変換手段120は、第1の実施形態におけるフロート3の上下動を回転運動に変換する直線−回転変換機構4と同様な機構により構成されている。すなわち、直線−回転変換手段120は、雄ねじ軸121および雌ねじ体122を主体として構成されている。そして、雌ねじ体122が水槽1の底部に回転不能に固定され、雄ねじ軸121が水槽上下動手段110の基底部111bに軸受121aによって回転可能に支持されていて、水槽1の上下動に応じて回転する。しかし、所望により第1の実施形態の直線−回転変換機構4におけるのと逆の入出力関係とすることもできる。
【0069】
図示の実施形態に戻って説明を続ける。水槽1の支柱12の下部の中心部を刳り貫いて中空部12aを形成し、中空部12aに連通して雌ねじ体122を水槽1の底部中央に水密関係に配設している。なお、中空部12aの奥行寸法は、水槽1の上下動の最大移動距離に対応したねじ軸121の中空部12a内部への進入を可能とするように決める。雄ねじ軸121は、その下端が軸受21aにより水槽抱持体111の上底部Aに回転自在に軸止されている。したがって、水槽1が上下動すると、雌ねじ体122が水槽1と一緒に雄ねじ軸121の軸方向に沿って移動するのに伴い雄ねじ軸121が上下方向の位置を変えないで回転する。このため、雄ねじ軸121は、その先端が水槽1内の中空部12a内を進退する。雄ねじ軸121の回転は、水槽1の上昇時と下降時とで互いに逆方向になる。
【0070】
〔トルク利用手段130〕
トルク利用手段130は、直線−回転変換手段120により回転運動に変換されて取り出されるトルクを原動力として利用することによって作動する。トルクの利用の態様は、特段限定されない。例えば、トルクを直接汲み上げポンプなどの機械を作動させることができる。また、第1の実施形態におけるのとは別設の発電機を駆動して発電することもできる。
【0071】
図示の実施形態において、トルク利用手段130は、回転軸131、第1のギア132、第2のギア133、回転方向切替部134、増速機135および汲み上げポンプ136を備えたポンプ装置Pである。なお、ポンプ装置Pは、回転軸131および第1のギア132を共有してその複数、例えば図においては一対を配設することができる。回転軸131は、直線−回転変換手段120の雄ねじ軸121と一体化していて、その下端が軸受131aに回転自在に軸止されている。第1のギア132は、回転軸131に固定的に装架されていて、歯幅が相対的に大きくなっている。第2のギア133は、後述する回転方向切替部134の駆動軸131に固定的に装架されているとともに、歯幅が第1のギア132より狭く、第1のギア132の歯幅がひろいおで、駆動軸134aが軸方向に変位しても常に第1のギア132に噛合している。
【0072】
回転方向切替部134は、駆動軸134a、エアポンプ134b、油圧ポンプ134c、コイルばね134d、一対の逆向きかさ歯車134e、134fおよび出力かさ歯車134gを備えている。駆動軸134aは、図7において一対の軸受134a1、134a2によって上下方向に変位可能で、かつ回転自在に支持されている。エアポンプ134bは、水槽1の降下に連動して駆動軸134を押し下げる。油圧ポンプ134cは、ショックアブゾーバーとして作用する。コイルばね134dは、水槽1が上昇する際に、エアポンプ134bおよび油圧ポンプ134cの付勢が消失すると、弾力によって駆動軸134aを上方へ変位させる。一対の逆向きかさ歯車134e、134fは、駆動軸134aに離間対向して固定的に装架されている。出力かさ歯車134gは、駆動軸134aの変位に応じて一対の逆向きかさ歯車134e、134fのいずれかに噛合する。
【0073】
増速機135は、入力軸135aを備え、出力かさ歯車134gが入力軸135aに固定的に装架されている。そして、図示を省略している出力軸から増速された回転を得ることができる。
【0074】
汲み上げポンプ136は、増速機135の出力により駆動されるポンプであり、吸水管136aおよび送水管136bを備えている。本実施形態において、汲み上げポンプ136の用途は特段限定されない。しかし、好ましい用途は、発電のために使用後に水槽1から排水された水を揚水して、発電に再利用することである。また、この場合の揚水は、多様な目的に適合させることができ、例えば発電容量の大きな場合における一般的なピーク負荷時の発電に適応させることも可能であるが、通常発電時における水の使用量を低減する目的に適応させることができる。
【0075】
汲み上げポンプ136を揚水に利用する場合、後述するように吸水管136aを落差の低い集水部から吸水し、汲み上げポンプ136で加圧して送水管136bに送り出す。そして、送水管136bを利用して水力発電装置から見て高落差の位置に配設された集水部に送水する。そうして、集水部からの高落差の水を発電に再利用することができる。
【0076】
〔第2の実施形態における動作説明〕
