説明

水崩壊性繊維シート、前記繊維シートの製造方法、コアの製造における前記繊維シートの使用

本発明は、坪量が20〜1000g/mであり、湿式製紙法に従って製造され、水中で120秒未満で崩壊し、乾燥繊維シートの総重量を基準として10〜70%のデンプン及び少なくとも30%の製紙用繊維を含む繊維シートに関する。このシートは例えばティッシュペーパーのロール中の水崩壊性コアの製造に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、崩壊性繊維シートの製造、特に紙シートの製造、及び崩壊性繊維シート、特に紙シートに関する。本発明は特に、ロール支持体を形成するコアの製造におけるこのシートの使用に関する。本発明はコアの形態である衛生用途又は家庭用途の紙の分野、特にトイレットペーパーロールの支持用コア、又はタンポンのアプリケーターで使用される。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパー、ペーパータオル、又はウェットティッシュなどの衛生用途又は家庭用途の紙は、場合によってはコア上のロールの形態で包装されている。
【0003】
コアは円筒であり、一般に厚紙でできており、これはロールの紙を使い切った後に廃棄される。コアはいくつかの機能を果たす:
−コアは、ロールの製造中に紙シートが巻かれる支持体として提供される。一般に、ロールはジャンボ・ロールとも呼ばれる非常に幅の広いマスター・シートから製造され、これは対応する長さの筒の周りに巻かれており、得られるロールを所望の幅の個々のロールに切断する;
−コアは、ロールの内部応力に耐え、内部の巻きが崩れるのを防ぐことによって、中央の穴を開いた状態に保つ;及び
−コアは、その軸に沿った押しつぶす力、又は輸送の間若しくは使用前の様々な取り扱い作業の間にロールが受ける軸方向の力に耐えることによって、ロールの形状を保つ。
【0004】
コアは一般に、1つ又は複数の平らな厚紙の帯状片を円筒形の型の周りでらせん状に巻いて接着することによって得られる。
【0005】
平らな厚紙は安価な材料であり、再生繊維でできていることがある。これは軽量でもあり、その機械的強度はこの使用に十分でもある。
【0006】
しかし、これはロールを使い切った後に再利用できない、又は別の形態で利用されることがほとんどなく、廃棄物となるという欠点がある。
【0007】
トイレットペーパーの場合、標準的なコアを廃水で流そうとすることによって廃棄することは勧められない。なぜなら、コアは大部分は製紙用繊維でできているが、水と接触するとゆっくりと崩壊し、一般に、便器から取り除くことができないか、あるいはコアを水流で流すことができないうちに詰まりを作りトイレの排水管をふさぐからである。
【0008】
先行技術
製紙用繊維及びデンプンで作られた、シート状又は他の形態の製品が知られている。
【0009】
EP415385(特許文献1)は、乾燥させる間にゼラチン化する、水不溶性改質デンプンである尿素リン酸デンプンを取り入れた紙シートの製造を記載しており、前記デンプンのゼラチン化温度は比較的低い。すなわち35℃〜55℃である。得られるシートの乾燥強度を向上させ、製造工程中に抄紙機のワイヤーが目詰まりするのを防ぐことが目的である。
【0010】
EP1630288(特許文献2)は、ウェット拭き取り紙としての清掃用シートとして使用することを意図した、エンボス加工及び含浸処理した水崩壊性の紙シートを記載している。これは、多糖又は合成ポリマーなどの水溶性バインダー、及び水溶性バインダーを一時的に不溶性にする薬剤と関連した水性薬剤を含有する。記載の例によれば、シートは30〜40秒で崩壊し、この崩壊速度は重さが0.3gである紙シートの正方形試料に適用されるJIS P4501を参照した標準的方法を用いて測定したものである。
【0011】
US6169857(特許文献3)は、例えばシートの形態を取る生分解性製品を記載している。これは製紙用繊維などで補強されたデンプンマトリックスから成り、成形によって得られる。それに先立つ混合物は、少なくとも非ゼラチン化デンプン、繊維、及び水から成る。製品はこの混合物を成形することによって得られる。表面上にフィルムを形成するように、セルロールエーテルなどのポリマーが加えられ、これは製品の製造中のくっつきを防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP415385
【特許文献2】EP1630288
【特許文献3】US6169857
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
出願人は、家庭用衛生設備の廃水で容易に排出できるロール用コアを製造するという目的を設定する。
【0014】
より詳細には、
−コアは水と接触するとすばやく崩壊しなければならない;
−材料は、詰まりを作る前に排出されるのに十分な速度で水中で崩壊しなければならない;材料が崩壊する速度は、同じ質量において、一般的にロールを構成するティッシュペーパーの速度に匹敵しなければならない;
−コアは半径方向及び軸方向の両方で、置き換えようとする厚紙と同程度の圧縮抵抗を有する必要がある;
−コアは従来の厚紙のコアと同様に製造が容易で簡便でなければならない;及び
−コアは再生可能な材料で製造しなければならない;紙のリサイクル工程にも水処理プラント工程にも悪影響を与えてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
コアの品質は、少なくとも部分的には構成要素である繊維シートによって決まる。
【0016】
主に製紙用繊維でできた繊維シート
本発明によれば、繊維シートは坪量(basis weight)が20〜1000g/mであり、湿式製紙法に従って製造され、水中で120秒未満で崩壊し、前記繊維シートは乾燥繊維シートの総重量を基準として10〜70%のデンプン及び少なくとも30%の製紙用繊維を含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
用語「崩壊」とは、NF Q34−020規格に示される完全な崩壊の定義に対応する。すなわち、もはや大きい断片はなく、断片の分散が均一である。本発明による繊維シートは、水中で120秒未満で崩壊する場合に崩壊性である。
【0018】
