説明

水力発電装置および水力発電方法

【課題】自然環境に左右されることがなく、不安定な電力の生成を解消し、かつ、設置した場所に対して海流等の向きによらず、また、膨大な運転動力を消費することなしに、極めて省エネルギー化され、かつ運転の容易な水力発電装置を提供することを課題とする。
【解決手段】水力発電装置1は、水圧により水中側から水面側に向かう揚水流を発生させて水力発電を行う水力発電装置1において、一端を導入口3cとして他端を噴射口3aにする揚水管3と、この揚水管の噴射口から噴射する噴水柱の周りを包囲するように設けた噴水通路20と、この噴水通路内で水圧により噴き上がる噴水柱の頂上から落下する水を受け取る貯水槽6と、この貯水槽に一旦貯水された水を前記貯水槽外へ排出する排出手段8と、前記揚水管の導入口と噴射口との間の管内に配置され、当該管内を流れる揚水流により回転し、水力発電機4を介して発電を行う水車5と、を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湖、沼、河川、ダム等の淡水あるいは海等の海水が人工あるいは自然に所定の深さで貯水されている環境において使用される水力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、人工のダム等により水力発電を行う水力発電装置や、あるいは、潮流や海流等を利用して発電を行う装置が様々提案されている。例えば、特許文献1には、潮流および海流の流力によって回転する水車と、この水車を支えるサイド艇および中央艇と、このサイド艇および中央艇に設置した水車の回転エネルギーにより駆動する発電機と、を備え、前記水車が、海面に配置される羽板型水車と、海中に配置される潜水型水車である構成の発電システム構造艇が記載されている。
【0003】
また、他の例として、特許文献2には、海中に錨および係留鎖を介して設置する筒型直方体形状の浮体と、この筒型直方体の内部に配置された水車と、この水車の回転を電気に変換する発電機と、この発電機による発電を送電する海底送電線とを備える海流発電潜水艇が記載されている。
【0004】
さらに、その他の例として、特許文献3には、吸水管を設け、この吸水管の上部を喫水線に対して7〜8m突出させた高さとし、気密にして開閉自在のキャップを有する空気灯を備えた一本または複数本のパスカル管とし、このパスカル管を下方に湾曲させて船底に向かう落水管と接合させて、さらに、接合させた落水管を横に曲げて船尾に向かう噴水管を設ける構成が記載されている。そして、落水管内には水車を設け、この水車に連結する発電機を設けている。さらに、船尾の海中に開口する噴射口に接続されている排水管は、他の管より拡大した状態とされ、内部に排水車を設けてモータで回転できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−297737号公報
【特許文献2】特開平07−259064号公報
【特許文献3】特開昭61−215460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の水力発電装置あるいは方法では、次の事情を抱えていた。
特許文献1、2に記載の装置では、海流あるいは潮流の流力により水車を回転させることで発電を行っているため、自然環境によって発電効率が大きく左右されることになり、安定的な電力の確保は困難であった。また、船舶に設置される装置は、海流あるいは潮流の流れる方向に合わせて装置自体の向きを固定する必要があり、そのための場所が必要であることから、設置条件に自由度が乏しく、また、装置の向きを固定する構造も自然環境に合わせる必要があることから、装置の向きを固定することが容易ではなかった。
【0007】
特許文献3に記載の装置では、船舶に吸水管、パスカル管あるいは落水管等を使用し、かつ管内の排水車を排水車用モータで駆動させて発電を行っているため、発電量が小さく、商業的な発電装置として稼動させることには無理があった。
【0008】
そこで、本発明は、前記事情を考慮して創案されたものであり、自然環境に左右されることがなく、不安定な電力の生成を解消し、かつ、設置した場所に対して海流等による影響を最小限にし、また、膨大な運転動力を消費することなしに、極めて省エネルギー化され、かつ運転の容易な水力発電装置および水力発電方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために、以下に示すような構成とした。すなわち、本発明に係る水力発電装置は、水圧により水中側から水面側に向かう揚水流を発生させて水力発電を行う水力発電装置において、前記水力発電装置は、水中に配置して一端を水中側に向けて水の導入口にすると共に、他端を水面側に向けて水の噴射口にする揚水管と、この揚水管の噴射口を囲む位置から水面側に向けて大気に連通させて配置し、水圧により前記噴射口から噴射する噴水柱の周りを包囲するように設けた噴水通路と、この噴水通路内で水圧により噴き上がる噴水柱の頂上から落下する水を受け取るように、前記噴水通路の上方で、かつ水面より低い位置に設置された貯水槽と、この貯水槽に一旦貯水された水を前記貯水槽外へ排出する排出手段と、前記揚水管の導入口と噴射口との間の管内に配置され当該管内を流れる揚水流により回転し、水力発電機を介して発電を行う水車と、を備える構成とした。
【0010】
かかる構成により、水力発電装置は、水中に浮遊あるいは水中に固定されるように設置される。例えば、水力発電装置は、水中に位置して水圧を受ける構造体がここでは噴水通路として設置され、その噴水通路の水中側に設置されている揚水管の導入口から水が水圧により導入されると共に噴射口から水面に向かって水が噴射して貯水槽に貯水される。そして、水力発電装置は、水圧により揚水管内を流れる揚水流により水力発電機の水車が回転して電力を得ることができる。また、水力発電装置は、揚水管の噴射口から噴水柱として噴射した水を、水面よりも低い位置にある貯水槽に到達するように水圧により噴き上げられる。そのため、水力発電装置は、貯水槽に一旦貯水された水を、排出手段により貯水槽外である例えば水面上へ汲み上げて排出している。