第2の実施形態においては、水槽1内への吸水に伴う水位上昇時のフロート3の上昇と、排水に伴う水位低下時のフロート3の降下と、を利用した第1の実施形態におけるのと同様な発電が行われるのに加えて、水槽1内の水量の増減が加わる水槽1全体の質量の増減に伴う水槽1の上下運動を利用してトルクを取り出し、これを利用するようにしている。以下、詳細に説明する。
【0077】
内部に貯留する水を含めた水槽1全体の質量が水槽1内への給水時には増大していくのに伴って、水槽上下動手段110によって水槽1が降下する。水槽1が降下すると、直線−回転変換手段120の雌ねじ体122が水槽1と一緒に降下するので、雌ねじ体122が噛合している雄ねじ軸121が反時計方向へ回転する。この回転により第1のギア132が同方向へ従動して回転し、第1のギア132に噛合する第2のギア133が従動して時計方向へ回転する。
【0078】
一方、駆動軸134aは、エアポンプ134bおよび油圧ポンプ134cにより図7において下方へ押されている。このため、方向切替部134の出力かさ歯車134gは、図において上側のかさ歯車134eに噛合している。水槽1の下降時に第2のギア133は、上述のように時計方向へ回転するので、この回転により駆動軸134a、かさ歯車134eおよび出力かさ歯車134gを経由して増速機135の入力軸135aが時計方向へ回転してさらに増速し、汲み上げポンプ136が増速機135の出力により作動する。
【0079】
次に、水槽1が排水を開始すると、水槽1全体はの質量が低下していくのに伴って、水槽上下動手段110によって水槽1が上昇する。水槽1が上昇すると、直線−回転変換手段120の雌ねじ体122が水槽1と一緒に上昇するので、雌ねじ体122が噛合している雄ねじ軸121が今度は時計方向へ回転する。この回転により第1のギア132が時計方向へ回転し、第1のギア132に噛合する第2のギア133が従動して反時計方向へ回転する。
【0080】
一方、駆動軸134aは、水槽1の上昇によってエアポンプ134bおよび油圧ポンプ134cの付勢がなくなるために、コイルばね134dの弾力によって図7において上方へ押し上げられる。このため、方向切替部134の出力かさ歯車134gは、図において下側のかさ歯車134fに噛合する。したがって、第2のギア133が上述のように反時計方向へ回転すると、出力かさ歯車134gは、水槽1の降下時と同じ時計方向へ回転し、増速機135がこれを増速して汲み上げポンプ136を駆動する。要するに、汲み上げポンプ136は、水槽1の降下時および上昇時のいずれにおいても作動する。
【0081】
[水力発電装置の第3の実施形態]
図9を参照して本発明の水力発電装置の第3の実施形態について説明する。なお、図7および図8に示す水力発電装置の第2の実施形態と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0082】
本実施形態は、水槽1の上下動から得られるトルクだけを取り出して発電する構成である。そして、第2の実施形態におけるのと同様な上下動手段110および直線−回転変換手段120を具備するとともに、構造が簡素化された水槽1と、発電機Gからなるトルク利用手段130とを具備している。
【0083】
水槽1は、図示を省略している吸排水手段2´を備えているとともに、その底部内面の中央から起立した有底中空筒体16を備えている。上記吸排水手段2は、図8に示す構造と同じである。上記有底中空筒体16内に形成される中空部は、水密関係を維持しながら水槽1の底面を貫通して外部に臨んでいる。なお、水密関係の維持には、後述する直線−回転変換手段120の雌ねじ体121が介在することが許容される。また、水槽1は、上述のように構造が簡素化されているので、所望により第1の実施形態に比較して深さ寸法を小さくすることができる。
【0084】
水槽上下動手段110は、第2の実施形態と同様な構成である。また、トルク利用手段130は、汲み上げポンプ136を発電機136に置き換えた以外の構成が第2の実施形態と同じ構成である。なお、符号111dは、水槽案内部111aの開放端部を覆う上蓋である。
【0085】
[水力発電装置の第4の実施形態]
図10を参照して本発明の水力発電装置の第4の実施形態について説明する。
【0086】
本実施形態は、第1の実施形態の構成に加えて、フロート3の上昇および下降動作の所定区間において発電しないように制御する発電制御手段GCを具備している。図1に示す第1の実施形態においては、フロート3の上昇および下降動作の全区間において発電することができる。しかしながら、全区間における発電に止まらずフロート3の上昇および下降動作の一部の区間において発電をしない態様であっても、本発明の本質は、何ら変化していないことが既述の説明から明白である。そこで、本実施形態においては、例えばフロート3の上昇動作の区間またはフロート3の下降動作の区間などの所望の一部区間において発電しないように発電制御手段GCによって制御するものの残余の区間においては発電する構成を採用している。
【0087】