用語「湿式製紙法」とは、ウェットエンドシート形成を用いながら紙シートを製造する方法を意味する。より具体的には、この方法はパルプ又は完成紙料調製セクション、湿式成形セクション、水分除去のためのプレスセクション、及び乾燥セクションを含む。完成紙料調製セクションは、水性懸濁液又は完成紙料を完成紙料を提供するために、繊維、フィラー、及び添加剤を含む様々な成分を水と混合することに特徴がある。湿式成形セクションは、長網テーブル(Fourdrinier table)などの平坦なテーブル、又は他の任意の円筒状成形装置上で行うことができる。ヘッドボックスは1つ又は複数の噴出口のディストリビューターを備えていてもよい。プレスセクションは、機械的にウェブをプレスすることによって水分を除去することに特徴がある。乾燥セクションは、熱交換によって水分を除去するために、乾燥ドラム、空気乾燥円筒を用いたヤンキードライヤー、赤外線乾燥機などの従来の乾燥機を含んでいてもよい。次いでこのようにして得られたシートを最終製品としてリールに巻き取る。
【0019】
用語「セルロース系」、「セルロース系繊維」などは、セルロースを主成分として取り入れた任意の繊維を含むことを意味する。「製紙用繊維」はセルロース系繊維を意味し、バージンパルプ、又は再生(二次)セルロース系繊維、又は再構成セルロース系繊維を含む繊維混合物が挙げられる。本発明の繊維シートを作製するのに適したセルロール系繊維としては、綿繊維又は綿誘導体、マニラ麻、ケナフ、サバイグラス(sabai grass)、亜麻、アフリカハネガヤ、わら、ジュート麻、バガス、トウワタ・フロス繊維、及びパイナップル葉繊維などの非木材繊維;木材繊維、例えば、ノーザン及びサウザン針葉樹クラフト繊維(Northern and Southern softwood Kraft fibre)などの針葉樹繊維を含め、落葉樹及び針葉樹から得られるものなど;ユーカリ、カエデ、カボノキ、アスペンなどの広葉樹繊維が挙げられる。本発明に関連して使用される製紙用繊維としては、天然パルプ由来繊維、並びにリヨセル又はレーヨンなどの再構成セルロース系繊維が挙げられる。硫酸塩パルプ化、亜硫酸塩パルプ化、ポリスルフィドパルプ化、ソーダパルプ化などを含めた当業者に周知の多くのパルプ化法のうち任意の1つによって、パルプ由来繊維をそれらの原料から遊離させる。必要に応じて、塩素、二酸化塩素、酸素、アルカリ性過酸化物などの使用を含めた化学的方法によってパルプを漂白することができる。天然パルプ由来繊維は本明細書において単に「パルプ由来」製紙用繊維と呼ぶ。本発明の製品は、従来の繊維(バージンパルプに由来するか又は再生原料に由来するかにかかわらず)及び漂白ケミカル・サーモメカニカル・パルプ(BCTMP)などの高粗度高リグニンの管状繊維のブレンドを含んでいてもよい。そのためパルプ由来繊維には、BCTMPなどの高収率繊維、並びにサーモメカニカル・パルプ(TMP)、ケミサーモメカニカル・パルプ(CTMP)、及びアルカリ性過酸化物機械パルプ(APMP)も含まれる。「完成紙料」及び同様の専門用語は、紙製品を作るための製紙用繊維、任意成分としての湿潤強度樹脂、剥離剤(de−bonder)などを含む水性組成物を指す。
【0020】
針葉樹クラフト繊維は、周知のクラフト(硫酸塩)パルプ化法によって針葉樹材から作られる低収率繊維であり、ノーザン及びサウザン針葉樹クラフト繊維、ベイマツクラフト繊維などが挙げられる。針葉樹クラフト繊維は一般にリグニン含量が5重量パーセント未満であり、長さ加重(length weighted)平均繊維長が2mmを上回り、算術平均繊維長が0.6mmを上回る。
【0021】
広葉樹クラフト繊維は、クラフト法によって広葉樹原料、すなわちユーカリから作られ、一般にやはりリグニン含量が5重量パーセント未満である。広葉樹クラフト繊維は針葉樹繊維よりも短く、典型的には長さ加重平均繊維長が1.2mm未満であり、算術平均長が0.5mm未満又は0.4mm未満である。
【0022】
再生繊維は任意の量で完成紙料に加えてもよい。任意の適切な再生繊維を使用してもよいが、多くの場合、比較的低レベルの砕木を含む再生繊維、例えばリグニン含量が15重量%未満である再生繊維が好ましくが好ましく、あるいは使用される完成紙料混合物及び用途によっては、10重量%未満のリグニン含量が好ましいことがある。
【0023】
さらに、本発明による繊維シートは合成ポリマー繊維などの非セルロース系繊維も含有してもよい。この専門用語は、ポリエステル、ナイロン、及びポリオレフィンなどの合成ポリマーでできた繊維を指す。ポリエステルは一般に、既知の重合法によって脂肪族又は芳香族ジカルボン酸と飽和脂肪族又は芳香族ジオールから得られる。
【0024】
より具体的には、繊維シートは下記の特徴のうちの少なくとも1つを有する:
−デンプンは繊維シートの厚み全体にわたって実質的に均一に分布している。用語「実質的に均一」とは、繊維間の結合のほとんどを提供するように、デンプンが完全にシートの厚み全体にわたって分布し、シートの外部表面上にも存在することを意味する。
【0025】
−繊維シートは、乾燥繊維シートの総重量を基準として15〜40%、好ましくは20〜35%のデンプンを含む。
【0026】
−坪量は100〜600g/m、好ましくは130〜400g/mである。
【0027】
−NF Q34−020規格に従って測定される8×9cmのシートの試料の水中崩壊が50秒未満、好ましくは35秒未満、より具体的には15秒未満である。
【0028】
−本明細書において報告されるテーブル試験に従って測定される強度の低下は、前記シートの試料の強度の低下に相当し、6秒間続けて水で濡らした後に少なくとも85°、好ましくは88°〜90°の角度をなす。
【0029】
−以下の明細書に記載のリングクラッシュ試験に従って測定される、湿潤状態のシートの残留強度はその乾燥状態と比較して1%未満である。
【0030】
−シートは、殺菌剤、洗浄剤、染料、又は香料など、デンプンの機能にさらなる機能を与えるための添加剤を含有する。
【0031】
例えばコアとしてのシートの使用
本発明の繊維シートは、前記シートからの1つ又は複数の帯状片が円筒の周りにらせん状に巻かれることによって、ロール(特に紙のロール、より具体的にはセルロースwadding又はティッシュペーパーのロール)を支持するためのコアの製造に使用される。シートの坪量の選択は、ストランドと呼ばれる、コアを構成する帯状片の数によって決まる。
【0032】
したがって、本発明によるコアの構造は、厚紙の強度に匹敵する強度と共に制御された崩壊を可能にする利点を併せ持つ。
【0033】