【0011】
また、前記水力発電装置において、前記排出手段は、前記貯水槽から前記水面に向けて設置された排出管と、この排出管を介して前記貯水槽内の水を水面上へと汲み上げる駆動ポンプとを有する構成とした。
かかる構成により、水力発電装置は、水圧により噴射されて貯水槽に一旦貯水された水を、駆動ポンプを駆動させて排出管により水面まで汲み上げて、貯水槽内の水を常に水面側に戻している。
【0012】
また、前記した構成の水力発電装置において、前記揚水管は、水圧により管内を流れる揚水流を噴射口から噴射したときの噴水柱が、垂直方向から所定角度傾斜するように配置されることが好ましい。
かかる構成により、水力発電装置では、噴射口から噴射した噴水柱が所定角度に傾斜することになり、その噴射水が噴水柱の頂上から落下するときに水の方向が同じ方向に向くので、貯水槽に受け取られやすくなる。
【0013】
さらに、前記した構成の水力発電装置は、前記導入口あるいは前記噴射口の一方または両方には、さらに通過する水を整流する整流器が設置されてもよい。
かかる構成により水力発電装置は、導入口に整流器が設置された場合には、揚水管中を流れる揚水流に渦等が発生することなく効率よく水車を回すことができ、また、噴射口に整流器を設置した場合には、噴射される噴水柱がしぶきの少ない状態で噴射され貯水槽に送られる。
【0014】
そして、前記した構成の水力発電装置は、前記揚水管には、前記導入口から前記噴射口の間に、当該揚水管内の閉鎖あるいは開放を行う開閉手段をさらに設けた構成としてもよい。
かかる構成により、水力発電装置の開閉手段を例えば遠隔操作する構成とすれば、水力発電装置は、操作性が向上する。
【0015】
なお、水力発電装置において、排出管を複数配置する場合には、排出管から排水される水の方向を沖に向けるようにすると都合がよい。
また、水力発電装置において、揚水口の向きを水底に向かわないように形成するかあるいは、屈曲した屈曲管を設置すると、水底が導入口から近い場合には、水底にある固形物等を吸い上げることがないので都合がよい。
【0016】
また、本発明に係る水力発電方法としては、水中に配置した揚水管内に水圧により発生させる揚水流を介して、前記揚水管内に設けた水車を回転させて水力発電を行う水力発電方法であって、前記揚水管の一端側に設けた導入口から水圧により水を導入して、当該揚水管の管路内に配置した前記水車を回転させる第1工程と、前記揚水管の他端に設けた噴射口を囲む位置から、前記水面側に向かって設けた噴水通路内に、前記水車を回転させた水を水圧により噴水として噴射させ、前記噴水通路の上方にかつ前記水面より低い位置で前記噴水柱の頂上からの落下を受けることが可能となる位置に設けた貯水槽に水を受け取る第2工程と、前記貯水槽内に貯水された水を排出手段により前記水面上に汲み上げて排出する第3工程と、を含み、前記第1工程から前記第3工程までを繰り返し連続して行うことで、前記揚水管内を流れる揚水流により回転する前記水車の駆動力を用いて、水力発電機を介して発電を行うこととした。
【0017】
かかる手順により水力発電方法では、水圧により揚水管内を水中側から水面側に向って流れる揚水流を発生させ、揚水管の噴射口から噴水状態として噴射させて貯水槽にまで送り、貯水槽から水面まで排出手段により汲み上げて貯水槽内の水を槽外へ排出する動作を連続的に行い、この連続工程の間に揚水管内の水車を回転させて水力発電機に水車の駆動力を伝達して水力発電を行っている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る水力発電装置および水力発電方法は、以下に示すような優れた効果を奏するものである。
水力発電装置は、水が貯水されているようなダム、湖沼、貯水池、河川、海洋等において化石燃料を使用することなく、落水とは逆方向である水圧による揚水管内の揚水流を用いて水車を回転駆動させることで水力発電機により発電することができる。
【0019】
そのため、本発明に係る水力発電装置は二酸化炭素をほとんど発生させることなく電力を得ることができるので環境保全に適した装置である。さらに、水力発電装置は、水中あるいは水底側の水を揚水管の噴射口までにかかる水圧により噴射口から噴射して貯水槽に貯水し、排出手段により水面側に戻すため、水の循環を強制的に行うことで水中に酸素を供給することになるため、周辺の水質劣化の防止に寄与する。
【0020】
水力発電装置は、揚水管から噴射される噴水柱が傾斜するように揚水管を設けているので、噴射した水を効率よく貯水槽へと貯水させることができる。
水力発電装置は、導入口あるいは噴射口の一方または両方に整流器を設けることで、水車を回転させる効率を向上させ、または、噴射する噴水柱がしぶきの少ない整った状態となり貯水槽に効率よく貯水できる。
水力発電装置は、揚水管に開閉手段を設けることで、運転作業するときの操作が容易となり、メンテナンスに好都合である。
【0021】
水力発電方法は、水圧を駆動源として揚水管内に揚水流を発生させ、揚水管の噴射口から噴水通路内において水面より低い位置にある貯水槽に向けて水を噴射させて一旦貯水し、排出手段により水面上へ汲み上げる動作を連続して行うことで、発生した揚水流を利用して水車を回転させて発電を行っている。そのため、この水力発電方法は、自然環境からの影響を最小限に抑えて安定的に発電することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る水力発電装置の全体を側面方向から模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る水力発電装置の全体を正面方向から模式的に示す断面図である。