〔発電制御手段GC〕
発電制御手段GCは、フロート3の上昇および下降動作の所定区間において発電しないように制御する手段であればよく、そのための具体的な構成については特段限定されない。発明の理解を容易にするために、発電制御手段GCの具体的な構成を例示すれば以下のとおりであり、この例示から明らかなように多様な構成を採用することが可能であることを理解できる。
(1)上記所定区間において、直線−回転変換機構4を無能化させて、フロート3が自由に上昇または下降できるように構成する。すなわち、直線−回転変換機構4を無能化させることにより、フロート3が上昇または下降しても直線−回転変換機構4がトルクを発生しないので、発電機5が駆動されなくなる。
(2)上記所定区間において、直線−回転変換機構4と発電機5の間のトルク伝達を停止させるように構成する。すなわち、フロート3が上昇または下降するのに伴って直線−回転変換機構4がトルクを発生するが、このトルクは発電機5に到達しないので、発電機5が駆動されなくなる。後述する図示の実施形態は、本構成の一例である。
(3)上記所定区間において、発電機5を無負荷運転させるように構成する。すなわち、発電機5を負荷回路から開放させる。これにより、負荷回路から見ると、水力発電装置が発電しなくなる。
【0088】
図10に示す実施形態において、発電制御手段GCは、直線−回転変換機構4の雄ねじ軸41とギア軸43とが分離しているとともに、雄ねじ軸41とギア軸43との間に介在している符号45を付した部材の内部に、雄ねじ軸41の上部の軸受および発電制御手段GCが内蔵されている。そして、発電制御手段GCは、電磁クラッチによって構成されていて、雄ねじ軸41とギア軸43との結合/分離を切り換え可能にしている。すなわち、電磁クラッチが付勢されると雄ねじ軸41とギア軸43とが結合し、消勢されると分離する。発電制御手段GCを制御して雄ねじ軸41とギア軸43とが結合すれば、雄ねじ軸41のトルクがギア軸43に伝達される。これに対して、発電制御手段GCを制御して雄ねじ軸41とギア軸43とが分離すれば、雄ねじ軸41のトルクは、ギア軸43に伝達されない。
【0089】
したがって、フロート3の上昇および下降時の所望区間において、発電制御手段GCの電磁クラッチを消勢すれば、雄ねじ軸41が回転しても発電は行われない。なお、発電制御手段GCをフロート3の動きに連動して作動させるためには、例えば図示を省略しているセンサなどの検出手段によりフロート3の移動方向および位置を検出して、フロート3の移動方向および位置が所定区間に到達したことを判定したときに、発電制御手段GCを上述のように動作させて、発電しないようにすることができる。
【0090】
次に、前記所定区間がフロート3の上昇時である第1の態様と、同じく下降時である第2の態様とにおける水力発電装置のその他の構成および効果について説明する。
【0091】
〔第1の態様における構成および効果〕
給排水手段2は、水槽1内への単位時間当たりの給水量(給水速度)を多く(高く)して水槽1内の水位上昇を早めることができる。給水速度を高めると、水槽1内の水の動きが乱れやすくなり、フロート3が比較的小型で、その接水面積が小さい場合には影響を受けやすくなる。その結果、フロート3が上昇時に揺れて直線−回転変換機構4が円滑な変換動作を行わなくなったり、直線−回転変換機構4の耐久性が低下したりする虞がある。なお、フロート3が大きい場合には、その質量が大きくなるために、水槽1内の水の動きが乱れてもその影響を受けにくくなる。
【0092】
これに対して、第1の態様においては、フロート3の上昇時に直線−回転変換機構4に発電による負荷が作用しなくなり、したがってフロート3がフリーになるので、上述した不都合が生じにくくなる。
【0093】
フロート3は、その下降時にその質量によって発電に利用するトルクを発生させるので、たとえフロート3が比較的小型であったとしても、大きなトルクを得るためには、質量をなるべく大きく設定するのが好ましい。なお、フロート3の質量は、フロート3が水に浮く範囲内で大きく設定することが可能である。
【0094】
第1の態様によれば、フロート3の上昇時に給水に伴って水の動きの乱れが発生したとしても、その区間では発電しないので、フロート3、直線−回転変換機構4および発電機5に対する影響は実用上問題を生じにくいから、フロート3および水槽1を小型化してコンパクトな小電力用の水力発電装置を提供することができる。
【0095】
〔第2の態様における構成および効果〕
第2の態様においては、水槽1内の水位の上昇時に水面に浮かぶフロート3を経由して発電に利用するトルクを発生させ、下降時には発電しない。したがって、発電時に大きなトルクを得るためには、フロート3の質量は殆ど影響することなしに、フロート3に作用する水の浮力が大きいのであればよい。このため、フロート3は、軽量であってもよく、その接水面積さえ大きく設定されていれば、水位の上昇時に水の大きな浮力をトルクに変換することができる。なお、フロート3の質量は、フロート3が自重によって降下時できる程度にあればよい。