本発明は、このように製造されるコアを含むトイレットペーパーロールも対象としている。したがって、ロールを使い切ると、コアは非常にすばやく崩壊するので、家庭用衛生設備の廃水で排出し流すことができる。
【0034】
本発明による繊維シートは、タンポンのアプリケーターにも使用できる。
【0035】
本発明の繊維シートは、取り込まれる温度で水に不溶性のデンプンを使用するプロセス(プロセスI)によって、あるいは(水不溶性及び/又は水溶性)デンプンを使用するプロセス(プロセスII)によって得ることができる。
冷水に不溶性のデンプンを用いてシートを製造するプロセスI
水中で120秒未満で崩壊する繊維シートを製造するプロセスは、前記繊維を水に懸濁させることによってパルプを調製するステップと、前記パルプから繊維シートを形成するステップと、乾燥ステップとを含む。このプロセスは、前記乾燥ステップの前に、取り込まれる温度で水に不溶性のデンプンを加えるステップと、デンプンを含有するシートを、デンプンの少なくとも一部がゼラチン化するのに十分高い温度で乾燥させるステップとをさらに含むことを特徴とする。目的は、シートが崩壊性であるようにするため、デンプンを水溶性にさせることである。
【0036】
「水不溶性デンプン」という表現は、デンプンが取り込まれ、水と混合され、撹拌されると、本質的に懸濁液を形成することを意味すると理解される。言い換えれば、デンプンの粒子又は微粒子は大部分が水中で浮遊したままである。撹拌を停止すると、デンプン粒子は沈殿する。デンプンが取り込まれる温度は、デンプンのゼラチン化温度を下回る。
【0037】
シートの最小の坪量、例えば150g/mにおいて、デンプン粒子の大部分は繊維マットによって保持され、したがって、形成テーブル上又はプレス機での脱水中に白水によって運び去られることはない。したがって、デンプン保持の度合いは高い。
【0038】
デンプンは、コムギ、トウモロコシ、ジャガイモ、コメ、タピオカ、又はモロコシデンプン、及び他のデンプンなど、高分子量のポリマー又は多糖から成る、植物油由来の天然産物を含む。デンプンを抽出するために、植物を粉砕−含浸及び遠心分離によって処理する。天然デンプンは分子修飾せずに抽出された産生物である。天然デンプンは水に不溶性であり、フィラーとして機能する。デンプン懸濁液を生成させるために、デンプンを過剰の水に撹拌しながら混合する。デンプン懸濁液の温度が上昇すると、水はデンプン粒子中に浸透し、これらのデンプン粒子は膨張し、懸濁液はコロイド溶液へと変わり、これは濃密化、ゼラチン化、及び粘性化する。ゼラチン化温度は植物によって決まり、トウモロコシ60〜72℃;コムギ60〜65℃;タピオカ52〜64℃;ジャガイモ58〜66℃である。加熱を続けることによって、粒子が破裂し、デンプンを構成する巨大分子が粒子から出てきて水に溶解する。十分量の水の存在がこのゼラチン化及びデンプンの溶解に必須である。
【0039】
デンプンは、物理的、化学的、及び物理化学的処理、又は生物学的処理(例えば酵素処理)によって転換された、天然デンプンに由来する生成物、カチオン性、アニオン性、両性、非イオン性、又は架橋したデンプンなどの、誘導体化又は改質したデンプン、並びにデンプン加水分解によって生じる生成物(マルトデキストリンなど)も含む。これらのデンプンは改質デンプンと呼ばれる。
【0040】
このプロセスで使用できる好ましいデンプンは、それらが水に不溶性である限りにおいては、このように改質デンプンであってもよい。
【0041】
好ましくは、ジャガイモデンプンなどの塊茎デンプンが使用され、これは粒子が他のデンプン粒子(例えばトウモロコシデンプン)よりも比較的粗く、シート中の保持率が高いからである。
【0042】
好ましいデンプンは、アニオン性改質ジャガイモデンプン、例えばAvebe社よりPerfectacote A35という名称で販売されるデンプンなど、又はNational Starch社のStackote 6という名称の非イオン性デンプンである。好ましいデンプンは置換0.01〜0.07の置換度を示し、置換基はカルボン酸基である。これらのデンプンはゼラチン化温度(Perfectacote A35では52℃)では粘度が低く、この粘度は時間が経っても非常に安定なままである。本発明での使用において、この特性は繊維シート内の良好な分布にとって有利である。
【0043】
好ましくは、シート中に存在するすべてのデンプンをゼラチン化し、シートの厚み全体にわたるデンプンの分布を実現することが目的である。
【0044】
本発明によるプロセスは、乾燥ステップの前にシートをプレスするステップを含むことが有利である。
【0045】
水不溶性デンプンを、一般に50℃未満の温度であるプロセス水中に取り込む。
【0046】
水不溶性デンプンは形成テーブルの上流でパルプに取り込まれるのが有利である。デンプン懸濁液はこのようにしてパルプ繊維と均一に混合することができる。
【0047】
最適ではないが、シートが成形ワイヤー上にあるときに、特に不溶性デンプンをシート上に噴霧することによって、又は任意の他の従来の塗布方法によって、水不溶性デンプンを取り込むことも想定できる。
【0048】
水不溶性デンプンは、シートに上記の特性を与えるのに十分な量で供給される。
【0049】
別の特徴によれば、デンプンが完全なゼラチン化に達し、可溶性となるように、温度を徐々に上昇させながらシートを乾燥させる。徐々に温度を上昇させることにより、ゼラチン化温度でシート中に存在する水の量を制御し、すべての粒子を破裂させるのに十分な水の量を維持することが可能である。これは繊維シートが崩壊性になることを可能にする。
【0050】
本発明は、紙シートに特定の特性を与えるために、乾燥セクションにおいて寝かせることにより一定量のデンプンを被着させることに特徴があるさらなるステップを加える可能性を排除しないが、ただしこれはこのさらなる層がシートの崩壊性を損なわない場合においてである。
水溶性又は水不溶性デンプンを用いてシートを製造するプロセスII
水中で120秒未満で崩壊する繊維シートを製造するプロセスは、繊維を水に懸濁させるステップと、前記繊維を用いて少なくとも第1の繊維層及び第2の繊維層を形成するステップと、デンプンを第2の繊維層の上に堆積させるステップと、第1の繊維層を第2の層の上に置くステップと、2つの層を1つの繊維シートとして互いに接合させるステップと、繊維シートを乾燥させるステップとを含むことを特徴とする。
【0051】