【図3】本発明に係る水力発電装置を水面の上方から模式的に示す平面図である。
【図4】本発明に係る水力発電装置の貯水槽と噴水柱との位置関係を模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明に係る水力発電装置の噴射水の噴射水高距離と、喫水深さの関係を模式的に示す模式図である。
【図6】本発明に係る水力発電装置を水上基地に設置した一例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明に係る水力発電装置をダムに設置した一例を模式的に示す斜視図である。
【図8】本発明に係る水力発電装置の筐体につての他の構成を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
なお、水力発電装置1は、図1〜図4の説明では、海岸の水際側に設置された一例として説明する。なお、この水力発電装置は、湖水、河口、ダム等の淡水を対象にした設置位置または海岸などの海水を対象にした設置位置、あるいは、水上(海上)に設置される水上基地(海上基地)、水上(海洋上)に浮遊する水上浮遊構造物(海上浮遊構造物)、あるいは船舶に設置され、そして運転する構成であっても構わないことは勿論である。
【0024】
図1および図2に示すように、水力発電装置1は、ここでは、海岸の一部分に形成された基礎設置部(構造体)SBに設けられ、水中に固定(支持)されるように設置されている。水力発電装置1は、筐支持構造体2と、揚水管3と、この揚水管3内に水車5を設けた水力発電機4と、揚水管3から噴水される噴水柱WPの通路となる噴水通路20と、この噴水通路20からの水を受け取る貯水槽6と、この貯水槽6内の水を水面Wsへと排出する排出手段8とを備えている。この水力発電装置1は、ハウジングとなる構造体が、水面Wsから所定深さまでの水圧を受けるように配置された、三層構造の筐支持構造体2から構成されている。つまり、筐支持構造体2は、下部側から中間部側さらに上部側に向かって下部設置部2a、中間設置部2b、上部設置部2cの構成をとっている。
【0025】
そして、下部設置部2aには、揚水管3およびその管内に設けた水車5を含む水力発電機4が設置されている。また、中間設置部2bには、水圧を受けて揚水管3から噴射される水が噴水柱WPを形成する空間を噴水の通路とする噴水通路20が設置されている。さらに、上部設置部2cには、揚水管3から噴射され噴水柱WPを形成した噴射水の落下を受けてそれを貯水する貯水槽6と、この貯水槽6に貯水される水を貯水槽6外へと排出する排出手段8とが併設されている。
【0026】
筐支持構造体2は、その中間部分に中間設置部2bが、水面Wsより上方となる大気に連通するように上部設置部2cから連続して形成されている。ここでは、中間設置部2bの内側となる空間が、大気側に連通しているために、上部設置部2cの上端側が水面より高い位置に配置され、上部設置部2cから連通穴等により大気に連通するように形成されている。また、中間設置部2bは、その下端となる底部分に水面からの喫水深さ位置となり水圧を受けるように底面が設置されている。そして、中間設置部2bは、後記する揚水管3から噴射して形成される噴水柱WPの噴水通路20が上方の大気に向かって障害なく噴きあがるように設置できる空間広さがあればよく、形状等が限定されるものではない。なお、図3および図4に示すように、上部設置部2cおよび噴水通路20の上方では、噴水柱WPが噴き上がるように、仕切りがない状態で設けられている。
【0027】
中間設置部2bの内側には、噴射口3aの周辺となる位置に噴水柱WPを包囲するように設置された噴水通路20が形成されている。この噴水通路20は、噴水柱WPを上方に向かって噴き上げることができる空間広さを備えるような直径を備えている。そして、この噴水通路20の下方には、中間設置部2b側に連通する連通穴21が形成されており、噴水通路20内に滴下した水を連通穴21から中間設置部2b側に流し込んでいる。
【0028】
なお、中間設置部2bには、噴射口3aから噴射する際に水がその底部に溜まることが考えられるが、例えば、中間設置部2bに連続する排水室(図示せず)を設け、その排出室から外部(水中)に強制的に排出するように構成するようにしてもよい。あるいは、噴水通路20または中間設置部2bの底部に溜まる水は、噴射する水の量に対して少量である。そのため、揚水ポンプ等の駆動手段により溜水の位置から水面Wsまでの中間位置に一旦汲み上げ、さらに、中間位置から水面Wsまで段階的(2段以上でも可、3段、4段等)に汲み上げて、排水路を接続して最終的には水面Wsまで汲み上げて排水するように構成しても構わない。
【0029】
筐支持構造体2の下部設置部2aには、揚水管3と、水力発電機4とが設置されている。揚水管3は、その一端である開口を水底側である下方に向けて水の導入口3cとし、かつ、その他端である開口を水面側である上方に向けて水の噴射口3aとして、ほぼ垂直方向に沿って、あるいは、所定傾斜角度に配置されている。噴射口3aは、下部設置部2aの底から突出するように設置されている。なお、揚水管3は、ここでは、図2に示すように、沖側から見たときに、垂直方向に対して所定角度傾斜させた状態で設置されている。このように揚水管3が傾斜していることで、噴射口3aから噴射される噴水柱WPが垂直より一方向に傾き、噴射して落下してくる水を後記する貯水槽6が受け取りやすくなり、噴射して送られてくる水を貯水槽6外に飛び散らすことを極力防ぐ設計になっている。
【0030】
