説明

水循環利用システム

【課題】 汚水を浄化した水の再使用を促進すると共に給湯設備による温水の利用範囲も拡大できる水循環利用システムを提供する。
【解決手段】 水循環利用システム1は、汚水を浄化処理する合併浄化槽2と、この浄化槽で浄化された水を濾過して供給する水再生利用装置3と、該水再生利用装置から供給される水を加熱して湯を供給する給湯器4と、該給湯器から供給される湯を用いて床暖房する暖房装置5と、該暖房装置で使用された水を汚物などの排出に使用する排水利用装置の一例の水洗トイレ6とを含み、水洗トイレ6から汚水となった排水を浄化槽2に送ることで水を再利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活用水等を浄化して再利用する水循環利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、降雨量の少ない地域においては、雨水を天水桶やタンクに貯めて生活用水の一部として用いたり、用水池等に貯めて農業用水として使用したりしている。
【0003】
また、一般家庭においても、貯水を浄化槽などで浄化してトイレ等の洗い水に再利用している例が見られる。例えば、下記特許文献1には、雨水や風呂の残り湯をトイレや洗濯用水、散水等の生活用水として再利用する、雨水及び浴槽残り湯の再利用装置が示されている。
【0004】
このように雨水や風呂の残り湯を、飲用水ほどの清浄度を要しない生活用水として再利用することは、一般的に行われていることである。
【特許文献1】特開2000−233193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の一般的な再利用水は、飲用水ほどの清浄度を要しないとしても、床暖房や入浴のために清浄さを要求される電気温水器等の給湯器に供給される水としては使用し難い。そのため、浄化層などで浄化処理された水は、電気温水器には供給されず、清浄さが要求されない生活用水として利用されるに留まり、そのような利用ができない場合には、放流されて捨てられることとなり、水の有効利用に寄与していない。また、電気温水器等の給湯設備においても、ここで作られる温水は入浴や食器洗い等の使用に限られ、温水の有効利用も充分とはいえない状況である。
【0006】
本発明は、トイレの排水などの汚水を浄化した水の再使用を促進すると共に給湯設備による温水の利用範囲も拡大できる水循環利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水循環利用システムは、汚水を浄化する浄化槽と、該浄化槽で浄化された水を濾過して供給する水再生利用装置と、該水再生利用装置から供給される水を加熱して湯を供給する給湯器と、該給湯器から供給される湯を用いて暖房する暖房装置と、該暖房装置で使用された水を汚物などの排出に使用し、汚水となった排水を前記浄化槽に送る排水利用装置とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のシステムによれば、浄化槽で浄化された水を循環して、暖房や汚物の排水として再利用することができるので、水不足の地域などにおける水の有効利用として貢献できる。
【0009】
また、給湯器は通常、水道水を加熱して食器洗いや風呂用の清浄な温水を供給するために使用されているが、床暖房などの暖房用の温水はそれ程清浄でなくてもよいことから、水道水とは別に上記水再生利用装置から供給される水を給湯器で加熱して暖房装置に送ることにより、給湯器は暖房用の温水供給にも用いることが可能となる。これにより、給湯器が効率的に使用され、給湯器の利用が促進される。
【0010】
本発明の好ましい形態では、暖房装置は、前記給湯器から供給される湯を通す熱交換器と、該熱交換器での熱交換により温められた温水を通す床暖房パネルとを備えた床暖房装置からなり、熱交換器に通されて熱を失った水をトイレなどの排水利用装置に送るように構成される。これにより、給湯器から供給される温水を利用して床暖房を好適に行うことができる。
【0011】