層の数は2つに限定されない。シート少なくとも3層、例えば約10層まで含んでいてもよい。デンプンは、層を形成した後にそれらの間に成膜することができるが、これは必須ではない。
【0052】
デンプンは、シートに上記の特性を与えるのに十分な量で供給される。
【0053】
水溶性デンプンを選択する場合、その溶解速度は湿式処理によって形成される繊維層中に存在する水の量によって決まる。したがって、乾燥強度及び水溶性の両方をシートに与えることができる。
【0054】
通常、水溶性デンプンはマルトデキストリン化合物を含めた改質デンプンである。そのようなデンプンのいくつかの例は、AVEBE社のAVEDEX(デキストリン化ジャガイモデンプン)、CARGILL社のCARGILL MD01904(マルトデキストリン)である。
【0055】
水不溶性デンプンを選択する場合、プロセスIの説明で述べたデンプンが挙げられる。
【0056】
好ましい実施形態によれば、デンプンは粉末の形態で、又はシート若しくはフィルムの形態で、乾燥状態で供給される。さらなる水を供給することなくデンプンが繊維層中に存在する水によって活性化される限りにおいては、この実施形態が有利である。
【0057】
別の特徴によれば、乾燥後に密度が450kg/m〜650kg/mであるシートを得るために、乾燥前、又は乾燥後のカレンダー処理の前にシートをプレスする。
デンプンの使用
本発明はその目的において、坪量が20〜1000g/mであり、湿式製紙法に従って製造され、水中で120秒未満で崩壊する繊維シートの製造のために水不溶性デンプンを使用し、前記繊維シートは乾燥繊維シートの総重量を基準として10〜70%のデンプン及び少なくとも30%の製紙用繊維を含む。
【0058】
本発明の別の実施形態によれば、水不溶性デンプンと水溶性デンプンとの組み合わせがそのような繊維シートの製造に使用される。
【0059】
ここで本発明の2つの非限定的な例となる実施形態を、添付の図面を参照してより詳細に説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明によるコアの製造に適したプロセスIに従って厚紙のシートを製造するのに使用される、側面から見た抄紙機の図である。
【図2】プロセスIIに従って厚紙のシートを製造するのに使用される、側面から見た抄紙機の図である。
【図3】本発明のプロセスIに従って製造される乾燥前のシートの、横断面の電子顕微鏡拡大図(×100)の写真を示す図である。
【図4】本発明のプロセスIに従って製造される乾燥後のシートの、横断面の電子顕微鏡拡大図(×2000)の写真を示す図である。プロセスIによる製造 図1に示すようにプロセスIを抄紙機1において実施するが、抄紙機1自体は従来のものである。これは上流側端部から下流側端部まで製造の方向に示されている。繊維が懸濁液中で保持されており添加剤が加えられる容器2にパルプが入っている。製紙用パルプをヘッドボックス3に投入する。ヘッドボックス3は具体的には、機械の幅全体にわたって延びている「ジェット」と呼ばれるブレードの形態のディストリビューターを含む。パルプを形成テーブル5のエンドレスワイヤー4の上に堆積させる。このワイヤー4はループになっており、これを支持するテーブルの平行ローラーの周りを無限に走る。ワイヤーは往復運動を行うように横方向にガタガタ揺れながら進み、これは紙シートの均一な形成及びその脱水を促進する。繊維はワイヤーの走行方向に沿ってそろえられる。紙シートはテーブルを離れる際に75〜85%の水分を含有している。シートをプレスセクション6に導入し、ここで水分量を60〜70%に減少させる。プレス機はいくつかの対になったゴムコーティングされたシリンダーを含む。この操作は、機械的作用によってシートの密度も増加させ、その表面の仕上がりも向上させる。
【0061】
次いで、紙シートは、複数の乾燥機7を含む、乾燥セクションと呼ばれる抄紙機のドライエンドに入る。乾燥機7は、少なくとも90%の乾燥度が達成されるまでシート中に含有される水分が徐々に蒸発するのに十分に高い温度で蒸気によって内部加熱された鋳鉄ドラムである。従来、ドラムの表面温度はおよそ95℃である。厚手の綿フェルト、又は綿及び化学繊維から成る乾燥用の布によって、シートが乾燥機に当てられる。
【0062】
印刷用紙又は筆記用紙を製造する従来の機械は、表面処理のため及び適切な組成物の成膜のためのサイズプレスと、場合によりブレーカー・ストック又はカレンダー処理ステーションも含み、その後紙がリールに巻き取られる。次いでこのリールを次の転換ステップにおけるマスターリールとして使用する。
【0063】
本発明において、紙は本質的には巻き取られる前に乾燥セクションで乾燥させる。本発明のシートCを製造するために、プレス前の抄紙機のウェットエンドでデンプンを加える。好ましくはデンプンは水懸濁液の形態で取り込まれる。
【0064】
前記シートがワイヤー4上に置かれ、形成テーブル5に沿って進む間に、デンプンを噴霧によって成膜してもよい。
【0065】
シート形成前のさらに上流でデンプンを導入してもよい。デンプンを導入するのに有利な領域は、容器とヘッドボックスの間の輸送ポンプの注入口に位置する。したがって、デンプンはヘッドボックスに導入される製造組成物中の懸濁液中にある。
【0066】
本発明のプロセスIの重要な特徴によれば、この段階で導入されるデンプンは水に不溶である。これはシートが乾燥セクションを通ると可溶性となる。シートが含有するデンプンのゼラチン化温度に到達するまでシートの温度が徐々に上昇するように、一連のドライヤーの温度を調整するのが有利である。一連のドラムの温度は60℃〜100℃に制御することができる。ゼラチン化が効果的に起こるのに十分な量の水をシート中に維持し、デンプンを可溶性にすることが目的である。水の量が不十分であると、デンプンの一部がゼラチン化しないことになる。シート中のデンプンがゼラチン化し可溶性になってしまうと、前記シートを所望の乾燥度まで乾燥させ続けることができる。
【0067】
プレス及び乾燥は、製品の所望の最終的水分量を得るように適合させる。
【0068】
こうして連続的に製造されたシートは次の使用のために巻き取られる。
【0069】
シートCの製造パラメーターは、所望の特性を有するコアを得るように決定される。
【0070】
使用される繊維は、製紙用長繊維、短繊維、又は再生繊維、及びさらにそれらの混合物である。
【0071】
水不溶性デンプンは好ましくは、不溶性粒子のサイズがウェットシートから容易に濾し出されないほどの、例えば粒径が20ミクロンを超える十分な大きさであるように選択される。