なお、噴水柱WPの傾斜角度は、垂直に対して好ましくは3度から45度、より好ましくは15度から30度の範囲である。傾斜角度が前記の範囲内であると、噴水柱WPの頂上から落下する水が一方向に向き易く、噴水通路2bのスペースを狭くすることが可能になり、貯水槽6を噴水通路2bの近くに小スペースで設置可能になる。なお、揚水管3を傾斜させても、噴水通路20の空間が十分広ければ、噴水通路20は垂直に設置しても構わず、もちろん、噴水通路20は、噴水柱WPに沿って傾斜させて設置しても構わない(図2では傾斜させた状態を示している)。
【0031】
また、揚水管3は、導入口3cおよび噴射口3aの中間となる中央部分が二股に分岐した分岐部13を備えている。そして、揚水管3は、ここでは導入口3c、分岐部13(一側分岐管13aおよび他側分岐管13bの合計)および噴射口3aにおける管の断面積がそれぞれ等しくなるように形成されている。さらに、揚水管3には、導入口3cの位置および噴射口3aの位置の少なくとも一方の位置に整流器12が設置されている。この整流器12は、揚水管3内の揚水流の流れ方向を整えることで、後記する水車の回転効率を向上させ、あるいは、噴射口3aから噴射する噴水柱WPの乱流化を防ぎ、貯水槽6に向けての噴射させた水を貯水槽6内に到達させる到達率を向上させることができる。
【0032】
揚水管3の分岐部13の分岐する下方部分の位置には、回転軸5bが水密に回転自在に設けられ、管内に水車5が設置されている。この水車5は、羽根部分が一側分岐管13aと他側分岐管13bの管路内に亘って配置されるように設けられている。ここで使用される水車は、例えば、プロペラ水車においてランナーコーンの周面に設けた羽根の形状、取付角度等がランナーコーンの正面から回転軸5bに向かって流れるような揚水流(図1の矢印)に対して回転できるように形成されている。また、回転軸5bの他端側には、水車5が揚水流で回転したときに安定した回転運動ができるように軸受部5c等が設置されている。この水車5の回転による駆動力を、揚水管3に隣り合う位置に設置した水力発電機4を介して電力に変換している。
【0033】
水力発電機4は、回転軸5bにプーリ等を介して架け渡された環状の伝達ベルト(チェーン等)4aにより伝達される回転駆動力を電力に変換するステータおよびロータを備える発電機本体4bを備えており、発電機本体4bで発電した電力を、送電ケーブル10を介して所定の場所に送電している。また、伝達ベルト4aは、従動歯車を介在させて、水力発電機4の回転軸に伝達できる構成としてもよい。特に、他側分岐管13bを跨いで設置する場合において、他側分岐管13bが回転軸5bより直径が大きな場合には、従動歯車(図示せず)を配置して、他側分岐管13bに伝達ベルト4aが接触しないように構成して設置される。
【0034】
なお、揚水管3に設置した水車5および水力発電機4の構成は、例えば、ダム等に使用される水力発電機と同じ構造のものが使用でき、水車の羽根の形状、取付角度等を対応させるように形成して使用することで実現することができる。ダム等で行われている一般的な水力発電では、水の流れが上から下へと落下することで水車を回転させているが、ここでは、それとは逆に水圧により揚水管3内において水底側から水面側へと上昇する揚水流を用いて水車5を回転させるようにしている。
【0035】
また、揚水管3には、管路内を閉鎖または開放する開閉手段としての開閉バルブ9が導入口3cの直上の位置に設けられている。この開閉バルブ9は、操作室OPからの操作により開閉動作を行うように構成されている。揚水管3の導入口3cから導入されて水車5を回転させる揚水流は、一側分岐管13aおよび他側分岐管13bからの流れが合流した状態で噴射口3aから貯水槽6に向かって噴射する。そして、噴射した水は、貯水槽に一旦貯水される。
【0036】
図2ないし図4に示すように、上部設置部2c内には、貯水槽6と、排出手段8とが設置されている。貯水槽6は、上部設置部2cに固定され、噴射口3aから噴射される水を受ける容器状物である。この貯水槽6の位置は、揚水管3の直径や、喫水深さ位置によりその筐支持構造体2の上部設置部2cにおいて設置高さが調整されている。この貯水槽6は、揚水管3の噴射口3aから噴射された水を受けて貯水すると共に、後記する排出手段8により設置場所の水面に貯水された水を戻す(還元する)動作を行ったときに、貯水槽6から水が溢れ出ない容量に設計されている。
【0037】
なお、貯水槽6の位置を設定するための一例をつぎに示す。
筐支持構造体2の噴水通路20の底部に設置された噴射口3aから噴射する水の噴出速度は、その噴出速度を決定する条件が、水面Wsの高さから噴射口3aの開口高さまでの距離H1(=H=10m(基本設計の値の例))である喫水と、揚水管径Rと、の関係から求めることができる。ここで一例として、速度水頭Hvと、喫水(喫水深さ)および水頭距離に対応した噴水量Q(m/day)とを具体的な数値を用いて算出して示す。なお、図5(a)、(b)に示すように、噴射口3aの位置は、底面または側面の位置で、水面Wsより水中(海底)側にあることで、噴射流を発現させることができる。そして、この水力発電装置1は、噴出高さに対応する位置(H2)から噴きあがる水(海水)の高さ(距離)が、図5(a)で示すような単純なモデルの場合で算出している。
【0038】
オリフィスとなる噴射口3aより発生する噴出高さの具体的な試算用公式は、噴射口3aの速度係数をCv(=0.98)とし、重力加速度をg(=9.8m/s)とし、空気や落下水の抵抗が存在しないと仮定し、噴水が噴出する高さを(噴射水高距離)H2として、その噴出高さの試算を行う。このとき、噴射口3aから噴出する瞬間の噴出速度をVとし、その速度に相当する速度水頭をHvとすれば、揚水の噴射水高距離H2はHvに等しくなるのが自然法則であるので、Hv=V×V(2g)−1(式1)であり、揚水の噴出の初速度Vはトリチェリーの次の(式2)で示される。V=Cv(2gH)1/2(式2)。