上記水再生利用装置は、雨水等の自然水を濾過する濾過層を内蔵する濾過装置と、前記濾過層で濾過された水を外部へ供給するための水供給手段と、前記濾過装置から前記水供給手段へ通じる出水口を前記濾過層で濾過された水の量に応じて開閉する第1の弁と、前記水供給手段に水道水を供給する水道水供給口と、前記水道水供給口を開閉する第2の弁と、前記第1の弁が前記出水口を開くときは前記第2の弁が前記水道水供給口を閉じ、前記第1の弁が前記出水口を閉じるときは前記第2の弁が前記水道水供給口を開くように、前記第1の弁と前記第2の弁を連動させる連動手段とを備えたものが好ましい。
【0012】
かかる構成の水再生利用装置を用いると、第1の弁が濾過装置からの出水口を開くとき第2の弁が水道水供給口を閉じ、第1の弁が出水口を閉じるとき第2の弁が水道水供給口を開くので、濾過装置で濾過された水の量が多いときは水供給手段から外部へ濾過水が供給され、濾過水が少なくなるほど水道水を補充して水供給手段から外部へ供給される。このため、濾過装置に供給される水の量に依存することなく、浄化水を必要とする温水器などの設備に必要な水を供給することができる。これにより、浄化した水を濾過して得られた浄水を給湯器で浴槽用の温水にする一方、暖房用にも使用して熱を失った水をトイレ等の排水として利用することができる。
【0013】
上記水再生利用装置は、更に、前記出水口と水供給手段との間に設けられ、前記出水口から前記水供給手段に供給される濾過水の流量が、前記水道水供給口から前記水供給手段に供給される水道水の流量よりも多いときに開き、前記濾過水の流量が前記水道水の流量より少ないとき閉じる逆止弁を備えることが望ましい。
【0014】
上記連動手段は、前記第1の弁の開閉動作に従って前記第2の弁を閉じたり開いたりする連結ロッドから成ることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態の水循環利用システムの構成を示す図である。このシステム1は、後述のように汚水(し尿と生活雑排水)を浄化処理する合併浄化槽2と、この浄化槽で浄化された水を濾過して供給する水再生利用装置3と、該水再生利用装置から供給される水を加熱して湯を供給する給湯器4と、該給湯器から供給される湯を用いて床暖房する暖房装置5と、該暖房装置で使用された水を汚物などの排出に使用する排水利用装置の一例の水洗トイレ6とを含み、水洗トイレ6から汚水となった排水を浄化槽2に送ることで水を再利用できる水循環システムとして構成されている。
【0016】
この実施形態では、再生利用装置3は、家屋10の床下に設置され、合併浄化槽2で浄化された水を受け入れる他、屋根などから落ちた雨水や雪解け水などの自然水を、樋を介して導入する濾過装置11(図2)を備えている。ここで濾過された水は、電気給湯器4に供給され加熱されて温水又は熱水となり、浴槽7その他の水利用設備に供給される。また、電気給湯器4で作られた温水は、暖房装置5に送られて床暖房に使用された後、トイレ6の給水器に供給され、便器からの流し水として利用される。
【0017】
水再生利用装置3は、図2及び図3に示すように、浄化槽2で浄化された水及び自然水を導入する通路を形成する導水部31を有する濾過装置11と、濾過装置11の底部に溜まった水(濾過水)を外部の給湯器などに供給するための水供給手段を構成する水供給管17とを備え、濾過装置11の底部と水供給管17との間に、底部に設けられた出水口15を開閉するフロート弁16、水供給管17に連通する交差部19、出水口15と交差部19の間を開閉する逆止弁20とこれを閉位置に止める係止部20a、交差部19に連通する水道管の水供給口18とこれを開閉する仕切弁21を備えている。
【0018】
濾過装置11は、全体が貯水槽として形成され、その内部に竹炭層13とカキ殻層14とを1層ずつ或いは複数積層させて成る濾過層12を有する。上記のように浄化槽2で浄化された水は、導水部31から装置内に導入され、濾過層12によって濾過される。詳細には、水は竹炭層13を通過することによって除菌、消臭され、カキ殻層14を通過することによって不純物が除去され、飲用以外の生活用水として利用できる程度に浄化される。濾過された水(濾過水)は、濾過装置11の槽底に溜まり、後述のようにフロート弁16が閉じているときは、出水口15を通って交差部19に至る。交差部19に溜まった濾過水は、ポンプ30によって汲み上げられ、濾過水供給管17を介して再生水利用装置としての給湯器14に供給される。
【0019】