【0072】
殺菌剤、洗浄剤、又は香料などの、さらなる機能をもたらす他の添加剤を組み込むことも可能である。
【0073】
とりわけ坪量の低いシートにおいて、シート中のデンプンの保持性を向上させるために、保持剤(Retention agent)を加えてもよい。
【0074】
好ましくは、バインダーが厚み全体にわたって適切に分布していることをチェックするために、デンプンは着色される。さらに、これは美的観点において改善を示す。
パイロット長網抄紙機におけるプロセスIによる実験的製造試験
機械は、それぞれが2つのシリンダーから成る3つのドライヤーユニットを含んでいた。
【0075】
約33%のデンプンを含有する270g/mの紙シートを製造した。
【0076】
2.5%の濃度を有するパルプを10m容器中で調製した。
【0077】
質量が250kgであるパルプは、
−35%のデンプン、すなわち97.2kgのデンプンと;
−4分の1は長繊維であり、4分の3は短繊維である、162.5kgの繊維と
から構成されていた。
【0078】
混合後、混合容器の中身を機械の容器へ移した。
【0079】
480mの紙を製造した。
【0080】
243g/mの乾燥重量において、乾燥度は、
−長網抄紙機を出るとき、16〜17%;
−プレス機を出るとき、57%;
−巻き取り時、91%
であった。
【0081】
温度が徐々に上昇するように6つの乾燥シリンダーの温度を制御した。
【0082】
シートにおいて測定されたデンプン含量は、シートの総乾燥重量に対して平均で33%であった。
【0083】
ここでプロセスIIによる製造例を説明する
図2で示される製造例によれば、抄紙機100は、長網抄紙機テーブル上(図示される)又は円網(cylinder mould)上での湿式処理によって製紙用繊維の層を形成するための第1のユニット102を含む。層C’1は、水に懸濁させた製紙用繊維から形成されるパルプを、ヘッドボックス121を介して第1の形成テーブル120の透過性移動ワイヤー122上に堆積させることによって形成される。ワイヤーはループになっており、これを支持する平行ローラーの周りを無限に走る。層C’1はワイヤー122と共に進む際に第1の脱水ステップを受ける。
【0084】
第1の繊維層C’1は、形成テーブル120の平坦部分での移動の最後、ローラー123を回ったところで、平行支持ローラーの周りをループ状に並進的に動く取り出し用フェルト130によって取り出され、支持ローラーの1つである131が第1の層C’1を圧迫し、これは部分的に脱水さる。第1の層C’1はフェルトによって製紙用繊維の第2の層C’2を形成する第2のユニット104の第2の長網テーブル140へ運ばれる。この層C’2はここで、第1の層と同様に、ヘッドボックス141を介して繊維懸濁液を含むパルプをテーブル140の移動ワイヤー142上に堆積させることによって形成される。こうして繊維層C’2は第1の層と同様に透過性ワイヤーを通して脱水される。取り出し用フェルトは、テーブル140の最後のシリンダー143で第2の層を取り出すために、ローラー132を介して第2の繊維層C’2を圧迫する。2つの繊維層は1つのシートC’として合わせられ、シートをプレスする間に2つの層からさらに一部の水を絞り出すために、C’はプレス基05の2つのローラー間に残されたすき間に向かって誘導される。次いでシートは乾燥ユニット(図示せず)に向かって誘導され、これは従来のものであってもよい。多層シートを製造するそのような装置において、層の数は2つに限定されない。
【0085】
本発明のシートC’を製造するために、粉末状のデンプンLを堆積させるシステム106をシリンダー132及び143の上流に置く。使用されるシステムは、所望の量で第2の繊維層C’2の幅にわたって均一に、通常の方法で機械の走行方向に粉末を散布することを可能にする。これらのすべての条件を満たすために、製品貯蔵ホッパー、製品計量デバイス、及び振動ブラシを含む装置が使用される。工業的な製造では、湿式処理により形成され上にデンプンが堆積している製紙用繊維の層(ここではC’2)は、乾燥度が約10%〜約15%範囲である。
【0086】
層が十分に脱水され、かつ層の構造中に製品を保持し脱水される水でデンプンの一部が除去されるのを制限するのに十分な乾燥度を有する場合、2つの層が互いに向かい合わせて置かれ一緒にプレスされる前に、製紙用繊維の第2の層C’2上に粉末状水溶性デンプンを堆積させる。
【0087】
堆積したデンプンをこうして形成されたまだ湿潤状態の2つの層の間に挟み、各層の残留水分と反応させる。
【0088】
繊維層/デンプン/繊維層複合体はフェルト130でプレス領域105に運ばれ、その操作条件は調整されており、次いでシートを乾燥させる機械の領域へ運ばれる。
【0089】
例えば最大で10層を含むことができるシートを形成するために、粉末を堆積させる手段に関連するかどうかにかかわらず、さらなる層を形成させる他の手段を有することが可能である。
【0090】
こうして連続的に製造されたシートを次の使用のために巻き取る。
【0091】
シートC’の製造パラメーターは、所望の特性を有するコアを得るように決定される。
【0092】
使用される繊維は、製紙用長繊維、短繊維、又は再生繊維、及びさらにそれらの混合物である。
【0093】
殺菌剤、洗浄剤、又は香料などの、さらなる機能をもたらす他の添加剤を取り入れることも可能である。
【0094】
好ましくは、デンプンが厚み全体にわたって適切に分布していることをチェックするために、デンプンは着色される。さらに、これは美的観点において改善を示す。
【0095】
堆積量は35〜150g/mである。
【0096】
したがって、シート中のデンプンの量は、乾燥後のシートの全質量の約10%〜約70%である。
【0097】
プレスした繊維シートの密度は450kg/m〜650kg/mである。
【0098】
乾燥した水溶性デンプンを取り入れる場合、デンプンを活性化させるのに2つの層中の水を用いるという利点がある。プレス処理もデンプンが繊維の塊全体にわたって適切に分布することを確実にする。
コアの製造
紙シートを切断して細い帯状片又はストランドとし、次いでこれらを円筒形の型の周りにらせん状に巻いた。それらを互いに接着させ堅い筒を形成するように巻きの重なり部分に接着剤を塗布した。一般にトイレットペーパーのロールのコアにおいては、1本又は2本のストランドを巻く。