【0096】
第2の態様によれば、フロート3の質量を小さくすることが可能であるから、軽量で移動が容易な水力発電装置を提供することができる。
【0097】
[水力発電装置の第5の実施形態]
図11ないし図13を参照して水力発電装置の第5の実施形態を説明する。なお、図1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。本実施形態は、フロート3の降下の際の発電に必要な質量を液体によって得るとともに、フロート3の上昇時の発電に必要な浮力を気体によって得るように構成されている。また、水槽1の横断面積がフロート3のそれに比較してそれほど大きくなくても、フロート3に邪魔されることなしに、フロート3の上方から水を水槽1内に給水可能であるとともに、給水時の水の乱れが少なくなるように配慮された給水手段2Aおよび揚水を配慮した排水手段2Bを具備している。さらに、発電機5のトルク伝達部7の構成を簡素化している。
【0098】
〔フロート3〕
フロート3は、第1および第2の外囲器33、34が一体に結合している。第1の外囲器33は、その内部に液体、例えば水をフロート3の全体の質量がフロート3の降下の際の発電に必要な所望値になる量を内蔵できるような容積を有している。換言すれば、フロート3の質量は、そのかなりの割合で内部に注入される水により決定されるように構成されている。第2の外囲器32は、その内部に気体、例えば大気がフロート3の浮力がフロート3の上昇の際の発電に必要な所望値になる量を封入できるような容積を有している。このため、フロート3の降下時と上昇時の発電量を等しくすることを容易に、かつ安価に実現することができる。なお、第1の外囲器33に開閉栓を配設することにより、製作、保管および輸送時には内部の水を抜いておくことが可能になる。そのため、水力発電装置の軽量化および輸送の便を図ることができる。また、第2の外囲器34にも開閉栓を配設することにより、内部に少量の水を入れるなどしてフロート3の浮力を調整することができる。
【0099】
また、フロート3は、図11に示すように、第1および第2の外囲器33、34が直接接合し、かつ第2の外囲器34が第1の外囲器33の下に位置して一体に結合しているのが好ましいが、所望により適当な中間部材を介して離間して一体に結合してもよい。図示の実施形態において、フロート3の第1および第2の外囲器33、34は、外形が同一形状である。また、水槽1が円筒状をなしている関係で、フロート3は外形が円盤状をなしていて、両者の間には適当な隙間が存在する。
【0100】
さらに、フロート3は、適宜の材料を用いてこれを形成することができる。例えば、FRP(強化プラスチックス)、金属、窯業材料および木材などを用いることができる。しかし、発電効率を高くするためには、フロート3が軽量であるのが好ましく、このためにFRP、軽金属およびSUS(ステンレス鋼)を主材料として、しかも許容範囲内で肉薄に形成されているのが好ましい。なお、FRPに用いる強化繊維には、ガラス、炭素および金属酸化物などの無機質繊維を用いることができる。また、軽金属としてはアルミニウム(Al)、チタン(Ti)およびマグネシウム(Ma)あるいはこれらの1種または複数種を成分として含む合金を用いることができる。
【0101】
さらにまた、フロート3は、その内部と液密に遮断されて上下に貫通する貫通孔3aが適当数形成されている。図示の実施形態の場合、直線−回転変換機構4を中心とする円周に沿って90°間隔で4個の貫通孔3aが形成されている。そして、これらの貫通孔3a内に給水管21が自由に相対的に移動可能に挿通している。
【0102】
〔給水手段2A〕
給水手段2Aは、給水管21、上部タンク23、電磁バルブ24および水位センサSを備えている。上部タンク23は、水槽1の上部に水槽1と一体的に配設され、外部の図示しない水源から流入管23aを経由して水槽1への給水に先立ち予め水を貯留している。上部タンク23の底部から給水管21が電磁バルブ24を介して下方へ延在して水槽1の内部に挿入されている。そして、給水管21の先端は、水槽1の底部に接近した位置にある。このため、給水時における水の暴れを抑制することができる。水位センサSは、水槽1内の水位を制御して、所定量の水を内部に導入するために配設されており、例えば給水管21の外面に装着される。
【0103】
また、上部タンク23に対する導入用水の取り入れは、可動液体槽1への水の導入、発電および排出の各工程中であっても連続して継続することができる。このため、上部タンク31に対する導入用水の単位時間当たりの供給量は、小さくても差し支えない。
【0104】
〔排水手段2B〕
排水手段2Bは、下部タンク25および電磁バルブ26を備えている。下部タンク25は、水槽1から排出された水を一時的に貯留する手段であり、図示しないポンプで外部へ放出したり、揚水して再利用したりしやすくしている。なお、符号25aは、排出管である。電磁バルブ26は、水槽1内を排水する際にオン(開)し、給水する際にはオフ(閉)している。