【0039】
この(式2)においてVの値を(式1)のHvに代入すれば、Cv(2gH)1/2×Cv(2gH)1/2/(2g)=Cv×Cv×H(式3)となる。したがって、噴出高さHv(H2)は、次の(式4)により算出することができる。Hv=Cv×Cv×H(式4)。なお、具体的な数値を代入した場合、例えば、H(H1)=10m、Cv=0.97を(式4)に代入すると噴射口3aから海水の噴出高さはほぼ9.6mとなり、また、噴射口3aにおける噴射速度は13.7(m/s)となる。したがって、噴射した水を確実に貯水するように、貯水槽6の開口する位置を計算した値よりも下方に設定して設置位置を特定することができる。
【0040】
貯水槽6内の水は、貯水槽6が設置されているより上方に位置する水面Wsへと排出手段8により排出している。排出手段8は、例えば、揚水ポンプ8aおよび排出管7が使用され、複数の揚水ポンプ8aと、複数の排出管7とにより貯水槽6内の水を汲み上げて水面Wsとなる貯水槽6外へと排出している。
【0041】
排出管7は、所定間隔で配置されて沖側に向かって貯水槽6内の水を排出するように設置されている。排出管7の排出口側には、筐支持構造体2の上部設置部2cの水面Wsに突出して対面している部分にカバーが設けられており、波が発生することによる上部設置部2cから筐支持構造体2内への水の浸入を防いでいる。また、排出管7は、その排出側の先端には、網目状のカバーを取り付けていることが好ましい。なお、排出手段8が揚水ポンプ8aおよび排出管7である場合には、後記するように噴射口3aから噴射される時間当たりの水量と、貯水槽6の貯水体積から、その揚水ポンプ8aの能力(馬力)および設置数ならびに排出管7の長さが設定される。
【0042】
なお、海岸等の陸地側に水力発電装置1を設置する場合には、筐支持構造体2の下部設置部2aに設置される水力発電機4側に作業者が立ち入ることができるように、作業用の作業空間およびその作業空間までの通路が形成されることが望ましい。
また、揚水管3には、導入口3cの直上に開閉手段としての開閉バルブ9が設置されることが望ましい。この開閉バルブ9は、地上側に設置される操作室OPからの操作で動作するように構成されている。なお、開閉バルブ9は、貯水槽6の上部側に設置した水位検出センサ11の検知信号が送られてくることでも、閉鎖するように設定されることが好ましい。
【0043】
貯水槽6に水位検出センサ11を設置する場合には、検知信号は、操作室OPにも送られ、操作室OP内で操作している作業者のモニタ画面(図示せず)に点滅あるいは音声により今から開閉バルブ9を閉鎖することを知らされるように構成されていることが好ましい。また、筐支持構造体2の下部設置部2a、中間設置部2b、上部設置部2cには、それぞれ監視カメラが設置され、各エリアの状態がどのようになっているのかを操作室OPで把握できるように構成されていることが好ましい。なお、水位検出センサ11は、光センサ等の水と非接触型センサであることや、また、水に接触して水位を検出する接触型センサであっても構わない。
【0044】
つぎに、水力発電装置1の動作状態について説明する。
水力発電装置1は、はじめに、操作室OPからの操作により開閉バルブ9を開放する。開閉バルブ9が開放されると、導入口3cから水圧により水が揚水管3の中に入り込み、そこを通り揚水流となって、その後噴射口3aから噴射される。このとき、揚水管3の内部の揚水流により水車5が回転させられることで(第1工程)、回転軸5bおよび水力発電機4の入力回転軸に架け渡された伝達ベルト4aが回転する。したがって、水力発電装置1は、伝達ベルト4aが回転することで水力発電機4の入力回転軸が回転して内部のロータおよびステータを介して発電される。この水力発電装置1の発電量については、具体的な数値を用いて後記する。
【0045】
一方、水力発電装置1は、揚水管3の噴射口3aから水圧により噴射した水が、噴水柱WPとして噴き上がり、この噴水柱WPが所定の一方向に傾斜するように揚水管3が設置されているので、噴射した水の頂上から落下する水が貯水槽6内に受水され貯水される(第2工程)。そして、水力発電装置1は、貯水槽6に噴射口3aから噴射された水の貯水が開始されると、排出手段8の揚水ポンプ8aが作動して排出管7により貯水槽6内の水を水面Wsへと汲み上げて排水している(第3工程)。
【0046】
このように、水力発電装置1では、水圧を駆動源として揚水管3内部に揚水流を発生させその揚水を噴射口3aから噴水柱WPとして噴射させ、その噴水柱WPの頂上から落下する水を貯水槽6に一旦貯水し、その後排出手段8により水面Wsへと汲み上げて排出する動作(第1工程〜第3工程)を連続的に行っている。そのため、水力発電装置1では、揚水管3内の水車5を、水圧を駆動源とする揚水流により回転させて水力発電機4により発電することができるので、化石燃料を使用することなく安定した発電を行うことが可能となる。また、電力を必要とする排出手段8等に対してもこの水力発電機4により発電した電力の一部を使用して作動させることができるので、都合がよい。なお、水力発電装置1により発電した電力は、フライホイール等の電力貯蔵手段に貯蔵させて使用する構成としても構わない。
【0047】
また、水力発電装置1により、水中あるいは水底側の水が揚水されて排出手段8により水面Ws側に移動することが繰り返されることにより、水の強制的な循環が起こり水中あるいは水底側での水の停滞を解消することになるため、水力発電装置1を動作させることで水質浄化にも寄与する。また、貯水槽6から揚水ポンプ8aにより排出管7を介して水面Wsへと汲み上げて戻すときに、排出管7から排出される水が空気に接するように適宜な高さを設けることで、水面Wsに戻されるときに大気中の酸素が水中に巻き込まれて、より水質浄化に対して良い影響を与えることになる。