【0099】
コアの製造方法はそれ自体が既知である。ストランドを互いにつなぎ合わせるのに使用される接着剤によって帯状片が急速に崩壊するのを考慮する必要がある限りにおいては、バインダーの性質に応じてその方法を適合させる。
試験
プロセスIに従って得られるシートについて行ったコアの圧縮、崩壊、及び水洗トイレによる排出試験
製造プロセスIに従って製造した1本ストランドのコアAの特性は以下の通りであった:
−シートの重量:270g/m
−繊維の品質:バージンパルプ中の長繊維/短繊維混合物;
−参照用デンプン:Avebe社により販売されるPERFECTACOTE A35 (改質水不溶性デンプン);
−完成シートによって保持されるデンプンの量:90g/m、33%デンプン;
−円筒の壁厚み数:1;
−円筒の壁の重量:270g/m
−コアを形成する円筒の直径及び長さ:それぞれ40mm及び97mm。
コア圧縮試験
以下の方法を用いてコアの横方向の圧縮強度を測定した。
【0100】
試験しようとするコアを最初に、円筒の軸と垂直に、2つの対向面によって境界が作られた円筒形部分に切断し、前記部分の軸に平行な方向の長さは50mmであった。
【0101】
次いで、この円筒形部分を試験機の2つの金属プレートの間に置いた。前記プレートは互いに平行であり、最初に円筒形部分の長さをわずかに上回る距離で離された。
【0102】
円筒の軸をプレートのどちらか一方によって形成される平面と垂直な方向に沿った向きにするように、円筒形部分を置いた。
【0103】
次いで、前記円筒形部分を2枚のプレート間で圧縮し、15mmの圧縮距離で測定を行い、このときの力をニュートンで記録した。
【0104】
付随して、コアによって示される抵抗力を最大限まで、すなわちコアが不可逆的に破壊される直前まで測定した。
【0105】
各回で測定を5回行い、測定の平均を計算した。
【0106】
やはり壁重量が280g/mである1本ストランドの厚紙でできた対照コアの結果と共に、下記の表に結果を示す。
【0107】
【表1】

【0108】
したがって、これは、33%のデンプンを含有する本発明によるコアの横方向強度が、従来の厚紙コアの強度と少なくとも同等であることを示した。
【0109】
コアがその製造/ロール供給サイクルの間に受ける主な応力が、本質的に端部に働くならば、本発明によるコアは完全に要求を満たすと考えることができる。
コア崩壊試験
上記で製造したコアAの崩壊性をNFQ34−020規格に従って測定した。
【0110】
原理は、製品の試料を一定容量の水中での撹拌に供することにあった。試料が崩壊するのに要する時間を測定した。
【0111】
本発明によるシートの試料及び本発明によるコアを形成する円筒の試料で置き換えたトイレットペーパーの試料について試験を適用した。より正確には、シートの試料は9センチメートル×8センチメートル、すなわち面積が72cmであり、コアの試料は長さが5センチメートルの円筒形試料であった。撹拌スピードは標準的方法のスピード、毎分800回転である。
【0112】
材料、装置、及び操作方法は規格に詳細に記載されている。なお、完全な崩壊は、試料片がビーカーの底から撹拌機の上部まで移動した瞬間、言い換えれば、羽根の下にもはや大きい断片がなく、断片の分散液が均一であるときに相当する。この時間Tでは、時間Tと時間T+5秒との間に紙の状態において目に見えるほどの変化を観察することはもはやできない。この試験に使用される水は水道水であった。
【0113】
本発明によるシートの試料が非常に容易に崩壊することが観察された。シートの構造が崩壊するのに要したのは15秒未満であり、60秒未満で繊維懸濁液が得られた。
【0114】
重量が280g/mである厚紙の対照シートの試料は、30秒後に初めて崩壊し始め、シートは3分後に断片へと変わった。1cmを超える大きさの断片が10分後にまだ残っていた。
【0115】
重量が270g/mである1枚の帯状片から形成された本発明によるコアの試料が、重量が280g/mである1枚の厚紙の帯状片を巻くことによって得られる同様の厚紙コアよりも迅速に水中で崩壊し始めることも観察された。
【0116】
用語「同様のコア」とは、本発明のコアとおよそ同じ直径及び同じ長さを有するコアを意味すると理解するべきである。
【0117】
したがって、本発明によるコアの試料は、同様の厚紙コアよりも迅速に崩壊する。これは、本発明によるコアの試料が10〜15秒で崩壊し、繊維懸濁液が60秒未満の時間で得られたからである。
【0118】
対照のコア試料の巻きは約60秒後に開き、対照試料は7分後に大きい断片の状態であった。10分後、1cmを超える大きさの断片がまだ残っていた。
【0119】
さらに、再び比較として、Afnor NF Q34−020試験において、400g/mの2本ストランドの厚紙コアの巻きが60秒後に崩れた状態になり、コアが3分後に初めて崩壊し始めたのが観察された。これは10分後に完全に崩壊したが、厚紙断片は残った。
コア排出試験
EDANA(European Disposables & Nonwovens Association)により、拭き取り紙のトイレからの排出(FG 510.1 TIER 1 便器及び配水管の除去試験)について発行された手引き書に記載の試験方法に基づいて、家庭用衛生設備におけるコアの排出をチェックした。
【0120】
装置の特徴、試験条件、及び試験手順はこの試験方法において定義される。
【0121】
より正確には、この試験のコアへの適用において、2つのステップを調べた:
−1)便器からのコアの排出:コアは水洗を作動させた後に便器から消えなければならない;
−2)排水管からのコアの除去。
【0122】
この試験で使用される装置は、床置き型便器、水洗機構、水洗タンク、及び排水管を含む従来のトイレであった。排水管は、便器から排出された製品の変化を見ることが可能なプラスチック管であった。この配管の直径は100ミリメートル、長さは20メートルであり、2%の傾斜をつけて設置された。
【0123】
この方法とは、以下の手順を用いて一連の10個のコアを便器へ導入することである。コアを便器に投入し、次いで水洗を作動させる。水洗の水の体積は5.5リットルであった。次いでコアが便器から排出されたかどうかをチェックし、配管中のコアの位置を記録した。10個のコアについてこの操作を繰り返し、まだ配管中にあったコアの位置を毎回記録した。最後に、配管を出る際のコアの完全な除去に注目した。
【0124】