フロート弁16は、出水口15より濾過層12側に設けられ、濾過装置11内の濾過水の水位に応じて作動する浮き(フロート)から成り、フロートが移動することによって出水口15を開閉する。
【0020】
仕切弁21は、出水口15より濾過水供給管17側に設けられ、相対的に長い連結ロッド23を介してフロート弁16に連結する一方、相対的に短い連結ロッド24を介して閉鎖摺動板25に連結している。
【0021】
図2は、濾過装置11の槽底部に溜まった濾過水の浮力によりフロートが出水口15を開く位置にある状態、図3は、濾過装置11の底部に濾過水が殆どなく、フロートが出水口15を閉じている状態を示す。
【0022】
仕切弁21は、図2に示すように、水道管18の供給口付近に設けられた係止部22に閉鎖摺動板25が当たることで、仕切弁21が水道水供給口18を閉じて交差部19との連通を遮断する位置と、図3に示すように、仕切弁21が水道水供給口18を開いて交差部19と連通させる位置との間を、連結ロッド23を介してフロート弁16と共に移動する。すなわち、濾過装置11の槽底部に溜まった濾過水によりフロートが浮力を受けると、仕切弁21は水道水供給口18を閉じ、フロートが出水口15を閉じると、仕切弁21は水道水供給口18を開く。このように仕切弁21が開閉することにより、水道水供給口18から交差部19への水道水の供給が開始又は停止する。
【0023】
逆止弁20は、出水口15から出る濾過水の流れ及び水道水供給口18から流入する水道水の流れによって開閉する。すなわち、水道水の流量よりも濾過水の流量が多いと、逆止弁20は開き、濾過水の流量よりも水道水の流量が多いと逆止弁20は閉じる。これにより、水道水供給口18から供給された水道水が、出水口15から濾過装置11の底部に流入するのを防ぐことができる。
【0024】
上記のように濾過装置11に供給された水は、濾過層12を通過することによって生活用水として利用できる程度に浄化され、濾過装置11の底部に溜まる。図2に示すように、所定の量の濾過水が溜まると、その浮力によってフロート弁16が移動して出水口15を開くと共に、仕切弁21が連動して水道水供給口18を閉じる。これにより、濾過装置11の底部から交差部19に溜まった濾過水は、ポンプ30によって汲み上げられ、濾過水供給管17を通って外部へ供給される。
【0025】
その後、濾過装置11内に雨水が供給されず、底部に溜まっている濾過水の水位が低下すると、フロート弁16が沈んで出水口15を少し閉じ、これに連動して仕切弁21が移動し水道水供給口18を少し開く。これにより、交差部19には濾過水に加えて水道水が供給され、濾過水と水道水の混合水がポンプ30によって汲み上げられて外部に供給される。
【0026】
濾過装置11の底部に溜まっている濾過水の水位が更に低下すると、図3に示すように、フロート弁16が沈んで出水口15を閉じ、これに連動して仕切弁21が水道水供給口18を開く。これにより、交差部19には水道水のみが供給されるので、この水道水が濾過水供給管17を通って外部に供給される。
【0027】
上記のように、濾過装置11で濾過された水が所定量以上あるときは、濾過水を外部に供給する一方、濾過水が少ないときは水道水の供給に切り替えられるので、導水部31から導入される水の量に依存することなく、給湯器などの設備に必要な水を供給できる水再生利用装置が提供される。
【0028】
上記の水再生利用装置3で再生された水は、給湯器4で加熱されて温水となり、浴槽7その他の水利用設備に供給されるが、浴槽7に供給するのは通常、入浴時だけである。そこで、給湯器4で作られた温水を入浴時以外にも使用すれば、給湯器4の稼働率が上がり、その利用が促進される。本システムでは、給湯器4で作られた温水は、浴槽7の他、床暖房用の暖房装置5に供給される。
【0029】
暖房装置5は、図4に示すように、給湯器4から温水(湯)を貯水タンク52に送り込む温水供給路51と、ポンプP2によってタンク52から温水を出して暖房熱交換器54に通し、熱を失った水をタンク52内に戻すための熱交換用通路53と、ポンプP1によってタンク52から水を取り出してトイレ6用の排水として供給する水排出路55とを備えると共に、暖房熱交換器54の反対側には、ポンプP3によって床暖房用の水を暖房熱交換器54内に通し、ここで加熱された温水を床暖房パネル56に通して床暖房に供した後、再び暖房熱交換器54に通す水循環路57を備えて、構成されている。