【0048】
つぎに、表1から表5に具体的な数値を用いて算出した結果をそれぞれ示す。
表1は噴射口3aの口径(dφ)[m]と噴射水高距離H2との関係を、喫水深さH1を変化させて示している。また、表2は噴射口3aからの噴射水高距離H2と噴射口3aの口径とより発生する水動力([m/s])を示している。表3は水力発電機4の駆動作業後の総合効率を75%に設定し、噴射口3aの口径と噴射水高距離H2を変化させたときの発電量[kW]の数値を試算した結果を示している。表4は本発明の水力発電装置1による貯水槽6から水面Wsへと揚水するためのポンプに必要なポンプ能力[kW]を示している。表5は水力発電装置1による発電効率を揚水ポンプで消費した分を差し引いた総合効率が75%として設定したときに、水力発電装置1による発電量[kW]の数値を算出した結果を示している。なお、水動力は、揚水流により水車を回転させるできる力と同等である。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
表2では、Q=Cc×Cv×A×(2gH2)1/2(松本容吉 1942年発行、第5版 修教社書院 水力工学 p11 19式)を使用してQ(噴射口を通過する水量)を算出した。
なお、Qは噴射口を通過する水量[m/s]、Ccは収縮係数[1.0]、Cvは速度係数[0.98]、gは重力加速度9.8[m/s]、Aは噴射口の面積[m]、H2は噴射水高距離(有効噴射高:有効落差[m]と同じ)[m]、dφ[m]は噴射管の口径である。
【0052】
【表3】

【0053】
表3では、表2で算出した通過流量Q[m/s]に相当する噴射水を噴射するために必要な動力エネルギー[kW]として算出した結果を示している。一般に管路で圧力水を送る場合には、管壁による損失水頭、管の出口、管の折り曲げ形状、弁などによる損失水頭の原因があるが、水力発電装置1ではその損失水頭が極めて小さい。表3では、圧力水が噴射する噴射口3aの形状は円筒形状なので断面積に相当する円管直径変化(dφ)とし、圧力水が噴射する噴射水高距離(H2)の変化が、水力発電装置1の設置喫水に相当する。
Lt=(1000×Q[m/s]×H2[m])/102[kW]
(松本容吉 1942年発行、第5版 修教社書院 水力工学 p33 56式)
なお、式中、Ltは水動力(WaterPower)もしくは理論動力であり、揚水流により水車を回転させる力に相当する動力として[kW]で示す。Qは噴射口を通過する水量[m/s](表1,2の値を使用)、dφ[m]は噴射管の口径、H2は噴射水高距離(有効噴射高:有効落差[m]と同じ)[m]、および、有効噴射距離(Actual Lift)と有効水頭(Actual Head)とは試算数値として表3では示している。
【0054】
【表4】

【0055】
表4では、貯水槽6より源水面にポンプにより揚水するときのポンプ能力(kW)またはエネルギーを示している。
貯水槽6に噴射水が貯水されたときに、その貯水槽6内の水を水力発電装置1が設置されている水面に戻す(返還する)必要がある。水力発電装置1では、排出手段8の揚水ポンプ8aの汲み上げる位置から水面Wsまでの位置をH3としたときに、表4で示すように、H3の高さを1m、2m、3mと変えて、横軸に示す貯水量を揚水するために必要なポンプ能力を示している。
【0056】
貯水槽6から3m上方の水面Wsに向かって汲み上げる場合には、173.4kWのポンプ能力が必要であることが表4から分かる。そのため、そのポンプ能力に対応する揚水ポンプあるいは複数の揚水ポンプを設置することで、貯水槽6の水を貯水槽6外となる水面Wsに戻して排水することができる。
【0057】
【表5】

【0058】
表5では、表1〜表4までに算出した各数値を基準にして、発電される電力量を総合効率を75%と仮定して示している。表1には、水面Wsから噴射口3aまでの喫水距離(喫水深さ)H1に対して噴射水高距離H2までの距離が示されているので、相関数値による発電力の規模を[kW]で表5では示している。表5では、例えば、噴射水高距離H2が30mで、噴射口3aの口径が1mであったときに、4785[kW/h]の電力を発電することができる。したがって、水力発電装置1は、設置する場所に複数台を設けることで、必要となる電力量を供給することができる。
【0059】
このように、水力発電装置1を、揚水管1の直径が1mで、海や池などの貯水されている環境において喫水位置が20〜30mの深さに設置できれば、水圧により発生する揚水流により、2592〜4785[kW/h]の電力を発電することができる。
【0060】
つぎに、図6を参照して、水力発電装置1Aが湖沼あるいは海上に設けられた水上基地KBの所定位置に設置された状態について説明する。なお、すでに説明した構成は同じ符号を付して説明を省略する。また、図1〜図4で示した水力発電装置1の構成と異なる点は、水力発電機4を筐支持構造体2の上方に配置したことと、中間設置部2bが噴水通路20Aとして機能する構成としたことである。
【0061】
図6に示すように、水力発電装置1Aは、水上基地KBの一端側で水中側に浮遊するように設置されている。この水力発電装置1Aは、水上基地KBから水中側に所定の深さに設置された筐支持構造体2Aと、この筐支持構造体2Aの底部側に設けた揚水管3と、この揚水管3の管内に水車5を設置して配置された水力発電機4と、揚水管3から噴射される噴水柱WPの通路である中間設置部2bと、この中間設置部2bを通過する水を受けて貯水する貯水槽6と、この貯水槽6に貯水される水を貯水槽6外に排出管7を介して揚水ポンプ8aにより排出する排出手段8と、を備えている。
【0062】