【0105】
〔直線−回転変換手段4〕
直線−回転変換手段4は、水槽1内に配設され、その雄ねじ軸41の下端が軸受44により水槽1の底部の好ましくは重心位置に軸止され、上端が軸受45により水槽1の上蓋11に軸止されている。また、雄ねじ軸41の上端から上方へ一体に延在するプーリー軸43´が上部タンク23の底部外面に軸受46により回転自在に軸止されている。プーリー軸43´の下部は、電磁ブレーキ47によってその回転を拘束可能に構成されている。雌ねじ体42は、その一対がフロート3の上部および下部に分かれて固定されている。さらに、直線−回転変換手段4が水から遮蔽されるように、水遮蔽手段43が配設されている。
【0106】
水遮蔽手段43は、その一対が用いられ、一方が上部の雌ねじ体42と軸受45との間において雄ねじ軸41を外部と水密に包囲している。また、他方が下部の雌ねじ体42と軸受46との間において雄ねじ軸41を水密に包囲している。図示の実施形態において、水遮蔽手段43としてベローズを用いているが、これに限定されるものではなく、その他の可動防水手段、例えば水密テレスコピック機構などを用いることができる。
【0107】
〔トルク伝達部7〕
トルク伝達部7は、トルク取出部71、回転方向切替部72および増速器73により構成されている。
【0108】
(トルク取出部71)
トルク取出部71は、プーリー軸43´、第1および第2のプーリー71a´、71b´、タイミングベルト71c´回転軸71d´ならびに歯車71e´、71f´により構成されている。第1のプーリー71a´は、プーリー軸43´に装架されている。第2のプーリー71b´は、プーリー軸43´と離間した回転軸71d´に装架され、タイミングベルト711dを介して第1のプーリー711aに連動する。回転軸71d´には、歯車71e´、71f´が装架されている。
【0109】
(回転方向切替部72および増速器73)
回転方向切替部72および増速器73は、第1の実施形態と同様の構成である。
【0110】
以上説明した第5の実施形態によれば、フロート3の第2の外囲器34の容積を大きくしてフロート3の上昇時における浮力が大きくなるように構成するとともに、第1の外囲器33の容積を同様に大きくし、その内部に水などの液体を注入してフロート3の質量を所望に増大させるので、フロート3の上昇時および降下時のいずれにおいてもほぼ同等の発電を行うことができる。また、フロート3の質量設定に水などの液体を用いるので、安価で、しかも容易であるとともに、輸送など不要時にはフロート3内の液体を抜くことができるので、軽量化を図ることもできる。なお、水槽1内の排水時にフロート3より早く水位が低下するように排水すれば、外囲器31に液体を注入しても所望の質量を直線−回転変換機構4に作用させることができる。
【0111】
[水力発電装置の第6の実施形態]
図14を参照して水力発電装置の第6の実施形態を説明する。なお、図11と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。本実施形態は、フロート3の第2の外囲器34の容積を第5の実施形態に比較して小さくしたものである。その容積を小さくする程度は、フロート3が水槽1内の水面に浮いて水面の上昇に伴って上昇するが、実質的な発電を行うことができないように設定されている。
【0112】
したがって、本実施形態は、フロート3が降下する際にのみ発電する態様の場合に好適である。
【0113】
第6の実施形態によれば、フロート3の第2の外囲器34の容積が小さいので、フロート3を全体として小さくすることができる。その結果、水体力発電装置を小形、かつ安価に提供することができる。また、フロートの大きさを一定に維持する場合、フロート3の第1の外囲器33の容積を相対的に大きくすることができるから、フロート3が下降するときの発電量を大きくすることができる。さらに、所望により電磁ブレーキ47に加えて図示しない電磁クラッチを雄ねじ軸41とプーリー軸43´との間に介在させるか、または上記電磁ブレーキ47に上記の機能要素を追加することにより、フロート3の上昇中、直線−回転変換機構4をフリーにして、フロート3の上昇を円滑ないし迅速にすることができる。
【0114】
[水力発電装置の第7の実施形態]
図15を参照して水力発電装置の第7の実施形態を説明する。なお、図11と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。本実施形態は、フロート3が薄肉で、しかも内部が中空のままで使用されるように構成されている。
【0115】
本実施形態においては、上述の構成であるため、フロート3の浮力を非常に大きくできるので、フロート3が水位とともに上昇する際に、直線−回転変換機構4に大きなトルクを与えることができる。したがって、大きなトルクを利用して発電量を大きくすることができる。
【0116】