本発明によるコア、すなわち1本ストランドの270g/mコアを試験し、便器からの排出試験及び配管からの除去試験に合格した。
【0125】
同様の280g/m厚紙の1本ストランドのコアは、便器からの排出試験さえも合格しなかった。
プロセスIIにより得られるシートでできたコアについての圧縮及び崩壊試験
プロセスIIを用いてコアを製造した。
【0126】
製造されたコアの特徴は以下の通りであった:
−各繊維層の重量:45g/m2;
−繊維の品質:バージンパルプ中の長繊維/短繊維混合物;
−参照用水溶性デンプン:AVEBE社のAVEDEX;
−完成シートによって保持されるデンプンの量:90g/m、50%のデンプン
−繊維層の数:2;
−シートの重量:180g/m
−円筒の壁厚み数:2;
−円筒の壁の重量:360g/m
水溶性デンプンは、高濃度で迅速に溶解するように選択された。
【0127】
実験室での製造を以下の通りに行った:
乾燥度10%の繊維層の形成、ワイヤー上での層の堆積、粉末状デンプンの堆積、10%乾燥度の別の繊維層との接合、脱水の目的でのロールによりプレス処理及び層の接合、こうして形成されたシートの取り出し、並びに110℃での2枚の金属ワイヤー間での乾燥。
【0128】
次いで上記の通りに形成された2枚のシートから円筒形コアを製造した。
【0129】
コアを形成する円筒の直径及び長さは40mm及び97mmであった。
コア圧縮試験
側面方向圧縮及び横方向圧縮における、コアの圧縮強度を測定した。
【0130】
各回で測定を5回行い、測定の平均を計算した。
【0131】
壁の重量が365g/mである1本ストランドの厚紙でできた対照コアの結果と共に、結果を以下の表に示す。
【0132】
【表2】

【0133】
したがって、この表は、50%のデンプンを含有する本発明によるコアが厚紙コアと同様の横方向強度を有し、この場合、側面方向の圧縮強度が厚紙でできた同様のコアの強度を上回ることを示している。
【0134】
コアがその製造/ロール供給サイクルの間に受ける主な応力が、本質的に側面方向に働くならば、本発明によるコアは完全に要求を満たすと考えることができる。
【0135】
コアの崩壊試験:
上記で製造されるコアの崩壊を、NF Q34−020規格に従って測定した。
【0136】
コアは10秒未満で非常に容易に崩壊して構造が破壊され、繊維懸濁液が約30秒後に得られることが分かった。
【0137】
本発明によるコアが、重量が280g/mである厚紙の1枚の帯状片を巻くことによって得られる同様の厚紙コアよりも迅速に水中で崩壊し始めるのも観察された。
【0138】
したがって、本発明によるコアは、撹拌を行うかどうかにかかわらず、重量が280g/mである1枚の帯状片から形成される同様の厚紙コアよりも迅速に崩壊する。
図3及び4に示される繊維シート
図3は、本発明のプロセスIに従って製造される乾燥前のシート200の、横断面の電子顕微鏡拡大図の写真である。シートの横断面は、図3で表される矢印間の平面図である。
【0139】
デンプン粒子202は乾燥セクション前にシートの厚み全体にわたって実質的に均一に分布している。
【0140】
図4は、本発明によるシート300の一部の電子顕微鏡拡大図の写真である。製紙用繊維がデンプンで被覆されていることが観察される。デンプンは一部の水素結合の代わりに繊維を互いに結び付ける網状構造302をシート全体にわたって形成する。シートを水と接触させると、デンプンは水を吸収し迅速に溶解する。繊維はもはやデンプンによって結び付けられていないので、それらは互いに非常にすばやく解離する。
【0141】
この現象は、シートが濡れると迅速に崩壊し、シートの凝集力及び機械的特徴が失われることを説明することになろう。
本発明による繊維シート及び同じ重量の厚紙シートについて行った比較試験
崩壊試験;テーブル試験、及びリングクラッシュ試験の3つの試験を行った。
上記の崩壊試験。NF Q34−020規格と比較して、8×9cmの繊維シート又は厚紙試料について、毎分400回転の撹拌スピードを用いながら試験を行った。水の温度は20℃である。
テーブル試験
これは、試料が濡れたときの剛性の低下を決定するための内部試験法を含む。
【0142】
幅2.54cm×長さ13cmの長方形試料を機械の方向に切り出す。
【0143】
水平面表面、垂直面、並びに水平面表面及び垂直面の間の交点における垂直な縁部を有するテーブルを使用する。試料をテーブル上で縁部と垂直に平らに置く。試料の一部(10cm)が縁部の下に張り出る。
【0144】
乾燥状態では、試料は平面と0°の角度をなす。
【0145】
先端が試験片の1cm上に置かれた電動ビュレットを使用して試料を濡らし、3mlの水を6秒で供給する。縁部の上の試験片の中央、試料が水平面と角度をなすことになる位置に水をのせる。
【0146】
試料が濡れると、縁部を曲がって折れ曲がる。水を供給した6秒後に水平面に対する曲げ角を記録する。
リングクラッシュ試験
湿潤状態の横方向圧縮強度対乾燥状態の強度の比を定めることによって、試料の強度の低下を決定する。
【0147】
幅15mm×長さ152.4mmの試料を機械の方向に切り出す。
【0148】
試料をリング形の支持体に固定し(ISO 12192:2002規格に記載の通り)、2枚のプレート間に置き、次いで10mm/minの速度の圧縮力をかける。最大の抵抗力を記録する。
【0149】
湿潤状態での測定では、支持体に固定した試料を2秒未満の時間で水中に浸漬する。測定を浸漬の直後に行う。
【0150】
試料E2、E3、及びE5は実験室作製の試料である。試料E6は試作試料であり、E4は工業試験試料である。
【0151】
プロセスI及びIIに従って製造されたシートの試料(E1〜E6)を試験し、実質的に同じ重量の厚紙対照試料(E7及びE8)も試験した。使用した繊維はバージン繊維であった。
【0152】
シート試料の詳細な組成及び特徴を表に報告する。開示される試験方法に従って測定される崩壊時間、乾燥強度と比較した強度の低下及び残留湿潤強度の結果は非常に良好である。
【0153】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
坪量が20〜1000g/mであり、湿式製紙法に従って製造され、水中で120秒未満で崩壊し、乾燥繊維シートの総重量を基準として10〜70%のデンプン及び少なくとも30%の製紙用繊維を含む、繊維シート。
【請求項2】
乾燥繊維シートの総重量を基準として15〜40%、好ましくは20〜35%のデンプンを含む、請求項1に記載の繊維シート。