筐支持構造体2Aは、下部設置部2aと、中間設置部(噴水通路)2bと、上部設置部2cと、下部設置部2aから上部設置部2cまで隣接して設けられた伝達手段案内設置部2dと、を備えている。そして、上部設置部2cには、貯水槽6と、この貯水槽6内の水を貯水槽6外の水面Wsへと揚水ポンプ8aにより排出管7を介して排出する排出手段8とが設けられている。また、下部設置部2aには、揚水管3が設置され、この揚水管3の分岐部13の分岐部分に回転軸を水密に設けた水車5と、この水車5の回転力を伝達する伝達ベルト4aとが設置されている。さらに、中間設置部(噴水通路)2bは、噴射口3aから水面側に向かって噴射される噴水柱WPが形成される空間を備える広さに形成されている。
【0063】
伝達手段案内設置部2dには、伝達ベルト4aによる回転力を筐支持構造体2の上方となる水上基地KBのベース部分に設置した水力発電機4に伝達するための伝達駆動手段4cが設置されている。この伝達駆動手段4cは、円柱状の金属棒体に所定間隔で歯車等の回転案内手段4dを設けており、一端側において伝達ベルト4aからの回転を伝達するプーリが設置され、他端側において水力発電機4に回転力を伝達するプーリが設置されている。なお、伝達手段案内設置部2dの側壁には、伝達駆動手段4cの回転を案内する軸受け部材が回転案内手段4dに対応する位置に設けられている。
【0064】
水力発電機4は、水上基地KBのベース部分に設置され、伝達駆動手段4cの回転により駆動ベルト(チェーン等)4eを介して回転軸が回転することでロータおよびステータにより発電を行っている。この水力発電機4により発電された電力は、水上基地KBで使用される各装置等に用いられ、あるいは、バッテリーに蓄電されたり、電線を介して陸地側に送られたりして使用される。
【0065】
なお、図6で示す水力発電装置1Aでは、水力発電機4を揚水管3の隣り合う位置に設置してもよく、また、噴射口3aから噴射した噴水柱WPの周囲に図1、図2で示す噴水通路20を設置しても構わない。
このように、水中に浮遊する水上基地KBに水力発電装置1Aを設置しても、加わる水圧により発生する揚水流を介して水車5を回転させて発電するので、環境に左右されることなく安定的な電力を発生させることが可能となる。
【0066】
さらに、図7で示すような構成として水力発電装置1BをダムDWに設置する場合について説明する。なお、すでに説明した構成は同じ符号を付して説明を省略する。この水力発電装置1Bでは、噴射口3aの設置面に貯水槽6で受け取れなかった、すなわち噴射水が貯水槽6外に溜まった場合に、排水管30により排水する構成がこれまでとは異なる。
【0067】
つまり、この筐支持構造体2の設置位置は、ダムDWで貯水をするときにダム壁面を形成して、ダム壁面の囲いの中に水を貯水する構成であるため、噴水通路20(図示せず)の下端の位置(設置面2ab)はダム壁面の外側では、川Rvよりも高い場所に位置している。そのため、ダム壁面の一部に連通して排水管30を設置すれば、噴水通路20の底部分に溜まる水は僅かであっても、水圧を受けない外部に対して自然に排水される。
【0068】
したがって、この排水管30により排水する場合は、動力源を特に設置しなくても噴水通路20の下端の位置となる設置面2abから外部に排出されることになり、動力源があればよりスムーズに外部に排出されることになる。また、下部設置部2aの噴射口3aが設置されている設置面2abに溝あるいは傾斜を設け、排水管30へと排水する水を案内する構成とすればさらに都合がよい。
【0069】
また、水力発電装置1では、中間設置部2bを空間部分が密閉されている構成として説明したが、例えば、図8で示すように、中間設置部2Bは、単なるやぐら状の支持体として構成しても構わない。なお、図8ではすでに説明した構成は同じ符号を付して説明を省略する。図8に示すように、中間設置部2Bを支持体として構成した場合には、下部設置部2aの接続面と噴水通路20および上部設置部2cの接続面2eと噴水通路20とは密閉した状態で構成されることになる。ここでは、上部設置部2cの接続面2eと噴水通路20とは、噴水通路20の先端がその接続面2eから突出するように設置されている。
【0070】
そして、接続面2eは、一部を凹ませた凹部2fが形成され、この凹部2fに溜めた水を貯水槽6に送るポンプおよびホースを有する第1汲上手段18を設置している。
また、噴水通路20内で下部設置部2aの噴水通路20との接続面となる位置に、上部設置部2cの接続面2eまで水を汲み上げるポンプおよびホースを有する第2汲上手段19を備えている。
したがって、噴射口3aから噴射して噴水通路20内に落下した水は、この第2汲上手段19により接続面2eまで汲み上げられ、さらに、第1汲上手段18により貯水槽6まで送られる。
このように中間設置部2Bのような構成としても、図1で示す水力発電装置1と同等の効果を奏することができる。
【0071】
以上説明したように、水力発電装置1,1A、1Bは、水圧を駆動源として噴射口3aから水を噴射させるときに揚水管3内に発生する揚水流を利用して水車5を回転させ、その水車5の回転力を水力発電機4により電力に変換してエネルギーを得るため、化石燃料の使用を抑制できる。また、水中(海中)あるいは水底側(海底側)の水を水面(海面)側に貯水槽6から揚水して水を循環させることができるので、水中(海中)に酸素を供給することになり、水質の劣化を防止することができる。
【0072】
なお、水力発電装置1,1A、1Bでは、導入口3cの先端が、水底に向かって開口しないように曲折して形成されていること(図示せず)が好ましい。そして、導入口3cの外側には、網目状の囲いを設け、水中の遊体物や水生動植物を揚水管3内に吸い込むことを防止することが好ましい。
【0073】