これに対して、水位とともにフロート3が降下する際には、フロート3の質量が小さいから、直線−回転変換機構4がたとえ回転したとしても発電するのに必要なトルクが発生しない。なお、第6の実施形態におけるような電磁クラッチを装備して、フロート3の降下時に電磁クラッチを解除して直線−回転変換機構4をフリーにすることにより、フロート3の降下をスムーズに、かつ迅速に行わせることができる。
【0117】
[水力発電システムの第1の実施形態]
図16および図17を参照して本発明の水力発電システムの第1の実施形態について以下説明する。本実施形態においては、図1ないし図6を参照して説明した第1の水力発電装置の対であるWG1およびWG2を、その水路を縦列接続することによって水力発電システムの基本配置が構成されている。なお、所望により基本配置の複数をさらに並列および/または直列に接続することができる。
【0118】
すなわち、図10において、上流に位置する集水部8において発電に使用する水量を確保し、集水部8から所要落差(あるいは水圧)が得られる位置に第1の水力発電装置WG1を配設し、その給水管21a1を集水部8に水路を介して接続する。また、第1の水力発電装置WG1の排水管22a1から所要落差(あるいは水圧)を得る位置に第2の水力発電装置WG2を配設し、その給水管21a2を第1の水力発電装置WG1の排水管22a1に水路を介して接続している。さらに、第2の水力発電装置WG2の配水管22a2から流出する排水の少なくとも一部を集水部8にポンプ9および揚水管10を介して揚水するように構成されている。
【0119】
次に、図16、図17および図1を参照して水力発電システムの動作を説明する。
【0120】
図16の集水部8から供給される水は、図17の時間t0において第1の水力発電装置WG1の給水管21a1から水槽1内に給水が開始される。これにより図1において水槽1内の水位が上昇し、フロート3が上昇を開始して発電が時間t1まで行われる。
【0121】
時間t1になると、給水が停止され、引き続いて排水が開始される。これによりフロート3が下降を開始するので、排水時の発電が時間t2まで行われる。また、これと同時に、第1の水力発電装置WG1の排水が水路を介して第2の水力発電装置WG2の給水管22a2からその水槽1内に給水され、第2の水力発電装置WG2では時間t2までフロート3の上昇による給水時の発電が行われる。
【0122】
時間t2になると、第1の水力発電装置WG1では、再び図16の集水部8から水が水槽1内に供給されるから、図17の時間t3まで給水時の発電が行われる。これと同時に、第2の水力発電装置WG2では、給水が停止し、続いて排水に切り換えられるので、時間t3まで排水時の発電が行われる。
【0123】
さらに、第2の水力発電装置WG2からの排水の一部がポンプ9および揚水管10によって揚水されて集水部8に供給される。このように本実施形態においては、発電に使用された水の一部が循環して再利用されるので、発電のために消費される水量を低減することが可能になる。したがって、ポンプ9に高効率なものを使用することにより、発電電力の低減をなるべく少なくして、かつ水力発電システムから取り出せる電力を多くすることができる。
【0124】
以上の説明から理解できるように、第1の水力発電装置WG1と第2の水力発電装置WG2とは、それぞれの給排水のタイミングが互いにずれして運転を行っており、これにより第1の水力発電装置WG1の排水を第2の水力発電装置WG2の給水として直ぐに利用できるように構成されている。
【0125】
本実施形態においては、第2の水力発電装置WG2からの排水の少なくとも一部をポンプ9により集水部8に揚水される水が循環して発電に使用されることになる。このため、水力発電に使用する水量を節減することが可能になる。なお、ポンプ9の駆動のための電力は、第2の水力発電装置WG2が発電した電力を用いることができる。しかし、所望により、別系統から得た電力を使用することも許容される。
【0126】
また、本水力発電システムによれば、川の上流や例えば水道システムの中の給水塔を集水部8とし、川下や給水搭につながる水道管に水力発電装置WG1、WG2を設置してもよい。なお、水道システムの場合、所要落差に相応する水圧があれば実際の落差がなくても本発明の水力発電システムが正常に作動するので、特段の問題はない。
【0127】
[水力発電システムの第2の実施形態]
図18を参照して水力発電システムの第2の実施形態について説明する。なお、図16と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。本実施形態は、第2の水力発電装置WG2からの排水をいったん第2の集水部8Bに溜め、この集水部8Bに溜まった排水をポンプ9によって落差の高い位置にある第1の集水部8Aに揚水するように構成した点において第1の実施形態と異なる。
【0128】