【請求項3】
坪量が100〜600g/m、好ましくは130〜400g/mである、請求項1又は2に記載の繊維シート。
【請求項4】
9×8cmのシートの試料に適用されるNF Q34−020規格に従って測定される水中崩壊時間が50秒未満、好ましくは35秒未満、より具体的には15秒未満である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の繊維シート。
【請求項5】
本明細書で報告されるテーブル試験に従って測定されるシートの強度低下が、6秒間水でぬらした後に少なくとも85°、好ましくは88°〜90°の角度をなす前記シートの試料の強度低下に相当する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の繊維シート。
【請求項6】
本明細書に記載のリングクラッシュ試験に従って測定される、繊維シートの乾燥強度と比較した前記繊維シートの残留湿潤強度が1%未満である、請求項1〜5のいずれか一つに記載の繊維シート。
【請求項7】
前記デンプンが繊維シートの厚み全体にわたって実質的に均一に分布している、請求項1〜6のいずれか一つに記載の繊維シート。
【請求項8】
繊維を水に懸濁させることによってパルプを調製するステップと、前記パルプから繊維シートを形成するステップと、乾燥ステップとを含み、乾燥ステップの前に、取り込まれる温度で水に不溶性のデンプンを繊維シートに加えるステップと、デンプンを含有する繊維シートを、デンプンの少なくとも一部がゼラチン化するのに十分高い温度で乾燥させるステップとをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の水中で120秒未満で崩壊する繊維シートの製造方法。
【請求項9】
水不溶性デンプンが形成テーブルの上流で紙パルプに取り込まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
シートが成形ワイヤー上にあるときに、特に水不溶性デンプンを繊維シート上に噴霧することによって水不溶性デンプンが取り込まれる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
乾燥ステップの前にプレス処理ステップを含む、請求項8〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
水不溶性デンプンが、物理的、化学的、又は物理化学的処理によって改質されたデンプンである、請求項8〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
デンプンの完全なゼラチン化を実現するように温度が徐々に上昇するステップによって繊維シートを乾燥させる、請求項8〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の繊維シートの製造における水不溶性デンプンの使用。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の繊維シートの製造における水不溶性デンプン及び水溶性デンプンの組み合わせの使用。
【請求項16】
繊維を水に懸濁させるステップと、前記繊維により少なくとも第1の繊維層及び第2の繊維層を形成するステップと、第2の繊維層の上にデンプンを堆積させるステップと、第1の繊維層を第2の層の上に置くステップと、2つの層を1つの繊維シートとして互いに接合させるステップと、繊維シートを乾燥させるステップとを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の水中で120秒未満で崩壊する繊維シートの製造方法。
【請求項17】
デンプンが水溶性であり、デンプンを乾燥状態で第2の層の上に堆積させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
デンプンが水不溶性であり、デンプンを乾燥状態で第2の層の上に堆積させる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
デンプンが水溶性及び水不溶性デンプンの組み合わせであり、デンプンを乾燥状態で第2の層の上に堆積させる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
デンプンを粉末状態で堆積させる、請求項17、18、又は19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも第3の繊維層が形成され、前記2つの層に挟まれて置かれるか、又はデンプンでできた層ではない、請求項16〜20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
乾燥後に密度が450kg/m〜650kg/mであるシートを得るために、乾燥前、又は乾燥後のカレンダー処理の前にシートをプレスする、請求項8〜13、及び16〜21のいずれか一つに記載の方法。
【請求項23】
前記繊維シートからの1つ又は複数の帯状片をらせん状に円筒の周りに巻くことによって、ロールを支持するコアを製造するための、請求項1〜7のいずれか一つに記載の繊維シートの使用。
【請求項24】
前記帯状片が請求項1〜7のいずれか一つに記載の繊維シートであることを特徴とする、1つ又は複数の帯状片をらせん状に巻いたものから成る、コア。
【請求項25】
請求項24に記載のコアを含む、トイレットペーパーロール。
【請求項26】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の繊維シートを含む、タンポンのアプリケーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−501166(P2013−501166A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523403(P2012−523403)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002165
【国際公開番号】WO2011/015948
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(512027979)ジョージア−パシフィック・フランス (2)
【Fターム(参考)】