さらに、水力発電装置1,1A、1Bが複数設置されたときには、排出管7が淡水あるいは海水であっても沖側に向いて配置されるようにすることで、ある範囲のエリアに対して水を循環させることができ、水底側の水の停滞を改善させることができる。また、排出管7による水面Ws側に排出する場合に、排出管7の先に、案内板(図示せず)を設け、その案内板により水面側に排出した水の方向を案内する構成としても構わない。このような案内板による水の方向を案内する場合には、排出管7を直線的に配置でき、貯水槽6からの水の揚水効率を向上させることができる。
【0074】
また、水力発電装置1,1A、1Bでは、筐支持構造体2を3つのエリアに分けた状態として説明したが、少なくとも揚水管3が水圧を受けて噴射水を噴射できる構造であればよく、特に限定されるものではない。また、筐支持構造体2の内部に揚水管3を設置するように説明したが、水車5の回転軸5b、伝達ベルト4aおよび水力発電機4に対して防水されている状態であれば、揚水管3は、水中に露出して設置されていても構わない。
【0075】
そして、水力発電装置1,1A、1Bでは、揚水管3の全体を傾斜させた状態に配置することで噴射口3aから噴射する噴水柱WPが所定角度傾斜するように説明したが、揚水管3は垂直に配置し、噴射口3aまでに到る連続する管を徐々に垂直方向から傾斜して曲がるように形成することで噴水柱WPを所定の傾斜角度になるようにしても構わない。
【0076】
また、図1から図8で説明した構成では、噴水柱WPが傾斜するように揚水管3を傾けて設けた例として説明したが、噴水柱WPが垂直となるように揚水管3を設置しても構わない。噴水柱WPが垂直になるように揚水管3を設置する場合、噴水柱WPの頂上から360度方向に水が落下するので、噴水通路20の上端の周りに円環状の水受けを有する貯水槽水(図示せず)を配置することで対応することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 水力発電装置
2 筐支持構造体
2a 下部設置部
2ab 設置面
2b 中間設置部
2c 上部設置部
2d 伝達手段案内設置部
3 揚水管
3a 噴射口
3c 導入口
4 水力発電機
4a 伝達ベルト
4b 発電機本体
4c 伝達駆動手段
4d 回転案内手段
5 水車
5b 回転軸
5c 軸受部
6 貯水槽
7 排出管
8 排出手段
8a 揚水ポンプ(駆動ポンプ)
9 開閉バルブ(開閉手段)
10 送電ケーブル
11 水位検出センサ
12 整流器
13 分岐部
13a 一側分岐管
13b 他側分岐管
20 噴水通路
21 連通穴
30 排水管
DW ダム
KB 水上基地
OP 操作室
Rv 川
Ws 水面
WP 噴水柱


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水圧により水中側から水面側に向かう揚水流を発生させて水力発電を行う水力発電装置において、
前記水力発電装置は、水中に配置して一端を水中側に向けて水の導入口にすると共に、他端を水面側に向けて水の噴射口にする揚水管と、
この揚水管の噴射口を囲む位置から水面側に向けて大気に連通させて配置し、水圧により前記噴射口から噴射する噴水柱の周りを包囲するように設けた噴水通路と、
この噴水通路内で水圧により噴き上がる噴水柱の頂上から落下する水を受け取れるように、前記噴水通路の上方でかつ水面より低い位置に設置された貯水槽と、
この貯水槽に一旦貯水された水を前記貯水槽外へ排出する排出手段と、
前記揚水管の導入口と噴射口との間の管内に配置され、当該管内を流れる揚水流により回転し、水力発電機を介して発電を行う水車と、
を備えることを特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
前記排出手段は、前記貯水槽から前記水面に向けて設置された排出管と、この排出管を介して前記貯水槽内の水を水面上へと汲み上げる駆動ポンプとを有することを特徴とする請求項1に記載の水力発電装置。
【請求項3】
前記揚水管は、水圧により管内を流れる揚水流を噴射口から噴射したときの噴水柱が、垂直方向から所定角度傾斜するように設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水力発電装置。
【請求項4】
前記導入口あるいは前記噴射口の一方または両方には、通過する水を整流する整流器が設置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水力発電装置。
【請求項5】
前記揚水管には、前記導入口から前記噴射口の間に、当該揚水管内の閉鎖あるいは開放を行う開閉手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の水力発電装置。
【請求項6】
水中に配置した揚水管内に水圧により発生させる揚水流を介して、前記揚水管内に設けた水車を回転させて水力発電を行う水力発電方法であって、
前記揚水管の一端側に設けた導入口から水圧により水を導入して、当該揚水管の管路内に配置した前記水車を回転させる第1工程と、
前記揚水管の他端に設けた噴射口を囲む位置から、前記水面側に向かって設けかつ大気に連通した噴水通路内に、前記水車を回転させた水を水圧により噴水として噴射させ、前記噴水通路の上方にかつ前記水面より低い位置で前記噴水柱の頂上からの落下を受けることが可能となる位置に設けた貯水槽に水を受け取る第2工程と、
前記貯水槽内に貯水された水を排出手段により前記水面上に汲み上げて排出する第3工程と、を含み、
前記第1工程から前記第3工程までを繰り返し連続して行うことで、前記揚水管内を流れる揚水流により回転する前記水車の駆動力を用いて、水力発電機を介して発電を行うことを特徴とする水力発電方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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