本実施形態によれば、第2の水力発電装置WG2の排水工程ではない時間帯であっても揚水が可能なので、比較的小容量のポンプPであっても所望量の揚水を行うことができる。また、第2の実施形態の水力発電装置が具備しているポンプ装置Pを用い揚水すれば、揚水のために電力を用いる必要がなくなる。さらに、所望により第2の実施形態の水力発電装置において、ポンプ装置Pに代えて発電機を装備するとともに、揚水用のポンプを集水部またはその近傍に配設して、上記発電機で発生した電力を使用してポンプ装置Pを駆動することができる。これによりポンプ装置Pに対する配管が簡素化したり、ポンプの配設位置に対する自由度が向上したりする。
【0129】
[水力発電システムの第3の実施形態]
図19および図20を参照して水力発電システムの第3の実施形態について説明する。本実施形態は、これを概略的に説明すれば、図11を参照して説明した第5の実施形態の水力発電装置の複数台、例えば図示のように3台を、その主要部を用いて水の流れが直列的になるように直結し、複数台の水力発電装置をコンパクトで動作に無駄のない水力発電システムを構成している。
【0130】
すなわち、図19において、符号LG1は第1段目の水力発電装置を、同様に符号LG2は第2段目を、符合LG3は第3段目の水力発電装置を、それぞれ表している。
【0131】
第1段目の水力発電装置LG1は、図11との対比において理解できるように、下部タンク25が取り外されている。第2段目の水力発電装置LG2は、上部タンク23および下部タンク25がともに取り外されている。第3段目の液体力発電装置LG3は、上部タンク23が取り外されている。
【0132】
第1段目の水力発電装置LG1は、上部タンク23からの水が最初に水槽1に導入されて、最初に発電を開始する。また、第1段目の水力発電装置LG1の水槽1の底部が第2段目の水力発電装置LG2の上部タンク23の底板部に直接的に接合している。これに伴って第1段目の水力発電装置LG1の水槽1の底部の電磁バルブ26が取り外されているが、第2段目の水力発電装置LG2の電磁バルブ24が電磁バルブ26の機能をも兼ねている。このために、第1段目の水力発電装置LG1において、水槽1が排水を行うと、それが即時に第2段目の水力発電装置LG2の水槽1に対する給水となる。その結果、水槽1に対する水の導入が早くなるので、導入時に生じる発電の休止時間が短くなる。
【0133】
第2段目の水力発電装置LG2は、そこに第1段目の水力発電装置LG1で発電した後の水が引き続いて導入されるので、2番目に発電を行う。また、第1段目の水力発電装置LG1における第2段目の水力発電装置LG2との接合と同様な構成であって、第3段目の水力発電装置LG3の電磁バルブ24が第2段目の水力発電装置LG2の電磁バルブ26の機能をも兼ねている。したがって、その作用および効果においても上述と同じである。
【0134】
第3段目の水力発電装置LG3は、そこに第2段目の水力発電装置LG2で発電した後の水が引き続いて導入されるので、最後に発電を行う。また、上述と同様な理由により、第2段目の水力発電装置LG2からの排水が即時に第3段目の水力発電装置LG3の水槽1内に導入されるので、上述と同じ作用、効果を奏する。水槽1の降下時に続いて上昇時に行われた発電が終了すると、電磁バルブ26がオン(開)して下部タンク25内に水が排出されるので、外部へ排水される。
【0135】
次に、水力発電システムの第3の実施形態における動作のタイミングを図20に示すタイミングチャートを参照して説明する。この例では、水槽1への給水時間を、説明の都合上降下および上昇時間に対して、その1/3に設定しているが、単位時間当たりの給水量を増加することにより実際にはさらに短縮することが可能である。
【0136】
なお、図20おいて、第1行は「段」が3台の液体力発電装置の中の段数を、いずれも時間が等しい単位時間1−27が時間経過の順を示す。第1列の「段」は液体力発電装置の段を、数字1〜3は段数を、それぞれ示している。第2列において、「給水」は可水槽1に対する水の導入工程を、「発電(上昇)」は給水が行われた水槽1の上昇時に発電が行われる工程を、「発電(降下)」は排水された水槽1の降下時に発電が行われる工程を、「前排水/給水」は前の段における水槽1の排水と自段における給水が同時的に行われる工程を、「排水」は最終段(第3段)における下部タンク25への排水を、それぞれ示す。「発電台数」は単位時間における3台中の発電台数を、「発電率(%)」は単位時間1−27の中における発電時間の%を、それぞれ示す。時間単位の1−27の列と給水−排水の行との交点に位置する欄に記入された「矢印」は給水/排水の工程であることを、「○」は発電の工程であることを、それぞれ示している。したがって、発電工程において○が3個連続していれば、単位時間×3陪の時間の間発電が行われることを示している。
【0137】