【0030】
かかる構成により、給湯器4で作られた温水を利用して床暖房を好適に行うことができるのに加えて、熱交換により熱を失った水をトイレ6に送って汚物の排水として利用した上で浄化槽2に戻し、ここで浄化して再利用することができる
以上、実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明のシステムを構成する浄化槽、水再生利用装置、給湯器、暖房装置などの各設備は、種々の構成のものと用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態のシステム構成を示す図である。
【図2】図1のシステムに使用される水再生利用装置において濾過水が外部へ供給される状態を示す図である。
【図3】図2の水再生利用装置において水道水が外部へ供給される状態を示す図である。
【図4】図1のシステムに使用される暖房装置の温水及び水が循環する構成を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1…水循環利用システム、2…合併浄化槽、3…水再生利用装置、4…給湯器、5…暖房装置、6…水洗トイレ、7…浴槽、11…濾過装置、12…濾過層、13…竹炭層、14…カキ殻層、15…出水口、16・・・フロート弁、17…水供給管、18…水道水供給口、19…交差部、20…逆止弁、21…仕切弁、22…係止部、23,24・・・連結ロッド、25…閉鎖摺動板、30…ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水を浄化する浄化槽と、
該浄化槽で浄化された水を濾過して供給する水再生利用装置と、
該水再生利用装置から供給される水を加熱して湯を供給する給湯器と、
該給湯器から供給される湯を用いて暖房する暖房装置と、
該暖房装置で使用された水を汚物などの排出に使用し、汚水となった排水を前記浄化槽に送る排水利用装置と
を備えることを特徴とする水循環利用システム。
【請求項2】
請求項1記載の水循環利用システムにおいて、
前記暖房装置は、前記給湯器から供給される湯を通す熱交換器と、該熱交換器での熱交換により温められた温水を通す床暖房パネルとを備えた床暖房装置からなり、
前記熱交換器に通されて熱を失った水を前記排水利用装置に送るようにしたことを特徴とする水循環利用システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水循環利用システムにおいて、前記水再生利用装置は、
前記浄化槽で浄化された水を濾過する濾過層を内蔵する濾過装置と、
前記濾過層で濾過された水を外部へ供給するための水供給手段と、
前記濾過装置から前記水供給手段へ通じる出水口を前記濾過層で濾過された水の量に応じて開閉する第1の弁と、
前記水供給手段に水道水を供給する水道水供給口と、
前記水道水供給口を開閉する第2の弁と、
前記第1の弁が前記出水口を開くときは前記第2の弁が前記水道水供給口を閉じ、前記第1の弁が前記出水口を閉じるときは前記第2の弁が前記水道水供給口を開くように、前記第1の弁と前記第2の弁を連動させる連動手段と
を備えて構成されることを特徴とする水循環利用システム。
【請求項4】
請求項3記載の水循環利用システムにおいて、前記水再生利用装置は、更に、
前記出水口と前記水供給手段との間に設けられ、前記出水口から前記水供給手段に供給される濾過水の流量が、前記水道水供給口から前記水供給手段に供給される水道水の流量よりも多いときに開き、前記濾過水の流量が前記水道水の流量より少ないとき閉じる逆止弁を備えたことを特徴とする水循環利用システム。
【請求項5】
請求項3又は4記載の水循環利用システムにおいて、前記連動手段は、前記第1の弁の開閉動作に従って前記第2の弁を閉じたり開いたりする連結ロッドから成ることを特徴とする水循環利用システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−90243(P2009−90243A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264914(P2007−264914)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】