図20から理解できるように、3台の水力発電装置LG1、LG2、LG3が給水開始から排水終了までの各工程において常に、しかも同時に発電動作を行うので、連続した電力が得られる。また、フロート3が上昇から下降に転移する際に発電出力が瞬間的に低下ないし瞬断しやすいが、ある段の水力発電装置が上記転移の際に他の段の水力発電装置は上昇または下降途中で安定した発電を行っているので、全体としての発電に与える影響は少ない。
【0138】
以上説明したように、水力発電システムの第3の実施形態は、上述の動作を繰り返し行うのに加えて、複数段の水力発電装置LGを直列に直結した構成であるから、その動作に要する水の所要落差が顕著に低くてよいという利点がある。また、第1段目の水力発電装置LG1に対する給水を行うのに特段の落差を付与する必要がないという簡便さに特徴がある。しかも、1回の給水で多段連続発電を行うので、高い発電効率と安定した発電電力を得ることができるという優れた利点を有している。
【符号の説明】
【0139】
1…水槽、11…上蓋、11a、11b…開口、12…支柱、13…水槽本体、2…給排水手段、
21…給水口、21a…給水管、22…排水口、22a…排水管、3…フロート、31…連動手段、
31a…連動部材、4…直線−回転変換機構、41…雄ねじ軸、41a…雄ねじ溝、42…雌ねじ体
、42a…雌ねじ溝、43…ギア軸、44、45、46…軸受、5…発電機、6…外被、61…外被本体
、62…蓋体、7…トルク伝達部、71…トルク取出部、71a…第1のギア、71b…第2のギア
、72…回転方向切替部72、73…増速器、8…集水部、9…ポンプ、10…揚水管、
GU…発電ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水および排水が可能な水槽と;
水槽内に浮上するように配設され、水槽内への給水および排水に伴う水面の変動にしたがって上昇および下降するフロートと;
雄ねじ軸および雄ねじ軸に螺合した雌ねじ体を備え、雄ねじ軸は回転自在に支持され、雌ねじ体はフロートの上昇および下降の際の直線運動に連動し、かつその連動時の直線変位により雄ねじ軸を回転させるように配設された第1の直線−回転変換機構と;
雄ねじ軸の回転により駆動されて発電する発電機と;
を具備していることを特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
フロートは、水槽外へ延在する連動手段を備えており;
第1の直線−回転変換機構は、水槽の外部に配設されているとともに、雌ねじ体がフロートの連動手段に配設されている;
ことを特徴とする請求項1記載の水力発電装置。
【請求項3】
フロートは、水槽に対して不回転であり;
第1の直線−回転変換機構は、フロートの重心位置近傍に配設されている;
ことを特徴とする請求項1または2記載の水力発電装置。
【請求項4】
水槽内への給水および排水に伴う水槽の質量変化に応じて水槽を上下運動させる水槽上下動手段と;
水槽の上下運動を回転運動に変換してトルクを取り出す第2の直線−回転変換手段と;
第2の直線−回転変換手段により回転運動に変換されたトルクによって作動するトルク利用手段と;
を具備していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の水力発電装置。
【請求項5】
フロートの上昇および下降動作の所定区間において発電しないように制御する発電制御手段を具備していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の水力発電装置。
【請求項6】
フロートは、第1の外囲器および第1の外囲器の下部に結合した第2の外囲器を備え、第1の外囲器内には液体が注入され、第2の外囲器内には気体が注入されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の水力発電装置。
【請求項7】
対をなす請求項1ないし6のいずれか一記載の水力発電装置を具備し、対をなす水力発電装置の一方を第1の水力発電装置とし、他方を第2の水力発電装置としたとき、第2の水力発電装置の給水部を第1の水力発電装置の排水部に給水可能な落差を介して接続し、第2の水力発電装置の排水部と第1の水力発電装置の給水部側との間にポンプを介在させて第2の水力発電装置からの排水の少なくとも一部を第1の水力発電装置に循環給水するとともに、第1および第2の水力発電装置を給排水のタイミングを互いにずらして運転することを特徴とする水力発電システム。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか一記載の水力発電装置の複数が水槽を直結していて、多段発電を行うように構成されていることを特徴とする流体力発電システム。

【図17】
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【図20】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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